(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アナモフィックアフォーカル光学系は、前記回転ホイールの径方向と直交する方向と交差する方向の屈折力が、前記径方向と直交する方向の屈折力よりも大きい、請求項2に記載の光源装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1において、照明装置の高輝度化を図るためには、励起光の強度を高める必要がある。しかしながら、高い強度の励起光を蛍光体上の小さい領域に集光させると、励起光の照射領域における光密度が高くなり、蛍光体の温度が上昇する。一般に、蛍光体は、温度上昇に伴って変換効率が低下する特性を有する。そのため、単に高い強度の励起光を照射しただけでは、照明装置を高輝度化することは難しい。逆に、励起光を蛍光体の広い領域に照射すれば、励起光の光密度が下がり、変換効率を高めることができる。ところが、励起光の照射領域を広げる程、後段の光学系でけられる蛍光の光量が多くなり、蛍光の利用効率が低下する。
以上、蛍光体を例に挙げて説明したが、上記の問題は蛍光体以外の波長変換素子にも共通の問題である。
【0006】
本発明の一つの態様は、上記の課題を解決するためになされたものであって、励起光の変換効率の低下および波長変換された光の利用効率の低下をともに抑制できる光源装置を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一つの態様は、上記の光源装置を備え、高効率のプロジェクターを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様の光源装置は、励起光を射出する発光素子と、前記発光素子から射出された前記励起光が入射する偏光分離素子と、前記励起光のうち前記偏光分離素子を通過した第1の偏光成分が入射するピックアップ光学系と、前記ピックアップ光学系を透過した前記第1の偏光成分が入射する波長変換素子と、前記波長変換素子の前記ピックアップ光学系とは反対側に設けられた反射部と、前記偏光分離素子と前記ピックアップ光学系との間の光路に設けられ、前記偏光分離素子を通過した前記第1の偏光成分と前記波長変換素子から射出された光とが入射し、前記ピックアップ光学系に入射する前記第1の偏光成分の光束幅を、前記偏光分離素子を通過した前記第1の偏光成分の光束幅よりも狭くする
とともに、前記反射部によって前記波長変換素子から前記偏光分離素子側に向けて射出される光を前記第1の偏光成分とは逆向きに透過させるアナモフィックアフォーカル光学系と、を備える。
【0008】
本発明の一つの態様の光源装置は、偏光分離素子とピックアップ光学系との間の光路上に前記アナモフィックアフォーカル光学系を備えている。これにより、偏光分離素子からの射出光の光軸に垂直な面内におけるアナモフィックアフォーカル光学系の屈折力が大きい方向において、アナモフィックアフォーカル光学系とピックアップ光学系とを含む光学系の焦点距離は、ピックアップ光学系単独の焦点距離に比べて長くなる。このため、本発明の一つの態様の光源装置における波長変換素子上の励起光の照射領域は、アナモフィックアフォーカル光学系を備えていない場合の励起光の照射領域に比べて拡大される。これにより、励起光の光密度を下げ、変換効率の低下を抑制することができる。
【0009】
例えば蛍光体層を波長変換素子として用い、蛍光の射出領域を蛍光光源と考えることにする。上述したように、蛍光光源の形状は、アナモフィックアフォーカル光学系を備えていない場合の励起光の照射領域に比べて変形されている。ところが、波長変換素子から射出された蛍光がアナモフィックアフォーカル光学系を励起光の通過方向と逆方向に通過すると、たとえば、光源像は励起光が拡大された方向と同じ方向に同じ倍率で縮小される。そのため、光源像は、アナモフィックアフォーカル光学系を備えていない光源装置における光源像と同様になる。これにより、アナモフィックアフォーカル光学系の後段の光学系にけられる蛍光の量が減り、蛍光の利用効率の低下を抑制することができる。このように、本発明の一つの態様の光源装置によれば、励起光の変換効率の低下、蛍光の利用効率の低下をともに抑制することができる。
【0010】
本発明の一つの態様の光源装置は、前記波長変換素子が設けられた回転ホイールを備えていてもよい。
この構成によれば、波長変換素子の特定の箇所に励起光が連続的に照射されることがなくなる。また、回転ホイールの回転により波長変換素子が冷却されやすくなる。そのため、蛍光体の温度上昇が抑制される。これにより、励起光の変換効率を高めるとともに、蛍光体の寿命を延ばすことができる。
