特許第6623662号(P6623662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623662
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】打込機
(51)【国際特許分類】
   B25C 7/00 20060101AFI20191216BHJP
【FI】
   B25C7/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-201450(P2015-201450)
(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公開番号】特開2017-71039(P2017-71039A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕
(72)【発明者】
【氏名】大野 徹弥
(72)【発明者】
【氏名】高橋 靖典
(72)【発明者】
【氏名】栗田 就平
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−115775(JP,A)
【文献】 特開2014−091196(JP,A)
【文献】 特開平8−276377(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0136829(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0283690(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 7/00
B25C 1/04−1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち込み対象物に止具を射出するアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動を制御する制御手段と、
前記打ち込み対象物との接触によって生じる衝撃を検知するセンサと、
を備えた打込機であって、
前記制御手段は、前記センサが検知した衝撃の大きさに基づいて前記アクチュエータを制御することを特徴とする打込機。
【請求項2】
打ち込み対象物に止具を射出するアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動を制御する制御手段と、
前記打ち込み対象物との接触によって生じる衝撃を検知するセンサと、
を備えた打込機であって、
前記制御手段は、前記センサが検知した衝撃の大きさが止具の射出を行う条件を満たしている事、または満たしていない事を報知する報知手段を有していることを特徴とする打込機。
【請求項3】
前記衝撃を検知するセンサは、前記打ち込み対象物に接触したことによって打込機に生じる振動を検知するセンサであることを特徴とする請求項1または2に記載の打込機。
【請求項4】
前記衝撃を検知するセンサは、前記打ち込み対象物に接触したことによって生じる打込機の変形量を検知するセンサであることを特徴とする請求項1または2に記載の打込機。
【請求項5】
前記打込機の移動速度を検知する速度検知手段を備え、
前記制御手段は、前記速度検知手段が検知した移動速度に基づいて前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の打込機。
【請求項6】
前記打ち込み対象物との接触に伴って移動可能に構成された接触部材を備え、
前記速度検知手段は、前記接触部材の移動距離、移動速度若しくは移動時間の全て若しくは何れかを検知可能であることを特徴とする請求項5に記載の打込機。
【請求項7】
前記センサは、前記接触部材または前記接触部材と連動する部材に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の打込機
【請求項8】
前記制御手段は、前記センサが検知した衝撃の大きさに基づいて、前記アクチュエータの駆動力を決定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の打込機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は打込機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、止具の打ち込み作業における安全性を確保するために、トリガレバーの引上げ操作だけでは止具が発射されず、工具の先端に配置されたコンタクトアームの押し付けを行うことによって、打込みを可能とする誤射防止機構が広く用いられている。
しかし、トリガレバーを引いた状態でコンタクトアームを打込み部材に押し付けるようにして打込作業を行うことが多いため、意図しない部位にコンタクトアームが接触して、打込機を作動させてしまうことがあった。
そのため、意図しない部位にコンタクトアームが接触した時でもコンタクトアームが押し込まれない様に、荷重の高いばねによってコンタクトアームを突出させるなどの対応が行われており、誤射防止の確実性は向上している。しかしその一方で、通常時の操作荷重が増加したため、作業者の負担が大きくなるといった問題がある。
先行技術文献1には、ストライカーの下端側をガイドするガイドプレートの下端面に赤外線センサや超音波センサ、あるいは静電容量センサ等で形成された人体検知センサが埋め込まれた打ち込み工具が記載されている。当該打ち込み工具は、人体検知センサが人体を検知するとメインスイッチがオンとなっていてもステープルの打ち出しを停止するようになっている。
また、先行技術文献2には、釘の射出口を備えたノーズ部の前方に人体の放射する赤外線を検出する焦電型赤外線センサを設けた釘打機であって、釘の射出方向に人体の存在を認識するとトリガ及びコンタクトアームが誤って操作された場合であっても打撃機構が作動しない釘打機が記載されている。
また、先行技術文献3には、釘打ち機のボディーである機構部ハウジングに加速度センサを装着した釘打機が記載されている。当該釘打機は、予め記憶している射出方向の打込み対象へ向けて移動される釘打機の加速減速のパターン並びに移動方向と、加速度センサによって検出された加速度並びに移動方向が適合しない場合に打込み操作をしても釘を発射しないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−57635号公報
【特許文献2】特開平9−239674号公報
