(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒状に押し出されるゴム材の中心部に二次曲線制御された速度で芯金を送り込むことで前記ゴム材により前記芯金の外周面を被覆し、前記芯金の軸方向両端部のゴム材を切断するロールの製造方法であって、
前記ゴム材が切断される切断予定位置において前記芯金の送込速度を前記二次曲線制御された速度よりも一時的に増加させるロールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係るロールの製造方法及び帯電ロールの製造方法の一例について説明する。なお、本実施形態に係るロールの製造方法及び帯電ロールの製造方法によって製造されるゴム被覆軸体は、一例として、帯電ロール70(
図3(C)参照)として用いられる。
【0014】
図3(C)に示す帯電ロール70は、ロールの一例であり、画像形成装置の感光体92(
図7(A)参照)に接触して回転し、感光体92の外周面を帯電させるものである。また、帯電ロール70は、金属製で円柱状の芯金22と、芯金22の外周面に被覆された導電性のゴム材Gからなる弾性層72とを有している。また、帯電ロール70は、一例として、芯金22の軸方向の中央位置におけるゴム材Gの外径が、軸方向の両端位置におけるゴム材Gの外径よりも大径とされており、クラウン形状とされている。
【0015】
[ロール製造装置]
図1には、本実施形態の一例としてのロール製造装置10が示されている。ロール製造装置10は、ゴム材G及び芯金22を排出する排出部12と、排出部12の下方に配置され後述するゴムロール部56を取り出す取出部16と、排出部12と取出部16との間に配置されゴム材Gを押圧する押圧部14とを有している。なお、以後の説明では、先方(下方)の芯金22を芯金22Aと称し、後方(上方)の芯金22を芯金22Bと称して区別する場合がある。先方の芯金22Aと後方の芯金22Bとを区別しない場合は、芯金22として説明する。
【0016】
〔排出部〕
排出部12は、いわゆるクロスヘッドダイから構成される。また、排出部12は、未加硫のゴム材Gを供給する供給部18と、供給部18から供給されたゴム材Gを円筒状に押し出す押出部20と、押出部20から円筒状に押し出されるゴム材Gの中心部Cに間隔をおいて芯金22を送り込む送込部24とを有している。
【0017】
<供給部>
供給部18は、図示の横方向に延びる円筒状の本体部26の内部にスクリュー28が回転可能に設けられている。スクリュー28は、図示の横方向を軸方向として、供給モータ30によって回転駆動される。供給モータ30は、後述する制御部80により動作制御される。また、本体部26の供給モータ30側には、ゴム材Gを投入する投入口32が設けられている。これにより、投入口32から投入されたゴム材Gは、本体部26の内部においてスクリュー28によって練られながら押出部20に向けて供給される。供給部18では、スクリュー28の回転速度を調整することで、ゴム材Gの供給速度が調整される。
【0018】
(ゴム材)
ゴム材Gは、ゴム材料、加工助剤、導電剤、可塑剤、加硫促進剤などを含んでいる。本実施形態では、ゴム材料の一例としてエピクロルヒドリンゴムを用いており、導電剤の一例としてカーボンブラックを用いている。
【0019】
ゴム材料は、エピクロルヒドリンゴムに限らず、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、天然ゴム、及びこれらのブレンドゴムが挙げられる。中でも、ポリウレタン、シリコーンゴム、EPDM、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、NBR、及びこれらのブレンドゴムが好ましく用いられる。これらのゴム材料は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0020】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼などの各種導電性金属又は合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体などの各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末が挙げられる。
【0021】
イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩などが挙げられる。
【0022】
これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。導電剤の添加量は特に制限はない。なお、電子導電剤の場合は、ゴム材料100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下の範囲であることがより好ましく、15質量部以上25質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。イオン導電剤の場合は、ゴム材料100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であることが好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲であることがより好ましい。このように、ゴム材Gは、導電性が高くなっている。
【0023】
<押出部>
押出部20は、供給部18に接続された円筒状のケース34と、ケース34の内部中心に配置された円柱状のマンドレル36と、マンドレル36の下方に配置される排出ヘッド38とを有している。
【0024】
マンドレル36は、ケース34の上側に取り付けられた保持部材40によって保持されている。排出ヘッド38は、ケース34の下側に取り付けられた保持部材42によって保持されている。そして、マンドレル36の外周面(保持部材40の外周面)と、保持部材42の内周面(排出ヘッド38の内周面)との間には、ゴム材Gが環状(円筒状)に流れる環状流路44が形成されている。
【0025】
また、マンドレル36の中心部には、芯金22が挿入される挿入孔46が図示の上下方向を軸方向として形成されている。さらに、マンドレル36の下部は、下端に向けて先細った形状を呈している。マンドレル36の下部の下方の領域は、挿入孔46から供給される芯金22と環状流路44から供給されるゴム材Gとが合流する合流部48とされている。即ち、押出部20では、合流部48に向けてゴム材Gが円筒状に押し出されると共に、円筒状に押し出されるゴム材Gの中心部Cに芯金22が送り込まれるようになっている。
【0026】
ここで、ゴム材Gは、芯金22が無い状態で、合流部48を流れて押出部20から押し出される。このときの速度を押出速度と称する。即ち、押出速度は、芯金22が無い状態で、スクリュー28の回転によりゴム材Gが排出ヘッド38から押し出されるときのゴム材Gの速度(ほぼ一定とされた速度)である。
【0027】
<送込部>
送込部24は、マンドレル36の上方に配置されるロール対50を有している。ロール対50は、複数対(一例として、3対)設けられており、各ロール対50の片側のロールは、ベルト52を介して駆動ロール54により回転されるようになっている。駆動ロール54は、後述する制御部80によって、回転速度(後述する送込速度)が制御されるようになっている。
【0028】
具体的には、駆動ロール54は、駆動モータ84により回転駆動される。駆動モータ84は、モータドライバ82で動作が制御される。さらに、モータドライバ82は、制御部80によって動作が制御される。これにより、駆動ロール54が駆動モータ84により駆動されると、各ロール対50によって挟持される芯金22が、マンドレル36の挿入孔46に向けて送られるようになっている。
【0029】
<制御部>
図2に示すように、制御部80は、コンピュータを含んで構成されている。そして、制御部80には、コンピュータを、制御手段の一例として機能させるためのロール製造プログラムが設定されている。
【0030】
具体的には、制御部80は、CPU(Central Processing Unit)80A、ROM(Read Only Memory)80B、RAM(Random Access Memory)80C、及び不揮発性メモリ80Dを有している。また、制御部80は、CPU80A、ROM80B、RAM80C及び不揮発性メモリ80Dと、入出力インターフェース(I/O)80Eとが、バス80Fを介して各々接続された構成となっている。
【0031】
入出力インターフェース80Eには、モータドライバ82が電気的に接続されており、モータドライバ82は、駆動モータ84に電気的に接続されている。この場合、例えば、ROM80Bにロール製造プログラムを書き込んでおき、これをCPU80Aが読み込むことで、CPU80Aが、モータドライバ82を制御する。なお、不揮発性メモリ80Dは、入出力インターフェース80Eを介して制御部80の外部に接続されてもよく、例えば、メモリカードなどの外部記憶装置であってもよい。
