(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記準備駆動力まで所定時間をかけて上昇させる際に、前記電動フェーダに印加する駆動力を、直線的に上昇させることを特徴とする請求項1または2に記載の電動フェーダ駆動装置。
前記所定時間が経過した後に、前記準備駆動力から前記所定の駆動力まで一気に上昇させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電動フェーダ駆動装置。
【背景技術】
【0002】
舞台やスタジオ等に用いられる照明においては、照明の明るさを制御する調光装置を用いることによって、使用目的(シーン)に応じた最適な明るさを得るようにしている。調光装置には、電動フェーダを備え、電動フェーダを調整することにより、照明の明るさを制御するものがある。また、調光装置には、様々なシーンに応じた明るさを得るための機能が複数設けられたものもあり、これらの複数の機能を効果的に活用することによって、シーンに応じた演出をより効果的に図るための明るさの制御を可能にしている。
また、ディジタルミキサは、入力チャンネルからの信号をミキシングするバスと、ミキシングされた信号を出力する出力チャンネルを備えている。ディジタルミキサでは、電動フェーダ等の操作子を調整することにより、音信号の音量や音色などの音響特性を、使用目的(シーン)に応じて最もふさわしく表現していると思われる状態に設定している。
コンピュータ制御の調光装置やディジタルミキサでは、一度設定した様々なシーンを再現することができるように電動フェーダを含む操作子の設定状態を、シーンデータとしてシーンメモリ等にストアすることができる。そして、指定されたシーンのシーンデータを読み出すことにより、電動フェーダをそのシーンでのフェーダ位置になるよう駆動して、そのシーンを再現することができる。電動フェーダは、手動で所望の位置になるよう移動できると共に、自動駆動により所望の位置になるよう移動することができる。
【0003】
電動フェーダの構成の一例を
図6(a)(b)に示す。
図6(a)は、電動フェーダ100の構成を示す斜視図で有り、
図6(b)は、電動フェーダ100の分解図である。これらの図に示す電動フェーダ100は、略コ字状に折り曲げられて形成された金属板からなる枠体101と、この枠体101の一端側に取り付けられたモータ102と、このモータ102の回転軸に結合された駆動プーリ103およびスペーサ110と、枠体101の他端側に配設された可動部材104と、この可動部材104に軸支された従動プーリ105と、駆動プーリ103と従動プーリ105との間に張架された環状のベルト106と、このベルト106に結合された移動体107と、この移動体107がモータ102の回転に伴って枠体101の長手方向に移動することにより抵抗値が調整されるように枠体101に取り付けられた可変抵抗器部108とから主に構成されている。枠体101は、金属板を打ち抜き折り曲げて断面が略コ字状の長尺状に形成されており、中央に平板状の板状部101aを有し、この板状部101aの長手方向に沿った両側部には板状部101aと略直交して互いに対向する一対の側壁101b、101bを有している。また、一対の側壁101b、101bの上面側の両側には、丸孔101dを有する一対の架橋部101c、101cが設けられている。また、板状部101aの中央には、長手方向に延設された矩形状の長窓孔101eが設けられており、この長窓孔101eに可変抵抗器部108のレバー114aが挿通され、長手方向に移動可能に配設されている。ガイド部104cは、ネジ112を締め付けたときに枠体101の側壁101bに押し付けられて可動部材104が動きにくくなり、調整したテンションを維持して可動部材104を枠体101に固定している。
【0004】
レバー114aに形成された角穴に、移動体107の中央部から突出して設けられている矩形状のレバー支持部が係合されて、移動体107がレバー114aに連結され、移動体107と共にレバー114aが移動する。なお、枠体101と可変抵抗器部108とは上下左右に抜け止めされて一体的に係合されている。また、レバー114aの上部に図示しないノブが固着されており、このノブを把持してレバー114aを長窓孔101eに沿って手動で移動させると、可変抵抗器部108の抵抗値を手動で調整することができる。
可変抵抗器部108は、金属板等を折り曲げることにより矩形状の箱型に形成された金属ケース113と、この金属ケース113内の長手方向に橋渡された棒状の一対の金属シャフト113aと、この金属シャフト113aに摺動可能に保持された、図示しない帯状の抵抗体及び集電体と摺接する導電性の薄板金属板からなる摺動子を備える摺動子受とから構成されている。
【0005】
このような電動フェーダは電動フェーダ駆動装置により駆動され、電動フェーダ駆動装置は、目標位置指令が与えられると、現在位置を検出して、目標位置との差に応じてモータを駆動することにより、目標位置まで移動体107を移動させるようにしている。電動フェーダは、目標とする位置にスムーズかつ正確に移動することが要求される。この場合、目標とする位置にオーバーシュートすることなく停止させるためには、動作スピードを比較的低速にする必要があり、これはモータを比較的低い駆動電力で駆動することで実現される。ところが、モータを低い電力で駆動すると、電動フェーダの動作特性のばらつきや経年変化により、十分な駆動トルクが得られない場合があり、目標位置に到達する手前で停止してしまうことがある。このような動作特性のばらつきや経年変化の影響を防止するには、駆動電力をやや高めに設定しなければならず、このためオーバーシュートが発生するおそれが生じることになる。