【0011】
本発明の一つの態様の光源装置において、前記アナモフィックアフォーカル光学系は、前記回転ホイールの径方向と直交する方向と交差する方向の屈折力が、前記径方向と直交する方向の屈折力よりも大きいことが望ましい。
この構成によれば、波長変換素子上の励起光の照射領域は、回転ホイールの径方向と直交する方向と交差する方向に拡大される。これにより、励起光の照射領域が回転ホイールの径方向と直交する方向、すなわち、回転ホイールの周方向に拡大される場合に比べて、波長変換素子の単位面積に単位時間あたり照射される励起光の光量をより下げることができ、蛍光体の温度上昇がさらに抑制される。
【0012】
本発明の一つの態様の光源装置において、前記アナモフィックアフォーカル光学系は、一対のシリンドリカルレンズを備えていてもよい。
この構成によれば、偏光分離素子からの射出光の光軸に垂直な面内において、1方向にのみ屈折力を持つアナモフィックアフォーカル光学系を構成することができる。
【0013】
本発明の一つの態様の光源装置において、前記一対のシリンドリカルレンズは、凸レンズと凹レンズの対、もしくは凸レンズと凸レンズの対からなる構成であってもよい。
この構成によれば、ピックアップ光学系に入射する第1の偏光成分の光束幅を、偏光分離素子を通過した第1の偏光成分の光束幅よりも狭くするアナモフィックアフォーカル光学系を簡易な構成で実現することができる。
【0014】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の光源装置と、前記光源装置から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学系と、を備える。
本発明の一つの態様のプロジェクターは本発明の一つの態様の光源装置を備えているため、高効率のプロジェクターを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図5を用いて説明する。
第1実施形態のプロジェクターは、本発明の一実施形態の光源装置と、3つの光変調装置と、を備えた液晶プロジェクターの例である。
以下、図面を用いて具体的に説明するが、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0017】
[プロジェクターの全体構成]
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター1は、スクリーンSCR上にカラー画像を表示する投射型画像表示装置である。プロジェクター1は、照明装置2と、色分離光学系3と、赤色光用光変調装置4Rと、緑色光用光変調装置4Gと、青色光用光変調装置4Bと、合成光学系5と、投射光学系6と、を備える。
【0018】
照明装置2は、光源装置20と、均一照明光学系40と、を備える。照明装置2は、色分離光学系3に向けて照明光WLを射出する。光源装置20の構成については、後で詳しく説明する。
【0019】
均一照明光学系40は、ホモジナイザー光学系31と、偏光変換素子32と、重畳光学系33と、を備える。ホモジナイザー光学系31は、第1のマルチレンズアレイ31aと、第2のマルチレンズアレイ31bと、から構成されている。均一照明光学系40は、光源装置20から射出された照明光WLの強度分布を被照明領域である赤色光用光変調装置4R、緑色光用光変調装置4G、および青色光用光変調装置4Bにおいて均一化する。均一照明光学系40から射出された照明光WLは色分離光学系3に入射する。
【0020】
色分離光学系3は、照明装置2から射出された白色の照明光WLを赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとに分離する。色分離光学系3は、第1のダイクロイックミラー7aと、第2のダイクロイックミラー7bと、第1の反射ミラー8aと、第2の反射ミラー8bと、第3の反射ミラー8cと、第1のリレーレンズ9aと、第2のリレーレンズ9bと、を備えている。
【0021】
第1のダイクロイックミラー7aは、照明装置2から射出された照明光WLを赤色光LRと、緑色光LGと青色光LBとを含む光、に分離する機能を有する。第1のダイクロイックミラー7aは、赤色光LRを透過し、緑色光LGと青色光LBとを含む光を反射する。第2のダイクロイックミラー7bは、第1のダイクロイックミラー7aで反射した光を緑色光LGと青色光LBとに分離する機能を有する。第2のダイクロイックミラー7bは、緑色光LGを反射し、青色光LBを透過する。
