特許第6623103号(P6623103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623103
(24)【登録日】2019年11月29日
(45)【発行日】2019年12月18日
(54)【発明の名称】車両の乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/231 20110101AFI20191209BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20191209BHJP
   B60R 21/206 20110101ALI20191209BHJP
【FI】
   B60R21/231
   B60R21/207
   B60R21/206
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-70785(P2016-70785)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-178148(P2017-178148A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敬生
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−132072(JP,A)
【文献】 特開2005−297917(JP,A)
【文献】 特開2015−71317(JP,A)
【文献】 特開2006−76418(JP,A)
【文献】 特開2005−67273(JP,A)
【文献】 米国特許第3623768(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/231
B60R 21/206
B60R 21/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に乗車した乗員が着座するシートと、
前記シートに着座した乗員の身体の後側から脇下または上体側面の近くを通過して身体上部の前側へ突出するように展開が開始される抱込エアバッグを有する抱込エアバッグ装置と、
前記シートに着座した乗員の下肢の周囲であって前記抱込エアバッグより下側で展開する下方エアバッグを有する下方エアバッグ装置と、
を有し、
前側へ向かって展開を開始した前記抱込エアバッグは、展開した前記下方エアバッグと接触した状態で、先端部が上側または上後側へ向かって屈曲または湾曲するように展開する、
車両の乗員保護装置。
【請求項2】
前記抱込エアバッグ装置は、前記シートに着座した乗員の左右に一対で設けられる、
請求項1記載の車両の乗員保護装置。
【請求項3】
前側へ向かって展開を開始した前記抱込エアバッグは、展開した前記下方エアバッグと接触することにより、前記先端部が上側または上後側へ向かって屈曲または湾曲する、
請求項1または2記載の車両の乗員保護装置。
【請求項4】
前記先端部は、前記シートに着座した乗員の上体の上側に回り込み、前記抱込エアバッグの残部との間で前記シートに着座した乗員の肩、鎖骨または上腕を挟む、
請求項1から3のいずれか一項記載の車両の乗員保護装置。
【請求項5】
前記下方エアバッグ装置は、
ニーエアバッグを前記シートに着座した乗員の下肢へ向かって前側から展開するニーエアバッグ装置、
シートクッションエアバッグを前記シートから展開して着座した乗員の両脚部の間から上へ向かって展開するシートクッションエアバッグ装置、および
フロントエアバッグを前記シートに着座した乗員の前側から乗員へ向かって展開するフロントエアバッグ装置、
の中の少なくとも1つである、
請求項1から4のいずれか一項記載の車両の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両では、衝突時に乗員を保護するために、シートベルト装置やエアバッグ装置が用いられている。
そして、エアバッグ装置には、特許文献1のように乗員の前側から後向きに展開するフロントエアバッグがある。フロントエアバッグは、たとえば車両が前方から衝突する場合に展開され、前方衝突の際に前へ移動しようとする乗員を受け止めて支える。
また、特許文献2のように車両側面内側に沿って前後方向に展開するカーテンエアバッグがある。カーテンエアバッグは、たとえば車両の側方から衝突があった場合に展開され、側方衝突の際に車幅方向外側へ向かって移動しようとする乗員を受け止めて支える。
