特許第6623586号(P6623586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623586
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】整列治具
(51)【国際特許分類】
   B65G 11/18 20060101AFI20191216BHJP
   B65G 11/08 20060101ALI20191216BHJP
   B65G 1/08 20060101ALI20191216BHJP
   B65G 47/06 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   B65G11/18 A
   B65G11/08
   B65G1/08 Z
   B65G47/06
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-139093(P2015-139093)
(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公開番号】特開2017-19631(P2017-19631A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】池 明浩
(72)【発明者】
【氏名】笹原 廣喜
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−003715(JP,A)
【文献】 実開平02−099821(JP,U)
【文献】 実公昭47−017930(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/08
B65G 11/00−11/20
B65G 47/00−47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された縦長形状のワークの整列を行う整列治具であって、
前記ワークが自重により移動する斜面と、
前記斜面の傾斜方向に沿って設けられ、前記斜面に対して立設された互いに対向する一対の壁部とを備え、
前記一対の壁部が、
対向する当該壁部間の幅が前記傾斜方向下側に向かって狭くなっている導入部と、
前記導入部を通過した前記ワークが接触することで、該ワークの向きを一方向に揃える向き変更部と、
前記向き変更部を通過した前記ワークが向きを変えることなく一列で移動するように案内する案内部とを備えており、
前記斜面には、一方の前記一対の壁部側に前記ワークの移動速度を変更する速度変更部が形成されていることを特徴とする整列治具。
【請求項2】
前記向き変更部が、前記ワークが通過する領域へ凸状に張り出した凸形状部を複数有していることを特徴とする請求項1に記載の整列治具。
【請求項3】
前記凸形状部が、前記一対の壁部のそれぞれに、前記傾斜方向に対して交互に異なる位置となるように設けられていることを特徴とする請求項2に記載の整列治具。
【請求項4】
前記凸形状部の少なくとも1つが、前記ワークの接触により回転するローラであることを特徴とする請求項2または3に記載の整列治具。
【請求項5】
前記速度変更部は、前記ワークの移動速度を低下させるための凹凸であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の整列治具。
【請求項6】
前記ワークは、コイルバネであり、
前記ワークは、互いに絡み合っていない状態で投入されることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の整列治具。
【請求項7】
対向する前記壁部間の幅を調節するための幅調節部を備えていることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の整列治具。
【請求項8】
前記斜面の傾斜角度を調節するための角度調節部を備えていることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の整列治具。
【請求項9】
前記斜面よりも前記ワークの移動方向下流側に、前記斜面と接続し、前記ワークを整列した状態で保持しておくためのパレットを備えることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の整列治具。
【請求項10】
前記パレットは、前記ワークを整列した状態で保持する保持部を複数備え、