【0022】
第1の反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置されている。第1の反射ミラー8aは、第1のダイクロイックミラー7aを透過した赤色光LRを赤色光用光変調装置4Rに向けて反射する。第2の反射ミラー8bと第3の反射ミラー8cとは、青色光LBの光路中に配置されている。第2の反射ミラー8bと第3の反射ミラー8cとは、第2のダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBを青色光用光変調装置4Bに向けて反射する。緑色光LGは、第2のダイクロイックミラー7bで反射し、緑色光用光変調装置4Gに向けて進む。
【0023】
第1のリレーレンズ9aと第2のリレーレンズ9bとは、青色光LBの光路中における第2のダイクロイックミラー7bの光射出側に配置されている。第1のリレーレンズ9aと第2のリレーレンズ9bとは、青色光LBの光路長が赤色光LRの光路長および緑色光LGの光路長よりも長いことに起因する青色光LBの光損失を補償する。
【0024】
赤色光用光変調装置4Rは、赤色光LRを画像情報に応じて変調し、赤色光LRに対応した画像光を形成する。緑色光用光変調装置4Gは、緑色光LGを画像情報に応じて変調し、緑色光LGに対応した画像光を形成する。青色光用光変調装置4Bは、青色光LBを画像情報に応じて変調し、青色光LBに対応した画像光を形成する。赤色光用光変調装置4R、緑色光用光変調装置4G、および青色光用光変調装置4Bには、例えば透過型の液晶パネルが用いられる。また、液晶パネルの入射側および射出側には、図示しない一対の偏光板が配置されている。一対の偏光板は、特定の方向の直線偏光光を透過させる。
【0025】
赤色光用光変調装置4Rの入射側には、フィールドレンズ10Rが配置されている。緑色光用光変調装置4Gの入射側には、フィールドレンズ10Gが配置されている。青色光用光変調装置4Bの入射側には、フィールドレンズ10Bが配置されている。フィールドレンズ10Rは、赤色光用光変調装置4Rに入射する赤色光LRを平行化する。フィールドレンズ10Gは、緑色光用光変調装置4Gに入射する緑色光LGを平行化する。フィールドレンズ10Bは、青色光用光変調装置4Bに入射する青色光LBを平行化する。
【0026】
合成光学系5は、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBのそれぞれに対応した画像光を合成し、合成された画像光を投射光学系6に向けて射出する。合成光学系5には、例えばクロスダイクロイックプリズムが用いられる。
【0027】
投射光学系6は、複数の投射レンズを含む投射レンズ群から構成されている。投射光学系6は、合成光学系5により合成された画像光をスクリーンSCRに向けて拡大投射する。これにより、スクリーンSCR上には、拡大されたカラー画像が表示される。
【0028】
[光源装置]
以下、光源装置20について説明する。
図2および
図3に示すように、光源装置20は、光源ユニット21と、アフォーカル光学系22と、ホモジナイザー光学系23と、第1の位相差板24と、偏光分離素子25と、アナモフィックアフォーカル光学系26と、第1のピックアップ光学系27と、蛍光体層28を備えた蛍光体ホイール29と、第2の位相差板35と、第2のピックアップ光学系36と、回転拡散素子37と、を備える。
本実施形態の蛍光体層28は、特許請求の範囲の波長変換素子に対応する。
【0029】
光源ユニット21、アフォーカル光学系22、ホモジナイザー光学系23、第1の位相差板24、偏光分離素子25、第2の位相差板35、および第2のピックアップ光学系36は、光軸AX0上に配置されている。アナモフィックアフォーカル光学系26、および第1のピックアップ光学系27は、光軸AX0と直交する光軸AX1上に配置されている。
【0030】
光源ユニット21は、固体光源としての複数の半導体レーザー21aを備える。複数の半導体レーザー21aは、例えばアレイ状に配列されている。複数の半導体レーザー21aの各々は、青色光BLを射出する。青色光BLは、所定の振動方向を有する直線偏光である。光源ユニット21は、複数の青色光BLからなる光束K1を射出する。半導体レーザー21aの光射出側には、光を平行光束に変換するコリメーターレンズ(図示せず)が設けられている。
本実施形態の半導体レーザー21aは、特許請求の範囲の発光素子に対応する。
【0031】