【特許文献3】特許第3132330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、止具の打込み作業では、打ち込み対象物を手で支えながら、もう一方の手で打込機を操作する場合がある。このように打ち込み対象物を手で支えながら打込機を動作させるような場合、特許文献1または特許文献2記載の打ち込み工具では人体検知センサが打ち込み対象物を支えた手を検知して打ち込みを停止する場合が考えられる。装置の近くに手を添えるといった場合にまで、射出を制限するのは好ましくない。
また、特許文献3記載の発明は、加速度センサの検出値によって起動停止手段の状態が起動停止と停止解除とに切り換わるようになっている。具体的には、ノーズ部を上方へ向けた姿勢で打込機が落下しても、上方へ向けて釘が発射されないというような制御を可能にしているが、打込機は床部材に上から釘を打ちつける場合や天井方向にある部材に向かって下から釘を打つ場合もある。部材に対して斜めに釘を打つ場合もあるので、部材に打込機を押し当てる際の加速度のみで打込機の動きを特定することが困難な場合もある。
本発明は当該事情に鑑み発明したものであって、使い勝手を損なうことなく、安全性を向上させた釘打機等の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
打ち込み対象物に止具を射出するアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動を制御する制御手段と、
前記打ち込み対象物との接触によって生じる衝撃を検知するセンサと、
を備えた打込機であって、
前記制御手段は、前記センサが検知した衝撃の大きさに基づいて前記アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
打ち込み対象物に止具を射出するアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動を制御する制御手段と、
前記打ち込み対象物との接触によって生じる衝撃を検知するセンサと、
を備えた打込機であって、
前記制御手段は、前記センサが検知した衝撃の大きさが止具の射出を行う条件を満たしている事、または満たしていない事を報知する報知手段を有していることを特徴とする。
【0007】
また、上記打込機であって、
前記衝撃を検知するセンサは、前記打ち込み対象物に接触したことによって打込機に生じる振動を検知するセンサであることを特徴とする。
【0008】
また、上記打込機であって、
前記衝撃を検知するセンサは、前記打ち込み対象物に接触したことによって生じる打込機の変形量を検知するセンサであることを特徴とする。
【0009】
また、上記打込機であって、
前記打込機の移動速度を検知する速度検知手段を備え、
前記制御手段は、前記速度検知手段が検知した移動速度に基づいて前記アクチュエータを制御することを特徴とする。
【0010】
また、上記打込機であって、
前記打ち込み対象物との接触に伴って移動可能に構成された接触部材を備え、
前記速度検知手段は、前記接触部材の移動距離、移動速度若しくは移動時間の全て若しくは何れかを検知可能であることを特徴とする。
【0011】
また、上記打込機であって、
前記センサは、前記接触部材または前記接触部材と連動する部材に設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、上記打込機であって、
前記制御手段は、前記センサが検知した衝撃の大きさに基づいて、前記アクチュエータの駆動力を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る打込機は、打ち込み対象物との接触によって生じる衝撃を検知し、検知した結果に基づいてアクチュエータの駆動を制御することが可能になっている。そのため、打ち込み部材に適した条件でアクチュエータを駆動させることができる。
また、打ち込み対象物との接触によって生じる衝撃の検知結果に基づいた制御を行うので、例えば接触対象物が人体特有の特徴と一致していると判断した場合には、不注意を含めた使用者の射出動作に関わらず射出を制限することが可能になり、装置としての安全性を高めることができるという効果を有している。
また、本発明は打ち込み対象物との接触によって生じる衝撃を検知し、止具の射出条件を満たしているか否かを音声や光を発する報知手段によって報知や警告を行うことが可能になっている。
接触した対象物が適切であるかを判別できるので、装置としての安全性を高めることができるという効果を有している。
【0015】
また、本発明は直接的な接触によって生じる振動や変形を検知することができるものであり、特に打ち込み対象物の硬さや弾力性等に関する情報を正確かつ瞬時に取得できるものになっている。この情報を利用することにより、例えば比較的軟らかい部材であるとか肉厚の薄い部材であると判断できる場合には、射出時の出力を抑制して弱い力で止具を打ち出すことで貫通を防止するような制御が可能になる。また、木材を想定した打込機である場合、例えば鉄骨やコンクリートといった仕様を超えた硬さを有する打ち込み対象物に止具を打ち込もうとした場合に、射出を制限して止具の跳ね返り等の発生を抑制することができるという効果を有している。
さらに、接触時に変化する振動や変形に基づいて判断するので、従来の打込み機のようにコンタクトアームをストロークさせなくても、打ち込み部材との接触の有無が検知可能になっている。従って、コンタクトアームを用いることなく安全機構を構成することができるので、コンタクトアームをストロークさせるための高い押付け力が不要になり、作業者の負担を軽減できる。
【0016】
また、本発明は打ち込み部材と接触する際の打込機の移動情報を検知できるものであり、接触時の速度や加速度等の移動情報を取得できるようになっている。これにより、打込機と部材との接触のしかたが、検出される衝撃の大きさに対して与える影響を考慮する事ができる。
例えば強く叩きつけた場合と、弱い力で押し付けた場合とを判別できるので、接触のさせ方に影響されずに、打ち込み部材の特性を正確に判断できるという効果を有している。
また、本発明は打ち込み対象物との接触に伴って移動可能に構成された接触部材によって打ち込み部材と接触する際の打込機の移動情報を検知できるものであり、接触時の速度や加速度等の移動情報を精度よく取得する事が出来る。
さらに、本発明は衝撃を検出するセンサを接触部材の周辺に配置しているので、接触時に変化する衝撃の大きさを感度良く検知することが出来る。
