(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分散解消部は、前記画像取出部を形成する材料との屈折率差が0.01未満であるものにより形成され、映像光の入射面に対して前記画像取出部のフレネル形状の反射面と反対向きに同一角度で傾斜する反射面を有する、請求項1に記載の導光装置。
前記画像取出部は、入射光の少なくとも一部を透過させる複数の半透過反射面を有し、前記複数の半透過反射面において前記映像光の少なくとも一部を1回以上通過させる、請求項1から10までのいずれか一項に記載の導光装置。
前記導光部は、前記光入射部から取り込まれた映像光を、対向して平行に延びる第1及び第2の全反射面での全反射により導く、請求項1から12までのいずれか一項に記載の導光装置。
前記画像取出部において、前記フレネル形状の反射面は、映像光と外界光との部分的な反射及び透過を行う半透過反射面である、請求項1から13までのいずれか一項に記載の導光装置。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、薄型でありつつ、波長帯域ごとの分散(色収差)に起因する画像の劣化を抑制して良好な映像光の導光が可能な導光装置及びこれを用いた虚像表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明に係る導光装置は、映像光を入射させる光入射部と、対向して平行に延びる反射面を有して光入射部から取り込まれた映像光を反射により導く導光部と、導光部によって導かれた映像光を射出する光射出部と、光射出部に設けられ導光部からの映像光を折り曲げて外部へ取り出すフレネル形状の反射面を含む画像取出部と、画像取出部に対応して設けられ画像取出部での波長分散を解消する分散解消部とを備える。ここで、波長分散を解消するとは、分散に起因する波長帯域ごとの光路の角度変化を相殺することを意味し、例えば波長帯域ごとの光路を完全に一致させて元に戻すといったことまでは必ずしも要しない。
【0008】
上記導光装置では、画像取出部がフレネル形状の反射面を含むことで、装置の薄型化を図ることができる。また、当該画像取出部に対応して波長分散を解消するための分散解消部を有していることで、波長帯域ごとの分散(色収差)に起因する画像の劣化を抑制して良好な映像光の導光を可能にしている。この際、導光部において対向して平行に延びる反射面によって映像光の導光を行っていることにより、画像取出部側と分散解消部側とで映像光について角度の関係に変化が生じないように維持して、分散解消部による波長分散の解消を確実に行うことができる。
【0009】
本発明の具体的な側面では、分散解消部は、画像取出部と同一屈折率材料で形成され、映像光の入射面に対して画像取出部のフレネル形状の反射面と同一角度で傾斜する反射面を有する。この場合、画像取出部と分散解消部とが構造的な対称性を有することで、画像取出部と分散解消部とにおいて発生し得る光の分散に起因する波長帯域ごとの光路の角度変化を両者間において相殺するように作用させ、結果的に波長分散を解消させることが可能になる。
【0010】
本発明の別の側面では、分散解消部は、同一屈折率材料として、画像取出部を形成する材料との屈折率差が0.01未満であるものにより形成される。この場合、材料の屈折率差に起因して波長分散の解消に支障が生じてしまう、ということのないようにすることができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、光入射部と光射出部とは、導光部を形成する板状部材の一端側と他端側とに設けられ、分散解消部は、光射出部側に設けられる画像取出部に対して対称な配置で光入射部側に設けられる。この場合、画像取出部と分散解消部とが、光射出部側と光入射部側にそれぞれ設けられた対称な配置とすることで、全体として波長分散を解消させることができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、分散解消部は、光入射部のうち映像光を入射させる光入射面に対向して設けられ、画像取出部は、光射出部のうち映像光を射出させる光射出面に対向して設けられ、分散解消部と画像取出部とは、導光部において対向して平行に延びる反射面のうちの一側面を延長した面上に配置されている。この場合、分散解消部と画像取出部との配置に関して高い対称性を維持でき、波長分散の解消を効率的に行うことができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、画像取出部において、フレネル形状の反射面は、複数のプリズムによって形成される。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、画像取出部は、導光部を形成する板状部材の面上に貼り付けられたプリズムシートにより構成される。この場合、プリズムシートを面上に貼り付ける簡易な構成で、画像取出部を作製できる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、分散解消部は、画像取出部と同一膜厚のプリズムシートにより構成される。この場合、分散解消部での映像光の通過と画像取出部での映像光の通過とについて、対称性をもたせることができる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、分散解消部は、単数又は複数のプリズムによって形成される。この場合、種々のサイズのプリズムを分散解消部の作製に適用できる。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、分散解消部は、画像取出部と同一部材で構成される。この場合、分散解消部及び画像取出部の作製が容易となる。例えば、大きなプリズムシートを作製し、作製した当該プリズムシートから2枚のシートを切り出して、反射面が対象となるように板状部材の面上に貼り付けることで、分散解消部と画像取出部とを形成させることができる。
【0018】
本発明のさらに別の側面では、分散解消部は、画像取出部と同一の屈折率を有し、分散解消部の反射面は、画像取出部の反射面と傾斜角度が対称で大きさが異なる。この場合、傾斜角度の対称性により波長分散の解消を保持しつつ、分散解消部において種々のサイズの反射面を形成できる。
【0019】
本発明のさらに別の側面では、画像取出部は、フレネル形状の反射面に入射した1つの映像光成分を複数回反射させ、分散解消部は、画像取出部と同一の回数映像光成分を反射させる。この場合、複数回反射により、映像光の光路調整を行うことができる。また、分散解消部において、画像取出部と同一の回数映像光成分を反射させるものとしておくことで、分散解消部での反射と画像取出部での反射とについて対象性を維持することができる。
【0020】