光源ユニット21から射出された光束K1は、アフォーカル光学系22に入射する。アフォーカル光学系22は、入射した光束K1の光束幅を縮小する縮小系のアフォーカル光学系である。光束幅を縮小する必要がない場合には、アフォーカル光学系22は設けられていなくてもよい。アフォーカル光学系22は、例えば凸レンズ22a,凹レンズ22bから構成される。
【0032】
ホモジナイザー光学系23は、アフォーカル光学系22から射出された光束K1の強度分布を、被照明領域である蛍光体層28上および拡散反射板46上において均一化する。ホモジナイザー光学系23は、例えば第1のマルチレンズアレイ23a,第2のマルチレンズアレイ23bから構成される。第1のマルチレンズアレイ23aは、等ピッチで配列された複数のレンズ23amを有する。また、第2のマルチレンズアレイ23bは、第1のマルチレンズアレイのレンズ23amと同じピッチで配列された複数のレンズ23bmを有する。
【0033】
第1の位相差板24は、例えば回転可能とされた1/2波長板で構成される。半導体レーザー21aから射出された光は直線偏光であるため、第1の位相差板24の回転角度を適切に設定することにより、第1の位相差板24を透過した光を、偏光分離素子25に対するS偏光成分とP偏光成分とを所定の比率で含む光とすることができる。すなわち、第1の位相差板24を回転させることにより、S偏光成分とP偏光成分との比率を変化させることができる。
【0034】
偏光分離素子25は、光軸AX0および光軸AX1に対して45°の角度をなすように配置されている。偏光分離素子25は、入射光のうちのS偏光成分を反射させ、入射光のうちのP偏光成分を透過させる。S偏光成分の青色光BLsは、偏光分離素子25で反射して蛍光体ホイール29に向かって進む。P偏光成分の青色光BLpは、偏光分離素子25を透過して回転拡散素子37に向かって進む。
本実施形態のS偏光成分は、特許請求の範囲の第1の偏光成分に対応する。
【0035】
偏光分離素子25から射出されたS偏光成分の青色光BLsは、アナモフィックアフォーカル光学系26に入射する。本実施形態の場合、アナモフィックアフォーカル光学系26は、一対のシリンドリカルレンズ26a,26bで構成される。一対のシリンドリカルレンズ26a,26bはそれぞれ、シリンドリカル凸レンズ26aと、シリンドリカル凹レンズ26bと、で構成される。なお、一対のシリンドリカルレンズは、2個のシリンドリカル凸レンズで構成されていてもよい。アナモフィックアフォーカル光学系26は、第1のピックアップ光学系27に入射する青色光BLsの光束幅W1を、偏光分離素子25を通過した青色光BLsの光束幅W0よりも狭くする。本実施形態のアナモフィックアフォーカル光学系26の特有の作用については後述する。
【0036】
アナモフィックアフォーカル光学系26から射出された青色光BLsは、第1のピックアップ光学系27に入射する。第1のピックアップ光学系27は、青色光BLsを蛍光体ホイール29上の蛍光体層28に向けて集光させる。第1のピックアップ光学系27は、例えば第1のピックアップレンズ27a,第2のピックアップレンズ27bから構成される。
【0037】
第1のピックアップ光学系27から射出された光は、蛍光体ホイール29に入射する。蛍光体ホイール29は、蛍光を発する蛍光体層28と、蛍光体層28を支持する回転ホイール43と、蛍光体層28と回転ホイール43との間に設けられた蛍光光を反射する反射膜45と、回転ホイール43を駆動する駆動モーター44と、を備える。反射膜45は、蛍光体層28の第1のピックアップ光学系27とは反対側に設けられ、蛍光体層28から発せられた蛍光を第1のピックアップ光学系27に向けて反射させる。すなわち、蛍光体ホイール29は、反射型の回転蛍光板である。回転ホイール43としては、例えば円板が用いられるが、回転ホイール43の形状は円形に限定されない。蛍光体ホイール29を回転軸方向から見たとき、蛍光体層28は、回転ホイール43の一面にリング状に設けられている。
本実施形態の反射膜45は、特許請求の範囲の反射部に対応する。
【0038】
蛍光体層28は、青色光BLsを吸収して黄色の蛍光に変換して射出する蛍光体粒子を含む。蛍光体粒子としては、例えばYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体を用いることができる。なお、蛍光体粒子の形成材料は、1種であってもよく、2種以上の材料を用いて形成されている粒子を混合したものを蛍光体粒子として用いてもよい。
【0039】
