(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記停泊隻数予測手段は、前記AISデータと、前記所要時間分布情報と、前記停泊時間分布情報と、に基づいて、前記特定の港湾へ航行中の各船舶に係る前記特定の港湾への到着時刻及び前記特定の港湾からの出発時刻と、前記特定の港湾に到着済みの各船舶に係る前記特定の港湾からの出発時刻と、を算出し、前記特定の港湾における船舶の停泊隻数を予測する請求項1に記載の停泊隻数予測システム。
前記所要時間分布情報は、前記船舶の滞在位置からの前記特定の港湾への所要時間に係る統計量を、水上を所定の面積毎に区切ったメッシュ毎に算出したものである請求項1又は2に記載の停泊隻数予測システム。
前記所要時間分布情報作成手段は、前記過去の所定期間のAISデータから前記特定の港湾へ航行する船舶の滞在位置からの前記特定の港湾への所要時間を算出する際に、当該船舶が水上で停止している時間があるか否かを判定し、当該船舶が水上で停止している時間がある場合には、停止している時間を除去して前記特定の港湾への所要時間を算出する請求項1〜3のいずれか一項に記載の停泊隻数予測システム。
前記停泊時間分布情報作成手段は、前記過去の所定期間のAISデータから前記特定の港湾で停泊する各船舶における前記特定の港湾での到着時刻及び出発時刻を特定し、当該到着時刻と当該出発時刻とに基づいて各船舶の前記特定の港湾での停泊時間を算出することで、前記特定の港湾における船舶の前記停泊時間分布情報を作成する請求項1〜4のいずれか1項に記載の停泊隻数予測システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る停泊隻数予測システムの機能ブロック図である。
図1の停泊隻数予測システム1は、水上を航行する船舶に搭載される船舶自動識別装置(Automatic Identification System:AIS)から送信されるAISデータを利用して、港湾に停泊する船舶の隻数を予測するシステムである。本実施形態における「港湾」とは、船舶が貨物の積み下ろし等を目的として接岸するための施設(バース)が複数設けられている港を指す。このような港湾では多数の船舶が、接岸、停泊及び離岸を繰り返す。また、同一の港湾を目的地とする船舶も多数存在する。しかし、港湾に設けられているバース数よりも多数の船舶が港湾で停泊することはできないため、港湾が混雑している場合には、港湾より手前でのルート変更や停泊等により時間調整を行う船舶も存在する。本実施形態に係る停泊隻数予測システム1は、特定の港湾において停泊する船舶の隻数が今後どのように変動するかを、AISデータを用いて予測するシステムである。
【0023】
図1に示すように、停泊隻数予測システム1は、AISデータ取得部10(AISデータ取得手段)と、所要時間マップ作成部11(所要時間分布情報作成手段)と、所要時間マップ格納部12と、停泊時間分布情報作成部13(停泊時間分布情報作成手段)と、停泊時間分布情報格納部14と、停泊隻数予測指示受信部20と、停泊隻数予測部21(停泊隻数予測手段)と、停泊隻数予測結果出力部22と、を含んで構成される。
【0024】
AISデータ取得部10は、外部装置からAISデータを取得する機能を有する。外部装置で蓄積されるAISデータには、データ毎に、データの送信日時(データの取得日時)、船舶を特定する情報(識別符号:船舶ID)、船舶の種類(船種)、船舶の位置(経度・緯度)、船舶の針路(目的地となる港)、船舶の速力(航行速度)、船舶の航行状態等を示す情報が互いに対応付けられている。AISデータは、船舶自動識別装置(AIS)を搭載した船舶から所定の間隔毎に送信される情報である。船舶から送信されるAISデータはデータベース化された後に外部装置に格納されている。したがって、停泊隻数予測システム1が上記の用途のためにAISデータを利用する場合には、外部装置からAISデータを取得する。
【0025】
