特許第6623462号(P6623462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623462
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】処置具挿入補助具
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/01 20060101AFI20191216BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   A61B1/01 511
   G02B23/24 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-504543(P2017-504543)
(86)(22)【出願日】2015年3月12日
(86)【国際出願番号】JP2015057388
(87)【国際公開番号】WO2016143142
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2018年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 則仁
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 卓也
(72)【発明者】
【氏名】日村 義彦
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−046273(JP,A)
【文献】 特表2003−501197(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/046002(WO,A1)
【文献】 特開2005−177517(JP,A)
【文献】 特開2004−337617(JP,A)
【文献】 特開2012−200552(JP,A)
【文献】 特開2000−037390(JP,A)
【文献】 特開2000−325303(JP,A)
【文献】 特開2000−166936(JP,A)
【文献】 特開昭56−089233(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0232339(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
G02B 23/24−23/26
A61B 17/00−17/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置具の体内への挿入を補助する処置具挿入補助具であって、
前記処置具を内部に挿入可能であり、可撓性を有するインナーチューブと、
前記インナーチューブが内部に挿入可能であり、可撓性を有するアウターチューブとを備え、
前記インナーチューブは、両端部が硬質材からなり、前記両端部の間の中間部は前記硬質材より軟質な軟質材からなり、
前記インナーチューブの先端部に設けられた硬質材の先端に、前記硬質材と同じ又はより硬質な硬質材からなり、屈曲可能な円筒状の屈曲部材が取り付けられることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項2】
請求項記載の処置具挿入補助具において、
前記屈曲部材は、部分的に厚さを薄くした薄肉部を有することを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項3】
請求項記載の処置具挿入補助具において、
前記屈曲部材の先端部に、前記屈曲部材を構成する前記硬質材より軟質な軟質材からなるカバーが取り付けられることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項4】
請求項1記載の処置具挿入補助具において、
前記アウターチューブは、両端部が硬質材からなり、前記両端部の間の中間部は前記硬質材より軟質な軟質材からなる部分を有することを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項5】
請求項記載の処置具挿入補助具において、
前記中間部は、前記軟質材からなる部分と前記軟質材より硬質な硬質材からなる硬質材からなる部分とを交互に有することを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項6】
請求項1記載の処置具挿入補助具において、
前記アウターチューブの内周面に係合部が設けられ、
前記インナーチューブの外周面に前記係合部に係合する被係合部が設けられていることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項7】
処置具の体内への挿入を補助する処置具挿入補助具であって、
