(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、飲料が充填される容器としてプラスチックボトルが用いられる。そして、プラスチックボトルは、従来はガラス製容器に収容されていた調味料等の液体食品を収容する容器としても用いられるようになっている。
【0003】
このようなプラスチックボトルの生産量は年々増加傾向にある。一方で、省資源化、ごみの減量化や、輸送時の環境負荷低減等による、エネルギー使用量、及び二酸化炭素排出量の低減の観点から原料の使用量を削減することによるプラスチックボトルの軽量化が取り組まれている。しかしながら、プラスチックボトルを軽量化するとプラスチックボトルの容器の肉厚が薄くなる為、プラスチックボトルの強度が低下する傾向がある。
【0004】
プラスチックボトルは、複数本の容器の口が上を向いた状態で段ボール等に箱詰めにされたものを複数個積み上げ一つのパレットとして、保管、及び輸送される。したがって、下段にあるプラスチックボトルは、鉛直方向に加わる荷重によって変形が生じやすくなる傾向があり、外観不良や荷崩れが発生するおそれがある。
【0005】
ところで、内容物が密閉されるプラスチックボトルでは、内容物の充填時と保管時とで温度変化が生じた際、この温度変化に応じて内部の圧力が変化する。例えば、殺菌のために高温にした内容物をプラスチックボトルに充填して密封するホット充填方式(高温充填方式)によって内容物が充填されたプラスチックボトルでは、常温での保管などによって内容物の温度が充填時よりも低くなる場合には、内部で減圧が生じる。一方、予め薬剤で内部を滅菌したプラスチックボトルに常温で内容物を充填して密封する無菌充填方式(常温充填方式)によって内容物が充填されたプラスチックボトルでは、販売時の加温などによって内容物の温度が充填時よりも高くなる場合には、内部で増圧が生じる。なお、このようなプラスチックボトルの内部の圧力変化は、内部に密閉された内容物の温度変化にともなう体積変化によって生じる。
【0006】
また、プラスチックボトルはわずかながら酸素の透過性を有している。そして、プラスチックボトルの保存が長期に及ぶと、内容物によっては酸化が起こり、これによってもプラスチックボトルの内部で減圧が生じる。
【0007】
そして、プラスチックボトルは、ガラス製容器とは異なり、材質が柔らかいので内部の圧力変化によって変形しやすく、軽量化されたプラスチックボトルは、更に変形しやすくなる。したがって、プラスチックボトルを軽量化する際には、強度とともに、内部の圧力変化の対策がより重要となる。
【0008】
特許文献1には、胴部の下部に複数の減圧吸収パネルを形成し、減圧吸収パネルが変形することによって容器の内部の圧力変化を吸収するプラスチックボトルが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。
図1は本実施形態に係るプラスチックボトル1の一例が示された正面図である。
図2は
図1のプラスチックボトル1の平面図であり、
図3は
図1のプラスチックボトル1の底面図である。なお、以下では、説明の便宜上、プラスチックボトル1を正立させた
図1の状態において、容器内に内容物が充填されるプラスチックボトル1の口部10を上とする。
【0018】
図1〜
図5に示されるように、本実施形態に係るプラスチックボトル1は、口部10と、肩部20と、胴部30と、底部40とを有する。そして、胴部30は、同一径の円筒形状であり、開き角度が45度以上かつ90度以下の環状の周溝である、浅溝50と深溝51とをそれぞれ複数有し、浅溝50の深さd1と深溝51の深さd2との比d1/d2は、0.2以上かつ0.95以下であり、浅溝50の幅w1と深溝51の幅w2との比w1/w2は、0.2以上かつ0.95以下であることを特徴とする。以下では、本実施形態に係るプラスチックボトル1の好適な態様として、胴部30が8本の浅溝50(50A〜50H)と、7本の深溝51(51A〜51G)とを有する形態を例示し、詳細に説明する。