停泊隻数予測システム1において、AISデータは、2つの用途に用いられる。1点目の用途は、停泊隻数を予測する際に用いる所要時間マップ及び停泊時間分布情報の作成の基礎データとしての利用であり、過去の特定の期間のAISデータを利用する。また、2点目の用途は、実際に停泊隻数を予測する際の基本のデータとしての利用である。AISデータをどのように利用するかについて、具体的には後述する。AISデータ取得部10によるAISデータの取得は、過去の特定の期間のAISデータについては定期的に、または、停泊隻数予測システム1の操作者からの指示を受けた場合に行われる。また、実際に停泊隻数を予測する際の基本のデータとしてのAISデータの取得は、後述の停泊隻数予測部21からの指示時によって行われる。
【0026】
所要時間マップ作成部11は、AISデータ取得部10により取得されたAISデータを利用して所要時間マップを作成する機能を有する。所要時間マップとは、所要時間分布情報の一形態であり、船舶が滞在する位置に応じた特定の港湾までの所要時間の分布を示す情報を地図に対応させて示したものである。所要時間マップは港湾毎に作成され、停泊隻数を予測する際に、船舶毎の特定の港湾までの所要時間の予測に用いられる。所要時間マップの作成方法については後述する。なお、所要時間分布情報として、所要時間マップに代えて、船舶の位置に応じた所要時間の分布を示す関数等を準備する構成とすることもできる。
【0027】
所要時間マップ格納部12は、所要時間マップ作成部11で作成された所要時間マップを格納する機能を有する。
【0028】
停泊時間分布情報作成部13は、AISデータ取得部10により取得されたAISデータを利用して停泊時間分布情報を作成する機能を有する。停泊時間分布情報とは、特定の港湾における船舶の停泊時間分布を示す情報である。停泊時間分布情報は、特定の港湾に到着した船舶がその港湾から出発する時刻を予測するために用いられる。停泊時間分布情報は港湾毎に作成される。停泊時間分布情報の作成方法については後述する。
【0029】
停泊時間分布情報格納部14は、停泊時間分布情報作成部13で作成された停泊時間分布情報を格納する機能を有する。
【0030】
上記の所要時間マップ及び停泊時間分布情報を作成する際には、過去の所定期間(例えば、10日〜数ヶ月)のAISデータが利用される。
【0031】
停泊隻数予測指示受信部20は、停泊隻数の予測に係る処理を開始する旨の指示(停泊隻数予測指示)を受信する機能を有する。停泊隻数予測指示を行う者としては、例えば、停泊隻数予測システム1の操作者が挙げられる。また、停泊隻数予測システム1が、外部の装置(例えば、特定の港湾の管理を行う装置)からの指示を受信することも考えられる。停泊隻数予測指示を受信すると、停泊隻数予測部21において停泊隻数の予測に係る指示を開始する。停泊隻数予測指示には、予測を行う対象となる港湾を特定する情報と、予測をする期間を特定する情報と、が含まれる。
【0032】
停泊隻数予測部21は、停泊隻数予測指示受信部20が停泊隻数予測指示を受信すると、停泊隻数の予測に係る処理を行う。具体的には、停泊隻数予測部21は、AISデータ取得部10に対して指示を行うことで予測を行う対象となる港湾に関連したAISデータを取得する。その後、停泊隻数予測部21は、当該AISデータと、所要時間マップ格納部12に格納された所要時間マップのうち予測を行う対象となる港湾に係る所要時間マップと、停泊時間分布情報格納部14に格納された停泊時間分布情報のうち予測を行う対象となる港湾に係る停泊時間分布情報と、に基づいて、停泊隻数の予測を行う。詳細については後述する。
【0033】
停泊隻数予測結果出力部22は、停泊隻数予測部21において予測された結果を出力する機能を有する。停泊隻数予測結果を出力する方法としては、例えば、停泊隻数予測システム1のモニタ等に出力する方法や、停泊隻数予測指示の送信者に対して停泊隻数予測結果を送信する方法が挙げられる。
【0034】
上記の停泊隻数予測システム1は、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)、通信を行うための通信モジュール、並びにハードディスク等の補助記憶装置等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成される。そして、RAM又はROM等の記憶装置に記憶される停泊隻数予測プログラムがCPUにより実行されることによって、構成要素が動作することにより、各部の機能が発揮される。