さらに、本発明は検知した衝撃の大きさに基づいてアクチュエータの駆動力を決定するものであるので、壁板や床板のようなボードに打込機を使用する場合には、下地材の無い部分に対する射出を制限する等、駆動力の制御が可能になるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1に係る釘打機の外観図である。
図2】実施例1に係る釘打機の正面図及び側面図である。
図3】実施例1に係る釘打機の打ち込み待機時の状態を表した作動機構の説明図である。
図4】実施例1に係る釘打機の打ち込み時の状態を表した作動機構の説明図である。
図5】実施例1に係る釘打機の打ち込みを制限した状態を表した作動機構の説明図である。
図6】硬い対象物に接してから釘の射出が可能になるまでの釘打機の状態を表した説明図である。
図7】軟らかい対象物に接してから釘の射出が可能になるまでの釘打機の状態を表した説明図である。
図8】釘打機の振り下ろし速度が同じ場合における、コンタクト部に取り付けた加速度センサの計測値を表したグラフである。
図9】釘打機の振り下ろし速度が異なる場合における、コンタクト部に取り付けた加速度センサの計測値を表したグラフである。
図10】釘打機の加速度センサによる計測値を振り下ろし速度で除算した値を表したグラフである。
図11】実施例2に係る釘打機の作動機構の説明図である。
図12】実施例3に係る釘打機の作動機構の説明図である。
図13】実施例4に係る釘打機の作動機構の説明図である。
図14】実施例5に係る釘打機の作動機構の説明図である。
図15】実施例6に係る釘打機の作動機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態として、止具の一種である釘の打込機として形成した釘打機1の形態について説明する。
図1は、釘打機1を正面斜め上方から見た状態の斜視図を表している。また、図2(a)は同釘打機1の正面図、図2(b)は同釘打機1の側面(一部同正面図のA−A線における断面図)を表している。同図に示した釘打機1は、アクチュエータとして圧縮空気を利用したシリンダ2とピストン3を有し、圧縮空気によって駆動される前記ピストン3に固定したドライバ4を用いて、所定の位置に装填した釘Kを対象物に対して射出し打ち込む装置として構成されている。
なお、ドライバ4を駆動するアクチュエータは、前記のような空気圧式のものに限らず、ガス燃焼方式のアクチュエータや電磁気的な作用を利用したもの、ばね力を利用したものなど、本発明の趣旨を逸脱しない限りに於いて方式は問わないものである。また、本実施の形態は、最適な例として釘を止具として射出する打込装置について説明するが、ねじやU字状の針(ステープル)や特殊な形態の止具など、様々なものが使用可能である。
【0019】
シリンダ2及びピストン3は、握り部を有するハンドルグリップ5の先端のハウジング6に収容されている。当該ハウジング6の下には、釘Kの装填部を有する射出路14及びコンタクトアーム7(7a)を設けている。釘Kの装填部は、釘が射出されると当該射出された釘に代わって新たな釘がマガジン8から順次供給されるようになっている。コンタクトアーム7は、射出路14に沿って移動するコンタクト部7aと、当該コンタクト部7aの移動をトリガレバー11に連動したコンタクトレバー12aに連係させるアーム部7bによって構成される。
【0020】
ハンドルグリップ5の内部は圧縮空気を貯留するエアチャンバー9になっている。当該エアチャンバー9には、ハンドルグリップ5の後端に設けたエアプラグ10を介して圧縮空気を供給するようになっている。
ハンドルグリップ5の先端とハウジング6との境界付近にはトリガレバー11を設けている。当該トリガレバー11は、トリガバルブ12と係合するコンタクトレバー12aを有している。トリガバルブ12は、前記エアチャンバー9からシリンダ2内に圧縮空気を供給するヘッドバルブを作動させるものである。トリガバルブ12の動作に伴ってヘッドバルブが作動すると、圧縮空気が流入する回路が開いて前記ピストン3を釘の射出方向に向かって駆動させるようになっている。また、トリガレバー11を戻してトリガバルブ12を復帰させると、前記ピストン3を元に戻す方向に空気を流入させドライバ4を初期位置に戻すようになっている。
【0021】
図3は、釘打機1の空気圧回路を中心とした作動機構の概略図を示している。前述の通り、ハウジング6の下には釘Kの装填部13を有する射出路14を設けている。装填部13には、釘Kの射出後にマガジン8から自動的に釘Kが装填されるようになっている。装填部13に装填された釘Kは射出路14内を通るドライバ4によって押し出され、射出路14の先端部を構成する射出部に設けた開口(射出口15)から射出されるようになっている。
ドライバ4の駆動は、エアチャンバー9からヘッドバルブ16を介してシリンダ2内に供給される圧縮空気によって行われる。また、ヘッドバルブ16は、トリガレバー11に連動して作動するトリガバルブ12を介して供給される作動圧力によって駆動され、作動圧力の消失によって開閉するように構成されたバルブである。
また、トリガバルブ12は、トリガレバー11に連動して動くコンタクトレバー12aによって駆動されるようになっている。これにより、トリガレバー11を引くことでエアチャンバー9の圧縮空気がドライバ4を駆動し、当該ドライバ4の叩打力によって釘Kを対象物に打ち込む動作を行うようになっている。
【0022】
図示した釘打機1は安全機構としてコンタクトアーム7(7a、7b)を有している。当該安全機構は、意図した対象物以外に対して釘を射出しないようにする機構であり、その機構には様々な種類がある。
本実施の形態に用いるコンタクトアーム7は、射出口15よりも突出させたコンタクト部7aを有している。そして、当該コンタクト部7aが打ち込み対象物(以下「対象物」という)に接触して射出口15付近の所定位置まで押し上げられた場合に、機構的にトリガレバー11の操作によって釘Kの射出が行われるようになっている。
以下、釘打機1に搭載したコンタクトアーム7の構造を説明するが、安全機構として機能するコンタクトアームの構造は当該例に限らないものである。
【0023】
コンタクト部7aの先端は、射出口15を設けた射出路14の先端よりも約10mm突出するように構成されている。そして、図4に示すように、当該コンタクト部7aの先端が上昇して射出路14の先端と同一程度の位置まで後退(上昇)したときに、これに連動してアーム部7bが上昇してコンタクトレバー12aの一端を押し上げるように構成されている。このときコンタクトレバー12aは、トリガバルブ12に近接する位置まで移動するが接触することはないので、射出動作は行われず、これに併せてトリガレバー11が引かれた場合に射出動作が行われる。