前記斜面と前記パレットとの接続位置を切り替えることで、前記斜面から移動してくる前記ワークを保持する前記保持部の切り替えを行うことを特徴とする請求項に記載の整列治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの整列を行う整列治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造ラインにおいて、ワークを整列した状態で次工程へと搬送するための装置が知られている。作業者は、整列した状態のワークを用いて、組み付け等の作業を行う。このとき、ワークが整列されていることで、ワークの取り出しが容易となり、作業効率が向上し、作業時間のロスを低減することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、鍛造部品を整列した状態で積み込む整列積み込み装置が開示されている。当該整列積み込み装置は、電磁石を備え、電磁石を励磁することにより鍛造部品の方向を矯正する。そして、方向が矯正された鍛造部品を挟持部により挟持しバスケットへと積み込むことで、鍛造部品を整列した状態で積み込むことができる。
【0004】
また、ワークとしてコイルバネを使用する場合に、ワーク同士が絡み合ってしまうという問題がある。この問題を解決するために、絡み合ったワークを投入すると、ワーク同士の絡みをほぐし、バラバラの状態で排出する絡みほぐし機という装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−345259号公報(1994年12月20日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の整列積み込み装置は、大がかりな装置であり、コストが高くなってしまうという問題がある。また。大がかりな装置であるため、設置場所が限定されてしまい、また、装置の持ち運びを行うこともできないという問題もある。
【0007】
また、絡みほぐし機は、整列積み込み装置と同様に、高価で大型な装置である。さらに、上記の絡みほぐし機は、絡みほぐし機から排出されるワークをそのまま容器に収納してしまうと、再度絡み合ってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、小型軽量かつ低コストである、ワークの整列治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る整列治具は、投入された縦長形状のワークの整列を行う整列治具であって、前記ワークが自重により移動する斜面と、前記斜面の傾斜方向に沿って設けられ、前記斜面に対して立設された互いに対向する一対の壁部とを備え、前記一対の壁部が、対向する当該壁部間の幅が前記傾斜方向下側に向かって狭くなっている導入部と、前記導入部を通過した前記ワークが接触することで、該ワークの向きを一方向に揃える向き変更部と、前記向き変更部を通過した前記ワークが向きを変えることなく一列で移動するように案内する案内部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、投入されたワークは、自重により移動しながら、向き変更部により向きが一方向に揃えられ、整列した状態で保持される。このように、本発明に係る整列治具は、斜面上をワークが自重により移動するため、ワークの搬送に電力を使用する設備を設ける必要が無く、小型軽量である。また、高価な部品を用いることなく製作することができ、低コストで整列治具を提供することが可能である。
【0011】
また、本発明に係る整列治具において、前記向き変更部が、前記ワークが通過する領域へ凸状に張り出した凸形状部を複数有していてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、ワークが複数の凸形状部に接触しながら斜面を移動するため、ワークの向きを徐々に一方向に揃えることができる。
【0013】
また、本発明に係る整列治具において、前記凸形状部が、前記一対の壁部のそれぞれに、前記傾斜方向に対して交互に異なる位置となるように設けられていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、ワークは、対向する一対の壁部のそれぞれに設けられた凸形状部に交互に接触しながら斜面を移動する。そのため、ワークの向きを効率よく揃えることができる。
【0015】
また、本発明に係る整列治具において、前記凸形状部の少なくとも1つが、前記ワークの接触により回転するローラであってもよい。
【0016】