前記処置具を内部に挿入可能であり、可撓性を有するインナーチューブと、
前記インナーチューブが内部に挿入可能であり、可撓性を有するアウターチューブとを備え、
前記インナーチューブは、両端部が硬質材からなり、前記両端部の間の中間部は前記硬質材より軟質な軟質材からなり、
前記アウターチューブの内周面に係合部が設けられ、
前記インナーチューブの外周面に前記係合部に係合する被係合部が設けられており、
前記インナーチューブの被係合部が係合されていない前記係合部には、先端側から基端側にかけて軸方向に延びたガイド部材の被係合部が係合されていることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項8】
処置具の体内への挿入を補助する処置具挿入補助具であって、
前記処置具を内部に挿入可能であり、可撓性を有するインナーチューブと、
前記インナーチューブが内部に挿入可能であり、可撓性を有するアウターチューブとを備え、
前記インナーチューブは、両端部が硬質材からなり、前記両端部の間の中間部は前記硬質材より軟質な軟質材からなり、
前記アウターチューブの内周面に円周方向に離間して複数の係合部が設けられ、
前記複数の係合部には、それぞれ先端側から基端側にかけて軸方向に延びたレール部材の被係合部が係合され、
前記アウターチューブの内周面と、隣接する前記レール部材との間に形成される係合部に係合する被係合部が前記インナーチューブの外周面に設けられていることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項9】
請求項記載の処置具挿入補助具において、
前記インナーチューブの被係合部が係合されていない前記係合部には、先端側から基端側にかけて軸方向に延びたガイド部材の被係合部が係合されていることを特徴とする処置具挿入補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡、鉗子等の処置具を体内へ挿入する際に、その挿入を補助する処置具挿入補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、処置具を体内へ挿入する際に、その挿入を補助する処置具挿入補助具が用いられている。
【0003】
従来、処置具挿入補助具として、イメージガイド管路、ライトガイド管路、処置用チャンネル管路、送気・送水用チャンネル管路等を形成する、インナーチューブとしての複数本の可撓性チューブを樹脂体で一体に固定したマルチルーメンチューブ内視鏡が知られている。
【0004】
前記処置具挿入補助具によれば、可撓性チューブによって管路の径及び形状を確保できるようにしたから、使用時における処置具の挿入性を向上することができるとされている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−167531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記処置具挿入補助具は、インナーチューブの本数、径などが変更できないという不都合がある。
【0007】
そこで、インナーチューブの周りを可撓性を有するアウターチューブで取り囲むことが想定される。しかし、この場合、インナーチューブを軟質材からなるものとした場合、インナーチューブに潰れが生じるという不具合が生じる。一方、インナーチューブを硬質材からなるものとした場合、インナーチューブを屈曲させることが困難になるという不具合が生じる。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、インナーチューブの潰れが生じ難く、屈曲が容易な処置具挿入補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、処置具の体内への挿入を補助する処置具挿入補助具であって、前記処置具を内部に挿入可能であり、可撓性を有するインナーチューブと、前記インナーチューブが内部に挿入可能であり、可撓性を有するアウターチューブとを備え、前記インナーチューブは、両端部が硬質材からなり、前記両端部の間の中間部は前記硬質材より軟質な軟質材からなることを特徴とする。
【0010】
本発明の処置具挿入補助具によれば、その両端部が硬質材からなるので、両端部でインナーチューブに潰れが生じることを防止することができる。そして、インナーチューブは中間部が軟質材からなり、屈曲容易な部分を有するので、インナーチューブを手技中に容易に屈曲させることもできる。
【0011】
また、本発明の処置具挿入補助具は、前記インナーチューブの先端部に、屈曲可能な円筒状の屈曲部材が取り付けられることが好ましい。
【0012】
この場合、インナーチューブの先端部から処置具を所望の方向に向けることが容易となる。
【0013】