【0006】
これを解決するために、従来の電動フェーダ駆動装置では、電動フェーダの現在位置と目標位置との間の距離に応じて、駆動力を制御することが行われている。また、電動フェーダの目標位置までの到達時間を、位置検出手段の出力を利用してモータ制御手段が動作中に計測して、到達時間が所定より長い場合は、電動フェーダの移動速度を向上するよう補正制御し、また、電動フェーダの移動速度を検出し、速すぎる場合は駆動をオフさせることが行われている(特許文献1,2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の電動フェーダ駆動装置においては、電動フェーダが駆動された際に音が発生していた。これは、電動フェーダの駆動系に遊びが設けられており、この遊びに起因して音が発生したり、駆動系を構成するベルトに急に駆動力が印加されると、ベルトが撓むことに起因して音が生じることがあるからである。このような、電動フェーダの駆動時に生じる音は、周囲の環境に悪影響を与える。以降の説明では、この周囲の環境に悪影響を与える音を「ノイズ」という。例えば、調光装置の電動フェーダの場合は、電動フェーダの駆動時に舞台やスタジオにおいてノイズが聞こえるおそれがあることになり、ディジタルミキサの電動フェーダの場合は、音響信号の操作をしている際に電動フェーダが駆動されるとノイズが発生するおそれがある。
そこで、本発明は、電動フェーダを駆動した際に動作音を静かにすることができる電動フェーダ駆動装置および電動フェーダ駆動プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の電動フェーダ駆動装置は、電動フェーダのフェーダ位置を移動させる目標位置を指示する目標位置指示手段と、該目標位置指示手段から前記目標位置の指示を受けて、指示された目標位置に前記電動フェーダのフェーダ位置を移動させるよう駆動する駆動手段とを備え、前記駆動手段は、電動フェーダのフェーダ位置を指示された目標位置に移動させるよう駆動する際に、前記電動フェーダ
の駆動部を動かせる最も弱い駆動力である最低駆動力に満たない
と共に前記駆動部にテンションがかかった状態となる準備駆動力まで所定時間をかけて上昇させ、該所定時間が経過した後に、前記最低駆動力以上の所定の駆動力を前記電動フェーダに印加して、前記電動フェーダのフェーダ位置を目標位置まで移動させ
、前記所定時間は前記駆動部に前記準備駆動力が印加されるまでの時間とされていることを最も主要な特徴としている。
【0010】
また、上記した本発明の電動フェーダ駆動装置においては、前記所定時間を、約10ms以上としている。
また、上記した本発明の電動フェーダ駆動装置においては、前記準備駆動力まで所定時間をかけて上昇させる際に、前記電動フェーダに印加する駆動力を、直線的に上昇させるようにしている。
また、上記した本発明の電動フェーダ駆動装置においては、前記所定時間が経過した後に、前記準備駆動力から前記所定の駆動力まで一気に上昇させるようにしている。
また、上記した本発明の電動フェーダ駆動装置においては、前記
駆動部は、モータと、該モータの駆動力を伝達するベルトとを少なくとも
含むようにしている。
また、上記した本発明の電動フェーダ駆動装置においては、前記電動フェーダを、音声信号を扱う電子機器に搭載するようにしている。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の電動フェーダ駆動プログラムは、コンピュータに、電動フェーダのフェーダ位置を移動させる目標位置を指示する目標位置指示ステップと、該目標位置指示ステップから前記目標位置の指示を受けて、指示された目標位置に前記電動フェーダのフェーダ位置を移動させるよう駆動する駆動ステップとからなる手順を実行させ、前記駆動ステップでは、前記電動フェーダのフェーダ位置を指示された目標位置に移動させるよう駆動する際に、前記電動フェーダ
の駆動部を動かせる最も弱い駆動力である最低駆動力に満たない
と共に前記駆動部にテンションがかかった状態となる準備駆動力まで所定時間をかけて上昇させ、該所定時間が経過した後に、前記最低駆動力以上の所定の駆動力を前記電動フェーダに印加して、前記電動フェーダのフェーダ位置を目標位置まで移動させ
、前記所定時間は前記駆動部に前記準備駆動力が印加されるまでの時間とされていることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電動フェーダ駆動装置および電動フェーダ駆動プログラムでは、電動フェーダのフェーダ位置を指示された目標位置に移動させるよう駆動する際に、電動フェーダを動かせる最も弱い駆動力である最低駆動力に満たない準備駆動力まで所定時間をかけて上昇させ、該所定時間が経過した後に、最低駆動力以上の所定の駆動力を電動フェーダに印加している。これにより、電動フェーダが動き出す際に、駆動部に動き出さない程度のテンションがかかり、テンションがかかった状態において移動させることのできる駆動力が印加されることから、電動フェーダを駆動した際に動作音を静かにすることができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、本発明の実施例の電動フェーダ駆動装置1の構成を示す機能ブロック図を
図1に示す。