【0032】
また、
図1に示す制御部80は、送込部24によってゴム材Gに芯金22を送り込む速度(以後、送込速度と称する)の減少及び増加を制御するようになっている。送込部24による芯金22の送込速度は、一例として、ゴム材Gの押出速度及び後述する取出部16によるゴムロール部56の取出速度よりも高い設定となっている。
【0033】
芯金22の全長は、予め定められた長さL(
図3(A)参照)とされている。ここで、ロール対50によって送られる後方(図示の上方)の芯金22Bが、マンドレル36の挿入孔46に存在する先方の芯金22Aを押し、かつ先方の芯金22Aが取出部16で取り出される。このため、複数の芯金22が順次、挿入孔46内を移動するようになっている。
【0034】
また、駆動ロール54の駆動は、それぞれの芯金22の前方端(下端)がマンドレル36の先端(下端)に位置したときに一旦停止されるようになっている。一方、駆動ロール54が一旦停止されているときも、ゴム材Gの押し出しは続いている。このため、マンドレル36の下方の合流部48において、芯金22が間隔をおいて送り込まれるようになっている。
【0035】
このように、排出部12では、合流部48においてゴム材Gを円筒状に押し出すと共に、ゴム材Gの中心部Cに間隔をおいて、速度が後述する二次曲線制御された複数の芯金22が、順次、送り込まれるようになっている。これにより、ゴム材Gで芯金22の外周面が被覆されたゴムロール部56と、先方の芯金22と後方の芯金22との間でゴム材Gの中心部Cに芯金22が存在しない中間部の一例としての中空部58とが、排出ヘッド38から交互に排出されるようになっている。なお、芯金22の外周面には、ゴム材Gとの接着性を高めるためにプライマー(図示省略)が予め塗布されている。
【0036】
図3(B)に示すように、ゴムロール部56は、芯金22の外周面及び芯金22の軸方向両端の端面68がゴム材Gで被覆されたものである。ゴムロール部56の軸方向両端部のゴム材Gが芯金22の径方向に沿って切断され、芯金22の両端部が露出した状態のものが、帯電ロール70(
図3(C)参照)である。
【0037】
<押圧部>
図1に示すように、押圧部14は、1対の半円筒状の押圧部材60を有している。1対の押圧部材60は、排出部12から排出されるゴムロール部56を挟むようにして対向配置されている。各押圧部材60には、ゴムロール部56に向けて突出する突出部62が形成されている。各押圧部材60は、駆動機構(図示省略)によって、図示の左右方向及び上下方向に移動可能となっている。そして、1対の押圧部材60が、先方の芯金22Aと後方の芯金22Bとの間で、芯金22の無いゴム材Gの一部である中空部58を押圧することで、ゴム材Gが切断されるようになっている。
【0038】
<取出部>
取出部16は、1対の半円筒状の取出部材64を有している。1対の取出部材64は、排出部12から排出されるゴムロール部56を挟むようにして対向配置されている。また、各取出部材64には、ゴムロール部56の外周面形状に対応した形状の把持部66が形成されている。そして、各取出部材64は、駆動機構(図示省略)によって、図示の左右方向および上下方向に移動可能となっている。なお、取出部材64によってゴムロール部56が取り出される(引っ張り出される)ときの速度を取出速度と称する。
【0039】
図7(A)に示すように、帯電ロール70は、回転する感光体92に押し付けられた状態で回転される。このとき、帯電ロール70と感光体92との接触幅(ニップ幅)が軸方向で揃っていないと、電界強度が軸方向で不均一になり、帯電ムラが生じる可能性がある。このニップ幅を揃える方法として、帯電ロールの外形をクラウン形状(軸方向中央側の外径が両端側の外径よりも大きい形状)にすることが知られている。クラウン形状の帯電ロール70の製造方法としては、芯金22の送込速度の制御を二次曲線で制御する二次曲線制御方法がある。
【0040】
〔比較例〕
図9(A)には、比較例のゴムロール部202が示されており、
図9(B)には、比較例の帯電ロール200が示されている。ゴムロール部202は、芯金22とゴム材Gとを有しており、芯金22の送込速度が二次曲線制御されることで形成されている。帯電ロール200は、ゴムロール部202の軸方向両端部を切断したものである。ここで、帯電ロール200の製造において、二次曲線制御のみでゴムロール部202の成形を実施し、ゴムロール部202を加硫して軸方向端部の余分なゴム材Gを切断すると、ゴム材Gの残留応力が解放されて、端部にハネ部204が形成される可能性がある。ハネ部204とは、帯電ロール200の定めた外径よりも径方向外側へ突出した拡径部分を意味する。