上記の構成によれば、ローラの回転によってワークの向きが揃えられるため、ワークの向きが必要以上に変更されることが無く、ワークの向きを効率よく揃えることができる。
【0017】
また、本発明に係る整列治具において、前記斜面には、一方の前記一対の壁部側に前記ワークの移動速度を変更する速度変更部が形成されていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、一方の一対の壁部側の斜面に速度変更部が形成されていることで、2つのワークが一度に投入されたとしても、速度変更部を通過するワークと、速度変更部を通過しないワークとで、ワークの移動速度が異なる。そのため、斜面の途中でワークが詰まってしまうことを防止することができる。
【0019】
また、本発明に係る整列治具において、前記速度変更部は、前記ワークの移動速度を低下させるための凹凸であってもよい。
【0020】
上記の構成によれば、簡易な構成で速度変更部を実現することができる。
【0021】
また、本発明に係る整列治具において、前記ワークは、コイルバネであり、前記ワークは、互いに絡み合っていない状態で投入されてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、互いに絡まり合っていないコイルバネを、整列した状態で保持することができるため、作業者がワークを使用する際の時間のロスを低減することが可能となる。
【0023】
また、本発明に係る整列治具は、対向する前記壁部間の幅を調節するための幅調節部を備えていてもよい。
【0024】
さらに、本発明に係る整列治具は、前記斜面の傾斜角度を調節するための角度調節部を備えていてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、投入されるワークのサイズに応じて、壁部間の幅や、斜面の傾斜角度を変更することにより、整列治具を様々なサイズや形状のワークに対して使用することができる。
【0026】
また、本発明に係る整列治具は、前記斜面よりも前記ワークの移動方向下流側に、前記斜面と接続し、前記ワークを整列した状態で保持しておくためのパレットを備えていてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、パレットを備えていることで、斜面上を移動してきたワークを整列した状態で複数個保持しておくことができる。そのため、整列治具に投入されるワークの量に対して、作業者により使用されるワークの量が少なかったとしても、ワークはパレットにおいて整列した状態で保持される。そのため作業者は、必要とするときに、整列された状態のワークをパレットから取り出すことができ、作業時間のロスを低減することが可能となる。
【0028】
また、本発明に係る整列治具において、前記パレットは、前記ワークを整列した状態で保持する保持部を複数備え、前記斜面と前記パレットとの接続位置を切り替えることで、前記斜面から移動してくる前記ワークを保持する前記保持部の切り替えを行ってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、複数の保持部のうちの一方の保持部が、それ以上ワークを保持することができなくなったとしても、斜面とパレットとの接続位置を一方の保持部から他方の保持部へと切り替えることで、さらにワークを整列した状態で保持することができる。そのため、より多くのワークをパレットで保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、小型軽量かつ低コストであるワークの整列治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る整列治具を示す斜視図である。
図2図1に示す整列治具の上面図である。
図3図1に示す整列治具が備える斜面を示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。
図4】(a)は、図1に示す整列治具が備える第1脚部取付部材を示す平面図であり、(b)は、図1に示す整列治具が備える第2脚部取付部材を示す平面図である。
図5図1に示す整列治具が備える第1脚部を示す平面図であり、(a)は、左右方向から見た平面図であり、(b)は、(a)を矢印A方向から見た平面図である。
図6図1に示す整列治具が備える第2脚部を示す平面図であり、(a)は、左右方向から見た平面図であり、(b)は、(a)を矢印B方向から見た平面図である。
図7図1に示す整列治具が備える左側壁部を示す平面図であり、(a)は上面図であり、(b)は、左方向から見た側面図である。
