特許第6623509号(P6623509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6623509液晶ディスプレイ装置の表示画面輝度を制御する輝度制御装置、輝度制御装置用のプログラム、および、液晶ディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623509
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】液晶ディスプレイ装置の表示画面輝度を制御する輝度制御装置、輝度制御装置用のプログラム、および、液晶ディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20191216BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20191216BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20191216BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20191216BHJP
   H05B 37/02 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   G09G3/36
   G09G3/20 642P
   G09G3/34 J
   G09G3/20 670L
   G02F1/133 535
   G02F1/133 580
   H05B37/02 J
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-208991(P2014-208991)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-80757(P2016-80757A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 克昌
【審査官】 越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−151989(JP,A)
【文献】 特開2007−228783(JP,A)
【文献】 特開2007−219008(JP,A)
【文献】 特開2007−149752(JP,A)
【文献】 特開平11−223804(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/021311(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/36
G02F 1/133
G09G 3/20
G09G 3/34
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ディスプレイ装置(1)の表示画面輝度を制御する輝度制御装置であって、
前記液晶ディスプレイ装置の内部または周囲の温度の情報を取得する温度取得手段(S110)と、
前記温度取得手段が取得した前記温度の情報に基づいて前記表示画面輝度を制御する制御手段(S120)と、を備え、
前記制御手段は、ユーザによって調整される複数の明るさのレベルのうち第1のレベルが設定された場合は第2のレベルが設定された場合に比べて、前記温度が同じならば前記表示画面輝度を低くし、
前記制御手段は、前記第1のレベルが設定された場合も前記第2のレベルが設定された場合も、前記温度が第1温度となっている場合に比べ、前記温度が前記第1温度より高い第2温度となっている場合の方が、前記表示画面輝度を低くし、
前記制御手段は、前記第1のレベルが設定された場合と前記第2のレベルが設定された場合との前記表示画面輝度の差を、前記温度が前記第2温度となっている場合よりも前記温度が第1温度となっている場合の方が、小さくなるようにすることを特徴とする輝度制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、PWM信号のデューティ比を制御することにより前記液晶ディスプレイ装置の光源(14)の発光時間を制御し、それにより前記表示画面輝度を制御することを特徴とする請求項に記載の輝度制御装置。
【請求項3】
前記液晶ディスプレイ装置は、液晶パネル(111)と、前記液晶パネルを照らす光源(14)と、前記光源に流れる電流を一定値に維持する定電流回路(172)と、前記一定値を切り替える電流切替回路(18)と、を備え、
