(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記三次元形状モデルは、表面が三次元曲面の多角形ポリゴンに分割された製品に対して、前記多角形ポリゴンの曲面上に頂点を持ち、頂点同士を直線で結ばれた三角形に分割したと仮定することを特徴とする請求項1に記載の多軸NC木工旋盤システム。
前記円盤型回転工具は、Z軸方向および前記Z軸に直交するX軸方向に移動可能であるとともに、円盤型回転工具の回転中心を通過し、かつXZ平面に直角なD軸回りに旋回可能であり、
前記円盤型回転工具と同じ形状を有する仮想の薄肉円盤の外周が、旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながらZ軸方向に移動するとともに、前記仮想の薄肉円盤の向きを前記三次元形状モデルの表面に対して垂直に向けることを前提に、
前記仮想の薄肉円盤の外周と前記三次元形状モデルの表面との接触点から、法線方向に向けた長さが仮想の薄肉円盤の半径の法線ベクトルを計算し、前記法線ベクトルの先端位置からZ軸に垂直な直線がXZ平面と一致するまで前記三次元形状モデルをZ軸周りに回転させた回転角γと、前記法線ベクトルのXZ平面への投影成分がX軸とのなす角度βと、C軸の任意の旋回角度θとに対して前記仮想の薄肉円盤の中心のX座標とZ座標を得るようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の多軸NC木工旋盤システム。
前記Z軸上の任意の点Zhは、製品形状の先端部を半球体に近似したときの底面の中心のZ座標であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多軸NC木工旋盤システム。
前記球状回転工具は、先端が球状ないしは半球状の木工用ボールビットあるいは木工用ルータビットであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多軸NC木工旋盤システム。
前記最大部輪郭線と前記最小部輪郭線は、前記三次元形状モデルをC軸の適宜ピッチの旋回角度θで回転させるごとに停止して計算し、最大部輪郭線と最小部輪郭線のそれぞれに対応する最大部オフセット線と最小部オフセット線を計算して得ることを特徴とする請求項7に記載の多軸NC木工旋盤システム。
前記最大部輪郭線と前記最小部輪郭線は、前記三次元形状モデルをC軸の適宜ピッチの旋回角度θで回転させるごとに停止して計算して得ることを特徴とする請求項9に記載の多軸NC木工旋盤システム。
円盤型回転工具を用いた三次元加工に必要な第一の工具経路生成方法と、先端が球状ないしは半球状の回転工具である球状回転工具を用いた三次元加工に必要な第二の工具経路生成方法と、を組み合わせた工具経路生成方法であって、
表面が三角形で分割されコンピュータに入力されている製品の三次元形状モデルを、4軸NC木工旋盤上での旋回角度を制御可能な旋回軸であるC軸にチャッキングしたと仮定し、
第一の工具経路生成方法としては、前記円盤型回転工具と同じ形状を有する仮想の薄肉円盤の外周が、C軸回りに旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながらZ軸方向に移動することを前提に、C軸の任意の旋回角度θと前記仮想の薄肉円盤の外周の任意のZ座標に対して前記仮想の薄肉円盤の回転中心のX座標を求めて工具経路を生成し、
第二の工具経路生成方法としては、前記球状回転工具と同じ直径の球体の先端形状を有する仮想の球体の表面が、C軸回りに旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながら、球状回転工具の回転軸がZ軸上の任意の点Zhに常に向いたままXZ平面内を移動しかつXZ平面に直交するB軸回りに旋回することを前提に前記球体の中心のX座標とZ座標を求めるために、C軸の任意の旋回角度θと、前記球状回転工具における回転軸のZ軸とのなす任意の旋回角度αとした場合に、
前記三次元形状モデルと前記球状回転工具の両方を同時に、XZ平面に直角で前記Zhを通る直線回りに前記旋回角度αと同じ旋回角度だけ逆方向に旋回して回転座標変換することで前記球状回転工具の回転軸をZ軸に一致した状態とし、
前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形の頂点とが接するときの前記球体の中心のZ座標群と、前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形の辺とが接するときの前記球体の中心のZ座標群と、前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形平面とが接するときの前記球体の中心のZ座標群と、からなる全部のZ座標群のうちで、点Z=Zhから前記三次元形状モデルの外側に位置する+Z方向へ最も遠いZ座標を採用し、この採用したZ座標を、XZ平面に直角で前記Zhを通る直線回りに前記旋回角度αだけ正方向に旋回して回転座標変換して得られるX座標とZ座標とを工具経路にすることを特徴とする工具経路生成方法。
前記三次元形状モデルは、表面が三次元曲面の多角形ポリゴンに分割された製品に対して、前記多角形ポリゴンの曲面上に頂点を持ち、頂点同士を直線で結ばれた三角形に分割したと仮定することを特徴とする請求項11に記載の工具経路生成方法。
前記第一の工具経路生成方法としては、前記円盤型回転工具と同じ形状を有する仮想の薄肉円盤の外周が、C軸周りに旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながらZ軸方向に移動するとともに、前記仮想の薄肉円盤の向きを前記三次元形状モデルの表面に対して垂直に向けることを前提に、
前記仮想の薄肉円盤の外周と前記三次元形状モデルの表面との接触点から、法線方向に向けた長さが仮想の薄肉円盤の半径の法線ベクトルを計算し、前記法線ベクトルの先端位置からZ軸に垂直な直線がXZ平面と一致するまで前記三次元形状モデルをZ軸周りに回転させた回転角γと、前記法線ベクトルのXZ平面への投影成分がX軸とのなす角度βと、C軸の任意の旋回角度θとに対して前記仮想の薄肉円盤の中心のX座標とZ座標を得るようにしたことを特徴とする請求項11又は12に記載の工具経路生成方法。
表面が三角形で分割されコンピュータに入力されている製品の三次元形状モデルを、4軸NC木工旋盤上での旋回角度を制御可能な旋回軸であるC軸にチャッキングしたと仮定し、円盤型回転工具を用いた三次元加工に必要な第一の工具経路生成プログラムと、先端が球状ないしは半球状の回転工具である球状回転工具を用いた三次元加工に必要な第二の工具経路生成プログラムと、を組み合わせた工具経路生成プログラムであって、
前記第一の工具経路生成プログラムは、
前記円盤型回転工具と同じ形状を有する仮想の薄肉円盤の外周が、C軸回りに旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながらZ軸方向に移動することを前提に、C軸の任意の旋回角度θと前記仮想の薄肉円盤の外周の任意のZ座標に対し、前記仮想の薄肉円盤の回転中心のX座標を求めることにより、前記円盤型回転工具の工具経路と
し、
前記第二の工具経路生成プログラムは、
前記球状回転工具と同じ直径の球体の先端形状を有する仮想の球体の表面が、C軸回りに旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながら、球状回転工具の回転軸がZ軸上の任意の点Zhに常に向いたままXZ平面内を移動しかつXZ平面に直交するB軸回りに旋回することを前提に前記球体の中心のX座標とZ座標を求めるために、
C軸の任意の旋回角度θと前記球状回転工具における回転軸のZ軸とのなす任意の旋回角度αとした場合、前記三次元形状モデルと前記球状回転工具の両方を同時に、XZ平面に直角で前記Zhを通る直線回りに前記旋回角度αと同じ旋回角度だけ逆方向に旋回して回転座標変換することで前記球状回転工具の回転軸をZ軸に一致した状態にし、
前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形の頂点とが接するときの前記球体の中心のZ座標群と、前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形の辺とが接するときの前記球体の中心のZ座標群と、前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形平面とが接するときの前記球体の中心のZ座標群と、からなる全部のZ座標群のうちで、点Z=Zhから前記三次元形状モデルの外側に位置する+Z方向へ最も遠いZ座標を採用し、
この採用したZ座標を、XZ平面に直角で前記Zhを通る直線回りに前記旋回角度αだけ正方向に旋回して回転座標変換して得られるX座標とZ座標とを工具経路にすることを特徴とする工具経路生成プログラム。
前記三次元形状モデルは、表面が三次元曲面の多角形ポリゴンに分割された製品に対して、前記多角ポリゴンの曲面上に頂点を持ち、頂点同士を直線で結ばれた三角形に分割したと仮定することを特徴とする請求項17に記載の工具経路生成プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
