(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無機微粒子(B)が、無機酸化物微粒子(B1)であり、Ti、Zn、Zr、In、Al、SiおよびPからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のOLED用無機微粒子分散体の製造方法。
無機微粒子(B)が、無機蛍光体(B2)であり、Y、La、Ca、Zn、Ba、Mg、Sr、Ga、およびGdからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のOLED用無機微粒子分散体の製造方法。
無機微粒子(B)が半導体量子ドット(B3)であり、Cd、Se、P、In、Si、Ge、Ga、Sn、およびAlからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のOLED用無機微粒子分散体の製造方法。
樹脂型分散剤(A2)が、モノアルコール又はポリオール(a)の水酸基と、ポリカルボン酸無水物(b)の酸無水物基とを反応させてなる分散剤(A2−1)を含むことを特徴とする請求項9記載のOLED用無機微粒子分散体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に特定されない。
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本願では、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、又は「(メタ)アクリルアミド」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、又は「アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド」を表すものとする。
【0026】
<<無機微粒子分散体>>
本発明の無機微粒子分散体の製造方法は、(メタ)アクリロキシ基及びエポキシ基の少なくともいずれかで一部変性されたシロキサン化合物(A1)を含む分散剤(A)を用いて、無機微粒子(B)をメディア型湿式分散機により分散することを特徴とする。
【0027】
<無機微粒子分散体の製造方法>
本発明の無機微粒子分散体は、シロキサン化合物(A1)を含む分散剤(A)、無機微粒子(B)、必要に応じて有機溶剤を加えて強力な機械的エネルギーを加えるメディア型湿式分散機にて分散を行なう。
本発明において使用出来るメディア型湿式分散機としては、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、アトライター、ペイントシェーカー、ダイノミルなどが挙げられる。その他、ホモジナイザーなどのような高速回転型湿式分散機、超音波型分散機、ジェットミルなどのような高圧メディアレス型分散機、2本ロール、3本ロールなどのような混練型湿式分散機などを併用しても良い。メディア型湿式分散機を用いて分散することにより、無機微粒子(B)とシロキサン化合物(A1)が相互作用し、シロキサン化合物(A1)の分散安定性の効果が得られる。
【0028】
一般に、微細な無機微粒子は凝集力が非常に強く、一次粒子がクラスター状に凝集し二次凝集体を形成している。従って、これら凝集粒子と樹脂やシランカップリング剤をそのまま混合攪拌したり、あるいは樹脂やシランカップリング剤で表面被膜処理した凝集粒子をそのまま分散したりしても、分散安定性に優れた分散液とすることはできない。本発明における無機微粒子分散液の製造方法では、これらの凝集粒子とシロキサン化合物(A1)とを混合した上で、さらに湿式分散装置にて強力な機械的エネルギーを加え、粒子間の凝集を解きほぐし、あるいは粒子本来の一次粒径に近いところまで細かく粉砕することによって、分散安定性に優れた無機微粒子分散体を発現することができるものである。
そのため、メディア型湿式分散機を用いて分散することで、上述したように無機微粒子(B)とシロキサン化合物(A1)の相互作用により、シロキサン化合物(A1)の分散安定性の効果が得られるものとなる。
【0029】
メディア型湿式分散機の具体例としては、アシザワファインテック(株)製ミニゼータ、ラボスター、スターミルLMZ、スターミルZRS、寿工業(株)製ウルトラアペックスミル、アイメックス(株)製 マックスビスコミル等が使用可能である。分散時間は、使用されるビーズ径、ビーズ材質、ビーズミルの周速などにより変わるが、一般に0.03〜1.0mm程度のビーズ径で、アルミナ、ジルコニア、シリカ、ガラス等の使用が適する。ビーズミルでの粉砕時間は20分〜5時間程度、より好ましくは30分〜3時間程度が好ましい。
【0030】
必要に応じて分散媒を使用する場合には、水、有機溶剤問わず使用可能である。より好ましくは水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ダイアセトンアルコール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの極性溶剤、及びそれらの混合溶剤が好ましい。
【0031】
本発明により得られる無機微粒子分散体は、安定性に優れるため、製品の品質安定性に優れ、生産工程におけるトラブルを少なくすることが出来る。特に光学部材において使用する際には、仮に無機微粒子分散体の粘度や透過率などが毎回異なると光学特性に大きな影響を与えることになるため、無機微粒子分散体の安定性に優れることは生産工程において好適なことである。
【0032】
本発明の無機微粒子分散体は、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子および混入した塵、異物の除去を行なっても良い。樹脂(C)などを加えることで粘度が増大するためにフィルタによる粗大粒子の除去が困難な場合には、予め湿式分散装置にて分散後に粗大粒子の除去を行なっても良い。
【0033】
<分散剤(A)>
本発明における分散剤(A)とは、機械的エネルギーを加えて、メディア型湿式分散機により無機微粒子の凝集をときほぐす際に使用する分散剤のことを指す。
【0034】
本発明では、分散剤(A)が、(メタ)アクリロキシ基及びエポキシ基の少なくともいずれかで一部変性されたシロキサン化合物(A1)を含むことを特徴とし、これにより、無機微粒子分散体の安定性やその他硬度など優れた特性を有することができる。また、さらに樹脂型分散剤(A2)と併用して用いることが、分散安定性の面から好ましい。
【0035】
《シロキサン化合物(A1)》
本発明におけるシロキサン化合物(A1)は、少なくとも1つのシロキサン結合を有する化合物であり、(メタ)アクリロキシ基及びエポキシ基の少なくともいずれかで一部変性された化合物である。シロキサン化合物(A1)は、シロキサン結合が長く連なり高分子となったポリシロキサンでも良く、直線の鎖状に連なる化合物でも、分岐構造や環構造を有する化合物でも良く、連なったシロキサン構造の間にビニル重合体セグメントを有する複合樹脂であっても良い。特に官能基以外がシロキサン結合のみで構成されたポリシロキサンであり、さらに3次元の分岐構造を有することが、無機微粒子分散体の安定性やその他硬度など優れた特性を有することから、より好ましい。
【0036】
本発明におけるシロキサン化合物(A1)において、(メタ)アクリロキシ基およびエポキシ基の少なくともいずれかで一部変性されていることで、(メタ)アクリロキシ基やエポキシ基自身が無機微粒子と相互作用し分散性に貢献する。シロキサン結合を有しない(メタ)アクリロキシ基やエポキシ基を有するシランカップリング剤では、無機微粒子の分散性が高くないことから、比較的剛直な構造を有するシロキサン結合含有の化合物中において、(メタ)アクリロキシ基およびエポキシ基の少なくともいずれかが存在することで、複数の官能基が無機微粒子と強固な相互作用を構築し、優れた分散性を有するものと考えられる。
【0037】
また、シロキサン化合物(A1)が、さらにエトキシ基またはメトキシ基を含有することが好ましい。無機微粒子表面の水酸基などと脱水縮合反応をすることでシロキサン化合物が無機微粒子表面に吸着することで、より分散性が向上するためである。
【0038】
エトキシ基またはメトキシ基のシロキサン化合物(A1)中の含有量は、シロキサン化合物(A1)の分子量が300以上10000未満の場合にはシロキサン化合物(A1)の固形分100重量%中、10重量%以上50重量%以下であることが、分子量が10000以上である場合には1重量%以上10重量%未満であることが好ましい。上述した(メタ)アクリロキシ基及び/又はエポキシ基とのバランスにおいて、上記含有量である場合に最も無機微粒子の分散性に優れるからである。
【0039】
また、シロキサン化合物(A1)の重量平均分子量が300以上10000未満の場合、(メタ)アクリロキシ基又はエポキシ基の官能基当量が100g/eq以上1200g/eq未満であることが好ましい。上述したように(メタ)アクリロキシ基及び/又はエポキシ基は無機微粒子と相互作用するため、一定量の官能基を有することが分散安定性に寄与するためである。官能基当量が100未満となると逆に無機微粒子の凝集を誘発し分散安定性を悪化させる場合がある。
より好ましくは、(メタ)アクリロキシ基又はエポキシ基の当量が200g/eq以上800g/eq未満である。
また、(メタ)アクリロキシ基およびエポキシ基の両方を有する場合には、合計した官能基量である。
【0040】
また、シロキサン化合物(A1)の重量平均分子量が10000以上200000以下の場合には、(メタ)アクリロキシ基又はエポキシ基の官能基当量が800g/eq以上2000g/eq以下であることが好ましい。分子量が高くなると化合物自身の立体障害による分散安定化の寄与が大きくなるため、官能基当量はそれほど多くなくとも分散性を良好とすることができる。逆に官能基当量が800未満となると無機微粒子を凝集させて分散性を悪化させる場合がある。
より好ましくは、(メタ)アクリロキシ基又はエポキシ基の官能基当量が1000g/eq以上1800g/eq以下である。
また、(メタ)アクリロキシ基およびエポキシ基の両方を有する場合には、合計した官能基量である。
【0041】
ここで、本発明における官能基当量は、下記式により算出した値である。
[官能基当量(g/eq)]
=1グラム当量の特定の官能基を含む化合物のグラム数(g/eq)
=1(g)/([特定の官能基を持つモノマー成分の重量] /[官能基を持つモノマー成分の分子量](eq))
【0042】
シロキサン化合物(A1)の合成方法としてはこれらに限られるものではないが、例えば下記が挙げられる。
(合成方法a−1)
Si−H基を含有する環状のオルガノハイドロジェンシリコーンと、必要に応じて鎖状、分岐状からなるオルガノハイドロジェンシリコーンを含む基質に対し、ヒドロシリル化反応によって、炭素−炭素2重結合及びエポキシ基を有する化合物と、炭素−炭素2重結合を2個以上有するシリコーンとを付加させる方法
(合成方法a−2)
オルガノハロシランやオルガノアルコキシシラン等の縮合反応性基を含有するオルガノシリコーンを基質として、必要に応じて加水分解した後、縮合反応に供することよって、(メタ)アクリロキシまたはエポキシ単位を有する有機基等を導入する方法
(合成方法a−3)
(メタ)アクリロキシまたはエポキシ単位を含有する有機基を置換基として有する環状オルガノシリコーンを、必要に応じて分子内にSi−H基を含有、又は含有しない、鎖状及び/又は分岐状のシロキサン類共存下で開環重合する方法
(合成方法a−4)
前記(a−1)(a−2)、(a−3)記載の方法によって得られる変性ポリシロキサン類を再平衡化反応させることによって合成する方法
【0043】
シロキサン化合物(A1)が有するエポキシ基としては、脂肪族炭化水素単位を有する炭素数が4以上24以下、及び酸素数が1以上5以下からなるエポキシ基を含有する有機基であることが好ましく、例えば、下記一般式(1)〜(6)等の構造が例示できる。これらは、1種又は2種以上が混在した有機基であってよい。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0044】
上記の一般式中のR
1としては、例えば、−(CH
2)
2−O−、−(CH
2)
3−O−、−(CH
2)
4−O−、−CH
2−CH(CH
3)−O−、−CH
2−CH(CH
3)−CH
2−O−、−CH
2−CH
2−CH(CH
3)−O−、−CH
2−CH(CH
3)−COO−、−CH
2−CH
2−COO−等のエーテル結合又はエステル結合を含む構造単位、−(CH
2)
2−、−CH(CH
3)−、−(CH
2)
3−、−CH(CH
3)−CH
2−、−CH
2−CH(CH
3)−、−(CH
2)
4−、−(CH
2)
5−、−(CH
2)
6−、−(CH
2)
7−、−(CH
2)
8−、−(CH
2)
9−、−(CH
2)
10−、−(CH
2)
11−、−(CH
2)
12−、−(CH
2)
13−、−(CH
2)
14−、−(CH
2)
15−、−(CH
2)
16−等の鎖状及び/又は分岐状からなる脂肪族炭化水素単位が例示できる。
【0045】
シロキサン化合物(A1)が有する(メタ)アクリロキシ基としては、脂肪族炭化水素単位を有する炭素数が4以上24以下及び酸素数が1以上5以下からなる(メタ)アクリロキシ基を含有する有機基であることが好ましく、例えば、下記一般式(7)等の構造が例示できる。これらは、1種又は2種以上が混在した有機基であってよい。
【化7】
上記一般式(7)中のnは1以上20以下の整数である。
【0046】
市販されている(メタ)アクリロキシ基又はエポキシ基の少なくともいずれかで一部変性されたシロキサン化合物(A1)としては、例えば
エポキシ基含有アルコシキオリゴマーとしてはX−41−1053(エポキシ当量830g/eq、アルコキシ量50重量%)、X−41−1059A(エポキシ当量350g/eq、アルコキシ量42重量%),X−41−1056(エポキシ当量280g/eq、アルコキシ量27重量%)(以上、信越化学株式会社製)、(メタ)アクリロキシ基含有アルコシキオリゴマーとしてはX−40−2655A(エポキシ当量280g/eq、アルコキシ量26重量%)、KR−513(エポキシ当量210g/eq、アルコキシ量20重量%)(以上、信越化学株式会社製)などが挙げられる。
エポキシ基変性シリコーンオイルとしてはX−22−343(エポキシ当量525g/eq)、KF−101(エポキシ当量350g/eq)、KF−1001(エポキシ当量3500g/eq)、X−22−2046(エポキシ当量600g/eq)、KF−102(エポキシ当量3600g/eq)、X−22−163(エポキシ当量200g/eq)、KF−105(エポキシ当量490g/eq)、X−22−163A(エポキシ当量1000)、X−22−163B(エポキシ当量1750)、X−22−163C(エポキシ当量2700g/eq)、X−22−169AS(エポキシ当量500g/eq)、X−22−169B(エポキシ当量1700g/eq)、X−22−173BX(エポキシ当量2500g/eq)、X−22−173DX(エポキシ当量4500)、X−22−9002(エポキシ当量5000g/eq)、ES−1001N(エポキシ当量1700g/eq)、ES−1002T(エポキシ当量1000g/eq)、ES−1023(エポキシ当量1200g/eq)、X−12−981、X−12−984(以上、信越化学株式会社製)などが挙げられる。
(メタ)アクリロキシ基変性シリコーンオイルとしてはX−22−164(メタクリロイルオキシ当量190g/eq)、X−22−164AS(メタクリロイルオキシ当量450g/eq)、X−22−164A(メタクリロイルオキシ当量860g/eq)、X−22−164B(メタクリロイルオキシ当量1630g/eq)、X−22−164C(メタクリロイルオキシ当量2370g/eq)、X−22−164E(メタクリロイルオキシ当量3900g/eq)、X−22−2245(アクリロイルオキシ当量1600g/eq)、X−22−1602(アクリロイルオキシ当量1200g/eq)、X−22−174SX(メタクリロイルオキシ当量900g/eq)、X−22−174BX(メタクリロイルオキシ当量2300g/eq)、KF−2012(メタクリロイルオキシ当量4600g/eq)、X−22−2426(メタクリロイルオキシ当量12000g/eq)、X−22−2475(メタクリロイルオキシ当量420g/eq)(以上、信越化学株式会社製)などが挙げられる。
【0047】
シロキサン化合物(A1)の含有量は、無機微粒子(B)100重量部に対し、好ましくは1〜2000重量部、さらに好ましくは5〜500重量部、最も好ましくは5〜200重量部である。1重量部未満であれば分散安定性の効果が期待し難く、2000重量部以上であると、無機微粒子から得られる特性が充分では無くなる場合がある。
【0048】
《樹脂型分散剤(A2)》
本発明の無機微粒子分散体においては、分散剤(A)としてシロキサン化合物(A1)に加えて、さらに樹脂型分散剤(A2)を添加して分散することが、分散安定性の面から好ましい。
【0049】
本発明における樹脂型分散剤(A2)は、無機微粒子に吸着する性質を有する無機微粒子親和性部位と、無機微粒子担体と相溶性のある部位とを有し、無機微粒子に吸着して無機微粒子の無機微粒子担体への分散を安定化する働きをするものである。具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩等の油性分散剤、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、燐酸エステル系等が用いられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0050】
本発明の樹脂型分散剤(A2)は、シロキサン化合物(A1)によって分散された無機微粒子の分散性向上の効果を、その立体障害性によりさらに上げる役割を果たすものであるから、基本的にはどのような構造を有していても、分子量が1000程度以上ありさえすれば、無機微粒子分散体の安定性に貢献する。
【0051】
市販の樹脂型分散剤としては、ビックケミー社製のDisperbyk−101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、167、168、170、171、174、180、181、182、183、184、185、2000、2001、2009、2020、2022、2025、2050、2070、2095、2150、2155、2163、2164またはAnti−Terra−U、203、204、またはBYK−P104、P104S、220S、6919、21116またはLactimonまたはBykumen等、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE−3000、9000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33500、32600、34750、35100、36600、38500、41000、41090、53095、55000、56000、76500等、BASF・ジャパン社製のEFKA−46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、450、451、453、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503、等、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
【0052】
樹脂型分散剤(A2)は中性樹脂型分散剤、酸性樹脂型分散剤、塩基性樹脂型分散剤のいずれでも良いが、現像性の点から酸性樹脂型分散剤が好ましい。
また樹脂型分散剤(A2)の酸価は分散安定性の観点から、200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましい。
樹脂型分散剤(A2)の重量平均分子量(Mw)は、分散安定性の観点から、1000〜50000の範囲が好ましく、より好ましくは1000〜30000の範囲である。
【0053】
樹脂型分散剤(A2)を用いる場合、その含有量は、無機微粒子(B)100重量部に対し、好ましくは1〜1000重量部、さらに好ましくは5〜500重量部、最も好ましくは5〜200重量部である。1重量部未満であれば分散安定性の効果が期待できない場合があり、1000重量部以上であると、ガスバリア性が悪化する場合がある。
また、シロキサン化合物(A1)100重量部に対しては、樹脂型分散剤(A2)10〜1000重量部であることが好ましい。
ガスバリア性を最も考慮する場合には、シロキサン化合物(A1)100重量部に対して、10〜100重量部がさらに好ましい。
アルカリ現像性を付与し、分散安定性、ガスバリア性、現像性のバランスを取る場合などには、シロキサン化合物(A1)100重量部に対して、100重量部〜1000重量部がさらに好ましい。
【0054】
また、樹脂型分散剤(A2)の中でも、モノアルコール又はポリオール(a)の水酸基と、ポリカルボン酸無水物(b)の酸無水物基とを反応させてなる分散剤(A2−1)を含むと、さらに無機微粒子の分散性と安定性がより向上するため、特に好ましい。
【0055】
[分散剤(A2−1)]
分散剤(A2−1)は、モノアルコール又はポリオール(a)の水酸基と、ポリカルボン酸無水物(b)の酸無水物基とを反応させてなる分散剤であり、モノアルコール又はポリオール(a)の水酸基と、ポリカルボン酸無水物(b)の酸無水物基とを反応させる工程をその合成過程に含めば、どのようなものでも良い。隣接するエステル部位が無機微粒子と相互作用し分散性に寄与するために、無機微粒子の分散性と安定性がより向上する。合成例としては例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0056】
(分散剤(A2−1a))
例えば、芳香族骨格または脂肪族骨格、及び2つ以上のカルボン酸無水物基を有する化合物と、カルボン酸無水物基と反応しうるモノアルコール又はポリオール(a)の水酸基を有する化合物とを反応させてなるカルボキシル基を有する化合物と、カルボキシル基と反応しうる官能基を有する化合物とを反応させることにより得られる。ここで、上記アルコール又はポリオール(a)の水酸基を有する化合物及びカルボキシル基と反応しうる官能基を有する化合物の少なくとも一部が、重合性不飽和二重結合基を有するものであることが好ましい。
【0057】
上記「カルボキシル基と反応しうる官能基」としては、エポキシ基、オキサゾリン基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボジイミド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ビニルエーテル基などが挙げられるが、特にエポキシ基が好ましい。