図8図1に示す整列治具が備える右側壁部を示す平面図であり、(a)は、右方向から見た側面図であり、(b)は、上面図である。
図9図1に示す整列治具が備えるパレットを示す上面図である。
図10図1に示す整列治具のワーク投入時の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。
【0033】
(整列治具100の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る整列治具を示す斜視図である。また、図2は、図1に示す整列治具の上面図である。
【0034】
本実施形態に係る整列治具100は、投入口に投入された縦長形状のワークを、整列した状態で保持しておくことで、作業者がワークを容易に取り出すことができるようにするためのものである。ワークとしては、縦長形状であればよく、例えば、コイルバネ、ピン、リベット、皿ネジ等が挙げられる。
【0035】
本実施形態の整列治具100は、斜面1と、第1脚部10と、第1脚部取付部材20と、第2脚部30と、第2脚部取付部材40と、壁部50と、パレット80とを備えている。また、斜面1と壁部50とにより投入口90(図10参照)が形成されている。
【0036】
図3は、斜面1を示す図であり、(a)では上面図であり、(b)は側面図である。斜面1は、その上を自重によりワークが移動する部材である。以降説明の便宜上、斜面1上をワークが移動するときの、ワークの移動方向上流側を単に上流側と称し、同様に、ワークの移動方向下流側を下流側と称する。すなわち、斜面1の傾斜方向上側が上流側であり、斜面1の傾斜方向下側が下流側である。また、下流側から上流側を見たときに、右側となる方向を右方向とし、左側となる方向を左方向とする。さらに、整列治具100の高さ方向上側を上方とし、高さ方向下側を下方とする。
【0037】
図3に示すように、斜面1は、第1脚部取付穴2、第2脚部取付穴3、左側基部取付穴4、右側基部取付穴5、左側ローラ取付穴(幅調節部)6、右側ローラ取付穴(幅調節部)7、および凹凸部(速度変更部)8を備える。
【0038】
第1脚部取付穴2は、左右の側面にそれぞれ1対、計4個設けられ、第1脚部取付部材20と斜面1とを固定するためのネジ穴である。同様に、第2脚部取付穴3も、左右の側面にそれぞれ1対、計4個設けられ、第2脚部取付部材40と斜面1とを固定するためのネジ穴である。第1脚部取付穴2は、第2脚部取付穴3よりも上流側に設けられている。
【0039】
左側基部取付穴4は、斜面1の上面左側に直線状に設けられた3つのネジ穴である。右側基部取付穴5も同様に、斜面1の上面右側に直線状に設けられた3つのネジ穴である。
【0040】
左側ローラ取付穴6は、上流側から1番目の左側基部取付穴4と、上流側から2番目の左側基部取付穴4との間に設けられた、3つの長穴である。左側ローラ取付穴6は、長手方向が左右方向となるように設けられている。
【0041】
右側ローラ取付穴7は、上流側から1番目の右側基部取付穴5よりも上流側に設けられた長穴であり、長手方向が左右方向となるように設けられている。
【0042】
凹凸部8は、右側ローラ取付穴7よりも上流側に設けられており、斜面1において、右側に設けられている。凹凸部8は、斜面1の上面に所定間隔で設けられた左右方向に伸びる切れ込みである。
【0043】
図4は、第1脚部取付部材20と、第2脚部取付部材40とを示す平面図であり、(a)は、第1脚部取付部材20を、(b)は、第2脚部取付部材40を示す図である。
【0044】
第1脚部取付部材20は、斜面1の側面にそれぞれ取り付けられる。第1脚部取付部材20は、左右方向から平面視した場合の形状が台形形状の板部材である。第1脚部取付部材20には、当該台形形状の面内に、左右方向へ伸びるネジ穴である第1脚部固定穴22および2つの穴部21が形成されている。穴部21は、第1脚部取付部材20において、斜面1の第1脚部取付穴2に対応する位置に形成されている。すなわち、穴部21は、斜面1の傾斜方向に沿うように2個並んで形成されている。穴部21と第1脚部取付穴2とは、ネジにより固定される。第1脚部固定穴22は、穴部21よりも下方に形成されたネジ穴である。
【0045】
第2脚部取付部材40は、左右方向から平面視した場合の形状が五角形状の板部材である。第2脚部取付部材40には、第1脚部取付部材20と同様に、当該五角形面内に、左右方向に伸びるネジ穴である第2脚部固定穴42および2つの穴部41が形成されている。穴部41は、第2脚部取付部材40において、斜面1の第2脚部取付穴3に対応する位置に形成されている。穴部41と第2脚部取付穴3とは、ネジにより固定される。第2脚部固定穴42は、穴部41よりも下方に形成されたネジ穴である。