前記制御手段は、前記電流切替回路を制御することで前記一定値を制御し、それにより前記表示画面輝度を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の輝度制御装置。
【請求項4】
液晶ディスプレイ装置(1)の表示画面輝度を制御する輝度制御装置に用いるプログラムであって、
前記液晶ディスプレイ装置の内部または周囲の温度の情報を取得する温度取得手段(S110)、および、
前記温度取得手段が取得した前記温度の情報に基づいて前記表示画面輝度を制御する制御手段(S120)として、コンピュータを機能させ、
前記制御手段は、ユーザによって調整される複数の明るさのレベルのうち第1のレベルが設定された場合は第2のレベルが設定された場合に比べて、前記温度が同じならば前記表示画面輝度を低くし、
前記制御手段は、前記第1のレベルが設定された場合も前記第2のレベルが設定された場合も、前記温度が第1温度となっている場合に比べ、前記温度が前記第1温度より高い第2温度となっている場合の方が、前記表示画面輝度を低くし、
前記制御手段は、前記第1のレベルが設定された場合と前記第2のレベルが設定された場合との前記表示画面輝度の差を、前記温度が前記第2温度となっている場合よりも前記温度が第1温度となっている場合の方が、小さくなるようにすることを特徴とするプログラム。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1つに記載の輝度制御装置(19)と、
液晶パネル(111)を有する液晶モジュール(11)と、
前記液晶パネルを照らす光源(14)と、を備えた液晶ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ装置の表示画面輝度を制御する輝度制御装置、輝度制御装置用のプログラム、および、液晶ディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ装置の表示画面が大型化される傾向にある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−192881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の検討によれば、液晶ディスプレイ装置の表示画面が大型化すると、液晶ディスプレイ装置の表示画面輝度を決める光源の発熱量も大きくなり、その結果、光源の熱源としての影響力も無視できないようになる。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、液晶ディスプレイ装置の表示画面輝度を決める光源を熱源として捉え、光源の熱源的特性に適応した表示画面輝度の制御技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、液晶ディスプレイ装置(1)の表示画面輝度を制御する輝度制御装置であって、前記液晶ディスプレイ装置の内部または周囲の温度の情報を取得する温度取得手段(S110)と、前記温度取得手段が取得した前記温度の情報に基づいて前記表示画面輝度を制御する制御手段(S120)と、を備え、前記制御手段は、ユーザによって調整される複数の明るさのレベルのうち第1のレベルが設定された場合は第2のレベルが設定された場合に比べて、前記温度が同じならば前記表示画面輝度を低くし、前記制御手段は、前記第1のレベルが設定された場合も前記第2のレベルが設定された場合も、前記温度が第1温度となっている場合に比べ、前記温度が前記第1温度より高い第2温度となっている場合の方が、前記表示画面輝度を低くし、前記制御手段は、前記第1のレベルが設定された場合と前記第2のレベルが設定された場合との前記表示画面輝度の差を、前記温度が前記第2温度となっている場合よりも前記温度が第1温度となっている場合の方が、小さくなるようにすることを特徴とする輝度制御装置である。
【0007】
また、請求項4に記載の発明は、液晶ディスプレイ装置(1)の表示画面輝度を制御する輝度制御装置に用いるプログラムであって、前記液晶ディスプレイ装置の内部または周囲の温度の情報を取得する温度取得手段(S110)、および、前記取得手段が取得した前記温度の情報に基づいて前記表示画面輝度を制御する制御手段(S120)として、コンピュータを機能させ、前記制御手段は、ユーザによって調整される複数の明るさのレベルのうち第1のレベルが設定された場合は第2のレベルが設定された場合に比べて、前記温度が同じならば前記表示画面輝度を低くし、前記制御手段は、前記第1のレベルが設定された場合も前記第2のレベルが設定された場合も、前記温度が第1温度となっている場合に比べ、前記温度が前記第1温度より高い第2温度となっている場合の方が、前記表示画面輝度を低くし、前記制御手段は、前記第1のレベルが設定された場合と前記第2のレベルが設定された場合との前記表示画面輝度の差を、前記温度が前記第2温度となっている場合よりも前記温度が第1温度となっている場合の方が、小さくなるようにすることを特徴とするプログラムである。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1つに記載の輝度制御装置(19)と、液晶モジュール(11)と、光源(14)と、を備えた液晶ディスプレイ装置である。
