特許第6623558号(P6623558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623558
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】充填バルブ
(51)【国際特許分類】
   B65B 39/00 20060101AFI20191216BHJP
【FI】
   B65B39/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-107935(P2015-107935)
(22)【出願日】2015年5月27日
(65)【公開番号】特開2016-222258(P2016-222258A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100086852
【弁理士】
【氏名又は名称】相川 守
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】西納 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】高島 和己
(72)【発明者】
【氏名】長谷田 剛
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−162663(JP,A)
【文献】 特開2005−247390(JP,A)
【文献】 実開昭51−122845(JP,U)
【文献】 実開平06−044703(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口を区画形成する弁座が設けられ、前記弁座に接離して前記吐出口を開閉する弁体が収容されたノズル本体と、
前記弁座に連設されて鉛直下方に延び、前記吐出口から吐出される充填物が通過する筒状部と、
前記筒状部の外周を覆い、前記筒状部の外周面との間に気体通路を形成する外筒部と、
前記気体通路に気体を供給する気体供給手段とを備え、
前記外筒部の下端部を全周にわたって前記筒状部の下端面に対向するように内方へ突出させることにより、前記筒状部の下端開口の全周囲に沿う環状の噴射口を形成するとともに、前記弁座を囲む環状空間を前記気体通路の上方に形成し、
前記環状空間の容積は前記気体通路の容積より大きく、前記環状空間の下端部の横断面は前記気体通路に近づくに従って縮小し、
前記気体供給手段は、前記弁体が弁座に着座する動作に連動して、気体を、前記環状空間を介して前記気体通路に供給し、前記筒状部の下端面に沿って前記環状の噴射口から内方へ噴射させる
ことを特徴とする充填バルブ。
【請求項2】
前記筒状部が鉛直下方に直線的に延びる管状部材であることを特徴とする請求項1に記載の充填バルブ。
【請求項3】
前記噴射口が気体を水平方向に噴射することを特徴とする請求項1または2に記載の充填バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性を有する充填物を容器に充填するための充填バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
粘性を有する充填物を容器に充填する工程では、バルブを閉じた後にノズルの先端から充填物の液垂れが生じ、充填後の容器の口部に付着するおそれがある。そこで従来、このような液垂れの発生を防止するように構成された充填バルブとして特許文献1に開示されたものが知られている。この充填バルブは、下方に窄まる接頭円錐状の内周面を有する弁座と、弁座の内周面に対応した外周面を有する弁体とを備え、弁座において、着座状態にある弁体の直ぐ下の内周面に複数の空気孔が形成されている。空気孔は弁座の下側の開口部に対して水平方向に空気を噴射するように成形され、弁体を閉じた後に弁体と弁座の間に生じる液垂れに向かって空気が噴射され、液垂れが切断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−247390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の充填バルブにおいて、弁体の下面は凹陥しており、充填物が表面張力により密着して残留することはなく、また充填中や閉弁動作時に、この凹陥した内部に充填物が大量に入り込むことはない。しかし充填物の飛沫が弁体の凹陥した表面に付着することがあり、この付着した充填物が堆積し、大きくなって落下すると、容器あるいはノズルの下方部分を汚染するおそれがある。
【0005】
本発明は、容器への充填動作後に充填物が不意に落下して容器等を汚染することのない充填バルブを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吐出口を区画形成する弁座が設けられ、弁座に接離して吐出口を開閉する弁体が収容されたノズル本体と、弁座に連設されて鉛直下方に延び、吐出口から吐出される充填物が通過する筒状部と、筒状部の外周を覆い、筒状部の外周面との間に気体通路を形成する外筒部と、気体通路に気体を供給する気体供給手段とを備え、外筒部の下端部を全周にわたって筒状部の下端面に対向するように内方へ突出させることにより、筒状部の下端開口の全周囲に沿う環状の噴射口を形成するとともに、弁座を囲む環状空間を気体通路の上方に形成し、環状空間の容積は気体通路の容積より大きく、環状空間の下端部の横断面は気体通路に近づくに従って縮小し、気体供給手段は、弁体が弁座に着座する動作に連動して、気体を、環状空間を介して気体通路に供給し、筒状部の下端面に沿って環状の噴射口から内方へ噴射させることを特徴としている。