木工材料を三次元加工する際、特許文献1に示すような5軸制御工作機械などの多軸加工機を用いる場合、高価なハードウエアとなる。また、工具経路は直交座標系と回転座標系との合成によらなければ算出できず、複雑で高価なソフトウエアとなる。さらに、用いられる工具はエンドミルやドリルなどのような円筒形状もしくは先端が球状なので深い切り込みを期待できない。しかも、微細な形状を加工するには大きなサイズの工具から次第に小さなサイズの工具へと段階を経ることが必要なため加工時間が長くなる。
【0006】
特許文献2に示される3軸NC木工旋盤システムは、チャックのC軸にチャッキングした木工材料をC軸回りに旋回させながら、予め算出した工具経路に基づいて円盤型回転工具をX軸方向とZ軸方向に移動することで、特許文献1に示すような5軸制御工作機械に比べて短時間で効率よく切削加工することを可能にしている。さらに、3軸構成の旋盤により三次元での加工が可能であるので、5軸加工機に比べて安価な装置となる。
しかし、円盤型回転工具による切削加工は、回転工具の厚みや半径の大きさによって加工可能な形状が制約され、より微細な切削加工を行うために円盤型回転工具の厚みや半径を小さくするとしても構造的に一定の限界が存在するのも事実である。そのため、さらなる微細な切削加工を行う場合には、5軸加工機を用いる必要があったり、前述した複雑で高価なソフトウエアを必要とするなど、結果として加工時間が長くなったり、コスト高を招くという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に示される円盤型回転工具が三次元形状を削り出す際、円盤型回転工具は木工材料の回転軸に対して常に直角方向に向いている。そのため、回転型円盤工具が木工材料に対して螺旋状の加工点の経路を経て切削される時に、三次元形状モデルの表面が回転軸に対して傾斜している場合は、円盤型回転工具のエッジによる螺旋状のカッターマークが表れる。前記表面の傾斜角度が小さい場合は、カッターマークによる表面粗さが小さくなる。例えば、回転軸に対して平行な表面では、良好な表面粗さとなる。しかし、前記表面の傾斜角度が大きい場合は、表面粗さが大きくなる。つまり、前記傾斜角度が大きくなるほど、表面粗さが悪くなる。そのために、研磨時間が増大し、コスト増を招くという問題が生じる。
【0008】
また、特許文献2に示される円盤型回転工具で切削する木工材料は、通常、断面が正方形の正角材である。正角材から三次元形状を削り出すとき、正方形の外形と三次元形状の輪郭との間の削り代は、円盤型回転工具によって粉状の切り屑となる。木工材料が小さい場合、例えば正角材の一辺が数cmの場合は、削り代の切削に必要な動力はわずかである。しかし、建築材料のように一辺が10.5cmの正角材になると、大きな動力が必要になるので無駄なエネルギーが費やされる。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、木工材料を三次元加工する際に、複雑で高価なハードウエアやソフトウエアを必要とせずに安価で、しかも微細な凹凸加工も含め、全体的に時間的に効率よく旋盤加工することを可能とする多軸NC木工旋盤システム、工具経路生成方法、工具経路生成プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の多軸NC木工旋盤システムに係る発明は、旋回角度を制御可能な旋回軸であるC軸にチャッキングして前記C軸回りに旋回する木工材料を切削するために、
Z軸方向および前記Z軸に直交するX軸方向に移動可能な円盤型回転工具と、前記円盤型回転工具と同じステージ上に設置され、XZ平面内を移動しかつXZ平面に直角なB軸回りに旋回可能な、先端が球状ないしは半球状の球状回転工具と、を備えた多軸NC木工旋盤システムであって、
表面が三角形で分割されコンピュータに入力されている製品の三次元形状モデルを前記C軸にチャッキングしたと仮定し、
前記円盤型回転工具と同じ形状を有する仮想の薄肉円盤の外周が、旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながらZ軸方向に移動することを前提に、C軸の任意の旋回角度θと前記仮想の薄肉円盤の外周の任意のZ座標に対して前記仮想の薄肉円盤の回転中心のX座標を得るとともに、
前記球状回転工具と同じ直径の球体の先端形状を有する仮想の球体の表面が、前記C軸回りに旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながら、該球状回転工具の回転軸の向きを常にZ軸上の任意の点Zhに向き続けるようB軸回りに旋回することを前提に、
C軸の任意の旋回角度θと、前記球状回転工具における回転軸のZ軸とのなす任意の旋回角度αに対して前記球体の中心のX座標とZ座標を求める際、
前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形の頂点とが接するときの第一加工点と、前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形の辺とが接するときの第二加工点と、前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形平面とが接するときの第三加工点と、の3通りの加工点の候補の中から実際の加工に寄与すべき加工点を一つだけ抽出することで前記球体の中心のX座標とZ座標を得るようにしたことを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の多軸NC木工旋盤システムに係る発明は、上記1項において、前記三次元形状モデルは、表面が三次元曲面の多角形ポリゴンに分割された製品に対して、前記多角形ポリゴンの曲面上に頂点を持ち、頂点同士を直線で結ばれた三角形に分割したと仮定することを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の多軸NC木工旋盤システムに係る発明は、上記1項又は2項において、前記円盤型回転工具は、Z軸方向および前記Z軸に直交するX軸方向に移動可能であるとともに、円盤型回転工具の回転中心を通過し、かつXZ平面に直角なD軸回りに旋回可能であり、
前記円盤型回転工具と同じ形状を有する仮想の薄肉円盤の外周が、旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながらZ軸方向に移動するとともに、前記仮想の薄肉円盤の向きを前記三次元形状モデルの表面に対して垂直に向けることを前提に、
前記仮想の薄肉円盤の外周と前記三次元形状モデルの表面との接触点から、法線方向に向けた長さが仮想の薄肉円盤の半径の法線ベクトルを計算し、前記法線ベクトルの先端位置からZ軸に垂直な直線がXZ平面と一致するまで前記三次元形状モデルをZ軸周りに回転させた回転角γと、前記法線ベクトルのXZ平面への投影成分がX軸とのなす角度βと、C軸の任意の旋回角度θとに対して前記仮想の薄肉円盤の中心のX座標とZ座標を得るようにしたことを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の多軸NC木工旋盤システムに係る発明は、上記3項において、前記仮想の薄肉円盤は、その表面の周囲に多数の点からなる工具座標系で定義し、
前記仮想の薄肉円盤の向きを前記三次元形状モデルの表面に対して垂直に向けるために、前記角度βだけスイングさせたと仮定した時、前記工具座標系で定義した多数の点のうちの少なくとも1点が、前記三次元形状モデルの内側にあれば、前記仮想の薄肉円盤が前記三次元形状モデルに干渉したと判断し、
前記仮想の薄肉円盤の向きを角度β−90°スイングし、前記仮想の薄肉円盤の先端を前記三次元形状モデルの加工点に接触するよう位置決めすることを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の多軸NC木工旋盤システムに係る発明は、上記1項〜4項のいずれかにおいて、前記Z軸上の任意の点Zhは、製品形状の先端部を半球体に近似したときの底面の中心のZ座標であることを特徴としている。
【0015】
請求項6記載の多軸NC木工旋盤システムに係る発明は、上記1項〜5項のいずれかににおいて、前記球状回転工具は、先端が球状ないしは半球状の木工用ボールビットあるいは木工用ルータビットであることを特徴としている。
【0016】
請求項7記載の多軸NC木工旋盤システムに係る発明は、上記1項、2項又は3項において、C軸に直交する方向と平行に走行する帯鋸刃を備えるとともに、前記帯鋸刃が全体としてZ軸に平行なZ軸方向と、Z軸に直交するF方向に移動可能で、かつ、前記帯鋸刃の向きをZ軸方向に対して傾斜するように変向可能である帯鋸盤を備え、
前記帯鋸盤の帯鋸刃と同じ形状を有する仮想の帯鋸工具が、C軸の旋回角度θがゼロ度における前記三次元形状モデルに対してZ軸に平行なZ軸方向でスライスする時に、Z軸方向とZ軸に直交するF方向に移動することを前提に、
前記三次元形状モデルをZ軸方向に向けて適宜間隔でXY平面に平行な多数の仮想スライス断面を形成し、各仮想スライス断面において+F方向の最大点Fmaxと最小点Fminを計算し、前記各Fmax同士を結んだ最大部輪郭線と前記各Fmin同士を結んだ最小部輪郭線とを計算し、前記最大部輪郭線に対する最大部オフセット線と、前記最小部輪郭線に対する最小部オフセット線を計算し、前記最大部オフセット線と前記最小部オフセット線のうちの少なくとも一方を前記仮想の帯鋸工具の工具経路として得ることを特徴としている。
【0017】
請求項8記載の多軸NC木工旋盤システムに係る発明は、上記7項において、前記最大部輪郭線と前記最小部輪郭線は、前記三次元形状モデルをC軸の適宜ピッチの旋回角度θで回転させるごとに停止して計算し、最大部輪郭線と最小部輪郭線のそれぞれに対応する最大部オフセット線と最小部オフセット線を計算して得ることを特徴としている。