【0058】
(分散剤(A2−1b))
例えば、エチレン性不飽和単量体と、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物とをラジカル重合してなる片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体(ポリオール(a))の水酸基と、ポリカルボン酸無水物(b)中の酸無水物基とを、反応させてなることによって得られる。
また、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(ポリオール(a))中の水酸基と、ポリカルボン酸化合物(b)中の酸無水物基とを反応させてなるポリエステル重合体の存在下、ビニル重合体部位を形成するエチレン性不飽和単量体をラジカル重合することによっても得られる。
【0059】
(分散剤(A2−1c))
例えば、モノアルコールを開始剤として、ラクトンを開環重合して片末端に水酸基を有するポリエステル(モノアルコール(a))を製造する第一の工程と、該片末端に水酸基を有するポリエステル(モノアルコール(a))と、テトラカルボン酸二無水物(ポリカルボン酸無水物(b))を反応させることで得られる。
【0060】
[モノアルコール又はポリオール(a)]
「モノアルコール」
本発明の樹脂型分散剤(A2)の合成に使用されるモノアルコールは、水酸基を一つ有する化合物である。例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族モノアルコール、ベンジルアルコールなどの芳香族モノアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。
【0061】
さらに、本発明の樹脂型分散剤(A2)の合成には、モノアルコールとして、エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールを使用しても良い。
本発明におけるエチレン性不飽和二重結合の例としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基が挙げられるが、好ましいのは(メタ)アクリロイル基である。これらは、単独でも良いし、複数でも良く、また異なる種類のエチレン性不飽和二重結合を併せ持っていても良い。
【0062】
エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールは、エチレン性不飽和二重結合の数により、1個、2個、および3個以上のものに分けられる。
エチレン性不飽和二重結合の数が1個のモノアルコールとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1、4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
エチレン性不飽和二重結合の数が2個のモノアルコールとしては、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エチレン性不飽和二重結合の数が3個のモノアルコールとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、
エチレン性不飽和二重結合の数が5個のモノアルコールとしては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートが挙げられる。
【0063】
「ポリオール」
本発明の樹脂型分散剤(A2)の合成に使用されるポリオールとしては、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物、片末端に2つの水酸基を有しかつビニル重合体部位を有する化合物、その他のポリアルコールが挙げられる。
分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物としては例えば、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、等が挙げられる。
発明に使用する片末端に2つの水酸基を有し、かつビニル重合体部位を有する化合物としては例えば、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物を、目的とするビニル重合体の分子量にあわせて、1種類以上のエチレン性不飽和単量体と、任意に重合開始剤とを混合して加熱することで得ることができる。
その他のポリオールとしては公知のものを使用し得る。例えば、次のグループ(1)〜(7)に属するものがある。
【0064】
(1)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、グリセリンもしくは、ヘキサントリオールの如き多価アルコール類;(2)ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールもしくは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールの如き、各種のポリエーテルグリコール類;
(3)上記した各種の多価アルコール類と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルの如き各種の(環状)エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール類;
(4)上記した各種の多価アルコール類の1種以上と、多価カルボン酸類との共縮合によって得られるポリエステルポリオール類であって、多価カルボン酸類が、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,4−シクロヘキサンヒカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサトリカルボン酸または2,5,7−ナフタレントリカルボン酸などで特に代表されるものを用いて得られるポリオール類;
(5)上記した各種の多価アルコール類の1種以上と、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンもしくは3−メチル−δ−バレロラクトンの如き各種のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール類、あるいは、
上記した各種の多価アルコール類と、多価カルボン酸類と、各種のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン変性ポリエステルポリオール類;
(6)ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、一価および/または多価アルコール類のグリシジルエーテル、あるいは、一塩基酸および/または多塩基酸類のグリシジルエステルの如き各種のエポキシ化合物を、ポリエステルポリオールの合成時に、1種以上併用して得られるエポキシ変性ポリエステルポリオール類;
(7)ポリエステルポリアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリペンタジエンポリオール、ひまし油、ひまし油誘導体、水添ひまし油、水添ひまし油誘導体、水酸基含有アクリル系共重合体、水酸基含有含フッ素化合物または水酸基含有シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0065】
[ポリカルボン酸無水物(b)]
本発明の樹脂型分散剤(A2)の合成に使用されるポリカルボン酸無水物(b)は、テトラカルボン酸二無水物(b1)を含んでいることが好ましい。テトラカルボン酸二無水物(b1)の二つの無水物基は、モノアルコール又はポリオール(a)の水酸基と反応することによって、ポリエステル分散剤の主鎖に無機微粒子吸着基となるカルボキシル基を規則的に並べることができ、無機微粒子分散に有利である。
【0066】
本発明に使用するテトラカルボン酸二無水物(b1)としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、ブチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカ
ルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,
3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物、などの芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0067】
本発明で使用されるテトラカルボン酸二無水物は上記に例示した化合物に限らず、カルボン酸無水物基を2つ持てばどのような構造をしていてもかまわない。これらは単独で用いても、併用してもかまわない。テトラカルボン酸二無水物は、ポリオールとの反応により、ポリエステルの一単位に二個のカルボキシル基を有する分散剤を形成するため、無機微粒子吸着性の観点から、本発明の樹脂型分散剤(A2)の構成要素として好ましい。
【0068】
さらに、本発明に好ましく使用されるものは、無機微粒子に対する吸着性の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、芳香族環を二つ以上有するテトラカルボン酸二無水物である。芳香族カルボン酸は、脂肪族カルボン酸に比べて無機微粒子吸着能が高く、さらに、芳香族環を二つ以上有するカルボン酸は、無機微粒子吸着に適した骨格であり、耐熱性も高い。
【0069】
具体的には、下記一般式(8)または一般式(9)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0070】
【化8】
[一般式(8)中、kは1または2である。]
【化9】
[一般式(9)中、Q
1は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH
2CH
2OCO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、一般式(10):
【0071】
【化10】
で表される基、または一般式(11):
【0072】
【化11】
で表される基である。]
また、分子中にカルボン酸無水物基を1つ持つ化合物や3つ以上持つ化合物を併用、すなわち、本発明に使用するポリカルボン酸無水物(b)中に含まれるテトラカルボン酸二無水物(b1)以外のポリカルボン酸無水物も使用することができる。
【0073】
本発明に使用するポリカルボン酸無水物(b)中に含まれるテトラカルボン酸二無水物(b1)以外のポリカルボン酸無水物は、ジカルボン酸無水物、トリカルボン酸無水物、5個以上カルボン酸を有する化合物の無水物が挙げられるが、無機酸化物微粒子に対する吸着性の観点から、ポリエステル分散剤の設計上、ポリオールとの反応によりポリエステル分散剤の一単位に二つのカルボキシル基が生成するトリカルボン酸無水物(b2)が好ましい。トリカルボン酸無水物(b2)も、ポリオールの水酸基1個としか反応しないので、樹脂型分散剤(A2)の分子量設計等の観点から最小限に止めるべきである。
【0074】
トリカルボン酸無水物(b2)としては、脂肪族トリカルボン酸無水物、または芳香族トリカルボン酸無水物が挙げられる。
脂肪族トリカルボン酸無水物としては、例えば、3−カルボキシメチルグルタル酸無水物、1,2,4−ブタントリカルボン酸−1,2−無水物、cis−プロペン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2−無水物、1,3,4−シクロペンタントリカルボン酸無水物などが挙げられる。
芳香族トリカルボン酸としては、例えば、ベンゼントリカルボン酸無水物(1,2,3−ベンゼントリカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物[1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物]など)、ナフタレントリカルボン酸無水物(1,2,4−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8−ナフタレントリカルボン酸無水物など)、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’−ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4’−ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物などが挙げられる。
本発明に好ましく使用されるものは、無機酸化物微粒子に対する吸着性の観点から、上記のうち芳香族トリカルボン酸無水物である。
【0075】
[エチレン性不飽和単量体]
本発明の樹脂型分散剤(A2)の合成に使用されるエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド、およびN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類、及びこれらの混合物があげられる。また、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類等、およびこれらの混合物を併用して用いてもよい。また、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を併用することもできる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などから1種または2種以上を選択することができる。
【0076】
《その他の分散剤》
また、その他の分散剤を併用して用いてもよい。
その他の分散剤としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n−オクタデシルジメチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライドなどの各種のアルキルシラン、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランなどの各種のフルオロアルキルシラン、特にビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤に代表される、シラン系、チタン系、アルミ系、アルミナ−ジルコニア系などの各金属系カップリング剤の有機金属化合物、イソステアリン酸、ステアリン酸などの脂肪酸やそれらの金属塩、さらに界面活性剤などの有機化合物も使用可能である。その他メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイルなど公知のものを使用することが可能である。
【0077】
<無機微粒子(B)>
無機微粒子(B)としては特に限定されず、例えば、無機蛍光体、金属、ガラス、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、無機酸化物微粒子及び金属錯体、または、半導体量子ドットを用いることが出来る。
【0078】
特に本発明においては、タッチパネル用コート材、OLED照明用光散乱材、LED/OLED照明用封止材などの用途においては、その屈折率調整機能を生かすことが出来るために無機酸化物微粒子(B1)が好ましい。
また、ディスプレイ用の発光材料、太陽電池モジュール、封止材などの用途においては、その発光機能を生かすことが出来るために無機蛍光体(B2)が好ましい。
さらに、ディスプレイ用の発光材料、太陽電池、照明、CMOSセンサーなどの用途においては、その高効率発光機能を生かすことが出来るために半導体量子ドット(B3)であることが好ましい。
【0079】
無機微粒子(B)の含有量は、無機微粒子分散体の固形分100重量%中、20重量%以上98重量%以下が好ましく、40重量%以上98重量%以下がより好ましい。20重量%以上98重量%以下であると、塗膜中の無機微粒子を増やすことが出来るため、無機微粒子添加により得られる効果(屈折率調整、高効率発光など)が大きく、40重量%以上98重量%以下であればそれらの効果により優れたものとすることができる。
【0080】
《無機酸化物微粒子(B1)》
無機酸化物微粒子(B1)としては、一般に市場で入手できるものであれば特に限定されないが、Ti、Zn、Zr、In、Al、Sn、Sb、Ce、Si、Nb、Ta、HfまたはP等を含有する無機酸化物微粒子を用いることができる。中でも無機微粒子の透明性と分散体の安定性の点から、Ti、Zn、Zr、In、Al、SiまたはPの酸化物微粒子であることが好ましい。
【0081】
具体的には、酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化アンチモン(Sb
2O
3)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ(SnO
2)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ケイ素(SiO
2)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化ハフニウム(HfO
2)、五酸化ニオブ(Nb
2O
5)、五酸化タンタル(Ta
2O
5)、及び酸化リン(P
4O
10)から成る群から選択された少なくとも1種の材料から成る粒子が挙げられる。
本発明においては特に酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ケイ素(SiO
2)及び酸化リン(P
4O
10)であることが高透明性と分散体の安定性の点から好ましい。最も好ましくは、高透明性、高屈折率、分散安定性のバランスの点から酸化チタン(TiO
2)である。
【0082】
《無機蛍光体(B2)》
本発明における無機蛍光体(B2)は、一般に市場で入手できるものであれば特に限定されないが、Y、La、Ca、Zn、Ba、Mg、Sr、Ga、Gd、Al、Eu、SiCe、Mnなどの元素を含有する無機蛍光体が挙げられる。上記の中でも、本発明においては発光効率と分散安定性のバランスに優れるために、Y、La、Ca、Zn、Ba、Mg、Sr、Ga、Gdからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有する無機蛍光体が好ましい。
【0083】
例えば、酸化物(YAG等のガーネット系を含む)、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、希土類硫化物、アルミン酸塩化物またはハロリン酸塩化物が挙げられる。
その中でも、波長300〜500nmに励起帯を有し波長380〜780nmに発光ピークを有するもの、特に青色(波長440〜480nm)、緑色(波長500〜540nm)、黄色(波長540〜595nm)、赤色(波長600〜700nm)に発光するものを用いることが好ましい。
【0084】
無機蛍光体としては、例えば、Ca
10(PO
4)
6FCl:Sb,Mn、(SrCaBaMg)
5(PO
4)
3Cl:Eu、LaPO
4:Ce,Tb、Y
2O
3:Eu、BaMgAl
10O
17:Eu、Zn
2SiO
4:Mn、Y
3Al
5O
12:Ce等が挙げられる。
【0085】
波長300〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると青色の発光を発する無機蛍光体としては、(Sr,Ba)MgAl
10O
17:Eu
2+、(Sr,Ba)
3MgSi
2O
8:Eu
2+等が挙げられる。
【0086】
波長300〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると緑色の蛍光を発する無機蛍光体としては、SrAl
2O
4:Eu
2+、SrBaSiO
4:Eu
2+、Y
3(Al,Gd)
5O
12:Ce
2+、SrSiOn:Eu
2+、BaMgAl
10O
17:Eu
2+,Mn
2+、Ba
2MgSi
2O
7:Eu
2+、Ba
2SiO
4:Eu
2+、Ba
2Li
2Si
2O
7:Eu
2+、BaAl
2O
4:Eu
2+等が挙げられる。
【0087】
波長440〜480nmの青色の励起光を照射すると緑色の蛍光を発する無機蛍光体としては、SrAl
2O
4:Eu
2+、SrBaSiO
4:Eu
2+、Y
3(Al,Gd)
5O
12:Ce
2+、SrSiOn:Eu
2+、β‐SiAlON:Eu
2+等が挙げられる。
【0088】
波長300〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると黄色の蛍光を発する無機蛍光体としては、La
3Si
6N
11:Ce
3+等が挙げられる。
【0089】
波長440〜480nmの青色の励起光を照射すると黄色の蛍光を発する無機蛍光体としては、Y
3(Al,Gd)
5O
12:Ce
2+、Sr
2SiO
4:Eu
2+が挙げられる。
【0090】
波長300〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると赤色の蛍光を発する無機蛍光体としては、CaGa
2S
4:Mn
2+、MgSr
3Si
2O
8:Eu
2+,Mn
2+、Ca
2MgSi
2O
7:Eu
2+,Mn
2+等が挙げられる。
【0091】
波長440〜480nmの青色の励起光を照射すると赤色の蛍光を発する無機蛍光体としては、CaAlSiN
3:Eu
2+、CaSiN
3:Eu
2+、(Ca,Sr)
2Si
5N
8:Eu
2+、α−SiAlON:Eu
2+等が挙げられる。
【0092】
なお、励起光や発光の波長域に合わせて、複数の無機蛍光体を混合して用いてもよい。例えば、紫外域の励起光を照射して白色光を得る場合には、Ca
10(PO
4)
6FCl:Sb,Mnが挙げられるが、青色、緑色、黄色、赤色の蛍光を発する無機蛍光体を混合して使用しても良い。
【0093】
《半導体量子ドット(B3)》
一般的に半導体量子ドットは、長径1nm〜100nm程度の粒子であり、離散的なエネルギー準位を有している。半導体量子ドットのエネルギー状態はその大きさに依存するため、サイズを変えることにより自由に発光波長を選択することが可能となる。また、半導体量子ドットの発光光はスペクトル幅が狭い。このような急峻なピークの光を組み合わせることにより色域が拡大する。更に、半導体量子ドットは応答性が高く、光を効率良く利用することができる。加えて、安定性も高い。
【0094】