また、本発明の処置具挿入補助具は、前記屈曲部材は、前記硬質材と同じ又はより硬質な硬質材からなり、部分的に厚さを薄くした薄肉部を有することが好ましい。
【0014】
この場合、屈曲部材は硬質材からなるにも拘わらず薄肉部を有するので容易に屈曲させることが可能となる。なお、薄肉部には、厚さを零とした空間も含まれる。
【0015】
また、本発明の処置具挿入補助具は、前記屈曲部材の先端部に、前記屈曲部材を構成する前記硬質材より軟質な軟質材からなるカバーが取り付けられることが好ましい。
【0016】
この場合、硬質材からなる屈曲部材の先端部によって組織に損傷を与えるおそれを防止することができる。
【0017】
また、本発明の処置具挿入補助具は、前記アウターチューブは、両端部が硬質材からなり、前記両端部の間の中間部は前記硬質材より軟質な軟質材からなる部分を有することが好ましい。
【0018】
この場合、アウターチューブは、その両端部が硬質材からなるので、少なくとも両端部でアウターチューブに潰れが生じることを防止することができ、さらには、アウターチューブ内のインナーチューブの潰れが生じることも防止することができる。そして、アウターチューブは軟質材からなり、屈曲容易な部分を有するので、アウターチューブを手技中に容易に屈曲させることもできる。
【0019】
また、本発明の処置具挿入補助具は、前記中間部は、前記軟質材からなる部分と前記軟質材より硬質な硬質材からなる硬質材からなる部分とを交互に有することが好ましい。
【0020】
この場合、さらに、両端部の他に硬質材からなる部分が存在するので、この部分でもアウターチューブの潰れが生じることを防止することができ、さらに、アウターチューブ内のインナーチューブの潰れが生じることをより効果的に防止することができる。
【0021】
また、本発明の処置具挿入補助具は、前記アウターチューブの内周面に係合部が設けられ、前記インナーチューブの外周面に前記係合部に係合する被係合部が設けられていることが好ましい。
【0022】
この場合、アウターチューブの内周面の所定の箇所にインナーチューブを係止することが可能であるので、インナーチューブ同士の干渉を防止することができる。
【0023】
また、本発明の処置具挿入補助具は、前記インナーチューブの被係合部が係合されていない前記係合部には、先端側から基端側にかけて軸方向に延びたガイド部材の被係合部が係合されていることが好ましい。
【0024】
この場合、ガイド部材によって、インナーチューブ同士の干渉を確実に防止することができる。
【0025】
さらに、本発明の処置具挿入補助具は、前記アウターチューブの内周面に円周方向に離間して複数の係合部が設けられ、前記複数の係合部には、それぞれ先端側から基端側にかけて軸方向に延びたレール部材の被係合部が係合され、前記アウターチューブの内周面と、隣接する前記レール部材との間に形成される係合部に係合する被係合部が前記インナーチューブの外周面に設けられていることも好ましい。
【0026】
この場合、アウターチューブの内周面に係止されたレール部材を用いて、所定の箇所にインナーチューブを係止することが可能であるので、インナーチューブ同士の干渉を防止することができる。
【0027】
また、本発明の処置具挿入補助具は、前記インナーチューブの被係合部が係合されていない前記係合部には、先端側から基端側にかけて軸方向に延びたガイド部材の被係合部が係合されているが好ましい。
【0028】
この場合も、ガイド部材によって、インナーチューブ同士の干渉を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る処置具挿入補助具を示す斜視図。
図2図1のA−A線における断面図。
図3A】アウターチューブなどの分解側面図。
図3B】屈曲したアウターチューブなどの断面図。
図4A】はインナーチューブなどの分解図。
図4B図4Aの屈曲したインナーチューブなどの斜視図。
図5A】ガイド部材の側面図
図5B図5AのB−B線における断面図
図5C図5AのC−C線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態に係る処置具挿入補助具10について説明する。処置具挿入補助具10は、内視鏡、鉗子、メス等の処置具(図示せず)の体内への挿入を補助するために用いられる。
【0031】
処置具挿入補助具10は、図1及び図2に示すように、主として、インナーチューブ20、アウターチューブ30及びレール部材40から構成される。アウターチューブ30に複数のレール部材40が取り付けられ、その内部に1本又は複数本のインナーチューブ20が挿入される。
【0032】
アウターチューブ30は、可撓性を有する筒状体であり、内壁面に先端側から基端側にかけて軸方向に延設された複数の案内部31を備えている。案内部31は、アウターチューブ30の内壁面に形成された蟻溝であり、内壁面に円周方向に等間隔に形成されている。