【0018】
請求項9記載の多軸NC木工旋盤システムに係る発明は、上記1項、2項、3項又は7項において、C軸に直交する方向と平行に走行する研磨ベルトを備えるとともに、前記研磨ベルトが全体としてZ軸に平行なZ軸方向と、Z軸に直交するF方向に移動可能で、かつ、前記研磨ベルトの向きをZ軸方向に対して傾斜するように変向可能であるベルトサンダーを備え、
前記ベルトサンダーの研磨ベルトと同じ形状を有する仮想の研磨工具が、C軸の旋回角度θがゼロ度における前記三次元形状モデルに対して研磨する時に、Z軸方向とZ軸に直交するF方向に移動することを前提に、
前記三次元形状モデルをZ軸方向に向けて適宜間隔でXY平面に平行な多数の仮想スライス断面を形成し、各仮想スライス断面において+F方向の最大点Fmaxと最小点Fminを計算し、前記各Fmax同士を結んだ最大部輪郭線と前記各Fmin同士を結んだ最小部輪郭線とを計算し、前記最大部輪郭線と前記最小部輪郭線のうちの少なくとも一方を前記仮想の研磨工具の工具経路として得ることを特徴としている。
【0019】
請求項10記載の多軸NC木工旋盤システムに係る発明は、上記9項において、前記最大部輪郭線と前記最小部輪郭線は、前記三次元形状モデルをC軸の適宜ピッチの旋回角度θで回転させるごとに停止して計算して得ることを特徴としている。
【0020】
請求項11記載の工具経路生成方法に係る発明は、円盤型回転工具を用いた三次元加工に必要な第一の工具経路生成方法と、先端が球状ないしは半球状の回転工具である球状回転工具を用いた三次元加工に必要な第二の工具経路生成方法と、を組み合わせた工具経路生成方法であって、
表面が三角形で分割されコンピュータに入力されている製品の三次元形状モデルを、多軸NC木工旋盤上での旋回角度を制御可能な旋回軸であるC軸にチャッキングしたと仮定し、
第一の工具経路生成方法は、前記円盤型回転工具と同じ形状を有する仮想の薄肉円盤の外周が、C軸回りに旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながらZ軸方向に移動することを前提に、C軸の任意の旋回角度θと前記仮想の薄肉円盤の外周の任意のZ座標に対して前記仮想の薄肉円盤の回転中心のX座標を求めて工具経路を生成し、
第二の工具経路生成方法は、前記球状回転工具と同じ直径の球体の先端形状を有する仮想の球体の表面が、C軸回りに旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながら、球状回転工具の回転軸がZ軸上の任意の点Zhに常に向いたままXZ平面内を移動しかつXZ平面に直交するB軸回りに旋回することを前提に前記球体の中心のX座標とZ座標を求めるために、C軸の任意の旋回角度θと、前記球状回転工具における回転軸のZ軸とのなす任意の旋回角度αとした場合に、
前記三次元形状モデルと前記球状回転工具の両方を同時に、XZ平面に直角で前記Zhを通る直線回りに前記旋回角度αと同じ旋回角度だけ逆方向に旋回して回転座標変換することで前記球状回転工具の回転軸をZ軸に一致した状態とし、
前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形の頂点とが接するときの前記球体の中心のZ座標群と、前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形の辺とが接するときの前記球体の中心のZ座標群と、前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形平面とが接するときの前記球体の中心のZ座標群と、からなる全部のZ座標群のうちで、点Z=Zhから前記三次元形状モデルの外側に位置する+Z方向へ最も遠いZ座標を採用し、この採用したZ座標を、XZ平面に直角で前記Zhを通る直線回りに前記旋回角度αだけ正方向に旋回して回転座標変換して得られるX座標とZ座標とを工具経路にすることを特徴としている。
【0021】
請求項12記載の工具経路生成方法に係る発明は、上記11項において、前記三次元形状モデルは、表面が三次元曲面の多角形ポリゴンに分割された製品に対して、前記多角形ポリゴンの曲面上に頂点を持ち、頂点同士を直線で結ばれた三角形に分割したと仮定することを特徴としている。
【0022】
請求項13記載の工具経路生成方法に係る発明は、上記11項又は12項において、前記第一の工具経路生成方法としては、前記円盤型回転工具と同じ形状を有する仮想の薄肉円盤の外周が、C軸周りに旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながらZ軸方向に移動するとともに、前記仮想の薄肉円盤の向きを前記三次元形状モデルの表面に対して垂直に向けることを前提に、
前記仮想の薄肉円盤の外周と前記三次元形状モデルの表面との接触点から、法線方向に向けた長さが仮想の薄肉円盤の半径の法線ベクトルを計算し、前記法線ベクトルの先端位置からZ軸に垂直な直線がXZ平面と一致するまで前記三次元形状モデルをZ軸周りに回転させた回転角γと、前記法線ベクトルのXZ平面への投影成分がX軸とのなす角度βと、C軸の任意の旋回角度θとに対して前記仮想の薄肉円盤の中心のX座標とZ座標を得るようにしたことを特徴としている。
【0023】
請求項14記載の工具経路生成方法に係る発明は、上記13項において、前記仮想の薄肉円盤は、その表面の周囲に多数の点からなる工具座標系で定義し、
前記仮想の薄肉円盤の向きを前記三次元形状モデルの表面に対して垂直に向けるために、前記角度βだけスイングさせたと仮定した時、前記工具座標系で定義した多数の点のうちの少なくとも1点が、前記三次元形状モデルの内側にあれば、前記仮想の薄肉円盤が前記三次元形状モデルに干渉したと判断し、
前記仮想の薄肉円盤の向きを角度β−90°スイングし、前記仮想の薄肉円盤の先端を前記三次元形状モデルの加工点に接触するよう位置決めすることを特徴としている。
【0024】
請求項15記載の工具経路生成方法に係る発明は、上記11項〜14項のいずれかにおいて、C軸に直交する方向と平行に走行する帯鋸刃を備えるとともに、前記帯鋸刃が全体としてZ軸に平行なZ軸方向と、Z軸に直交するF方向に移動可能で、かつ、前記帯鋸刃の向きをZ軸方向に対して傾斜するように変向可能である帯鋸盤を用いた三次元加工に必要な第三の工具経路生成方法を加え、
前記第三の工具経路生成方法としては、前記帯鋸盤の帯鋸刃と同じ形状を有する仮想の帯鋸工具が、C軸の旋回角度θがゼロ度における前記三次元形状モデルに対してZ軸に平行なZ軸方向でスライスする時に、Z軸方向とZ軸に直交するF方向に移動することを前提に、
前記三次元形状モデルをZ軸方向に向けて適宜間隔でXY平面に平行な多数の仮想スライス断面を形成し、各仮想スライス断面において+F方向の最大点Fmaxと最小点Fminを計算し、前記各Fmax同士を結んだ最大部輪郭線と前記各Fmin同士を結んだ最小部輪郭線とを計算し、前記最大部輪郭線に対する最大部オフセット線と、前記最小部輪郭線に対する最小部オフセット線を計算し、前記最大部オフセット線と前記最小部オフセット線のうちの少なくとも一方を前記仮想の帯鋸工具の工具経路を生成することを特徴としている。
【0025】
請求項16記載の工具経路生成方法に係る発明は、上記11項〜15項のいずれかにおいて、C軸に直交する方向と平行に旋回走行する研磨ベルトを備えるとともに、前記研磨ベルトが全体としてZ軸に平行なZ軸方向と、Z軸に直交するF方向に移動可能で、かつ、前記研磨ベルトの向きをZ軸方向に対して傾斜するように変向可能であるベルトサンダーを用いた三次元加工に必要な第四の工具経路生成方法を加え、
前記第四の工具経路生成方法としては、前記ベルトサンダーの研磨ベルトと同じ形状を有する仮想の研磨工具が、C軸の旋回角度θがゼロ度における前記三次元形状モデルに対して研磨する時に、Z軸方向とZ軸に直交するF方向に移動することを前提に、
前記三次元形状モデルをZ軸方向に向けて適宜間隔でXY平面に平行な多数の仮想スライス断面を形成し、各仮想スライス断面において+F方向の最大点Fmaxと最小点Fminを計算し、前記各Fmax同士を結んだ最大部輪郭線と前記各Fmin同士を結んだ最小部輪郭線とを計算し、前記最大部輪郭線と前記最小部輪郭線のうちの少なくとも一方を前記仮想の研磨工具の工具経路を生成することを特徴としている。
【0026】
請求項17記載の工具経路生成プログラムに係る発明は、表面が三角形で分割されコンピュータに入力されている製品の三次元形状モデルを、多軸NC木工旋盤上での旋回角度を制御可能な旋回軸であるC軸にチャッキングしたと仮定し、円盤型回転工具を用いた三次元加工に必要な第一の工具経路生成プログラムと、先端が球状ないしは半球状の回転工具である球状回転工具を用いた三次元加工に必要な第二の工具経路生成プログラムと、を組み合わせた工具経路生成プログラムであって、該第一及び第二の工具経路生成プログラムは以下のように構成されている。
第一の工具経路生成プログラムは、前記円盤型回転工具と同じ形状を有する仮想の薄肉円盤の外周が、C軸回りに旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながらZ軸方向に移動することを前提に、C軸の任意の旋回角度θと前記仮想の薄肉円盤の外周の任意のZ座標に対し、前記仮想の薄肉円盤の回転中心のX座標を求めることにより、前記円盤型回転工具の工具経路とする。