図1に示す本発明にかかる電動フェーダ駆動装置1は、電動フェーダ2のフェーダ位置が目標位置になるよう移動制御する装置であり、フェーダ位置制御手段11、モータ制御手段12、駆動部13、位置検出部14、CPU(Central Processing Unit)15を備えている。このうち、CPU15は、電動フェーダ駆動装置1の動作を統括制御する制御手段であり、図示しない記憶手段に記憶された所要のプログラムを実行することにより、フェーダ駆動処理を実行して、電動フェーダ2のフェーダ位置が目標位置になるよう移動制御している。この移動制御をモータ駆動による移動操作という。また、ノブ2aを把持して移動することもでき、この手動操作により、フェーダ位置を目標位置に移動させることもできる。電動フェーダ2は調光装置やディジタルミキサ等に備えられるが、以下の説明ではディジタルミキサに電動フェーダ2が搭載され、ディジタルミキサが本発明にかかる電動フェーダ駆動装置1を備える場合について主に説明するものとする。この場合には、CPU15はディジタルミキサに搭載されているCPUとなる。なお、電動フェーダ2をモータ駆動による移動操作あるいは手動操作することにより、調光装置においては照明の明るさを調整することができ、ディジタルミキサにおいては複数チャンネルのレベル調整、イコライジング、エフェクト付与等を行うことができる。
【0015】
フェーダ位置制御手段11により電動フェーダ2がフェーダ位置制御される1つの場合は、シーンを再現するシーンリコールが行われた場合である。この場合、ディジタルミキサに保存された各シーンには、それぞれフェーダ位置のデータが含まれている。そして、1つのシーンが選択されリコールされたとき、そのシーンにおける位置データに対応する当該電動フェーダ2の目標位置のデータをCPU15の制御の基でフェーダ位置制御手段11が生成する。また、シーンの切り換え時、どのくらいの速さで新しいシーンのフェーダ位置へ移動するかを制御する移行レートのパラメータがある。最大レート以外の移行レートが設定された場合、フェーダ位置制御手段11はCPU15の制御の基で、位置データの示す最終的な目標位置までの間に複数の目標位置を設定し、移行レートに応じたタイミングでモータ制御手段12に対し設定した目標位置を指示するデータを順次供給する。モータ制御手段12は目標位置に電動フェーダ2を移動させる駆動情報を駆動部13に供給する。これにより、電動フェーダ2が駆動部13により駆動されて、目標位置になるよう移動操作される。
【0016】
また、ディジタルミキサにはフェーダ位置を設定できるユーザインタフェース(UI)の画面が用意され、表示器に表示されたUI画面上においてユーザがフェーダ位置を操作した場合、操作に応じた設定位置情報Iがフェーダ位置制御手段11に供給される。この時は、設定位置情報Iに応じた目標位置のデータをCPU15の制御の基でフェーダ位置制御手段11が作成して目標位置を指示するデータをモータ制御手段12に送り、モータ制御手段12は目標位置に電動フェーダ2を移動させる駆動情報を駆動部13に供給する。これにより、電動フェーダ2が駆動部13により駆動されて、設定位置情報Iに応じた目標位置になるよう移動操作される。すなわち、ユーザがUI画面上においてフェーダ位置を操作すると、操作されたフェーダに対応する電動フェーダ2のフェーダ位置がユーザの操作に応じて移動していくようになる。
【0017】
さらに、シーンのリコール操作のイベントやフェーダ操作のイベントが、その操作のあった時刻を示すタイムスタンプを付与されて、シーケンスとして記録されている場合がある。このシーケンスデータが再生された時は、再生タイミングに達したフェーダ移動イベントに対応する目標位置を指示するデータがフェーダ位置制御手段11で生成されてモータ制御手段12に供給される。モータ制御手段12は目標位置に電動フェーダ2を移動させる駆動情報を駆動部13に供給する。これにより、電動フェーダ2が駆動部13により駆動されて、目標位置になるよう移動操作される。これにより、タイムスタンプで示されるフェーダ移動イベントの再生タイミングに達する毎に、フェーダ位置制御手段11およびモータ制御手段12により電動フェーダ2のフェーダ位置がフェーダ移動イベントに対応する位置になるよう移動操作される。
【0018】
なお、電動フェーダ2はディジタルミキサに複数個搭載されているが、
図1においては、その1つの電動フェーダ2だけが示されている。この電動フェーダ2は、
図6に示す構成の電動フェーダ100とすることができる。この場合、電動フェーダ2は、
図6に示すように本体とされる枠体101と、この枠体101の一端側に取り付けられたモータ102と、このモータ102の回転軸に結合された駆動プーリ103と、枠体101の他端側に配設された可動部材104と、この可動部材104に軸支された従動プーリ105と、駆動プーリ103と従動プーリ105との間に張架された環状のベルト106と、このベルト106に結合された移動体107と、この移動体107がモータ102の回転に伴って枠体101の長手方向に移動することにより抵抗値が調整されるように枠体101に取り付けられたスライド式の可変抵抗器部108とから主に構成される。また、レバー114aの上部にノブ2aが固着されており、このノブ2aを把持してレバー114aを長窓孔101eに沿って手動で移動させることにより、可変抵抗器部108の抵抗値を手動操作で調整することもできる。
【0019】
