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特許6623596超音波デバイス、超音波モジュール、電子機器、及び超音波測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623596
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】超音波デバイス、超音波モジュール、電子機器、及び超音波測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20191216BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   A61B8/14
   H04R17/00 332B
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-147109(P2015-147109)
(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公開番号】特開2017-23554(P2017-23554A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】清瀬 摂内
(72)【発明者】
【氏名】橋元 伸晃
【審査官】 冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−255024(JP,A)
【文献】 特開平04−218765(JP,A)
【文献】 特開2013−208149(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02644101(EP,A1)
【文献】 特開2014−198083(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0290371(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面、及び前記第一面とは反対側の第二面を有する素子基板であって、前記第一面から前記第二面に向かう方向から見た平面視で、アレイ領域と、前記アレイ領域よりも外側で当該素子基板の外周に沿って配置される端子領域とを備える前記素子基板と、
前記素子基板の前記第一面で前記アレイ領域に設けられ、複数の超音波トランスデューサーがアレイ状に配置された超音波トランスデューサーアレイと、
前記素子基板の前記第一面において前記超音波トランスデューサーに接続され、前記平面視において、前記端子領域に引き出された電極線と、
前記素子基板の前記第一面に接合された封止板と、
前記平面視において、前端子領域に設けられた前記電極線の一部に対向する位置、前記封止板を厚み方向に貫通して設けられ、前記電極線の一部に接続される貫通電極と、
を備えたことを特徴とする超音波デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波デバイスにおいて、
前記素子基板は、複数の前記超音波トランスデューサーのそれぞれに対応した開口部と、前記開口部を閉塞する振動膜とを備えている
ことを特徴とする超音波デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波デバイスにおいて、
前記振動膜は、前記開口部の前記第一面側を閉塞する
ことを特徴とする超音波デバイス。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波デバイスにおいて、
前記超音波トランスデューサーは、第一電極、圧電膜、及び第二電極が順に積層された積層体であり、
前記電極線は、前記第一電極に接続された第一電極線と、前記第二電極に接続された第二電極線と、を備え、
前記貫通電極は、前記第一電極線に接続された第一貫通電極と、前記第二電極線に接続された第二貫通電極とを備えている
ことを特徴とする超音波デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波デバイスにおいて、
前記超音波トランスデューサーアレイは、第一方向に沿って配置される複数の超音波トランスデューサーを超音波トランスデューサー群として、前記第一方向に交差する第二方向に沿って前記超音波トランスデューサー群が複数配置されたアレイ構造を有し、
前記超音波トランスデューサー群に属する複数の前記超音波トランスデューサーに接続された前記第一電極線は互いに電気的に接続され、
前記超音波トランスデューサー群に属する複数の前記超音波トランスデューサーに接続された前記第二電極線は互いに電気的に接続されている
ことを特徴とする超音波デバイス。
【請求項6】
第一面、及び前記第一面とは反対側の第二面を有する素子基板であって、前記第一面から前記第二面に向かう方向から見た平面視で、アレイ領域と、前記アレイ領域よりも外側で当該素子基板の外周に沿って配置される端子領域とを備える前記素子基板と、
前記素子基板の前記第一面で前記アレイ領域に設けられ、複数の超音波トランスデューサーがアレイ状に配置された超音波トランスデューサーアレイと、
前記素子基板の前記第一面において前記超音波トランスデューサーに接続され、前記平面視において、前記端子領域に引き出された電極線と、
前記素子基板の前記第一面に接合された封止板と、
前記平面視において、前端子領域に設けられた前記電極線の一部に対向する位置、前記封止板を厚み方向に貫通して設けられ、前記電極線の一部に接続される貫通電極と、
前記貫通電極と接続される端子部が設けられた配線基板と、
を備えたことを特徴とする超音波モジュール。
【請求項7】
第一面、及び前記第一面とは反対側の第二面を有する素子基板であって、前記第一面から前記第二面に向かう方向から見た平面視で、アレイ領域と、前記アレイ領域よりも外側で当該素子基板の外周に沿って配置される端子領域とを備える前記素子基板と、
前記素子基板の前記第一面で前記アレイ領域に設けられ、複数の超音波トランスデューサーがアレイ状に配置された超音波トランスデューサーアレイと、
前記素子基板の前記第一面において前記超音波トランスデューサーに接続され、前記平面視において、前記端子領域に引き出された電極線と、
前記素子基板の前記第一面に接合された封止板と、
前記平面視において、前端子領域に設けられた前記電極線の一部に対向する位置、前記封止板を厚み方向に貫通して設けられ、前記電極線の一部に接続される貫通電極と、
前記貫通電極と接続される端子部が設けられた配線基板と、
前記超音波トランスデューサーを制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