本発明のさらに別の側面では、画像取出部は、入射光の少なくとも一部を透過させる複数の半透過反射面を有し、複数の半透過反射面において映像光の少なくとも一部を1回以上通過させる。この場合、画像取出部に入射する角度によって、映像光は、複数の半透過反射面を1回以上通過することになるが、画像取出部に入射する角度に応じて映像光の各成分を適正な位置から観察者に対して射出させることができる。
【0021】
本発明のさらに別の側面では、光射出部は、平行化された状態で光入射部に入射した映像光を、平行化した状態で射出する。この場合、導光装置において、映像光について平行化された状態を、入射から射出まで維持できる。
【0022】
本発明のさらに別の側面では、導光部は、光入射部から取り込まれた映像光を、対向して平行に延びる第1及び第2の全反射面での全反射により導く。この場合、第1及び第2の全反射面での全反射により高効率に映像光を導光できる。
【0023】
本発明のさらに別の側面では、画像取出部において、フレネル形状の反射面は、映像素子からの映像光と外界光との部分的な反射及び透過を行う半透過反射面である。この場合、映像光による画像に外界を重畳して視認させるシースルーの状態とすることができる。
【0024】
本発明に係る虚像表示装置は、上記いずれかの導光装置と、映像光を生じさせる映像素子と、映像素子からの映像光を導光装置に入射させる投射レンズとを備える。この場合、上記いずれかの導光装置を用いることで、虚像表示装置は、良好な画像を表示させることができる。
【0025】
本発明の具体的な側面では、投射レンズは、映像素子からの映像光を平行化して導光装置に入射させる。この場合、導光装置は、平行化された映像光を導光させる。
【0026】
本発明の別の側面では、映像素子は、カラーの映像光を生じさせる。この場合、虚像表示装置は、カラーの画像を良好に表示させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る虚像表示装置用の導光装置及びこれを組み込んだ虚像表示装置について説明する。
【0029】
図1(A)及び1(B)に示す本実施形態に係る虚像表示装置100に組み込まれる導光装置20は、映像光(画像光)を取り込んで導くとともに観察者に射出させるための部材であり、全体として一方に延びる平板状の外形を有している。導光装置20は、光束全体としての映像光を平板の延びるZ方向に導く。ここでは、このZ方向を導光方向と呼ぶものとする。
【0030】
以下、
図1(A)等を参照して、本実施形態に係る虚像表示装置100について説明する。虚像表示装置100は、映像表示装置(映像素子)10と、投射レンズ40と、導光装置20とを一組として備える。なお、
図1(A)は、
図1(B)に示す導光装置20のA−A断面に対応する。
【0031】
虚像表示装置100は、観察者に虚像による映像光を認識させるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させるものである。映像表示装置10と、投射レンズ40と、導光装置20とは、通常観察者の右眼および左眼に対応して一組ずつ設けられるが、右眼用と左眼用とでは左右対称であるので、ここでは左眼用のみを示し、右眼用については図示を省略している。なお、虚像表示装置100は、全体としては、例えば一般の眼鏡のような外観(不図示)を有するものとなっている。
【0032】
図1(A)に示すように、映像表示装置10は、2次元的な照明光を射出する照明装置31と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32とを有する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光を空間的に変調して動画像等の表示対象となるべきカラーの映像光、すなわち複数の波長帯域の成分を含む光を形成する。
【0033】
投射レンズ40は、映像表示装置10の液晶表示デバイス32上の各点から射出された映像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。
【0034】
以下、導光装置20の構造について説明する。
図1(A)及び1(B)に示すように、導光装置20は、光透過性の板状部材PLを本体部分として有するとともに、例えばプリズムシート等を板状部材PLの面上に貼り付けることで構成される分散解消部21及び画像取出部23とを有して形成されるものである。
【0035】
図1(A)に示すように、導光装置20は、光学的な機能を有する部分として、光入射部D1と、導光部D2と、光射出部D3とを備える。光入射部D1は、光入射面IFと分散解消部21とを有し、映像表示装置10からの映像光を光入射面IFから取り込むとともに、取り込んだ映像光を導光部D2に向けて折り曲げる。つまり、光入射部D1は、映像光を取り込むという光学的な意味での機能を有する部分である。導光部D2は、全反射面形成部22を有し、取り込まれた映像光を光射出部D3に向けて伝播させる。つまり、導光部D2は、映像光を伝播させるという光学的な意味での機能を有する部分である。なお、既述のように、導光部D2が光束全体として導く方向を導光方向(図示の場合、Z方向)とする。光射出部D3は、角度変換部である画像取出部23と光射出面OFとを有し、導光部D2で導光方向に伝播された映像光の角度変換を行い光射出面OFから映像光を射出する。つまり、光射出部D3は、映像光を取り出すという光学的な意味での機能を有する部分である。以上のように、光入射部D1、導光部D2及び光射出部D3は、導光装置20において光学的な面から見た場合の機能的な部分である。
【0036】
光入射部D1は、光入射面IFを、YZ面に平行で映像表示装置10に対向する側の平面上に有している。また、光入射部D1は、分散解消部21を、光入射面IFに対向する反対側の面上に有している。分散解消部21は、既述のように、多数の反射面を有するシート状の部材である。この分散解消部21は、後述するように、画像取出部23において生じる光の分散に対して対応すべき位置に設けられている点において分散を解消する部材として機能するが、光入射部D1の一部としては、光入射面IFから入射し全体として+X方向に向かう映像光を、全体として−X方向に偏った+Z方向に向かわせるように折り曲げることで、映像光を導光部D2内に導く角度変換部(あるいは入射光折曲部)として機能する部材である。
【0037】
導光部D2は、入口側である光入射部D1側から奥側である光射出部D3側にかけて、内部に入射させた映像光を光射出部D3の画像取出部23に導くための全反射面形成部22を有している。
【0038】