また、カーテンエアバッグの下側において、車両側面内側と乗員との間で展開するサイドエアバッグがある。サイドエアバッグは、カーテンエアバッグとともに、側方衝突の際に車幅方向外側へ向かって移動しようとする乗員を受け止めて支える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−014176号公報
【特許文献2】特開2015−067123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、車両では、複数の衝突形態に対応するために、複数のエアバッグを設けている。エアバッグの個数は、対処しようとする衝突形態の数に応じて、略比例的に増加している。
【0005】
車両では、エアバッグの個数増加を抑制しつつ、複数の衝突形態に対処できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の乗員保護装置は、車両に乗車した乗員が着座するシートと、前記シートに着座した乗員の身体の後側から脇下または上体側面の近くを通過して身体上部の前側へ突出するように展開が開始される抱込エアバッグを有する抱込エアバッグ装置と、前記シートに着座した乗員の下肢の周囲であって前記抱込エアバッグより下側で展開する下方エアバッグを有する下方エアバッグ装置と、を有し、前側へ向かって展開を開始した前記抱込エアバッグは、展開した前記下方エアバッグと接触した状態で、先端部が上側または上後側へ向かって屈曲または湾曲するように展開する。
【0007】
好適には、前記抱込エアバッグ装置は、前記シートに着座した乗員の左右に一対で設けられる、とよい。
【0008】
好適には、前側へ向かって展開を開始した前記抱込エアバッグは、展開した前記下方エアバッグと接触することにより、前記先端部が上側または上後側へ向かって屈曲または湾曲する、とよい。
【0009】
好適には、前記先端部は、前記シートに着座した乗員の上体の上側に回り込み、前記抱込エアバッグの残部との間で前記シートに着座した乗員の肩、鎖骨または上腕を挟む、とよい。
【0010】
好適には、前記下方エアバッグ装置は、ニーエアバッグを前記シートに着座した乗員の下肢へ向かって前側から展開するニーエアバッグ装置、シートクッションエアバッグを前記シートから展開して着座した乗員の両脚部の間から上へ向かって展開するシートクッションエアバッグ装置、およびフロントエアバッグを前記シートに着座した乗員の前側から乗員へ向かって展開するフロントエアバッグ装置、の中の少なくとも1つである、とよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、抱込エアバッグは、シートに着座した乗員の身体の後側から脇下または上体側面の近くを通過して身体上部の前側へ突出するように展開が開始され、展開した下方エアバッグと接触した状態で、先端部が上側または上後側へ向かって屈曲または湾曲するように展開する。よって、衝突の際にシートから離れる方向へ移動しようとする乗員の上体は、湾曲または屈曲して展開している抱込エアバッグの先端部に当たり、それ以上に移動し難くなる。これにより、たとえば前方衝突、側方衝突などの複数の衝突形態において、乗員の上体がシートから離れるように移動し難くなる。
しかも、本発明では更に、このように湾曲または屈曲した上体に展開する抱込エアバッグは、抱込エアバッグより下側で展開した下方エアバッグと接触した状態に展開する。よって、乗員の上体がシートから離れる方向へ移動することにより抱込エアバッグに荷重が作用した場合、その荷重の一部を下方エアバッグが負担することができる。抱込エアバッグ単体では荷重変形する場合であっても、下方エアバッグとの協働により、抱込エアバッグが原形を維持し易くなる。
その結果、抱込エアバッグは乗員の荷重が作用してもその原形の湾曲形状または屈曲形状を維持し、乗員がシートから離れ難くなるように好適に支えることができる。
特に、乗員の荷重が直接作用する抱込エアバッグの下側においてそれと別体の下側エアバッグが接触するので、たとえば着座する乗員の体形等の違いで抱込エアバッグに作用する荷重の大きさや向きが異なることになっても、抱込エアバッグが下側エアバッグに作用させる荷重が接触部分で分散し、抱込エアバッグを支えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動車の側面透視図である。
図2図2は、各種のエアバッグ装置による乗員保護状態の説明図である。