【0046】
図5は、第1脚部10を示す平面図であり、(a)は第1脚部10を左右方向から見た正面図であり、(b)は、(a)を矢印A方向から見た側面図である。第1脚部10は、側面の形状が略L字型の板部材であり、上下方向が、略L字型の長手方向である。第1脚部10は、第2脚部30とともに、整列治具100を支持する。第1脚部10には、左右方向に伸びる貫通孔である長穴(角度調節部)11が形成されており、長穴11の長手方向は上下方向である。第1脚部10の下部には、左右方向の板厚が他の部分よりも厚い支持部12が形成されており、側面視した場合に当該支持部12が略L字形の短手方向となっている。
【0047】
図6は、第2脚部30を示す平面図であり、(a)は第2脚部30を左右方向から見た正面図であり、(b)は、(a)を矢印B方向から見た側面図である。第2脚部30は、第1脚部10と同様に、側面の形状が略L字型の板部材であり、上下方向が、略L字型の長手方向である。第2脚部30は、第1脚部10よりも下流側の斜面1に第2脚部取付部材40を介して取り付けられる。そのため、第2脚部30は、第1脚部10よりも上下方向の長さが短くなっている。第2脚部30には、左右方向に伸びる貫通孔である長穴(角度調節部)31が形成されており、長穴31の長手方向は上下方向である。長穴31と、第2脚部取付部材40の第2脚部固定穴42とはネジにより固定される。第2脚部30の下部には、左右方向の板厚が他の部分よりも厚い支持部32が形成されており、側面視した場合に当該支持部32が略L字形の短手方向となっている。
【0048】
ここで、第1脚部10は、第1脚部取付部材20を介して、第2脚部30は、第2脚部取付部材40を介して斜面1に固定される。そのため、第1脚部10の長穴11と、第1脚部取付部材20の第1脚部固定穴22との固定位置、および第2脚部30の長穴31と、第2脚部取付部材40の第2脚部固定穴42との固定位置を合わせて調節することにより、斜面1の傾斜角度を調節することができる。
【0049】
壁部50は、斜面1の傾斜方向に沿って設けられ、斜面1上を移動するワークの移動を案内するとともに、投入されたワークの向きを一方向に揃える部材である。なお、「ワークの向き」とは、縦長形状のワークにおける長手方向を意味する。壁部50は、斜面1に対して立設された一対の壁部である左側壁部(壁部)51と、右側壁部(壁部)52とを備える。左側壁部51と右側壁部52とは、互いに対向している。
【0050】
図7は、左側壁部51を示す平面図であり、(a)は上面図であり、(b)は、左方向から見た側面図である。左側壁部51は、左側基部53、第2ローラ56、第3ローラ57、および第4ローラ58を備える。
【0051】
第2ローラ56、第3ローラ57および第4ローラ58は、上流側から下流側に向かってこの順で設けられており、それぞれの軸56a〜58aを中心とした回転運動が可能である。また、軸56a〜58aは、斜面1の左側ローラ取付穴6に固定される。ここで、左側ローラ取付穴6は長穴であるため、第2ローラ56、第3ローラ57および第4ローラ58の位置を、投入されるワークのサイズに応じて調節することができる。なお、第2ローラ56と、第3ローラ57とは、等しい径を有し、第4ローラ58は、第2ローラ56および第3ローラ57よりも小さい径を有する。
【0052】
左側基部53は、3つの長穴(幅調節部)59と、導入部60と、案内部61と、第2ローラ保持部62と、第3ローラ保持部63と、第4ローラ保持部64とを有する。左側基部53は、左側側面が、ワークの移動方向に平行となるように設けられており、下流側から上流側に向かって左右方向の幅が小さくなっている。
【0053】
3つの長穴59は、斜面1の左側基部取付穴4に対応する位置に設けられている。長穴59と、左側基部取付穴4とをネジにより固定することで、斜面1と左側基部53とが固定される。また、上述した第2ローラ56、第3ローラ57および第4ローラ58と同様に、左側基部53も、長穴59と左側基部取付穴4との固定位置を変えることで、斜面1に固定される位置を投入されるワークのサイズに応じて調節することができる。
【0054】
導入部60は、左側基部53の右側側面の上流側に形成された壁面であり、下流側に向かうにつれて、右側壁部52側へ迫り出すように設けられた傾斜面である。
【0055】
案内部61は、左側基部53の右側側面の下流側に形成された壁面であり、ワークの移動方向に沿って平行に設けられている。
【0056】