【0009】
液晶ディスプレイ装置の表示画面輝度を決める光源を熱源として捉えれば、光源が液晶ディスプレイ装置の内部または周囲の温度に影響を与えることが考えられる。したがって、上記のように、液晶ディスプレイ装置の内部または周囲の温度に応じて表示画面輝度を制御することで、液晶ディスプレイ装置の内部の温度を適切にコントロールすることができる。
【0010】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る液晶ディスプレイ装置1の構成図である。
図2】バックライト14、温度センサ15、LED駆動回路17、電流切替回路18の詳細な構成を示す図である。
図3】制御マイコン19が実行する処理のフローチャートである。
図4】温度および明るさレベルとPWMデューティ比(PWM_Duty)との関係を示すグラフである。
図5】PWMデューティ比に加えて電流値も変化させる例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る液晶ディスプレイ装置1の構成を示す。この液晶ディスプレイ装置1は、空調制御ECU2、操作装置3と共に同じ1つの車両に搭載されており、車両内の乗員(運転者、同乗者)に映像を表示する。
【0013】
液晶ディスプレイ装置1の設置位置は、例えば、車両のダッシュボードの車室側面であってもよい。この場合、液晶ディスプレイ装置1の表示画面には、車両外部から太陽光が直接入射する場合が多くなり、液晶ディスプレイ装置1内の温度が上昇する可能性が高くなる。
【0014】
空調制御ECU2は、車室内の温度等を調整するための車室内空調装置を制御する周知の装置である。この空調制御ECU2は、図示しない車室内温度センサから車室内温度(すなわち、液晶ディスプレイ装置1の周囲の温度)を取得し、取得した車室内温度を、車内LAN(例えばCAN)を介して液晶ディスプレイ装置1に送信する。
【0015】
操作装置3は、車室内の乗員(すなわち、ユーザ)が直接操作できる装置であり、操作装置3を操作することで乗員は液晶ディスプレイ装置1の表示面の明るさレベルを指定することができる。指定された明るさレベルは、操作装置3から液晶ディスプレイ装置1に送信される。操作装置3は、例えば上記車両に搭載されるナビゲーション装置(図示せず)に含まれる操作装置(タッチパネル、メカニカルスイッチ)であってもよい。
【0016】
液晶ディスプレイ装置1は、TFT液晶モジュール11、映像処理回路12、バックライトモジュール13、温度検知回路16、LED駆動回路17、電流切替回路18、制御マイコン19を含んでいる。
【0017】
液晶モジュール11は、表示画面を構成する周知の液晶パネル111、および、液晶パネル111に対して電気信号を供給することで液晶パネル111を駆動する液晶ドライバ112を含む装置である。バックライトモジュール13は、液晶パネル111、液晶ドライバ112の他に、レシーバ、コントローラ、階調用電源、メモリ、DC−DCコンバータ等を含んでいてもよい。
【0018】
液晶パネル111は、例えば、乗員へ提供する情報の量の増大および視認性向上のために、例えば、11.6型、12.3型等の大画面かつフルHDまたはHDの高解像度の、IPS駆動方式の液晶パネルである。なお、フルHDの解像度は横1920dot×縦1080dotであり、HDの解像度は横1920dot×縦720dotである。IPS駆動方式の液晶は、TN駆動方式の液晶に比べ、視野角依存性が少なく、かつ、高コントラストな高画質の表示特性を実現できる。
【0019】
映像処理回路12は、液晶ディスプレイ装置1の外部から入力された映像信号を、液晶ドライバ112を制御する信号に変換し、変換後の信号を液晶ドライバ112に出力する。この信号を受けた液晶ドライバ112は、上記映像信号に対応する映像を表示するよう、液晶パネル111を駆動する。
【0020】