【0007】
筒状部は例えば、鉛直下方に直線的に延びる管状部材である。噴射口は気体を水平方向に噴射するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容器への充填動作後に充填物が不意に落下して容器等を汚染することのない充填バルブを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態である充填バルブを備えた充填装置を示し、一部を断面とした概略構成図である。
図2】充填バルブの先端部分を拡大して示す断面図である。
図3】充填バルブが閉鎖している状態を示す断面図である。
図4】充填バルブが開放している状態を示す断面図である。
図5】本発明の他の実施形態である充填バルブを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示された実施形態を参照して本発明を説明する。
図1において、充填バルブ10のノズル本体11は鉛直下方に延び、ノズル本体11の途中部分には充填物供給管12が接続される。充填物供給管12は充填物供給タンク13に接続され、このタンク13に貯留された充填物(例えばサラダ油等の粘性流体)は充填物供給管12を通ってノズル本体11内に供給される。ノズル本体11内には充填物が流下する流路14が形成され、流路14内には弁体15と、弁体15の上部に固定されて上方へ延びる支持軸16が収容される。支持軸16の上端はエアシリンダを備えたバルブ開閉機構17に接続される。バルブ開閉機構17は制御装置18によって制御され、これにより弁体15が昇降駆動されて、ノズル本体11の下端に形成された吐出口19が開閉される。
【0011】
ノズル本体11の下端部には、吐出口19を区画形成する弁座31が設けられ、また吐出口19の近傍に気体を噴射するための気体供給管21(気体供給手段)が接続される。気体供給管21の基端部は圧力源(気体供給手段)22に接続され、圧力源22は制御装置18によって制御される。後述するように圧力源22は、容器Cに対する充填物の充填動作が完了して、弁体15により吐出口19が閉鎖されるとき、気体供給管21に所定の圧力の気体を供給する。なお、供給する気体は大気の他、充填物を汚染しない清浄化された無菌エアや、充填物の酸化を防ぐ窒素ガス等の不活性ガスを用いることができる。
【0012】
図2は充填バルブ10の先端部分を拡大して示す断面図である。弁座31はノズル本体11の内部の下端に形成され、下方に窄まる接頭円錐形状を有する。弁体15の外周面は、弁座31の円錐形状よりも若干鋭角の接頭円錐面であり、弁体15の円錐面は弁座31に液密を保って密着可能である。すなわち弁体15は弁座31に接離して吐出口19を開閉し、開放状態の吐出口19は断面が円形を有する流路である。なお、弁体15の下面は、従来の充填バルブにおける弁体のように凹陥させてはいない。
【0013】
弁座31の下縁部には筒状部32が連設される。筒状部32は鉛直下方に直線的に延びる管状部材であり、吐出口19から吐出される充填物は筒状部32を流下して、充填バルブ10の直下に位置させた容器C(図1)に供給される。筒状部32の外周は外筒部33によって覆われ、筒状部32の外壁面と外筒部33の内壁面により、横断面が環状である気体通路34が形成される。気体通路34の上方には、弁座31の外壁面を囲むようにして環状空間35が形成され、環状空間35の内壁面には気体供給管21の下端開口部が開口する。環状空間35の容積は気体通路34よりも大きい。環状空間35の下端部は気体通路34に近づくに従って容積が滑らかに減少するように構成されている。したがって気体供給管21を介して供給される気体は、環状空間35内にいったん保持され、圧縮されつつ気体通路34へ供給される。
【0014】
外筒部33の下端部33aは全周にわたって、筒状部32の下端面32aに対向するように内方へ突出しており、外筒部33の下端部33aと筒状部32の下端面32aによって、環状の噴射口36が形成される。すなわち噴射口36は筒状部32の下端開口の全周囲に沿う環状を有する。したがって、制御装置18の制御により、気体が気体供給管21を介して環状空間35に供給されると、この気体は圧縮されて気体通路34に供給され、噴射口36から筒状部32の下端面32aおよびその内側の下端開口面に沿って、全周囲から内方に均一の圧力で噴射される。
【0015】
図1〜4を参照して本実施形態の作用を説明する。
この例において、充填物はサラダ油等の粘性を有する液体Lである。図3に示すように弁体15が弁座31に着座しているとき、吐出口19は閉じており、充填物はノズル本体11内の流路14内に保持されている。一方、圧力源22は作動を停止しており、環状空間35内は大気圧に維持されている。
【0016】