一方、偏光分離素子25から射出されたP偏光の青色光BLpは、第2の位相差板35に入射する。第2の位相差板35は、例えば1/4波長板で構成される。青色光BLpは、第2の位相差板35を透過することにより円偏光に変換される。第2の位相差板35を透過した青色光BLpは、第2のピックアップ光学系36に入射する。第2のピックアップ光学系36は、入射光を回転拡散素子37に向けて集光させる。第2のピックアップ光学系36は、例えば第1のピックアップレンズ36aと、第2のピックアップレンズ36bと、から構成される。
【0040】
回転拡散素子37は、拡散反射板46と、拡散反射板46を回転させるための駆動モーター47と、を備える。拡散反射板46は、第2のピックアップ光学系36から射出された円偏光の青色光BLcを偏光分離素子25に向けて拡散反射させる。拡散反射板46は、拡散反射板46に入射した青色光BLcをランバート反射させることが好ましい。駆動モーター47の回転軸は、光軸AX0と略平行に配置されている。これにより、拡散反射板46は、拡散反射板46に入射する光の光軸に交差する面内で回転可能となっている。拡散反射板46は、回転軸の方向から見て、例えば円形に形成されているが、拡散反射板46の形状は円板に限定されない。
【0041】
拡散反射板46によって反射され、第2のピックアップ光学系36を再度透過した円偏光の青色光BLpは、第2の位相差板35を再度透過すると、S偏光の青色光BLsとなる。蛍光体層28から射出された黄色の蛍光YLと、回転拡散素子37から射出された青色光BLsとは、偏光分離素子25によって合成され、白色光WLとなる。白色光WLは、均一照明光学系40のホモジナイザー光学系31を構成する第1のマルチレンズアレイ31aに入射する。
【0042】
以下、アナモフィックアフォーカル光学系26の作用について説明する。
以下の説明においては、直交座標系を設定する。一対のシリンドリカルレンズを光が透過する方向、すなわち、光軸AX1(
図2参照)に平行な方向をx軸方向とし、光軸AX1に垂直な面内においてシリンドリカルレンズの母線と平行な方向をz軸とする。
図2は光源装置20をz軸方向から見た図であり、
図3は光源装置20をy軸方向から見た図である。ただし、
図3については、実際には光源ユニット21から偏光分離素子25に至る光路は紙面に垂直となり、光源ユニット21から第1の位相差板24までの構成要素は紙面に垂直な方向に重なった位置関係にあるが、光源ユニット21から第1の位相差板24までの構成要素を図示するために、光源ユニット21から偏光分離素子25に至る光路を紙面の下側に折り曲げて示している。
【0043】
図5に示すように、本実施形態のアナモフィックアフォーカル光学系26は、シリンドリカル凸レンズ26aと、シリンドリカル凹レンズ26bと、からなる一対のシリンドリカルレンズで構成されている。したがって、アナモフィックアフォーカル光学系26は、y軸方向に屈折力を持ち、z軸方向には屈折力を持っていない。したがって、
図3に示すように、xz平面と平行な面において、偏光分離素子25から射出された青色光BLsは、アナモフィックアフォーカル光学系26によって屈折されることなく、第1のピックアップ光学系27に入射し、第1のピックアップ光学系27によって蛍光体層28上に集光される。
【0044】
これに対して、
図2に示すように、xy平面と平行な面において、偏光分離素子25から射出された青色光BLsは、アナモフィックアフォーカル光学系26によって屈折される。その結果、アナモフィックアフォーカル光学系26を透過した後の青色光BLsの光束幅W1は、偏光分離素子25を通過した後の青色光BLsの光束幅W0よりも狭くなる。これにより、第1のピックアップ光学系27のxy平面上での実効的な焦点距離は、アナモフィックアフォーカル光学系を備えていない光源装置における第1のピックアップ光学系の焦点距離に比べて長くなる。以下、アナモフィックアフォーカル光学系を備えていない光源装置を比較例の光源装置と称する。このため、比較例の光源装置における蛍光体層上の青色光の照射領域の形状が仮にy方向と平行な辺を持つ正方形であったとすると、本実施形態の光源装置20における蛍光体層28上の青色光の照射領域の形状は、正方形が一方向に拡大された長方形となる。
【0045】
比較例の光源装置における励起光照射領域である正方形の一辺の長さに対して、本実施形態の光源装置20における励起光照射領域である長方形の長辺の長さがA(A>1)倍になったとする。このとき、本実施形態の光源装置20における励起光照射領域の面積は、比較例の光源装置における励起光照射領域の面積のA倍に拡大される。その結果、本実施形態の光源装置20における励起光の光密度は、比較例の光源装置における励起光の光密度の1/A倍に低下する。これにより、励起光の照射による蛍光体層28の温度上昇を抑制することができ、励起光の変換効率の低下を抑制することができる。