図3図3は、本実施形態の羽交締エアバッグ装置による乗員保護状態の説明図である。
図4図4は、図3の羽交締エアバッグ装置の制御系のブロック図である。
図5図5は、図3の羽交締エアバッグ装置の動作例の説明図である。
図6図6は、抱込エアバッグの構造の変形例の説明図である。
図7図7は、抱込エアバッグとニーエアバッグとの接触部分の変形例の説明図である。
図8図8は、抱込エアバッグが他のエアバッグと接触する変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車1の側面透視図である。自動車1は、車両の一例である。図1には、この他にも自動車1の前を走行する他の自動車が図示されている。
【0015】
図1の自動車1は、前室2、乗員室3、および後室4からなる車体を有する。前室2には、エンジン、電気モータ等の動力ユニットが配置される。後室4には、ラッゲージスペースが設けられる。乗員室3には、乗車した乗員が着座するシート5が設けられる。また、乗員室3において運転者用のシート5の前には、アクセルペダル、ブレーキペダル、ハンドルなどの操作部材が設けられる。自動車1は、運転者の操作に基づいて走行、停止、右左折する。
【0016】
図2は、各種のエアバッグ装置による乗員保護状態の説明図である。
【0017】
図2(A)には、シート5に着座した乗員の前から、乗員へ向かって後向きにフロントエアバッグ12を展開するフロントエアバッグ装置11が図示されている。フロントエアバッグ装置11は、インフレータ、未展開のフロントエアバッグ12、およびこれらを収容する本体13、を有する。本体13は、たとえばダッシュボードやハンドルに配置される。インフレータが点火されると、フロントエアバッグ12が後方へ向かって展開する。フロントエアバッグ12が、シート5に着座した乗員の前で展開することにより、たとえば前側からの衝突の際に前へ移動しようとする乗員を受け止めて支えることができる。
図2(B)には、シート5に着座した乗員の外側において、前後方向に沿ってカーテンエアバッグ17を展開するカーテンエアバッグ装置16と、カーテンエアバッグ17の下側で前後方向に沿ってサイドエアバッグ22を展開するサイドエアバッグ装置21と、が図示されている。カーテンエアバッグ装置16の本体18は、たとえばルーフレールに配置される。カーテンエアバッグ装置16は、AピラーからCピラーまでの範囲で、窓ガラスに沿って展開する。サイドエアバッグ装置21の本体23は、たとえばシート5の背部の外側部分に配置される。サイドエアバッグ装置21は、シート5の背部の外側部分から前へ向かってサイドエアバッグ22を展開する。カーテンエアバッグ17およびサイドエアバッグ22が、シート5に着座した乗員の車幅方向外側で展開することにより、たとえば側方からの衝突の際に車幅方向外側へ移動しようとする乗員を受け止めたり、乗員とドアとの間の空間を確保したりできる。
図2(C)には、フロントエアバッグ装置11と、サイドエアバッグ装置21とが図示されている。フロントエアバッグ12およびサイドエアバッグ22が、シート5に着座した乗員の前側および車幅方向外側で展開することにより、たとえば斜め前方からの衝突の際に前斜め外側へ移動しようとする乗員を受け止めて支えることができる。
このように、自動車1では、複数の衝突形態に対応するために、複数のエアバッグを設けている。エアバッグの個数は、対処しようとする衝突形態の数に応じて、略比例的に増加している。今後衝突安全基準が強化されたり見直されたりすることにより、より多くのエアバッグを、設ける必要に迫られる。
このため、自動車1では、エアバッグの個数増加を抑制しつつ、複数の衝突形態に対処できるようにすることが求められている。
【0018】
図3は、本実施形態の羽交締エアバッグ装置31による乗員保護状態の説明図である。図3(A)は側面図であり、図3(B)は正面図であり、図3(C)は上面図である。なお、図3は、羽交締エアバッグ装置31が展開した状態を示している。また、図3には、ニーエアバッグ装置71が図示されている。
【0019】
図3の羽交締エアバッグ装置31は、右エアバッグ装置と、左エアバッグ装置とを有する。シート5に着座した乗員の左右に一対で設けられる。
【0020】
右エアバッグ装置は、右側の抱込エアバッグ32、およびこれとともにインフレータを収容する右側の本体39、を有する。
右エアバッグ装置の本体39は、たとえばシート5の背部の右側に配置される。本体39は、シート5の座部の右側部分に配置されてもよい。ここで、右側は、車幅方向内側である。