全反射面形成部22は、導光部D2として機能するための平板状の主面であり互いに対向しYZ面に対して平行に延びる2平面として、映像光をそれぞれ全反射させる第1の全反射面22aと第2の全反射面22bとを有している。見方を変えると、全反射面形成部22は、導光装置20の本体部分である板状部材PLの主要な一部である。ここでは、第1の全反射面22aが映像表示装置10に近い側にあるものとし、第2の全反射面22bが映像表示装置10から遠い側にあるものとする。
【0039】
光射出部D3は、光射出面OFを、YZ面に平行で映像表示装置10に対向する側の平面上すなわち光入射部D1の光入射面IFと同一の面内上に有している。また、光射出部D3は、微細構造である画像取出部23を、光射出面OFに対向する反対側の面上に有している。言い換えると、画像取出部23は、全反射面形成部22の奥側(+Z側)において、第2の全反射面22bの延長平面に沿ってこの延長平面に近接して形成されている。画像取出部23は、既述のように、多数の反射面を有するシート状の部材であり、全反射面形成部22を経た映像光を、所定角度で反射して平行化された状態を維持して光射出面OF側へ折り曲げる。
【0040】
以上のような構成の導光装置20の場合、導光部D2において、第1の全反射面22aは、光入射面IF及び光射出面OFと共通の面部分となっているため、光入射面IFや光射出面OFの一部又は全体も映像光を導く導光部D2として機能する。つまり、導光部D2の機能は、主として全反射面形成部22により実現されているが、光入射部D1の光入射面IFや光射出部D3の光射出面OFも導光部D2の一部である。光入射部D1の入射光折曲部として機能する分散解消部21で反射された映像光GLは、導光部D2のうち、まず、第1の全反射面22aに入射し、全反射される。次に、当該映像光は、第2の全反射面22bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、映像光GLは、導光装置20の奥側即ち画像取出部23を設けた+Z側に導かれる。ここで、導光部D2に用いる透明樹脂材料すなわち板状部材PLの屈折率n
aは、例えば1.5以上の高屈折率材料であるものとする。導光装置20に比較的屈折率の高い透明樹脂材料又はガラス材料を用いることで、導光装置20内部で映像光を導光させやすくなり、かつ、導光装置20内部での映像光の画角を比較的小さくすることができる。
【0041】
ここで、分散解消部21と画像取出部23とは、板状部材PLの一端側(−Z側)と他端側(+Z側)とに設けられ、同一の屈折率材料(屈折率n
bとする。)で、かつ、同一の膜厚(X方向に関する厚さ)で作製されている。さらに、分散解消部21と画像取出部23とにおいて設けられる複数の反射面の傾斜角度は、対称な配置関係になっている。分散解消部21と画像取出部23とが、配置や屈折率、さらには反射面の傾斜角度について対称性を有する構造となっていることで、映像光GLの導光装置20内での通過に際して、板状部材PLと分散解消部21及び画像取出部23との間での屈折に伴って生じ得る光の分散による画像劣化の影響を回避又は抑制している。また、以上の構成での分散解消部21と画像取出部23との配置に関して、分散解消部21は、光入射部D1のうち光入射面IFに対向して設けられ、画像取出部23は、光射出部D3のうち光射出面OFに対向して設けられている。さらに、この結果、上記の場合、分散解消部21と画像取出部23とは、導光部D2において対向して平行に延びる反射面のうちの一側面(第2の全反射面22b)を延長した面上に配置されるものとなっている。このように、分散解消部21と画像取出部23とは、対称性のある配置関係となっている。
【0042】
以下、
図2等を参照して、本実施形態に係る導光装置20のうち、分散解消部21及び画像取出部23の詳しい構造について説明する。
【0043】
まず、画像取出部23の構造について説明する。
図2に示すように、画像取出部23は、複数のプリズム状の部材を平面状に並べて配置させてフレネルレンズのような形状(以下、このような形状をフレネル形状というものとする。)を有し、当該フレネル形状の部分に複数の反射面を有するものとなっている。言い換えると、画像取出部23は、フレネル形状を有する第1部材23pと、第1部材23pに対応する形状の第2部材23qとを有し、この間に多数の傾斜面部分23cを挟持して全体として平らなシート状の部材(プリズムシート)となっている。第1部材23pと第2部材23qとの間の多数の傾斜面部分23cは、映像光GLを取り出すための反射面として機能する多数の映像光反射面23aと、映像光GLを取り出すための反射面等としての機能を有さず各映像光反射面23a間を繋ぐ境界部23bとによって構成されている。なお、映像光反射面23aの配列される方向は、全反射面形成部22の延びるZ方向となっている。また、各映像光反射面23aは、Z方向に対して垂直な縦方向すなわちY方向について互いに平行に延びる細長い面(
図1(B)参照)である。また、多数の映像光反射面23aは、第1及び第2の全反射面22a,22bに対して同一の角度φをそれぞれなしている。さらに、各映像光反射面23aは、映像光GLの光成分の一部を透過させ、残りを反射させる半透過反射面となっている。これにより、画像取出部23は、映像光と外界光との部分的な反射及び透過を行い、観察者に外界像をシースルーで観察させることを可能にしている。なお、以上について見方を変えると、画像取出部23は、1つの映像光反射面23aとこれに隣接する1つの境界部23bとを1組の反射ユニットとし、これをY方向を長手方向としてZ方向に沿って周期的に繰り返した多数の反射ユニット全体で、1つの断面鋸歯状の部分を形成するものとなっている、とみることもできる。なお、この場合、1つの傾斜面部分23cが1つの反射ユニットに相当するので、傾斜面部分23cを反射ユニット23cとも記載することとする。
【0044】
次に、分散解消部21の構造について説明する。
図2に示すように、分散解消部21は、画像取出部23と同一で対称な形状の部材を対象に配置したものとなっている。具体的に説明すると、分散解消部21は、複数のプリズム状の部材を平面状に並べて配置させてフレネル形状の部分に複数の反射面を有するものとなっている。言い換えると、分散解消部21は、フレネル形状を有する第1部材21pと、第1部材21pに対応する形状の第2部材21qとを有し、この間に多数の傾斜面部分(反射ユニット)21cを挟持して全体として平らなシート状の部材となっている。第1部材21pと第2部材21qとの間の多数の傾斜面部分21cは、映像光GLを折り曲げるための反射面として機能する多数の映像光反射面21aと、映像光GLを折り曲げるための反射面等としての機能を有さず各映像光反射面21a間を繋ぐ境界部21bとによって構成されている。なお、映像光反射面21aの配列される方向は、全反射面形成部22の延びるZ方向となっている。また、各映像光反射面21aは、Z方向に対して垂直な縦方向すなわちY方向について互いに平行に延びる細長い面(