本発明における半導体量子ドット(B3)は、特に限定されないが例えば、15族元素、15族元素と16族元素との化合物、12族元素と16族元素との化合物、13族元素と16族元素との化合物あるいは14族元素と16族元素との化合物等であり、例えば、CdSe,CdTe,ZnS,CdS,PdS,PbSeまたはCdHgTe等が挙げられる。
その中でも、発光効率と分散安定性のバランスに優れるために、Cd、Se、P、In、Si、Ge、Ga、Sn、Alからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有することが好ましい。
【0095】
本発明における無機微粒子(B)の平均一次粒子径は、分散安定性の観点から1nm以上50μm以下であることが好ましい。
また、無機酸化物微粒子(B1)である場合には、平均一次粒子径は、透過率の観点から5nm以上4μm以下であることが好ましい。より好ましくは5nm以上1μm以下である。
また、無機蛍光体(B2)である場合には、平均一次粒子径は、発光輝度の観点から0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.1μm以上20μm以下である。
また、半導体量子ドット(B3)である場合には、平均一次粒子径は、発光輝度の観点から1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。より好ましくは1nm以上50nm以下である。
【0096】
(無機微粒子の平均一次粒子径測定)
本発明において、無機微粒子の「平均一次粒子径」とは、TEM(透過型電子顕微鏡)を使用して、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で測定することができる。測定方法として具体的には、個々の無機微粒子の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、平均をその一次粒子の平均一次粒子径とした。
【0097】
本発明における無機微粒子(B)は、有機化合物や有機金属化合物などで表面被膜処理されていることが好ましい。表面被膜処理の方法としては、前処理法とインテグラルブレンド法があげられるが、本発明では前処理法が好ましい。前処理法には湿式法、乾式法があり、湿式法には水処理法と溶媒処理法がある。
【0098】
水処理法には、直接溶解法、エマルジョン法およびアミンアダクト法などがある。湿式法は、有機溶剤や水に対して表面処理剤を溶解または懸濁させ、これに無機酸化物微粒子を添加し、このような溶液を数分から1時間程度撹拌して混合し、場合によっては加熱処理を施した後に、濾過などの工程を経て乾燥し、このようにして無機酸化物微粒子表面を被覆する方法である。なお、有機溶剤や水に対して無機酸化物微粒子を分散した懸濁液に表面処理剤を添加しても構わない。表面処理剤としては、直接溶解法では水に溶解する品種、エマルジョン法では水中乳化可能型の品種、アミンアダクト法ではリン酸残基を有する品種が適用できる。アミンアダクト法では、トリアルキルアミンやトリアルキロールアミンなどの3級アミンを少量添加することによって調整液をpH=7〜10にし、かつ中和発熱反応による液温の上昇を抑えるために冷却しながら処理することが好ましく、その他の工程は他の湿式法と同様に処理することで表面被覆が可能である。湿式法において使用可能な表面処理剤としては、使用する有機溶剤や水に溶解したり懸濁可能なものに限られる。
【0099】
分散溶媒としては水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールなどの多価アルコール類およびその誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルジメチルアセトアミドなどのケトン類;ジメチルエーテル、THF、等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの非極性溶媒;2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどのアクリレート類その他一般の有機溶媒が使用できる。分散溶媒の量は通常粒子100重量部に対して100〜2000重量部である。
【0100】
乾式法は、無機酸化物微粒子に直接表面処理剤を添加し、ミキサで撹拌し混合することによって表面を被覆する方法である。一般的に、無機酸化物微粒子表面の水分を除去するために予備乾燥を行うことが好ましい。たとえば、ヘンシェルミキサなどの混合機を用いて数十rpm(1分間当たりの回転数)で100℃前後の温度にて予備乾燥を行った後、表面処理剤を直接もしくは有機溶剤や水に溶解もしくは分散し混合した溶液を添加する。その際、乾燥空気や窒素ガスで噴霧処理することによって、より均一に混合することができる。
【0101】
インテグラルブレンド法は、塗料の分野で一般的に使用される方法であり、無機酸化物微粒子樹脂とを混練する際に表面処理剤を添加して表面を被覆する。
【0102】
本発明の無機微粒子の表面被膜処理に使用できる表面処理剤としては、有機化合物及び有機金属化合物の少なくとも1つが用いられる。これら化合物の具体例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどの各種のシリコーンオイル、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、n−オクタデシルジメチル(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アンモニウムクロライドなどの各種のアルキルシラン、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランなどの各種のフルオロアルキルシラン、特にビニルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤に代表される、シラン系、チタン系、アルミ系、アルミナ−ジルコニア系などの各金属系カップリング剤の有機金属化合物、イソステアリン酸、ステアリン酸などの脂肪酸やそれらの金属塩、さらに界面活性剤などの有機化合物いずれの処理剤も使用可能であり、これらを単独、または二種以上を混合して用いることができる。特にこれを含むコーティング組成物から得る塗膜に硬度、密着性、耐擦傷性を発現させる場合、表面処理はアルミニウム、ケイ素、ジルコニウムを含む無機化合物による処理を含むことが好ましい。
【0103】
表面被膜処理後の無機微粒子中の当該表面処理剤の含有量は、無機微粒子100重量部に対して、5〜20重量部であることが好ましい。表面処理剤の含有量が5重量部未満である場合には、無機酸化物微粒子の凝集を防ぐための効果が得られにくい場合がある。一方、表面処理剤の含有量が20重量部より多い場合には、表面被膜処理後の無機微粒子に含まれる高屈折率成分が相対的に少なくなり、無機微粒子分散体の性能を充分に上げることが出来ない場合がある。
【0104】
本発明においては、上述したように無機微粒子(B)を(メタ)アクリロキシ基及びエポキシ基の少なくともいずれかで一部変性されたシロキサン化合物(A1)を含む分散剤(A)にて、メディア型湿式分散機により分散する必要がある。これにより、安定性やその他硬度など優れた無機微粒子分散体を得ることができる。また、さらに樹脂型分散剤(A2)と併用して用いることが、分散安定性の面から好ましい。好ましい分散方法などは上述したとおりである。
さらに本発明における無機微粒子分散体は、無機微粒子(B)を樹脂型分散剤(B)のみで分散した無機微粒子(B)の分散体を混合して用いることが出来る。例えばシロキサン化合物(A1)で分散した無機酸化物微粒子(B1)と樹脂型分散剤(B)のみで分散した無機蛍光体(B2)を含む場合などである。
【0105】
<樹脂(C)>
本発明の無機微粒子分散体においては、アルカリ現像性、基板密着性、可撓性を得ることが出来るため樹脂(C)を含むことが好ましい。樹脂(C)としては、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂が好ましい。
また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および感光性樹脂が挙げられ、これらを単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0106】
樹脂(C)を用いる場合、その含有量は、無機微粒子分散体100重量%中、1重量%以上、50重量%以下が好ましい。樹脂(C)の含有量が1重量%未満であると、得られる無機微粒子分散体が塗工性に劣るものとなることがあり、50重量%を超えると、得られる無機微粒子分散体の硬化物のガスバリア性が劣るものとなる場合がある。
【0107】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、およびポリイミド樹脂等が挙げられる。中でもアクリル樹脂が好ましい。
【0108】
熱硬化性樹脂としては例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、尿素樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、乾性油、合成乾性油、等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。前記熱可塑性樹脂の熱架橋剤として、組み合わせても使用できる。中でもエポキシ樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。
【0109】
感光性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該線状高分子に導入した樹脂が用いられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。しかし、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0110】
これらの中でも、樹脂(C)として、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコーン樹脂のうちいずれかを含むことが好ましく、塗膜・封止剤として用いる場合のガスバリア性、硬度、基材への密着性に優れたものとすることができる。
【0111】
《アクリル樹脂》
アクリル樹脂としては例えば、(メタ)アクリル酸等の酸性基含有エチレン性不飽和単量体を共重合したアルカリ可溶性ビニル系樹脂を使用することが好ましい。酸性基含有エチレン性不飽和単量体を共重合したアルカリ可溶性ビニル系樹脂としては、例えば、カルボキシル基、スルホン基等の酸性基を有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂として具体的には、酸性基を有するアクリル樹脂、α−オレフィン/(無水)マレイン酸共重合体、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、又はイソブチレン/(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、酸性基を有するアクリル樹脂、およびスチレン/スチレンスルホン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂、特に酸性基を有するアクリル樹脂は、耐熱性、透明性が高いため、好適に用いられる。
【0112】
また、エチレン性不飽和活性二重結合を有するエネルギー線硬化性樹脂を使用することもできる。エチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂としては、たとえば以下に示す(a)や(b)の方法によりエチレン性不飽和二重結合を導入した樹脂が挙げられる。
【0113】
(方法(a))
方法(a)としては、例えば、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体と、他の1種類以上のエチレン性不飽和活性単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖エポキシ基に、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和一塩基酸のカルボキシル基を付加反応させ、更に、生成した水酸基に、多塩基酸無水物を反応させ、エチレン性不飽和二重結合およびカルボキシル基を導入する方法がある。
【0114】
エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4エポキシブチル(メタ)アクリレート、及び3,4エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。次工程の不飽和一塩基酸との反応性の観点で、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0115】
不飽和一塩基酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体等のモノカルボン酸等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。
【0116】
多塩基酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。カルボキシル基の数を増やす等、必要に応じて、トリメリット酸無水物等のトリカルボン酸無水物を用いたり、ピロメリット酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物を用いて、残った無水物基を加水分解したりすること等もできる。また、多塩基酸無水物として、エチレン性不飽和二重結合を有する、エトラヒドロ無水フタル酸、又は無水マレイン酸を用いると、更にエチレン性不飽和二重結合を増やすことができる。
【0117】
方法(a)の類似の方法として、例えば、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と、他の1種類以上の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖カルボキシル基の一部に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を付加反応させ、エチレン性不飽和二重結合およびカルボキシル基を導入する方法がある。
【0118】
(方法(b))
方法(b)としては、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体を使用し、他のカルボキシル基を有する不飽和一塩基酸の単量体や、他の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖水酸基に、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体のイソシアネート基を反応させる方法がある。
【0119】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−若しくは3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−若しくは3−若しくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、又はシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用して用いてもかまわない。また、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び/又はブチレンオキシド等を付加重合させたポリエーテルモノ(メタ)アクリレートや、(ポリ)γ−バレロラクトン、(ポリ)ε−カプロラクトン、及び/又は(ポリ)12−ヒドロキシステアリン酸等を付加した(ポリ)エステルモノ(メタ)アクリレートも使用できる。塗膜異物抑制の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、又はグリセロール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0120】
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、又は1,1−ビス〔(メタ)アクリロキシ〕エチルイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定することなく、2種類以上併用することもできる。
【0121】
特にアクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、若しくはα−クロルアクリル酸等の不飽和モノカルボン酸、及びマレイン酸、若しくはフマル酸等の不飽和ジカルボン酸等のカルボキシル基を含有しかつエチレン性不飽和二重結合を有する化合物等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体からなる群と、メチル(メタ)メタアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチルアクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、t−ペンチル(メタ)アクリレート、1−メチルブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプタ(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、若しくはオレイル(メタ)アクリレート等のアルキル又はアルケニル(メタ)アクリレート等のアクリレート類からなる群とから選ばれ、それぞれ1種類以上使用することが好ましい。
【0122】
アクリル樹脂の中でアルカリ可溶性能とエネルギー線硬化性能とを併せもつものも使用できる。
【0123】
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は5,000〜100,000の範囲が好ましく、より好ましくは5,000〜80,000の範囲であり、さらに好ましくは、5,000〜30,000の範囲である。また数平均分子量(Mn)は5,000〜50,000の範囲が好ましく、Mw/Mnの値は10以下であることが好ましい。
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が100,000を越えると樹脂間の相互作用が強くなり、粘度が高くなるため、取り扱いが困難となりやすい。また、重量平均分子量(Mw)が5,000未満だと現像性や基板への密着性に問題が起こることがある。
【0124】
アクリル樹脂の含有量は、樹脂(C)全体100重量%中、10重量%以上100重量%以下が好ましい。アクリル樹脂の含有量が10重量%未満であると、得られる無機微粒子分散体が塗工性に劣るものとなることがある。
【0125】
《エポキシ樹脂》
本発明におけるエポキシ樹脂は、高分子のみならず低分子のエポキシ化合物も含むものとする。ただし、シロキサン化合物(A1)に相当するものは除く。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD等)、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール、α,α,α’,α’−ベンゼンジメタノール、ビフェニルジメタノール、α,α,α’,α’−ビフェニルジメタノール等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’−ジクロロキシレン、ビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、アルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、等が挙げられるが、通常用いられるエポキシ化合物であればこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
なかでも、反応性に優れることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
また、1分子中に2以上の環状エーテル構造を有するポリフェニル型エポキシ樹脂、縮合多環芳香族型エポキシ樹脂を用いると、樹脂組成物の屈折率を調整することが出来るため好ましい。環状エーテル構造を有するポリフェニル型エポキシ樹脂としては、ビフェニルジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテル、ビフェニルオキセタン等が挙げられる。また、環状エーテル構造を有する縮合多環芳香族型エポキシ樹脂としては、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0126】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)が200未満であると、得られる有機EL表示素子用封止剤が、接着性や硬化物の耐湿性に劣るものとなることがある。上記エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)が5000を超えると、得られる有機EL表示素子用封止剤が硬化性に劣るものとなったりすることがある。
【0127】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。
【0128】
上記エポキシ樹脂の含有量は、樹脂(C)全体100重量%中、30重量%以上80重量%以下であることが好ましい。エポキシ樹脂の含有量が30重量%未満であると、得られる無機微粒子分散体が塗工性に劣るものとなることがある。上記エポキシ樹脂の含有量が80重量%を超えると、得られる無機微粒子分散体の硬化物がガスバリア性に劣るものとなったりすることがある。より好ましくは30重量%以上60重量%以下である。
【0129】
エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート190P、エピコート191P(以上油化シェルエポキシ(株)製)、エピコート1004、エピコート1256(以上三菱化学社製)、TECHMORE VG3101L(以上三井化学(株)製)、EPPN−501H、502H(以上日本化薬(株)製)、JER 1032H60(以上三菱化学社製)、JER 157S65、157S70(以上三菱化学社製)、EPPN−201(日本化薬(株)製)、JER152、JER154(以上三菱化学社製)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1020(以上日本化薬(株)製)、セロキサイド2021P、EHPE−3150(以上ダイセル化学工業(株)製)、デナコールEX−810、EX−830、EX−851、EX−611、EX−512、EX−421、EX−411、EX−321、EX−313、EX−201、EX−111(以上ナガセケムテックス(株)製)、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYLRDX63182(以上ダイセルサイテック社製)、EA−1010、EA−1020、EA−5323、EA−5520、EA−CHD、EMA−1020(以上新中村化学工業社製)、エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA(以上共栄社化学社製)、デナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314、デナコールアクリレートDA−911(以上ナガセケムテックス社製)、jER YL―6121、jER YX―4000、jER YX−8800(以上三菱化学社製)、ETERNACOLL OXBP(宇部興産社製)、EPICRON HP−4032D(DIC社製)、オグソールEG(大阪ガスケミカル社製)等が挙げられる。
【0130】
《シリコーン樹脂》
シリコーン樹脂は、主鎖をオルガノポリシロキサンとした鎖状構造を有するものと、分岐した3次元構造を有するものを含む。ただし、シロキサン化合物(A1)に相当するものは除く。
シリコーン樹脂の特性は加水分解と脱水縮合工程により導入された官能基や構造によって大きく変化する。例えば、メチル基やフェニル基のみが導入されたもの、それらの一部に水素が付加したものをストレートシリコーンと呼び、撥水性・耐熱性に優れる。また一部が変性されたシリコーン樹脂を変性シリコーンと呼び、電気特性や耐光性に優れる。さらに3次元に架橋した構造を持つシリコーン樹脂は優れた耐熱性と硬度を有する。本発明においては、公知のシリコーン樹脂のどれを用いても良いが、カルボン酸、カルボン酸無水物が付加されたものが硬度に優れるため好ましい。
【0131】
市販されているシリコーン樹脂としては、例えばジメチルシリコーンKF−96シリーズ、KF−96Aシリーズ、KF−96Lシリーズ、KF−96Hシリーズ、メチルフェニルシリコーンKF−50シリーズ、メチルハイドロジェンシリコーンKF−99、KF−9901、アミン変性シリコーンKF−868、ジアミン変性シリコーンKF−859、カルボキシル変性シリコーンX−22−3701E、X−22−162C、X−22−3710、フッ素アルキル変性シリコーンX−22−821、カルボン酸無水物変性シリコーンX−22−168A、KR−300、KR−212、KR−213、KR−5230、KR−5235(以上、信越化学株式会社製)、804RESIN、Z−6018、(以上、東レ・ダウコーニング社製)などが挙げられる。
【0132】
シリコーン樹脂の含有量は、樹脂(C)全体100重量中、10重量%以上100重量%以下が好ましい。シリコーン樹脂の含有量が10重量%未満であると、得られる無機微粒子分散体がガスバリア性に劣るものとなることがある。
【0133】
《その他の樹脂》
本発明の無機微粒子分散体は、塗膜耐久性を更に付与すべく、更にその他の樹脂を添加する事が出来る。
熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、カルボジイミド樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ブロック化カルボン酸化合物、およびブロック化イソシアネート化合物からなる群から選ばれる化合物1種若しくは2種以上を用いることができる。好ましくは、メラミン樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂である。
【0134】
メラミン樹脂又はベンゾグアナミン樹脂としては、例えば、イミノ基、メチロール基、アルコキシメチル基を有するものが挙げられる。その中でも、アルコキシアルキル基を含有するメラミン樹脂又はベンゾグアナミン樹脂が好ましい。アルコキシアルキル基を含有するメラミン樹脂又はベンゾグアナミン樹脂を用いた場合、本発明の樹脂組成物の保存安定性が著しく向上する。
【0135】
アルコキシアルキル基を含有するメラミン樹脂又はベンゾグアナミン樹脂としては、例えば、ヘキサメトキシメチロールメラミン、ヘキサブトキシメチロールメラミン、テトラメトキシメチロールベンゾグアナミン、テトラブトキシメチロールベンゾグアナミン等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0136】
メラミン樹脂の市販品の具体例としては以下のものが挙げられる。但し、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0137】
三和ケミカル社製ニカラックMW−30M、MW−30、MW−22、MS−21、MS−11、MW−24X、MS−001、MX−002、MX−730、MX750、MX−708、MX−706、MX−042、MX−035、MX−45、MX−500、MX−520、MX−43、MX−417、MX−410、MX−302、日本サイテックスインダストリー社製サイメル300、301、303、350、370、325、327、703、712、01、285、232、235、236、238、211、254、204、202、207、マイコート506、508、212、715などが挙げられる。
【0138】
その中でも好適なのは、アルコキシアルキル基含有のメラミン樹脂である、三和ケミカル社製ニカラックMW−30M、MW−30、MW−22、MS−21、MX−45、MX−500、MX−520、MX−43、MX−302、日本サイテックスインダストリー社製サイメル300、301、303、350、285、232、235、236、238、マイコート506、508である。
【0139】
ベンゾグアナミン樹脂の市販品の具体例としては、例えば、三和ケミカル社製ニカラックBX−4000、SB−401、BX−37、SB−355、SB−303、SB301、BL−60、SB−255、SB−203、SB−201、日本サイテックスインダストリー社製サイメル1123、マイコート105、106、1128などが挙げられる。
【0140】
その中でも好適なのは、アルコキシアルキル基含有のベンゾグアナミン樹脂である、三和ケミカル社製ニカラックBX−4000、SB−401、日本サイテックスインダストリー社製サイメル1123である。
【0141】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノール類とアルデヒド類を酸性触媒下で反応させたノボラック型フェノール樹脂、塩基性触媒下で反応させたレゾール型フェノール樹脂どちらも用いることができる。フェノール類としては、例えば、オルトクレゾール、パラクレゾール、パラフェニルフェノール、パラノニルフェノール、2,3−キシレノール、フェノール、メタクレゾール、3,5−キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールH、ビスフェノールS等を挙げることができる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドを挙げることができる。フェノール類とアルデヒド類は、それぞれ1種を単独で、又は2種以上を混合して用いられる。
【0142】
ブロック化イソシアネート化合物のイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート、これらジイソシアネートのイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンアダクト型、ビウレット型、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)及びイソシアネート残基を有するウレトジオン等を挙げることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0143】
ブロック化イソシアネート化合物のブロック剤としては、例えば、フェノール(解離温度180℃以上)、ε−カプロラクタム(解離温度160〜180℃)、オキシム(解離温度130〜160℃)、又は活性メチレン(100〜120℃)等を挙げることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、1種を単独で、あるいは2種以上を併用して用いられる。
【0144】
<硬化剤>
本発明の無機微粒子分散体は、エポキシ樹脂等を用いる場合、該樹脂との反応のため硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤は特に限定されず、例えば、ヒドラジド化合物、イミダゾール誘導体、酸無水物、ジシアンジアミド、グアニジン誘導体、変性脂肪族ポリアミン、各種アミンとエポキシ樹脂との付加生成物等が挙げられる。
【0145】
ヒドラジド化合物は特に限定されず、例えば、1,3−ビス[ヒドラジノカルボノエチル−5−イソプロピルヒダントイン]等が挙げられる。上記イミダゾール誘導体は特に限定されず、例えば、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、N−[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]尿素、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、N,N’−ビス(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)尿素、N,N’−(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)−アジポアミド、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、酪酸無水物、へキサン酸無水物 、酢酸プロピオン酸無水物等の脂肪族カルボン酸無水物、コハク酸無水物、マレイン酸無水物等の脂肪族ジカルボン酸無水物、シクロへキサン酸カルボン酸等の脂肪族環式カルボン酸無水物、安息香酸無水物、フタル酸無水物、等の芳香族カルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、等の芳香族ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0146】
より具体的には、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6 エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸3,3’ ,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物を好ましく使用することができる。
【0147】
市販品としては、リカシッドTH、リカシッドHT−1A、リカシッドHH、リカシッドMH−700、リカシッドMH−700G、リカシッドMH(いずれも新日本(株)製)、HN−2200、HN−2000、HN−5500、無水メチルハイミック酸(MHAC−P)(いずれも日立化成(株)製)、YH−306、YH−307(いずれも三菱化学(株)製)等が挙げられる。これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0148】
また、150℃以下の比較的低温で硬化が可能な熱硬化剤が市販されており、そのような熱硬化剤としては、例えば、SbF6系のアデカオプトンCP−66、CP−77(いずれも、ADEKA社製)等が挙げられる。また、熱活性だけでなく光活性も有している熱硬化剤として、例えば、SbF6系又はPF6系のサンエイドSIシリーズ(三新化学工業社製)等が挙げられる。
また、低温硬化性、高屈折率、光硬化性を有する硬化剤として、硫黄元素を含むカレンズMTPE1、カレンズMTBD1、カレンズMTNR1(昭和電工社製)、ペンタエリスリトール-テトラキス-3-メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0149】
硬化剤の好適な含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、1重量部以上、20重量部以下が好ましい。上記硬化剤の含有量が1重量部未満であると、得られる無機微粒子分散体が硬化性に劣るものとなることがある。上記硬化剤の含有量が20重量部を超えると、得られる無機微粒子分散体の硬化物のガスバリア性が劣るものとなったりすることがある。
【0150】
<硬化助剤>
本発明の無機微粒子分散体には、エポキシ樹脂等を用いる場合、該樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との硬化反応を促進させるために、硬化助剤を加えることができる。
【0151】
硬化助剤としては、塩基性化合物を用いることができる。塩基性化合物の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラエチルメチレンジアミン、テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、テトラメチアレヘキサン−1,6−ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコール(3−ジメチル)アミノプロピルエーテル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルフェノール、N,N−ジメチルプロピアレアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−メチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセン−7、1,2−ジメチルイミダゾール、ジメチルピペラジン、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)−エチルピペラジン、N−メチルモルホリン、N−(N’,N’−ジメチルアミノ)エチル)モルホリン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、トリエチレンジアミン、およびヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。これらの中でも3級アミンが好ましく、N,N−ジメチルベンジルアミン、および2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが特に好ましい。これらは1種単独で用いることも、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いることもできる。
【0152】
また硬化助剤としては、リン原子含有化合物も用いることもできる。リン原子含有化合物の具体例としては、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリアルキル、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、および1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは1種単独で用いることも、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いることもできる。
【0153】
市販されている硬化助剤製品として、例えば、エピキュア3010(三菱化学社製)、イミダゾール化合物2PZ、2PHZ、2P4MHZ、C17Z、2MZ−A、2E4MZ−CNS、2MA−OK(四国化成工業(株)製)、アミキュアPN23、PN31、PN40J、PN−H、MY24、MY−H(味の素ファインテクノ(株)製)、EH−3293S、EH−3366S、EH−3615S、EH−4070S、EH−4342S、EH−3731S(ADEKA社製)、ノバキュアHX−3742、HX−3721(旭化成ケミカルズ(株)製)、FXE−1000、FXR−1030、FXR−1080、FXR−1110(富士化成工業(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0154】
硬化助剤の好適な含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、1重量部以上、5重量部以下が好ましい。上記硬化剤の含有量が1重量部未満であると、得られる無機微粒子分散体が硬化性に劣るものとなることがある。上記硬化剤の含有量が5重量部を超えると、得られる無機微粒子分散体の硬化物のガスバリア性が劣るものとなったりすることがある。
【0155】
<光重合単量体>
本発明の無機微粒子分散体は、光重合単量体を含むことが出来る。光重合単量体である多官能モノマーには、紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれる。多官能モノマーの中でも、酸性基を有する多官能モノマー、または1分子中に7個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する多官能モノマーが現像性に優れるために好ましい。
【0156】
多官能モノマーの含有量としては、無機微粒子分散体の固形分の合計100重量%中、5〜20重量%の量で用いることが好ましい。この場合、5重量%より多官能モノマーが少ないと、表面硬度アップや耐溶剤性付与という効果が得られず、20重量%より多いと、相対的に無機微粒子の添加量が減少し、優れたガスバリア性などの効果を得ることが出来ない。より好ましくは、5〜15重量%である。
【0157】
多官能モノマーとして例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0158】
市販品としては、M−350(トリメチロールプロパンエチレンオキサイド 変性トリアクリレート)、M−450(ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート)、M−402(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート)(東亜合成社製)、カヤラッドDPCA30(カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレ−ト)(日本化薬社製)などが挙げられる。
【0159】
《1分子中に7個以上のエチレン性二重不飽和結合を有する多官能モノマー》
これら多官能モノマーの中でも、1分子中に7個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能モノマーを含むことで、より現像性に優れるものとなるために好ましい。
【0160】
7個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能モノマーとして例えば、下記一般式(12)で表される多官能モノマーであることが好ましい。
なかでも、現像性に優れるものとなるために7〜16個のエチレン性不飽和結合を有する多官能モノマーであることが好ましく、さらに7〜12個である場合がより好ましい。
【0161】
【化12】
[一般式(12)において、nは0〜4の整数であり、R
2はエーテル基、アルキレン基、トリレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、エステル基、および一般式(13)で表される構造を有する2価の基からなる群より選ばれるいずれかであり、R
3は水素原子またはメチル基であり、R
4はヒドロキシル基、カルボキシル基、および(メタ)アクリロキシ基からなる群より選ばれるいずれかである。]
【0162】
【化13】
[一般式(13)において、R
5は脂肪族、脂環式または芳香族の構造を表す。]
【0163】
一般式(12)で表される化合物の中でも、R
2はエーテル基、または一般式(13)で表される構造を有する2価の基であることが、表面硬度と密着性において好ましい。
【0164】
R
2がエーテル基であるものとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと多官能イソシアネートを反応させて得られる化合物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと四塩基酸二無水物を反応させて得られる化合物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと多官能エポキシ化合物を反応させて得られる化合物等を挙げることができる。
【0165】
多官能イソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。
また、四塩基酸二無水物の具体例としては、無水ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテートモノアセテート)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキシセンテトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
また、多官能エポキシ化合物の具体例としては、トリス(グリシジルフェニル)メタン、トリグリシジルイソシアヌレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0166】
一般式(12)においてR
2がエーテル基である多官能性モノマーの中でも、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカ(メタ)アクリレート、またはペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレートが好ましい。
これらのなかでも、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、またはペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレートが最も好ましく、これらを混合して含むものであっても良い。
【0167】