一方、予めトリガレバー11が引かれている場合には、この操作に連動してコンタクトレバー12aの回転軸がトリガバルブ12に近接した位置まで移動している。この状態で、アーム部7bが上昇してコンタクトレバー12aを押し上げると、トリガバルブ12の操作が行われて回路を開き釘Kの射出動作が行われるようになっている。
このように、釘打機1はトリガレバー11を引いた状態でコンタクト部7aが後退すると射出動作を行う仕様になっているので、トリガレバー11を引いた状態のまま、対象物に対して釘打機1を連続的に振り下ろしてコンタクト部7aを打ち込み対象物に接触させることで、連続的に釘打ちを行うことができる。
【0024】
一方、打込み動作が行われると、その反動により釘打機1が対象物から浮き上がる場合がある。この時にトリガレバー11を引いたままでいると、コンタクト部7aが再び対象物に着地した時に本来意図しない位置に釘を射出する可能性がある。例えば、この再接地の際に、圧縮空気を供給するエアホースや、電源コードなどの上に着地して釘を射出してしまうと、破損によって作業が中断する場合が考えられる。本実施の形態に係る釘打機1は、このような事態を極力軽減することを目的として以下の手段を設けている。以下、詳細に説明する。
まず、釘打機1は、前記コンタクトアーム7の先端部であるコンタクト部7aに、当該部位に作用する振動を検出するセンサとして加速度センサ18を設けている。
釘打機1は、コンタクトアーム7が対象物に接触して後退したことを条件として釘の射出を許容するようにしているが、これに加えて対象物に接触した際に発生する振動値を加速度センサ18によって検出する。そうすることで、コンタクト部7aを接触させた対象物の振動特性に基づいて釘の射出を制限することができる。
【0025】
前述したように、コンタクトアーム7は対象物に接すると後退するように構成されているので、対象物が木材などの適度に硬い物質であれば、コンタクト部7aは対象物に対して沈み込まず、対象物に接した反力によってコンタクトアーム7は後退する。
一方、対象物が軟らかい物質であれば、コンタクト部7aが接触するとその押圧する力によって対象物に対して沈み込みを生じ、一定量の沈み込みを伴いながらその反力によってコンタクトアーム7は後退する。
上記のような対象物が木材などの硬い物質である場合と、対象物が例えば人体のような軟らかい物質である場合では、コンタクト部7aが対象物から受ける瞬間的な衝撃も異なる。そして、この瞬間的な衝撃は、加速度センサ18による加速度として検出することができ、同じ速度で衝突した場合に発生する衝撃(加速度)の違いによって、対象物が硬いものであるか軟らかいものであるか等を推測することができる。
図5はコンタクト部7aが軟らかい対象物W’に接触した場合であって、トリガレバー11に連動したコンタクトレバー12aがトリガバルブ12を駆動してヘッドバルブ16に通じる回路を大気に開放しても、閉鎖バルブ20がこの回路を遮断してヘッドバルブ16を駆動しない状態を示している。閉鎖バルブ20による回路の遮断は、後述するように加速度センサ18によって得られた情報に基づき制御器19によって行われるものである。
【0026】
図6は、コンタクトアーム7(7a、7b)が木材等の硬い対象物Wに接触して釘打機1が射出可能になるまでの態様を順に表した説明図である。同図における(a)はコンタクトアーム7が対象物Wに接触する前の状態1H、(b)はコンタクトアーム7が対象物Wに接触した直後の状態2H、(c)はコンタクトアーム7が対象物Wと接触してコンタクトアームがトリガレバー11に連動したコンタクトレバー12aと連係してその機能を有効にするまで後退(上昇)した状態3Hを表している。
図7は、コンタクトアーム7(7a、7b)が軟らかい対象物W’に接触して上昇するまでの態様を順に表した説明図である。同図における(a)はコンタクトアーム7が対象物W’に接触する前の状態1S、(b)はコンタクトアーム7が対象物W’に接触した直後の状態2S、(c)はコンタクトアーム7が対象物W’に接触してトリガバルブ12が作動するまでコンタクトアームが後退(上昇)した状態3Sを表している。
【0027】
コンタクトアーム7は、スプリング若しくは他の手段によって射出方向に弾性的に押しつけられている。このため、コンタクトアーム7の先端部(コンタクト部7a)を対象物に押しつけて上昇させるには、前記スプリング等の押圧力を上回る力で対象物を押す必要がある。この力は、釘打機1の自重よりも大きく設定されることもあり、使用者が射出の意思をもって釘打機1を押さなければコンタクトアーム7は上昇せず釘を打つことが出来ない。また、対象物は、釘打機1の自重に加えて使用者によって付加された荷重を受けることになるので、耐荷重の大きい対象物(例えば木材等の硬いもの)の場合には荷重を受けても形状を保つことができるが、耐荷重の低い対象物(例えば軟らかいもの)の場合には荷重に負けて変形するということが起こる。
前記図6に示した各状態は、耐荷重の大きい対象物として木材等の変形しにくいものを対象物とした場合を表している。また図7に示した各状態は、耐荷重の低い軟らかい素材を対象物とした場合であって、コンタクト部7aとの接触に伴ってD1に示した量だけ凹み、さらにコンタクト部7aが後退する程度まで押圧した時に前記D1よりもさらに深くD2に示した量だけ凹んだ状態を表している。
【0028】
図8及び図9は、コンタクト部7aに取り付けた加速度センサ18による計測値を表したものであり、横軸を時間(msec)とし、縦軸を加速度(G:重力加速度=9.8m/sec)として表したものである。
横軸は、対象物に対するコンタクト部7aに加速度が発生した時点を原点(0)とした経過時間を表している。また、実線で表した曲線は、硬い部材の一例として木材(W)に対してコンタクト部7aを接触させた際の加速度の変化を表したグラフであり、破線で表した曲線は、軟らかい部材の一例として人間(W’)に対してコンタクト部7aを接触させた際の加速度の変化を表したグラフである。また、同図中に記載した状態1H、状態2H、状態3Hは前記図6中に示した図(a)〜(c)の各状態に対応し、状態1S、状態2S、状態3Sは前記図7中に示した図(a)〜(c)の各状態に対応している。
図8は対象物の硬/軟が、検出される加速度にどのような影響を与えるかを示し、図9は釘打機1の重力方向に沿った振り下ろし速度の違い(速い/遅い)が、検出される加速度にどのような影響を与えるかを示している。