第一面、及び前記第一面とは反対側の第二面を有する素子基板であって、前記第一面から前記第二面に向かう方向から見た平面視で、アレイ領域と、前記アレイ領域よりも外側で当該素子基板の外周に沿って配置される端子領域とを備える前記素子基板と、
前記素子基板の前記第一面で前記アレイ領域に設けられ、複数の超音波トランスデューサーがアレイ状に配置された超音波トランスデューサーアレイと、
前記素子基板の前記第一面において前記超音波トランスデューサーに接続され、前記平面視において、前記端子領域に引き出された電極線と、
前記素子基板の前記第一面に接合された封止板と、
前記平面視において、前端子領域に設けられた前記電極線の一部に対向する位置、前記封止板を厚み方向に貫通して設けられ、前記電極線の一部に接続される貫通電極と、
前記貫通電極と接続される端子部が設けられた配線基板と、
前記超音波トランスデューサーアレイからの超音波の送信、及び反射された超音波の受信を制御し、超音波の送受信タイミングに基づいて被測定物を測定する測定制御部と、
を備えたことを特徴とする超音波測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波デバイス、超音波モジュール、電子機器、及び超音波測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号入力により振動して超音波を出力する超音波振動子、及び各超音波振動子に接続された第一端子部を有する素子基板と、素子基板の各端子と電気的に接続される第二端子部を有する配線基板と、を備えた超音波デバイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の超音波デバイスでは、開口部を有する素子基板に開口部を覆う支持膜が設けられ、当該支持膜上に下部電極、圧電膜、及び上部電極が積層された超音波トランスデューサーが設けられている。また、素子基板の開口部の面には、背面波を抑制するためのバックプレート(補強板)が設けられている。このような超音波デバイスでは、バルク型の圧電体を用いた超音波デバイスに比べて、薄型化、小型化を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−209728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、超音波デバイスを用いて例えば生体内の器官を検査する場合、生体との間に空気が介在しないように、超音波デバイスの超音波射出側にジェル等の液体を塗布する。しかしながら、上記特許文献1のように、素子基板の素子側面に超音波トランスデューサーや電極が設けられていると、水滴等の液体が付着して誤作動や故障の原因となるおそれがある。防水用の保護膜を設ける構成も考えられるが、超音波の出射側にこのような保護膜を設けると、音響インピーダンスの違いにより保護膜で超音波が反射され、超音波による高精度な検査を実施できない。
【0005】
また、特許文献1のような構成において、素子基板の開口部側の面から超音波を出力する構成が考えられる。このような構成では、圧電素子(下部電極、圧電膜、及び条文電極)や電極に接続された電極線に対する防水性を十分に確保することができる。
一方、薄膜状の超音波トランスデューサーでは、薄型の素子基板を用いるので、補強板(封止板)を接合して素子基板を補強する必要がある。ここで、素子基板のうち、超音波の送受信面側に補強板を設ける構成とすることはできない(超音波送受信の阻害となる)ので、素子基板の背面側に補強板を設けることになる。しかしながら、上記のように、素子基板の背面側に圧電素子や電極線が設けられる構成では、配線基板と接続を行うための端子部も背面側に設けられることになる。図7は、従来の超音波デバイスの構成の一例である。図7に示すように、上記のような構成では、素子基板41の端子部(電極パッド414P)に対してFPC71(Flexible printed circuits)が接続され、当該FPC71が補強板(封止板72)に設けられた開口73から引き出されて配線基板に設けられた配線端子部に接続されることになる。この場合、FPC71の反力によって、素子基板41が浮いたり、傾斜したりする恐れがあり、超音波送受信方向の制御が困難となる。また、補強板72の開口73の角部でFPC71が断線するおそれもあり、配線信頼性が低下する。
【0006】
本発明は、配線信頼性が高く、かつ、高精度な送受信制御が可能な超音波デバイス、超音波モジュール、電子機器、及び超音波測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一適用例の超音波デバイスは、第一面、及び前記第一面とは反対側の第二面を有する素子基板であって、前記第一面から前記第二面に向かう方向から見た平面視で、アレイ領域と、前記アレイ領域よりも外側で当該素子基板の外周に沿って配置される端子領域とを備える前記素子基板と、前記素子基板の前記第一面で前記アレイ領域に設けられ、複数の超音波トランスデューサーがアレイ状に配置された超音波トランスデューサーアレイと、前記素子基板の前記第一面において前記超音波トランスデューサーに接続され、前記平面視において、前記端子領域に引き出された電極線と、前記素子基板の前記第一面に接合された封止板と、前記平面視において、前端子領域に設けられた前記電極線の一部に対向する位置、前記封止板を厚み方向に貫通して設けられ、前記電極線の一部に接続される貫通電極と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本適用例では、素子基板の超音波トランスデューサーアレイが配置される第一面に、電極線が配置されており、この第一面とは反対側の第二面から超音波が送出される。そして、素子基板の第一面に対向して封止板が設けられており、この封止板の超音波トランスデューサーアレイに対向するアレイ対向領域の外側に、素子基板の第一面に設けられた電極線と導通する貫通電極が設けられている。
このような構成では、例えば超音波デバイスを生体の検査に用いる超音波プローブに用いる場合に、超音波プローブと生体との間にジェル等の液体が介在し、超音波プローブ内に液体が侵入した場合でも、当該液体が超音波トランスデューサーアレイや電極線に付着せず、故障や動作不良を抑制できる。
また、封止板により素子基板が薄型である場合でも素子基板の強度を補強でき、衝撃等による破損を抑制できる。
