(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623704
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】内燃機関のアース構造
(51)【国際特許分類】
F02B 77/00 20060101AFI20191216BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
F02B77/00 P
B60R16/02 650Y
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-222130(P2015-222130)
(22)【出願日】2015年11月12日
(65)【公開番号】特開2017-89532(P2017-89532A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】末岡 大佑
(72)【発明者】
【氏名】水上 直樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】松永 務
【審査官】
西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−246888(JP,A)
【文献】
特開2012−246887(JP,A)
【文献】
特許第3415742(JP,B2)
【文献】
特開平10−302592(JP,A)
【文献】
特開平02−310427(JP,A)
【文献】
特開2016−024920(JP,A)
【文献】
実公平06−019771(JP,Y2)
【文献】
特開2008−303811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 77/00
B60R 16/02
F01M 1/16− 1/20
F01M 11/06、11/10−11/12
F02D 35/00、41/00
F16N 29/00
H01R 4/48、 4/64
H01R 11/12
H01H 35/24−35/26、35/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体にボルトにて締結される樹脂製ボディと、
前記ボディに取り付けられる電気部品と、
前記電気部品を前記エンジン本体にアースすべく前記電気部品を前記ボルトに電気的に接続する導電部材と、を備え、
前記電気部品は、前記ボディに取り付けられたときに前記ボディと間隔を隔てて対向する導電面部を有し、
前記導電部材は、前記ボディと前記導電面部の間に圧縮状態で設けられるバネ部を備えた
ことを特徴とする内燃機関のアース構造。
【請求項2】
前記バネ部は、一方向に延びる金属板の一端部を折り返して形成される請求項1に記載の内燃機関のアース構造。
【請求項3】
前記ボディはナット部を有し、前記電気部品は、前記ナット部に締結されるネジ部を有し、前記バネ部は、前記ネジ部を挟むような二股状に形成される請求項1又は2に記載の内燃機関のアース構造。
【請求項4】
前記電気部品が、前記ボディに形成された油路の油圧を検出する油圧スイッチである請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関のアース構造。
【請求項5】
前記導電部材は、前記ボルトで前記ボディに合わせ止めされる被締結部を備える請求項1から4のいずれかに記載の内燃機関のアース構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のアース構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダブロック等を含むエンジン本体には、電気部品としての油圧スイッチが取り付けられると共に、オイルフィルタアッセンブリが取り付けられる。油圧スイッチはシリンダブロックに直接取り付けられてボディアースされる。またオイルフィルタアッセンブリは、金属製のボディにオイルフィルタ等の部品を複数組み付けて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−271623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、簡素化のため、油圧スイッチをオイルフィルタアッセンブリのボディに取り付け、軽量化のため、そのボディを樹脂化することが考えられる。この場合、油圧スイッチがシリンダブロックに導通しなくなり、油圧スイッチのボディアースが行えなくなる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、樹脂製ボディに電気部品を取り付けた場合でも電気部品のアースを行うことができる内燃機関のアース構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明は、エンジン本体にボルトにて締結される樹脂製ボディと、前記ボディに取り付けられる電気部品と、前記電気部品を前記シリンダブロックにアースすべく前記電気部品を前記ボルトに電気的に接続する導電部材と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る内燃機関のアース構造によれば、樹脂製ボディに電気部品を取り付けた場合でも電気部品のアースを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るアース構造が適用されたオイルフィルタアッセンブリの要部拡大断面図である。