本発明にかかる電動フェーダ駆動装置1の特徴的な動作を説明すると、フェーダ位置制御手段11は、CPU15の制御の基で、電動フェーダ2の目標位置を指示するデータおよび動作モードを指示するデータを生成している。生成された目標位置および動作モードを指示するデータは、モータ制御手段12に送られる。目標位置は、電動フェーダ2をその位置まで移動させるフェーダ位置であり、目標位置を指示するデータは目標位置を特定できるデータとされている。動作モードは、電動フェーダ2を高速駆動することにより目標位置まで移動させる「高速移動モード」と、電動フェーダ2を静音化を重視して駆動することにより目標位置まで移動させる「静音移動モード」とされ、動作モードを指示するデータは、いずれかの動作モードを指定している。この場合、フェーダ位置制御手段11は、電動フェーダ2の現在位置と目標位置との差である移動させる距離の大きさに応じて指定する動作モードを切り替えている。電動フェーダ2の現在位置は、位置検出部14からフェーダ位置制御手段11に通知される。
【0020】
フェーダ位置制御手段11から目標位置および動作モードを指示するデータをモータ制御手段12が受け取ると、動作モードおよび目標位置が指示されたモータ制御手段12は、指定された動作モードに設定され、CPU15の制御の基で、位置検出部14により検出された電動フェーダ2の現在位置と、供給された目標位置との差である残りの距離と、その符号を算出する。そして、算出された差およびその符号と、設定された動作モードとに応じた駆動情報を生成する。この駆動情報を駆動部13に供給する。駆動部13は供給された駆動情報に応じて駆動信号を発生し、駆動信号を電動フェーダ2に印加してモータを駆動する。電動フェーダ2のモータが駆動されると、駆動に伴いノブ2aが目標位置に向かって移動していく。移動中における電動フェーダ2の現在位置情報は位置検出部14により検出され、モータ制御手段12にフィードバックされる。このモータ制御手段12、駆動部13、電動フェーダ2、位置検出部14でフィードバックループが構成され、上記差である残りの距離がゼロになるようサーボ制御が行われることで、電動フェーダ2のフェーダ位置が目標位置になるよう移動制御される。
【0021】
この場合、フェーダ位置制御手段11が目標位置を生成した際に、現在位置と目標位置との差である移動させる距離が大きい場合は、モータ制御手段12に高速移動モードを指示するデータを送る。これにより、高速移動モードに設定されたモータ制御手段12は、後述する基本駆動力で電動フェーダ2を駆動する駆動情報を駆動部13に供給する。すると、駆動部13により基本駆動力で駆動された電動フェーダ2は高速で移動して目標位置に到達するサーボ制御が行われるようになる。なお、モータ制御手段12が設定する駆動力には、電動フェーダ2を動かせることができる最も低い駆動力である最低駆動力、最も高い駆動力である上限駆動力、最低駆動力を大きく超えるが上限駆動力よりは小さい基本駆動力、最低駆動力を超えるが基本駆動力よりは小さい静音駆動力が定義されている。
【0022】
また、フェーダ位置制御手段11が目標位置を生成した際に、現在位置と目標位置との差である移動させる距離が大きくない場合は、モータ制御手段12に静音移動モードを指示するデータを送る。これにより、静音移動モードに設定されたモータ制御手段12は、静音駆動力で電動フェーダ2を駆動する駆動情報を駆動部13に供給する。すると、駆動部13により静音駆動力で駆動された電動フェーダ2は静かに移動して目標位置に到達するサーボ制御が行われるようになる。このように、現在位置と目標位置との移動させる距離の大きさに応じて動作モードを切り替えることで、総合的に高速化と静音化を実現することができる。なお、動作モードは現在位置から目標位置までの移動させる距離に応じて自動で切り替わるため、ユーザは動作モードを意識する必要はない。この場合、自動で動作モードが切り替わる距離は、約5mm〜約15mmとするのが好ましい。また、動作モードは駆動する前にいずれかの動作モードがフェーダ位置制御手段11で選択され、電動フェーダ2の移動中に動作モードが切り替わることはない。
【0023】
ここで、駆動部13の構成を
図2に示す。駆動部13はモータ制御手段12から供給される駆動情報に応じたパターン波形を発生するパターン波形発生部21を有している。駆動情報には、電動フェーダ2を駆動する方向および駆動力を指示するデータ、駆動のオン・オフ信号が含まれており、パターン波形発生部21は指示された駆動力に応じてモータを駆動する駆動信号を発生する。このパターン波形発生部21はPWM(Pulse Width Modulation)回路とされており、駆動力を指示するデータに応じたデューティ比のパルス波形を駆動信号として出力する。このPWM回路は、周期は一定で、指示された駆動力の大きさに応じて、パルス幅のデューティ・サイクル(パルス幅のHレベルとLレベルの比)を変え、電動フェーダ2のモータを駆動する回路である。パルスがオン(Hレベル)の期間は、モータへ電源電圧とほぼ同じ電圧が印加され、オフ(Lレベル)の期間はモータに電力は供給されないため、モータのPWM制御では、その平均電力は低くなる。すなわち、パルス幅をPWM変調することによって結果的にモータへの供結エネルギーをコントロールしている。
【0024】
また、パターン波形発生部21で発生されたPWM波形の駆動信号はアンドゲート22の一方へ入力され、アンドゲート22の他方の入力にはモータ制御手段12から供給される駆動のオン・オフ信号が供給される。ここで、モータ制御手段12は電動フェーダ2を駆動する期間はオン信号を発生し、これにより、アンドゲート22はパターン波形発生部21により発生された駆動信号を出力して、ドライブ回路23に供給する。ドライブ回路23は、電動フェーダ2のモータを駆動できる駆動電力の駆動信号を出力する回路であり、モータ制御手段12から供給される方向を指示するデータに応じて電流(電圧)方向を変更して駆動信号として出力している。