【0035】
コンピュータを停泊隻数予測システム1として機能させるための停泊隻数予測プログラムPについて、
図2を参照しながら説明する。
【0036】
停泊隻数予測プログラムPは、メインモジュールP01、AISデータ取得モジュールP10、所要時間マップ作成モジュールP11、停泊時間分布情報作成モジュールP13、停泊隻数予測指示受信モジュールP20、停泊隻数予測モジュールP21、及び、停泊隻数予測結果出力モジュールP22を備える。メインモジュールP01は、停泊隻数の予測に係る処理を統括的に制御する部分である。AISデータ取得モジュールP10、所要時間マップ作成モジュールP11、停泊時間分布情報作成モジュールP13、停泊隻数予測指示受信モジュールP20、停泊隻数予測モジュールP21、及び、停泊隻数予測結果出力モジュールP22を実行することにより実現される機能はそれぞれ、本実施形態におけるAISデータ取得部10、所要時間マップ作成部11、停泊時間分布情報作成部13、停泊隻数予測指示受信部20、停泊隻数予測部21、及び、停泊隻数予測結果出力部22の機能と同様である。
【0037】
停泊隻数予測プログラムPは、CD−ROMやDVD−ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、停泊隻数予測プログラムPは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0038】
次に、上記の停泊隻数予測システム1における停泊隻数予測方法について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、停泊隻数予測に係る一連の流れを説明するフロー図である。
【0039】
停泊隻数予測システム1における停泊隻数の予測には、大きく分けて2つのステップがある。すなわち、停泊隻数の予測に使用するデータを準備する工程と、実際に停泊隻数の予測を行う工程と、である。
図3に示すフロー図のうち、過去のAISデータからの所要時間マップ作成(S01:AISデータ取得ステップ、所要時間分布情報作成ステップ)及び、過去のAISデータからの停泊時間分布情報作成(S02:AISデータ取得ステップ、停泊時間分布情報作成ステップ)が、停泊隻数の予測に使用するデータを準備する工程である。また、停泊隻数予測指示の受信(S03)から予測結果の出力(S06)までが、実際に停泊隻数の予測を行う工程である。
【0040】
以下の実施形態では、港湾Zに係る停泊隻数の予測に使用するデータを準備する工程と、港湾Zに係る実際に停泊隻数の予測を行う工程について説明する。前提として、港湾Zには、6つのバースA〜Fが設けられているとする。
【0041】
まず、停泊隻数の予測に使用するデータを準備する工程について説明する。停泊隻数予測システム1は、AISデータ取得部10が取得した過去の所定期間のAISデータに基づいて、所要時間マップ作成部11において所要時間マップの作成を行い、当該所要時間マップを所要時間マップ格納部12に格納する(S01)。また、AISデータ取得部10が取得した過去の所定期間のAISデータに基づいて、停泊時間分布情報作成部13において停泊時間分布情報の作成を行い、当該停泊時間分布情報を停泊時間分布情報格納部14に格納する(S02)。
【0042】
所要時間マップ及び停泊時間分布情報は、どちらも過去の所定期間のAISデータから作成される。また、所要時間マップ及び停泊時間分布情報は、定期的(例えば、1週間〜数カ月程度)に更新される。すなわち、所要時間マップ及び停泊時間分布情報は、停泊隻数の予測精度を高めるために停泊隻数予測システム1において定期的に作成・更新されるものである。なお、停泊隻数予測システム1の操作者等からの指示に基づいて都度作成する構成であってもよい。
【0043】
AISデータを用いた所要時間マップの作成方法について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
図4は、所要時間マップの作成方法を説明するフロー図である。また、
図5は、所要時間マップの作成の具体的な手順を模式的に示す図である。