右側の抱込エアバッグ32は、基本的に略直線状の袋体形状を有する。抱込エアバッグ32は、基本的に本体39から前へ向かって展開する。抱込エアバッグ32は、シート5に着座した乗員の身体の後側から脇下または上体側面の近くを通過して身体上部の前側へ突出するように展開が開始される。そして、図3の展開した状態では、抱込エアバッグ32は、展開したニーエアバッグ72の後面に当たり、略U字形状となるように先端部が上後側へ屈曲または湾曲している。なお、抱込エアバッグ32は、展開したニーエアバッグ72の後面に当たり、先端部が上側へ屈曲または湾曲してもよい。
【0021】
左エアバッグ装置は、左側の抱込エアバッグ32、およびこれとともにインフレータを収容する左側の本体39、を有する。ここで、左側は、車幅方向外側である。
左エアバッグ装置の本体39は、たとえばシート5の背部の左側部分に配置される。本体39は、シート5の座部の左側部分に配置されてもよい。
左側の抱込エアバッグ32の形状および展開状態は、右側のものと同様であり説明を省略する。
【0022】
ニーエアバッグ装置71は、ニーエアバッグ72、およびこれとともにインフレータを収容する左側の本体73、を有する。
ニーエアバッグ装置71の本体73は、たとえばシート5前側のダッシュボードの下部に格納して配置される。ニーエアバッグ装置71の本体73は、フロアパネル下に配置されてもよい。
ニーエアバッグ72は、前後方向に長い大きな袋体形状を有する。ニーエアバッグ72は、ダッシュボードの下部から後へ向かって展開する。ニーエアバッグ72の前後方向中央部分には段差部が形成されており、この段差部がシート5に着座した乗員の両ひざに前側から当たる。また、ニーエアバッグ72の前後方向後端は、シート5に着座した乗員の腿上まで到達する。
【0023】
図4は、図3の羽交締エアバッグ装置31の制御系のブロック図である。
【0024】
図4の制御系は、撮像デバイス51、加速度センサ52、速度センサ53、ブレーキ操作センサ54、角速度センサ55、ベルト張力センサ56、ベルト巻取量センサ57、着座センサ58、タイマ59、およびこれらが接続された制御部60、を有する。また、図4には、制御部60に接続された制御対象であるシートベルト装置とエアバッグ装置とが併せて図示されている。ここでのエアバッグ装置には、羽交締エアバッグ装置31が含まれる。
【0025】
撮像デバイス51は、たとえば一対の撮像素子であり、図に示すように乗員室3のルーフやフロントガラスに前向きに設けられ、自動車1の前方の周辺状況を撮像により観測する。制御部60は、撮像された画像から、自動車1の周辺状況として、たとえば自動車1前方の他の自動車などの障害物を特定し、該障害物の衝突の可能性を判断し得る。これにより、衝突前の自動車1の走行状況を検出し得る。
【0026】
加速度センサ52は、車体に固定して設けられ、自動車1の走行状況として自動車1に作用する加速度を検出する。これにより、衝突前の自動車1の減速を検出し得る。また、衝突時には大きな減速が生じることから、自動車1の衝突を検出し得る。
【0027】
速度センサ53は、車体に固定して設けられ、自動車1の走行状況として自動車1の速度を検出する。
【0028】
ブレーキ操作センサ54は、乗員室3内に設けられ、乗員によるブレーキペダルの踏み込み操作を検出する。これにより、衝突前の自動車1の減速操作を検出し得る。
【0029】
角速度センサ55は、車体に固定して設けられ、自動車1の走行状況として自動車1の速度を検出する。
【0030】
ベルト張力センサ56は、たとえばリトラクタ装置に設けられ、ストラップに作用する張力を検出する。これより、追突時に相対的に前へ移動する乗員の身体の動き、または、その身体の動きによりストラップに作用する張力を検出し得る。
【0031】
ベルト巻取量センサ57は、たとえばリトラクタ装置に設けられ、ストラップの巻取量を検出する。
【0032】
着座センサ58は、たとえばシート5の座面に設けられ、乗員のシート5への着座、着座位置を検出する。
【0033】
タイマ59は、時間を計測する。
【0034】
制御部60は、これらセンサの検出信号に基づいて、シートベルト装置およびエアバッグ装置による乗員保護動作を制御する。制御部60は、たとえば、衝突予想に基づいて衝突前制御を実施し、衝突検出に基づいて衝突時制御を実施する。
【0035】
図5は、図3の羽交締エアバッグ装置31の動作例の説明図である。
【0036】
図5(A)に示すように、衝突前には、乗員はシート5に着座している。