一方、このような封止板を素子基板の第一面側に設ける際、素子基板の電極線と、配線基板とを電気的に導通させるためにFPCによる接続を行うと、素子基板の浮きやFPCの断線等の問題が発生する。これに対して、本適用例では、封止板のアレイ対向領域外に貫通電極を設け、素子基板のアレイ領域外に引き出された電極線と貫通電極とを接続する。これにより、素子基板の浮きによる超音波の送受信方向のずれが抑制され、より高精度な超音波の送受信制御を実施できる。また、貫通電極を用いる構成であるので、断線等の問題がない。しかも、素子基板に設けられた電極線が貫通電極と電気的に接続されており、その貫通電極が封止板の素子基板とは反対側まで貫通しているので、配線基板の所望の位置に半田等により貫通電極の素子基板とは反対側の一端を直接接合する(いわゆる、フェースダウン実装)ことができ、超音波デバイスの実装段階における作業工程を簡単にでき、製造効率性を向上させることができる。
【0009】
ここで、アレイ対向領域内に貫通電極を設ける構成も考えられる。しかしながら、この場合、各超音波トランスデューサー間に引き出された電極線に対して貫通電極を位置合わせして接触させる必要があり、超音波トランスデューサー間の間隔寸法は微小であるため、超音波トランスデューサー間の電極線に貫通電極を接続することは困難であり、製造効率性も悪化する。
また、超音波トランスデューサーアレイにより振動膜を振動させる構成では、超音波トランスデューサーアレイと封止板とを接合すると、振動膜の振動を阻害することになるので、超音波トランスデューサーアレイと封止板との間には所定の隙間を設ける必要がある。したがって、アレイ対向領域に貫通電極を設ける場合では、超音波トランスデューサーアレイと封止板との間の隙間寸法だけ第一面側に突出する貫通電極を形成し、かつ振動膜が振動している際も貫通電極と電極線とを接続させる必要がある。しかしながら、振動膜が振動した際に、振動により貫通電極と電極線とが断線するおそれがあり、十分な信頼性を確保できない。
これに対して、本適用例のように、アレイ領域外の電極線に対して貫通電極を接続する構成とすることで、各超音波トランスデューサーに対して確実かつ容易に貫通電極を接続することができ、製造効率性の向上、及び信頼性の向上を図ることができる。
【0010】
本適用例の超音波デバイスにおいて、前記素子基板は、複数の前記超音波トランスデューサーのそれぞれに対応した開口部と、前記開口部を閉塞する振動膜とを備えていることが好ましい。
本適用例では、素子基板は、各超音波トランスデューサーに対応して開口部と開口部を閉塞する振動膜とが設けられ、超音波トランスデューサーは、振動膜の第一面側に設けられている。
このような構成では、超音波トランスデューサーを駆動させて振動膜を振動させることで、超音波を送出することができ、また、振動膜の振動による超音波トランスデューサーの変形を検出することで超音波を受信することができる。この際、上述のように電極線が振動膜の第一面側に設けられているので、超音波の送受信面から侵入した水滴等が超音波トランスデューサーや電極線に付着せず、防水性を確保することができる。
【0011】
本適用例の超音波デバイスにおいて、前記振動膜は、前記開口部の前記第一面側を閉塞することが好ましい。
本適用例では、振動膜が開口部の第一面側を閉塞している。すなわち、開口部の第一面側に振動膜が設けられることで、素子基板の第一面側は平面状となる。したがって、超音波トランスデューサーから引き出される電極線が開口部の凹凸上に設けられないため、電極線の断線を抑制でき、信頼性を向上できる。また、平面状の振動膜上に超音波トランスデューサーや電極線を形成するので、製造効率性も向上する。
また、このような構成では、超音波トランスデューサーを駆動させることで、素子基板の開口部側に超音波を送出することができ、開口部側から入る超音波を受信することができる。
【0012】
本適用例の超音波デバイスにおいて、前記超音波トランスデューサーは、第一電極、圧電膜、及び第二電極が順に積層された積層体であり、前記電極線は、前記第一電極に接続された第一電極線と、前記第二電極に接続された第二電極と、を備え、前記貫通電極は、前記第一電極線に接続された第一貫通電極と、前記第二電極線に接続された第二貫通電極とを備えていることが好ましい。
本適用例では、超音波トランスデューサーは、第一電極、圧電膜、及び第二電極が積層されて構成されている。すなわち、本適用例の超音波トランスデューサーは膜状の積層体により構成されており、これにより、超音波デバイスの薄型化を実現できる。
また、第一電極及び第二電極に対してそれぞれ電極線が設けられ、各電極線がそれぞれ貫通電極に接続されている。このような構成では、各超音波トランスデューサーの第一電極及び第二電極に対してそれぞれ個別に信号を入力することもでき、超音波トランスデューサーアレイを二次元超音波トランスデューサーアレイとして機能させることができる。
【0013】
本適用例の超音波デバイスにおいて、前記超音波トランスデューサーアレイは、第一方向に沿って配置される複数の超音波トランスデューサーを超音波トランスデューサー群として、前記第一方向に交差する第二方向に沿って前記超音波トランスデューサー群が複数配置されたアレイ構造を有し、前記超音波トランスデューサー群に属する複数の前記超音波トランスデューサーに接続された前記第一電極線は互いに電気的に接続され、前記超音波トランスデューサー群に属する複数の前記超音波トランスデューサーに接続された前記第二電極線は互いに電気的に接続されていることが好ましい。
本適用例では、超音波トランスデューサーアレイは、第一方向に沿って配置された複数の超音波トランスデューサーを1つの超音波トランスデューサー群とし、超音波トランスデューサー群を第二方向に沿って複数配置したアレイ構造となる。これにより、超音波トランスデューサーアレイを1次アレイとして駆動させることができる。この際、複数の超音波トランスデューサーにより超音波トランスデューサー群を構成するため、例えば1つの超音波トランスデューサーにて超音波の送受信を行う場合に比べて、送信超音波の音圧の向上、受信超音波の受信精度の向上を図ることができる。
また、超音波トランスデューサー群に属する各超音波トランスデューサーの第一電極は互いに接続され、超音波トランスデューサー群に属する各超音波トランスデューサーの第二電極は互いに接続されているので、1つの超音波トランスデューサー群に対する貫通電極の数を減らすことができる。例えば、1つの超音波トランスデューサー群に対して、第一電極に対応した貫通電極と、第二電極に対応した貫通電極とがそれぞれ設けられれば超音波トランスデューサー群を駆動させることができる。そして、各超音波トランスデューサーに対して貫通電極を設ける場合に比べて、貫通電極の数を減らすことができるので、封止板に設ける貫通電極を減らすことができる分、封止板の強度低下を抑制できる。
【0014】