【0029】
図8に示した測定結果は、硬い対象物Wと軟らかい対象物W’の双方に対して、それぞれ同じ速度で釘打機1を振り下ろしてコンタクト部7aを接触させた場合を示している。
振り下ろし速度が同一である場合、硬い対象物Wに接触させた場合と軟らかい対象物W’に接触させた場合において、接触(状態2H、状態2S)直後の短時間に生じる加速度が明らかに相違していることが解る。グラフに示した例では、硬い対象物Wの場合には瞬間的な加速度のピーク値PH1が70Gを超えているのに対して、軟らかい対象物W’の場合には瞬間的な加速度のピーク値PS1が20G程度であり、前記例の1/3以下の値である。すなわち、振り下ろし速度が等しい場合には、部材の硬さに応じて接触時に釘打機1が受ける衝撃加速度が大きくなることを示している。
振り下ろし時に釘打機1が有していた運動エネルギーは、硬い対象物Wに接触させた場合、コンタクト部と対象物Wを振動させるエネルギーに変換されるが、軟らかい対象物W‘に接触させた場合、運動エネルギーの一部は対象物を変形させるために費やされて検出される振動は小さくなると考えられ、検出される加速度は、対象物の硬さによって変動するものであることが解る。
【0030】
一方、図9に示した測定結果は、硬い対象物Wと軟らかい対象物W’によって、コンタクト部7aを対象物に接触させる釘打機1の振り下ろし速度を異ならせた場合を示している。具体的には、硬い対象物Wでは釘打機1を振り下ろす速度を遅く、軟らかい対象物W’では速度を速くした状態でコンタクト部7aを接触させている。図9では、このような振り下ろす速度を変えた結果として、硬い対象物Wの場合における瞬間的な加速度のピーク値PH2と、軟らかい対象物W’の場合における瞬間的な加速度のピーク値PS2が同様の値になる場合があることを示している。
すなわち、具体的な速度の明示は省略するが、上記の例は振り下ろす速度次第で検知される加速度が変動することを示している。具体的には、振り下ろす速度が速くなると瞬間的な加速度は大きくなり、振り下ろす速度が遅くなると瞬間的な加速度は小さくなる傾向を示すことが解る。
このように、加速度は前述したように対象物の硬さによって変動するものであるが、その一方において振り下ろす速度によっても異なるものであり、かつ対象物の硬さと振り下ろす速度との間に一定の関係があるものである。
【0031】
図10は、加速度センサ18によって検出された加速度を、振り下ろし速度によって除算した値を示している。すなわち、図10の縦軸は、速度に対する加速度の変化率を表している。
振り下ろし速度は、打ち込み対象物との接触によって後退するコンタクトアームの移動速度でもあるのでコンタクトアームの変位を検出する変位センサ17から得られた移動距離と移動に要した時間をもとに(移動距離/時間)得ている。なお、非接触式のセンサを用いて、打込み対象物との距離の変化から算出してもよい。
図10のグラフを見ると、硬い対象物Wに接触したコンタクト部7aの加速度の変化率が有するピーク値PH3と、軟らかい対象物W’に接触したコンタクト部7aの加速度の変化率のピーク値PH3とを比較すると、前者は後者の2倍以上の値を示している。
【0032】
前述したように、図8及び図9に示されたデータから、振り下ろし速度が大きくなると加速度も大きくなり、振り下ろし速度が小さくなると加速度も小さくなるという関係を有していることがわかる。
このため、各加速度をその時の振り下ろし速度で除算した値(正規化した値)を取得すると、当該加速度の変化率は速度によって生じる影響を軽減したものとなり、接触した部材(対象物)の硬さを反映した値を示すようになるので、加速度だけでなく、接触時の速度情報を用いることで、部材の硬さを判別する精度を上げることができる。
図10のグラフはこのような値を表したものであり、例えばコンタクト部7aが木材に接触した時に得られるデータを基準として、接触時の加速度が当該基準の1/2以下程度を下回った場合には、本来対象物としていない人間や他の物体に接触しているものと判断して射出を制限する等の制御が可能になる。
【0033】
釘打機1は、前述した加速度センサ18及び変位センサ17から取得した情報の演算を行う制御器19を有している。制御器19は、CPU等の演算手段、プログラムを記憶したROM、RAM等の記憶手段、制御回路、電源等から構成され、釘の射出を制限する制限手段の制御機能も備えている。
本実施の形態では、釘の射出を制限する制限手段として、電磁弁である閉鎖バルブ20を設けている。当該閉鎖バルブ20は、制御器19の制御に応じてトリガバルブ12とヘッドバルブ16を接続する管路を開閉するように配置されるものであり、当該閉鎖バルブ20を閉じることでトリガバルブ12の出力を伝達しないことにより、ヘッドバルブ16の作動を制限して、釘の射出を制限するようになっている。
なお、本実施の形態では制限手段の一例として閉鎖バルブ20を設けているが、トリガレバー11の操作を無効にする等、トリガレバー11を操作しても釘の射出を制限できるものであれば他の手段を用いても差し支えないものである。
【0034】
以上のように、本発明に係る打込機は、打ち込み対象物との接触によって得られる接触時の挙動を加速度センサを利用して計測することで、打ち込みを許容するか否かの制御を可能にしている。
加速度センサは、打ち込み対象物が目的対象物であるかそれ以外のものであるかを判断するために使用しているが、同様の機能を発揮することができれば加速度センサに代えてロードセル、変位センサ、歪みセンサ、硬度計を用いても差し支えが無いものである。
また、前述した打込機では、コンタクトアームに物理量を検知する手段として加速度センサを設けているが、別途打ち込み対象物に接触するプローブを設け、当該プローブから打ち込み対象物との接触に伴う物理量を取得するようにしてもよい。
【0035】
打ち込み対象物との接触に伴う物理量の検出結果は、前述のようにトリガ操作を無効にして釘の発射を抑制するような使い方をすることができる。
さらに、接触後の所定時間内のみ止具の射出を許容するように構成することで、実際に接触した後でなければトリガレバーを操作しても止具の射出が制限されるような装置を構成することも可能である。それにより、例えば、部材に接触させたあとに打込み機を空中に向け、止具を射出するといった、本来の用途ではない使用方法を制限することが可能になる。
また、検出結果に応じて、発射を抑制するアラーム音や発射を許容する信号音、危険を知らせる発光色による発光や発射を許容するような色彩の発光を行わせることができる。