図1(B)参照)である。また、多数の映像光反射面21aは、第1及び第2の全反射面22a,22bに対して同一の角度φをそれぞれなしている。すなわち、各映像光反射面21aは、画像取出部23の映像光反射面23aと同一の度合で第1及び第2の全反射面22a,22bに対して傾斜している。ただし、傾斜の向きは、図示のように、画像取出部23の映像光反射面23aとは反対、すなわちXY面を基準にして面対称なものとなっている。ここでは、上記のような状態をもって、映像光反射面21aが、フレネル形状の反射面である映像光反射面23aと同一角度で傾斜している、と表現する。また、各映像光反射面21aは、各映像光反射面23aと異なり、半透過反射面ではなく、映像光GLの光成分を鏡面反射する反射面となっている。
【0045】
ここで、以上のような構成の画像取出部23の作製の一例について説明する。まず、映像光反射面23a及び境界部23bとなるべきフレネル形状(断面鋸歯状の傾斜面)を有する第1部材21pが射出成形により成形される。次に、第1部材21pの当該傾斜面に反射面として機能させるための反射膜(例えば、誘電体多層膜や金属膜等で構成されるハーフミラー膜)を成膜する。最後に、当該反射膜を第1部材21pと同一屈折率の樹脂材料で埋めることで第2部材21qを形成し、画像取出部23となるべきシート状の部材が作製される。この場合、第1部材21pと第2部材21qとを同一屈折率のものとすることで、映像光反射面23aでの映像光の透過・反射において意図しない屈折作用によって画像が劣化することを回避している。なお、上記により形成されるシート状の部材については、様々な態様を取ることができるが、例えば大きなシートで作製し、適切な大きさにカットして板状部材PLに貼り付けることで画像取出部23として機能させることが考えらえる。なお、分散解消部21についても同様の工程で作製できる。ただし、上記の構成の場合、映像光反射面21aとなるべき膜の成膜については、例えばアルミ蒸着等により鏡面のミラー膜を成膜することになる。
【0046】
なお、上述のように、画像取出部23や分散解消部21は、フレネル形状の反射面である複数の映像光反射面23a,21aを有することで、導光装置20を薄型(X方向の厚みを抑える構成)にでき、延いては、虚像表示装置100の薄型化・小型化を図ることができる。
【0047】
以下、映像光GLの光路について説明する。
図1(A)に戻って、映像表示装置10から射出された映像光GLを構成する部分光線束について、投射レンズ40を経てそれぞれ平行化された部分光線束である各映像光GL1,GL2,GL3の主要成分は、導光装置20の光入射面IFからそれぞれ入射した後、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。映像光GL1,GL2,GL3のうち、液晶表示デバイス32の射出面32aの中央部分から射出された映像光GL1は、分散解消部21の中央部21kで反射された後、全反射面形成部22を経て画像取出部23の中央部23kで反射され、光射出面OFからこの面に対して垂直な光軸AX方向に平行化された状態を維持して射出される。また、液晶表示デバイス32の射出面32aの一端側(+Z側)から射出された映像光GL2は、光軸AXに対して角度θ
2で光入射面IFに入射し、分散解消部21の周辺部21m(+Z側)で反射された後、全反射面形成部22を経て画像取出部23のうち反光入射面側(+Z側)の周辺部23mで反射され、光射出面OFから所定の角度方向(光軸AXに対して角度θ
2傾いた方向)に平行化された状態を維持して射出される。また、液晶表示デバイス32の射出面32aの他端側(−Z側)から射出された映像光GL3は、光軸AXに対して角度θ
3で光入射面IFに入射し、分散解消部21の周辺部21h(−Z側)で反射された後、全反射面形成部22を経て画像取出部23のうち最も光入射面側(−Z側)の周辺部23hで反射され、光射出面OFから所定の角度方向(光軸AXに対して角度θ
3傾いた方向)に平行化された状態を維持して射出される。なお、この場合、各映像光GL1,GL2,GL3の全反射の角度について、映像光GL2の角度が最小であり、映像光GL3の角度が最大であり、その他の映像光の角度については、これらの中間の値となる。
【0048】
また、第1及び第2の全反射面22a,22bでの全反射による光の反射効率は非常に高いものであるため、画像取出部23に至るまでは、輝度低下が生じることは殆どない。また、
図1(B)に示すように、縦方向すなわちY方向について見た映像光である映像光GLyは、光束全体として収束するように導光装置20内を通過する。
【0049】
各映像光の成分のうち、最小反射角で全反射面形成部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射される映像光GL2は、画像取出部23のうち周辺部23mの最も奥側(+Z側)に位置する映像光反射面23aに達し、映像光反射面23aでの反射により、光軸AXに対して角度θ
2で光射出面OFから眼EYに向けて平行光束として射出され、観察者に認識される。
【0050】
一方、最大反射角で全反射面形成部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射される映像光GL3は、画像取出部23のうち周辺部23hの最も入口側(−Z側)に位置する映像光反射面23aに達し、映像光反射面23aでの反射により、光軸AXに対して角度θ
3で光射出面OFから眼EYに向けて平行光束として射出される。
【0051】
なお、映像光GL2の角度θ
2と映像光GL3の角度θ
3とは、大きさが略等しく逆向きとなっており、映像光による虚像の画角に相当するものとなっている。また、本構成の虚像表示装置100のように平行化した光により虚像を認識させる場合、観察者は、眼EYに対して入射する光の角度によって虚像の位置を認識するものとなる。すなわち、映像光GL1〜GL3等の各映像光の成分においては、角度が所望の状態に維持されていることが非常に重要となる。眼EYに入射する角度が変化してしまうことは、画像の位置がずれて認識されることに相当するからである。
【0052】
しかしながら、上述した導光装置20のような構成による映像光の導光において、1つの部材とこれに接する他の部材との間で屈折率差があると、当該屈折率差に起因して、映像光GLの分散(あるいは色収差)が生じる可能性がある。
【0053】
図3は、分散の発生についての一例を説明するための図である。図示のように、画像取出部23(屈折率n
b)と板状部材PL(屈折率n
a)との境界において、仮に、異なる波長帯域の成分を含む平行光LLが、第2の全反射面22bの延長面であり画像取出部23と板状部材PLとの境界である境界面BSに対して入射角度αで入射する(つまり境界面BSは映像光の入射面となっている)と、屈折率の差(n
a−n