【0044】
まず、
図4に示すように、所要時間マップ作成部11は、AISデータ取得部10が取得した過去のAISデータから、特定の港湾(ここでは、港湾Z)に向かった船舶に関する航路データを抽出する(S11)。
【0045】
一般的に、船舶からのAISの送信は繰り返し実施されるので、AISデータ取得部10が取得した過去のAISデータには、同一の船舶から送信した複数の情報が含まれている。したがって、取得したAISデータにおいて、船舶を特定する情報(船舶ID)に基づいて、船舶毎にデータをまとめた後に、同一船舶からのAISデータを時系列順に並び替える。これにより、船舶の移動に係る履歴を確認することができる。さらに、船舶は、ある港湾に設けられたバースへの航行とそのバースでの停泊(荷物等の積み下ろし)とを繰り返す。したがって、バースに停泊していることを示すAISデータを特定できると、そのAISデータから時系列的に遡ることで、船舶がその港湾(港湾内の特定のバース)へ航行中であることを示すAISデータを抽出することができる。
【0046】
AISデータから港湾内の特定のバースに停泊しているか否かを判断するためには、以下の方法を用いることができる。すなわち、港湾内の特定のバース(実際に船舶が停泊するバースである領域と、測位機器の位置又は測位精度に由来する誤差が許容できるレベルにおいてバースであると推定できる領域と、を含む領域)の位置情報を予め保持しておく。そして、同一の船舶のAISデータに基づいて、当該船舶が港湾内の特定のバースに滞在している状態が所定期間以上継続していることが確認できる場合に、その船舶が港湾内の特定のバースに停泊していると判断する方法がある。
【0047】
また、港湾内のバースの位置を示す情報が予め準備されていない場合でも、海岸線の位置を示す情報(測位機器の位置又は測位精度に由来する誤差が許容できるレベルにおいて海岸線であると推定できる領域を示す情報)を予め保持していれば、同一の船舶のAISデータに基づいて、船舶が海岸線付近で停泊しているか否かを判断することができる。したがって、同一の船舶のAISデータに基づいて、当該船舶が海岸線沿いに滞在している状態が所定期間以上継続していることがAISデータから確認できる場合に、その船舶が停泊しているところが港湾内のバースであって、船舶がそのバースに停泊していると判断する方法を用いることができる。
【0048】
また、港湾内のバースの位置を示す情報が予め準備されておらず、その他の情報も保持されていない場合には、地図等を参照して個別に判断を行う方法を用いることができる。例えば、AISデータの中に船舶が移動しない状態が所定期間以上継続していないことを示す情報が含まれていた場合に、船舶が滞在している位置が海岸線に相当する位置であるか否かを地図と比較して確認する方法によって、船舶が港湾内のバースに停泊中であるか否かを判定することができる。
【0049】
上記の基準に基づいて、ある港湾内のバースまでの移動に係る一連の履歴(AISデータ)を一つの航路データとし、その航路データに含まれるAISデータに対して新たに識別符号(航路ID)を割り振る。これにより、大量のAISデータの中から、同一の船舶が港湾内の特定のバースに向けて移動した経路を時系列にまとめた航路データを得ることができる。
【0050】
航路データのイメージを
図5(A)に示す。1つの航路データには、目的地の港湾Zに設けられた特定のバースに向かう1つ船舶に係る位置情報が複数含まれている。船舶の位置は経度・緯度によって示されるため、船舶の位置は実質的に2つの座標軸で示された座標情報であると考えることができる。
図5(A)は、各AISデータにおける位置情報P
0、P
1〜P
Nにより示される位置をプロットして可視化したものである。
図5(A)において、位置情報P
Nは、港湾Z内のバースAを示す情報となっている。また、位置情報P
0、P
1〜P
Nにはそれぞれその位置情報を取得した日時が対応付けられている。
図5(A)中のt
0、t
1、〜t
Nは、それぞれ各AISデータの取得日時を示す。各AISデータを日時順に直線で結んだ結果、
図5(A)に示すように船舶の航路が分かる。ここで、例えば、日時t
0と日時t