【0041】
図7(B)に示すように、比較例の帯電ロール200について、ハネ部204が残ったまま帯電ロール200の外周面を感光体92の外周面に押し付けると、ハネ部204の付近の窪んだ部位が感光体92と接触し難くなる。このため、この窪んだ部位での押付力F2が他の部位での押付力F3よりも小さくなる。これにより、比較例の帯電ロール200を用いて感光体92の帯電を行うと、窪んだ部位と対向する感光体92の外周面の電位が定められた電位に到達せず、図示しない記録媒体上のトナー量が低下して、他の部位との画像濃度差(濃度ムラ)が生じる可能性がある。
【0042】
(送込速度の設定)
次に、制御部80における芯金22の送込速度の設定について説明する。
【0043】
比較例のハネ部204の発生を抑制する方法としては、ゴム材Gの残留応力が解放されるゴム材Gの切断予定位置の外径を、予め小さくしておくことが挙げられる。言い換えると、芯金22の送込速度をゴム材Gの切断予定位置で二次曲線制御の速度よりも増加させれば、ゴム材Gのハネ部の形成が抑制されると考えられる。
【0044】
図4には、本実施形態における芯金22(
図3(A)参照)の各軸方向位置で設定された送込速度がグラフG1として示されている。位置P0は、芯金22の先端位置であり、位置P0における送込速度はVgとなっている。位置P1は、二次曲線制御の速度(二点鎖線で示すグラフG2)に対して増速を開始する開始位置であり、位置P1における送込速度は二次曲線制御による送込速度Vdとなっている。位置P2は、余分なゴム材G(
図6(B)参照)が切断される位置に対応する芯金22の切断予定位置であり、位置P2における送込速度はVeとなっている。位置P3は、二次曲線制御の速度に対して増速が終了する(二次曲線制御に戻る)終了位置であり、位置P3における送込速度は二次曲線制御による送込速度Vbとなっている。
【0045】
位置P4は、芯金22の送込速度が最も低くなる位置であり、位置P4における送込速度はVaとなっている。なお、送込速度が最も低くなる位置P4は、ゴム材G(
図3(C)参照)の特性により芯金22の軸方向中央位置とはなっていないが、完成した帯電ロール70(
図3(C)参照)では、芯金22の軸方向中央位置であり外径が最も大きい位置に相当する。位置P5は、芯金22の後端位置であり、位置P5における送込速度はVfとなっている。ここで、位置P1、P2、P3、P4、P5は、芯金22の軸方向先端からこの順番で配置されている。
【0046】
二次曲線制御となるグラフG2における位置P2での送込速度をVcとする。ここで、芯金22の送込速度の高さは、一例として、Va<Vb<Vc<Vd<Ve<Vf<Vgとなっている。このように、本実施形態では、切断予定位置P2において、芯金22の送込速度Veを二次曲線制御された送込速度Vcよりも一時的に増加させるようになっている。
【0047】
さらに、本実施形態では、帯電ロール70(
図3(C)参照)を製造する前に実験を行い、送込速度Veを設定している。送込速度Veは、第3速度V3の一例である。具体的には、実験により、切断予定位置P2における送込速度が第1速度V1(=Vc)〔mm/s〕のときに、完成した帯電ロール70において、切断予定位置P2でのゴム材Gの外径が設定外径よりもΔd1〔μm〕大きくなったとする。Δd1〔μm〕は、帯電ロール70の切断予定位置P2での外径差である。また、送込速度のうち最も遅い速度を第2速度V2〔mm/s〕として、中央位置(ゴム材Gの外径が最も大きくなる位置)におけるゴム材Gの外径と切断予定位置P2におけるゴム材Gの外径との差が外径差Δd2〔μm〕であったとする。Δd2〔μm〕は、帯電ロール70のクラウン量である。なお、既述の送込速度Vaは、第2速度V2の一例である。Δd1、Δd2の測定は、一例として、遮光式レーザー外径測定装置(アサカ理研製:ROLL2000)を使用した。
【0048】
ここで、本実施形態では、切断予定位置P2における送込速度Veを、Ve=V3=V1+{(V1−V2)/Δd2}×Δd1で求められる第3速度V3〔mm/s〕として設定している。つまり、第1速度V1と第2速度V2との差によりゴム材Gの外径差Δd2〔μm〕が生じていることから、1〔μm〕の外径差を修正するには、送込速度の増加が(V1−V2)/Δd2〔mm/s〕必要ということになる。これにより、ゴム材Gの余分な外径差Δd1〔μm〕を減らす(修正する)には、送込速度Ve=V3=V1+{(V1−V2)/Δd2}×Δd1で設定すればよい。