第二の工具経路生成プログラムは、前記球状回転工具と同じ直径の球体の先端形状を有する仮想の球体の表面が、C軸回りに旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながら、球状回転工具の回転軸がZ軸上の任意の点Zhに常に向いたままXZ平面内を移動しかつXZ平面に直交する旋回することを前提に前記球体の中心のX座標とZ座標を求めるために、C軸の任意の旋回角度θと前記球状回転工具における回転軸のZ軸とのなす任意の旋回角度αとした場合、前記三次元形状モデルと前記球状回転工具の両方を同時に、XZ平面に直角で前記Zhを通る直線回りに前記旋回角度αと同じ旋回角度だけ逆方向に旋回して回転座標変換することで前記球状回転工具の回転軸をZ軸に一致した状態にし、
前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形の頂点とが接するときの前記球体の中心のZ座標群と、前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形の辺とが接するときの前記球体の中心のZ座標群と、前記球体の表面と前記三次元形状モデルを構成する三角形平面とが接するときの前記球体の中心のZ座標群と、からなる全部のZ座標群のうちで、点Z=Zhから前記三次元形状モデルの外側に位置する+Z方向へ最も遠いZ座標を採用し、
この採用したZ座標を、XZ平面に直角で前記Zhを通る直線回りに前記旋回角度αだけ正方向に旋回して回転座標変換して得られるX座標とZ座標とを、前記球状回転工具の工具経路とすることを特徴とする。
【0027】
請求項18記載の工具経路生成プログラムに係る発明は、上記17項において、前記三次元形状モデルは、表面が三次元曲面の多角形ポリゴンに分割された製品に対して、前記多角ポリゴンの曲面上に頂点を持ち、頂点同士を直線で結ばれた三角形に分割したと仮定することを特徴としている。
【0028】
請求項19記載の工具経路生成プログラムに係る発明は、上記17項又は18項において、前記第一の工具経路生成プログラムは、前記円盤型回転工具と同じ形状を有する仮想の薄肉円盤の外周が、C軸周りに旋回中の前記三次元形状モデルに対して接した状態を維持しながらZ軸方向に移動するとともに、前記仮想の薄肉円盤の向きを前記三次元形状モデルの表面に対して垂直に向けることを前提に、
前記仮想の薄肉円盤の外周と前記三次元形状モデルの表面との接触点から、法線方向に向けた長さが仮想の薄肉円盤の半径の法線ベクトルを計算し、前記法線ベクトルの先端位置からZ軸に垂直な直線がXZ平面と一致するまで前記三次元形状モデルをZ軸周りに回転させた回転角γと、前記法線ベクトルのXZ平面への投影成分がX軸とのなす角度βと、C軸の任意の旋回角度θとに対して前記仮想の薄肉円盤の中心のX座標とZ座標を得るようにしたことを特徴としている。
【0029】
請求項20記載の工具経路生成プログラムに係る発明は、上記19項において、前記仮想の薄肉円盤は、その表面の周囲に多数の点からなる工具座標系で定義し、
前記仮想の薄肉円盤の向きを前記三次元形状モデルの表面に対して垂直に向けるために、前記角度βだけスイングさせたと仮定した時、前記工具座標系で定義した多数の点のうちの少なくとも1点が、前記三次元形状モデルの内側にあれば、前記仮想の薄肉円盤が前記三次元形状モデルに干渉したと判断し、
前記仮想の薄肉円盤の向きを角度β−90°スイングし、前記仮想の薄肉円盤の先端を前記三次元形状モデルの加工点に接触するよう位置決めすることを特徴としている。
【0030】
請求項21記載の工具経路生成プログラムに係る発明は、上記17項〜20項のいずれかにおいて、C軸に直交する方向と平行に走行する帯鋸刃を備えるとともに、前記帯鋸刃が全体としてZ軸に平行なZ軸方向と、Z軸に直交するF方向に移動可能で、かつ、前記帯鋸刃の向きをZ軸方向に対して傾斜するように変向可能である帯鋸盤を用いた三次元加工に必要な第三の工具経路生成プログラムを加え、
前記第三の工具経路生成プログラムは、前記帯鋸盤の帯鋸刃と同じ形状を有する仮想の帯鋸工具が、C軸の旋回角度θがゼロ度における前記三次元形状モデルに対してZ軸に平行なZ軸方向でスライスする時に、Z軸方向とZ軸に直交するF方向に移動することを前提に、
前記三次元形状モデルをZ軸方向に向けて適宜間隔でXY平面に平行な多数の仮想スライス断面を形成し、各仮想スライス断面において+F方向の最大点Fmaxと最小点Fminを計算し、前記各Fmax同士を結んだ最大部輪郭線と前記各Fmin同士を結んだ最小部輪郭線とを計算し、前記最大部輪郭線に対する最大部オフセット線と、前記最小部輪郭線に対する最小部オフセット線を計算し、前記最大部オフセット線と前記最小部オフセット線のうちの少なくとも一方を前記仮想の帯鋸工具の工具経路にすることを特徴としている。
【0031】
請求項22記載の工具経路生成プログラムに係る発明は、上記17項〜21項のいずれかにおいて、C軸に直交する方向と平行に走行する研磨ベルトを備えるとともに、前記研磨ベルトが全体としてZ軸に平行なZ軸方向と、Z軸に直交するF方向に移動可能で、かつ、前記研磨ベルトの向きをZ軸方向に対して傾斜するように変向可能であるベルトサンダーを用いた三次元加工に必要な第四の工具経路生成プログラムを加え、
前記第四の工具経路生成プログラムとしては、前記ベルトサンダーの研磨ベルトと同じ形状を有する仮想の研磨工具が、C軸の旋回角度θがゼロ度における前記三次元形状モデルに対して研磨する時に、Z軸方向とZ軸に直交するF方向に移動することを前提に、
前記三次元形状モデルをZ軸方向に向けて適宜間隔でXY平面に平行な多数の仮想スライス断面を形成し、各仮想スライス断面において+F方向の最大点Fmaxと最小点Fminを計算し、前記各Fmax同士を結んだ最大部輪郭線と前記各Fmin同士を結んだ最小部輪郭線とを計算し、前記最大部輪郭線と前記最小部輪郭線のうちの少なくとも一方を前記仮想の研磨工具の工具経路を生成することを特徴としている。
【0032】
請求項22記載の発明の記録媒体は、請求項17〜21のいずれかに記載の工具経路生成プログラムを記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、製品の三次元形状モデルに接する仮想の薄肉円盤による工具経路を生成しておき、次いで、前記三次元形状モデルの先端から側面に対して接する仮想の球体の工具経路も生成しておくことで、以下の効果を奏する。
前記仮想の薄肉円板による工具経路に基づいて円盤型切削工具で一度の送り動作だけによる粗加工を先ず行い、その後、材料を取り外すことなく直ちに前記仮想の球体による工具経路に基づいて球状回転工具で微細な凹凸の加工を行うことができる。その結果、粗加工から微細加工までの一連の工程を、1台の加工機の上で連続して加工することが可能になるので、結果的に微細な三次元の旋盤加工を短時間で且つ精度良く行うことが可能となる。これにより、複雑で高価なハードウエアやソフトウエアを必要とせずに安価で、しかも微細な凹凸加工も含め、全体的に短時間で効率の良い三次元加工を行うことを可能ならしめている。
【0034】
三次元形状モデルは、表面が三角形で分割された三次元形状の製品の三次元形状モデルであっても、あるいは表面が三次元曲面の多角形ポリゴンに分割された製品の三次元形状モデルであっても適用できる。
【0035】
また、円盤型回転工具が三次元形状モデルの表面に対して法線方向に向けるように制御することで、加工面の粗さが小さくなり、研磨面に相当する加工面が得られる。さらに、円盤型回転工具が三次元形状モデルに干渉しないように接線方向に向くようにスイングできるので、加工面の粗さが小さくなり、研磨面に相当する加工面が得られる。その結果、研磨工程の時間短縮を図ることができる。
【0036】
また、C軸に直交する方向と平行に走行する帯鋸刃を有する帯鋸盤が、さらに備えられることで、木工材料の外形と三次元形状の輪郭との間の削り代を、少ないエネルギーで、かつ、短時間で切り落とすことができる。
【0037】
また、C軸に直交する方向と平行に走行する研磨ベルトを有するベルトサンダーをさらに備えることで、円盤型回転工具や球状回転工具によって木工材料から三次元形状を削り出した後に、前記三次元形状の輪郭に対して研磨ベルトにて自動的に研磨する。その結果、研磨工程の時間短縮と省力化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態に係る多軸NC木工旋盤システムについて図面を参照して説明する。
図1は、多軸NC木工旋盤システムに用いる4軸NC木工旋盤の概略的な構成を示す斜視図である。
【0040】
本実施形態の多軸NC木工旋盤システム1は、4軸NC木工旋盤10のベースプレート上に、
図1に示すように、木工材料Wをチャッキングして旋回するためのチャック11と、木工材料Wを切削するための円盤型回転工具20および球状回転工具31を備える。すなわち、円盤型回転工具20と球状回転工具31は、同じステージ上に備えられている。
【0041】
前記チャック11は、木工材料Wをチャッキングして旋回角度を制御可能な旋回軸であるC軸を備えている。
【0042】
円盤型回転工具20は、外周に鋸刃23を備えた円盤型の回転工具であり、本実施形態ではチップソーを使用している。また、前記C軸回りに旋回する木工材料Wを切削するために、円盤型回転工具20は、C軸の延長線上にあるZ軸方向および前記Z軸に直交するX軸方向に移動可能に構成されている。なお、本実施形態では、X軸はベースプレートの面にほぼ平行である。
【0043】