【0046】
特に本実施形態の場合、アナモフィックアフォーカル光学系26を構成する一対のシリンドリカルレンズが屈折力を持つ方向が蛍光体ホイール29の径方向に一致している。そのため、
図4に示すように、蛍光体層28上の励起光の照射領域Eは、回転ホイール43の径方向Dに長辺を有する長方形となる。
【0047】
励起光が蛍光体層28に照射される際には回転ホイール43が回転しているため、励起光の照射領域Eは、蛍光体層28上を回転ホイール43の周方向に移動する。したがって、回転ホイール43の回転中、蛍光体層28の単位面積に単位時間あたり照射される励起光の光量は、照射領域Eの長手方向が径方向Dと平行な場合の方が、照射領域Eの長手方向が径方向Dと垂直な場合よりも小さい。このように、本実施形態の構成によれば、光密度を効率良く下げることができ、蛍光体層28の温度上昇がさらに抑制される。
【0048】
なお、一対のシリンドリカルレンズが屈折力を持つ方向は、必ずしも回転ホイール43の径方向に一致していなくてもよい。一対のシリンドリカルレンズは、回転ホイールの径方向と直交する方向と交差する方向に屈折力を有する構成であれば、少なくとも上記の効果を得ることができる。
【0049】
また、励起光の照射領域Eは、蛍光が射出する領域であり、蛍光光源とみなすことができる。本実施形態の場合、励起光の照射領域Eが長方形であるため、蛍光の射出領域、すなわち蛍光光源の形状も長方形である。蛍光体層28から射出された蛍光がアナモフィックアフォーカル光学系26を励起光の通過方向と逆方向に通過するとき、アナモフィックアフォーカル光学系26は蛍光に対して励起光とは逆の作用を生じる。すなわち、蛍光の光源像は、励起光が拡大された方向と同じ方向に同じ倍率で縮小される。そのため、光源像の形状は、比較例の光源装置の場合と同様の正方形となる。すなわち、蛍光体層28と共役関係にあるホモジナイザー光学系31の第2のマルチレンズアレイ31bの各レンズ上には正方形の光源像が形成される。これにより、ホモジナイザー光学系31から射出された蛍光が偏光変換素子32の遮光部にけられる割合が減り、蛍光の利用効率の低下を抑制することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の光源装置20では、蛍光体層28上での励起光の照射領域がアナモフィックアフォーカル光学系26によって特定の方向に拡大されることにより、励起光の光密度が低下し、変換効率の低下を抑制することができる。また、第2のマルチレンズアレイ31b上での蛍光の光源像は、励起光が拡大された方向と同じ方向に同じ倍率で、アナモフィックアフォーカル光学系26によって縮小されるので、蛍光の利用効率の低下を抑制することができる。このようにして、本実施形態の光源装置20は、励起光の変換効率の低下および蛍光の利用効率の低下をともに抑制することができる。本実施形態のプロジェクター1はこのような光源装置20を備えたことにより、高効率化を実現することができる。
【0051】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記実施形態では、アナモフィックアフォーカル光学系は必ずしもシリンドリカルレンズで構成されていなくてもよい。アナモフィックアフォーカル光学系はトーリックレンズで構成されていてもよい。
【0052】
その他、光源装置およびプロジェクターの各種構成要素の形状、数、配置、材料などについては、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。また、上記実施形態では、本発明による光源装置を、液晶ライトバルブを用いたプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。光変調装置としてデジタルマイクロミラーデバイスを用いたプロジェクターに搭載してもよい。
【0053】
上記実施形態では、本発明による光源装置をプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。本発明による光源装置は、照明器具や自動車のヘッドライト等にも適用することができる。
【0054】
上記実施形態では、波長変換素子として蛍光体を用いたが、これに限られない。波長変換素子として、例えば量子ロッドを用いてもよい。