このような多官能モノマーとして市販品では、例えば、ビスコート#802(トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、テトラペンタエリスリトールデカアクリレート、およびペンタペンタエリスリトールドデカアクリレートの混合物、大阪有機化学工業株式会社製)を挙げることができる。
【0168】
R
5が、一般式(13)で表される構造を有する2価の基である場合、さらにn=1でかつR
4が(メタ)アクリロイル基であれば、表面硬度の面でより好ましい。
【0169】
このような多官能モノマーとして市販品では、例えば、TO−2323、TO−2324、TO−2325、TO−2326、TO−2327及びTO−2328(東亜合成株式会社製)を挙げることができる。
【0170】
《酸性基を有する多官能モノマー》
また、酸性基を有する多官能モノマーを含むことが好ましく、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との遊離水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート類と、ジカルボン酸類とのエステル化物;多価カルボン酸と、モノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類とのエステル化物等を挙げることができる。具体例としては、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のモノヒドロキシオリゴアクリレートまたはモノヒドロキシオリゴメタクリレート類と、マロン酸、こはく酸、グルタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸類との遊離カルボキシル基含有モノエステル化物;プロパン−1,2,3−トリカルボン酸(トリカルバリル酸)、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ベンゼン−1,2,3−トリカルボン酸、ベンゼン−1,3,4−トリカルボン酸、ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸等のトリカルボン酸類と、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のモノヒドロキシモノアクリレートまたはモノヒドロキシモノメタクリレート類との遊離カルボキシル基含有オリゴエステル化物等を挙げることができる。
【0171】
また、下記一般式(14)により表わされる化合物も好ましく使用できる。
一般式(14):
(H
2C=C(R
51)COO)
h−X−(OCOCH(R
51)CH
2S(R
50)COOH)
i
[一般式(14)中、R
51は水素原子またはメチル基、R
50は炭素数1〜12の炭化水素基、Xは(h+i)価の炭素数3〜60の有機基、hは2〜18の整数、iは1〜3の整数を示す。]
【0172】
ここで、一般式(14)で表される化合物は、例えば、以下の方法により容易に得ることができる。
(1)Xで表される有機基を与える化合物をアクリル酸とエステル化してアクリル化させた後、得られた化合物にメルカプト化合物を付加させる方法
(2)Xで表される有機基を与える化合物をポリイソシアネート化合物で変性させた後、得られた化合物に水酸基を有するアクリレート化合物でアクリル化させた後、得られた化合物にメルカプト化合物を付加させる方法
(3)Xで表される有機基を与える化合物をアクリル酸とエステル化してアクリル化させた後、ポリイソシアネート化合物で変性させ、得られた化合物にメルカプト化合物を付加させる方法。
【0173】
Xで表される有機基を与える化合物としては、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物、ペンタエリスリトールのポリイソシアネート変性物、及びジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物、ジペンタエリスリトールのポリイソシアネート変性物を挙げることができる。
【0174】
メルカプト化合物としては、例えば、メルカプト酢酸、2-メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、o−メルカプト安息香酸、2−メルカプトニコチン酸、メルカプトコハク酸などが挙げられる。
【0175】
<光重合開始剤>
本発明の無機微粒子分散体には、該分散体を紫外線照射により硬化させて塗膜を形成するため、またはフォトリソグラフィー法による塗膜を形成するために、ラジカル光重合開始剤やカチオン光重合開始剤を加えて調製することが好ましい。
【0176】
ラジカル光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、1,2−オクタジオン−1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、またはイミダゾール系光重合開始剤等が用いられる。
これらの光重合性化合物は、1種を単独で、または必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0177】
なかでもアセトフェノン系光重合開始剤、およびオキシムエステル系光重合開始剤は、加熱工程時に黄変が少なく透過率が高くなることから、好ましい。アセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的にはイルガキュア907(BASF社製)、イルガキュア379(BASF社製)、イルガキュア379EG(BASF社製)などがある。
【0178】
さらにそのなかでも、オキシムエステル系光重合開始剤は、感度が高く、添加量を少なくすることが出来ることから、その分無機酸化物微粒子添加量を増やし屈折率を高くすることが出来るため、特に好ましい。これらはそれぞれを単独で用いても良く、ともに含んでいても良い。
オキシムエステル系光重合開始剤のなかでも、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル−,2−(o−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム))は、加熱工程時に黄変がより小さく、塗膜としての透過率が高く、特に波長400nm付近の透過率が高い感光性組成物を提供することができるため、より好ましい。これらはそれぞれを単独で用いても良く、ともに含んでいても良い。具体的には、イルガキュアOXE01(BASF社製)、イルガキュアOXE02(BASF社製)などである。
【0179】
ラジカル光重合開始剤は、無機微粒子分散体の固形分合計100重量%中、0.5〜10重量%の量で用いることが好ましく、透過率の観点から0.5〜5重量%の量で用いることがより好ましい。
【0180】
カチオン光重合開始剤は、UV照射あるいは加熱によりテトラフルオロホウ酸や、ヘキサフルオロリン酸などの強酸を生じ、この強酸が後述するカチオン重合性化合物の酸素原子をプロトン化してカチオン活性種が形成され、重合反応が開始されるものであり、公知の化合物を、特に限定なく使用することができる。
【0181】
カチオン光重合開始剤として例えば、カチオン部分が、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チオキサントニウム、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄カチオン、またはチアンスレニウムであって、アニオン部分が、BF
4−、PF
6−、SbF
6−、または[BX
4]
−(但し、Xは、フェニル基の有する水素原子の2個以上が、フッ素原子またはトリフルオロメチル基によって置換された官能基を示す。)で構成される、芳香族スルホニウム塩(B1)、芳香族ヨードニウム塩(B2)、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩、チオキサントニウム塩、または(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄塩等が挙げられる
これらのカチオン光重合開始剤は、1種を単独で、または必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0182】
これらの中でも、芳香族スルホニウム塩(B1)、または芳香族ヨードニウム塩(B2)が、残膜率および密着性向上のために好ましく、残膜率向上の観点から、より好ましくは、芳香族ヨードニウム塩(B2)である。
【0183】
芳香族スルホニウム塩(B1)としては、例えばビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
【0184】
芳香族ヨードニウム塩(B2)としては、例えばジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
【0185】
芳香族ジアゾニウム塩としては、例えばフェニルジアゾニウム ヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウム テトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
【0186】
芳香族アンモニウム塩としては、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロアンチモネート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム テトラフルオロボレート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム テトラフルオロボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
【0187】
チオキサントニウム塩としては、S−ビフェニル 2−イソプロピル チオキサントニウムヘキサフルオロホスフェート等を使用することができる。
【0188】
(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄塩としては、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄(II)テトラフルオロボレート、2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
【0189】
カチオン光重合開始剤としては、例えば、CPI−100P、CPI−200K、CPI−101A(以上、サンアプロ(株)製)、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6990、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6992、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6976(以上、ダウ・ケミカル日本(株)製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172(以上、旭電化工業(株)製)、CI−5102、CI−2855(以上、日本曹達(株)製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−110L、サンエイドSI−180L、サンエイドSI−110、サンエイドSI−145、サンエイドSI−150、サンエイドSI−160、サンエイドSI−180(以上、三新化学工業(株)製)、エサキュア1064、エサキュア1187(以上、ランベルティ社製)、オムニキャット432、オムニキャット440、オムニキャット445、オムニキャット550、オムニキャット650、オムニキャットBL−550(アイジーエム レジン社製)、イルガキュア250(BASF(株)製)、ロードシル フォトイニシエーター2074(RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074(ローディア・ジャパン(株)製)、WPI−113、WPI−116、WPI−169、WPI−170(和光純薬工業(株)製)等が市販されている。
【0190】
これらの中では、芳香族スルホニウム塩(B1)であるサンアプロ社製CPI―100P、CPI―101A、CPI―200K、CPI―210S、あるいは芳香族ヨードニウム塩(B2)であるBASF社製イルガキュア250、和光純薬工業社製WPI−113、WPI−116、WPI−169、WPI−170が好ましい。
【0191】
カチオン光重合開始剤は、無機微粒子分散体の固形分の合計100重量%中、0.1〜30重量%の量で用いることが好ましく、残膜率、耐薬品性、透過率の観点から1〜20重量%の量で用いることがより好ましい。
【0192】
本発明の無機微粒子分散体は、さらに増感剤として、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の化合物を併用することもできる。
増感剤は、光重合開始剤100重量部に対して、0.1〜150重量部の量で用いることができる。
【0193】
<酸発生剤>
本発明の無機微粒子分散体においては、光酸発生剤と熱酸発生剤を用いることが出来る。光酸発生剤は、露光時に結合開裂を起こして酸を発生する化合物である。酸はシラノールの脱水縮合を促進する触媒として機能するため、熱硬化時に酸が存在することで未反応のシラノール基の縮合が促進され、塗膜の架橋度が高くなる。それにより、塗膜の表面硬度や耐薬品性が向上する。発生する酸としてはパーフルオロアルキルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの強酸であることが好ましく、カルボン酸を発生する感光剤のナフトキノンジアジド化合物はここでいう光酸発生剤の機能は有していない。
【0194】
好ましく用いられる光酸発生剤の具体例としては、SI−100、SI−101、SI−105、SI−106、SI−109、PI−105、PI−106、PI−109、NAI−100、NAI−1002、NAI−1003、NAI−1004、NAI−101、NAI−105、NAI−106、NAI−109、NDI−101、NDI−105、NDI−106、NDI−109、PAI−01、PAI−101、PAI−106、PAI−1001(以上商品名、みどり化学(株)製)、SP−077、SP−082(以上商品名、(株)ADEKA製)、TPS−PFBS(以上商品名、東洋合成工業(株)製)、CGI−MDT、CGI−NIT(以上商品名、チバジャパン(株)製)、WPAG−281、WPAG−336、WPAG−339、WPAG−342、WPAG−344、WPAG−350、WPAG−370、WPAG−372、WPAG−449、WPAG−469、WPAG−505、WPAG−506(以上商品名、和光純薬工業(株)製)などが挙げられる。なお、これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0195】
熱酸発生剤は、熱硬化時に分解して酸を発生する化合物である。発生した酸によって未反応のシラノール基の縮合が促進されるため、塗膜の架橋度が高くなる。それにより、塗膜の表面硬度、耐薬品性が向上する。組成物塗布後にプリベークによって酸を発生しない、あるいは少量しか発生しないことが好ましい。すなわちプリベーク温度以上、例えば100℃以上で酸を発生する化合物であることが好ましい。プリベーク温度以下で酸が発生すると、プリベーク時にポリシロキサンの架橋が起こりやすくなり、感度の低下や現像時に残渣が発生する場合がある。
【0196】
好ましく用いられる熱酸発生剤の具体例としては、“サンエイド”SI−60、SI−80、SI−100、SI−200、SI−110、SI−145、SI−150、SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L、SI−145L、SI−150L、SI−160L、SI−180L(以上三新化学工業(株)製)、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、2−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシカルボニルオキシフェニルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ベンジル−4−メトキシカルボニルオキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート(以上三新化学工業(株)製)などが挙げられる。なお、これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0197】
酸発生剤を用いる場合、その含有量は、無機微粒子分散体の固形分の合計100重量%中、0.1〜10重量%の量で用いることが好ましく、残膜率、耐薬品性、透過率の観点から1〜5重量%の量で用いることがより好ましい。
【0198】
<硬化制御剤>
本発明の無機微粒子分散体を光学デバイス用封止剤として使用し、エポキシ樹脂等を用いる場合には、更に硬化制御剤を含有することが好ましい。硬化制御剤を配合することにより、光照射から一定時間経過後に硬化させることができ、有機EL素子などの積層体を紫外線等により損傷することなく封止を行うことができる。つまり、上記エポキシ樹脂、カチオン光重合開始剤とともに用いる場合に、光を照射し活性化をさせながらも、硬化反応を硬化制御剤にてゆっくりと進行させ、封止充填し、その後再度硬化させることで紫外線等による損傷を防ぐものである。
【0199】
硬化制御剤は特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリアルキレンオキサイドや、クラウンエーテル等のエーテル結合を有する化合物が好適である。
【0200】
硬化制御剤としてポリアルキレンオキサイドを用いる場合、ポリアルキレンオキサイドの末端は特に限定されず、水酸基であってもよいし、他の化合物によりエーテル化、エステル化されていてもよいし、エポキシ基等の官能基となっていてもよく、なかでも、カチオン重合性化合物と反応するため、水酸基、エポキシ基等となっていることが好適である。更に、ポリアルキレンオキサイドとしては、ポリアルキレンオキサイド付加ビスフェノール誘導体も好適に用いられ、特に末端が水酸基又はエポキシ基を有する化合物がより好適に用いられる。
【0201】
硬化制御剤は、ポリエチレングリコール骨格及び/又はポリプロピレングリコール骨格を分子内に2つ以上有することが好ましい。
【0202】
硬化制御剤のなかでも、ポリエチレングリコール骨格を分子内に2つ以上有する硬化制御剤の市販品としては、例えば、「リカレジンBEO−60E」、「リカレジンEO−20」(いずれも新日本理化社製)等が挙げられる。また、ポリプロピレングリコール骨格を分子内に2つ以上有する硬化制御剤の市販品としては、例えば、「リカレジンBPO−20E」、「リカレジンPO−20」(いずれも新日本理化社製)等が挙げられる。
【0203】
クラウンエーテルとしては、例えば、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ジシクロへキシル−18−クラウン−6等が挙げられる。
【0204】
硬化制御剤の含有量は特に限定されないが、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.05重量部以上10重量部以下が好ましい。硬化制御剤の含有量が0.05重量部未満であると、光照射後に充分な制御効果が得られないことがある。硬化制御剤の含有量が10重量部を超えると、硬化させる際に発生するアウトガス等が多くなり、不具合を生じることがある。より好ましくは0.1重量部以上5重量部以下である。
【0205】
<反応性希釈剤>
硬化制御剤は、反応性希釈剤を併用することが好ましい。エポキシ樹脂が反応性希釈剤を含有することにより、光学デバイス用封止剤の硬化物の屈折率を低下させることなく光学デバイス用封止剤の塗工性を向上させることができる。反応性希釈剤は特に限定されず、例えば、ビフェニルモノグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、「デナコールEX−142」)等が挙げられる。
【0206】
反応性希釈剤の含有量は特に限定されないが、エポキシ樹脂100重量部に対し、10重量部以上80重量部以下が好ましい。反応性希釈剤の含有量が10重量部未満であると、得られる光学デバイス用封止剤を塗工することが困難となることがある。反応性希釈剤の含有量が80重量部を超えると、得られる光学デバイスがガスバリア性に劣るものとなることがある。より好ましくは10重量部以上60重量部以下である。
【0207】
<有機散乱粒子>
本発明の無機微粒子分散体においては、有機散乱粒子を含むことができる。この場合の有機散乱粒子とは、平均一次粒子径が0.1μm以上4μm以下の有機散乱粒子のことである。有機散乱粒子の平均一次粒子径が0.1μm未満であると、充分な散乱効果が現れず、無機微粒子分散体の屈折率に影響を与えてしまうため、好ましくない場合がある。また、4μmより大きいと、散乱強度(ヘイズ値)が高くても散乱角度が狭くなるため、全反射に有効な散乱が得られず、取り出し効率が低くなったり、光取り出し効率の波長による変化が大きくなり色調が変化しやすく、好ましくない場合がある。より好ましくは、0.2μm以上1μm以下である。
【0208】
有機散乱粒子は、有機EL装置内で全反射により導波している光を散乱し、取り出す効果を有するものである。
有機散乱粒子としては、ポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル−スチレン共重合体ビーズ、メラミン樹脂ビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ、およびベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド縮合物ビーズ等が用いられる。
【0209】
(有機散乱粒子の平均一次粒子径測定)
本発明において、有機散乱粒子の「平均一次粒子径」とは、TEM(透過型電子顕微鏡)を使用して、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で測定することができる。測定方法として具体的には、個々の有機散乱粒子の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、平均をその一次粒子の平均一次粒子径とする。
有機散乱粒子の場合には合成時に溶剤を含むため、100℃の真空乾燥機にて1時間乾燥し、溶剤を飛ばしてから粒子径を観測することができる。