【0025】
次に、フェーダ位置制御手段11がモータ制御手段12に高速移動モードを指示した時の駆動信号Dの行程図を
図3(a)に示し、その際の電動フェーダ2におけるフェーダ位置Fの行程図を
図3(b)に示す。なお、駆動信号Dは駆動部13が発生するが、モータ制御手段12からの駆動情報に応じた駆動信号Dとされることから、ここでは、モータ制御手段12が駆動信号Dを発生するものとして説明する。
フェーダ位置制御手段11は、目標位置F1を生成した際に、目標位置F1と電動フェーダ2の現在位置Fc1との距離が大きい時は高速移動モードを指定する。フェーダ位置制御手段11は生成した目標位置F1および高速移動モードを指示するデータを、
図3(a)(b)に示す時刻t0でモータ制御手段12に供給する。これを受けたモータ制御手段12は高速移動モードに設定され、時刻t1において基本駆動力Pbの駆動信号Dを発生させるが、その前に、徐々に駆動力が上昇する駆動信号D1を時刻t0において発生し始める。駆動信号D1は、時刻t0から時刻t1までの一定時間とされる時間Tpreをかけて最低駆動力Pminに満たない駆動力Ppreに到達する傾斜信号とされており、プリチャージの駆動信号D1という。この「プリチャージ」とは、電動フェーダ2を目標位置に移動させる本駆動に先だって電動フェーダ2の駆動部を、最低駆動力Pminより小さい駆動力Ppreまで次第に上昇する駆動信号D1で駆動することをいう。これにより、移動しない程度であるが一定時間をかけて徐々に上昇するテンションが電動フェーダ2の駆動部に印加されていくようになる。すなわち、本駆動の前の準備駆動であり、駆動力Ppreを準備駆動力ということができる。ここで、「本駆動」とは電動フェーダ2を最低駆動力Pmin以上の駆動信号Dを電動フェーダ2に印加して、目標位置に向かってフェーダ位置を移動させる駆動を云う。電動フェーダ2を本駆動することに先立ちプリチャージすると、電動フェーダ2が本駆動された際に周囲の環境に悪影響を与える音である動作音を静かにすることができるようになる。
なお、プリチャージの駆動信号D1を印加する時間Tpreは少なくとも10msとされ、30ms〜40msがプリチャージの時間Tpreとして好ましい。また、プリチャージの駆動力Ppreは、最低駆動力Pminの約80%〜100%とするのが好ましい。この場合、駆動力Ppreが最低駆動力Pminに近づくほど効果は大きくなる。なお、駆動力Ppreを最低駆動力Pminの約30〜約80%に設定しても動作音を静かにする一定の効果は達せられる。
【0026】
プリチャージを行うと動作音を静かにできる理由を説明すると、
図6に示す構成の電動フェーダ100では、上記したように駆動部には遊び(ガタ)があり、駆動力が印加された時に、遊び(ガタ)に起因してノイズが発生する。また、ベルトにはたわみがあることから、ベルトに急に駆動力が印加された場合にベルトが暴れて(伸縮して)ノイズが発生する。そこで、本駆動に先立ってプリチャージを行うと、電動フェーダ2の駆動部にプリチャージの駆動信号D1により一定時間をかけて徐々に大きなテンションがかかって行き、ノイズが発生することなく遊び(ガタ)およびベルトに徐々に大きなテンションがかかっていく。このように駆動部にテンションがかかった状態で、本駆動が行われることから、電動フェーダ2を駆動した際に、静かな動作音で動き出して移動するようになる。
【0027】
プリチャージは時刻t1で終了し、時刻t1を超えると移動期間となる。モータ制御手段12は、時刻t1において基本駆動力Pbの駆動信号D2を発生させて本駆動を行う。駆動力は駆動力Ppreから基本駆動力Pbまで一気に上昇し、電動フェーダ2は目標位置F1に向かって移動開始するようになる。移動中のフェーダ位置Fは位置検出部14で検出されてモータ制御手段12にフィードバックされることから、モータ制御手段12は電動フェーダ2の現在位置および移動速度を検出することができる。モータ制御手段12は、移動速度が高速移動モードで予め設定されている目標速度になるよう基本駆動力Pbを若干増減する速度制御を行う。この速度制御は、上記したフィードバックループで行われ、
図3(a)に示すように、現在の移動速度に応じて基本駆動力PbをPb1〜Pb2の間で増減される。これにより、移動速度が目標速度になるよう制御される。時刻t2まで基本駆動力Pbで駆動された時に、モータ制御手段12において算出された現在位置と目標位置F1との差である残りの距離が所定の距離L1になったことをモータ制御手段12が検出したとする。これにより、モータ制御手段12は、時刻t2において目標位置と現在位置との距離(残りの距離)に応じて、駆動および制動、移動速度のサーボ制御を行い、傾斜曲線で下降していく駆動信号D3が発生されるようになる。電動フェーダ2には駆動力が急速に低下する駆動信号D3が印加されリリースされていく。この時、電動フェーダ2の慣性による移動は、自らの摩擦力による制動を受けて移動速度は急速に減速する。そして、
図3(b)に示すように時刻t3において目標位置F1に達して停止する。距離L1は、約10mm〜約20mmが好ましく、動きが重い電動フェーダ2は距離L1を短くし、動きが軽い電動フェーダ2では距離L1を長くする。
なお、電動フェーダ2を目標位置F1に停止させることは難しく、目標位置F1を行きすぎてしまうと、モータ制御手段12は逆方向に駆動して目標位置F1に戻すようにリトライを行うが、戻す際の駆動力が大きすぎてまた、行きすぎてしまうことがある。このような場合には、電動フェーダ2が振動を起こして異音が発生するので、リトライの回数を決めることにより、振動を防止することが好適である。