液晶ディスプレイ装置1の外部から映像処理回路12に入力される映像信号としては、車両用ナビゲーション装置から入力される地図画像の映像信号、および、バックカメラから入力されるバックカメラ画像の映像信号等がある。バックカメラは、車両に取り付けられ、車両の後方の道路等を撮影するカメラである。車両の乗員は、上記のように液晶パネル111に表示されたバックカメラ画像を確認することで、車両の後方の障害物(歩行者、他車両、電柱等)を容易に確認することができる。
【0021】
バックライトモジュール13は、バックライト14と、バックライトモジュール13内の温度を検知するための温度センサ15を含んでいる。バックライト14は、液晶パネル111を照らす光源である。バックライト14の輝度によって液晶ディスプレイ装置1の表示画面輝度が決まる。
【0022】
図2に示すように、バックライト14は、白色発光ダイオードが直列に複接個接続された白色発光ダイオード列(LED)を、並列に複数列有する。
【0023】
温度センサ15は、バックライト14の近傍に配置され、バックライトモジュール13内かつバックライト14の近傍の雰囲気温度(すなわち、液晶ディスプレイ装置1内部の温度)に応じて抵抗値が変化するサーミスタである。
【0024】
温度検知回路16、LED駆動回路17、電流切替回路18、制御マイコン19は、同じ制御回路基板10に実装されている。制御回路基板10、液晶モジュール11、バックライトモジュール13は、周知の通り、液晶ディスプレイ装置1内で密接して配置されており、互いの間で熱は容易に伝達される。
【0025】
温度検知回路16は、温度センサ15の抵抗値に応じた信号を出力する回路である。温度検知回路16はハードウェア的に実現されていてもよい。例えば、温度検知回路16は、温度センサ15の抵抗値を検出電圧に変換する周知の電圧変換回路と、検出電圧をA/D変換して検出電圧のデジタル値を出力するA/Dコンバータと、から構成されていてもよい。この場合、検出電圧のデジタル値が信号TEMPとして制御マイコン19に入力される。
【0026】
LED駆動回路17は、電流切替回路18および制御マイコン19からの信号に基づいてバックライト14の各LEDの点灯、消灯、および、輝度を制御する。図2に示すように、LED駆動回路17は、電流設定部171、定電流回路172を有している。
【0027】
電流設定部171は、電流切替回路18の抵抗値R(電流設定部171に接続された負荷としての電流切替回路18の抵抗値)と制御マイコン19から入力されたPWM信号に基づいて、上記PWM信号と同じ周期およびデューティ比で、抵抗値Rが小さいほど大きくなる振幅のLED電流設定電圧Vを定電流回路172に印加する。電流設定部171を構成する回路は周知のものを用いればよい。
【0028】
定電流回路172は、LED電流設定電圧Vと同じ周期およびデューティ比で、LED電流設定電圧Vの振幅が高いほど高い振幅の電流を生成する定電流回路である。このような定電流回路の構成は周知である。例えば、白色発光ダイオード列毎にNPNトランジスタおよびオペアンプを有する回路を採用してもよい。このような回路では、NPNトランジスタのコレクタに白色発光ダイオード列のカソード側が接続され、ベースにオペアンプの出力端子が接続され、オペアンプの非反転端子にLED電流設定電圧Vが入力され、反転端子にエミッタが接続される。
【0029】
このように、LED駆動回路17は、電流切替回路18の抵抗値Rと同じ振幅の電流が、制御マイコン19から入力されたPWM信号と同じ周波数かつ同じデューティ比で、バックライト14の各白色発光ダイオードに流れるように、制御する。
【0030】
電流切替回路18は、制御マイコン19のISET端子から入力されたISET信号のオン、オフに従って、抵抗値Rが変化する回路である。具体的には、温度検知回路16は、図2に示すように、NPNトランジスタ181と、複数個の抵抗182〜185を有している。
【0031】
NPNトランジスタ181のベースには抵抗182、183の一端が接続されており、182の他端は制御マイコン19のISET端子に接続されており、抵抗183の他端は接地されている。また、NPNトランジスタ181のエミッタは接地されている。また、NPNトランジスタ181のコレクタには抵抗184の一端が接続されており、抵抗184の他端には抵抗185の一端および電流設定部161に接続されている。また、抵抗185の他端は接地されている。
【0032】
このようになっていることで、ISET端子から入力されるISET信号がオフの場合は、抵抗184に電流が流れず抵抗185に電流が流れるので、抵抗値Rは抵抗185の抵抗値と同じになる。また、ISET信号がオンの場合は、抵抗184、185の両方に電流が流れるので、抵抗値Rは抵抗184、185の合成抵抗となり、ISET信号がオフの場合よりも小さくなる。
【0033】