【0033】
本実施形態では、前記蟻溝は、図2に示すように、中心軸に向って突出した突出部に形成されており、開口部、奥側ともに、矩形の断面形状を備えている。ただし、前記蟻溝の形状はこれに限定されず、開口部よりも奥側に広がった略台形であっても、開口部が矩形で奥側が略円形などであってもよい。
【0034】
アウターチューブ30は、図3A及び図3Bに示すように、ポリプロピレン、塩化ビニル等の軟性プラスチック、ゴム等の軟質材からなる軟質部30Aと、軟質部30Aより硬質であってABS、ポリカ−ボネートなどの硬性プラスチックや硬質ゴムなどの硬質材からなる硬質部30Bとが交互に軸方向に結合されて構成されている。ただし、アウターチューブ30の軸方向の両端部は硬質部30Bからなっている。また、アウターチューブ30を部分的に又は全体を透明又は半透明としてもよい。
【0035】
図2に示すように、アウターチューブ30の周壁部には、第1のワイヤー部材51が先端側から基端側にかけて軸方向に埋設されている。第1のワイヤー部材51は、アウターチューブ30の基端部よりも後方に延びていて、第1のワイヤー部材用操作部(図示せず)でその進退を操作することにより、アウターチューブ30を周方向に屈曲させてその先端部を所望の方向へ向けることができる。
【0036】
第1のワイヤー部材用操作部は、例えばラチェット機構によってその操作を一時的に固定することにより、第1のワイヤー部材51の形状を一時的に固定してアウターチューブ30の先端部を所定の方向へ向けた状態を維持することができる。
【0037】
レール部材40は、硬質部30Bと同じ又は同等の硬質材、例えばABS、ポリカ−ボネートなどの硬性プラスチックや硬質ゴムなどの硬質材からなり、可撓性を有する長尺体である。レール部材40は、外側面に先端側から基端側にかけて軸方向に延設された被案内部41を備えている。被案内部41は、被案内部41は、レール部材40の外側面に形成された突起である。また、被案内部41は、断続的に形成されたものであってもよい。
【0038】
本実施形態では、前記突起は、アウターチューブ30の案内部31に係合する形状に形成されており、外側、首部とともに、矩形の断面形状となっている。ただし、前記突起の断面形状はこれに限定されず、例えば、奥側に広がった略台形、外側が略円形で首部が矩形であってもよい。
【0039】
アウターチューブ30の内周面と隣接するレール部材40の左右側面とよって蟻溝が形成され、この蟻溝が係合部50を構成する。
【0040】
本実施形態では、前記蟻溝は、図2に示すように、開口部、奥側ともに、矩形の断面形となっている。ただし、前記蟻溝の断面形状は、例えば、開口部よりも奥側に広がった略台形、開口部が矩形で奥側が略円形などであってもよい。
【0041】
図3A及び図3Bに示すように、レール部材40は、被案内部41が案内部31に係合された状態で、その先端部がアウターチューブ30の最も先端側の硬質部30Bに接着剤などによって固定されているが、レール部材40の他の部分はアウターチューブ30に固定されていない。これにより、アウターチューブ30が屈曲したとき、各レール部材40が追従して屈曲し、アウターチューブ30の屈曲を妨げない。よって、断面形状を維持した状態でアウターチューブ30が屈曲することができる。
【0042】
さらに、アウターチューブ30の基端側には、ガイドパイプ32、空気漏れ防止リング33及びバルブシート34が取り付けられている。
【0043】
ガイドパイプ32は、アウターチューブ30と空気漏れ防止リング33とを接続する部材であり、ステンレス等の金属や樹脂などの硬質材から形成されている。空気漏れ防止リング33はバルブシート34と接着されている。空気漏れ防止リング33は、ガイドパイプ32に対して着脱可能に取り付けられている。バルブシート34には、インナーチューブ20が挿通される複数の孔が形成されている。
【0044】
図2に示すように、インナーチューブ20は、可撓性を有する筒状体であり、内視鏡、鉗子、メス等の処置具を内部に挿通可能となっている。インナーチューブ20は、前記処置具を挿入するためのチャネルを1つ有してもよく、2つ以上有してもよい。インナーチューブ20は外周面に親水性加工が施されている。各インナーチューブ20は、手技に応じて、レール部材40を内周面に係合したアウターチューブ30に対して挿入及び取り出し可能となっている。
【0045】
インナーチューブ20は、本実施形態では、外径が同じであるが、外径が異なるものを使用してもよい。
【0046】
インナーチューブ20は、図4A及び図4Bに示すように、ポリプロピレン、塩化ビニル等の軟性プラスチック、ゴム等の軟質材から軟質部20Aと、軟質部20Aより硬質であってABS、ポリカ−ボネートなどの硬性プラスチックや硬質ゴムなどの硬質材からなる硬質部20Aとが軸方向に結合されて構成されている。インナーチューブ20の軸方向の両端部は硬質部20Bからなり、これら硬質部20Bの間の中間部が軟質部20Aとなっている。