本発明の一適用例に係る超音波モジュールは、第一面、及び前記第一面とは反対側の第二面を有する素子基板であって、前記第一面から前記第二面に向かう方向から見た平面視で、アレイ領域と、前記アレイ領域よりも外側で当該素子基板の外周に沿って配置される端子領域とを備える前記素子基板と、前記素子基板の前記第一面で前記アレイ領域に設けられ、複数の超音波トランスデューサーがアレイ状に配置された超音波トランスデューサーアレイと、前記素子基板の前記第一面において前記超音波トランスデューサーに接続され、前記平面視において、前記端子領域に引き出された電極線と、前記素子基板の前記第一面に接合された封止板と、前記平面視において、前端子領域に設けられた前記電極線の一部に対向する位置、前記封止板を厚み方向に貫通して設けられ、前記電極線の一部に接続される貫通電極と、前記貫通電極と接続される端子部が設けられた配線基板と、を備えたことを特徴とする。
本適用例の超音波モジュールは、上記超音波デバイスと同様に、超音波トランスデューサーや電極線が設けられる素子基板の第一面側が超音波の送受面とは反対側となるため、十分な防水性を確保できる。また、超音波トランスデューサーを第一面に設けたとしても、封止板を設けることで、素子基板の強度を十分に確保でき、かつクロストークを抑制できる。さらに、アレイ対向領域外に貫通電極が設けられることで、フェースダウン実装により容易に配線基板に対して超音波デバイスを実装することができ、製造効率性の向上、及び信頼性の向上を図ることができる。
【0015】
本発明の一適用例に係る電子機器は、第一面、及び前記第一面とは反対側の第二面を有する素子基板であって、前記第一面から前記第二面に向かう方向から見た平面視で、アレイ領域と、前記アレイ領域よりも外側で当該素子基板の外周に沿って配置される端子領域とを備える前記素子基板と、前記素子基板の前記第一面で前記アレイ領域に設けられ、複数の超音波トランスデューサーがアレイ状に配置された超音波トランスデューサーアレイと、前記素子基板の前記第一面において前記超音波トランスデューサーに接続され、前記平面視において、前記端子領域に引き出された電極線と、前記素子基板の前記第一面に接合された封止板と、前記平面視において、前端子領域に設けられた前記電極線の一部に対向する位置、前記封止板を厚み方向に貫通して設けられ、前記電極線の一部に接続される貫通電極と、前記貫通電極と接続される端子部が設けられた配線基板と、前記超音波トランスデューサーを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
本適用例の電子機器では、上記超音波デバイスや超音波モジュールと同様に、超音波トランスデューサーや電極線が設けられる素子基板の第一面側が超音波の送受面とは反対側となるため、十分な防水性を確保できる。また、超音波トランスデューサーを第一面に設けたとしても、封止板を設けることで、素子基板の強度を十分に確保でき、かつクロストークを抑制できる。さらに、アレイ対向領域外に貫通電極が設けられることで、フェースダウン実装により容易に配線基板に対して超音波デバイスを実装することができ、製造効率性の向上、及び信頼性の向上を図ることができる。
したがって、このような超音波デバイスや超音波モジュールが組み込まれた電子機器において、上記作用効果を奏することができ、かつ、高精度な超音波の送受信を行うことができる。
【0016】
本発明の一適用例に係る超音波測定装置は、第一面、及び前記第一面とは反対側の第二面を有する素子基板であって、前記第一面から前記第二面に向かう方向から見た平面視で、アレイ領域と、前記アレイ領域よりも外側で当該素子基板の外周に沿って配置される端子領域とを備える前記素子基板と、前記素子基板の前記第一面で前記アレイ領域に設けられ、複数の超音波トランスデューサーがアレイ状に配置された超音波トランスデューサーアレイと、前記素子基板の前記第一面において前記超音波トランスデューサーに接続され、前記平面視において、前記端子領域に引き出された電極線と、前記素子基板の前記第一面に接合された封止板と、前記平面視において、前端子領域に設けられた前記電極線の一部に対向する位置、前記封止板を厚み方向に貫通して設けられ、前記電極線の一部に接続される貫通電極と、前記貫通電極と接続される端子部が設けられた配線基板と、前記超音波トランスデューサーアレイからの超音波の送信、及び反射された超音波の受信を制御し、超音波の送受信タイミングに基づいて被測定物を測定する測定制御部と、を備えたことを特徴とする。なお、測定制御部による測定としては、例えば被測定物の表面形状や断面形状の他、流体の被測定物の流速を測定するもの等をも含む。
本適用例の超音波測定装置では、上記超音波デバイスや超音波モジュールと同様に、超音波トランスデューサーや電極線が設けられる素子基板の第一面側が超音波の送受面とは反対側となるため、十分な防水性を確保できる。また、超音波トランスデューサーを第一面に設けたとしても、封止板を設けることで、素子基板の強度を十分に確保でき、かつクロストークを抑制できる。さらに、アレイ対向領域外に貫通電極が設けられることで、フェースダウン実装により容易に配線基板に対して超音波デバイスを実装することができ、製造効率性の向上、及び信頼性の向上を図ることができる。
したがって、このような超音波デバイスや超音波モジュールが組み込まれた超音波測定装置において、上記作用効果を奏することができ、かつ、高精度な超音波の送受信を行うことができ、超音波による対象物の高精度な測定処理を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の超音波測定装置の概略構成を示す斜視図。
図2】本実施形態の超音波測定装置の概略構成を示すブロック図。
図3】本実施形態の超音波プローブにおける超音波センサーの概略構成を示す平面図。
図4】本実施形態の超音波センサーの素子基板を、封止板側から見た平面図。
図5】本実施形態の超音波センサーの断面図。
図6】本実施形態における超音波デバイスの配線基板への実装方法を示す図。
図7】従来の超音波デバイスの構成例を示す断面図。
図8】他の実施形態における電子機器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る一実施形態の電子機器としての超音波測定装置について、図面に基づいて説明する。
[超音波測定装置1の構成]
図1は、本実施形態の超音波測定装置1の概略構成を示す斜視図である。図2は、超音波測定装置1の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の超音波測定装置1は、図1に示すように、超音波プローブ2と、超音波プローブ2にケーブル3を介して電気的に接続された制御装置10と、を備えている。