制御部60は、たとえば撮像デバイス51の画像に基づいて衝突の可能性を周期的に予測する。そして、衝突の可能性がある場合、制御部60は、シートベルト装置を作動させ、乗員の上体をシート5に引き付ける。
その後、制御部60が、たとえば加速度センサ52の検出値などに基づいて衝突を検出する。そして、衝突が検出された場合、制御部60は、エアバッグ装置を作動させる。
【0037】
まず、ニーエアバッグ装置71によりニーエアバッグ72が展開される。ニーエアバッグ72は、シート5の前側から後向きに展開を開始し、図5(A)に示すように、シート5に着座した乗員の両方の膝または下肢を前側から押さえる。
また、ニーエアバッグ72は、本実施形態では更に展開し、図5(B)に示すように、シート5に着座した乗員の両腿上側に展開する。ニーエアバッグ72は、展開した状態で、両腿上側において斜め上後向きの傾斜面を形成する。
【0038】
また、ニーエアバッグ装置71の展開とタイミングを合わせて、一般的にはニーエアバッグ装置71の展開開始後に、羽交締エアバッグ装置31により左右双方の抱込エアバッグ32が展開される。
抱込エアバッグ32は、図5(C)に示すように、シート5の背部から前へ向かって直線状に展開し、シート5に着座した乗員の脇下または上体側面の近くを通過し、乗員の前へ突出するように展開する。この際、乗員の上肢が下りていた場合、抱込エアバッグ32は上肢と体幹との間に入り込み、これらの間を広げて前側へ展開する。
【0039】
そして、前へ向かって直線状に展開する抱込エアバッグ32は、展開途中において、先に抱込エアバッグ32の展開位置より下側から展開されていたニーエアバッグ72の傾斜面に当たる。傾斜面が斜め上後向きであるため、抱込エアバッグ32の先端部は、斜め上後方向または上方向へ屈曲または湾曲されることになる。その後、抱込エアバッグ32は、図5(D)に示すように、展開したニーエアバッグ72と接触した状態で、先端部が上側または上後側へ向かって屈曲または湾曲した状態に展開する。
【0040】
このように、抱込エアバッグ32の展開位置より下側で展開されるニーエアバッグ72を先に展開して傾斜面を形成してから、前へ向かって直線状に展開する抱込エアバッグ32を展開させることにより、抱込エアバッグ32を、その先端部が上側または上後側へ向かって屈曲または湾曲した状態で展開させることができる。抱込エアバッグ32は、乗員の脇下から前へ突出し、さらに上後へ向かって湾曲するように展開する。抱込エアバッグ32の先端部は、シート5に着座した乗員の上体の上側に回り込み、抱込エアバッグ32の残部との間でシート5に着座した乗員の肩、鎖骨または上腕を挟む。左右一対の抱込エアバッグ32により、乗員の左右の肩を羽交い締めするように抱え込むことができる。この状態において、先端部が上へ向かって湾曲する抱込エアバッグ32の屈曲部分は、ニーエアバッグ72の傾斜面と接触する。屈曲した状態にある抱込エアバッグ32は、ニーエアバッグ72により支持される。
【0041】
以上のように、本実施形態では、抱込エアバッグ32は、シート5に着座した乗員の身体の後側から脇下または上体側面の近くを通過して身体上部の前側へ突出するように展開が開始され、展開した下方エアバッグと接触した状態で、先端部が上側または上後側へ向かって屈曲または湾曲するように展開する。
特に、湾曲した先端部は、シート5に着座した乗員の上体の上側に回り込み、抱込エアバッグ32の残部との間でシート5に着座した乗員の肩、鎖骨または上腕を挟む。
よって、衝突の際にシート5から離れる方向へ移動しようとする乗員の上体は、湾曲または屈曲して展開している抱込エアバッグ32の先端部に当たり、それ以上に移動し難くなる。これにより、たとえば前方衝突、側方衝突などの複数の衝突形態において、乗員の上体がシート5から離れるように移動し難くなる。
しかも、本実施形態では更に、このように湾曲または屈曲した上体に展開する抱込エアバッグ32は、抱込エアバッグ32より下側で展開したニーエアバッグ72と接触した状態に展開する。よって、乗員の上体がシート5から離れる方向へ移動することにより抱込エアバッグ32に荷重が作用した場合、その荷重の一部をニーエアバッグ72が負担することができる。抱込エアバッグ32単体では荷重変形する場合であっても、ニーエアバッグ72との協働により、抱込エアバッグ32が原形を維持し易くなる。
その結果、抱込エアバッグ32は乗員の荷重が作用してもその湾曲した形状または屈曲した形状を維持し、乗員がシート5から離れ難くなるように好適に支えることができる。
