(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623325
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】浸漬型バーナヒータ及び溶湯保持炉
(51)【国際特許分類】
B22D 41/015 20060101AFI20191216BHJP
B22D 18/04 20060101ALI20191216BHJP
F27B 3/20 20060101ALI20191216BHJP
F23D 14/12 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
B22D41/015
B22D18/04 U
F27B3/20
F23D14/12 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-172597(P2017-172597)
(22)【出願日】2017年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-75630(P2018-75630A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2018年11月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-211632(P2016-211632)
(32)【優先日】2016年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003727
【氏名又は名称】株式会社トウネツ
(73)【特許権者】
【識別番号】000147257
【氏名又は名称】株式会社正英製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】望月 城也太
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
【審査官】
中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−347720(JP,A)
【文献】
特開2014−214882(JP,A)
【文献】
実開昭55−162723(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 41/015
F27B 3/00
F23D 14/00
F23D 14/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯保持炉の炉壁又は上部蓋に貫通状態で設置され先端部が閉塞されたヒータ保護管と、
前記ヒータ保護管との間に燃焼用流路を有して前記ヒータ保護管内に配され先端側が開口していると共に内部が排ガス流路となる内筒部材と、
前記燃焼用流路に燃料ガス及び空気を供給するガスバーナ部とを備え、
前記炉壁又は前記上部蓋に貫通した部分よりも先端側において前記内筒部材の外周面に、螺旋状に延在する突条部が設けられ、
前記内筒部材の外周面の前記突条部が設けられた領域に、前記ヒータ保護管よりも熱伝導性の低い断熱材料で形成された断熱部材が設けられていることを特徴とする浸漬型バーナヒータ。
【請求項2】
請求項1に記載の浸漬型バーナヒータにおいて、
前記突条部が、前記断熱部材の外周面に設けられていることを特徴とする浸漬型バーナヒータ。
【請求項3】
請求項1に記載の浸漬型バーナヒータにおいて、
前記突条部が、前記内筒部材の外周面に設けられた螺旋状フィンであることを特徴とする浸漬型バーナヒータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の浸漬型バーナヒータにおいて、
前記炉壁又は前記上部蓋に貫通した部分における前記燃焼用流路内に前記空気を供給する空気流路を備え、
前記空気流路内に前記内筒部材又は前記ヒータ保護管に固定された熱交換用フィンが設けられていることを特徴とする浸漬型バーナヒータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の浸漬型バーナヒータにおいて、
前記内筒部材の基端側の外周部に、前記ヒータ保護管よりも熱伝導性の低い断熱材料で形成された断熱部材が設けられていることを特徴とする浸漬型バーナヒータ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の浸漬型バーナヒータにおいて、