第2ローラ保持部62、第3ローラ保持部63、および第4ローラ保持部64は、軸方向が斜面1に対して垂直に形成された略半円柱状の溝である。第2ローラ保持部62、第3ローラ保持部63、および第4ローラ保持部64は、導入部60と案内部61との間の左側基部53の右側側面に設けられており、上流から下流に向かってこの順で設けられている。第2ローラ保持部62は、内側に第2ローラ56の軸56aが配置される。そのため、第2ローラ保持部62は、第2ローラ56の回転を妨げないような大きさで設けられている。第3ローラ保持部63および第4ローラ保持部64も第2ローラ保持部62と同様に、それぞれ、第3ローラ57および第4ローラ58の回転を妨げない大きさで設けられている。
【0057】
図8は、右側壁部52を示す平面図であり、(a)は、右方向から見た側面図であり、(b)は、上面図である。右側壁部52は、右側基部54および第1ローラ55を備える。
【0058】
第1ローラ55は、対向する左側壁部51の第2ローラ56よりも上流側に設けられ、軸55aを中心とした回転運動が可能である。第1ローラ55は、第2ローラ56および第3ローラ57と等しい径を有する。第1ローラ55は、軸55aが、斜面1の右側ローラ取付穴7に固定される。右側ローラ取付穴7は長穴であるため、第1ローラ55の位置を、投入されるワークのサイズに応じて調節することができる。
【0059】
右側基部54は、3つの長穴(幅調節部)65と、導入部66と、案内部67と、第1ローラ保持部71と、凸部68とを有する。右側基部54は、右側側面が、ワークの移動方向に平行となるように設けられており、下流側から上流側に向かって左右方向の幅が小さくなっている。
【0060】
3つの長穴65は、斜面1の右側基部取付穴5に対応する位置に設けられている。長穴65と、右側基部取付穴5とをネジにより固定することで、斜面1と右側基部54とが固定される。また、上述した第1ローラ55と同様に、右側基部54も、長穴65と右側基部取付穴5との固定位置を変えることで、斜面1に固定される位置を投入されるワークのサイズに応じて調節することができる。
【0061】
導入部66は、右側基部54の左側側面の上流側に形成された壁面であり、下流側に向かうにつれて、左側壁部51側へ迫り出すように設けられた傾斜面である。
【0062】
案内部67は、右側基部54の左側側面の下流側に形成された壁面であり、ワークの移動方向に沿って平行に設けられている。
【0063】
第1ローラ保持部71は、軸方向が斜面1に対して垂直に形成された略半円柱状の溝である。第1ローラ保持部71は、右側基部54の導入部66と案内部67との間の左側側面に設けられている。第1ローラ保持部71は、内側に第1ローラ55の軸55aが配置される。そのため、第1ローラ保持部71は、第1ローラ55の回転を妨げないような大きさで設けられている。
【0064】
凸部68は、右側基部54の第1ローラ保持部71と案内部67との間の左側側面に設けられている。凸部68は、対向する左側壁部51の方向に山なりに突出した、第1凸部69および第2凸部70を備える。第1凸部69は、第2凸部70よりも上流側に設けられ、第2凸部70よりも突出量が多くなるように設けられている。
【0065】
図9は、パレット80を示す上面図である。パレット80は、上面視した際の形状が略正方形状の板部材であり、壁部50に案内されて斜面1上を移動してきた、向きが一方向に揃った状態のワークを整列した状態で保持する部材である。パレット80には、第1保持部(保持部)81、第2保持部(保持部)82、および受け部83が形成されている。第1保持部81、第2保持部82、および受け部83は、何れもパレット80に形成された溝である。
【0066】
第1保持部81は、上面視した際の形状が逆L字形状である。第2保持部82も、上面視した際の形状が逆L字形状である。第2保持部82は、第1保持部81よりも外側、すなわち右方向下流側に形成されており、そのため第2保持部は、第1保持部よりも一回り大きくなっている。
【0067】
第1保持部81は、逆L字形状の長手方向に伸びる縦溝81cと、逆L字形状の短手方向に伸びる横溝81dと、縦溝81cの長手方向端部に設けられ、パレット80の上流側側面に開口する接続口81aと、横溝81dの短手方向端部に設けられた取り出し口81bとを備える。第2保持部82も第1保持部81と同様に、逆L字形状の長手方向に伸びる縦溝82cと、逆L字形状の短手方向に伸びる横溝82dと、縦溝82cの長手方向端部に設けられ、パレット80の上流側側面に開口する接続口82aと、横溝82dの短手方向端部に設けられた取り出し口82bとを備える。なお、取り出し口81b、82bは、受け部83と接続している。