b)に応じて分散(色分散)が生じる。すなわち、入射位置PPにおいて短い波長帯域の成分ほど屈折し、色分離(色割れ)が生じる。言い換えると、例えばカラーの画像を投影するために複数の波長帯域を含むカラーの映像光GLを導光すると、映像光GLに含まれる色成分(例えば図示では、赤色光Rp、緑色光Gp、青色光Bp)の間で光路の角度変化に差異が生じる。このような角度の変化の違いは、観察者の眼に入射する角度の違いとなり、観察者に位置のずれとして認識されるものとなってしまう。すなわち、色斑等が生じることになる。なお、図示の例では、平行光LLは、反射面23aでの反射後、境界面BSに対して略垂直に射出されるため、境界面BSの射出位置QQにおいては、屈折率差に起因する分散がほとんど生じないが、射出位置QQにおいても境界面BSに対して傾斜している場合、さらに光路の角度変化が生じ得る。本実施形態では、上記のように、画像取出部23に対応した分散解消部21を設けることにより、
図3に例示したような波長帯域ごとの分散(色収差)に起因する画像の劣化を抑制して良好な映像光の導光が可能なものとなっている。
【0054】
以下、
図4等を参照して、本実施形態における導光装置20による波長分散の解消について説明する。
図4(A)は、導光装置20の様子を概念的に示したものであり、特に、分散解消部21及び画像取出部23において反射面21a,23aを拡大して示した図である。図示のように、映像光GL(例えば映像光GL1の一部)は、光入射面IFから入射して板状部材を通過し第2の全反射面22bの延長面であり分散解消部21と板状部材PLとの境界である境界面BSを経て分散解消部21に入射し(つまり境界面BSは映像光の入射面となっている)、分散解消部21の映像光反射面21aで反射され再び境界面BSを経て板状部材PL(全反射面形成部22)に入射する。この間において、上記
図3を参照して説明した場合と同様に、分散解消部21(屈折率n
b)と板状部材PL(屈折率n
a)との屈折率の差(n
a−n
b)に起因して、映像光GLについて光の分散が生じる。すなわち、各色光Rp,Gp,Bpの間で光路の角度変化に差異が生じる。さらに、同様のことが、画像取出部23(屈折率n
b)と板状部材PL(屈折率n
a)との間においても生じるおそれがある。これに対して、本実施形態においては、上記のように、分散解消部21と画像取出部23とが対称に配置され、同一の屈折率(屈折率n
b)であり、かつ、各反射面21a,23aの第2の全反射面22bに対する傾斜角度が同一の角度φに保持されている。さらに、全反射面形成部22での導光においては、対向して平行に延びる第1及び第2の全反射面22a,22bでの全反射を利用しているため、角度の関係が維持される。したがって、分散解消部21及び画像取出部23の双方を経た映像光GLは、分散に起因する波長帯域ごとの光路の角度変化を相殺されたものとなっている。すなわち、同じ角度で入射した映像光GLの成分は、分散の影響で波長帯域ごとに光路が完全には一致しないものとなるが、例示した映像光GL1のように、光の射出角度は保持され波長分散が解消されたものとなっている。例えば
図4(A)に示す場合では、光入射面IFの同じ位置PF1から同じ角度で入射した映像光GLの成分光の色光Rp,Gp,Bpについて見ているため、各色光Rp,Gp,Bp位置は多少ずれているが、例えば
図4(B)に示すように、平行化された光(平行光束)である映像光GL1は、ある程度の幅を有して光入射面IFの異なる位置から同じ角度(垂直)で入射した成分のうち、ある成分については、画像取出部23と板状部材PLとの境界面BSの同じ位置PF2に入射するものが生じ場合がある。この場合については、上記のことから入射後の角度関係が一致して光射出面OFから眼EYに向けて平行光束として射出されることになる。
【0055】
また、導光装置20の構成について、見方を変えると、分散解消部21が、画像取出部23において生じ得る光の分散を予め解消するものとして機能していると言える。
【0056】
以上のように、本実施形態では、画像取出部23がフレネル形状の反射面である複数の映像光反射面23aを有することで、導光装置20の薄型延いては、虚像表示装置100の薄型化・小型化を図ることができる。この際、特に、画像取出部23に対応して波長分散を解消するための分散解消部21を有していることで、波長帯域ごとの分散(色収差)に起因する画像の劣化を抑制して良好な映像光の導光を可能にしている。具体的には、導光装置20の導光部D2において対向して平行に延びる反射面(第1及び第2の全反射面22a,22b)によって映像光GLの導光を行っていることにより、画像取出部23側と分散解消部21側とで映像光GLについて角度の関係に変化が生じないように維持して、分散解消部21による波長分散の解消を確実に行うことができるものとなっている。
【0057】
なお、以上では、平行化されて光入射面IFから入射する映像光GLのうち、垂直入射する映像光GL1について説明し他の成分については説明を省略しているが、本実施形態の導光装置20では、映像光GL1以外の光入射面IFに対して傾斜して入射する成分(例えば映像光GL2,GL3等)についても、同様に、分散解消部21による波長分散の解消を確実に行うことができる。既述のように、例えば、映像光GL2は、光入射面IFに垂直な光軸AXに対して角度θ
2で入射し、光射出面OFに垂直な光軸AXに対して角度θ
2で射出される。したがって、光入射面IFへの入射の際に生じる屈折作用(空気層から板状部材PL(屈折率n
a)への入射時の屈折)と光射出面OFからの射出の際に生じる屈折作用(板状部材PL(屈折率n
a)から空気層への入射時の屈折)とが相殺される。同様のことが他の全ての成分(映像光GL3等)についても言える。すなわち、映像光GLの全体について分散解消部21による波長分散の解消を確実に行うことができるものとなっている。
【0058】
以下、本実施形態に関する検証実験の一例に関して簡単に説明する。
図5(A)は、検証実験のための一構成例を示す図であり、5(B)は、5(A)の一部拡大図である。また、
図5(C)は、5(A)の構成を用いた虚像表示装置を概念的に示す図である。また、
図5(D)は、5(A)に示す一例での波長分散の解消の様子を示す図である。ここで、
図5(A)に示す実験用装置100Aは、
図1等に示す虚像表示装置100を構成する映像表示装置10、投射レンズ40及び導光装置20と同様の機能をそれぞれ有する映像表示装置10Aと、投射レンズ40Aと、導光装置20Aとを有し、映像光GLの発生、導光等を行う。導光装置20Aには、導光装置20と同様の構造を有する分散解消部21及び画像取出部23を有している。分散解消部21と画像取出部23との対称性により、
図5(B)に一部拡大して示すように、発生し得る波長分散が平行化されることで解消されて、最終的に視認されるべき画像光として取り出される。さらに、実験用装置100Aは、導光装置20Aから射出される映像光GLを結像させるための結像光学系IOを有する。なお、