球状回転工具31は、先端が球状ないしは半球状のカッタを備えた球状型の回転工具である。また、前記C軸回りに旋回する木工材料Wを切削するために、Z軸方向およびX軸方向に移動可能で、かつXZ平面に直交するB軸回りに旋回可能に構成されている。球状回転工具31は、本実施形態では、先端が球状の木工用ボールビットを使用しているが、先端が半球状の木工用ルータビットあるいは他の形態であってもよい。
【0044】
本実施形態では、B軸は、
図1に示すようにXZ平面に直交するY軸方向であり、機械的な回転機構によって支持された回転軸である。
【0045】
本実施形態では、C軸にチャッキングして旋回中の木工材料Wに対して、上記の円盤型回転工具20および球状回転工具31を用いて三次元形状の製品に切削加工する。そのために、予め円盤型回転工具20の工具経路および球状回転工具31の工具経路を生成し、コンピュータにプログラミングしておく。
【0046】
本実施形態の工具経路生成方法は、円盤型回転工具20を用いた三次元加工に必要な第一の工具経路生成方法と、球状回転工具31を用いた三次元加工に必要な第二の工具経路生成方法と、を組み合わせたものである。
【0047】
まず、製品の三次元形状の表面が三角形で分割された三次元形状モデル2をコンピュータに入力する。本実施形態では、三次元形状モデル2としてSTLファイル形式の3Dモデルを使用する。次いで、コンピュータに入力されている製品の三次元形状モデル2を、4軸NC木工旋盤10のC軸にチャッキングしたと仮定する。なお、このときの三次元形状モデル2は、
図2(a)に示すように例えば人形の鼻や耳などの突起部を有している。
【0048】
第一の工具経路生成方法、すなわち円盤型回転工具20の工具経路生成方法について図面を参照して説明する。
図2(a)は、三次元形状モデル2が仮想的にC軸にチャッキングされている状態と、円盤型回転工具20と同じ形状を有する仮想の薄肉円盤21を示している。
図2(a)における仮想の薄肉円盤21は、円盤型回転工具20の厚みと直径が同一な薄肉の円盤としている。
【0049】
第一の工具経路生成方法において、円盤型回転工具20の工具経路を求めるには、まず、仮想の薄肉円盤21のチャック11側の側面が三次元形状モデル2の
図2(a)において左側先端のZ座標上にある。さらに、仮想の薄肉円盤21の外周面がC軸の延長線上にあるZ軸に接する位置にある。この状態を開始点として、旋回中の三次元形状モデル2に対して接した状態を維持しながら、
図2(a)において右斜め上方の−Z軸方向に移動する。
【0050】
仮想の薄肉円盤21と三次元形状モデル2との接触点の軌跡は、仮想の三次元形状モデル2の表面にスパイラル状に描かれる。そのとき、仮想の薄肉円盤21は三次元形状モデル2の凹凸によってX軸方向に移動する。この移動動作において、C軸の任意の旋回角度θと仮想の薄肉円盤21の外周の任意のZ座標に応じて仮想の薄肉円盤21の回転中心のX座標を求めることで、円盤型回転工具20の工具経路となる。
【0051】
より詳しく説明すると、
図3は、仮想の薄肉円盤21と、その両側面を含む平面の間にある仮想の薄肉円盤21の空間領域22に位置する三次元形状モデル2の表面の三角形との幾何学的位置関係を示している。本来、仮想の薄肉円盤21と接触する候補としては、仮想の薄肉円盤21の空間領域22に存在する三角形すべてを図示する必要があるが、説明を分かりやすくするために任意の隣り合う二つの三角形を想定する。
【0052】
一般に、
図4に示すように、X軸と、XZ平面と直交するY軸でなすXY平面内において、X軸上に中心を持つ半径Rcの円のうち任意の点Aを通る円の中心のX座標は、点Aを中心とする半径Rcの円とX軸との交点として求められる。この考え方で、
図2(a)において左斜め下側からチャック11側を視た
図2(b)で示すように、三次元形状モデル2の表面と仮想の薄肉円盤21との接触点Aに対する仮想の薄肉円盤21の中心のX座標を求めることができる。
【0053】
上記の手法によって、C軸回りに旋回する三次元形状モデル2に対して接しているときの仮想の薄肉円盤21の中心のX座標を求めることで、円盤型回転工具20の工具経路を得る。
【0054】
図3において左側の側面21aを含む平面である第一の平面22aと三角形の辺との交点C1,C2,C5を中心として仮想の薄肉円盤21の半径と同じ半径の円を第一の平面22a上に描く。これらの円がX軸と交わる交点のうち、旋回軸のC軸から最も遠い交点のX座標を第一の工具中心のX座標とする。
【0055】
次に、
図3において右側の側面21bを含む平面である第二の平面22bと三角形の辺との交点C3,C4,C6を中心として仮想の薄肉円盤21の半径と同じ半径の円を第二の平面22b上に描く。これらの円がX軸と交わる交点のうち、旋回軸のC軸から最も遠い交点のX座標を第二の工具中心のX座標とする。
【0056】
さらに、
図3において三角形の頂点に関し、仮想の薄肉円盤21と接する可能性のある頂点は、第一の平面22aと第二の平面22bの間にある仮想の薄肉円盤21の空間領域22に位置する頂点P2,P4である。そこで、頂点P2,P4を中心として仮想の薄肉円盤21の半径と同じ半径の円を第一の平面22aおよび第二の平面22bと平行に描く。これらの円がX軸と交わる交点のうち、旋回軸のC軸から最も遠い交点のX座標を第三の工具中心のX座標とする。
【0057】
以上のようにして求めた第一の工具中心,第二の工具中心,第三の工具中心の各X座標のうち、旋回軸のC軸から最も遠い交点のX座標が、求める仮想の薄肉円盤21の中心のX座標であり、円盤型回転工具20の工具経路となる。
【0058】
上記の仮想の薄肉円盤21の工具経路の計算は、三次元形状モデル2の先端から加工終端にわたって、旋回角θごとに、またZ軸方向の送り毎に行い、仮想の薄肉円盤21の外周が三次元形状モデル2に外接するときの仮想の薄肉円盤21の中心のX座標を求める。その結果をGコードとともにコンピュータに保存することで、円盤型回転工具20の工具経路を得る。
【0059】
次に、第二の工具経路生成方法、すなわち球状回転工具31の工具経路生成方法について図面を参照して説明する。
図2(a)では、球状回転工具31の先端の球体と同じ直径の仮想の球体32を示している。仮想の球体32は、球状回転工具31の回転軸と同じ軸心を有する。
【0060】
第二の工具経路生成方法において、球状回転工具31の工具経路を求めるには、まず、仮想の球体32の表面が、三次元形状モデル2の
図2(a)において左側先端のZ座標上にある。さらに、球状回転工具31の軸心がZ軸に一致する。この状態を開始点として、旋回中の三次元形状モデル2に対して接した状態を維持しながら、Z軸上の任意の点Zhに常に向くように維持しながら、XZ平面内を移動しかつXZ平面に直交するB軸回りに旋回する。さらに、
図2(a)において−Z軸方向に移動する。
【0061】
仮想の球体32と三次元形状モデル2との接触点の軌跡は、三次元形状モデル2の表面にスパイラル状に描かれる。そのとき、上記のように球状回転工具31がB軸回りに旋回(スイング)しながら三次元形状モデル2の凹凸に応じて移動する。この移動動作において、C軸の任意の旋回角度θと、球状回転工具31の回転軸のZ軸に対する任意の旋回角度αに対して仮想の球体32の中心のX座標とZ座標を求めることで、球状回転工具31の工具経路となる。
【0062】
加工中の動作のイメージは、
図5(a)に示すように、木工材料WがC軸回りに旋回中に、先端半径r
bの球体32を有する球状回転工具31がZ軸上の任意の点Zhを向きながらB軸回りに旋回(スイング)する。例えば、旋回角度αは0〜90°の範囲とする。このとき、球状回転工具31は、仮想の三次元形状モデル2の表面の凹凸に応じて、X軸方向とZ軸方向との合成によるr方向へ往復運動を繰り返す。
図5(a)において左方向の−Z軸方向へ平行移動しながら三次元形状モデル2の表面の凹凸を加工する動作となる。
なお、Z軸上の任意の点Zhは、
図5(a)に示すように、製品形状の先端部を半球体に近似したときの底面の中心のZ座標である。製品形状の後端部は前記の先端部の半球体に連なる円筒体となる。
【0063】
上記の加工動作を前提とするCAMソフトウエアの計算方式は、C軸回りに旋回角度θだけ旋回した仮想の三次元形状モデル2に対して、球状回転工具31がB軸回りに旋回角度αだけ旋回した状態におけるr方向の距離Zcを求める。この計算を繰り返すこととなる。このとき、球状回転工具31の仮想の球体32の中心座標を簡単に求めるために座標変換を用いる。
【0064】
すなわち、三次元形状モデル2をC軸回りに前記旋回角度θと同じ旋回角度だけ回転変換する。さらに、三次元形状モデル2と球状回転工具31を同時に、Z軸上で−Zhだけ平行移動し、Y軸回りに前記旋回角度αと同じ旋回角度だけ逆方向に旋回して回転変換する。
その結果、
図5(b)に示すように、三次元形状モデル2の表面の三角形と接する位置を単にZ軸上に中心を持つ半径r
bの仮想の球体32の中心位置を求める状態に簡略化することができる。
【0065】
図6は、三次元形状モデル2と、球状回転工具31の回転軸を、前記回転軸がZ軸上に一致するよう回転変換した状態を示し、仮想の球体32と、その半径r
bの外周円をZ軸方向に延長した円筒内の空間領域33と、この空間領域33内に位置する三次元形状モデル2の表面の三角形との幾何学的位置関係を示している。仮想の球体32と接触する候補としては、前記空間領域33内に存在する三角形である。これらの三角形に対して、仮想の球体32の表面が接触すると考えられる全部の候補を抽出し、それらの候補の中から実際に加工に寄与すべき加工点を一つだけ選ぶ。