【0019】
口部10は、内容物の充填口、及び注出口、あるいは飲み口となり、口部10に、図示せぬキャップが取り付けられることによってプラスチックボトル1が密閉される。なお、口部10を密閉する形態は特に限定されるものではなく、螺合方式のキャップや打栓方式のキャップなどを用いることができる。
【0020】
肩部20は、その上方が口部10に連なり、一方で、その下方が胴部30に連なる。肩部20は、上方から下方に向かって拡径する略円錐台の筒形状を有する。肩部20は、鉛直断面においてプラスチックボトル1の外方へ湾曲した面から形成されているが、内方へ湾曲した面であっても良く、肩部20の形状は特に限定されるものではない。
【0021】
次に、胴部30は、同一径の円筒形状であり、その直径はD1である。また、胴部30には、プラスチックボトル1の内方へ窪み、水平方向に延びる環状の周溝である、8本の浅溝50(50A〜50H)と、7本の深溝51(51A〜51G)とが形成されている。浅溝50と深溝51とでは、その形状が異なる。この浅溝50と深溝51は、胴部30の水平方向の荷重に対する強度を向上させる。また、浅溝50と深溝51は、鉛直方向の荷重に対して、クッションの役割を果たし、胴部30の座屈を防止する。更に、浅溝50と深溝51は、プラスチックボトル1の内部に減圧が生じた際、鉛直方向に収縮変形することで、この減圧を吸収する効果を有し、詳細については後述する。
【0022】
ここで、胴部30は、肩部20に連なる上側
円筒部31と、上側
円筒部31に連なる下側
円筒部32とに分割される。上側
円筒部31と下側
円筒部32は、連結円筒部33を介して連結される。
【0023】
上側
円筒部31は、上方から下方へ向けて浅溝50と深溝51とが交互に3本ずつ配置されている。一方、下側
円筒部32は、下方から上方へ向けて浅溝50と深溝51とが交互に3本ずつ配置されている。そして、下側
円筒部32における浅溝50(50D〜50F)と深溝51(51D〜51F)との配置は、上側
円筒部31における浅溝50(50A〜50C)と深溝51(51A〜51C)の配置と、上下で逆向きである。
【0024】
連結円筒部33は、上側
円筒部31と下側
円筒部32との間に位置し、それぞれを連結させる。連結円筒部33は、鉛直方向の略中央に深溝51Gを有し、上端及び下端にはそれぞれ浅溝50G,50Hを有する。したがって、連結円筒部33は、深溝51を中心として上下対称形状である。なお、連結円筒部33は、上述の構成に限定されるものではなく、浅溝50G,50Hや深溝51Gの深さ、幅、開き角度などが、後述する構成とは異なる周溝であっても良い。なお、プラスチックボトル1全体の強度を向上する観点において、連結円筒部33は、鉛直方向の中央、上端、及び下端に周溝を有し、中央の周溝を中心として上下対称形状であることが好ましい。
【0025】
ここで、連結円筒部33の深溝51Gは、胴部30の鉛直方向の略中央に位置している。そして、上側
円筒部31の浅溝50と深溝51との配置は、下側
円筒部32の浅溝50と深溝51の配置と、上下で逆向きである。つまり、浅溝50(50A〜50H)と深溝51(51A〜51F)とは、胴部30に深溝51Gを中心として略上下対称に配置されている。
【0026】
底部40は、その上方が胴部30(下側
円筒部32)の下方に連なる。隣接する下側
円筒部32と、底部40との間には、面取りがなされた面取り部41が形成される。底部40は胴部30に対して垂直方向に伸び、プラスチックボトル1の接地面となる略平板状の底壁42と、底壁42からプラスチックボトル1の内方へ突出するドーム43とを有する。ドーム43は、プラスチックボトル1の径方向へ放射状に延びる8本の放射状リブ44を備える(
図3参照)。このドーム43、及び放射状リブ44は、底部40の強度を向上させる。なお、底部40は、上述の構成に限定されるものではなく、例えば、放射状リブ44の数が少なくても(例えば4本)、多くても(例えば12本)良い。