【0028】
次に、フェーダ位置制御手段11がモータ制御手段12に静音移動モードを指示した時の駆動信号Dの行程図を
図4(a)に示し、その際の電動フェーダ2におけるフェーダ位置Fの行程図を
図4(b)に示す。この場合も、モータ制御手段12が駆動信号Dを発生するものとして説明する。
フェーダ位置制御手段11は、目標位置F2を生成した際に、目標位置F2と電動フェーダ2の現在位置Fc2との距離が大きくない時は静音移動モードを指定する。フェーダ位置制御手段11は生成した目標位置F2および静音移動モードを指示するデータを、
図4(a)(b)に示す時刻t0でモータ制御手段12に供給する。これを受けたモータ制御手段12は静音移動モードに設定され、上述したプリチャージの駆動信号D1を時刻t0において発生し始めて、電動フェーダ2の駆動部をプリチャージする。プリチャージは前述したとおりであるのでその説明は省略する。
【0029】
プリチャージは時刻t11で終了し、時刻t11を超えると移動期間となる。モータ制御手段12は、時刻t11において基本駆動力Pbより小さい静音駆動力Psの駆動信号D12を発生させて本駆動を行う。駆動力は駆動力Ppreから静音駆動力Psまで一気に上昇し、電動フェーダ2は目標位置F2に向かって移動開始するようになる。移動中においてモータ制御手段12は、移動速度が静音移動モードで予め設定されている目標速度になるよう静音駆動力Psを若干増減する速度制御を行う。この速度制御は、上記したフィードバックループで行われ、
図4(a)に示すように、現在の移動速度に応じて静音駆動力PsをPs1〜Ps2の間で増減させ、これにより移動速度が目標速度になるようサーボ制御される。時刻t12まで静音駆動力Psで駆動された時に、モータ制御手段12において算出された現在位置と目標位置F2との差である残りの距離が所定の距離L2になったことをモータ制御手段12が検出したとする。これにより、モータ制御手段12は、時刻t12において目標位置と現在位置との距離(残りの距離)に応じて、駆動および制動、移動速度のサーボ制御を行い、ゆるやかな傾斜曲線で下降していく駆動信号D13が発生されるようになる。電動フェーダ2には駆動力が次第に低下する駆動信号D13が印加されてリリースされる。この時、電動フェーダ2の慣性による移動は、自らの摩擦力による制動を受けて移動速度は次第に減速する。そして、
図3(b)に示すように時刻t13において目標位置F2に達して停止する。距離L2は、約10mm〜約20mmが好ましく、動きが重い電動フェーダ2は距離L2を短くし、動きが軽い電動フェーダ2では距離L2を長くする。
【0030】
駆動信号D13は、時刻t13において駆動力Pposまで低下し、時刻t14から駆動力Pposを維持する駆動信号D14が発生される。この駆動信号D14をポストチャージの駆動信号という。「ポストチャージ」とは、電動フェーダ2を目標位置まで移動させた本駆動の後に、最低駆動力Pminより小さい駆動力Pposを電動フェーダ2の駆動部に一定時間Tpostにわたり印加し続けて、電動フェーダ2の駆動部に最低駆動力より小さいテンションを維持し続けることをいう。駆動力Pposを、後準備駆動力ということができる。これにより、本駆動の後に移動しない程度のテンションが電動フェーダ2の駆動部に印加し続けられることから、次の本駆動が行われた時に、動作音を静かにすることができるようになる。一定時間内に次の本駆動が行われない場合は、一定時間が経過した時の時刻t15でポストチャージを停止する。そして、時刻t15に達する前の時刻t14に次の目標値および動作モードが指示された場合は、モータ制御手段12は、時刻t14で駆動信号D1と同じ傾斜の駆動信号D1’を駆動力Ppreに到達するまで発生し、到達後に指示された動作モードに対応する本駆動の駆動信号を発生する。なお、ポストチャージにより動作音を静かにできる理由は、前述したプリチャージの場合と同様なので、その説明は省略する。
また、ポストチャージの駆動信号D14を印加する時刻t14から時刻t15までの一定時間Tpostは数10ms〜数百msとされ、約50msが好適となる。この時間Tpostが長すぎると、手動で電動フェーダ2を操作した際に動かしづらくなる。また、電動フェーダ2にタッチしたことを検出するタッチセンス機能が付いている場合は、電動フェーダ2にタッチされた際にポストチャージを停止するようにしても良い。ポストチャージの駆動力Pposは、最低駆動力Pminの約30%〜約50%とするのが好ましい。この場合、駆動力Pposを最低駆動力Pminの約50〜100%に設定しても動作音を静かにする効果があるが、目標位置に停止させにくくなる。また、次の本駆動が、ポストチャージが行われた際の移動方向とは逆方向であった場合は、ポストチャージを終了して新たにプリチャージを行うようにする。
【0031】