前記内筒部材の基端側から先端近傍まで、前記ヒータ保護管よりも熱伝導性の低い断熱材料で形成された断熱部材が設けられていることを特徴とする浸漬型バーナヒータ。
【請求項7】
溶湯を保持する保持槽と、
前記保持槽の炉壁又は上部蓋に貫通状態に設置された請求項1から6のいずれか一項に記載の浸漬型バーナヒータとを備えている溶湯保持炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等の鋳造やインゴットの溶解等に用いる浸漬型バーナヒータ及び溶湯保持炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば鋳込み用のアルミニウムやアルミニウム合金等の溶湯を溶湯保持炉において加熱保持するため、炉壁から挿入する溶湯加熱用ヒータが使用されている。
このような溶湯加熱用ヒータとしては、金属発熱体を熱源とした溶湯保持炉が実用化されているが、熱源として金属発熱体の代わりにガスバーナを使用する方式が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ヒータ保護管である外筒内に内筒を配置したバーナヒータであって、内筒と外筒との間から燃焼ガスを供給して内筒から排ガスを回収する金属溶湯加熱用燃焼チューブヒータが記載されている。
このようなバーナヒータは、燃焼ガスが内筒と外筒との間に流通することで外筒側の温度を高め、溶湯を効率的に加熱するものであり、また排ガスを内筒の先端開口部から内筒内を介して基端側の排ガス管へ回収している。
【0004】
一般的に、ヒータを炉壁から挿入して浸漬させるタイプの溶湯保持炉では、炉内の溶湯がヒータ保護管と炉壁との間を伝わって炉外に漏出することを防ぐため、炉壁内に埋まる部分のヒータ保護管の内部を例えば600℃以下にし(アルミニウムの融点は660℃)、万一溶湯が炉壁とヒータ保護管との間に浸入したとしても、溶湯が固まって流出が防止される構成にすることが必要である。
【0005】
しかしながら、ガスバーナを使用した場合、高温になった排ガスが炉壁を加熱し、溶湯を流出させてしまうおそれがある。そのため、特許文献1に記載のバーナヒータ及び溶湯保持炉では、内筒から排ガスを回収し、その外側を燃焼用空気が流れる構造にすることで、炉壁のすぐ内側を高温の排ガスが流通しないような構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−347720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
上記特許文献1に記載のバーナヒータでは、排ガスを内筒から回収することで、炉壁側の温度が高温になることを抑制しているが、十分に炉壁側の温度を下げて溶湯漏れを完全に防止するために、排ガス温度のさらなる低下が要望されている。また、火炎の熱がヒータ保護管に効率的に伝わらないため、バーナヒータの温度が効率的に上昇しないと共に、燃焼ガスが全て燃焼し切らないうちに内筒に回収、排気されてしまう不都合があった。
【0008】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、高い熱伝達率が得られると共に排ガス温度を下げることが可能な浸漬型バーナヒータ及び溶湯保持炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る浸漬型バーナヒータは、溶湯保持炉の炉壁又は上部蓋に貫通状態で設置され先端部が閉塞されたヒータ保護管と、前記ヒータ保護管との間に燃焼用流路を有して前記ヒータ保護管内に配され先端側が開口していると共に内部が排ガス流路となる内筒部材と、前記燃焼用流路に燃料ガス及び空気を供給するガスバーナ部とを備え、前記炉壁又は前記上部蓋に貫通した部分よりも先端側において前記内筒部材の外周面及び前記ヒータ保護管の内周面の少なくとも一方に、螺旋状に延在する突条部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
この浸漬型バーナヒータでは、炉壁又は上部蓋に貫通した部分よりも先端側において内筒部材の外周面及びヒータ保護管の内周面の少なくとも一方に、螺旋状に延在する突条部が設けられているので、突条部によってガイドされて内筒部材とヒータ保護管との間の燃焼用流路内を燃焼ガスが螺旋状に進むことで、螺旋状の突条部が無い場合に比べて燃焼ガスの流速が上昇するため、対流によるヒータ保護管への熱伝達率が上昇する。また、燃焼ガスが螺旋状に進むことで、乱流が発生し、燃焼ガスと空気とがより混ざり合い易くなって燃焼効率が向上し、燃焼せずに内筒部材から排気される燃焼ガスの量を低減することができる。さらに、ヒータ保護管への熱伝達率が向上するため、溶湯とヒータとの熱交換がより活発に行われることで、排気ガスの温度も下げることが可能になる。