図5(C)に例示するように、実験用装置100Aのうち、結像光学系IOを取り除いたものは、眼EYの網膜において結像する虚像表示装置として機能する。すなわち、
図5(A)に示す結像光学系IOは、いわば人間の眼(水晶体)に相当するものであり、人間の網膜に相当する結像位置IPに像を結ぶ。
図5(D)は、結像位置IPにおいて結ばれた実像の様子を示すものであり、
図5(C)に示す構成例の場合において観察者に視認されるべき虚像の状態に相当する。この場合、色斑等をほとんど生じることなく結像がされている(網膜で結像される)ことが分かる。
【0059】
一方、
図6(A)は、
図5(A)との比較のための一構成例を示す図であり、6(B)は、6(A)に示す一例での波長分散に起因する色分離(色割れ)の様子を示す図である。
図6(A)の実験用装置100Bは、映像表示装置10Bと、投射レンズ40Bと、導光装置20Bと、結像光学系IOとを有するが、導光装置20Bにおいて、分散解消部に相当するものを有さず画像取出部23のみを有している点が異なっている。この場合、
図6(B)に示すように、結像位置IPにおいて結ばれた実像が、色斑等を生じていることが分かる。
【0060】
以上の検証から、分散解消部21によって画像取出部23での色分散が解消されることが分かる。
【0061】
以下、
図7を参照して、第1実施形態の一変形例について説明する。ここでは、画像取出部23の一変形例を示す。すなわち、本変形例において、導光装置20は、画像取出部23を除いて
図1(A)等に示す導光装置20と同様の構造を有するため、画像取出部23以外の各要素については説明等を省略する。
図7(A)及び7(B)に示すように、本変形例の画像取出部23は、半透過反射面である多数の映像光反射面23a及びこれを繋ぐ境界部23bを含む多数の反射ユニット23cにおいて、入射した映像光GLの少なくとも一部を1回以上通過(透過)させている。
【0062】
以下、画像取出部23による映像光の光路の折曲げについてより詳細に説明する。ここでは、映像光GLのうち、左右の周辺側の成分である映像光GL2及び映像光GL3についてのみ説明し、これらの中間の他の成分については、どちらかの場合と同様であるので省略する。
【0063】
まず、
図7(A)に示すように、最小反射角α
−で全反射面形成部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射される映像光GL2は、画像取出部23をN回(Nは1より大きい自然数)通過した後、画像取出部23のうち周辺部23mの最も奥側(+Z側)に位置する映像光反射面23aに達し、映像光反射面23aでの反射により、眼EYの中心軸である光軸AXに対して角度θ
2で光射出面OFから眼EYに向けて平行光束として射出される。すなわち、映像光GL2のように、画像取出部23の奥側で反射する成分は、多数の映像光反射面23aを1回以上のN回通過した後、眼EYに向わせる所定の映像光反射面23aに達し、ここで反射された成分が有効な成分となって観察者に認識される。
【0064】
一方、
図7(B)に示すように、最大反射角α
+で全反射面形成部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射される映像光GL3は、画像取出部23のうち周辺部23hの最も入口側(−Z側)に位置する映像光反射面23aに達し、映像光反射面23aでの反射により、光軸AXに対して角度θ
3で光射出面OFから眼EYに向けて平行光束として射出される。
【0065】
本変形例の場合も、映像光GLについて角度の関係に変化が生じないように維持しつつ、波長分散の解消を確実に行うことができる。また、この場合、画像取出部23での映像光GLの1回以上の通過(半透過反射面の透過)を許容することで、比較的小さな反射角度で導光されるにもかかわらず、導光の奥側(+Z側)に位置する映像光反射面23aで反射する場合であっても、比較的装置の薄型化を維持しつつ画角を大きくとることが可能になっている。
【0066】
以下、
図8(A)を参照して、第1実施形態の別の一変形例について説明する。ここでは、分散解消部21及び画像取出部23の一変形例を示す。なお、本変形例において、導光装置20は、画像取出部23と分散解消部21との相対的な構造における違いを除いて
図1(A)等に示す導光装置20と同様の構造を有するため、分散解消部21及び画像取出部23以外の各要素については説明等を省略する。
図8(A)に示すように、本変形例の導光装置20において、分散解消部21の映像光反射面21aは、画像取出部23の映像光反射面23aと比較して、傾斜角度が対称で大きさが異なっている。言い換えると、各反射面21a,23aの第2の全反射面22bに対する傾斜角度は、同一の角度φに保持されている一方、各反射面21aの大きさは各反射面23aと異なっている。図示の例では、各反射面21aの大きさを示す各反射ユニット21cの横幅PAが各反射面23aの大きさを示す各反射ユニット23cの横幅PBよりも大きくなっている。この場合も、映像光の光路の対称性については保持され、波長分散の解消を確実に行うことができる。
【0067】
また、
図8(B)を参照して、さらに別の一変形例を示すように、画像取出部23の中で、複数の反射面23aの傾斜角度については同一の角度φを維持しつつ、大きさを変えるものとしてもよい。図示の例では、導光の奥側(+Z側)に行くほど反射面23a(反射ユニット23cの横幅PB)が大きくなるものを例示している。図示を省略するが、分散解消部21についても、同様に複数の反射面21aの大きさを変えるものとしてもよい。
【0068】
〔第2実施形態〕
以下、
図9を参照して、第1実施形態を変形した第2実施形態について説明する。本実施形態に係る虚像表示装置100に組み込まれる導光装置120は、分散解消部121を1つ(単数)のプリズムで構成している。なお、導光装置120延いては虚像表示装置100のうち分散解消部121以外の構造については、
図1(A)等に示す導光装置20さらには虚像表示装置100と同様の構造を有するため、各要素については説明等を省略する。
【0069】
本実施形態に係る導光装置120において、分散解消部121は、Y方向に延びる三角柱状の単体プリズムPRによって構成されている。より具体的に説明すると、まず、単体プリズムPRは、画像取出部23と同一屈折率の材料で作製されている。さらに、図示のように、三角柱状の単体プリズムPRの一側面が、第2の全反射面22bの延長面上に貼り付けられることで、境界面BSが形成されており、単体プリズムPRの当該一側面に対して角度φで傾斜して対向する傾斜面に、鏡面ミラーが成膜されている。以上により、映像光反射面121aが形成されている。分散解消部121は、以上のような構成であることにより、画像取出部23と映像光の光路変更に関して対称性を有し、分散を解消する部材として機能するとともに映像光を導光部に向けて折り曲げる(導く)角度変換部(あるいは入射光折曲部)として機能する。