【0066】
考えられる全部の候補としては、該当する各三角形において、仮想の球体32の表面と、三次元形状モデル2を構成する三角形の頂点とが接するときの第一加工点を抽出する。次に、仮想の球体32の表面と、三次元形状モデル2を構成する三角形の辺とが接するときの第二加工点を抽出する。さらに、仮想の球体32の表面と、三次元形状モデル2を構成する三角形平面とが接するときの第三加工点を抽出する。
【0067】
以上のようにして求めた全部の三角形の3通りの第一の加工点,第二の加工点,第三の加工点の候補の中から実際の加工に寄与すべき加工点を一つだけ抽出することで、仮想の球体32の中心のX座標とZ座標を得る。
【0068】
次に、上記の第一の加工点,第二の加工点,第三の加工点における仮想の球体32の中心のX座標とZ座標を得るための基礎方程式による計算方法を説明する。
【0069】
まず、
図5(a)に基づいて、本実施形態における座標系の定義を説明する。
チャック11によってC軸回りに旋回する三次元形状モデル2の回転軸をZ軸とし、チャック11から遠のく方向を+Zとする。Z軸およびZ軸に直交するX軸でなすXZ平面において仮想の薄肉円盤21が遠のく方向を+Xとする。XZ平面に垂直な軸をY軸とし、+Z軸から+X軸へと右ねじを回した時にねじが進む方向を+Yとする。すなわち、
図5(a)における紙面上のX軸とZ軸の交点に直交するY軸において紙面の手前側が+Yとなる。また、Z軸と球状回転工具31の回転軸rとのなす旋回角度をαとする。三次元形状モデル2のC軸回りの旋回角度をθとし、三次元形状モデル2をチャック11に向かって右回りに旋回する方向を+θとする。
【0070】
上記の第一の加工点における仮想の球体32の中心座標を求める計算方法を説明する。すなわち、Z軸上に中心を持つ仮想の球体32の表面と、三次元形状モデル2を構成する三角形の頂点とが接するときの前記球体32の中心座標である。
三角形の頂点は、
図7に示すように、空間における任意の点P(x
p,y
p,z
p)とする。球体32の半径はr
bとする。球体32の中心のZ座標Z
Cは、式(1)で求められる。
【数1】
【0071】
上記の第二の加工点における仮想の球体32の中心座標を求める計算方法を説明する。すなわち、Z軸上に中心を持つ仮想の球体32の表面と、三次元形状モデル2を構成する三角形の辺とが接するときの前記球体32の中心座標である。
三角形の辺は、
図8に示すように、点A(x
1,y
1,z
1)を通り、方向余弦が(l,m,n)の直線gとする。球体32の半径はr
bとする。球体32の中心のZ座標Z
Cは、式(2)で求められる。
【数2】
【0072】
上記の第三の加工点における仮想の球体32の中心座標を求める計算方法を説明する。すなわち、Z軸上に中心を持つ仮想の球体32の表面と、三次元形状モデル2を構成する三角形平面とが接するときの前記球体32の中心座標である。
三角形平面は、
図9に示すように、点P
1(x
1,y
1,z
1),点P
2(x
2,y
2,z
2),点P
3(x
3,y
3,z
3),を通る平面πとする。球体32の半径はr
bとする。球体32の中心のZ座標Z
Cは、式(3)で求められる。
【数3】
【0073】
以上のような式(1)、式(2)、式(3)では、±の2通りの解(Z
C1,Z
C2)が得られる。例えば、
図7では、頂点Pに接する2つの球体32,32の解が得られる。
図8では、直線g上の点P
0と点Q
0に接する2つの球体32,32の解が得られる。
図9では、三角形平面πの点Q
1と点Q
2に接する2つの球体32,32の解が得られる。しかし、実際にはいずれか一方だけを採用する。
【0074】
したがって、第一の加工点としては、仮想の球体32の表面と、三次元形状モデル2を構成する三角形の頂点とが接するときの前記球体32の中心のZ座標群が得られる。また、第二の加工点としては、仮想の球体32の表面と、三次元形状モデル2を構成する三角形の辺とが接するときの前記球体32の中心のZ座標群が得られる。さらに、第三の加工点としては、仮想の球体32の表面と、三次元形状モデル2を構成する三角形平面とが接するときの前記球体32の中心のZ座標
群が得られる。
これらの全部のZ座標群のうちで、Z=Zhから最も遠いZ座標を球状回転工具31のZ軸上における工具経路として採用する。
この採用したZ軸上のZ座標は、点Z=Zh回りに前記旋回角度αだけ正方向に旋回して回転座標変換することでX座標とZ座標が得られ、球状回転工具31の工具経路となる。
【0075】
上記の球状回転工具31の工具経路の計算は、三次元形状モデル2の先端から加工終端にわたって、旋回角θごとに、またZ軸方向の送り毎に行われ、仮想の球体32の表面が三次元形状モデル2に外接するときの仮想の球体32の中心のX座標とZ座標を求める。その結果をGコードとともにコンピュータに保存することで、球状回転工具31の工具経路を得る。
【0076】
以上説明したように、本発明の実施形態の多軸NC木工旋盤システム1は、C軸にチャッキングして旋回中の、表面が三角形で分割されコンピュータに入力した製品の三次元形状モデル2に接する仮想の薄肉円盤21によって、予め円盤型回転工具20の工具経路を生成することができる。この工具経路によって、実際の円盤型回転工具20にて、木工材料Wから三次元形状の製品を時間的に効率よく一度の送り動作内で粗切削加工することができる。
【0077】
次いで、前記の三次元形状モデル2に接する仮想の球体32によって、予め球状回転工具31の工具経路を生成することができる。この工具経路によって、材料を取り外さず直ちに、円盤型回転工具20と同じステージ上にある実際の球状回転工具31を用いて、前記の三次元形状の製品における微細部分を短い時間で効率よく切削加工することができる。
なお、球状回転工具31は、円盤型回転工具20と同じステージ上に設けたとしても、単にX軸方向とZ軸方向に移動するだけであれば、微細な凹凸加工を行うことができないが、本実施形態では球状回転工具31をB軸回りに旋回(スイング)させるようにしていることから、材料の端面から側面に至る方向まで、連続的に微細な凹凸加工を効果的に行うことが可能になっている。
【0078】
以上説明したように、本実施形態によれば、複雑で高価なハードウエアやソフトウエアを必要とせずに安価で、しかも微細な凹凸加工も含め、短時間で効率よく旋盤による三次元加工を行うことが可能となっている。
【0079】
前述の実施形態の多軸NC木工旋盤システム1では、三次元形状モデル2は、表面が三角形で分割された三次元形状の製品を用いて説明した。その一例として、STLファイル形式の3Dモデルを使用した。しかし、三次元形状モデル2は、これに限定されず、例えば、表面が三次元曲面の多角形ポリゴンに分割された製品の三次元形状モデル2にも適用される。すなわち、表面が全体または部分的に曲面の関数で表される製品の三次元形状モデル2である。例えば、自動車や金型などのように、一般的なCAMソフトで用いられているNURBSなどの自由曲面の関数表現形式も包括することができる。
【0080】
この場合の三次元形状モデル2の表面は、前記多角形ポリゴンの曲面上の頂点同士を直線で結ばれた三角形に分割したと仮定することができる。例えば、
図10(a)に示すように、三次元形状モデル2の任意のZ座標において、チップソー20(円盤型回転工具)の両側面の延長上でスライスすると仮定すると、
図10(b)に示すようなスライス片2aが取り出される。このスライス片2aの三次元曲面の表面は、三次元曲面の多角形ポリゴンに分割される。各多角形ポリゴンは曲面上に頂点を持っているので、隣り合う多角形ポリゴンの頂点同士を直線で結ぶと、
図10(c)に示すように、表面を三角形に分割したと仮定することができる。すなわち、前述の実施形態のように、表面が三角形で分割された製品の三次元形状モデル2と同様の形態となる。
したがって、表面が三次元曲面の多角形ポリゴンに分割された製品の三次元形状モデル2に対しても、上記の分割された三角形に対して、前述の実施形態と同様に加工点を得ることができる。
【0081】
この場合の三次元形状モデル2の表面は、前記多角形ポリゴンの曲面上の頂点同士を直線で結ばれた三角形に分割したと仮定することができる。例えば、
図10(a)に示すように、三次元形状モデル2の任意のZ座標において、チップソー20(円盤型回転工具)の両側面の延長上でスライスすると仮定すると、
図10(b)に示すようなスライス片2aが取り出される。このスライス片2aの三次元曲面の表面は、全体が一つの関数で表されている曲面の場合もあり、あるいは部分的に関数で表現された多角形ポリゴンの場合もある。曲面上に頂点を持ち、前記頂点同士を直線で結ぶと、曲面は
図10(c)に示すように、表面を三角形に分割したと仮定することができる。すなわち、前述の実施形態のように、表面が三角形で分割された製品の三次元形状モデル2と同様の形態となる。ただし、三角形平面と三次元モデル2を表現する曲面の関数との偏差は実用上問題にならない程度に存在すると仮定する。
したがって、表面が三次元曲面の多角形ポリゴンに分割された製品の三次元形状モデル2に対しても、上記の分割された三角形に対して、前述の実施形態と同様に加工点を得ることができる。
【0082】
次に、前述の実施形態の多軸NC木工旋盤システム1に、さらに追加可能な加工システムについて説明する。
円盤型回転工具20は、外周の鋸刃23が常に旋回中の三次元形状モデル2に接した状態を維持しながらZ軸方向に移動するが、これに新たな機能を備える。すなわち、円盤型回転工具20が三次元形状モデル2の表面に対して垂直方向、つまり法線方向に向けるように制御される。