【0011】
第2の発明に係る浸漬型バーナヒータは、第1の発明において、前記突条部が、前記ヒータ保護管の内周面に形成された螺旋状溝の間に設けられていることを特徴とする。
すなわち、この浸漬型バーナヒータでは、前記突条部が、ヒータ保護管の内周面に形成された螺旋状溝の間に設けられているので、ヒータ保護管の内周面に溝加工等により容易に突条部を形成可能であると共に、溝幅等に応じて燃焼ガスの流速等を容易に設定することができる。また、突条部によってヒータ保護管の表面積が増大し、さらに保護管とヒータとの熱交換性が向上する。
【0012】
第3の発明に係る浸漬型バーナヒータは、第1の発明において、前記突条部が、前記内筒部材の外周面に設けられた螺旋状フィンであることを特徴とする。
すなわち、この浸漬型バーナヒータでは、前記突条部が、前記内筒部材の外周面に設けられた螺旋状フィンであるので、螺旋状フィンの形状等に応じて燃焼ガスの流速等を容易に設定することができる。
【0013】
第4の発明に係る浸漬型バーナヒータは、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記炉壁又は前記上部蓋に貫通した部分における前記燃焼用流路内に前記空気を供給する空気流路を備え、前記空気流路内に前記内筒部材又は空気供給管に固定された熱交換用フィンが設けられていることを特徴とする。
すなわち、この浸漬型バーナヒータでは、空気流路内に熱交換用フィンが設けられているので、空気流路内に供給される空気と内筒部材又は空気供給管に固定された熱交換用フィンとの間で熱交換され、供給される空気を効率的に暖めることができる。
【0014】
第5の発明に係る浸漬型バーナヒータは、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記内筒部材の基端側の外周部に、前記ヒータ保護管よりも熱伝導性の低い断熱材料で形成された断熱部材が設けられていることを特徴とする。
上記特許文献1では、内筒部材の基端部が過熱され、排気ガスが内筒管の基端部で暖められ、排ガス温度が上昇してしまう不都合があった。すなわち、ヒータの基端部は、バーナの火炎が直接当たるため、非常に温度が高い。そのため、内筒部材が熱くなり過ぎると、中を通る排気ガスの温度が高くなってしまう。
しかしながら、本発明では、内筒部材の基端側の外周部に、ヒータ保護管よりも熱伝導性の低い断熱材料で形成された断熱部材が設けられているので、内筒部材の過熱を防ぐことができると共に、ヒータ保護管に効率的に熱を与えることが可能になる。
また、内筒部材の先端部は、バーナの火炎が直接当たらないため、基端部よりも温度が低いことから、断熱材料を取り付けずに内筒部材から放熱させることで、内筒部材の過熱を防ぐことが可能になる。
【0015】
第6の発明に係る溶湯保持炉は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記内筒部材の基端側から先端近傍まで、前記ヒータ保護管よりも熱伝導性の低い断熱材料で形成された断熱部材が設けられていることを特徴とする。
すなわち、この溶湯保持炉では、内筒部材の基端側から先端近傍まで、ヒータ保護管よりも熱伝導性の低い断熱材料で形成された断熱部材が設けられているので、内筒部材の外周部を広範囲に亘って設けられた断熱部材により、燃焼ガスから生じる熱エネルギーが断熱部材で撥ね返されヒータ保護管に向かうことで、断熱部材の設置範囲に比例してヒータ保護管への熱伝導効率を高めることが可能になる。
【0016】
第7の発明に係る溶湯保持炉は、溶湯を保持する保持槽と、前記保持槽の炉壁又は上部蓋に貫通状態に設置された第1から第6の発明のいずれかの浸漬型バーナヒータとを備えている。
すなわち、この溶湯保持炉では、第1から第6の発明のいずれかの浸漬型バーナヒータを備えているので、熱伝達率及びエネルギー効率が良い本発明の浸漬型バーナヒータによって、従来よりも少ないエネルギーで溶湯を保持することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る浸漬型バーナヒータによれば、炉壁又は上部蓋に貫通した部分よりも先端側において内筒部材の外周面及びヒータ保護管の内周面の少なくとも一方に、螺旋状に延在する突条部が設けられているので、熱伝達率が上昇すると共に排ガス温度を下げることができると共に、燃焼効率が向上して内筒部材から排気される未燃焼の燃焼ガスの量を低減することができる。