上記したように、高速移動モードでは、高速で移動するように駆動信号D2を大きい駆動力の基本駆動力Pbとして電動フェーダ2を高速移動させ、急速に減速することによりキュッと止めている。シーンリコールが行われる場合は、電動フェーダ2の現在位置とリコールされるシーンで設定された目標位置との距離が大きくなる場合が多いことから、高速移動モードが指示される場合が多い。また、静音移動モードでは、静音化を重視して駆動信号D12の駆動力を小さい静音駆動力Psとして電動フェーダ2をゆっくり移動させ、駆動力をゆっくり落として減速させて、ふわっと止めている。なお、高速移動モードおよび静音移動モードにおけるフェーダ位置制御手段11およびモータ制御手段12の上記した動作は、CPU15の制御の基で行われている。また、高速移動モードまたは静音移動モードにおける電動フェーダ2の駆動開始時には、プリチャージを行うことで動作音を静かにしている。この場合、プリチャージの初期値は0に限ることはない。さらに、静音移動モード時には、ポストチャージを行うことで動作音を静かにすることができる。なお、高速移動モード時においてはポストチャージの効果が低下することから、高速移動モード時にはポストチャージを行なわなくてもよい。
【0032】
静音移動モード時に、ポストチャージを行うことで動作音を静かにすることが効果的な場合を次に説明する。
電動フェーダ2を目標位置まで移動させる場合に、通常より長い時間をかけて移動させたい場合がある。フェードインやフェードアウトがその場合に該当する。電動フェーダ2は、一般に最大ストロークが80mmや100mmとされているが、最低駆動力で駆動しても数秒で100mmのストロークを移動してしまう。例えば、30秒かけて現在位置から目標位置まで移動させたい場合は、移行レートを設定して電動フェーダ2を間欠駆動する。すなわち、フェーダ位置制御手段11が最終的な目標位置までの間に複数の目標位置Fa1,Fa2,・・・を設定し、モータ制御手段12に対し目標位置Fa1,Fa2,・・・を順次指示するデータを移行レートに応じたタイミング毎に供給する。この間欠駆動により、例えば30秒かけて最終的な目標位置まで移動させられるようになる。このような場合には、電動フェーダ2をある目標位置まで移動させた本駆動の後に、次の目標位置までの本駆動が繰り返し何度も行われることになり、この際にポストチャージを行うと、ノイズの発生防止に効果的となる。また、複数の目標位置Fa1,Fa2,・・・における隣接する目標位置間の距離は短い距離となることから、動作モードは静音移動モードが自動的に設定されるようになる。なお、上記した間欠駆動を行う際に、間欠駆動モードのフラグをセットし、最終的な目標位置までの移動が完了した時に当該フラグをリセットするようにして、間欠駆動モードのフラグがセットされている期間だけポストチャージを行うようにしても良い。
【0033】
本発明の電動フェーダ駆動装置1において実行されるフェーダ駆動処理のフローチャートを
図5に示す。電動フェーダ駆動装置1がディジタルミキサに備えられている場合には、フェーダ駆動処理はディジタルミキサに搭載されているCPU15が実行することになる。
図5に示すフェーダ駆動処理は、ディジタルミキサの電源が投入されている間、所定タイミング毎に発生する割り込みでスタートする。フェーダ駆動処理がスタートすると、ステップS10にて電動フェーダ2が駆動されているか否かをCPU15が判断する。駆動されていない場合(S10のno)は、ステップS11に進み目標位置を指定するデータがフェーダ位置制御手段11からモータ制御手段12に指示されたか否かをCPU15が判断する。ここで、目標位置を指定するデータが指示されていない場合(S11のno)はフェーダ駆動処理が終了するが、電動フェーダ2が移動操作されるシーンリコール等のイベントがあり、目標位置を指定するデータが指示されたとして以下に説明する。
【0034】
目標位置を指定するデータが指示されている場合(S11のyes)は動作モードも指示されており、ステップS12に分岐して指示された動作モードが高速移動モードか否かをCPU15が判断する。フェーダ位置制御手段11から高速移動モードを指示するデータがモータ制御手段12に送られている場合(S12のyes)は、指示された目標位置と高速移動モードとが設定され、モータ制御手段12が
図3に示す高速移動モードのフェーダ制御パターンを発生するようセットされる(ステップS13)。また、フェーダ位置制御手段11から静音移動モードを指示するデータがモータ制御手段12に送られている場合(S12のno)は、指示された目標位置と静音移動モードとが設定され、モータ制御手段12が
図4に示す静音移動モードのフェーダ制御パターンを発生するようセットされる(ステップS14)。フェーダ制御パターンがモータ制御手段12にセットされると、電動フェーダ2の駆動が開始されることから、ステップS15にて、設定された動作モードがいずれであってもプリチャージの駆動信号D1が発生されてプリチャージが行われる。ステップS15の処理が終了した時は、フェーダ駆動処理は終了する。
【0035】
次の割り込みが発生してフェーダ駆動処理が再スタートすると、ステップS10にて電動フェーダ2が駆動されているか否かをCPU15が判断する。この場合は、電動フェーダ2が駆動されているので(S10のyes)、ステップS16に分岐し現在位置が、指定された目標位置から所定以内の距離にあるか否かをCPU15が判断する。この場合、フェーダ位置制御手段11から指示された目標位置と、位置検出部14から通知された電動フェーダ2の現在位置との差をモータ制御手段12が算出し、算出された差が所定以内の残りの距離、すなわち、高速移動モードに設定されている場合は距離L1以内、静音移動モードに設定されている場合は距離L2以内か否かをCPU15が判断する。所定以内の距離とされていない場合(S16のno)は、ステップS17に進んでフェーダ制御パターンとその時のタイミングとに応じた駆動信号を継続する。すなわち、現在がプリチャージの期間であればプリチャージの駆動信号D1を継続し、プリチャージの期間後であれば本駆動の駆動信号Dを継続して発生する。
【0036】