円盤型回転工具20は、
図10(a),
図11及び
図12において、Z軸方向およびZ軸に直交するX軸方向に移動可能である。さらに、円盤型回転工具20の回転中心を通過し、かつ、XZ平面に垂直なD軸回りに旋回可能である。
【0083】
上記の円盤型回転工具20の工具経路を得るには、仮想の薄肉円盤21の外周が、旋回中の三次元形状モデル2に対して接した状態を維持しながらZ軸方向に移動するとともに、仮想の薄肉円盤21の向きを三次元形状モデル2の表面に対して垂直(法線方向)に向けることを前提とする。
図12、
図13及び
図14に示すように、任意のZ座標Ziと、C軸の旋回角度θiにおいて、XZ平面内のZ軸に垂直でX軸と平行な直線と、三次元形状モデル2の表面との交点をP(Xi,θi,Zi)とする。交点Pは仮想の薄肉円盤21の外周が三次元形状モデル2の表面に対して垂直に接触する予定の点である。
交点Pから法線方向に向けて、長さが仮想の薄肉円盤21の半径Rcの法線ベクトルPOcを計算する。法線ベクトルPOcの先端位置OcからZ軸におろした垂線の足(つまりZ軸との交点)をHとし、HOcの長さをXcとする。このとき、HOcがXZ平面と一致するまで三次元形状モデル2をZ軸周りに回転させた回転角をγとする。このときの法線ベクトルPOcのXZ平面への投影成分POc’がX軸とのなす角度をβとし、仮想の薄肉円盤21の中心のX座標がXcとなる。
【0084】
したがって、交点P(Xi,θi,Zi)に対して、法線方向から仮想の薄肉円盤21によって加工するために必要な、仮想の薄肉円盤21の中心位置のX座標Xcと、X軸とのなす角度βと、三次元形状モデル2の回転角度γを得ることができる。
なお、仮想の薄肉円盤21の中心21cのZ座標Zcは、ベクトルHOcと角度γから回転の座標変換により計算することができる。
【0085】
上記の交点Pにおける法線ベクトルは、三次元形状モデル2の形状がNURBSなどの自由曲面の関数で表されているとき、例えば参考文献1〔樋野、社本、森脇:直接オフセット法による工具経路生成(第1報)、精密工学会、Vol.69、No.6、2003〕の方法によって、交点Pの座標値から得ることができる。
【0086】
なお、この実施形態の円盤型回転工具20では、三次元形状モデル2が、表面が三角形で分割された三次元形状の製品の場合でも、あるいは、表面が三次元曲面の多角形ポリゴンに分割された製品の場合も、前述の実施形態と同様に、表面が分割された三角形に対して加工点を求めることができる。
【0087】
以上のことから、例えば、三次元形状モデル2の回転角度をΔθとし、三次元形状モデル2の一回転当たりの交点Pの−Z方向の移動量をΔZとすると、三次元形状モデル2の表面とX軸との交点Pは、
図12に示すように螺旋状に決まる。この螺旋状の加工点に対して円盤型回転工具20がスイングしながら常に法線方向に向きながら切削することができる。その結果、円盤型回転工具20のエッジによる螺旋状のカッターマークによる表面粗さが小さくなる。すなわち、加工面の粗さが小さくなり、研磨面に相当する加工面が得られるので、研磨工程の時間短縮を図ることができる。
【0088】
次に、上記の実施形態において、さらに追加可能な加工システムについて説明する。
上記の実施形態では、円盤型回転工具20が三次元形状モデル2の表面に対して法線方向に向くように制御される。しかし、三次元形状モデル2が、例えば、
図15に示すように凹み2bが大きい形状の場合は、
図16の斜線で示すように、円盤型回転工具20と三次元形状モデル2が干渉するという問題が生じる。
【0089】
そこで、上記の問題を解消するために、仮想の薄肉円盤21は、その表面の周囲に多数の点からなる工具座標系で定義する。次いで、仮想の薄肉円盤21の向きを三次元形状モデル2の表面に対して垂直方向、つまり法線方向に向けるために、角度βだけスイングさせたと仮定する。この時、前記の工具座標系で定義した多数の点のうちの少なくとも1点が、三次元形状モデル2の内側にあれば、仮想の薄肉円盤21が三次元形状モデル2に干渉したと判断することができる。
【0090】
このように工具と材料が干渉するか否かの判断方法としては、参考文献2〔竹内:ソリッドモデルに基づく5軸制御加工、精密工学会誌、56、11、(1990)、2063〕の方法で実施することができる。この方法は、工具の表面を点の集合に変換し、工具経路を計算する過程において、全点において加工形状の内側にあるか否かを判断する手法である。
【0091】
仮想の薄肉円盤21が三次元形状モデル2に干渉したと判断した時、
図16に示すように、仮想の薄肉円盤21の向きを角度β−90°スイングさせる。その結果、仮想の薄肉円盤21が三次元形状モデル2の表面に対して接線方向に向くことになる。
次いで、仮想の薄肉円盤21の先端を三次元形状モデル2の加工点に接触するよう位置決めする。円盤型回転工具20としては、例えばバチ状のチップ20a(切断刃)を備えたチップソー20を使用している。チップ20aの側面の長さの範囲内の位置、例えばチップ長さの中間点で加工点に接触するように、チップソー20の位置を決める。
【0092】
以上のことから、円盤型回転工具20が三次元形状モデル2に干渉しないように接線方向に向いて切削するので、円盤型回転工具20のエッジによる螺旋状のカッターマークによる表面粗さが小さくなる。すなわち、加工面の粗さが小さくなり、研磨面に相当する加工面が得られるので、研磨工程の時間短縮を図ることができる。
【0093】
なお、木工材料Wを切削加工中に、木工材料WをC軸方向に回転するごとに、円盤型回転工具20が法線方向と接線方向に切り替わる場合は、円盤型回転工具20のスイングや加工点への位置決めが頻繁に行われるために、加工時間が無駄に消費する。これを解消するために、法線方向の加工ができる領域と、接線方向の加工ができる領域を分けて、別々に加工することができる。
【0094】
次に、前述の実施形態の多軸NC木工旋盤システム1に、さらに追加可能な加工システムについて説明する。
この加工システムは、基本的に、例えば正角材の木工材料Wから三次元形状を削り出す際に、木工材料Wの正方形の外形と三次元形状の輪郭との間の削り代を、予め帯鋸刃23を用いて塊として切り落とすことで、少ないエネルギーで、かつ、短時間で除去することを目的とする。
【0095】
本実施形態の4軸NC木工旋盤10は、
図17に示すように、C軸に直交する方向と平行に走行する帯鋸刃41を有する帯鋸盤40をさらに備える。帯鋸刃41は2つの駆動ホイール42と従動ホイール43の間にエンドレスに巻き回され、駆動ホイール42によって旋回駆動される。2つのホイール42,43は、4軸NC木工旋盤10のベッドやチャック11に干渉することを避けるために、木工材料Wの上側に配置している。さらに、帯鋸盤40は、2つのホイール42,43の回転中心を結ぶA軸周り方向に回動可能に構成されている。
【0096】
また、本実施形態では、帯鋸刃41が、全体としてZ軸に平行なZ軸方向と、Z軸に直交するF方向に移動可能で、かつ、前記帯鋸刃41の向きをZ軸方向に対して傾斜するように変向可能である。この変向は、2つのホイール42,43をA軸周り方向に回動することで実施される。
なお、F方向としては、本実施形態では、
図17に示すようにY方向が該当しているが、このY方向に限定されない。すなわち、帯鋸刃41が、全体としてZ軸方向と、Z軸に直交するX方向に移動可能であってもよく、あるいはZ軸に直交する方向であればその他の方向であってもよい。つまり、帯鋸盤40の設置状態は、帯鋸刃41が全体としてZ軸方向に移動しながら、Z軸に対して接近・離反する方向が一つに限定されず、任意に設定できる。
【0097】
上記帯鋸盤40の帯鋸刃41の工具経路を得るには、C軸にチャッキングした三次元形状モデル2のC軸の旋回角度θをゼロ度(0°)とする。つまり、帯鋸刃41と同じ形状を有する仮想の帯鋸工具44が、C軸周りの旋回を停止した状態で三次元形状モデル2をZ軸に平行なZ軸方向でスライスする時に、Z軸方向とZ軸に直交するF方向に移動することを前提とする。
【0098】
さらに、
図18に示すように、三次元形状モデル2をZ軸方向に向けて適宜間隔でXY平面に平行な多数の仮想スライス断面2cを形成し、各仮想スライス断面2cにおいて+F方向の最大点Fmaxと最小点Fminを計算する。本実施形態では、各仮想スライス断面2cにおいて+Y方向の最大点Ymaxと最小点Yminを計算している。
【0099】
次に、前記各Ymax(Fmax)同士を結んだ最大部輪郭線3と、前記各Ymin(Fmin)同士を結んだ最小部輪郭線4とを計算する。例えば、
図19に示すように、0.1mm間隔にスライスした仮想スライス断面2c,2c,・・・において、最大部輪郭線3は、各Ymax(Fmax)同士をNURBSのような自由曲線で結んだ曲線からなる。一方、最小部輪郭線4は、各Ymin(Fmin)同士をNURBSのような自由曲線で結んだ曲線からなる。
【0100】
次に、最大部輪郭線3に対する最大部オフセット線5と、最小部輪郭線4に対する最小部オフセット線6を計算する。
最大部オフセット線5の計算方法としては、
図20に示すように、まず、最大部輪郭線3に対してNURBSなどのスプライン関数で、各仮想スライス断面2cにおける各Fmaxの全点を補間する。この補間された最大部輪郭線3に対して一定距離にある最大部オフセット線5を計算する。前記の一定距離としては、例えばチップソー20のチップ20aの長さ(例えば2〜3mm)以下の距離とすることができる。