LED駆動回路17、電流切替回路18がこのような構成になっていることで、ISET信号がオンの場合にバックライト14の各白色発光ダイオードに流れる電流の振幅は、ISET信号がオフの場合にバックライト14の各白色発光ダイオードに流れる電流の振幅に比べて、大きくなる。
【0034】
制御マイコン19は、CPU、RAM、ROM、I/O等を有し、ROMに記録された制御マイコン19用のプログラムを実行することで図3に示す処理を実行し、それにより、バックライト14の輝度、すなわち、液晶ディスプレイ装置1の表示画面輝度を制御する。
【0035】
以下、上記のような構成の液晶ディスプレイ装置1による、表示画面輝度の制御処理について説明する。制御マイコン19は、まずステップS110で、温度検知回路16から入力される信号TEMPに基づいて、バックライトモジュール13内かつバックライト14の近傍の雰囲気温度の情報を取得する。更にステップS110では、空調制御ECU2から送信されて車内LANを介して受信した車室内温度を取得する。続いてステップS115では、乗員によって操作装置3を介して指示された表示画面の明るさレベルの現在の値を取得する。
【0036】
続いてステップS120では、ステップS110で取得した温度と、ステップS115で取得した明るさレベルに基づいて、PWM信号のデューティ比を決定する。また、ISET信号の値をオフに決定する。
【0037】
なお、ここで用いる温度は、信号TEMPに基づくバックライト14の近傍の雰囲気温度と、空調制御ECU2から受信した車室内温度のうち、あらかじめ定められたどちらか一方のみを用いてもよい。
【0038】
信号TEMPに基づくバックライト14の近傍の雰囲気温度のみを用いる場合は、車内LANを介した通信を介在させずに温度センサ15を用いて取得した温度を使用するので、ソフトウェアの介在が少なくなり、車両の後方視界表示時のシステム信頼性が向上する。
【0039】
また、基本的にバックライト14の近傍の雰囲気温度を使用し、雰囲気温度の値が異常な場合(例えば、単位時間当たりの温度の変化量の絶対値が所定の閾値を超える場合)に限り、空調制御ECU2から受信した車室内温度を用いるようになっていてもよい。
【0040】
図4のグラフに、当該温度および当該明るさレベルを適用することで、デューティ比を決定する。なお、制御マイコン19は、ROM中に図4のグラフの情報を記憶している。
【0041】
図4のグラフでは、1から11までの11段階の明るさレベル毎に、温度とデューティ比の対応関係を示す実線d1〜d11が規定されている。
【0042】
PWMデューティ比が大きくなるほど、単位時間当たりのバックライト14の各白色発光ダイオードの発光時間が長くなり、各白色発光ダイオードに流れる電流量の実効値が増大することで表示画面輝度が増大する。したがって、明るさレベルが大きいほど、表示画面輝度が高くなる。それゆえ、明るさレベルのうち任意の1つを第1のレベルとして、当該第1のレベルよりも高い明るさレベルのうち任意の1つを第2のレベルとすると、第1のレベルが設定された場合は第2のレベルが設定された場合に比べて、温度が同じならば、表示画面輝度が低くなる。
【0043】
また、このグラフに示すように、どの明るさレベルにおいても、温度が高くなるとデューティ比が低くなるように、すなわち、表示画面輝度が低くなるように、設定されている。具体的には、温度が第1温度A未満の場合は、デューティ比が一定値(最大値)であり、温度が第1温度A以上第2温度B未満の場合は、温度の上昇と共にデューティ比が小さくなり、温度が第2温度A以上の場合は、デューティ比が一定値(最小値)である。
【0044】
しかも、隣り合う明るさレベル間のデューティ比の差は、温度が低くなるほど小さくなっている。具体的には、隣り合う明るさレベル間のデューティ比の差は、温度が第1温度A未満の場合は一定の最小値となり、温度が第1温度A以上第2温度B未満の場合は温度の上昇と共に増大し、温度が第2温度A以上の場合は一定の最大値となる。つまり、明るさレベルについて上記第1のレベルが設定された場合と上記第2のレベルが設定された場合との表示画面輝度の差は、温度が低くなると小さくなるように設定されている。
【0045】
ステップS120では更に、決定したデューティ比のPWM信号を電流設定部171に入力すると共に、ISET信号をオフに制御する。なお、PWM信号の周波数については、あらかじめ定められた固定値とする。
【0046】
これにより、LED駆動回路17は、抵抗184の抵抗値と同じ振幅の電流が、制御マイコン19から入力されたPWM信号と同じ周波数かつ同じデューティ比で、バックライト14の各白色発光ダイオードに流れるように、制御する。制御マイコン19は、ステップS120の後、ステップS110に戻る。