【0036】
前述したようにコンタクトアーム7は10mmの動作ストロークを有する。これをエンコーダのように移動位置を特定できるセンサによって構成すると、コンタクトアームの先端が、全行程が10mmである動作ストローク内のどの位置に存在しているのかを電気的に処理可能な情報として取得することができる。
全行程をどの程度細かく分割した位置情報として取得するかという分解能の程度は、情報の処理速度、得られる効果、効率、手段を構成する価格その他の条件に基づき、その時点で最適なものを採用すればよい。
分解能の一例としては、コンタクトアームの位置を対象物Wに接触していない始点(10mm地点)、中点(5mm地点)、射出可能となる終点(0mm地点)というような特定の位置(コンタクト部7a先端の突出量)として取得することができる。また、10mmの工程を10分割として1mm単位で位置を取得しても良いし、さらに細かく分割して位置を取得しても良い。
【0037】
上記のように変位センサ17は実際の移動距離を取得できるものであるが、これに時間的な要素を付加すると、コンタクトアームの挙動をより細かく定量的に把握することができるようになる。
例えば、前記の例では始点(10mm地点)から中点(5mm地点)に至るまでの時間、中点(5mm地点)から射出可能となる終点(0mm地点)に至るまでの時間を得ることができる。また、全工程の中におけるコンタクトアームの速度の変化を定量的に把握できるようになる。このような情報を別途設けた後述する加速度センサから取得する情報と組み合わせて総合的に判断したり、別途統計的に取得した情報と比較する等して、危険な使用状態であれば射出を制限する等の処置を可能とすることが出来る。
また、使用するセンサの種類は、赤外線の反射光や透過光を利用した光学的な検出手段、電気的な接触、磁気作用、電波、超音波を含む音を利用した検出手段、加速度センサを利用した検出手段など種々のものが利用可能である。
なお、前記の例では前記変位センサ17をコンタクトアームの挙動を検出するように構成しているが、ハウジング6にセンサを設けて釘打機1自体の移動速度を検出するようにしてもよい。
【0038】
(第2実施例)
次に釘打機の他の例(釘打機100)を図11を用いて説明する。
当該釘打機100はヘッドバルブ101によって制御されるシリンダ2とピストン3(ドライバ4)からなるアクチュエータを有し、前述したトリガレバー11と略同一の構成を有するトリガレバー111の操作に基づいてドライバ4を駆動し釘Kを射出するものである。また、釘打機100は、前述の例と同様に安全機構として作用するコンタクトアーム7(7a、7b)を有している。当該コンタクトアーム7の先端部であるコンタクト部7aには、当該部位に作用する加速度を検出する加速度センサ18を設けている。さらに、当該釘打機100はコンタクトアーム7の挙動検出手段として、移動(位置の変位)を検出する変位センサ17を設けている。これらの構成は前述した釘打機1と同様である。釘打機100は、その他の構成として釘打機1と同様の構成を有するものであるが、同一の構成については釘打機1の説明として前述した通りであるので、図中に同一の符号を付し具体的な説明は省略する。
【0039】
当該釘打機100は、ドライバ4を駆動するためのヘッドバルブ101として電磁バルブを用いている。当該ヘッドバルブ101は、空気圧を利用した駆動圧力によって開閉するバルブではなく、制御器119からの駆動電力によって動作するソレノイドによりバルブの開閉を行うものである。
制御器119は、概ね前述した制御器19と略同様の構成を要するものであり、当該釘打機100に搭載した各手段の制御に必要な構成を備えている。
制御器119は、前述した変位センサ17および加速度センサ18によって検出した信号を受信するように回路が構成されている。また、トリガレバー111の操作を検出する通電式の接点を有するトリガスイッチ102を有し、当該トリガスイッチ102による検出信号を制御器119によって受信するように回路が構成されている。当該トリガスイッチ102の形態は、マイクロスイッチやリードスイッチのようなものでもよく、トリガレバー111の操作を電気的な信号として取得することができるものであればその形態や方法は問わないものである。
【0040】
当該釘打機100は、変位センサ17および加速度センサ18の一方若しくは双方からの情報を処理して釘打機100が接触したものが意図した打ち込み対象物であるか、あるいはそれ以外のものであるかを判断して、トリガレバー111の操作を有効とするか無効とするかを決定する。トリガレバー111の操作はトリガスイッチ102によって制御器119に伝達されるが、止具の射出を許容すると判断した場合には制御器119がヘッドバルブ101に駆動信号を送りドライバ4による射出動作を行わせる。また、止具の射出を許容しないと判断した場合にはトリガレバー111の操作は無効であると認識しドライバ4による射出動作を行わないようになっている。
【0041】
従来一般の空気圧駆動式の手持ち式の釘打機は、コンタクトアームの動作に基づいて機械的な機構若しくは空気圧を用いたシーケンス回路によってトリガレバーの操作を有効にしたり無効にしたりするものが主であった。本実施例は、手持ち式の釘打機でありながら電気的な制御によってトリガレバーの操作を有効若しくは無効にするという新たな釘打機を提供するものとなっている。
【0042】
(第3実施例)
次に釘打機の他の例(釘打機200)を図12を用いて説明する。
当該釘打機200はヘッドバルブ201によって制御されるシリンダ2とピストン3(ドライバ4)からなるアクチュエータを有し、トリガレバー211の操作に基づいてドライバ4を駆動し釘Kを射出するものである。トリガレバー211は、前述したトリガレバー11と略同一の構成を有するものである。また、釘打機200は、前述の例と同様に安全機構として作用するコンタクトアーム7を有している。当該コンタクトアーム7の先端部であるコンタクト部7aには、当該部位に作用する加速度を検出する加速度センサ18を設けている。さらに、当該釘打機200はコンタクトアーム7の挙動検出手段として、移動(位置の変位)を検出する変位センサ17を設けている。これらの構成は前述した釘打機1と同様である。釘打機200は、その他の構成として釘打機1と同様の構成を有するものであるが、同一の構成については釘打機1の説明として前述した通りであるので、図中に同一の符号を付し具体的な説明は省略する。
【0043】