次に、前記の最大部オフセット線5と、スライスした仮想スライス断面2cとの交点を求め、最大部オフセット線5の線上の点の離散データを求める。
なお、最小部オフセット線6の計算方法は、基本的に、最大部オフセット線5の計算方法と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0101】
以上のように求めた最大部オフセット線5と最小部オフセット線6のうちの少なくとも一方を、仮想の帯鋸工具44の工具経路として得ることができる。つまり、もし設備的に可能であれば、木工材料WをC軸方向に旋回せずに、例えば最大部オフセット線5を仮想の帯鋸工具44の工具経路とし、その後に最小部オフセット線6を仮想の帯鋸工具44の工具経路とすることができる。この場合、切削加工効率が向上する。
【0102】
上記の操作は、三次元形状モデル2をC軸の旋回角度θのピッチごとに旋回停止して、最大部輪郭線3と最小部輪郭線4を求め、それぞれに対応する最大部オフセット線5と最小部オフセット線6を求めることができる。例えばC軸の回転角度30°のピッチにて実施し、それぞれの旋回角度θに対する最大部輪郭線3と最小部輪郭線4を求める。次いで、それぞれに対応する最大部オフセット線5と最小部オフセット線6を求める。
【0103】
本実施形態では、帯鋸盤40は、前述の
図17に示すように、帯鋸刃41がC軸に直交する方向と平行に走行するように配置している。
帯鋸刃41は、三次元形状モデル2をC軸の旋回角度θごとに旋回して得た2つの最大部オフセット線5及び最小部オフセット線6のうち、最大部オフセット線5に沿って切断する。帯鋸刃41の先端が最大部オフセット線5の線上の点間を移動し、帯鋸刃41はオフセット線の接線方向を向きながら木工材料Wを切断する。
【0104】
なお、帯鋸刃41は、木工材料Wを曲線状に切断するため、
図21に示すように幅が狭いもの、例えば5mmのものを用いる。このとき、刃先先端41cの厚さAが1mmで、台金41bの厚さBが0.5mmのものを使用することになる。ただし、曲率半径Rが小さい曲線にて木工材料Wを切断する際は、木工材料Wの切断溝45と帯鋸刃41が干渉する恐れがある。例えば、
図21に示すように、上記の寸法で作図して計測した結果、上記の帯鋸刃41を用いて最大部オフセット線5の曲線に沿って切断する際に、限界となる曲率半径Rは約49mmである。したがって、この例では、曲率半径Rが49mm以上の最大部オフセット線5及び最小部オフセット線6を対象とする。
【0105】
次に、上述の帯鋸盤40を加えた多軸NC木工旋盤システム1の作用について、木工材料Wから三次元形状を削り出す一連の動作を説明する。
まず、
図22(a)では、正角材の木工材料WをC軸にチャッキングし、C軸を旋回しながら、帯鋸刃41による切断端の位置に、予め円盤型回転工具20にて切れ目24を入れておく。
【0106】
次に、
図22(b)では、帯鋸盤40の帯鋸刃41の工具経路は、予め帯鋸刃41と同じ形状を有する仮想の帯鋸工具44によって得ている。C軸の旋回角度θがゼロ度(0°)の状態で、帯鋸刃41が前記工具経路に基づいて移動し、木工材料Wの正方形の外形と三次元形状の輪郭との間の削り代を切り落とす。
【0107】
次に、
図22(c)では、木工材料WがC軸の旋回角度θのピッチごとに旋回停止し、帯鋸刃41が前記工具経路に基づいて移動し、木工材料Wの外形と三次元形状の輪郭との間の削り代を切り落とす。その結果、木工材料Wの外形と三次元形状の輪郭との間の大部分の削り代が、少ないエネルギーで、かつ、短時間で切り落とされる。
【0108】
次に、
図22(d)では、円盤型回転工具20の工具経路は、予め仮想の薄肉円盤21によって得ている。円盤型回転工具20は前記工具経路に基づいて移動し、三次元形状の輪郭の残った部分を切削する。この時、円盤型回転工具20は、三次元形状モデル2の表面に対して法線方向に向くように制御されるので、スイングしながら切削する。また、円盤型回転工具20が木工材料Wに干渉しないように、三次元形状の輪郭に対して接線方向に向くように制御される。その結果、三次元形状の輪郭は、研磨面に相当する加工面となるので、研磨工程の時間短縮となる。
なお、図示していないが、球状回転工具31の工具経路は、予め球状回転工具31と同じ直径の球体の先端形状を有する仮想の球体32によって得ている。球状回転工具31は、前記工具経路に基づいて移動し、三次元形状の輪郭の残った部分を切削する。
【0109】
次に、前述の実施形態の多軸NC木工旋盤システム1に、さらに追加可能な加工システムについて説明する。
この加工システムは、円盤型回転工具20や球状回転工具31を用いて、木工材料Wから三次元形状を削り出した後に、前記三次元形状の輪郭を研磨ベルト51にて自動的に研磨することで、研磨工程の時間短縮と省力化を図ることを目的とする。
【0110】
本実施形態の4軸NC木工旋盤10は、
図23に示すように、C軸に直交する方向と平行に走行する研磨ベルト51を有するベルトサンダー50をさらに備える。研磨ベルト51は2つの駆動ホイール52と従動ホイール53の間にエンドレスに巻き回され、駆動ホイール52によって旋回駆動される。ベルトサンダー50は、2つのホイール52,53の回転中心を結ぶB軸周り方向に回動可能に構成されている。
【0111】
また、本実施形態では、研磨ベルト51が、全体としてZ軸に平行なZ軸方向と、Z軸に直交するF方向に移動可能で、かつ、前記研磨ベルト51の向きをZ軸方向に対して傾斜するように変向可能である。この変向は、2つのホイール52,53をB軸周り方向に回動することで実施される。
なお、F方向としては、前述の帯鋸刃41で説明したように、本実施形態では、
図23に示すようにX方向が該当しているが、このX方向に限定されない。すなわち、研磨ベルト51が、全体としてZ軸方向と、Z軸に直交するY方向に移動可能であってもよく、あるいはZ軸に直交する方向であればその他の方向であってもよい。つまり、ベルトサンダー50の設置状態は、研磨ベルト51が全体としてZ軸方向に移動しながら、Z軸に対して接近・離反する方向が一つに限定されず、任意に設定できる。
【0112】
上記ベルトサンダー50の研磨ベルト51の工具経路を得るには、C軸にチャッキングした三次元形状モデル2のC軸の旋回角度θをゼロ度(0°)とする。つまり、磨ベルト51と同じ形状を有する仮想の研磨工具54が、C軸周りの旋回を停止した状態で三次元形状モデル2を研磨する時に、Z軸方向とZ軸に直交するF方向に移動することを前提とする。
【0113】
さらに、前述の帯鋸盤40で、
図18に示したのと同様に、三次元形状モデル2をZ軸方向に向けて適宜間隔でXY平面に平行な多数の仮想スライス断面2cを形成し、各仮想スライス断面2cにおいて+F方向の最大点Fmaxと最小点Fminを計算する。本実施形態では、各仮想スライス断面2cにおいて+X方向の最大点Xmaxと最小点Xminを計算している。
次に、前記各Xmax(Fmax)同士を結んだ最大部輪郭線と、前記各Xmin(Fmin)同士を結んだ最小部輪郭線とを計算する。
【0114】
以上のように求めた最大部輪郭線と最小部輪郭線のうちの少なくとも一方を仮想の研磨工具54の工具経路として得ることができる。つまり、もし設備的に可能であれば、C軸方向に回転せずに、例えば最大部輪郭線を仮想の研磨工具54の工具経路とし、その後に最小部輪郭線を仮想の研磨工具54の工具経路とすることができる。この場合、研磨効率が向上する。
なお、上記の仮想の研磨工具54の研磨する位置は、前述の帯鋸刃41による削り代の切断の際に求めた工具経路を活用することができる。
【0115】
上記の操作は、三次元形状モデル2をC軸の旋回角度θのピッチごとに旋回停止して、最大部輪郭線と最小部輪郭線を求めることができる。例えばC軸の回転角度5°のように細かいピッチにて実施し、それぞれの旋回角度θに対する最大部輪郭線と最小部輪郭線を求める。
【0116】
本実施形態では、ベルトサンダー50は、
図23及び
図24に示すように、研磨ベルト51がC軸に直交する方向と平行に走行するように配置している。
研磨ベルト51は、三次元形状モデル2をC軸の旋回角度θごとに旋回して得た2つの最大部輪郭線及び最小部輪郭線のうち、最大部輪郭線に沿って研磨する。研磨ベルト51が最大部輪郭線上の点間を移動し、研磨ベルト51の研磨面は最大部輪郭線の接線方向と同じ面方向になるように研磨する。
【0117】
したがって、木工材料Wは、C軸の旋回角度θを小さくすることで、研磨ベルト51は、旋回する木工材料Wの三次元形状に対して螺旋状の工具経路を進んでゆく。研磨ベルト51は、木工材料Wの加工点に応じて、X方向に往復動を繰り返しながら、しかも、木工材料Wの表面の傾斜に応じてB軸周りにスイングしながら研磨する。
【0118】
なお、ベルトサンダー50は、
図24に示すように、木工材料Wの表面に対して研磨ベルト51の押し付け力を発生させることができる。例えば、駆動ホイール52の回転支軸52aと従動ホイール53の回転支軸52aとの間を、例えばエアシリシンダなどの押圧装置55によって押し広げる。これにより、無負荷のときの研磨ベルト51の位置より、加工点がΔXだけ木工材料Wの内側へ移動するように押し付けられる。つまり、研磨ベルト51の張力を利用した押し付け力が発生する。
以上のことから、本実施形態の多軸NC木工旋盤システム1は、三次元形状の加工品の仕上げとして、加工品の輪郭に対して研磨ベルト51にて自動的に研磨することで、研磨工程の時間短縮と省力化を図ることができる。