また、所定以内の距離とされている場合(S16のyes)は、ステップS18に分岐して現在位置が、指定された目標位置と同じであるか否かをCPU15が判断する。この場合もフェーダ位置制御手段11から指示された目標位置と、位置検出部14から通知された電動フェーダ2の現在位置との差をモータ制御手段12が算出し、算出された差が同じ位置と許容される差か否かをCPU15が判断する。同じ位置でない場合(S18のno)は、ステップS19に進む。この場合は、電動フェーダ2の現在のフェーダ位置が目標位置に達してはいないものの、残りの距離が短く目標位置に近づいたことからモータ制御手段12はリリースする駆動信号(D3またはD13)を発生する(S19)。また、同じ位置の場合(S18のyes)は電動フェーダ2の現在のフェーダ位置が目標位置に達したことから、ステップS20に分岐して、ポストチャージの駆動信号D14が発生されてポストチャージが行われる。なお、高速移動モードに設定されている場合は、ステップS20の処理をスキップしても良い。
ステップS17,S19,S20のいずれかの処理が終了するとステップS11に進むが、電動フェーダ2が駆動中の場合は、目標位置を指定するデータは指示されない(S11のno)ことから、フェーダ駆動処理は終了する。
上記したフェーダ駆動処理は所定のタイミング毎に繰り返し実行されることにより、指示された動作モードで電動フェーダ2のフェーダ位置が指示された目標位置まで移動していくようになる。
【0037】
本発明の電動フェーダ駆動装置1は、
図1,
図2に示す構成のハードウェアで実現できるが、上記したフェーダ駆動処理のプログラムをコンピュータにおいて実行することでも電動フェーダ駆動装置1を実現することができる。コンピュータは、CPUやプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)、メインメモリとされるRAM(Random Access Memory)を少なくとも備えるパーソナルコンピュータ(PC)とすることができる。コンピュータ制御のディジタルミキサは、PCと同様の構成を少なくとも含む制御部を備えていることから、電動フェーダ2がディジタルミキサに搭載されて、ディジタルミキサが本発明の電動フェーダ駆動装置1を備える場合は、ディジタルミキサの制御部によりフェーダ駆動処理のプログラムを実行するようになる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の電動フェーダ駆動装置を備えるディジタルミキサでは、ユーザが操作した電動フェーダの設定位置をメモリに記憶しておき、その後に必要に応じてシーンをリコールした際に、電動フェーダをそのシーンでのフェーダ位置になるよう駆動して、そのシーンを再現する機能(シーンリコール機能)や、MIDI信号によって外部のパソコン等から電動フェーダを駆動することにより、電動フェーダの設定位置をリアルタイム操作することもできる。さらに、オートミックス再生時に、再生タイミングで再生されたフェーダ移動イベントに応じて電動フェーダを駆動するようにしてもよい。
また、調光装置に電動フェーダが搭載され、調光装置が本発明にかかる電動フェーダ駆動装置を備える場合も、本発明の電動フェーダ駆動装置は以上説明したように機能する。これにより、本発明の電動フェーダ駆動装置を備える調光装置では、照明の明るさを制御する舞台やスタジオ等に用いられる照明において、使用目的(シーン)に応じた演出をより効果的に図るための最適な明るさの制御を行えるようになる。
以上説明した本発明の電動フェーダ駆動装置においては、プリチャージの駆動信号D1およびリリースする駆動信号(D3またはD13)を直線的に変位させたが、これに限ることはなく二次関数等の曲線状に変位させるようにしても良い。また、階段状に変位させても良いが、この場合の段差は細かい段差とする。また、プリチャージの終了後の本駆動において、駆動信号を一気に上昇させたが、急勾配で上昇させるようにしても良い。また、静音移動モードにおいて現在位置と目標位置との差である残りの距離が短く距離L2以内とされる場合は、プリチャージ後の本駆動における駆動力がリリースする駆動力とされる。この場合、電動フェーダによるが動きが重い電動フェーダの場合は当該駆動力を印加しても動き出さない場合がある。そこで、静音移動モード時においてはフェーダ位置が数mm動くまで大きな駆動力を一時的に印加するようにしてもよい。
本発明の電動フェーダ駆動装置は、駆動力を指示するデータに応じてPWMされた駆動信号としたが、駆動力を指示するデータに応じた可変電圧信号の駆動信号としても良い。また、電動フェーダのフェーダ位置を移動させるものとしたが、Tバーなどの操作子に適用してTバーを回動させるよう駆動してもよい。また、動作モードは現在位置から目的位置までの移動させる距離に応じて自動で切り替わることとしたが、ユーザが動作モードを選択できるようにしても良い。さらに、動作モードは高速移動モードと静音移動モードの2つとしたが、高速移動モードと静音移動モードとの間にやや高速でやや静音といった1つ以上の中間の動作モードを設けても良い。
なお、上記の説明ではプリチャージの駆動力Ppre、ポストチャージの駆動力Ppos、減速処理を行う距離L1および距離L2をある範囲で示したが、電動フェーダの種類や電動フェーダの個々のバラツキにより上記駆動力や上記距離の最適値は異なるようになる。そこで、電動フェーダの基本特性を測定して基本パラメータを作成し、この基本パラメータを基準に、ある範囲の中で個々のバラつきを吸収するように、上記駆動力や上記距離の最適値を調整するのがよい。