【0068】
接続口81a、82aの幅は、縦長形状のワークの幅に対応している。これにより、壁部50に案内されて斜面1上を移動してきた、向きが一方向に揃った状態のワークは、接続口81a、82aに案内され、第1保持部81または第2保持部82へと移動し、第1保持部81の縦溝81c、または第2保持部82の縦溝82cに整列した状態で保持される。そのため、作業者は、第1保持部81および第2保持部82からワークの取り出しを行う際に、整列した状態のワークを1つずつ確実に取り出すことが可能である。
【0069】
受け部83は、作業者がワークを第1保持部または第2保持部から取り出す際に、ワークの取り出しを容易にするために設けられた溝である。
【0070】
なお、図2に示す状態では、第1保持部81の接続口81aが斜面1に接続しているが、パレット80を移動させることにより、斜面1とパレット80との接続位置を接続口81aと接続口82aとの間で切り替えることができる。これにより、斜面1を移動してきたワークの保持する場所を、第1保持部81と第2保持部82との間で切り替えることができる。
【0071】
また、第1保持部81の横溝81dは、取り出し口81bから縦溝81cの方向に向かって溝の深さが深くなるような傾斜を有している。さらに、第2保持部82の横溝82dは、取り出し口82bから縦溝82cの方向に向かって溝の深さが深くなるような傾斜を有している。これにより、第1保持部81の縦溝81cおよび第2保持部82の縦溝82cに保持されているワークが、受け部83へと移動してしまうのを防ぎ、ワークは第1保持部81および第2保持部82で整列した状態で保持される。
【0072】
(整列治具100の動作)
次に、整列治具100の動作について説明する。
【0073】
図10は、ワークW投入時の整列治具の動作を示す図である。以下では説明の便宜上、縦長形状のワークの一例としてコイルバネを例に取り説明する。
【0074】
ワークWは、投入口90から投入され、壁部50に案内されることで向きが一方向に整えられながら自重により斜面1上を移動し、接続口91から向きが一方向へ揃った状態でパレット80へと運ばれる。図10に示すように、左側壁部51と右側壁部52との間には、間隙が設けられている。当該間隙の幅は、ワークWの向きを一方向に揃えるために、左側壁部51の導入部60と右側壁部52の導入部66とが対向する領域において斜面1の傾斜方向下側に向かって狭くなっている。
【0075】
整列治具100の投入口90には、例えば、絡まった状態のバネをほぐす機械である絡みほぐし機から排出される、絡み合っていない(バラバラな)状態のワークWが投入される。
【0076】
投入口90へと投入されたワークWは、まず左側壁部51の導入部60または右側壁部52の導入部66に案内される。
【0077】
このとき、導入部66側の斜面1には、凹凸部8が形成されている。凹凸部8上を移動するワークWは、凹凸部8の凹凸により移動速度が低下する。そのため、投入口90から2つのワークWが同時に投入されたとしても、導入部60に案内されるワークWと、導入部66に案内されるワークWとでは、斜面1を移動する移動速度が異なる。これにより、2つのワークW同時に投入口90から投入されたとしても、2つのワークWが同じ速度で移動することで、左側壁部51と右側壁部52との間の間隙でワークWが詰まってしまうといったことや、斜面1を移動中に2つのワークWが絡まり合ってしまうことを防止することができる。
【0078】
投入口90から投入されるワークWは、向きがバラバラの状態である。向きがバラバラの状態で投入されたワークWは、自重により下流側へと移動しながら、向き変更部としての第1ローラ55、第2ローラ56、第3ローラ57、第4ローラ58および凸部68と接触することで、ワークWの長手方向が斜面1の傾斜方向と平行になるように徐々に向きが整えられる(図中矢印参照)。すなわち、ワークWは、第1ローラ55、第2ローラ56、第3ローラ57、第4ローラ58および凸部68と接触することで、向きが斜面1の下流方向となるように段階的に転回する。そのため、別々に投入されたワークWであっても、同じ方向を向いた状態で、左側基部53の案内部61と、右側基部54の案内部67との間の間隙へと案内される。
【0079】
このとき、第1ローラ55、第2ローラ56、第3ローラ57、第4ローラ58は、ワークWの接触により回転し、ワークWの向きを変更する。ローラを用いる事で、ワークWがローラに接触した際に、ワークWが必要以上に跳ね返ることが無く向きが変更される。また、第1ローラ55、第2ローラ56、第3ローラ57、第4ローラ58および凸部68は、ワークWが通過する領域へ凸状に張り出した凸形状部である。