この超音波測定装置1は、超音波プローブ2を生体(例えば人体)の表面に当接させ、超音波プローブ2から生体内に超音波を送出する。また、生体内の器官にて反射された超音波を超音波プローブ2にて受信し、その受信信号に基づいて、例えば生体内の内部断層画像を取得したり、生体内の器官の状態(例えば血圧及び血流等)を測定したりする。
【0019】
[超音波プローブ2の構成]
図3は、超音波プローブ2における超音波センサー24の概略構成を示す平面図である。
超音波プローブ2は、筐体21と、筐体21内部に設けられた超音波デバイス22と、超音波デバイス22を制御するためのドライバ回路等が設けられた配線基板23と、を備えている。なお、超音波デバイス22と、配線基板23とにより超音波センサー24が構成され、当該超音波センサー24は、本発明の超音波モジュールを構成する。
【0020】
筐体21は、図1示すように、平面視矩形状の箱状に形成され、厚み方向に直交する一面(センサー面21A)には、センサー窓21Bが設けられており、超音波デバイス22の一部が露出している。また、筐体21の一部(図1に示す例では側面)には、ケーブル3の通過孔21Cが設けられ、ケーブル3は、通過孔21Cから筐体21の内部の配線基板23に接続されている。また、ケーブル3と通過孔21Cとの隙間は、例えば樹脂材等が充填されることで、防水性が確保されている。
なお、本実施形態では、ケーブル3を用いて、超音波プローブ2と制御装置10とが接続される構成例を示すが、これに限定されず、例えば超音波プローブ2と制御装置10とが無線通信により接続されていてもよく、超音波プローブ2内に制御装置10の各種構成が設けられていてもよい。
【0021】
[超音波デバイス22の構成]
図4は、超音波デバイス22における素子基板41を、封止板42側から見た平面図である。図5は、図4におけるB-B線で切断した超音波センサー24の断面図である。
超音波センサー24を構成する超音波デバイス22は、図3及び図4に示すように、素子基板41と、封止板42と、音響整合層43(図5参照)と、音響レンズ44(図5参照)と、により構成されている。
【0022】
(素子基板41の構成)
素子基板41は、図5に示すように、基板本体部411と、基板本体部411に積層された振動膜412と、振動膜412に積層された圧電素子413と、を備えている。ここで、素子基板41において、封止板42に対向する背面41Aは本発明における第一面となり、背面41Aとは反対側の作動面41Bが本発明における第二面となる。また、振動膜412及び圧電素子413により、本発明の超音波トランスデューサー51が構成されている。
そして、図4に示すように、素子基板41を厚み方向から見た平面視において、素子基板41の中心領域には、複数の超音波トランスデューサー51がアレイ状に配置された超音波トランスデューサーアレイ50が設けられている。この超音波トランスデューサーアレイ50が設けられる領域を、以降、アレイ領域Ar1と称する。
【0023】
基板本体部411は、例えばSi等の半導体基板である。この基板本体部411のアレイ領域Ar1内には、各々の超音波トランスデューサー51に対応した開口部411Aが設けられている。また、各開口部411Aは、基板本体部411の背面41A側に設けられた振動膜412により閉塞されている。
振動膜412は、例えばSiOや、SiO及びZrOの積層体等より構成され、基板本体部411の背面41A側全体を覆って設けられている。この振動膜412の厚み寸法は、基板本体部411に対して十分小さい厚み寸法となる。基板本体部411をSiにより構成し、振動膜412をSiOにより構成する場合、例えば基板本体部411の背面41A側を酸化処理することで、所望の厚み寸法の振動膜412を容易に形成することが可能となる。また、この場合、SiOの振動膜412をエッチングストッパとして基板本体部411をエッチング処理することで、容易に前記開口部411Aを形成することが可能となる。
【0024】
また、図5に示すように、各開口部411Aを閉塞する振動膜412上には、それぞれ下部電極414、圧電膜415、及び上部電極416の積層体である圧電素子413が設けられている。ここで、振動膜412及び圧電素子413により、本発明の超音波トランスデューサー51が構成される。
このような超音波トランスデューサー51では、下部電極414及び上部電極416の間に所定周波数の矩形波電圧が印加されることで、開口部411Aの開口領域内の振動膜412を振動させて超音波が送出することができる。また、対象物から反射された超音波により振動膜412が振動されると、圧電膜415の上下で電位差が発生する。したがって、下部電極414及び上部電極416間に発生する前記電位差を検出することで、受信した超音波を検出することが可能となる。
【0025】
また、本実施形態では、図4に示すように、上記のような超音波トランスデューサー51が、素子基板41のアレイ領域Ar1内に、X方向(第一方向)、及びX方向に直交するY方向(第二方向)に沿って複数配置されている。
ここで、下部電極414は、X方向に沿う直線状に形成されている。すなわち、下部電極414は、X方向に沿って並ぶ複数の超音波トランスデューサー51に跨って設けられており、圧電膜415と振動膜412との間に位置する下部電極本体414Aと、隣り合う下部電極本体414Aを連結する下部電極線414B(本発明の第一電極線の一部を構成)と、アレイ領域Ar1外の端子領域Ar2に引き出される下部端子電極線414C(本発明の第一電極線の一部を構成)とにより構成されている。よって、X方向に並ぶ超音波トランスデューサー51では、下部電極414は同電位となる。
また、下部端子電極線414Cは、アレイ領域Ar1外の端子領域Ar2まで延出し、端子領域Ar2において、後述する第一貫通電極422Aと接続される第一電極パッド414Pを構成する。
【0026】
一方、上部電極416は、図4に示すように、Y方向に沿って並ぶ複数の超音波トランスデューサー51に跨って設けられた素子電極部416Aと、互いに平行する素子電極部416Aの端部同士を連結する共通電極部416B(本発明の第二電極線の一部を構成)とを有する。素子電極部416Aは、圧電膜415上に積層された上部電極本体416Cと、隣り合う上部電極本体416Cを連結する上部電極線416D(本発明の第二電極線の一部を構成)と、Y方向の両端部に配置された超音波トランスデューサー51からY方向に沿って外側に延出する上部端子電極416E(本発明の第二電極線の一部を構成)とを有する。