【0027】
次に、胴部30が有する浅溝50と深溝51の詳細について説明する。
図4は上側
円筒部31の部分拡大図であり、
図5は
図4のV−V線断面図である。なお、
図5は、浅溝50と深溝51の鉛直断面図であり、
図5の右側がプラスチックボトル1の内部である。
【0028】
上述したように、胴部30には、8本の浅溝50(50A〜50H)と7本の深溝51(51A〜51G)とが形成されている。浅溝50は、
図5に示すように、上側周面53と、溝底面54と、下側周面55とから構成される。上側周面53は、上方から下方に向けてプラスチックボトル1の内方へ傾斜する周面である。溝底面54は、鉛直な周面である。下側周面55は、上方から下方に向けてプラスチックボトル1の外方へ傾斜する周面である。そして、上側周面53は溝底面54の上縁と連なり、下側周面55は溝底面54の下縁と連なっている。
【0029】
浅溝50の深さd1は、周方向に一定である。浅溝50の溝幅w1は、周方向に一定である。溝底面54の幅、つまり、浅溝50の溝底部の幅w3は、周方向に一定である。上側周面53と下側周面55は、溝底面54を中心として上下対称であり、上側周面53の水平に対する傾斜の角度と下側周面55の水平に対する傾斜の角度は同一である。そして、上側周面53と下側周面55とのなす角度、つまり浅溝50の開き角度はθ1である。
【0030】
一方で、深溝51は、浅溝50と同様の構成であり、上側周面56と、溝底面57と、下側周面58とから構成される。上側周面56は、上方から下方に向けてプラスチックボトル1の内方へ傾斜する周面である。溝底面57は、鉛直な周面である。下側周面58は、上方から下方に向けてプラスチックボトル1の外方へ傾斜する周面である。そして、上側周面56は溝底面57の上縁と連なり、下側周面58は溝底面57の下縁と連なっている。
【0031】
深溝51の深さd2は、周方向に一定である。深溝51の溝幅w2は、周方向に一定である。溝底面57の幅、つまり、深溝51の溝底部の幅w4は、周方向に一定である。上側周面56と下側周面58は、溝底面57を中心として上下対称であり、上側周面56の水平に対する傾斜の角度と下側周面58の水平に対する傾斜の角度は同一である。そして、上側周面56と下側周面58とのなす角度、つまり深溝51の開き角度はθ2である。
【0032】
ここで、浅溝50の深さd1と深溝51の深さd2との比d1/d2は、0.2以上かつ0.95以下である。また、浅溝50の幅w1と深溝51の幅w2との比w1/w2は、0.2以上かつ0.95以下である。また、浅溝50の開き角度θ1と深溝51の開き角度θ2は、それぞれ45度以上かつ90度以下である。
【0033】
そして、浅溝50は、水平方向の荷重に対する強度を向上するとともに、鉛直方向の荷重による座屈を防止する。更に、浅溝50は、プラスチックボトル1の内部に減圧が生じた際、鉛直方向への収縮変形が小さく、この浅溝50を基点とした胴部30の折れ曲がりによる外観不良を防止する役割を果たす。一方、深溝である深溝51は、水平方向に対する強度を向上するとともに、鉛直方向の荷重による座屈を防止する。更に、深溝51は、プラスチックボトル1の内部に減圧が生じた際、鉛直方向への収縮変形が大きく、内部の減圧を吸収する役割を果たす。そして、プラスチックボトル1の内部に減圧が生じた際、深溝51の鉛直方向の収縮量は浅溝50の鉛直方向の収縮量より大である。
【0034】
このような効果の異なる2種類の浅溝50と深溝51とをそれぞれ胴部30に複数形成することで、胴部30の鉛直方向及び水平方向の強度を向上するとともに、プラスチックボトル1の内部の減圧を効果的に吸収でき、外観を良好に維持できる。ここで、プラスチックボトル1の内部に減圧が生じた際、浅溝50は主に形状の維持の役割を果たし、深溝51は主に減圧吸収の役割を果たす。
【0035】