【0080】
なお、図10に示すように、向き変更部としての第1ローラ55、第2ローラ56、第3ローラ57、第4ローラ58および凸部68は、左側壁部51および右側壁部52のそれぞれに、斜面1の傾斜方向に対して交互に異なる位置に設けられている。すなわち、第1ローラ55、第2ローラ56、第3ローラ57、第4ローラ58および凸部68は、左側壁部51と右側壁部52とが対向する方向において、互いに対向しないように設けられている。
【0081】
また、投入口90から投入されたワークWは、第1ローラ55、第2ローラ56、第3ローラ57、第4ローラ58および凸部68の全てに接触する必要は無く、ワークWの長手方向が、斜面1の傾斜方向となるように向きが整えられればよい。そのため、投入されたワークWが、第1ローラ55、第2ローラ56、第3ローラ57、第4ローラ58および凸部68の何れにも接触しない場合もある。
【0082】
向きが整えられたワークWは、左側基部53の案内部61と、右側基部54の案内部67との間の間隙である整列部92を、案内部61および案内部67に案内され一列で移動する。当該間隙の幅は、ワークWの向きが変わらないように移動するのを案内することができるように、ワークWの幅よりもわずかに大きな幅となっている。整列部92は、パレット80でワークをこれ以上保持できない場合に、ワークを整列した状態で保持することができる。
【0083】
整列部92を通過したワークWは、接続口91から、斜面1と接続しているパレット80へと移動する。図10に示す状態では、接続口91と接続口81aとが接続しているため、斜面1から移動してきたワークWは、第1保持部81に整列した状態で保持される。作業者は、第1保持部81の縦溝81cおよび第2保持部82の縦溝82cから、整列した状態で保持されているワークWを、横溝81dおよび横溝82d上を左方向にスライドさせながら取り出し、使用する。
【0084】
(まとめ)
このように本実施形態に係る整列治具100は、ワークが自重により斜面1上を移動するため、ワークの搬送に電力を使用する設備を設ける必要が無い。また、整列治具100は、高価な部品を用いること無く製作することができる。そのため、整列治具100を低コストで提供することができる。また、整列治具100は、電力を消費する大がかりな装置では無く、小型軽量である。そのため、整列治具100は、持ち運びが容易であり、また設置場所の制約が少ない。
【0085】
なお、本実施形態では、凹凸部8が、斜面1の右側壁部52側に形成されている例を示したが、凹凸部8は、斜面1の左側壁部51側に形成されていてもよい。また、斜面1に形成されるのは凹凸に限られるものでは無い。すなわち、投入口90から投入されたワークWの移動速度が左側壁部51側と右側壁部52側とで異なればよい。例えば、斜面1上の一方の壁部側に、摩擦係数の低い(あるいは高い)材質でコーティングを行い、左側壁部51側と右側壁部52側との摩擦係数を変化させることで、左側壁部51側と右側壁部52側とを移動するワークWの移動速度を変化させてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、整列治具100が、投入された縦長形状のワークを、長手方向に一直線上となるように整列し、保持する構成を示したが、これに限られるものでは無い。例えば、整列治具100は、縦長形状のワークのそれぞれが、互いに長手方向が平行となるように、横一列に整列し、保持する構成であってもよい。すなわち、整列治具100は、投入されたワークを向きが一方向に揃った状態に整列し保持できればよい。
【0087】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1 斜面
6 左側ローラ取付穴(幅調節部)
7 右側ローラ取付穴(幅調節部)
8 凹凸部(速度変更部)
11、31 長穴(角度調節部)
50 壁部(一対の壁部)
51 左側壁部
52 右側壁部
55〜58 第1〜第4ローラ(向き変更部、凸形状部)
59、65 長穴(幅調節部)
61、67 案内部
68 凸部(向き変更部、凸形状部)
80 パレット
81 第1保持部(保持部)
82 第2保持部(保持部)
100 整列治具
W ワーク
図1
図2
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図5
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