共通電極部416Bは、アレイ領域Ar1の+Y側端部及び−Y側端部にそれぞれ設けられている。+Y側の共通電極部416Bは、Y方向に沿って複数設けられた超音波トランスデューサー51のうちの+Y側端部に設けられた超音波トランスデューサー51から+Y側に延出した上部端子電極416E同士を接続する。−Y側端部の共通電極部416Bは、−Y側に延出した上部端子電極416E同士を接続する。よって、アレイ領域Ar1内の各超音波トランスデューサー51では、上部電極416は同電位となる。また、これら一対の共通電極部416Bは、X方向に沿って設けられ、その端部がアレイ領域Ar1から端子領域Ar2まで引き出されている。そして、共通電極部416Bは、端子領域Ar2において、後述する第二貫通電極422Bと接続される第二電極パッド416Pを構成する。
【0027】
上記のような超音波トランスデューサーアレイ50では、下部電極414で連結されたX方向に並ぶ超音波トランスデューサー51により、1つの超音波トランスデューサー群51Aが構成され、当該超音波トランスデューサー群51AがY方向に沿って複数並ぶ2次元アレイ構造を構成する。
【0028】
(封止板42の構成)
封止板42は、厚み方向から見た際の平面形状が例えば素子基板41と同形状に形成され、シリコン基板等の半導体基板や、絶縁体基板により構成される。なお、封止板42の材質や厚みは、超音波トランスデューサー51の周波数特性に影響を及ぼすため、超音波トランスデューサー51にて送受信する超音波の中心周波数に基づいて設定することが好ましい。
【0029】
そして、この封止板42は、素子基板41のアレイ領域Ar1に対向するアレイ対向領域Ar3(図4参照)には、素子基板41の開口部411Aに対応した複数の凹溝421が形成されている。これにより、振動膜412のうち、超音波トランスデューサー51により振動される領域(開口部411A内)では、素子基板41との間に所定寸法のギャップ421Aが設けられることになり、振動膜412の振動が阻害されない。また、1つの超音波トランスデューサー51からの背面波が他の隣接する超音波トランスデューサー51に入射される不都合(クロストーク)を抑制することができる。
なお、基板本体部411の開口部411A以外の領域(支持部411B;図5参照)と封止板42の凹溝421以外の領域とが当接又は接合されていてもよい。
【0030】
また、振動膜412が振動すると、開口部411A側(作動面41B側)の他、封止板42側(背面41A側)にも背面波として超音波が放出される。この背面波は、封止板42により反射され、再びギャップ421Aを介して振動膜412側に放出される。この際、反射背面波と、振動膜412から作動面41B側に放出される超音波との位相がずれると、超音波が減衰する。したがって、本実施形態では、ギャップ421Aにおける音響的な距離が、超音波の波長λの4分の1(λ/4)の奇数倍となるように、各凹溝421の溝深さが設定されている。言い換えれば、超音波トランスデューサー51から発せられる超音波の波長λを考慮して、素子基板41や封止板42の各部の厚み寸法が設定される。
【0031】
また、封止板42は、素子基板41の端子領域Ar2に対向する位置に、端子領域Ar2に設けられた各電極パッド414P,416Pに対応して、封止板42の厚み方向を貫通する貫通電極422(TSV;Through-Sillicon Via)が設けられている。具体的には、素子基板41の第一電極パッド414Pに対向する位置に設けられる第一貫通電極422A(図4参照)と、第二電極パッド416Pに対向する位置に設けられる第二貫通電極422B(図4参照)とが設けられている。
第一貫通電極422Aは、例えば半田等の導電性の接合部材423により第一電極パッド414Pと接合され、第二貫通電極422Bは、例えば半田等の導電性の接合部材423により第二電極パッド416Pと接合されている。
さらに、封止板42は、素子基板41のアレイ領域Ar1及び端子領域Ar2以外の外周領域Ar4において、接合膜や接着剤等により素子基板41と接合されている。これにより、封止板42は、素子基板41の基板強度を向上させることが可能となる。
【0032】
(音響整合層43及び音響レンズ44の構成)
音響整合層43は、図5に示すように、素子基板41の作動面41B側に設けられている。具体的には、音響整合層43は、素子基板41の開口部411A内に充填され、かつ、基板本体部411の作動面41B側から所定の厚み寸法で形成される。
音響レンズ44は、音響整合層43上に設けられ、図1に示すように、筐体21のセンサー窓21Bにから外部に露出する。
これらの音響整合層43や音響レンズ44は、超音波トランスデューサー51から送信された超音波を測定対象である生体に効率よく伝搬させ、また、生体内で反射した超音波を効率よく超音波トランスデューサー51に伝搬させる。このため、音響整合層43及び音響レンズ44は、素子基板41の超音波トランスデューサー51の音響インピーダンスと、生体の音響インピーダンスとの中間の音響インピーダンスに設定されている。
【0033】
[配線基板23の構成]
配線基板23は、図5に示すように、封止板42の貫通電極422に対応する配線端子部231を有し、この配線端子部231に対して貫通電極422が例えば半田等の導電性の接合部材232により接合される。
【0034】
また、配線基板23は、超音波デバイス22を駆動させるためのドライバ回路等が設けられている。具体的には、配線基板23は、図2に示すように、選択回路233、送信回路234、受信回路235、及びコネクタ部236(図3参照)を備えている。
選択回路233は、制御装置10の制御に基づいて、超音波デバイス22と送信回路234とを接続する送信接続、及び超音波デバイス22と受信回路235とを接続する受信接続を切り替える。
送信回路234は、制御装置10の制御により送信接続に切り替えられた際に、選択回路233を介して超音波デバイス22に超音波を発信させる旨の送信信号を出力する。
受信回路235は、制御装置10の制御により受信接続に切り替えられた際に、選択回路233を介して超音波デバイス22から入力された受信信号を制御装置10に出力する。受信回路235は、例えば低雑音増幅回路、電圧制御アッテネーター、プログラマブルゲインアンプ、ローパスフィルター、A/Dコンバーター等を含んで構成されており、受信信号のデジタル信号への変換、ノイズ成分の除去、所望信号レベルへの増幅等の各信号処理を実施した後、処理後の受信信号を制御装置10に出力する。
コネクタ部236は、送信回路234、受信回路235に接続されている。また、コネクタ部236にはケーブル3が接続されており、上述したように、このケーブル3は、筐体21の通過孔21Cから引き出されて制御装置10に接続されている。
【0035】
[超音波デバイス22の配線基板23への実装方法]
図6は、本実施形態における超音波デバイス22の配線基板23への実装方法を示す図である。