【
図2】オイルフィルタアッセンブリの要部拡大正面図である。
【
図3】オイルフィルタアッセンブリの正面図である。
【
図6】油圧スイッチ、ボディ及び導電部材の位置関係を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0010】
図3及び
図6に示すように、オイルフィルタアッセンブリ1は、樹脂で形成されたボディ(本体)2と、ボディ2に設けられたオイルフィルタ3と、ボディ2に設けられたオイルクーラ4と、ボディ2に設けられた電気部品としての油圧スイッチ5とを備える。
【0011】
図1及び
図6に示すように、ボディ2には、ボルト孔6が複数形成されている。ボルト孔6は、内燃機関たるディーゼルエンジンのエンジン本体7(具体的には、シリンダブロック)にボディ2を締結するためのボルト8を挿通させるものであり、ボディ2の外周部に複数形成されている。エンジン本体7には、ボルト8と螺合・締結されるネジ穴7aがボルト孔6の位置に対応して形成されている。ボルト孔6は、ボディ2を成形するとき、筒状のカラー9が一体に設けられることでカラー9の内側に形成される。カラー9は金属等の導電材からなり、ボディ2の厚みと同じ長さに形成されている。すなわち、カラー9は、一端がボディ2の表面2aと面一となる位置で露出すると共に、他端がボディ2の取付面2bと面一となる位置で露出する。これにより、カラー9の他端は、エンジン本体7と当接されるようになっている。なお、ボディ2の樹脂材料がボルト締結に十分な強度を有する場合、カラー9は必ずしも必須でなく省略可能である。
【0012】
図4に示すように、ボディ2には、エンジンオイルをオイルフィルタ3及びオイルクーラ4に導入する導入油路10が形成されると共に、エンジンオイルをエンジン本体7に戻す戻し油路(図示せず)が形成される。
【0013】
導入油路10は、エンジン本体7のオイルギャラリ11に接続されており、オイルギャラリ11からのエンジンオイルをオイルフィルタ3及びオイルクーラ4に導入する。また、ボディ2には、後述する油圧スイッチ5に油圧を導入すべく導入油路10から分岐する油圧導入路12が形成されている。
【0014】
また、
図1及び
図4に示すように、ボディ2は、油圧スイッチ5を取り付けるためのナット部13を一体的に有する。ナット部13は、金属等の導電材で形成されたテーパナットからなり、油圧導入路12に臨んで配置される。ナット部13は、開口13aが油圧導入路12内に位置されており、ナット部13に螺合された油圧スイッチ5まで油圧が導入されるようになっている。また特に、ナット部13は、いずれかのボルト孔6と近接するように配置されると共に、ボルト孔6の軸と平行な中心軸を有する。
【0015】
油圧スイッチ5は、ナット部13に締結される締結ボディ14と、締結ボディ14に設けられるセンサ部15とを備える。締結ボディ14は、金属等の導電材からなる。締結ボディ14は、ナット部13に液密に締結されるネジ部14aを有すると共に、ネジ部14aがナット部13に締結されたときナット部13の端面と軸方向に間隔を隔てて対向する導電面部14bを有する。ネジ部14aは、テーパネジからなる。導電面部14bは、ネジ部14aの外周側に拡がるリング状に形成されると共に外径がナット部13と略同じに形成されている。ネジ部14aには、エンジンオイルが導入される中心孔(図示せず)が形成されており、センサ部15に油圧が供給されるようになっている。
【0016】
また、油圧スイッチ5には、図示しないハーネスを介してエンジンコントロールユニット(以下、ECU:図示せず)が接続されている。ECUは、油圧スイッチ5が検出する油圧に応じて図示しない油圧警告灯を点灯させるようになっている。
【0017】
図1、
図2及び
図5に示すように、油圧スイッチ5には、ボルト8を介してエンジン本体7にアースする導電部材16が設けられている。ここで、内燃機関は車両に搭載され、内燃機関のエンジン本体7は車両の車体(図示せず)に電気的に接続されている。車体は、図示しないバッテリのマイナス極に電気的に接続されており、油圧スイッチ5は、エンジン本体7と電気的に接続されることでアースされる。
【0018】