したがって、本発明の浸漬型バーナヒータ及び溶湯保持炉では、炉壁の温度を従来より下げることができ、溶湯漏れを確実に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る浸漬型バーナヒータ及び溶湯保持炉の第1実施形態において、浸漬型バーナヒータを示す断面図である。
【
図2】第1実施形態において、溶湯保持炉を示す概略的な断面図である。
【
図3】第1実施形態において、浸漬型バーナヒータの炉壁に貫通した部分を示す要部の断面図である。
【
図4】本発明に係る浸漬型バーナヒータ及び溶湯保持炉の第2実施形態において、浸漬型バーナヒータを示す断面図である。
【
図5】本発明に係る浸漬型バーナヒータ及び溶湯保持炉の第3実施形態において、浸漬型バーナヒータを示す断面図である。
【
図6】本発明に係る浸漬型バーナヒータ及び溶湯保持炉の第4実施形態において、浸漬型バーナヒータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る浸漬型バーナヒータ及び溶湯保持炉の第1実施形態を、
図1から
図3を参照しながら説明する。
【0020】
本実施形態の浸漬型バーナヒータ1は、
図1及び
図2に示すように、溶湯保持炉10の炉壁11aに貫通状態で設置され先端部が閉塞されたヒータ保護管2と、ヒータ保護管2との間に燃焼用流路Sを有してヒータ保護管2内に配され先端側が開口していると共に内部が排ガス流路となる内筒部材3と、燃焼用流路Sに燃料ガス及び空気を供給するガスバーナ部4とを備えている。
また、本実施形態の溶湯保持炉10は、
図2に示すように、溶湯Mを保持する保持槽11と、保持槽11の炉壁11aに貫通状態に設置された上記浸漬型バーナヒータ1とを備えている。
【0021】
上記炉壁11aに貫通した部分(炉壁11a内に埋まる部分)よりも先端側においてヒータ保護管2の内周面には、螺旋状に延在する突条部2aが設けられている。
上記螺旋状の突条部2aは、ヒータ保護管2の内周面に形成された螺旋状溝の間に設けられている。この螺旋状の突条部2aは、ヒータ保護管2と軸線を同じにしてヒータ保護管2の先端まで形成されている。
【0022】
上記ヒータ保護管2は、例えばファインセラミックスや炭化ケイ素系耐火物などで形成されている。このヒータ保護管2は、基端部側に取付用筒部材5が取り付けられ、この取付用筒部材5を介して炉壁11aに基端部側が固定されている。なお、取付用筒部材5は、ヒータ保護管と一体に成形しても構わない。
上記内筒部材3は、耐熱金属やセラミックス等で形成されている。
【0023】
上記ガスバーナ部4は、先端に噴出ノズル6を有する燃焼ガスのガス供給管7と、空気を燃焼用流路Sに供給する空気供給管8とを備えている。
上記ガス供給管7は、燃焼ガスを供給する燃焼ガス管(図示略)に基端が接続されている。
上記噴出ノズル6は、火炎をできるだけ炉壁11aから離すために、炉壁11aよりも内側(ヒータ先端側)であって溶湯Mに浸漬する部分の燃焼用流路S内に突出状態に配されている。
【0024】
上記空気供給管8は、
図3に示すように、ヒータ保護管2の基端部内であって内筒部材3の外周面に取り付けられ、炉壁11aに貫通した部分における燃焼用流路S内に空気を供給する空気流路9を備えている。
この空気供給管8は、三重筒構造を有しており、空気管12が接続される空気用孔13aを基端側に有した外側筒部13と、外側筒部13の内側に配され外側筒部13との間に第1流路9aを有して設けられた中間筒部14と、中間筒部14の内側に配され中間筒部14との間に第2流路9bを有すると共に内筒部材3との間に第3流路9cを有して設けられた内側筒部15とを備えている。すなわち、上記空気流路9は、第1流路9a,第2流路9b及び第3流路9cの三層で構成されている。
【0025】
中間筒部14の先端は、外側筒部13及び内側筒部15の先端よりも基端側に配されていると共に、内側筒部15の基端は、中間筒部14の基端よりも先端側に配されている。
また、空気供給管8は、先端が内側筒部15の先端開口部(第3流路9cの先端開口部)を除いて閉塞されていると共に基端がフランジ部材16によって閉塞されている。
【0026】