【0047】
次に、このような作動を行うことの意義について説明する。液晶ディスプレイ装置1の表示画面輝度を決める光源(バックライト14)を熱源として捉えれば、光源が液晶ディスプレイ装置1の内部または周囲の温度に影響を与えることが考えられる。本実施形態のように液晶パネル111のサイズが増大しても表示画面の視認性を確保するためには、バックライト14の消費電力が基本的に増大する。したがって、バックライト14の熱源としての影響度が増大する。
【0048】
そこで、制御マイコン19は、液晶ディスプレイ装置1の内部または周囲の温度の情報を取得し(ステップS110)、取得した温度の情報に基づいて表示画面輝度を制御する(ステップS120)。このように、液晶ディスプレイ装置1の内部または周囲の温度に応じて表示画面輝度を制御することで、液晶ディスプレイ装置1の内部の温度を適切にコントロールすることができる。
【0049】
具体的には、高温環境時には表示画面輝度を低下させることで、液晶ディスプレイ装置1内部の温度上昇を抑えることができる。これによりIPS液晶の転移を防止し、また液晶ディスプレイ装置1に採用する電子部品の温度が正常動作範囲を超えてしまうことを防止できる。
【0050】
また、低温環境時には表示画面輝度を上昇させることにより、バックライト14の発熱でIPS液晶を暖める。IPS方式の液晶パネル111に用いられる液晶の温度特性により、低温環境下では、液晶パネル111の表示応答性が、低下し、表示品位および視認性が悪化する。この傾向は、通常の表示で頻度の高い中間階調で特に顕著である。そこで、低温環境下で上記のようにバックライト14の発熱でIPS液晶を暖めることで、液晶パネル111の応答性の低下を抑え、また、応答性を素早く回復することができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の液晶ディスプレイ装置1のハードウェア構成は、第1実施形態と同じである。本実施形態の作動が第1実施形態と異なるのは、図3のステップS120におけるISET信号のオン、オフの決定方法である。
【0052】
具体的には、本実施形態の制御マイコン19は、ステップS120において、第1実施形態と同じ方法でPWM信号のデューティ比を決定すると共に、ステップS110で取得した温度に基づいて、ISET信号のオン、オフを決定する。
【0053】
例えば、ステップS110で取得した温度が第1温度A未満の場合は、ISET信号をオンにし、第1温度A以上の場合は、ISET信号をオフにする。また例えば、ステップS110で取得した温度が第2温度B未満の場合は、ISET信号をオンにし、第2温度B以上の場合は、ISET信号をオフにする。
【0054】
第1実施形態で説明した通り、ISET信号がオフの場合とオンの場合とを比べると、オンの場合の方が電流切替回路18の抵抗値Rが小さいので、LED電流設定電圧Vの振幅が大きくなる。したがって、ISET信号がオンの場合の方がオフの場合に比べて、バックライト14の各白色発光ダイオードに流れる電流量の実効値が大きくなる。
【0055】
したがって、本実施形態では、図5に示すように、ステップS110で取得した温度が第2温度B以上の場合、バックライト14の各白色発光ダイオードに流れる電流ILEDは、実線31のように、振幅I1、デューティ比T1/T0となる。また、ステップS110で取得した温度が第1温度B未満の場合、バックライト14の各白色発光ダイオードに流れる電流ILEDは、破線32のように、振幅I2、デューティ比T2/T0となる。つまり、制御マイコン19は、電流切替回路18を用いてハードウェア的に、電流ILEDを、振幅、デューティ比の両面で、液晶ディスプレイ装置1の内部または周囲の温度が低いほど、実効値が高くなるように、制御する。このようにすることで、低温環境時にはデューティ比だけでなく、ハ−ドウェア的に設定される電流の振幅を上げることで、より効果的に液晶ディスプレイ装置1内部(特にIPS液晶)を暖めることができる。
【0056】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本発明は、上記各実施形態に対する以下のような変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
【0057】
(変形例1)
上記各実施形態において、第1温度Aは第2温度Bよりも低くなっているが、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、第1温度Aと第2温度Bが同じであってもよい。その場合、ステップS110で取得した温度が第1温度A以上かつ第2温度B未満である場合はなくなり、バックライト14の各白色発光ダイオードの実効輝度の制御は、2段階になる。