なお、浅溝50と深溝51の配置は特に限定されるものではないが、胴部30にそれぞれ略上下対称に配置されることが好ましい。このような構成にすることで、効果の異なる2種類の浅溝50と深溝51が胴部30に上下対称に配置されるので、胴部30全体における強度と減圧吸収効果とのバランスが鉛直方向で図られるため、座屈強度を保持しながらプラスチックボトル1の内部の減圧を効果的に吸収できる。
【0036】
また、浅溝50と深溝51は、鉛直方向に向かって交互に配置されることが好ましい。このような構成にすることで、胴部30全体における強度と減圧吸収効果が鉛直方向で均等化され、座屈強度を保持しながらプラスチックボトルの内部の減圧を効果的に吸収できる。
【0037】
また、胴部30は、浅溝50と深溝51とそれぞれ1本ずつ有する円筒形状のユニットを複数備え、複数のユニットを組み合わせて構成されることが好ましい。ここで、上側円筒部31は、浅溝50と深溝51とそれぞれ1本ずつ有する単位円筒構造60を3つ備え、3つの単位円筒構造60(60A〜60C)が組み合わされて構成されている。また、下側円筒部32は、上側円筒部31と同様に、3つの単位円筒構造60(60D〜60F)が組み合わされて構成されている。
【0038】
これら6つの単位円筒構造60(60A〜60F)は、いずれも同一構造であり、
図5に示す単位円筒構造60Aを取り上げてその構成を説明する。単位円筒構造60Aは同一径の円筒形状であり、一端に浅溝50Aを有し、浅溝50Aと他端との間に深溝51Aを有する。浅溝50Aと深溝51Aとの間の円筒部61Aの幅はw5であり、深溝51Aと他端との間の円筒部62Aの幅はw6である。そして、円筒部61Aの幅w5は、円筒部62Aの幅w6より狭い。
【0039】
このような構成の単位円筒構造60Aは、浅溝50Aと深溝51Aによって、鉛直方向及び水平方向の強度を向上するとともに、プラスチックボトル1の内部の減圧を効果的に吸収する効果を有する。また、単位円筒構造60Aは、円筒部62Aより幅が狭い円筒部61Aによって、プラスチックボトル1の内部の減圧や鉛直方向及び水平方向の荷重に対する強度を向上する効果を有する。また、単位円筒構造60Aは、円筒部61Aより幅が広い円筒部62Aによって、プラスチックボトル1の内部の減圧を吸収した際に円筒形状となる範囲を広くし、胴部30を円筒形状に維持する効果を有する。
【0040】
そして、上側円筒部31は、同一構成の3つの単位円筒構造60(60A〜60C)が組み合わ
されて構成されるので、鉛直方向のいずれの箇所においても単位円筒構造60による効果が満遍なく発揮される。したがって、上側円筒部31全体における強度と減圧吸収効果が鉛直方向で均等化され、座屈強度を保持しながらプラスチックボトルの内部の減圧を効果的に吸収できる。
【0041】
下側円筒部32は、上側円筒部31と同じく、同一構成の3つの単位円筒構造60(60D〜60F)が組み合わされて構成されている。なお、下側円筒部32は、上側円筒部31と上下が反転した構成であり、上側円筒部31と同様の効果を有する。
【0042】
そして、上側円筒部31と下側円筒部32は、連結円筒部33を中心として上下対称形状である。したがって、胴部30は、プラスチックボトル1全体における強度と減圧吸収効果が均等化されるとともに鉛直方向でバランスが図られるので、プラスチックボトル1の内部の減圧を効果的に吸収でき、外観を良好に維持できる。
【0043】
ここで、上述したように、プラスチックボトル1の内部の減圧を吸収するとともに胴部30の強度および形状を維持する観点から、浅溝50の深さd1と深溝51の深さd2の比d1/d2は、0.2以上かつ0.95以下であり、浅溝50の幅w1と深溝の幅w2との比w1/w2は、0.2以上かつ0.95以下であり、浅溝50の開き角度θ1と深溝51の開き角度θ2は、それぞれ45度以上かつ90度以下である。比d1/d2が、0.2よりも小、もしくは0.95よりも大であると、減圧吸収効果の低下や、胴部30の強度の低下が起こりやすくなり、胴部30の形状を維持しにくくなる。また、比w1/w2が、0.2よりも小、もしくは0.95よりも大であると、減圧吸収効果の低下や、胴部30の強度の低下が起こりやすくなり、胴部30の形状を維持しにくくなる。また、角度θ1と角度θ2が、それぞれ45度よりも小、もしくは90度よりも大であると、減圧吸収効果の低下や、胴部30の強度の低下が起こりやすくなり、胴部30の形状を維持しにくくなる。