したがって、第1流路9aは、先端側で第2流路9bの先端側と連通している。また、第2流路9bは、フランジ部材16側で第3流路9cに連通し、第3流路9cは先端が開口しており、燃焼用流路Sと連通している。すなわち、空気用孔13aから空気供給管8に供給された空気は、まず第1流路9aを先端側に流れ、先端側で折り返して第2流路9bをフランジ部材16側に向けて流れる。さらに、第2流路9bを流れる空気は、フランジ部材16側で折り返して第3流路9cを先端側に向けて流れ、先端開口部から燃焼用流路S内へ供給される。
【0027】
一方、ガス供給管7は、フランジ部材16を貫通し、第2流路9b内に挿通されて噴出ノズル6が燃焼用流路S内に突出状態に設置されている。噴出ノズル6からは、燃焼用流路S内に燃焼ガスが供給され、この燃焼ガスが、燃焼用流路Sに供給された空気と混合されて燃焼する。
なお、第1流路9aは、外側筒部13と中間筒部14との間を狭く設定することで薄い層の流路となり、空気の流速を早くすることができ、効率的な熱交換が可能になる。
【0028】
上記空気流路9の第3流路9c内には、内筒部材3に固定された熱交換用フィン17が設けられている。この熱交換用フィン17は、内筒部材3の外周面に螺旋状に取り付けられている。すなわち、第3流路9cを流れる空気は、熱交換用フィン17によって螺旋状に流れ、内筒部材3との間で熱交換されて暖められた後に、燃焼用流路S内に供給される。なお、熱交換用フィン17を、空気供給管8に固定しても構わない。
【0029】
また、燃焼ガスの燃焼時の温度は、1100℃程度であるが、上述したように、供給空気を暖めていることで、上記燃焼時の温度まで上げるためのエネルギーを節約することができる。
なお、
図3において、二点鎖線の矢印は空気の流れを示し、また一点鎖線の矢印は燃焼ガスの流れを示し、さらに破線の矢印は排ガスの流れを示している。
【0030】
このように本実施形態の浸漬型バーナヒータ1では、炉壁11aに貫通した部分よりも先端側においてヒータ保護管2の内周面に、螺旋状に延在する突条部2aが設けられているので、突条部2aによってガイドされて内筒部材3とヒータ保護管2との間の燃焼用流路S内を燃焼ガスが螺旋状に進むことで、螺旋状の突条部2aが無い場合に比べて燃焼ガスの流速が上昇するため、対流によるヒータ保護管2への熱伝達率が上昇する。
【0031】
また、燃焼ガスが螺旋状に進むことで、乱流が発生し、燃焼ガスと空気とがより混ざり合い易くなって燃焼効率が向上し、燃焼せずに内筒部材3から排気される燃焼ガスの量を低減することができる。さらに、ヒータ保護管2への熱伝達率が向上するため、溶湯Mとヒータ1との熱交換がより活発に行われることで、排気ガスの温度も下げることが可能になる。また、突条部2aによってヒータ保護管2の表面積が増大し、さらに熱交換性が向上する。
【0032】
また、突条部2aが、ヒータ保護管2の内周面に形成された螺旋状溝の間に設けられているので、ヒータ保護管2の内周面に溝加工等により容易に突条部2aが形成可能であると共に、溝幅等に応じて燃焼ガスの流速等を容易に設定することができる。
また、空気流路9内に熱交換用フィン17が設けられているので、空気流路9内に供給される空気と内筒部材3または空気供給管8に固定された熱交換用フィン17との間で熱交換される。
【0033】
次に、本発明に係る浸漬型バーナヒータ及び溶湯保持炉の第2から第4実施形態について、
図4から
図6を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0034】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、突条部2aが、ヒータ保護管2の内周面に形成された螺旋状溝の間に設けられているのに対し、第2実施形態の浸漬型バーナヒータ21及び溶湯保持炉は、
図4に示すように、突条部23aが、内筒部材23の外周面に設けられた螺旋状フィンである点である。
すなわち、第2実施形態では、螺旋状フィンが内筒部材23の外周面上に螺旋状の突条部23aを構成し、ヒータ保護管22と内筒部材23との隙間に螺旋状の燃焼用流路Sを形成している。
【0035】
上記螺旋状フィンの突条部23aは、内筒部材23の外周面に取り外し可能に取り付けられている。
なお、第2実施形態のヒータ保護管22は、内周面に螺旋状溝による突条部が形成されていない。また、ヒータ保護管22は、取付用筒部材が一体化させて形成され基端部に取付用筒部25を有している。なお、この取付用筒部25は、第1実施形態のようにヒータ保護管と別に取付用筒部材として作製し、取り付けても構わない。
【0036】
このように第2実施形態の浸漬型バーナヒータ21及び溶湯保持炉では、突条部23aが、内筒部材23の外周面に設けられた螺旋状フィンであるので、螺旋状フィンの形状等に応じて燃焼ガスの流速等を容易に設定することができる。