当該釘打機200は、ドライバ4を駆動するためのヘッドバルブ201として圧縮空気を作動圧力として駆動するバルブを用いている。当該ヘッドバルブ201は、電磁バルブとして構成された制御バルブ202が出力する作動圧力を受けて動作するようになっている。
制御器219は、概ね前述した制御器19と略同様の構成を要するものであり、当該釘打機200に搭載した各手段の制御に必要な構成を備えている。制御器219は、前述した変位センサ17および加速度センサ18によって検出した信号を受信するように回路が構成されている。また、トリガレバー211の操作を検出する通電式の接点を有するトリガスイッチ203を有し、当該トリガスイッチ203による検出信号を制御器19によって受信するように回路が構成されている。当該トリガスイッチ203の形態は、マイクロスイッチやリードスイッチのようなものでもよく、トリガレバー211の操作を電気的な信号として取得することができるものであればその形態や方法は問わないものである。
【0044】
当該釘打機200は、前述した釘打機1、釘打機100と同様に変位センサ17および加速度センサ18の一方若しくは双方からの情報を処理して釘打機200が接触したものが意図した打ち込み対象物であるか、あるいはそれ以外のものであるかを判断して、トリガレバー211の操作を有効とするか無効とするかを決定する。トリガレバー211の操作はトリガスイッチ203によって制御器219に伝達されるが、止具の射出を許容すると判断した場合には制御器219が制御バルブ202を制御してヘッドバルブ201に作動圧力を出力し、これによりヘッドバルブ201を駆動してドライバ4による射出動作を行わせる。また、止具の射出を許容しないと判断した場合にはトリガレバー211の操作は無効であると認識しドライバ4による射出動作を行わないようになっている。
【0045】
以上説明した本発明に係る各打込機は、打ち込み対象物に接触するコンタクトアームを有し、トリガレバーと連携することで操作を有効にする従来のメカニカルな安全機構に加え、接触部材であるコンタクトアームが打ち込み対象物と接触することによって得られる接触時の振動を加速度センサを利用して計測することで、打ち込みを許容するか否かの制御を可能にしたものである。
加速度センサは、打ち込み対象物が目的対象物であるかそれ以外のものであるかを判断するために使用しているが、同様の機能を発揮することができれば他の検出手段を用いても差し支えない。振動を検出するセンサとしての加速度センサに代えて圧電素子を用いても良いし、変形量を検出するセンサとして、歪センサ、ロードセル、変位センサ、硬度計を用いても良い。さらに、マイクなどで接触時に発生する音を集音して判断に使用しても良い。
また、前述した打込機では、接触部材であるコンタクトアームに物理量の一つである加速度を検出する加速度センサを設けているが、コンタクトアームに連動して作動する別部材を設け、打ち込み対象物との接触に伴う物理量を取得するようにしてもよい。また、別途打ち込み対象物に接触するプローブを設け、当該プローブから打ち込み対象物との接触に伴う物理量を取得するようにしてもよい。
【0046】
(第4実施例)
次に釘打機の他の例(釘打機300)を図13を用いて説明する。
当該釘打機300は、ヘッドバルブ301によって制御されるシリンダ2とピストン3(ドライバ4)からなるアクチュエータを有し、トリガレバー311の操作に基づいてドライバ4を駆動し釘Kを射出するものである。コンタクト部7aには、当該部位に作用する加速度を検出する加速度センサ18と、コンタクト部7aの挙動検出手段として、移動(位置の変位)を検出する変位センサ17とが設けられている。なお、前述した各実施例に係る釘打機とは異なりトリガレバー311と連携するアーム部は備えず、トリガレバー311の操作をトリガスイッチ302が常に検知できるように構成されている。釘打機300は、その他の構成として釘打機100と同様の構成を有するものであるが、同一の構成については前述した通りであるので、図中に同一の符号を付し具体的な説明は省略する。
【0047】
制御器319は、概ね前述した制御器19と略同様の構成を要するものであり、当該釘打機300に搭載した各手段の制御に必要な構成を備えている。制御器319は、前述した変位センサ17および加速度センサ18によって検出した信号を受信するように回路が構成されている。また、トリガスイッチ302はトリガレバー311の操作を検出する通電式の接点を有するものであり、トリガスイッチ302による検出信号が制御器319によって受信されるように構成されている。
【0048】
当該釘打機300は、前述した各釘打機と同様に変位センサ17および加速度センサ18の一方若しくは双方からの情報を処理して釘打機300が接触したものが意図した打ち込み対象物であるか、あるいはそれ以外のものであるかを判断して、トリガレバー311の操作を有効とするか無効とするかを決定する。トリガレバー311の操作はトリガスイッチ302によって制御器319に伝達されるが、止具の射出を許容すると判断した場合には制御器319がヘッドバルブ301を駆動してドライバ4による射出動作を行わせる。
【0049】
本実施形態による釘打機300は、打ち込み対象物に接触するコンタクトアームを有し、変位センサ17や加速度センサ18の出力に基づいて打ち込み対象物に接触したことを検知するようになっている。そして、検知結果に基づいて制御器319が打ち込みを許容するか否かの判断を行い、この判断に基づきヘッドバルブ301の駆動による止具の射出を制御している。このため、メカニカルな安全機構を備えていなくても、打ち込みを許容するか否かの制御を可能にしている。
【0050】
(第5実施例)
次に釘打機の他の例(釘打機400)を図14を用いて説明する。
当該釘打機400は、ヘッドバルブ401によって制御されるシリンダ2とピストン3(ドライバ4)からなるアクチュエータを有し、トリガレバー411の操作に基づいてドライバ4を駆動し釘Kを射出するものである。トリガレバー411は、前述したトリガレバー311と略同一の構成を有するものである。
コンタクト部7aには、当該部位に作用する加速度を検出する加速度センサ18と、コンタクト部7aの挙動検出手段として、移動(位置の変位)を検出する変位センサ17とが設けられているが、トリガレバー411と連携するアーム部は備えず、トリガレバー411の操作を、トリガスイッチ403が常に検知できるように構成される。
釘打機400は、その他の構成として釘打機400と同様の構成を有するものであるが、同一の構成については前述した通りであるので、図中に同一の符号を付し具体的な説明は省略する。
【0051】