【0044】
なお、浅溝50の深さd1は、1.0mm以上かつ3.0mm以下が好ましく、深溝51の深さd2は、3.0mm以上かつ5.0mm以下が好ましい。深さd1は、3.0mmよりも大であると、浅溝50を基点とした胴部30の折れ曲がりを防止する効果が発揮されにくくなるとともに、賦形性が悪くなりやすい。一方で、深さd1は、1.0mmよりも小であると、水平方向に対する強度の向上と鉛直方向の荷重による座屈を防止する効果が発揮されにくくなる。また、深さd2は、5.0mmよりも大であると、座屈変形しやすくなるとともに、賦形性が悪くなりやすい。一方で、深さd2は、3.0mmよりも小であると、内部の減圧を吸収する効果が発揮されにくくなる。
【0045】
また、浅溝50の幅w1は、3.0mm以上かつ8.0mm以下が好ましく、4.0mm以上かつ6.0mm以下がより好ましい。深溝51の幅w2は、4.0mm以上かつ10.0mm以下が好ましく、5.0mm以上かつ7.0mm以下がより好ましい。幅w1は、8.0mmよりも大であると、水平方向に対する強度の向上と鉛直方向の荷重による座屈を防止する効果が発揮されにくくなる。一方で、幅w1は、3.0mmよりも小であると、浅溝50を基点とした胴部30の折れ曲がりを防止する効果が発揮されにくくなるとともに、賦形性が悪くなりやすい。また、幅w2は、10.0mmよりも大であると、座屈変形しやすくなる。一方で、幅w2は、4.0mmよりも小であると、鉛直方向の荷重による座屈を防止する効果と内部の減圧を吸収する効果が発揮されにくくなる。
【0046】
なお、浅溝50の溝底部の幅w3と深溝51の溝底部の幅w4との比w3/w4は、0.2以上かつ5.0以下であることが好ましい。このような構成にすることで、プラスチックボトル1の内部に減圧が生じた際、浅溝50は鉛直方向に収縮変形しにくくなり、深溝51は鉛直方向に収縮変形して内部の減圧を効果的に吸収できる。したがって、浅溝50と深溝51との効果のバランスが図られ、胴部30の鉛直方向及び水平方向の強度を向上するとともに、プラスチックボトル1の内部の減圧を効果的に吸収でき、外観を良好に維持できる。
【0047】
そして、浅溝50の溝底部の幅w3と深溝51の溝底部の幅w4は、いずれも0.01mm以上かつ2.0mm以下であることが好ましい。幅w3と幅w4は、それぞれ2.0mmよりも大であると、内部の減圧を吸収する効果と鉛直方向の荷重による座屈を防止する効果が発揮されにくくなる。また、内部に減圧が生じた際、浅溝50または深溝51が鉛直方向に収縮変形せず、溝底部54または溝底部57を起点として折れ曲がりやすくなり、胴部30が湾曲した形状となりやすい。一方で、幅w3と幅w4は、0.01mmよりも小であると、賦形性が悪くなりやすい。
【0048】
また、浅溝50の開き角度θ1と深溝51の開き角度θ2は、同一であることが好ましく、75度であることがより好ましい。このような構成にすることで、浅溝50と深溝51とは深さと幅が異なる相似形状となり、プラスチックボトル1を成形する際の金型の作製が容易となる。また、胴部30の外観が統一され、購買者の目を引いたり奪ったりする効果であるアイキャッチ性が向上する。
【0049】