【0070】
本実施形態においても、映像光の光路の対称性については保持されることで、波長分散の解消を確実に行うことができる。
【0071】
〔第3実施形態〕
以下、
図10等を参照して、第1実施形態等を変形した第3実施形態について説明する。本実施形態に係る虚像表示装置100に組み込まれる導光装置220において、分散解消部221及び画像取出部223は、
図11(A)及び11(B)に示すように、フレネル形状の反射面に入射した1つの映像光成分をそれぞれ2回(複数回)ずつ反射させる構造となっている。なお、導光装置220延いては虚像表示装置100のうち分散解消部121及び画像取出部223以外の構造については、
図1(A)等に示す導光装置20さらには虚像表示装置100と同様の構造を有するため、各要素については説明等を省略する。
【0072】
以下、映像光の光路について説明する。
図10に示すように、投射レンズ40を経た各映像光GL1,GL2,GL3の主要成分は、導光装置20の光入射面IFからそれぞれ入射した後、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。映像光GL1,GL2,GL3のうち、液晶デバイス11の射出面32aの中央部分から射出された映像光GL1は、分散解消部221の中央部221kで反射された後、全反射面形成部22を経て画像取出部223の中央部223kで反射され、光射出面OFからこの面に対して垂直な光軸AX方向に射出される。液晶表示デバイス32の射出面32aの一端側(+Z側)から射出された映像光GL2は、光軸AXに対して角度θ
2で光入射面IFに入射し、分散解消部221の周辺部221m(+Z側)で反射された後、全反射面形成部22を経て画像取出部23のうち反光入射面側(+Z側)の周辺部223mで反射され、光射出面OFから所定の角度方向(光軸AXに対して角度θ
2傾いた方向)に射出される。また、液晶表示デバイス32の射出面32aの他端側(−Z側)から射出された映像光GL3は、光軸AXに対して角度θ
3で光入射面IFに入射し、分散解消部221の周辺部221h(−Z側)で反射された後、全反射面形成部22を経て画像取出部23のうち最も光入射面側(−Z側)の周辺部223hで反射され、光射出面OFから所定の角度方向(光軸AXに対して角度θ
3傾いた方向)に射出される。ここで、本実施形態の場合、
図1を参照して説明した第1実施形態等の場合と異なり、各映像光GL1,GL2,GL3の全反射の角度について、映像光GL2の角度が最大であり、映像光GL3の角度が最小であり、その他の映像光の角度については、これらの中間の値となっている。これは、
図11(A)及び11(B)を参照して後述するように、分散解消部221及び画像取出部223における反射回数がそれぞれ2回となっており、第1実施形態の分散解消部21及び画像取出部23の場合(1回反射)とは異なっているためである。
【0073】
以下、
図11(A)及び11(B)を参照して、分散解消部221及び画像取出部223の構造と、分散解消部221及び画像取出部223による映像光の光路の折曲げについて説明する。
【0074】
まず、分散解消部221の構造について説明する。
図11(A)に示すように、分散解消部221は、Y方向に延びる細長い反射ユニット221cを全反射面形成部22の延びるZ方向に多数配列させることで構成されている。各反射ユニット221cは、奥側即ち+Z側に配置される第1の反射面221aと、入口側即ち−Z側に配置される第2の反射面221bとを1組のものとして有する。なお、第1の反射面221aと第2の反射面221bとの相対角度βは、具体例において例えば54.7°となっているものとする。また、ここでは、第2の反射面221bが第2の全反射面22bの延長面である境界面BSに対して垂直であり、第1の反射面221aは、第2の反射面221bに対して角度βで傾斜しているものとする。
【0075】
以下、分散解消部221による映像光の光路の折曲げについて説明する。ここでは、映像光のうち、画像取出部223の両端側に入射する映像光GL2及び映像光GL3について示し、他の光路については、これらと同様であるので図示等を省略する。
【0076】
まず、映像光GL2は、境界面BSから分散解消部221のうち周辺部221m(+Z側)に入射すると、まず、第1の反射面221aで反射され、次に、第2の反射面221bで反射され、他の反射ユニット221cを経ることなく、全反射面形成部22での全反射により導光される。映像光GL3は、境界面BSから分散解消部221のうち周辺部221h(−Z側)に入射すると、映像光GL2と同様に、まず、第1の反射面221aで反射され、次に、第2の反射面221bで反射され、他の反射ユニット221cを経ることなく、全反射面形成部22での全反射により導光される。ここで、同一の角度で傾斜する第1の反射面221aに対して、映像光GL2は最も入射角度が大きく、映像光GL3は最も入射角度が小さい。これは、2回反射の構造となっているため、第1実施形態の場合と比べて傾斜方向が異なっている(逆になっている)からである。以上のような反射角度となっていることから、境界面BSから射出された後においても、全反射面形成部22での全反射の角度について、映像光GL2の角度が最大であり、映像光GL3の角度が最小となる。
【0077】
次に、画像取出部223の構造について説明する。
図11(B)に示すように、画像取出部223は、Y方向に延びる細長い反射ユニット223cを全反射面形成部22の延びるZ方向に多数配列させることで構成されている。各反射ユニット223cは、奥側即ち+Z側に配置される第1の反射面223aと、入口側即ち−Z側に配置される第2の反射面223bとを1組のものとして有する。なお、第1の反射面223aと第2の反射面223bとの相対角度βは、具体例において例えば54.7°となっているものとする。また、ここでは、第1の反射面223aが第2の全反射面22bの延長面である境界面BSに対して垂直であり、第2の反射面223bは、第1の反射面223aに対して角度βで傾斜しているものとする。また、これらのうち、少なくとも第2の反射面223bは、一部の光を透過可能な半透過反射面であり、観察者に外界像をシースルーで観察させることを可能にしている。
【0078】
以下、画像取出部223による映像光の光路の折曲げについて説明する。ここでは、映像光GLのうち、画像取出部223の両端側に入射する映像光GL2及び映像光GL3について示し、他の光路については、これらと同様であるので図示等を省略する。
【0079】