【0210】
有機散乱粒子は、予め溶剤に分散した分散液を用いることが好ましい。
分散方法としては、有機散乱粒子の表面状態に合わせた分散剤を用い、分散機を用いる方法が好ましい。
分散機としては、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスP Y 」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」)、微小ビーズミル(寿工業(株)社製「スーパーアペックミル」および「ウルトラアペックミル」)等が使用できる。
分散機にメディアを使う場合には、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、およびポリスチレンビーズ等を用いることが好ましい。
分散に関しては、2種類以上の分散機、または大きさの異なる2種類以上のメディアをそれぞれ用い、段階的に実施しても差し支えない。
【0211】
有機散乱粒子の使用量は、無機微粒子分散体の固形分100重量%中、1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。1重量%未満では充分な散乱効果が現れないおそれがあり、30重量%を超えると粒子同士が凝集しやすく、塗膜の表面粗さが大きくなるおそれがある。
有機散乱粒子の屈折率としては例えば、メタクリル酸エステル共重合体ビーズ:1.45〜1.60、アクリル−スチレン共重合体ビーズ:1.5〜1.6、メラミン樹脂ビーズ:1.65である。好ましくはバインダー組成物との屈折率差が大きく出来るトリフルオロエチルメタクリレート共重合体ビーズ:1.46である。
【0212】
<酸化防止剤>
本発明の無機微粒子分散体には酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤は、加熱工程を経ることによる黄変等による透過率の低下を抑制することができる。そのため、酸化防止剤を含むことで、加熱工程時の黄変を防止し、透過率の高い塗膜を得る事ができる。
【0213】
本発明における酸化防止剤とは、紫外線吸収機能、ラジカル補足機能、または、過酸化物分解機能を有する化合物であればよく、具体的には、酸化防止剤としてヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒドロキシルアミン系、サルチル酸エステル系、およびトリアジン系の化合物があげられ、公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤等が使用できる。これらの酸化防止剤の中でも、塗膜の透過率と感度の両立の観点から、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤およびイオウ系酸化防止剤が好ましい。フェノール系のなかでも特に、立体障害性の高いヒンダードフェノール系酸化防止剤がより好ましい。
【0214】
[フェノール系酸化防止剤]
例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、トリエチレングリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンなどが挙げられ、単独又は2種以上を使用してもよい。
【0215】
なかでも、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、及びトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレートからなる群から選ばれるヒンダードフェノール系酸化防止剤は、光硬化性の面から好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤として具体的には、ヨシノックスBHT(=2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)、トミノックスTT(=テトラキス−[メチレン−3−(3,5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)、ヨシノックスSR、ヨシノックスBB、ヨシノックス2246G、ヨシノックス425、ヨシノックス250、ヨシノックス930、トミノックスSS、トミノックス917、GSY−314(以上、エーピーアイコーポレーション製)、IRGANOX245、IRGANOX259、IRGANOX565、IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1098、IRGANOX1135、IRGANOX1076、IRGANOX1425WL、IRGANOX1222、IRGANOX1330(以上、BASF・ジャパン社製)、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−330、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−80(以上、旭電化工業社製)、SumilizerBBM、SumilizerGM、SumilizerGP、SumilizerGS、SumilizerGA−80、SumilizerBP−101、SumilizerBP−76、SumilizerBP−101(以上、住友化学社製)が挙げられる。
【0216】
[アミン系酸化防止剤]
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチル{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ポリ〔(6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、N,N′−4,7−テトラキス〔4,6−ビス{N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ}−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が挙げられる。その他ヒンダードアミン構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
【0217】
ヒンダードアミン系酸化防止剤として具体的には、サノールLS−770、サノールLS−765、サノールLS−622LD、キマソープ944(以上、三共株式会社)、CYASORB UV−3346(以上、サンケミカル株式会社製)、ノックラック224、ノックラックCD、Uvasil299−299LM(以上、大内新興化学工業社製)、MARK LAー63、MARKLA−68(以上、旭電化工業社製)、TINUVIN 144、TINUVIN 312(以上、BASF・ジャパン社製)が挙げられる。
【0218】
[リン系酸化防止剤]
リン系酸化防止剤としては、市販されているものを使用できるが、トリス[2,4−ジ−(tert)−ブチルフェニル]ホスフィントリス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2−[(4,6,9,11−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−2−イル)オキシ]エチル]アミン、亜りん酸エチルビス(2,4−ジtert−ブチル−6−メチルフェニル)が挙げられ、これらからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、これらは1種又は2種以上を使用することができる。
リン系酸化防止剤として具体的には、IRGAFOS168、IRGAFOS12、IRGAFOS38、IRGAFOSEPQ、(以上、BASF・ジャパン社製)、SumilizerP−16(住友化学社製)、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8F、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−45、アデカスタブPEP−11C、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブP、アデカスタブC、アデカスタブQL、アデカスタブ135A、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブ2112、アデカスタブ3010、アデカスタブ522A、アデカスタブTPP(以上、旭電化工業社製)、GSY−202(以上、エーピーアイコーポレーション製)、SANKOHCA(三光株式会社製)、JPH1200、JP302、JPM313、JP304、JP308、JPP100、JP333E、JP318E、JP312(以上、エーピーアイコーポレーション製)が挙げられる。
【0219】
[イオウ系酸化防止剤]
イオウ系酸化防止剤は分子中にイオウを含む酸化防止剤である。このような含イオウ系酸化防止剤としては市販されているものを使用できるが、3,3’−チオジプロパン酸ジオクタデシル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジパルミチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、4,4’−チオビス−3−メチル−6−tert−ブチルフェノール、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられ、これらからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、これらは1種又は2種以上を使用することができる。
イオウ系酸化防止剤として具体的には、IRGANOXPS800FD、IRGANOXPS802FD(以上、BASF・ジャパン社製)、アデカスタブAO−503、アデカスタブAO−412S(以上、旭電化工業社製)、SumilizerTPL−R、SumilizerTPM、SumilizerTPS、SumilizerTP−D、SumilizerTL、SumilizerMB(以上、住友化学社製)、DLTP「ヨシトミ」、DSTP「ヨシトミ」,DMTP「ヨシトミ」、DTTP「ヨシトミ」(以上、エーピーアイコーポレーション製)が挙げられる。
【0220】
ベンゾトリアゾール系酸化防止剤としては、ベンゾトリアゾール構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等を使用することが出来る。
【0221】
ベンゾトリアゾール系酸化防止剤として具体的には、トミソープ600(吉富ファインケミカル製)、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN P、TINUVIN328(以上、BASF・ジャパン社製)、VIOSORB583、VIOSORB590(共同薬品社製)が挙げられる。
【0222】
ベンゾフェノン系酸化防止剤としては、ベンゾフェノン構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等を使用することが出来る。
【0223】
ベンゾフェノン系酸化防止剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2'ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5スルフォベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2'−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−クロロベンゾフェノン、LA−51(以上、旭電化工業社製)等が挙げられる。その他ベンゾフェノン構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
【0224】
ベンゾフェノン系酸化防止剤として具体的には、トミソープ800(エーピーアイコーポレーション製)、LA−51(旭電化工業社製)が挙げられる。
【0225】
トリアジン系酸化防止剤としては、2,4−ビス(アリル)−6−(2−ヒドロキシフェニル)1,3,5−トリアジン等が挙げられる。その他トリアジン構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
【0226】
トリアジン系酸化防止剤として具体的には、CYASORB UV−1164(サンケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0227】
ヒドロキシルアミン系酸化防止剤として、具体的には、IRGASTABFS042(以上、BASF・ジャパン社製)等の化合物を使用することが出来る。
【0228】
サルチル酸エステル系酸化防止剤としては、サリチル酸フェニル、サリチル酸p−オクチルフェニル、サリチル酸p−tertブチルフェニル等が挙げられる。その他サルチル酸エステル構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
【0229】
これらの酸化防止剤は、1種を単独で、または必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0230】
酸化防止剤の含有量は、無機微粒子分散体の固形分合計100重量%中、0.1重量%以上4重量%未満であることが好ましい。0.1重量%より少ない場合は、酸化防止剤が不足するため黄変防止効果が得られにくく、4重量%より多い場合には紫外線露光時に発生するラジカルを補足してしまうため、無機微粒子分散体の硬化が不十分となることがある。
【0231】
<有機溶剤>
本発明の無機微粒子分散体には有機溶剤を含有することができる。
有機溶剤としては、例えば1,2,3−トリクロロプロパン、1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ジオキサン、2−ヘプタノン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、3−メトキシブタノール、3−メトキシブチルアセテート、4−ヘプタノン、m−キシレン、m−ジエチルベンゼン、m−ジクロロベンゼン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、n−ブチルアルコール、n−ブチルベンゼン、n−プロピルアセテート、N−メチルピロリドン、o−キシレン、o−クロロトルエン、o−ジエチルベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−クロロトルエン、p−ジエチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、γ―ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n−アミル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステル、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−オクタノール、n−ヘキサノール等が挙げられる。
これらの有機溶剤は、1種を単独で、または必要に応じて任意の比率で2種以上混合して用いることができる。
【0232】
これらの有機溶剤のなかでも溶解性、乾燥性の観点からプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことで、乾燥後の透明性に優れる塗膜を得ることができる。
【0233】
さらに溶剤の乾燥性を考慮し、ダイコートや印刷法などにおいては160℃以上の高沸点溶剤を含むことが好ましく、たとえば、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(bp174℃)、1,3−ブタンジオール(bp203℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(bp203℃)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(bp213℃)、ジイソブチルケトン(bp168.1℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(bp171.2℃)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(bp208.1℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(bp191.5℃)、エチレングリコールジブチルエーテル(bp203.3℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(bp194.0℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(bp202.0℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(bp188.4℃)、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(bp207.3℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(bp170.2℃)、プロピレングリコールジアセテート(bp190.0℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(bp187.2℃)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(bp197.8℃)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(bp212.0℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(bp175℃)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(bp206.3℃)、3−エトキシプロピオン酸エチル(bp169.7℃)、3−メトキシブチルアセテート(bp172.5℃)、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート(bp188℃)、γ−ブチロラクトン(bp204℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(bp166.1℃)、N−メチルピロリドン(bp202℃)、p−クロロトルエン(bp162.0℃)、o−ジエチルベンゼン(bp183.4℃)、m−ジエチルベンゼン(bp181.1℃)、p−ジエチルベンゼン(bp183.8℃)、o−ジクロロベンゼン(bp180.5℃)、m−ジクロロベンゼン(bp173.0℃)、n−ブチルベンゼン(bp183.3℃)、sec−ブチルベンゼン(bp178.3℃)、tert−ブチルベンゼン(bp169.1℃)、シクロヘキサノール(bp161.1℃)、シクロヘキシルアセテート(bp173℃)、メチルシクロヘキサノール(bp174℃)等が挙げられる。160℃以上の高沸点溶剤は溶剤の全量を基準として5〜50重量%が好ましい。
【0234】
有機溶剤は、本発明の無機微粒子分散体の固形分合計100重量部に対して、100〜5000重量部の量で用いることができる。
【0235】
<その他の成分>
本発明の無機微粒子分散体には、その他必要に応じて、密着促進添加剤、単官能モノマー、界面活性剤、貯蔵安定剤、レベリング剤、光安定剤などを使用することもできる。
【0236】
《密着促進添加剤》
本発明の無機微粒子分散体は、さらに密着促進添加剤を含むことでガラス基材、ITOなどとの密着性が向上するために好ましい。
密着促進添加剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0237】
中でもシラン系の添加剤を含むとガラス基材、ITOなどとの密着性が向上するため好ましく、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン「KBM−503」)がより好ましく、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン「KBM−403」)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン「KBM−803」)が特に好ましい。
【0238】
《貯蔵安定剤》
貯蔵安定剤としては、例えばベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸、シュウ酸などの有機酸およびそのメチルエーテル、t−ブチルピロカテコール、トリエチルホスフィン、トリフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩等が挙げられる。貯蔵安定剤は、無機微粒子分散体の合計100重量%中、0.1〜5重量%の量で用いることができる。
【0239】
《レベリング剤》
本発明の無機微粒子分散体には、透明基板上での組成物のレベリング性をよくするため、レベリング剤を添加することが好ましい。レベリング剤としては、主鎖にポリエーテル構造又はポリエステル構造を有するジメチルシロキサンが好ましい。主鎖にポリエステル構造を有するジメチルシロキサンの具体例としては、ビックケミー社製BYK−310、BYK−370などが挙げられる。主鎖にポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンと、主鎖にポリエステル構造を有するジメチルシロキサンとは、併用することもできる。レベリング剤の含有量は通常、無機微粒子分散体の合計100重量%中、0.003〜0.5重量%用いることが好ましい。
【0240】
レベリング剤として特に好ましいものとしては、分子内に疎水基と親水基を有するいわゆる界面活性剤の一種で、親水基を有しながらも水に対する溶解性が小さく、着色組成物に添加した場合、その表面張力低下能が低いという特徴を有し、さらに表面張力低下能が低いにも拘らずガラス板への濡れ性が良好なものが有用であり、泡立ちによる塗膜の欠陥が出現しない添加量において十分に帯電性を抑止できるものが好ましく使用できる。このような好ましい特性を有するレベリング剤として、ポリアルキレンオキサイド単位を有するジメチルポリシロキサンが好ましく使用できる。ポリアルキレンオキサイド単位としては、ポリエチレンオキサイド単位、ポリプロピレンオキサイド単位があり、ジメチルポリシロキサンは、ポリエチレンオキサイド単位とポリプロピレンオキサイド単位とを共に有していてもよい。