また、単位円筒構造60においては、円筒部61の幅w5は、4.0mm以上かつ20.0mm以下が好ましく、円筒部62の幅w6は、4.0mm以上かつ20.0mm以下が好ましい。幅w5は、20.0mmよりも大であると、円筒部61の強度が低下しやすく、4.0mmよりも小であると、胴部30を円筒形状に維持しにくくなるとともに賦形性が悪くなりやすい。幅w6は、20.0mmよりも大であると、円筒部62の強度が低下しやすく、4.0mmよりも小であると、胴部30を円筒形状に維持しにくくなり、取扱性が低下しやすい。なお、円筒部61は円筒形状の胴部30の基本構造となる場所であって、幅w6が4.0mmよりも小であると、浅溝50と深溝51との間隔がせまくなり、胴部30は周溝が密集した蛇腹のような形状となってしまう。なお、円筒部61の幅w5と円筒部62の幅w6は同じであっても良い。このような構成にすることで、プラスチックボトル1を成形する際の金型の作製が容易となる。また、胴部30の外観が統一され、アイキャッチ性が向上する。
【0050】
なお、胴部30は、上述の構成に限定されるものではなく、上述の浅溝50及び深溝51と異なる構成の補強溝を有する構成であっても良い。しかし、このような構成にすると、胴部30の強度と減圧吸収効果のバランスが図られにくくなり、外観を維持しにくくなる。また、プラスチックボトル1を成形する際の金型が複雑となり、生産性が低下しやすい。したがって、胴部30は、浅溝50と深溝51のみを備える構成が好ましい。
【0051】
本実施形態に係るプラスチックボトル1はサイズによって限定されることはなく、種々のサイズに対して適用することができるが、プラスチックボトル1の内容量が200ml〜2000mlであるプラスチックボトル1に対して好適である。とりわけ、プラスチックボトル1の全高H1が130mm〜300mmであり、胴部30の直径D1が50mm〜120mmであることが好ましく、本実施形態に係るプラスチックボトル1の奏する効果を好適に得ることができる。
【0052】
プラスチックボトル1を構成する熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、又はこれらの共重合体等の熱可塑性ポリエステル、これらの樹脂、あるいは他の樹脂とのブレンド物が好適であり、特に、ポリエチレンテレフタレート等のエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルを好適に使用することができる。更に、アクリロニトリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等も使用することができる。更に、植物由来のバイオマス系プラスチック、例えば、ポリ乳酸(PLA)を用いることも可能である。上述された樹脂には、成形品の品質を損なわない範囲で、種々の添加剤、例えば、着色剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑剤、核剤、酸化防止剤、帯電防止剤等を配合することができる。
【0053】
プラスチックボトル1を構成するエチレンテレフタレート系熱可塑性樹脂として、エステル反復部分の大部分、一般に70モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50〜90℃であり、融点(Tm)が200〜275℃の範囲にあるものが好適である。また、エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートが耐圧性等の点で特に優れているものの、エチレンテレフタレート単位以外に、イソフタル酸や、ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸と、プロピレングリコール等のジオールからなるエステル単位を少量含む共重合ポリエステルも使用することができる。
【0054】
更に、プラスチックボトル1は、二層以上の熱可塑性ポリエステル層により構成することもできる。プラスチックボトル1は、二層以上の熱可塑性ポリエステル層により構成する場合には、層間にバリア層や、酸素吸収層等の中間層を備えることができる。酸素吸収層としては、酸化可能有機成分、及び遷移金属触媒の組み合わせ、あるいは実質的に酸化しないガスバリア性樹脂等を含む層を使用することができる。
【0055】
プラスチックボトル1は、上述の材料を射出成形して製作したプリフォームをブロー成形によって成形することにより作製することができる。