導電部材16は、金属板を加工して形成されたクリップからなる。導電部材16は、ナット部13及び導電面部14bの間にナット部13の軸方向に圧縮された状態で設けられるバネ部17と、ボルト8でボディ2に合わせ止めされる被締結部18とを備える。被締結部18は、油圧スイッチ5に最も近いボルト8とボルト孔6を用いてボディ2に合わせ止めされる。バネ部17は、一方向に延びる金属板の一端部を板厚方向に、かつ、鋭角に折り返して形成されている。また、バネ部17は、油圧スイッチ5のネジ部14aを挟むような二股状に形成されている。またさらに、バネ部17の折り返し部17aは、長手方向の中央が曲面状に膨らむように湾曲して形成されており、ナット部13と導電面部14bとの間に滑らかに挿入できるようになっている。被締結部18は、金属板の他端部にボルト8を挿通させる挿通孔18aを設けて形成されている。なお、導電部材16は、金属板を加工して形成されるものとしたが、他の導電材からなるものであってもよい。また、被締結部18は、金属板の他端部にボルト8を挿通させるためのU字状の切欠等を形成したものであってもよい。
【0020】
図7に示すように、オイルフィルタアッセンブリ1に導電部材16を取り付ける場合、まず、オイルフィルタアッセンブリ1のナット部13に油圧スイッチ5のネジ部14aを螺合させて油圧スイッチ5を取り付ける。ネジ部14aは、所定トルクまで締め込むことでナット部13と液密に締結されるようになっている。この締結状態において、油圧スイッチ5の導電面部14bは、ナット部13とは当たらず、ナット部13の端面から間隔を隔てた位置で止まる。
【0021】
次に、ナット部13と導電面部14bとの間に導電部材16のバネ部17を挿入する。バネ部17は先端側が二股に分かれて形成されており、かつ、金属板を鋭角に折り返して形成されているため、正確な位置に容易に挿入できる。これにより、バネ部17は、ボルト8の両側の位置でナット部13の端面と導電面部14bとに面接触状態で圧接される。
【0022】
この後、ボディ2のボルト孔6の位置に被締結部18の挿通孔18aを合わせ、挿通孔18aとボルト孔6とにボルト8を挿通させ、エンジン本体7のネジ穴7aに締結する。
【0023】
これにより、油圧スイッチ5を、導電部材16、ボルト8及びカラー9を介してエンジン本体7にアースできる。そして、油圧スイッチ5を用いて油圧を検出できるようになる。
【0024】
また、メンテナンス等でオイルフィルタアッセンブリ1から油圧スイッチ5を脱着するとき、導電部材16は油圧スイッチ5よりもボディ2側に位置してボディ2に固定されているため作業の邪魔になることはなく、油圧スイッチ5を簡単に脱着できる。
【0025】
このように、油圧スイッチ5をエンジン本体7にアースすべく油圧スイッチ5をボルト8に電気的に接続する導電部材16を備えるものとしたため、オイルフィルタアッセンブリ1のボディ2が樹脂化されても油圧スイッチ5を電気的にアース(接地)できる。
【0026】
また、導電部材16は、ボディ2と導電面部14bの間に圧縮状態で設けられるバネ部17を備えるものとしたため、油圧スイッチ5と導電部材16とを容易かつ確実に接続することができる。
【0027】
またさらに、バネ部17は、一方向に延びる金属板の一端部を折り返して形成されるものとしたため、導電部材16を簡易な構造で安価に製作できる。
【0028】
バネ部17は、ネジ部14aを挟むような二股状に形成されるものとしたため、ナット部13に油圧スイッチ5を取り付けた後に、ナット部13及び油圧スイッチ5の間にバネ部17を単に差し込んで組み付けることができ、簡単な作業で確実にナット部13と導電部材16を電気的に接続できる。
【0029】
導電部材16は、ボルト8でボディ2に合わせ止めされる被締結部18を備えるものとしたため、簡易な構造で確実にボルト8と電気的に接続できる。また、ボディ2から油圧スイッチ5を取り外した場合でも導電部材16をボディ2に固定された状態に保つことができ、油圧スイッチ5のメンテナンスを容易にできる。
【0030】
なお、上述の実施の形態では、オイルフィルタアッセンブリ1の樹脂製ボディ2に油圧スイッチ5を設ける場合について説明したが、これに限るものではない。電気部品は油圧スイッチ5以外のものであってもよく、ボディはオイルフィルタアッセンブリ1のボディ2でなくともよい。アッセンブリもオイルフィルタアッセンブリ以外のアッセンブリであってもよい。
【0031】
また、樹脂製ボディ2は、エンジン本体7のいずれのエンジン構造部品に設けられてもよい。ここで言うエンジン構造部品とは、シリンダブロック、クランクケース、シリンダヘッド等のエンジン構造部品であって、かつ、ボディアースされた導電材からなるものをいう。
【0032】
また、ナット部13は、油圧導入路12に接続されるものとしたが、エンジンオイルの流れが阻害されない限り、導入油路10に直接接続されてもよい。
【0033】
エンジン本体7は、ディーゼルエンジンのものとしたが、ガソリンエンジン等の他の内燃機関のものであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
2 ボディ
5 油圧スイッチ(電気部品)
7 エンジン本体
8 ボルト
16 導電部材