【0047】
また、インナーチューブ20は、図2も参照して、外周面の先端から基端に亘って、係合部50に係合して摺動可能とする被係合部21と、挿入深さを把握するための目盛(図示せず)とを備えている。
【0048】
被係合部21は、本実施形態では、インナーチューブ20の外周面に突出する幅広の矩形状の突起であるが、係合部50に係合可能であれば任意の形状とすることができる。
【0049】
被係合部21は、インナーチューブ20の先端から基端に亘って連続して設けられている。ただし、被係合部21は、インナーチューブ20の外周面の先端から基端に亘る部分の一部に断続的に、少なくとも先端だけに設けられたものであってもよい。
【0050】
また、インナーチューブ20の被係合部21には、第2のワイヤー部材52が先端側から基端側にかけて軸方向に埋設されている。第2のワイヤー部材52は、インナーチューブ20の基端部よりも後方に延びており、スライドノブ25(第2のワイヤー部材用操作部)でその進退を操作することができる。第2のワイヤー部材52は、インナーチューブ20に固定されているものであればよく、被係合部21に埋め込まれる代わりに、インナーチューブ20の周壁部に埋め込まれていてもよく、インナーチューブ20の外周面に接着されていてもよい。
【0051】
そして、インナーチューブ20の先端部には、屈曲可能な首振りパイプ(本発明の屈曲部材に相当する)22及びノーズカバー23(本発明のカバーに相当する、図4A及び図4B参照)が取り付けられている。
【0052】
首振りパイプ22は、インナーチューブ20の硬質部20Aと同じ又はこれより硬質の硬質材、例えばステンレス等の金属から形成されている。首振りパイプ22には、軸方向に延びる複数のスリット22aが形成されている。本実施形態では、スリット22aが形成されているが薄肉部を形成してもよい。これにより、首振りパイプ22は、特定の方向のみに屈曲容易なものとなっている。第2のワイヤー部材52は、首振りパイプ22の外側を通過している。
【0053】
ノーズカバー23は、首振りパイプ22の先端部に固定されている。ノーズカバー23は、首振りパイプ22を構成する硬質材より軟質な軟質材、例えば塩化ビニル等の軟性プラスチック、ゴム等からなっている。ノーズカバー23は軟質材からなるので、組織と接触しても組織に損傷を与えることがない。そして、ノーズカバー23には、第2のワイヤー部材52の先端部が固定されている。
【0054】
一方、インナーチューブ20の基端部には、第1のスライドパイプ24、スライドノブ25、スライドストッパー26、第2のスライドパイプ27及び脱気防止弁28が取り付けられている。
【0055】
第1のスライドパイプ24は、インナーチューブ20の後端部に接続され、空気漏れ防止リング33(図3A及び図3B参照)に挿入される。これにより、アウターチューブ30のインナーチューブ20が挿入されていない箇所や挿入されたインナーチューブ20の外周部から、体腔内の空気が漏れることを防ぐことができる。
【0056】
第1のスライドパイプ24の先端側はインナーチューブ20の硬質部20Bと同じ又は同等の硬さの硬質材からなる硬質部24A、後端側はインナーチューブ20の硬質部20Bより柔らかで軟質部20Aより硬質の、エラストマーやポリウレタンなどの半硬質材からなる半硬質部24Bとなっている。この半硬質部24Bによって、アウターチューブ30内に複数本のインナーチューブ20が挿入されたときに、インナーチューブ20同士の干渉を防止することができる。
【0057】
スライドノブ25には、第2のワイヤー部材52の後端部が固定されている。そして、スライドノブ25は、第2のスライドパイプ27に対して摺動自在に構成されており、スライドストッパー26によって、第2のスライドパイプ27に対して、所望の位置でロックすることができる。
【0058】
脱気防止弁28は、処置具が挿入されていないインナーチューブ20から体腔、例えば腹腔から空気漏れが生じることを防ぐことができる。脱気防止弁28は、第2のスライドパイプ27の後端に着脱自在に取り付けられている。
【0059】
第2のワイヤー部材52は、インナーチューブ20の先端部がアウターチューブ30の先端から突出しているときには、首振りパイプ22を屈曲させてその先端部を所望の方向に向けることができる。また、第2のワイヤー部材52は、インナーチューブ20の先端部がアウターチューブ30の先端から突出せずインナーチューブ20がアウターチューブ30内に収容されているときには、インナーチューブ20の屈曲に追従してアウターチューブ30を屈曲させることができる。
【0060】