1との間の差分がs
1となり、2点間の航行の所要時間ということができる。航路データに含まれるAISデータがN+1個ある場合には、2点間を移動するための所要時間を特定する情報がN個作成される。これらを全て含むデータが1つの航路データとなる。
【0051】
所要時間マップ作成部11では、上記のように航路データの中から特定の港湾(港湾Z)に設けられたバースAに向かった船舶に関する航路データを抽出する(S11)。航路データの抽出の基準としては、航路データの目的地(最終到達地点)が所要時間マップを作成する対象となる港湾であるか否かを用いることができる。港湾Z内のバースAが目的地(最終到達地点)であるか否かに基づいて航路データを抽出する。
【0052】
抽出した航路イメージを
図5(B)に示す。
図5(B)では、港湾ZのバースAに向かう船舶に係る複数の航路データを示している。このように、特定の港湾Z内のバースに向かう航路データを抽出すると、複数の船舶に係るバースAへの航路を示すデータが得られる。その後、バースB〜Fについても同様の処理を行うことで、バース単位で当該バースへ向かう船舶に係る航路データを抽出することができる。これにより、複数の船舶に係る港湾Zへの航路を示す航路データを全て取得することができる。
【0053】
次に、所要時間マップ作成部11では、抽出したAISデータから、座標情報毎に、当該位置から港湾までの所要時間実績値を算出する(S12)。航路データには複数のAISデータが含まれる。所要時間実績値の算出は、AISデータ毎に行われる。また、船舶が到着するバースに関係なく、港湾までの所要時間実績値として算出を行う。
【0054】
船舶の位置は経度・緯度によって示されるため、船舶の位置は実質的に2つの座標軸で示された座標情報であると考えることができる。単純に考えると、航路データに基づけば目的地である港湾内の特定のバースへの到着日時が分かるので、1つの航路データに含まれるAISデータについては、その航路データにおける港湾(バース)到着日時と各AISデータの取得日時との差分が、各AISデータにおける港湾(バース)到着までの所要時間となる。しかしながら、実際には、特定の港湾Zへ移動中の船舶が所定の時間港湾とは異なる水上(海上)で停止する、所謂「沖待ち」を行うことがある。「沖待ち」は、港湾への到着日時の調整のために行われることが多い。したがって、「沖待ち」が含まれた状態で港湾への所要時間の算出を行うと、実際の航行に必要な所要時間よりも大きな値が算出されてしまう。したがって、所要時間実績値の算出の際には、船舶が「移動中か停止中か」を判断し、船舶が停止している時間(沖待ち時間)を除去する。
【0055】
船舶が「移動中か停止中か」を考慮した所要時間実績値の算出は、以下の手法で判断することができる。1つの方法としては、時系列に沿って並べられたAISデータにおいて1つ前のデータとの2点間の移動時間(所要時間)を示す情報s
1〜s
Nに対して、それぞれ、2点間の距離等に基づいて移動中又は停止中を示すフラグを付与しておく。また、移動中又は停止中を示すフラグを付与する際には、各AISデータに含まれる航行速度を示す情報及び船舶の航行状態を示す情報等を利用してもよい。その後、位置情報P
0、P
1〜P
Nに対応して、目的地である港湾ZのバースA(位置情報P
Nに相当)への所要時間を算出する際には、各位置情報から港湾ZのバースAまでの各地点間を結ぶ所要時間のうち、移動中のフラグが付与されている情報のみを合計して算出する。例えば、位置情報P
0で特定される地点から港湾ZのバースAまでの所要時間実績値は、停止中フラグが付与された時間がない場合にはs
1、〜s
Nの合計として算出することができる。ただし、停止中フラグが付与された2点間の移動時間を示す情報がある場合には、上記のs
1〜s
Nの合計から停止中フラグが付与された移動時間を示す情報を除去する。これにより、位置情報P
0で特定される地点から港湾ZのバースAまでの所要時間実績値を適切に算出することができる。実際の所要時間実績値の算出方法は上記に限定されないが、船舶が停止中であるか否かを判断した上で、停止中の時間帯が含まれている場合には、時間帯部分を除去した上で港湾ZのバースAまでの所要時間実績値を算出することで、より精度の高い所要時間実績値が得られる。