【0037】
次に、第3実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態の内筒部材3は、外周部がヒータ保護管2内に露出しているのに対し、第3実施形態の浸漬型バーナヒータ31及び溶湯保持炉では、
図5に示すように、内筒部材3の基端側の外周部に、ヒータ保護管2よりも熱伝導性の低い断熱材料で形成された断熱部材33が設けられている点である。
上記断熱部材33は、筒状に形成され内筒部材3の基端部の外周部を覆って取り付けられている。この断熱部材33の断熱材料としては、例えばヒータ保護管2よりも熱伝導率が低いアルミナ系のセラミックス断熱材等が採用可能である。
【0038】
このように第3実施形態の浸漬型バーナヒータ31及び溶湯保持炉では、内筒部材3の基端側の外周部に、ヒータ保護管2よりも熱伝導性の低い断熱材料で形成された断熱部材33が設けられているので、内筒部材3の過熱を防ぐことができると共に、ヒータ保護管2に効率的に熱を与えることが可能になる。
また、内筒部材3の先端部は、バーナの火炎が直接当たらないため、基端部よりも温度が低いことから、断熱部材33を取り付けずに内筒部材3から放熱させることで、内筒部材3の過熱を防ぐことが可能になる。
【0039】
次に、第4実施形態と第3実施形態との異なる点は、第3実施形態では、断熱部材33が内筒部材3の基端側の外周部に設けられているのに対し、第4実施形態の浸漬型バーナヒータ41及び溶湯保持炉では、
図6に示すように、内筒部材3の基端側から先端近傍まで、断熱部材43が設けられている点である。
また、第4実施形態では、第2実施形態と同様に、突条部43aが螺旋状フィンであり、突条部43aが断熱部材43の外周面に設けられている点でも第3実施形態と異なる。
【0040】
このように第4実施形態の浸漬型バーナヒータ41及び溶湯保持炉では、内筒部材3の基端側から先端近傍まで、ヒータ保護管22よりも熱伝導性の低い断熱材料で形成された断熱部材43が設けられているので、内筒部材3の外周部を広範囲に亘って設けられた断熱部材43により、燃焼ガスから生じる熱エネルギーが断熱部材43で撥ね返されヒータ保護管22に向かうことで、断熱部材43の設置範囲に比例してヒータ保護管22への熱伝導効率を高めることが可能になる。
【0041】
なお、断熱部材43は内筒部材3の基端側であれば基端から若干離間した位置から先端近傍まで設置されていても構わない。すなわち、内筒部材3の基端近傍の外周部は、燃焼ガスの燃焼空間BSとなるため、この燃焼空間BSを避けて基端側の途中から先端に向けて断熱部材43を設けても構わない。このように燃焼空間BSを十分に確保することで、火炎の燃焼効率が向上し、不燃ガスを低減することができる。
また、燃焼空間BS近くの燃焼ガスの火炎が直接当たる突条部43aの螺旋状フィンのうち、燃焼空間BSから少なくとも3巻までの螺旋状フィンの材質を変更してもよい。
【0042】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0043】
例えば、上記第1実施形態では、ヒータ保護管の内周面に螺旋状の突条部が形成されているが、内筒部材の外周面に螺旋状の突条部を形成しても構わない。また、ヒータ保護管の内周面及び内筒部材の外周面の両方に螺旋状の突条部を形成しても構わない。この場合、両方に螺旋状の突条部は、同じ方向に同じ間隔で延在するように設定することが好ましい。
【0044】
また、上記第2実施形態では、内筒部材の外周面に螺旋状フィンの突条部を取り付けているが、ヒータ保護管の内周面に螺旋状フィンを取り付けても構わない。また、ヒータ保護管の内周面に、螺旋状以外の形状の突条部を形成し、ヒータ保護管の表面積を増大させても構わない。
【0045】
さらに、上記各実施形態では、ヒータ保護管が溶湯保持炉の保持槽の炉壁に貫通状態で設置され、横から溶湯に浸漬した状態とされるが、溶湯保持炉の保持槽の上部開口部を閉塞する上部蓋を設け、この上部蓋に貫通状態でヒータ保護管を設置しても構わない。この場合、浸漬型バーナヒータは、保持槽の上部蓋に貫通状態に設置され、ヒータ保護管が、上部蓋を挿通して縦に延在して溶湯に浸漬した状態となる。
【符号の説明】
【0046】
1,21,31,41…浸漬型バーナヒータ、2,22…ヒータ保護管、2a,23a,43a…突条部、3,23…内筒部材、4…ガスバーナ部、9…空気流路、10…溶湯保持炉、11…保持槽、11a…炉壁、17…熱交換用フィン、33,43…断熱部材、M…溶湯、S…燃焼用流路