特に、乗員の荷重が直接作用する抱込エアバッグ32の下側においてそれと別体のニーエアバッグ72が接触するので、たとえば着座する乗員の体形等の違いで抱込エアバッグ32に作用する荷重の大きさや向きが異なることになっても、抱込エアバッグ32がニーエアバッグ72に作用させる荷重が接触部分で分散し、抱込エアバッグ32を支えることができる。
【0042】
また、本実施形態では、左右の肩を羽交い締めにするので、シート5に着座した乗員の上体は、左右の後側から羽交い締めされて全体的にシート5から離れ難くなる。
【0043】
また、本実施形態において、前側へ向かって展開を開始した抱込エアバッグ32は、展開したニーエアバッグ72と接触することにより、先端部が上側または上後側へ向かって屈曲または湾曲する。よって、抱込エアバッグ32を、ニーエアバッグ72と接触した状態で屈曲または湾曲させることができる。ニーエアバッグ72と抱込エアバッグ32とは互いに離れた位置で展開されるので、仮にたとえば抱込エアバッグ32の湾曲形状を予め定めてしまうとそれらを接触させるために高度な微調整が必要となるが、本実施形態では不要である。
【0044】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0045】
図6は、抱込エアバッグ32の構造の変形例の説明図である。
図6(A)では、抱込エアバッグ32は、仕切り部材61により、前方展開部33用の気室と、上方展開部34用の気室とに分かれている。これらの気室の間には、弁が設けられる。この場合、抱込エアバッグ32は、まず前方展開部33が展開し、その後に前方展開部33の圧力が弁の閾値を超えると、上方展開部34が展開するようにできる。
図6(B)では、抱込エアバッグ32は、テザー62を有する。テザー62は、前方展開部33の下面と、上方展開部34の上面との間に掛け渡される。この場合、前方展開部33が展開して更に上方展開部34に高圧ガスが流入し始めると、テザー62が切れ、上方展開部34が上へ展開できるようになる。
これらの場合でも、抱込エアバッグ32は、まず前方展開部33が展開し、その後に上方展開部34が展開するようになる。
【0046】
図7は、抱込エアバッグ32とニーエアバッグ72との接触部分の変形例の説明図である。
図7のニーエアバッグ72の後側の接触面38は、摩擦係数が低い材料によりコーティングされている。これにより、後から展開する抱込エアバッグ32が、展開途中において先に展開したニーエアバッグ72に引っ掛かり難くなる。なお、コーティングは、抱込エアバッグ32に塗布してもよい。
【0047】
図8は、抱込エアバッグ32が他のエアバッグと接触する変形例の説明図である。
図8(A)では、シートクッションエアバッグ装置81は、シートクッションエアバッグ82を、シート5から展開して着座した乗員の両脚部の間から上へ向かって展開する。そして、抱込エアバッグ32は、抱込エアバッグ32の下側で展開されるシートクッションエアバッグ82と接触することにより、先端部が上側または上後側へ向かって屈曲または湾曲するように展開する。
図8(B)では、フロントエアバッグ装置11は、フロントエアバッグ12を、シート5に着座した乗員の前側から乗員へ向かって展開する。そして、抱込エアバッグ32は、抱込エアバッグ32の下側で展開されるフロントエアバッグ12の下部延長部83と接触することにより、先端部が上側または上後側へ向かって屈曲または湾曲するように展開する。
【符号の説明】
【0048】
1…自動車(車両)
2…前室
3…乗員室
4…後室
5…シート
11…フロントエアバッグ装置
12…フロントエアバッグ
13…本体
16…カーテンエアバッグ装置
17…カーテンエアバッグ
18…本体
21…サイドエアバッグ装置
22…サイドエアバッグ
23…本体
31…羽交締エアバッグ装置
32…抱込エアバッグ
33…前方展開部
34…上方展開部
38…接触面
39…本体
51…撮像デバイス
52…加速度センサ
53…速度センサ
54…ブレーキ操作センサ
55…角速度センサ
56…ベルト張力センサ
57…ベルト巻取量センサ
58…着座センサ
59…タイマ
60…制御部
61…仕切り部材
62…テザー
71…ニーエアバッグ装置
72…ニーエアバッグ
73…本体
81…シートクッションエアバッグ装置
82…シートクッションエアバッグ
83…下部延長部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8