【0241】
また、ポリアルキレンオキサイド単位のジメチルポリシロキサンとの結合形態は、ポリアルキレンオキサイド単位がジメチルポリシロキサンの繰り返し単位中に結合したペンダント型、ジメチルポリシロキサンの末端に結合した末端変性型、ジメチルポリシロキサンと交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマー型のいずれであってもよい。ポリアルキレンオキサイド単位を有するジメチルポリシロキサンは、東レ・ダウコーニング株式会社から市販されており、例えば、FZ−2110、FZ−2122、FZ−2130、FZ−2166、FZ−2191、FZ−2203、FZ−2207が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0242】
レベリング剤には、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、または両性の界面活性剤を補助的に加えることも可能である。界面活性剤は、2種以上混合して使用しても構わない。
レベリング剤に補助的に加えるアニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0243】
レベリング剤に補助的に加えるカオチン性界面活性剤としては、アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。レベリング剤に補助的に加えるノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどの;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤、また、フッ素系やシリコーン系の界面活性剤が挙げられる。
【0244】
<<塗膜と積層体>>
本発明の塗膜は、本発明の無機微粒子分散体を硬化してなる膜である。その製造方法は、たとえば、無機微粒子分散体を任意の基材上に塗布すること、および活性エネルギー線を照射して、基材上の無機微粒子分散体を硬化させることを含む。より具体的には、この無機微粒子分散体を任意の基材上に、乾燥後の膜厚が好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは0.1〜20μmになるように塗工後、硬化処理することにより形成することができる。
塗膜を基板上にパターニングする場合は、
1)印刷方式により基板上に直接パターニングを行う方法や、
2)フォトリソグラフィー方式によりパターニングを行う方法等を用いることが出来る。
【0245】
1)印刷方式では、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、オフセット印刷、反転オフセット印刷、スクリーン印刷、凸版印刷、インクジェット印刷等の通常の印刷方式で行うことができる。
2)フォトリソグラフィー方式では、感光性組成物の形態で使用する。その場合、
2−1)本発明の無機微粒子分散体を透光性基板に直接塗布、乾燥させた後、もしくは
2−2)フィルム基材(以下セパレートフィルムと称す)上に溶剤に溶解させた上記無機微粒子分散体を塗工後、溶剤を乾燥させることにより得られる感光性ドライフィルムを、基板に張り合わせたのち、ラミネートや真空ラミネートによって、基板への密着および気泡等の除去を行う事により硬化層を形成した後に、溶液現像またはアルカリ現像工程によってパターン形成を行う。現像に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液が使用され、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。なお、紫外線露光感度を上げるために、上記無機微粒子分散体を塗布乾燥後、水溶性あるいはアルカリ水溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等を塗布乾燥し酸素による重合阻害を防止する膜を形成した後、紫外線露光を行うこともできる。
【0246】
積層体としては、形成時において塗膜が基材に直接塗工されてもよいし、塗膜と基材との間に1層以上の下層が存在してもよい。この積層体は、本発明の塗膜に加え、屈折率の異なる膜、粘着層または情報記録層などを1層以上含むことが好ましい。
屈折率の異なる膜または情報記録層は、本発明の硬化物が有する機能以外の機能を持つものである。その形成方法は特に限定されず、公知の方法で形成される。例えば蒸着、スパッタなどのドライコーティング法、ロット、ワイヤーバーを用いた方法や、マイクログラビア、グラビア、ダイ、カーテン、リップ、スロット、スピン等のウェットコーティング方法を用いることができる。用いる材料も限定は無く、必要に応じて、情報記録機能、防眩機能、ニュートンリング防止機能、粘着機能、特定波長の遮断、密着向上、色調補正などの機能の1種類以上を積層体に付与することができる任意の材料を用いることができる。
【0247】
情報記録層としては、レーザー光などにより何らかの化学的変化を生じさせ、その変化により情報を記録するものであればよく、材料は特に限定されない。例えば有機系の材料としては、ポリメチン色素、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、アントラキノン系、キサンテン系、トリフェニルメタン系金属錯体化合物が挙げられ、上記の染料を1種又は2種以上の組合せで用いることができる。無機系の記録層としては、Te、Ge、Se、In、Sb、Sn、Zn、Au、Al、Cu、Pt等の金属、半金属を1種又は2種以上の組合せで用いることができる。情報記録層は積層体などでも良く、光化学変化の態様は相変化、バブル、穴あけタイプのいずれでも良い。さらにFe、Tb、Coを主体とした光磁気記録層であっても良いし、スピロピラン、フルキド系のフォトクロミック材料であっても良い。
【0248】
高屈折率の塗膜は、反射防止の観点から、表層に低屈折率の被覆塗膜を設け、反射防止機能を付与した積層体として利用することも好ましい。すなわち、フィルム等の基材上に塗膜を形成し、さらに好ましくは被覆塗膜を形成して得られる積層体を、反射防止膜として用いることが好ましい。
反射干渉縞が問題となる積層体においては、本発明の無機微粒子分散体中の無機微粒子の配合量を調整し、その塗膜と基材との屈折率の差が、または、塗膜と基材との間に任意の層が存在する場合は塗膜と塗膜の接する下層との屈折率の差が、±0.02以内となるようにすることが好ましい。
【0249】
塗工方法としては、公知の方法を用いることができ、例えばロットまたはワイヤーバー
などを用いた方法や、マイクログラビア、グラビア、ダイ、カーテン、リップ、スロット
またはスピンなどの各種コーティング方法を用いることができる。
硬化処理は、公知の技術を用いて、例えば、紫外線、電子線、波長400〜500nm
の可視光線等の活性エネルギー線を照射することにより行なうことができる。紫外線およ
び波長400〜500nmの可視光線の線源(光源)には、例えば高圧水銀ランプ、超高
圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、キセノンランプ、カーボンアー
クランプ等を使用することができる。電子線源には、熱電子放射銃、電解放射銃等を使用
することができる。
【0250】
照射する活性エネルギー線量は、5〜2000mJ/cm2の範囲内であることが好ま
しく、さらには工程上管理しやすい点から、50〜1000mJ/cm2の範囲内である
ことが好ましい。
これらの活性エネルギー線照射に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱処
理を併用することができる。
【0251】
塗膜は、基材上に無機微粒子分散体を塗工し、自然または強制乾燥させたあとに硬化処理を行なって形成しても良いし、塗工し硬化処理を行なったあとに自然または強制乾燥させても良いが、自然または強制乾燥させたあとに硬化処理を行なう方がより好ましい。
特に、電子線で硬化させる場合は、水による硬化阻害または有機溶剤の残留による塗膜の強度低下を防ぐため、自然または強制乾燥させたあとに硬化処理を行なう方がより好ましい。硬化処理のタイミングは、塗工と同時でもよいし、塗工後でもよい。
【0252】
得られる塗膜は、ガスバリア性、透明性、均一性に優れるため、光学材料として好適に利用することが出来る。
例えば無機酸化物微粒子(B1)を用いる場合には無機酸化物微粒子の屈折率を生かすことでタッチパネルの屈折率調整用コート材、OLED照明用光散乱層、LED/OLED照明用封止材に用いることで、製品の光取り出し効率を向上させることが出来る。特にガスや水分に弱いLED/OLED素子を有する場合には、本発明の優れたガスバリア性を生かして好適に用いることが出来る。さらには陰極線管、フラットディスプレイパネル(液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ等)等の各種表示装置の前面板あるいは光取出し層としても好適に利用できる。その他、光学用レンズ、メガネ用レンズ、光記録ディスク(コンパクトディスク、DVDディスク、ブルーレイディスク等)、太陽電池モジュール等に広く利用できる。
また無機蛍光体(B2)を用いる場合には、各種ディスプレイ用の発光材料、太陽電池モジュール、蛍光体含有の封止材などに好適に利用することが出来る。
また半導体量子ドット(B3)を用いる場合には、各種ディスプレイ用の発光材料、太陽電池、照明、CMOSセンサーなどに好適に利用することが出来る。
【0253】
<基材>
基材としては、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木材、スレート等が挙げられ、特に制限されるものではない。具体的なプラスチックの種類としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。また基材の形状としてはフィルムシート、板状パネル、レンズ形状、ディスク形状、ファイバー状の物が挙げられるが、特に制限されるものではない。特に、プラスチック基材であることが好ましい。基材の形状は、フィルム形状、レンズ形状、またはディスク形状であることが好ましい。
【実施例】
【0254】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。特に明記しない限り、「部」は「重量部」を表し、「%」は重量%を示す。また、「PGMEA」とはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを意味する。
なお、本明細書で実施例2、3、5、7、11、12、15、16、19、20、23〜24、36〜39、41〜75は、参考例である。
【0255】
先ず、シロキサン化合物(A1)の重量平均分子量(Mw)、官能基当量、および無機微粒子、有機散乱粒子の一次粒子径の算出方法について説明する。
【0256】
(重量平均分子量(Mw))
重量平均分子量(Mw)は、昭和電工(株)社製のゲルエーションクロマトグラフィーGPC−101を用いて測定した。溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、ポリスチレン換算分子量を求めた。
【0257】
(官能基当量)
官能基当量とは、分子中に含まれる官能基量の尺度となるものであり、同じ分子量の化合物であれば、官能基当量の数値が小さいほど官能基の導入量が多くなる。官能基当量は下記式により算出した。
[官能基当量(g/eq)]
=1グラム当量の特定の官能基を含む化合物のグラム数(g/eq)
=1(g)/([特定の官能基を持つモノマー成分の重量] /[官能基を持つモノマー成分の分子量](eq))
【0258】
(無機微粒子、有機散乱粒子の一次粒子径)
無機微粒子、有機散乱粒子の一次粒子径は、透過型(TEM)電子顕微鏡を使用して、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測し、100個の無機微粒子、有機散乱粒子の短軸径と長軸径を計測した、その平均値を一次粒子径とした。
なお、有機散乱粒子の場合には合成時に溶剤を含むため、100℃の真空乾燥機にて1時間乾燥し、溶剤を飛ばしてから粒子径を観測した。乾燥により凝集が起き複数の粒子が塊として付着していることがあるが、この場合は1つ1つの粒子に着目して径を測定する方法を用いた。
【0259】
続いて、シロキサン化合物(A1)、樹脂型分散剤(A2)、および有機散乱粒子分散液の製造方法について説明する。
【0260】
<シロキサン化合物(A1)の製造方法>
(シロキサン化合物(A1−1))
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却器を取り付けた4つ口フラスコに、4−ビニルシクロヘキセンオキシド50g、トルエン90g、イソプロピルアルコール10g、及び塩化白金酸のブタノール錯体を0.01g投入し、70〜80℃で加熱後、下記式で示されるメチル水素ポリシロキサン340gを滴下して、反応熱を制御するために冷却を行いつつ付加反応を行わせた。その後、加温減圧ストリッピングにより溶剤を留去したところ、重量平均分子量(Mw)が約8000、エポキシ当量が1300g/eqの透明な液体である、シロキサン化合物(A1−1)が得られた。
【0261】
【化14】
式中、m=50、n=11である。
【0262】
【表1】
【0263】
(シロキサン化合物(A1−2))
(第一工程)
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却器を取り付けた4つ口フラスコに、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン100g、オクタメチルシクロテトラシロキサン273g、メタンスルホン酸0.6g、ジブチルヒドロキシトルエン0.1gを仕込んだ。ここに水11.5gを室温で滴下し、そのまま3時間撹拌した。この後35〜40℃に加温し、80Torrの減圧下で反応混合物中のメタノール及び水を留去した。凝集器に2層に分離した液体がたまったが、これは上層がメタノール及び水、下層がオクタメチルシクロテトラシロキサンであり、下層をフラスコ内に戻した。
(第二工程)
次に、下記式で示されるオルガノシロキサンオリゴマー7.0g、メタンスルホン酸4.3gを加え、85〜90℃に加熱し8時間重合を行った。反応終了後、炭酸水素ナトリウム4.3gを加え、120〜130℃で3時間加熱した。次いで、2Torrの減圧下、120〜130℃で揮発分を留去して、重量平均分子量(Mw)が約8000、アクリロキシ当量が1300g/eqの透明な液体である、シロキサン化合物(A1−2)を得た。
【化15】
【0264】
【表2】
【0265】
(シロキサン化合物(A1−3))
(第一工程)
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却器を取り付けた4つ口フラスコに、テトラエトキシシラン250gおよびエタノール339gをはかり取り、攪拌しながら、水10gを滴下後、約4時間攪拌を続けた。
(第二工程)
これに、3-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン85gを添加してよく攪拌した後、テトラブトキシチタネート30gをエチルアルコール399gに溶解させた溶液を少量ずつ滴下し、全量滴下後24時間攪拌を続けて、次いで、2Torrの減圧下、120〜130℃で揮発分を留去して、重量平均分子量(Mw)が約2000、アクリロイルオキシ当量が1300g/eqの、不揮発分100重量%の透明な液体である、シロキサン化合物(A1−3)を得た。
【0266】
(シロキサン化合物(A1−4〜24))
表3〜4に記載した組成、および配合量(g)に変更した以外は、シロキサン化合物(A1−3)と同様にして合成を行い、シロキサン化合物(A1−4〜24)を得た。
【0267】
【表3】
【0268】
【表4】
【0269】
シロキサン化合物(A1)の性状を下記に記す。
【表5】
【0270】
<樹脂型分散剤(A2)の製造方法>
(分散剤(A2−2))
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を取り付けた4口フラスコにビフェニルテトラカルボン酸二無水物80.0部、ペンタエリスリトールトリアクリレート250.0部、ヒドロキノン0.16部、シクロヘキサノン141.2部を仕込み、85℃まで昇温した。次いで触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン1.65部を加え、85℃で8時間撹拌した。その後、グリシジルメタクリレート77.3部、シクロヘキサノン33.9部を加え、次いで触媒としてジメチルベンジルアミン2.65部を加え、85℃で6時間撹拌し、室温まで冷却して反応を終了し、分散剤(A2−2)を得た。得られた反応溶液は淡黄色透明で、固形分50%、重量平均分子量(Mw)が2830であった。
【0271】
(分散剤(A2−3))
(第一工程)
撹拌機、ガス導入管、温度計、コンデンサーを備えた4口フラスコに、1−ドデカノール62.6部、ε−カプロラクトン287.4部、および触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で4時間加熱、撹拌した。固形分測定により98%が反応したことを確認した。この反応生成物の重量平均分子量(Mw)は2000であった。
(第二工程)
上記反応生成物にピロメリット酸二無水物36.6部を追加し100℃で5時間反応させた。酸価の測定で97%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認した。シクロヘキサノンで固形分調整することにより固形分50%の溶液を調整し、、分散剤(A2−3)を得た。重量平均分子量(Mw)4000の分散剤(A3-2)のシクロヘキサノン溶液を得た。
【0272】
<有機散乱粒子分散液の製造方法>
(有機散乱粒子分散液(E−1))
窒素雰囲気下、メタノール58部および水32部の混合溶剤中で、メチルメタクリレート(和光純薬社製)4.5部、トリフルオロエチルメタクリレート(和光純薬社製)5部、およびアリルメタクリレート(和光純薬社製)0.5部を、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(和光純薬社製、V−50)0.025部を用いて60℃で8時間重合した。その後、PGMEA123部を加え、ストリッピングによりメタノールおよび水を除去し、有機散乱粒子分散液(E−1)(アクリル樹脂粒子PGMEA分散液)を作製した。
【0273】
<無機微粒子分散液の製造方法>
[実施例1]
(無機微粒子分散液(B1−1))
一次粒子の短軸径が10nmの酸化チタン粒子(テイカ株式会社製、MT−05)5部に、分散媒としてシクロヘキサノン80部、分散剤としてシロキサン化合物(A1−1)15部を加えた。得られた液に対して、2段階の分散処理を行った。前分散として、ジルコニアビーズ(平均径:1.25mm)をメディアとして用い、ペイントシェイカーで1時間分散した。本分散として、ジルコニアビーズ(平均径:0.1mm)をメディアとして用い、寿工業(株)社製分散機UAM−015(ウルトラアペックスミル)で7時間分散した。以上のようにして、無機微粒子分散液(B1−1)(酸化チタン粒子分散液)を作製した。
【0274】
[実施例2〜45、比較例1〜6]
(無機微粒子分散液(B1−2〜51))
表6〜10記載の組成、および配合量(重量部)にそれぞれ変更した以外は、無機微粒子分散液(B1−1)と同様の方法で、無機微粒子分散液(B1−2〜51)を作製した。
【0275】
[比較例7]
(無機微粒子分散液(B1−52))
一次粒子の短軸径が10nmの酸化チタン粒子(テイカ株式会社製、MT−05)5部に、分散媒としてシクロヘキサノン80部、分散剤としてシロキサン化合物(A1−3)15部を加えた。得られた液に対して、ブランソン社製ソニファー(超音波ホモジナイザー)を用いて、20kHzの超音波を5分間照射した。以上のようにして、無機微粒子分散液(B1−52)(酸化チタン粒子分散液)を作製した。
【0276】
[比較例8]
(無機微粒子分散液(B1−53))
表10記載の組成、および配合量(重量部)にそれぞれ変更した以外は、無機微粒子分散液(B1−52)と同様の方法で、無機微粒子分散液(B1−53)を作製した。
【0277】
【表6】
【0278】
【表7】
【0279】
【表8】
【0280】
【表9】
【0281】
【表10】
【0282】
表5〜10中の各略号は以下の通りである。
・TiO
2: テイカ(株)製「MT−05」(平均一次粒子径10nm)
・TiO
2-2:石原産業(株)製「タイペークCR−97」(平均一次粒子径:250nm)
・ZnO: 堺化学工業(株)製「FINEX−50」(平均一次粒子径:20nm)
・ZrO
2: 日産化学工業(株)製「ZR−30BF」(平均一次粒子径20nm)
・ATO:石原産業(株)製「SN−100P」(平均一次粒子径:20nm)
・Al
2O
3: 日産化学工業(株)製「アルミナゾル−200」(平均一次粒子径15nm)
・SiO
2: 日産化学工業(株)製「PMA-ST」(平均一次粒子径15nm)
・SiO
2-2:日本触媒(株)製「シーホスターKE−S30」(平均一次粒子径300nm)
・PTO:三菱マテリアル(株)製「EP SP−2」(平均一次粒子径:15nm)
・分散剤(A2−1):
BYK111:ビックケミー・ジャパン(株)製「BYK−111」
・KBM−5103:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン 信越化学(株)製「KBM−5103」
・KF−96−1,000cs:ジメチルシリコーンオイル 信越化学(株)製「KF−96−1,000」
・アノン: シクロヘキサノン
【0283】
[実施例46]
(無機微粒子分散液(B2−1))
Ca
10(PO
4)
6FCl:Sb,Mnを10部に、分散媒としてシクロヘキサノン80部、分散剤としてシロキサン化合物(A1−15)15部を加えた。得られた液に対して、ジルコニアビーズ(平均径:1.25mm)をメディアとして用い、ペイントシェイカーで2時間分散し、無機微粒子分散液(B2−1)を作製した。
【0284】
[実施例47〜53、比較例9]
(無機微粒子分散液(B2−2〜9))
表9記載の組成、および配合量(重量部)にそれぞれ変更した以外は、無機微粒子分散液(B2−1)と同様の方法で、無機微粒子分散液(B2−2〜9)を作製した。
【0285】
[比較例10]
(無機微粒子分散液(B2−10))
Ca
10(PO
4)