【0049】
[作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0050】
本実施形態の帯電ロールの製造方法の一例によれば、
図1に示すロール製造装置10が起動されると、供給モータ30が駆動される。これにより、スクリュー28が回転駆動され、未加硫のゴム材Gが定められた押出速度で円筒状に押し出される。
【0051】
続いて、駆動モータ84が駆動されて、駆動ロール54及びロール対50が回転する。これにより、
図5(A)に示すように、先方の芯金22Aが、ゴム材Gの中心部CにグラフG1(
図4参照)の送込速度で送り込まれ始める。そして、芯金22Aの先端からの位置(芯金22の下端からマンドレル36の下端までの長さLx)がP1(
図4参照)となったとき、制御部80(
図1参照)が、グラフG1に従って、芯金22Aの送込速度の増速制御を開始する。なお、図示を省略するが、芯金22Aの先端(下端)は、押圧部材60(
図1参照)が横方向に移動することによりゴム材Gで覆われる。
【0052】
続いて、
図4に示すように、芯金22A(
図5(A)参照)の先端からの位置がP2となるときに合わせて送込速度がVeとされる。具体的には、位置P1から位置P2まで、グラフG1に従って、芯金22の送込速度が増速される。そして、位置P2から位置P3まで、グラフG1に従って、芯金22の送込速度が減速される。位置P3から位置P4を経由して位置P5までは、二次曲線制御された送込速度で芯金22Aがゴム材Gに送り込まれる。これにより、
図5(B)に示すように、クラウン状のゴムロール部56が形成される。
【0053】
続いて、芯金22の送り込み開始からの経過時間を管理することにより、1つのゴムロール部56が取り出されたことが判定される。そして、押圧部材60(
図1参照)によって中空部58のゴム材Gが押し切られることで、先方の芯金22Aの端面68及び後方の芯金22Bの端面68が、ゴム材Gによって覆われる。なお、後方の芯金22Bについても、先方の芯金22Aと同様に、グラフG1(
図4参照)に従って芯金22の送込速度が制御される。得られたゴムロール部56は、既述の加硫処理後に両端部のゴム材Gを切断することにより、帯電ロール70(
図3(C)参照)となる。
【0054】
ここで、
図6(A)に示すように、ゴムロール部56では、切断予定位置P2付近で送込速度が増速制御されたことにより、切断予定位置P2におけるゴム材Gの外径が、切断予定位置P2よりも軸方向中央側の位置に比べて小さくなる。これにより、ゴム材Gを図示しない切断装置で切断したときに、切断予定位置P2付近でのゴム材Gの残留応力が解放されて外径Gが拡大しても、ゴム材Gの外径が、定められた外径から増加することが抑制される。言い換えると、既述の比較例に比べて、帯電ロール70の軸方向の端部71にハネ部が形成されることが抑制される。
【0055】
また、本実施形態のロールの製造方法の一例によれば、切断予定位置P2での芯金22の送込速度を第3速度V3として制御している。つまり、既述の第1速度V1、第2速度V2、外径差Δd1及びクラウン量Δd2を用いて、切断予定位置P2において、第3速度V3=V1+{(V1−V2)/Δd2}×Δd1で芯金22を送り込んでいる。これにより、第3速度V3を用いない構成に比べて、切断予定位置P2で得られるゴム材Gの外径の設定外径に対する精度が上がるので、芯金22の両端部でゴム材Gの外径が増加することが抑制される。
【0056】
さらに、本実施形態の帯電ロールの製造方法の一例によれば、切断予定位置P2におけるゴム材Gの外径が、定められた外径から増加することが抑制される。このため、芯金22の両端部で弾性層72の外径が増加することが抑制される。
【0057】
ここで、
図7(A)に示すように、本実施形態の帯電ロール70では、軸方向の端部71にハネ部が形成されていない。このため、帯電ロール70の外周面を感光体92の外周面に押し付けると、帯電ロール70と感光体92との接触部に作用する押付力F1は、既述の比較例の帯電ロール200(
図7(B)参照)と比べて、帯電ロール70の軸方向でバラつきが小さくなる。これにより、帯電ロール70を用いて感光体92の帯電を行うと、感光体92の外周面が軸方向でほぼ均等に帯電されるので、記録媒体上の現像剤量の幅方向での差が抑制され、画像濃度差(濃度ムラ)が抑制される。
【0058】
<帯電ロールのハネ量評価>