本実施形態では、上述したように、超音波デバイス22は、素子基板41に対して封止板42が接合され、封止板42の素子基板41の各電極パッド414P,416Pに対向する位置に貫通電極422が設けられ、接合部材423により接合されている。
このため、超音波デバイス22と配線基板23との接続は、まず図6(A)に示すように、配線基板23の貫通電極422に対向する位置に設けられた配線端子部231に対して、例えば半田等の導電性の接合部材232を設ける。
この後、図6(B)(C)に示すように、超音波デバイス22を配線基板23の法線方向から重ね合せ、押圧部材等により押圧する。これにより、貫通電極422と配線端子部231とが、接合部材232により接合され、容易に超音波デバイス22を配線基板23に実装できる。
このようなフェースダウン実装では、図7に示す従来例のような、FPC71と封止板72における開口73の角部との接触による断線がなく、配線信頼性が向上する。また、FPC71の張力による超音波デバイスの浮きがないので、超音波トランスデューサーアレイ50から所望方向に精度よく超音波を送信することができ、また、所望方向から超音波を精度よく受信することができる。
【0036】
[制御装置10の構成]
制御装置10は、図2に示すように、例えば、操作部11と、表示部12と、記憶部13と、演算部14と、を備えて構成されている。この制御装置10は、例えば、タブレット端末やスマートフォン、パーソナルコンピューター等の端末装置を用いてもよく、超音波プローブ2を操作するための専用端末装置であってもよい。
操作部11は、ユーザーが超音波測定装置1を操作するためのUI(user interface)であり、例えば表示部12上に設けられたタッチパネルや、操作ボタン、キーボード、マウス等により構成することができる。
表示部12は、例えば液晶ディスプレイ等により構成され、画像を表示させる。
記憶部13は、超音波測定装置1を制御するための各種プログラムや各種データを記憶する。
演算部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算回路や、メモリー等の記憶回路により構成されている。そして、演算部14は、記憶部13に記憶された各種プログラムを読み込み実行することで、送信回路234に対して送信信号の生成及び出力処理の制御を行い、受信回路235に対して受信信号の周波数設定やゲイン設定などの制御を行う。
【0037】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、素子基板41の背面41A側に、超音波トランスデューサーアレイ50を構成する各超音波トランスデューサー51及び超音波トランスデューサー51に接続される電極線(下部電極線414B、下部端子電極線414C、上部電極線416D、上部端子電極416E)が設けられている。そして、素子基板41の背面41Aに対して封止板42が設けられており、この封止板42は、端子領域Ar2に対向する位置に、上記電極線の端部である電極パッド414P,416Pと導通する貫通電極422が設けられている。
このような構成では、超音波プローブ2において生体と接触する面とは反対側となる素子基板41の背面41A側に、超音波トランスデューサーアレイ50や各電極線が設けられる構成となるので、超音波プローブ2と生体との間にジェル等の液体が介在し、センサー窓21Bの隙間から液体が侵入しても、各超音波トランスデューサー51や電極線に液体が付着せず、故障や測定エラー等の動作不良を抑制することができる。
【0038】
また、封止板42が設けられることで、素子基板41が薄型である場合でも素子基板41の強度を補強でき、衝撃等による破損を抑制できる。また、封止板42の端子領域Ar2に対向して貫通電極422が設けられているので、素子基板41の各電極パッド414P,416Pと配線基板23の配線端子部231とをフェースダウン実装にて容易に接続させることができる。よって、従来のようなFPCを用いた接続を用いた構成に比べて、超音波の送受信精度を向上させることができ、かつ配線信頼性も向上させることができる。
【0039】
本実施形態では、素子基板41は、各超音波トランスデューサー51に対応した開口部411Aを有し、この振動膜412により開口部411Aの背面41A側が閉塞され、振動膜412の背面41A側に圧電素子413が設けられている。
このような構成では、圧電素子413を駆動させて薄膜状の振動膜412を振動させることで、超音波を送出することができ、また、振動膜412の振動を圧電素子413にて検出することで、超音波を受信することができる。また、開口部411Aの背面41A側に振動膜412が設けられているので、例えば開口部411Aの作動面41B側に振動膜412が設けられ、開口部411A内に圧電素子413を設ける構成に比べて、圧電素子413の形成が容易となり、また、各圧電素子413から引き出される電極線(下部電極線414B、下部端子電極線414C、上部電極本体416C、上部電極線416D)を平坦な振動膜412上に形成できるため、これらの電極線の断線を抑制できる。
【0040】
本実施形態では、超音波トランスデューサーアレイ50は、X方向に沿って配置された複数の超音波トランスデューサー51により超音波トランスデューサー群51Aが構成され、当該超音波トランスデューサー群51Aに属する各超音波トランスデューサー51では、下部電極414が共通であり、隣接する超音波トランスデューサー51の下部電極本体414A同士が下部電極線414Bにより接続されている。そして、これらの超音波トランスデューサー群51Aの端部に位置する超音波トランスデューサー51は、下部端子電極線414Cにより端子領域Ar2に引き出され、第一電極パッド414Pから第一貫通電極422Aを介して配線基板23に接続される。また、上部電極416は、Y方向に沿って配列された素子電極部416Aと、素子電極部416Aの両端部に設けられて、隣り合う素子電極部416A同士を接続する共通電極部416Bとを備え、共通電極部416Bが端子領域Ar2に引き出され、第二電極パッド416Pから第二貫通電極422Bを介して配線基板23に接続される。つまり、超音波トランスデューサーアレイ50内の全ての超音波トランスデューサー51の上部電極416は、共通(同電位)となる。
このような構成では、配線基板23において、第二貫通電極422Bと接続される配線端子部231は、グラウンド回路等に接続されることで、共通電位(例えば0電位)に設定される。一方、配線基板23において、第一貫通電極422Aと接続される配線端子部231は、選択回路233を介して送信回路234や受信回路235に接続される。超音波送信時には、送信回路234から送信信号が印加されることで、また、超音波受信時には、受信回路235に検出信号が入力できる。これにより、超音波トランスデューサーアレイ50をー次元アレイ構造として取り扱うことができる。