【0058】
この場合、温度検知回路16は、温度センサ15の抵抗値を検出電圧に変換する周知の電圧変換回路と、検出電圧と所定の第1電圧の大小を比較するコンパレータとから構成されていてもよい。この場合、第1電圧は温度センサ15が第1温度A(=第2温度B)の環境下に置かれた場合の検出電圧である。この場合、コンパレータの比較結果が信号TEMPとして制御マイコン19に入力される。
【0059】
(変形例2)
上記各実施形態においては、ステップS110で取得した温度が第1温度A未満の場合でも、明るさレベルに応じてデューティ比が異なっている。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、ステップS110で取得した温度が第1温度A未満の場合、明るさレベルに関わらずデューティ比を同じ一定値(図4の線d11が示す一定値)としてもよい。このようにすることで、ユーザの設定ないように関わらず、低温環境下では、IPS液晶の温度を早く上昇させ低温応答性を回復させることを優先的に行うことができる。
【0060】
(変形例3)
上記第2実施形態では、制御マイコン19は、ステップS110で取得した温度のみに基づいて、ISET信号のオン、オフを決定している。しかし、ステップS110で取得した温度と、ステップS115で取得した明るさレベルの両方に基づいて、ISET信号のオフを決定してもよい。
【0061】
(変形例4)
上記第2実施形態においては、ステップS110で取得した温度が第1温度A(または第2温度B)未満の場合は、ISET信号をオンにし、第1温度A(または第2温度B)以上の場合は、ISET信号をオフにしている。この場合、ステップS110で取得した温度が第1温度A(または第2温度B)未満の場合は、必ずISET信号をオンにしているが、必ずしもこのようにしなくてもよい。
【0062】
例えば、ステップS110で取得した温度が第1温度A(または第2温度B)未満の場合でも、映像処理回路12に入力される映像信号(すなわち、液晶パネル111に表示される画像の映像信号)の種類に応じて、ISET信号のオン、オフを切り替えてもよい。
【0063】
具体的には、映像処理回路12に入力される映像信号がバックカメラ画像の映像信号であった場合はISET信号をオンにし、映像処理回路12に入力される映像信号がバックカメラ画像以外の画像(例えば地図画像)の映像信号であった場合はISET信号をオフにしてもよい。
【0064】
このようにすることで、バックカメラ画像のような、自車両に対する障害物(人、他車両、電柱等)の移動を運転者に提示することが重要になる画像を液晶パネル111に表示する場合は、より迅速かつ強力に液晶を暖めて液晶モジュール11の応答性を高めることができる。
【0065】
(変形例5)
上記各実施形態において、温度検知回路16の機能は、制御マイコン19の一機能として制御マイコン19内で実現されていてもよい。
【0066】
(変形例6)
上記実施形態では、液晶ディスプレイ装置1は、1組のバックライト14、LED駆動回路17、電流切替回路18を有していたが、バックライト14、LED駆動回路17、電流切替回路18の組を2組以上有していてもよい。その場合、1つの制御マイコン19が、それら複数組の各々のLED駆動回路17、電流切替回路18を制御するようになっていてもよい。
【0067】
(変形例7)
液晶ディスプレイ装置1における液晶の駆動方式、光源、サイズ、解像度は、上記実施形態のようなものに限られるわけではない。例えば、液晶の駆動方式はTN方式でもよい。また例えば、光源はLEDでなく、冷陰極管であってもよい。
【0068】
(変形例8)
上記各実施形態において、ユーザは明るさレベルを設定することができるようになっているが、明るさレベルは必ずしも設定できなくともよい。
【0069】
(変形例9)
上記実施形態では、制御マイコン19は、液晶ディスプレイ装置1の内部または周囲の温度が高くなると表示画面輝度が低くなるよう制御しているが、必ずしもこのようになっていなくてもよい。目的によっては、逆に、液晶ディスプレイ装置1の内部または周囲の温度が低くなると表示画面度が高くなるよう制御してもよい。
することを特徴とする請求項1に記載の輝度制御装置。
【符号の説明】
【0070】
1 液晶ディスプレイ装置
11 液晶モジュール
14 バックライト(光源)
18 電流切替回路
19 制御マイコン(輝度制御装置)
172 定電流回路
図1
図2
図3
図4
図5