6FCl:Sb,Mnを10部に、分散媒としてシクロヘキサノン80部、分散剤としてシロキサン化合物(A1−15)10部を加えた。得られた液に対して、ブランソン社製ソニファー(超音波ホモジナイザー)を用いて、20kHzの超音波を5分間照射した。以上のようにして、無機微粒子分散液(B2−10)を作製した。
【0286】
【表11】
【0287】
表11中の各略号は以下の通りである。
・分散剤(A2−1):
BYK111:ビックケミー・ジャパン(株)製「BYK−111」
・アノン: シクロヘキサノン
【0288】
[実施例54]
(無機微粒子分散液(B3−1))
CdSeを2部に、分散媒としてトルエン83部、分散剤としてシロキサン化合物(A1−15)15部を加えた。得られた液に対して、2段階の分散処理を行った。前分散として、ジルコニアビーズ(平均径:1.25mm)をメディアとして用い、ペイントシェイカーで1時間分散した。本分散として、ジルコニアビーズ(平均径:0.1mm)をメディアとして用い、寿工業(株)社製分散機UAM−015(ウルトラアペックスミル)で7時間分散した。以上のようにして、無機微粒子分散液(B3−1)を作製した。
【0289】
[実施例55〜61、比較例11]
(無機微粒子分散液(B3−2〜9))
表12記載の組成、および配合量(重量部)にそれぞれ変更した以外は、無機微粒子分散液(B3−1)と同様の方法で、無機微粒子分散液(B3−2〜9)を作製した。
【0290】
[比較例12]
(無機微粒子分散液(B3−10))
CdSeを2部に、分散媒としてトルエン83部、分散剤としてシロキサン化合物(A1−15)15部を加えた。得られた液に対して、ブランソン社製ソニファー(超音波ホモジナイザー)を用いて、20kHzの超音波を5分間照射し、無機微粒子分散液(B3−10)を作製した。
【0291】
【表12】
【0292】
表12中の各略号は以下の通りである。
・分散剤(A2−1):
BYK111:ビックケミー・ジャパン(株)製「BYK−111」
【0293】
<無機微粒子分散体の評価>
得られた無機微粒子分散体について、下記の装置または方法により評価を行った。結果を表13に示す。
【0294】
(安定性)
無機微粒子分散体を、温度25℃、湿度50%RHの雰囲気下で240時間保存し、粘度を測定した。保存後の粘度の上昇値が保存前の粘度の値に対してどのようになったかで安定性評価を行なった。コーンローター式粘度計(東機産業社製、「TV−22型」)を用いて、25℃において、2.5rpmの条件で粘度を測定した。
下記基準に基づき、評価した。
経時粘度増加率 105%未満:優良(◎)
経時粘度増加率 105%以上、130%未満:良(○)
経時粘度増加率 130%以上、170%未満:可(△)
経時粘度増加率 170%以上:不可(×)
【0295】
(ガスバリア性)
無機微粒子分散体を100μmの厚さとなるように、ベーカー式アプリケーター(テスター産業社製)にて恒温プレート上に塗布した。その後、高圧水銀灯にて100mW/cm
2(365nm)の光を20秒間照射したのち、80℃にて30分加熱しフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度を、JIS-Z-0208に従い、60℃、90%RHの条件に24時間暴露して測定した。
下記基準に基づき、評価した。
透湿度 1g/m
2未満 :優良(◎)、
透湿度 1g/m
2以上5g/m
2未満 :良(○)
透湿度 5g/m
2以上10g/m
2未満 :可(△)
透湿度 10g/m
2以上 :良(×)
【0296】
【表13】
【0297】
表13に示すように、特定の官能基を有するシロキサン化合物を用いることで、分散安定性とガスバリア性を兼ね備えた無機微粒子分散体を得ることが出来た。
特に実施例9〜24のように官能基当量や分子量を特定の範囲のシロキサン化合物を用いることで、よりガスバリア性が優れた無機微粒子分散体を得ることが出来た。
実施例39〜45においては、シロキサン化合物とともに特定の樹脂型分散剤を併用することで、より分散安定性に優れた無機微粒子分散体を得ることに成功している。
【0298】
一方、比較例1のように樹脂型分散剤のみや、比較例3〜6のように本発明のような特定の構造を有しないシランカップリング剤、シリコーンオイルを用いても、優れた特性を得ることは出来なかった。また、比較例7、8、10、12のようにメディア型湿式分散機を用いない場合には、本発明のような優れた特性を得ることは出来なかった。
【0299】
また、実施例46〜53の無機蛍光体を使用した無機微粒子分散体(B2−1〜8)は、蛍光体単体として用いれば耐久性に優れるディスプレイ用発光層、または封止材として好適に使用が可能である。
実施例54〜61の半導体量子ドットを使用した無機微粒子分散体(B3−1〜8)は、耐久性に優れるディスプレイ用発光層などとして好適に使用が可能である。
【0300】
[実施例62]
(無機微粒子分散体(B−1))
無機微粒子分散体(B1―36)に下記材料を添加して均一になるように撹拌および混合し無機微粒子分散体を得た。
・無機微粒子分散体(B1―36) 60.0部
・光重合単量体 アロニックスM402(東亞合成(株)製) 3.49部
・光重合開始剤 イルガキュア907(BASF(株)製) 0.5部
・アクリル樹脂 UC−3080(東亞合成(株)製) 6.0部
・レベリング剤 0.01部
BYK330(ビックケミー・ジャパン(株)製)
(固形分51%)
・PGMEA 30.0部
【0301】
[実施例63〜67、比較例13〜15]
(無機微粒子分散体(B−2〜9))
表14に示した組成、および配合量(重量部)とした以外は、実施例62の無機微粒子分散体(B−1)と同様にして、無機微粒子分散体(B−2〜9)を得た。
【0302】
【表14】
【0303】
表14中の各略号は以下の通りである。
・M402:東亞合成(株)製「アロニックスM402」
・Irg907: 2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル) −2−モルフォリノプロパン−1−オン BASF(株)製「イルガキュア907」
・UC−3080: カルボキシル基含有アクリル樹脂 東亞合成(株)製「ARUFON UC−3080」
・UF−5022: カルボキシル基含有アクリル樹脂 東亞合成(株)製「ARUFON UF−5022」
・BYK330:ビックケミー・ジャパン(株)製「BYK330」(固形分51%)
・PGMEA: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0304】
<無機微粒子分散体の評価>
得られた無機微粒子分散体について、下記の装置または方法により評価を行った。結果を表15に示す。
【0305】
(透過率)
無機微粒子分散体を、100mm×100mm、0.7mm厚のガラス基板(コーニング社製ガラス「イーグル2000」)に、スピンコーターを用いて230℃20分加熱後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布した。次に、得られた塗布基板を110℃に加熱したホットプレート上で2分間保持した後、超高圧水銀ランプを用いて、照度20mW/cm
2、露光量50mJ/cm
2で紫外線露光を行った。塗布基板を230℃で20分加熱、放冷後、顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP100」)を用い、得られた塗膜の波長400nmにおける透過率を求めた。下記基準に基づき、評価した。
透過率90%以上:優良(◎)
透過率80%以上90%未満:良(○)、
透過率80%未満:不可(×)
【0306】
(硬度の測定)
透過率の測定用に作製したものと同じ方法で得た無機微粒子分散体塗布基板を、JIS K−5400−1990の8.4.1鉛筆引っかき試験により表面硬度を測定した。下記基準に基づき、評価した。
鉛筆硬度4H以上:優良(◎)
鉛筆硬度3H:良(○)
鉛筆硬度2H:可(△)
鉛筆硬度H以下:不可(×)
【0307】
(耐薬品性)
透過率の測定用に作製したものと同じ方法で得た無機微粒子分散体塗布基板を、ア
セトンまたはイソプロピルアルコールに浸漬し、それぞれ25℃で10分間、超音波洗浄
した。得られた基板をJIS K5600−5−6に準じた付着性(クロスカット法)試
験により塗膜の密着性を評価し、碁盤目25個中の剥離個数を数えた。
下記基準に基づき、評価した。
碁盤目の剥離個数0個:優良(◎)
碁盤目の剥離個数1個未満(フチハガレ:碁盤目のフチが剥がれるレベル):良(○)
碁盤目の剥離個数1個以上3個以下:可(△)
碁盤目の剥離個数3個より多い:不可(×)
【0308】
(ガスバリア性)
無機微粒子分散体を100μmの厚さとなるように、ベーカー式アプリケーター(テスター産業社製)にて恒温プレート上に塗布した。その後、高圧水銀灯にて100mW/cm
2(365nm)の光を20秒間照射したのち、80℃にて30分加熱しフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度を、JIS-Z-0208に従い、60℃、90%RHの条件に24時間暴露して測定した。
下記基準に基づき、評価した。
透湿度 1g/m
2未満 :優良(◎)、
透湿度 1g/m
2以上5g/m
2未満 :良(○)
透湿度 5g/m
2以上10g/m
2未満 :可(△)
透湿度 10g/m
2以上 :良(×)
【0309】
【表15】
【0310】
表15に示すように、透過率、硬度、耐薬品性、ガスバリアに優れた無機微粒子分散体を得ることが出来た。実施例62〜67の無機分散体(B−1〜6)は、優れた硬度、透過率を生かしてハードコート保護膜に好適に使用出来るし、耐薬品性、現像性を有するため、タッチパネルの保護膜や絶縁膜においても好適に使用することが可能である。さらにガスバリア性を有するため、有機EL照明などの屈折率調整膜としても好適に使用することが出来る。
【0311】
[実施例68]
(無機微粒子分散体(B−10))
無機微粒子分散体(B1―37)に下記材料を添加して均一になるように撹拌および混合し無機微粒子分散体を得た。
・無機微粒子分散体(B1―37) 20.0部
・カチオン光重合開始剤 WPI−113(和光純薬(株)製) 1.0部
・エポキシ樹脂 jER−828(三菱化学(株)製) 30.0部
・硬化制御剤 ジシクロヘキシル−18−クラウン−6 0.5部
・反応性希釈剤 48.5部
デナコールEX−142
(ナガセケムテックス(株)製)
【0312】
[実施例69、70、比較例16]
(無機微粒子分散体(B−11〜13))
表16に示した組成、および配合量(重量部)とした以外は、実施例68の無機微粒子分散体(B−10)と同様にして、無機微粒子分散体(B−11〜13)を得た。
【0313】
【表16】
【0314】
表16中の各略号は以下の通りである。
・WPI−113: 光カチオン開始剤 和光純薬(株)「WPI−113」
・jER−828: ビスフェノールA型エポキシ樹脂 三菱化学(株)製「jER−828」
・KF−96−1,000cs:ジメチルシリコーンオイル 信越化学(株)製「KF−96−1,000」
・デナコールEX−142:反応性希釈剤 ナガセケムテックス(株)製「デナコールEX−142」
【0315】
<無機微粒子分散体の評価>
得られた無機微粒子分散体について、下記の装置または方法により評価を行った。結果を表17に示す。
【0316】
(耐硫ガス耐性)
無機微粒子分散体を、100mm×100mm、0.7mm厚のガラス基板(コーニング社製ガラス「イーグル2000」)に、スピンコーターを用いて230℃20分加熱後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布した。次に、得られた塗布基板を110℃に加熱したホットプレート上で2分間保持した後、超高圧水銀ランプを用いて、照度20mW/cm
2、露光量50mJ/cm
2で紫外線露光を行った。塗布基板を230℃で20分加熱、放冷後、JIS規格のガス暴露試験(JIS-C-60068−2−43)に基づき、硫化水素ガス15ppmとした雰囲気(温度25℃、相対湿度75%RH)に、1000時間暴露した。各塗布基板について、暴露の前後で透過率測定を行い、下記の基準で腐食耐性評価を行った。
透過率対初期比(硫化ガス暴露後透過率/硫化ガス暴露前透過率×100)が
98%以上である:優良(◎)
90%以上98%未満である:良(○)
90%未満である:不可(×)
【0317】
(ガスバリア性)
無機微粒子分散体を100μmの厚さとなるように、ベーカー式アプリケーター(テスター産業社製)にて恒温プレート上に塗布した。その後、高圧水銀灯にて100mW/cm
2(365nm)の光を20秒間照射したのち、80℃にて30分加熱しフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度を、JIS-Z-0208に従い、60℃、90%RHの条件に24時間暴露して測定した。
下記基準に基づき、評価した。
透湿度 1g/m
2未満 :優良(◎)、
透湿度 1g/m
2以上5g/m
2未満 :良(○)
透湿度 5g/m
2以上10g/m
2未満 :可(△)
透湿度 10g/m
2以上 :良(×)
【0318】
【表17】
【0319】
表17に示すように、耐硫ガス耐性、ガスバリア性に優れた無機微粒子分散体を得ることが出来た。実施例68〜70の無機分散体(B−10〜12)はこれらの優れた特性を生かしてLED/OLED用封止剤として好適に使用出来することが出来る。
【0320】
[実施例71]
(無機微粒子分散体(B−14))
無機微粒子分散体(B1―36)に下記材料を添加して均一になるように撹拌および混合し無機微粒子分散体を得た。
・無機微粒子分散体(B1―36) 70.0部
・光重合単量体 アロニックスM402(東亞合成(株)製) 2.49部
・ラジカル光重合開始剤Irg907(BASF(株)製) 0.5部
・アクリル樹脂 UC−3080(東亞合成(株)製) 3.0部
・有機散乱粒子分散液(E−1) 20.0部
・レベリング剤 BYK330(ビックケミー・ジャパン(株)製) 0.01部
・PGMEA 4.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0321】
[実施例72〜75、比較例17〜19]
(無機微粒子分散体(B−15〜21))
表18に示した組成、および配合量(重量部)とした以外は、実施例71の無機微粒子分散体(B−14)と同様にして、無機微粒子分散体(B−15〜21)を得た。
【0322】
【表18】
【0323】
表18中の各略号は以下の通りである。
・M402:東亞合成(株)製「アロニックスM402」
・Irg907: 2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル) −2−モルフォリノプロパン−1−オン BASF(株)製「イルガキュア907」
・UC−3080: カルボキシル基含有アクリル樹脂 東亞合成(株)製「ARUFON UC−3080」
・UF−5022: カルボキシル基含有アクリル樹脂 東亞合成(株)製「ARUFON UF−5022」
・BYK330:ビックケミー・ジャパン(株)製「BYK330」(固形分51%)
・PGMEA: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0324】
<無機微粒子分散体の評価>
得られた無機微粒子分散体について、下記の装置または方法により評価を行った。結果を表19に示す。
【0325】
(硬度の測定)
無機微粒子分散体を、100mm×100mm、0.7mm厚のガラス基板(コーニング社製ガラス「イーグル2000」)に、スピンコーターを用いて230℃20分加熱後の仕上がり膜厚が2.0μmとなるように塗布した。次に、得られた塗布基板を110℃に加熱したホットプレート上で2分間保持した後、超高圧水銀ランプを用いて、照度20mW/cm
2、露光量50mJ/cm
2で紫外線露光を行った。塗布基板を230℃で20分加熱、放冷後、JIS K−5400−1990の8.4.1鉛筆引っかき試験により表面硬度を測定した。下記基準に基づき、評価した。
鉛筆硬度4H以上:優良(◎)
鉛筆硬度3H:良(○)
鉛筆硬度2H:可(△)
鉛筆硬度H以下:不可(×)
【0326】
(平坦性)
硬度の測定用に作製したものと同じ方法で得た無機微粒子分散体塗布基板について、3次元構造解析顕微鏡(ZYGOシステムキヤノン・マーケティング・ジャパン(株)製)を用いて、塗膜の表面粗さ(Ra)を測定した。表面粗さ(Ra)とは、JIS B0601・JIS B0031に定義される算術平均粗さを示す。
下記基準に基づき、評価した。
表面粗さ100Å未満:優良(◎)、
表面粗さ100Å以上200Å未満:良(○)、
表面粗さ200Å以上:不可(×)
【0327】
(ボトム・エミッション構造のEL素子の評価(光取り出し効率))
硬度の測定用に作製したものと同じ方法で得た無機微粒子分散体塗布基板上に、ITOセラミックターゲット(In
2O
3:SnO
2=90:10(重量比))を用い、DCスパッタリング法にて厚さ150nmのITO膜を形成し、透光性電極(陽極)とした。
フォトレジストを用いて上記ITO膜をエッチングして、発光面積が5mm×5mmとなるようにパターンを形成した。超音波洗浄を行った後、低圧紫外線ランプを用いてオゾン洗浄した。ついで、ITO面上に、真空蒸着法により、下記のように有機EL層を順次形成した。
まず、正孔注入層として、CuPcを15nmの厚さに形成した。次に、正孔輸送層として、α−NPDを、50nmの厚さに形成した。次に、表19に示す赤色の発光層を40nmの厚さに形成し、表19に示す電子注入層を30nmの厚さに形成した。
その後、MgとAgを共蒸着し、厚さ100nmのMgAgを形成後、MgAgの酸化防止の観点から、さらに、その上にAgを50nm形成し、背面電極(陰極)とした。
真空蒸着装置から取り出したのち、陰極電極側に紫外線硬化性エポキシ樹脂を滴下し、その上にスライドガラスを被せ、高圧紫外線ランプを用いてエポキシ樹脂を硬化させ、素子を封止した。
上記と同様にして、表19に示す発光層と電子注入層を使用し、青色、緑色、および白色の発光素子をそれぞれ作製した。
別途、評価用に、基材として光散乱層を形成していないガラス基板を用いた以外は、上記と同様の方法にてEL素子を得た。
【0328】
【表19】
【0329】
表19の発光体を用いて得られたそれぞれの発光素子について、室温において順方向電流を10mA/cm
2通電し、発光外観(ダークスポット、ムラ)を観察した。また、コニカミノルタセンシング(株)社製分光放射輝度計「CS−2000」により正面輝度を測定し、光散乱層を形成していない基板で作製したEL素子の正面輝度を基準とし、白色発光素子の正面輝度の向上率を算出した。発光スペクトルの測定は、大塚電子(株)社製MCPD−9800を用いて行なった。下記基準に基づき、評価した。
【0330】
(光取り出し効率)
正面輝度向上率 1.5倍以上 :優(◎)、
正面輝度向上率 1.2倍以上〜1.5倍未満 :良(○)
正面輝度向上率 1.2倍未満 :不可(×)
【0331】
(ガスバリア性)
無機微粒子分散体を100μmの厚さとなるように、ベーカー式アプリケーター(テスター産業社製)にて恒温プレート上に塗布した。その後、高圧水銀灯にて100mW/cm
2(365nm)の光を20秒間照射したのち、80℃にて30分加熱しフィルムを得た。得られたフィルムの透湿度を、JIS-Z-0208に従い、60℃、90%RHの条件に24時間暴露して測定した。
下記基準に基づき、評価した。
透湿度 1g/m
2未満 :優良(◎)、
透湿度 1g/m
2以上5g/m
2未満 :良(○)
透湿度 5g/m
2以上10g/m
2未満 :可(△)
透湿度 10g/m
2以上 :良(×)
【0332】
【表20】
【0333】
表20に示すように、硬度、平坦性、光取り出し効率、ガスバリア性に優れた無機微粒子分散体を得ることが出来た。実施例71〜75の無機分散体(B−14〜18)はこれらの優れた特性を生かしてLED/OLED照明用光散乱膜用組成物、ディスプレイ輝度向上用組成物として好適に使用出来することが出来る。
【0334】
<プラスチック基板での塗膜作製及び評価>
無機微粒子分散体(B−1〜9)を用い、下記の装置または方法により評価を行った。結果を表21に示す。
【0335】
(透過率)
無機微粒子分散体を、100μm厚の易接着処理PETフィルム(易接着処理層の屈折率=1.60)の易接着処理面に、バーコーターを用いて乾燥膜厚で6μmとなるよう塗布した。得られた塗布層を、100℃1分で乾燥したのち、超高圧水銀ランプを用いて照度20mW/cm
2、露光量400mJ/cm
2の紫外線露光をした。その後、顕微分光光度計(オリンパス光学社製「OSP−SP100」)を用い、得られた塗膜の波長400nmにおける透過率を求めた。下記基準に基づき、評価した。
透過率90%以上:優良(◎)
透過率80%以上90%未満:良(○)、
透過率80%未満:不可(×)
【0336】
(硬度の測定)
透過率の測定用に作製したものと同じ方法で得た無機微粒子分散体塗布基板を、JIS K−5400−1990の8.4.1鉛筆引っかき試験により表面硬度を測定した。下記基準に基づき、評価した。
鉛筆硬度4H以上:優良(◎)
鉛筆硬度3H:良(○)
鉛筆硬度2H:可(△)
鉛筆硬度H以下:不可(×)
【0337】
(耐薬品性)
透過率の測定用に作製したものと同じ方法で得た無機微粒子分散体塗布基板を、アセトンまたはイソプロピルアルコールに浸漬し、それぞれ25℃で10分間、超音波洗浄した。得られた基板をJIS K5600−5−6に準じた付着性(クロスカット法)試験により塗膜の密着性を評価し、碁盤目25個中の剥離個数を数えた。
下記基準に基づき、評価した。
碁盤目の剥離個数0個:優良(◎)
碁盤目の剥離個数1個未満(フチハガレ:碁盤目のフチが剥がれるレベル):良(○)
碁盤目の剥離個数1個以上3個以下:可(△)
碁盤目の剥離個数3個より多い:不可(×)
【0338】
【表21】
【0339】
表21に示すように、低温による硬化性を必要とされるプラスチック基材上においても、優れた透過率、硬度、耐薬品性を示すことが確認できた。これらの優れた特性を生かしてタッチパネル用オーバーコート剤、ディスプレイ輝度向上用組成物として好適に使用出来することが出来る。
【0340】
以上の結果より、本願の無機分散体の製造方法により得られた無機分散体により、透過率、硬度、耐薬品性、ガスバリア性、平坦性などに優れた塗膜を得ることができた。該塗膜を有する積層体は、透過率、硬度、耐薬品性に優れており、なかでも低温硬化性を必要とされるプラスチック基材を用いても、透過率、硬度、耐薬品性に優れた品質を有する積層体であることが確認できた。