【0041】
[変形例]
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、及び各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0042】
上記実施形態では、超音波トランスデューサーアレイ50において、X方向に並ぶ複数の超音波トランスデューサー51により超音波トランスデューサー群51Aを構成し、当該超音波トランスデューサー群51AがY方向に並ぶ1次元アレイ構造を例示したが、これに限定されない。例えば、各超音波トランスデューサー51の下部電極414がそれぞれ個別に引き出され端子領域Ar2まで引き出され、それぞれ個別に貫通電極422を介して配線基板23に接続されてもよい。この場合、各超音波トランスデューサー51を個別に駆動させることが可能となり、超音波トランスデューサーアレイ50を2次元アレイとして駆動させることが可能となる。
【0043】
上記実施形態では、超音波トランスデューサーアレイ50を構成する全ての超音波トランスデューサー51の上部電極416が共通電極部416Bにより接続されている構成を例示したが、これに限定されない。例えば、各超音波トランスデューサー51の上部電極416がそれぞれ個別に端子領域Ar2に引き出され、それぞれ貫通電極422(第二貫通電極422B)に接続されていてもよい。
また、下部電極414と同様に、超音波トランスデューサー群51Aを構成する超音波トランスデューサー51で、上部電極416を互いに連結し、端子領域Ar2まで引き出す構成としてもよい。
【0044】
上記実施形態では、素子基板41における超音波トランスデューサーアレイ50が設けられたアレイ領域Ar1の−X側及び+X側に端子領域Ar2が設けられる構成としたが、例えば、−X側及び+X側のいずれか一方にのみ端子領域Ar2が設けられる構成としてもよい。また、超音波トランスデューサーアレイ50の±Y側に端子領域Ar2を設け、当該端子領域Ar2に引き出された電極線に対応して封止板42に貫通電極422を設けてもよい。
【0045】
超音波測定装置1として、生体の内部断層構造を測定するための構成を例示したが、その他、例えばコンクリート建築物等のコンクリート内部構造を検査するための測定機等として用いることもできる。
また、超音波デバイス22を備えた超音波測定装置1を例示したが、その他の電子機器に対しても適用できる。例えば、超音波を洗浄対象に対して送出し、線状対象を超音波洗浄する超音波洗浄機等に用いることができる。
図8は、超音波洗浄機の概略構成を示す図である。
図8に示す超音波洗浄機8は、洗浄槽81と、洗浄槽81の例えば底面に設置された超音波モジュール82と、を備える。
超音波モジュール82は、上記実施形態と同様の超音波デバイス22と、超音波デバイス22を制御する配線基板83とを備えている。すなわち、超音波デバイス22は、作動面41Bが洗浄槽81の内面に臨む素子基板41と、素子基板41の背面41A側に設けられた封止板42とを備え、素子基板41の背面41A側に、複数の超音波トランスデューサー51(図8においては図示略)により構成された超音波トランスデューサーアレイ50(図8においては図示略)と、超音波トランスデューサーアレイ50のアレイ領域Ar1(図8においては図示略)の外側に引き出された電極線とを備えている。そして、電極線は、アレイ領域Ar1外の端子領域Ar2において、封止板42に設けられた貫通電極422に接続され、当該貫通電極422は、配線基板83に設けられた配線端子部(図示略)に電気的に接続される。
このような構成において、配線基板83に対して超音波デバイス22をフェースダウン実装にて容易に実装することができる。また、素子基板41の作動面41B側が洗浄槽81側に面するので、背面41A側に設けられた超音波トランスデューサー51や電極線の防水性を高めることができる。
【0046】
上記実施形態では、素子基板41に開口部411Aが設けられる構成としたが、例えば素子基板41に開口部411Aが設けられず、超音波トランスデューサー51が素子基板41自体を振動させることで超音波を送出させ、素子基板41の振動により超音波の受信を検出する構成などとしてもよい。
また、開口部411Aの背面41A側に振動膜412を設ける構成を例示したが、例えば、開口部411Aの作動面41B側に振動膜412が設けられ、この振動膜412の背面41A側に超音波トランスデューサー51を構成する圧電素子413が設けられる構成としてもよい。
【0047】
上記実施形態では、開口部411Aが設けられた基板本体部411の背面41A側に振動膜412が設けられる構成としたが、これに限定されない。例えば、基板本体部411の作動面41B側に、各超音波トランスデューサー51に対応した複数の凹溝が設けられ、当該凹溝の底面を振動膜とする構成としてもよい。
【0048】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で上記各実施形態及び変形例を適宜組み合わせることで構成してもよく、また他の構造などに適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…超音波測定装置、2…超音波プローブ、8…超音波洗浄機(電子機器)、22…超音波デバイス、23…配線基板、24…超音波センサー(超音波モジュール)、41…素子基板、41A…背面(第一面)、41B…作動面(第二面)、42…封止板、50…超音波トランスデューサーアレイ、51…超音波トランスデューサー、51A…超音波トランスデューサー群、82…超音波モジュール、83…配線基板、231…配線端子部、232…接合部材、411…基板本体部、411A…開口部、411B…支持部、412…振動膜、413…圧電素子、414…下部電極(第一電極)、414A…下部電極本体、414B…下部電極線(第一電極線)、414C…下部端子電極線(第一電極線)、414P…第一電極パッド(第一電極線)、415…圧電膜、416…上部電極、416A…素子電極部、416B…共通電極部(第二電極線)、416C…上部電極本体、416D…上部電極線(第二電極線)、416E…上部端子電極(第二電極線)、416P…第二電極パッド(第二電極線)、421…凹溝、422…貫通電極、422A…第一貫通電極、422B…第二貫通電極、423…接合部材、Ar1…アレイ領域、Ar2…端子領域、Ar3…アレイ対向領域。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8