【0056】
以上に説明がなされたように、本実施形態に係るプラスチックボトル1は、胴部30が、同一径の円筒形状であり、開き角度が45度以上かつ90度以下の環状の周溝である、浅溝50と深溝51とをそれぞれ複数有し、浅溝50の深さd1と深溝51の深さd2との比d1/d2は、0.2以上かつ0.95以下であり、浅溝50の幅w1と深溝51の幅w2との比w1/w2は、0.2以上かつ0.95以下である。そして、本実施形態に係る構成によれば、軽量化されたプラスチックボトル1に対して、座屈強度を保持しながらプラスチックボトル1の内部の減圧を吸収し、外観を良好に維持できる。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例を示して、本発明を更に詳細、かつ具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
図1に示される本実施形態に係るプラスチックボトル1が用いられた。すなわち、プラスチックボトル1は、胴部が、同一径の円筒形状であり、開き角度が45度以上かつ90度以下の環状の周溝である、浅溝50と深溝51とをそれぞれ複数有し、浅溝50の深さd1と深溝51の深さd2との比d1/d2は、0.2以上かつ0.95以下であり、浅溝50の幅w1と深溝51の幅w2との比w1/w2は、0.2以上かつ0.95以下であるといった特徴を有している。プラスチックボトル1は、ポリエチレンテレフタレート製であり、重量が23.8gで、容量が1050mlであった。また、プラスチックボトル1は、全高H1が252.5mmで、胴部30の直径D1が81mmで、浅溝50の深さd1が2.0mmで、深溝51の深さd2が3.0mmで、浅溝50の幅w1が4.5mmで、深溝51の幅w2が5.7mmで、浅溝51の開き角度θ1と深溝の開き角度θ2が75度であった。プラスチックボトル1は、プリフォームをブロー成形することによって作製された。
【0059】
(常温時外観確認試験)
実施例1のプラスチックボトル1に70℃に加熱された水をホット充填方式によって1000g充填し、口部10をキャップによって密封した。この内容物がホット充填方式によって充填されたプラスチックボトル1を常温(23℃)下に静置した。この時、プラスチックボトル1の正立した状態での全高と、胴部30の下端に対する上端の水平方向の最大変位、つまり胴部30の傾き量とをそれぞれ測定した。表1に結果を示す。なお、プラスチックボトル1には窪みなどの変形は生じず、外観は良好に維持された。
【0060】
(垂直座強度試験)
実施例1のプラスチックボトル1に70℃に加熱された水をホット充填方式によって1000g充填し、口部10をキャップによって密封した。この内容物がホット充填方式によって充填されたプラスチックボトル1を常温(23℃)下に静置した。この時、プラスチックボトル1の正立した状態での垂直座屈強度を測定した。この垂直座屈強度の測定は、AGR社製のテスター、TOP LOADを使用して行った。表1に結果を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
上述された実施例から以下の点が導き出された。実施例1は、ホット充填方式によって内容物が充填された場合において、常温状態におけるプラスチックボトル1の内部の減圧を主に深溝51の部分が収縮変形することで吸収し、この収縮変形は略鉛直方向であって胴部30が大きく傾くことなく、窪みなどの変形は生じず、外観を良好に維持できた。さらに、プラスチックボトル1の座屈強度は393Nであった。
【0063】
上述された実施例から、本実施形態に係るプラスチックボトル1は、その構成によって、軽量化されたプラスチックボトルにおいて、ホット充填方式によって充填された後に常温保管される際のプラスチックボトルの内部の減圧を吸収でき、薄肉化されても座屈強度を保持するとともに外観を良好に維持できるものであることが示された。