制御器419は、概ね前述した制御器19と略同様の構成を要するものであり、当該釘打機400に搭載した各手段の制御に必要な構成を備えている。制御器419は、前述した変位センサ17および加速度センサ18によって検出した信号を受信するように回路が構成されている。また、トリガレバー411の操作を検出する通電式の接点を有するトリガスイッチ403を有し、当該トリガスイッチ403による検出信号を制御器419によって受信するように回路が構成されている。
【0052】
当該釘打機400は、前述した各釘打機と同様に変位センサ17および加速度センサ18の一方若しくは双方からの情報を処理して釘打機400が接触したものが意図した打ち込み対象物であるか、あるいはそれ以外のものであるかを判断して、トリガレバー411の操作を有効とするか無効とするかを決定する。トリガレバー411の操作はトリガスイッチ403によって制御器419に伝達されるが、止具の射出を許容すると判断した場合には制御器419が制御バルブ402を制御してヘッドバルブ401に作動圧力を出力し、これによりヘッドバルブ401を駆動してドライバ4による射出動作を行わせる。また、止具の射出を許容しないと判断した場合にはトリガレバー411の操作は無効であると認識しドライバ4による射出動作を行わないようになっている
【0053】
本実施形態による釘打機400は、打ち込み対象物に接触するコンタクトアームを有し、変位センサ17や加速度センサ18の出力に基づいて打ち込み対象物に接触したことを検知するようになっている。そして、検知結果に基づいて制御器419が打ち込みを許容するか否かの判断を行い、この判断に基づきヘッドバルブ401の駆動による止具の射出を制御している。このため、メカニカルな安全機構を備えていなくても、打ち込みを許容するか否かの制御を可能にしている。
【0054】
(第6実施例)
次に釘打機の他の例(釘打機500)を図15を用いて説明する。
当該釘打機500はヘッドバルブ501によって制御されるシリンダ2とピストン3(ドライバ4)からなるアクチュエータを有し、トリガレバー511の操作に基づいてドライバ4を駆動し釘Kを射出するものである。釘打機500は、前述の釘打機が備えていたコンタクトアーム7を有していない。打ち込み対象物と射出路の接触に伴い射出路に作用する加速度や他の物理量を検出する加速度センサ18を設けている。釘打機500は、その他の構成として前述した釘打機と同様の構成を有するものであるが、同一の構成については図中に同一の符号を付し具体的な説明は省略する。
【0055】
制御器519は、前述した加速度センサ18によって検出した信号を受信するように回路が構成されている。また、トリガレバー511の操作を検出する通電式の接点を有するトリガスイッチ503を有し、このトリガスイッチ503による検出信号を制御器519によって受信するように回路が構成されている。当該トリガスイッチ503の形態は、マイクロスイッチやリードスイッチのようなものでもよく、トリガレバー511の操作を電気的な信号として取得することができるものであればその形態や方法は問わないものである。
【0056】
当該釘打機500は、加速度センサ18からの情報を処理して釘打機500が接触したものが意図した打ち込み対象物であるか、あるいはそれ以外のものであるかを判断して、トリガレバー511の操作を有効とするか無効とするかを決定する。トリガレバー511の操作はトリガスイッチ503によって制御器519に伝達されるが、止具の射出を許容すると判断した場合には制御器519がヘッドバルブ501に作動圧力を出力し、これによりヘッドバルブ501を駆動してドライバ4による射出動作を行わせる。また、止具の射出を許容しないと判断した場合にはトリガレバー511の操作は無効であると認識しドライバ4による射出動作を行わないようになっている。
【0057】
さらに、適切な検出が可能であれば、射出路以外の本体部(ハンドルグリップ5、ハウジング6、マガジン8)に加速度センサを設けても差し支えないものである。
【0058】
本実施の形態では、コンタクトアームを持たなくても、従来のコンタクトアームを用いた釘打機と同様な操作による打込作業が可能であり、使い勝手に影響することが無い。
また、従来のメカニカル方式の安全機構よりも確実に意図しない打込動作を防止するとともに、押し付ける荷重を低減(不要に)する新たな釘打機を提供するものとなっているので、作業者への負担を軽減できるものである。
【0059】
打ち込み対象物との接触に伴う物理量の検出結果は、前述のようにトリガ操作を無効にして釘の発射を抑制するような使い方をすることができる。また、検出結果に応じて、発射を抑制するアラーム音や発射を許容する信号音、危険を知らせる発光色による発光や発射を許容するような報知手段を設け色彩の発光等を行わせることができる。
また、検出結果に応じてアクチュエータの出力を制御することもできる。例えば、空気圧を用いてアクチュエータを作動させる打込機の場合、バルブの開度を制限したり、バルブを解放する時間を制限するなどによって出力の調整が可能である。電動モータをアクチュエータとする場合は、電流や電圧の制限で出力調整が可能である。バネを用いる打込機では、バネの撓み量を制御することで出力を調整することが可能である。
また、検出結果から対象物の硬さを判断し、予測される打ち込みの反動に応じて反動吸収機構の動きを制御する事も可能である。
以上説明した各種の実施例は、種々組み合わせて実施することが出来るものである。また、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々設計変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、対象物との実際の接触により取得した物理的な情報に基づいて装置の駆動力の調節や稼働の許可/制限を行う各種機器、工具等に利用可能である。特に釘打機に対する利用に適している。
【符号の説明】
【0061】
1、100、200、300、400、500 釘打機
2 シリンダ
3 ピストン
4 ドライバ
5 ハンドルグリップ
6 ハウジング
7 コンタクトアーム
7a コンタクト部
7b アーム部
8 マガジン
9 エアチャンバー
10 エアプラグ
11 トリガレバー
12 トリガバルブ
12a コンタクトレバー
14 射出路
15 射出口
16 ヘッドバルブ
17 変位センサ
18 加速度センサ
19 制御器
20 閉鎖バルブ
102 トリガスイッチ
202 制御バルブ
K 釘
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15