まず、映像光GL2は、境界面BSから画像取出部223のうち周辺部223m(+Z側)に入射すると、まず、第1の反射面223aで反射され、次に、第2の反射面223bで反射され、他の反射ユニット223cを経ることなく、光射出面OFから射出される。映像光GL3は、境界面BSから画像取出部223のうち周辺部223h(−Z側)に入射すると、映像光GL2と同様に、まず、第1の反射面223aで反射され、次に、第2の反射面223bで反射され、他の反射ユニット223cを経ることなく、全反射面形成部22での全反射により導光される。ここで、同一の角度で傾斜する第2の反射面223bに対して、映像光GL2は最も入射角度が大きく、映像光GL3は最も入射角度が小さい。これは、2回反射の構造となっているため、第1実施形態の場合と比べて傾斜方向が異なっている(逆になっている)からである。
【0080】
本実施形態においても、分散解消部221及び画像取出部223は、映像光をそれぞれ2回(複数回)ずつ反射させるが、ともに同一の回数(2回)だけ映像光成分を反射させ、映像光の光路の対称性について保持したものとなっていることで、波長分散の解消を確実に行うことができる。
【0081】
〔その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0082】
上記の説明では、画像取出部をシート状の部材としているが、これに限らず、例えば複数のプリズムを並べて形成されるものとしてもよい。
【0083】
上記の説明では、シースルー型の虚像表示装置について説明しているが、外界像を観察させる必要がない場合、映像光反射面23a,123aや、第1及び第2の反射面223a,223bを光反射率を略100%にすることが可能である。
【0084】
また、分散解消部と画像取出部とを同一部材で構成するものとしてもよい。例えばシースルーとしない構成であれば、分散解消部21及び画像取出部23の反射面21a,23aをともにアルミ蒸着等により成膜される鏡面ミラーとする同一部材としてもよい。同一部材とすることで、分散解消部及び画像取出部の作製が容易となる。より具体的には、例えば、大きなプリズムシートを作製し、作製した当該プリズムシートから切り出した2枚のシートを、反射面が対称となるように板状部材(板状部材PLとなるべき部材)の面上に貼り付けることで、分散解消部と画像取出部とを形成させることができる。また、フレネル形状の部分のみ共通の材料を用いる等、部分的に同一部材を用いるものとしてもよい。より具体的には、例えば、第1部材21p,23pの作製及び第2部材23p,23pの作製においては、共通に行い、反射膜の成膜(反射面の形成)過程のみ個別に行うものとしてもよい。これにより、例えば樹脂成形で作製する場合において製品ごとの屈折率差を極力抑え、かつ、シート状部材のうち分散解消部として利用する部分については、ミラー反射面を形成させ、画像取出部として利用する部分については、半透過反射面を形成させることができる。
【0085】
また、上記のうち、分散解消部21と画像取出部23とに関して、屈折率が同一であることについては、求められる解像度にもよるが、厳密に全く同一ものとなるもののほか、例えば小数点以下2ケタ程度まで揃っているもの(屈折率差が0.01未満)であれば屈折率が同一であるものとして含むものとしてもよい。この場合、例えば一方の材料の屈折率nの値がn=1.5178である場合、他方の材料の屈折率の値が、小数点以下2ケタ(1.51)まで合っていれば屈折率が同一であるものと考えることができる。さらに望ましくは、小数点以下3ケタまで合っている(上記の場合、1.517まで合っている)構成(屈折率差が0.001未満)としておく態様とすることも考えられる。
【0086】
また、分散解消部21と画像取出部23とに関して、プリズムシート状の部材を接着剤で貼り付けることで画像取出部23や分散解消部21を作製する場合、接着剤についても屈折率があまり違わないものを利用することが望ましく、例えば上記した各部の材料の場合と同程度(小数点以下2ケタさらには3ケタ)の屈折率差の接着剤を適用することが好ましい。また、プリズムシートの厚さについては、分散の発生を抑えるという観点では、あまり厚過ぎないことが好ましいが、薄すぎると貼付け時にしわが入ってしまう等のおそれがあり、例えば数十μm(20μm)程度以上であることが望ましい。
【0087】
上記の説明では、映像表示素子として、透過型の液晶表示デバイス32を用いているが、画像表示素子としては、透過型の液晶デバイスに限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶パネルを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス32に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子用いた構成も可能である。さらに、レーザー光源とポリゴンミラーその他のスキャナーとを組みあわせたレーザースキャナーを用いた構成も可能である。なお、液晶表示デバイス32やその光源において、画像取出部23の光取出特性を考慮して輝度パターンの調整を行うこともできる。
【0088】
上記の説明では、虚像表示装置100は、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ映像表示装置10及び導光装置20を備えるとしているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ映像表示装置10と導光装置20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。 上記の説明では、実施形態の導光装置20は、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、実施形態の虚像表示装置100をヘッドアップディスプレイとし、これに適用することもできる。
【0089】
上記の説明では、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により映像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2の全反射面22a,22b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、映像光の入射角が全反射条件を満たした上で、全反射面22a,22bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての映像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの映像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって全反射面22a,22bの全体又は一部がコートされていてもよい。