スライドノブ25は、例えばラチェット機構によってその操作を一時的に固定することにより、第2のワイヤー部材52の形状を一時的に固定してインナーチューブ20又はアウターチューブ30の先端部を所定の方向へ向けた状態を維持することができる。
【0061】
そして、インナーチューブ20の被係合部21が係合されていない係合部50には、ガイド部材60の被係合部61が係合される。
【0062】
ガイド部材60は、図5A乃至図5Cに示すように、係合部50に係合される被係合部61が内側に形成された先端側部60Aと、基端側部60Bとから構成された、長尺の部材である。先端側部60Aは、インナーチューブ20の硬質部20Bより柔らかで軟質部20Aより硬質の、エラストマーやポリウレタン、あるいは針金や銅線などの半硬質材からなっている。基端側部60Bは、インナーチューブ20の硬質部20Bと同じ又は同等の硬さの硬質材からなっている。
【0063】
被係合部61は、本実施形態では、インナーチューブ20の外周面に突出する幅広の矩形状の突起であるが、係合部50に係合可能であれば任意の形状とすることができる。先端側部60Aの本体部62は、ドーナツ状の断面を備えている。基端側部60Bは、略三角形でその頂部に円形の孔を有する断面を備えている。
【0064】
本実施形態の処置具挿入補助具10によれば、先端側から基端側にかけて軸方向に延設された案内部31に、インナーチューブ20の被係合部21を係合させて摺動させることにより、アウターチューブ30内のインナーチューブ20に対する位置を保持した状態で、インナーチューブ20を円滑に挿入及び引き出すことができ、所望の処置具を使用することができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の処置具挿入補助具10によれば、インナーチューブ20は、その両端部が硬質部20Bからなるので、両端部でインナーチューブ20に潰れが生じることを防止することができる。そして、インナーチューブ20は中間部が屈曲容易な軟質部20Aであるので、インナーチューブを手技中に容易に屈曲させることもできる。
【0066】
また、インナーチューブ20の先端部に、首振りパイプ22が取り付けられているので、処置具を所望の方向に向けることが容易となる。
【0067】
また、首振りパイプ22の先端部に、軟質材からなるノーズカバー23が取り付けられているので、組織に損傷を与えるおそれを防止することができる。
【0068】
また、アウターチューブ30は、その両端部が硬質部30Bからなるので、少なくとも両端部でアウターチューブ30に潰れが生じることを防止することができ、さらには、アウターチューブ30内のインナーチューブ20の潰れが生じることも防止することができる。そして、アウターチューブ30は屈曲容易な軟質部30Aを有するので、アウターチューブ30を手技中に容易に屈曲させることもできる。
【0069】
さらに、中間部にも硬質部30Bが存在するので、この部分でもアウターチューブ30の潰れが生じることを防止することができ、さらに、アウターチューブ30内のインナーチューブ20の潰れが生じることをより効果的に防止することができる。
【0070】
さらに、アウターチューブ30の内周面に係止されたレール部材40を利用して、所定の箇所にインナーチューブ20を係止することが可能であるので、インナーチューブ20同士の干渉を防止することができる。
【0071】
また、インナーチューブ20が係合されていない係合部50には、ガイド部材60が係合されているので、ガイド部材60によって、インナーチューブ20同士の干渉を確実に防止することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、形成装置の構成や形態は適宜変更可能である。
【0073】
例えば、アウターチューブ30の内周面に複数のレール部材40を係合して係合部50を構成する場合について説明した。しかし、これに限定されず、アウターチューブ30と複数のレール部材40を一体化させて、これに係合部50を形成してもよい。また、軟質材、硬質材及び半硬質材は、同種の樹脂の配合を変化させて軟硬を調節した材料であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…処置具挿入補助具、 20…インナーチューブ、 20A…軟質部(中間部)、 20B…硬質部(両端部)、 21…被係合部、 22…首振りパイプ(屈曲部材)、 22a…スリット、 23…ノーズカバー(カバー)、 30…アウターチューブ、 30A…軟質部、 30B…硬質部、 31…案内部、 40…レール部材、 41…被案内部、 50…係合部、 51…第1のワイヤー部材、 52…第2のワイヤー部材、 60…ガイド部材、 61…被係合部。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C