芯金22の送込速度を変えて製造条件の異なる帯電ロール70、200を製造し、ハネ量評価を行った。なお、ハネ量とは、芯金22の端部位置におけるゴム材Gの外径の理想曲線とハネ部先端との差(距離)をいう。芯金22の外周面からゴム材Gの径方向外端までの距離ではない。
【0059】
ゴム材Gは、主成分をエピクロロヒドリンゴムとし、加工助剤、カーボンブラック、炭酸カルシウム、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤を配合したものを混練して得た。なお、ゴム材Gは、JISK6300−1(2001)のムーニー粘度が50であった。また、本評価に使用した芯金22は、L(全長)=354.5〔mm〕、外径φ8.0〔mm〕のSUS(ステンレス)製である。押出し機は、三葉製作所製φ60〔mm〕、スクリュー有効長さLとスクリュー外径Dとの比(L/D)が20のものを使用し、スクリュー回転数を10〔rpm〕、ダイス径をφ12.5〔mm〕、押出圧力を23〔MPa〕とした。
【0060】
上記の未加硫のゴム材Gを押出し機で押出し加工すると共に送込速度の制御パターンを変えて連続的に芯金22を押出し機に通過させた。その後、165〔℃〕で75〔min〕熱風炉に投入して加硫を行い、芯金22上にゴム材Gの加硫ゴム層である弾性層72を形成した帯電ロール70(
図3(C)参照)を得た。なお、加硫後の帯電ロール70の両端部のゴム材Gを切断して芯金22を露出させた。
【0061】
本実施形態の一例である実施例1、2の帯電ロール70と、比較例1、2、3、4、5、6、7の帯電ロール200とについて、
図8に示す評価結果が得られた。クラウン頂点の送込速度〔mm/s〕とは、送込速度Va(
図4参照)を意味している。クラウン両端部の平均送込速度〔mm/s〕とは、芯金22の先端の送込速度と後端の送込速度とを平均した速度を意味する。クラウン量〔μm〕とは、芯金22の軸方向端部のゴム材Gの外径と、軸方向中央のゴム材Gの外径との差である。望ましい部分増速量〔mm/s〕とは、ハネ量を0〔μm〕に近づけるための理想的な速度である。実際の部分増速量〔mm/s〕とは、帯電ロールの製造時に芯金22を増速させたときの速度である。
【0062】
ハネ量の評価は、クラウンの形状の近似理想曲線をベースとし、ハネ量および凹み量が±40〔μm〕以下であるものをランクA、±40〔μm〕を超え±60〔μm〕以下であるものをランクB、±60〔μm〕を超えるものをランクCとして評価した。実施例1、2は計算上算出された部分増速量を適用した例、比較例1、2、4、5は計算上算出された部分増速量に対し、過剰に増速した例、比較例3、6は、計算上算出された部分増速量に対し、増速量が不足している例、比較例7は、部分増速を行わない例である。
【0063】
ここで、
図8に示すハネ量評価結果から、本実施形態の一例である実施例1、2については、ハネ量の評価がランクAとなることが確認された。また、比較例1、2、3、4、5、6、7については、ハネ量の評価がランクB、Cとなることが確認された。
【0064】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されない。
【0065】
ゴム材Gの押出手段は、スクリュー状のものに限らず、ピストン状のものであってもよい。また、芯金22の送込手段は、ロール対に限らず、把持部を有する移動部材であってもよい。さらに、ゴムロール部56の取出手段は、ゴムロール部56を掴んで移動するものに限らず、ロール対で移動させてもよい。
【0066】
切断予定位置P2における送込速度Veについては、比較例と比べてハネ量が抑制される条件であれば、第3速度V3としなくてもよい。
【0067】
ロール製造装置10では、押圧部14により中空部58で帯電ロール70を分離するように構成したが、押圧部14により中空部58のゴム材を内方に押圧した後、図示しない他の切断部材(カッター)によって帯電ロール70を分離するように構成してもよい。
【0068】
ゴム材Gは、エピクロルヒドリンゴムを用いたものを例示したが、これに限るものではなく、他のゴム材料を用いても良い。また、帯電ロール70は、芯金22の端面68の全面が中空部58のゴム材Gによって袋とじ状に覆われていたが、これに限らず、芯金22の端面68の少なくとも周縁部が中空部58のゴム材Gによって覆われていればよい。
【0069】
本実施形態のロールの製造方法により得られるロール(完成体)は、複写機、プリンターなどの画像形成装置で使用されるが、用途は帯電ロール70に限らず、記録媒体の搬送ロール、現像ロール、転写ロールなどに用いてもよい。