図4に示すように、制御装置18の制御により弁体15が弁座31から離間して吐出口19が開放すると、流路14に貯留されていた液体Lが吐出口19から鉛直下方に流下し、容器内に充填される。容器内の充填物の供給量が所定値に達すると、弁体15が弁座31に着座して吐出口19が閉鎖される。これにより容器への充填物の供給動作は停止するが、弁体15が着座した後、筒状部32内に充填物が残留しており、充填物の粘度に応じて糸曳きが発生する。すなわち、比較的粘度が低い場合は、僅かに残る充填物が筒状部32の内壁面32bを伝わって不意に垂れ落ち、また比較的粘度が高い場合は、筒状部32内を満たすように充填物が残った状態で、その下面中央部から途切れることなく糸曳きが続くようになるが、本実施形態では次に述べるようにしてこれら糸曳きを防止している。
【0017】
具体的には、弁体15が弁座31に着座する動作に連動して、制御装置18の制御により圧力源22から所定圧の気体が供給され、噴射口36から気体が噴射される。この気体は気体通路34において鉛直下方に流動し、外筒部33の下端部33aに衝突して内方へ曲げられる。すなわち気体は噴射口36から水平方向へ噴射され、筒状部32から流下しようとする充填物に向けられる。筒状部32の内部に充填物がない状態では、図2に示すように、噴射口36から噴射された気体は筒状部32の中心付近において衝突し、一部の気体は垂直上方へ向かって弁体15の下面側へ流動した後、外側へ偏向し、筒状部32の内壁面32bに沿って下方へ流動する。
【0018】
実際の充填動作において、充填物の粘度が比較的低い場合は、弁体15が弁座31に着座して吐出口19が閉鎖されて充填物の流下が途切れると同時に、筒状部32の下端開口の全周囲から噴射された気体によって筒状部32内から充填物が掻き落とされる。すなわち、全周囲から噴射された気体は中央付近において衝突して上下に分かれ、上方へ向いた気流は筒状部32内の中心部を上昇し、弁体15の下面に衝突して内壁面32bに沿って下向きに流れる。これにより弁体15の下面や内壁面32bの表面から充填物が掻き落とされ、これら表面に充填物が付着して残留することはなく、液垂れが生じることもない。
【0019】
一方、充填物の粘度が比較的高い場合は、吐出口19の閉鎖に伴って生じる筒状部32内を満たす充填物の中央部分からの糸曳きは、吐出口19が閉鎖されると同時に全周囲から噴射された気体によって切断され、充填物を下方へ引出す作用が断ち切られるとともに、筒状部32内の充填物と弁体15の下面との間に生じる真空によって、充填物は落下せずに筒状部32内に保持される。
【0020】
充填物の粘度に関し、本実施形態では、概ね5000mPaまでを低粘度、5000mPaを超えると高粘度としている。低粘度の充填物としては、ウスターソース、サラダ油、シャンプー等がある。高粘度の充填物としては、マヨネーズ、水飴、コンディショナー等がある。
【0021】
噴射口36からの気体の噴射圧は、0.05〜0.2MPa程度でよく、制御装置18において、弁体15の閉鎖指令信号と連動し、それぞれの応答性を考慮して閉鎖指令と同時に、または直前もしくは直後に気体の噴射指令信号を出力するようにすればよい。気体の噴射のタイミングは充填物の特性等に応じて決定され、弁体15が弁座31に着座する直前でもよいし、着座と同時でもよく、あるいは着座の直後であってもよい。噴射時間は、充填物の粘度や筒状部32の径や長さを考慮して、0.1〜0.5秒の範囲で選択する。
【0022】
充填動作の終了時に噴射口36から気体を噴射しないと、充填物が低粘度である場合、弁体15の閉鎖後、糸曳きはいったん途切れるが、筒状部32の内部には少量の充填物が残留しており、閉鎖動作から遅れて糸曳きが再び生じるようになる。また充填物が高粘度である場合、筒状部32内に充填物が充満しており、中央部において糸曳きが発生する。しかし本実施形態では、上述したように、充填物の糸曳きが発生するおそれがある場合には、充填動作の終了時に噴射口36から気体を噴射して糸曳きの発生を防止している。したがって、充填動作ではないときに、充填物が充填バルブから不意に落下して容器等を汚染することを防止することができる。
【0023】
図5は本発明の他の実施形態を示している。この実施形態では充填バルブ40はロングノズルタイプであり、筒状部32と外筒部33は図1〜4に示す充填バルブ10よりも長く成形され、容器Cの口部の中に挿入された状態で充填を行うものである。このような充填バルブ40においても、気体通路34の噴射口36を筒状部32の下端部近傍に設け、弁体15の閉弁動作に連動して気体を筒状部32の下端面に沿って噴射することにより、充填物の糸曳きを防止することができる。
【0024】
なお上記各実施形態において噴射口36は、筒状部32の下端開口の全周囲にわたって連続的に延びる環状を有しているが、充填物の粘性等に応じて、複数の円弧状のスリットを環状に整列させる構成、あるいは多数の孔を環状に整列させる構成であってもよい。
【0025】
また、噴射口36から噴射される空気の方向は略水平方向であればよく、例えば10°くらい下方または上方を向いていてもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 充填バルブ
11 ノズル本体
15 弁体
19 吐出口
21 気体供給管(気体供給手段)
22 圧力源(気体供給手段)
31 弁座
32 筒状部
32a 下端面
33 外筒部
34 気体通路
36 噴射口
図1
図2
図3
図4
図5