【0056】
その後、上記のプロセスで算出されたAISデータ毎の所要時間実績値について、水上の所定区間毎に座標を区切ったメッシュ毎に所要時間に係る統計量を算出する(S13)。メッシュとは、例えば、
図5(C)で示すような緯度及び経度の範囲情報を持つ領域のことを指す。前段階でAISデータ毎に所要時間実績値を求めたが、この所要時間実績値は、位置情報で特定される特定の位置からの所要時間を示す情報であり、面的な情報となっていない。そこで、水上を所定の面積毎に区切った領域(メッシュ)単位で所要時間実績値の分布を求めることを行う。なお、メッシュ毎に算出する所要時間に係る統計量としては、平均値、標準偏差等、所要時間実績値の分布を示すことができる数値を用いることができる。また、1つのメッシュに含まれる所要時間実績値の分布をヒストグラム等を利用して算出することで、所要時間実績値に対応した統計量を算出する構成としてもよい。このように統計量については公知の手法を用いて適宜選択することができる。本実施形態では、所要時間に係る統計量として、所要時間実績値の平均をメッシュ毎に算出する場合について説明する。
【0057】
具体的には、予め、所要時間の分布を表示するためのメッシュを設定しておき、それぞれメッシュ番号を割り振っておく。その後、所要時間実績値の算出を行ったAISデータそれぞれについて、位置情報に基づいてそのAISデータが属するメッシュを特定し、そのメッシュに対応したメッシュ番号を付与する。その後、同一のメッシュ番号が付与されたAISデータに基づいて、各々算出された所要時間実績値の平均を算出する。これをメッシュ毎に行うことで、メッシュ毎の所要時間実績値の分布を得ることができる。
【0058】
図5(C)はメッシュ毎の所要時間実績値の平均の分布を示したものである。
図5(C)に示す例では、各メッシュは同一面積の正方形となっていて、メッシュ毎に所要時間(所要日数)が異なることを示している。なお、平均値に代えて、メッシュ毎の所要時間実績値の代表値を用いて所要時間実績値の分布を作成することもできる。
【0059】
メッシュの大きさは、一辺が数百m〜数十kmとなるように適宜変更して設定することができる。メッシュの大きさは、所要時間マップの中でも場所によって変更してもよい。例えば、船舶の航行の頻度が大きな主要航路の周辺ではメッシュを小さく設定し、船舶の位置に応じて所要時間実績値の分布をより正確に把握できる構成とすることができる。また、船舶の航行頻度が少ない地域ではメッシュを大きく設定し、そのメッシュにおける所要時間実績値の平均値算出に用いるデータの数を増やす構成とすることもできる。また、メッシュの形状は正方形に限定されず、地形等を考慮して適宜変更することができる。
【0060】
上記の処理により算出された所要時間実績値の分布が、港湾Zに向かう船舶の所要時間マップとなる。作成された所要時間マップは、所要時間マップ格納部12に格納される。(S13)。
【0061】
このようにして、所要時間マップは、港湾毎に作成されて、所要時間マップ格納部12に格納される。
【0062】
次に、AISデータを用いた停泊時間分布情報の作成方法について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
図6は、停泊時間分布情報の作成方法を説明するフロー図である。また、
図7は、停泊時間分布情報の作成の具体的な手順を模式的に示す図である。ここでは、まずバース単位で停泊時間実績値及び停泊時間の分布を作成した後に、港湾としての停泊時間分布情報を作成する例について説明するが、これに限定されるものではない。
【0063】
まず、停泊時間分布情報作成部13では、AISデータ取得部10が取得した過去のAISデータから、特定の港湾(ここでは港湾Zとする)に向かった船舶に関する航路データを含む船舶に係るAISデータを抽出する(S21)。航路データは、上述のようにある港湾に含まれるバースまでの移動に係る一連の履歴(AISデータ)を一連のデータ群としてまとめたものである。停泊時間分布情報では、特定の港湾内のバースに到着した船舶がそのバースでどれくらい停泊したかの分布を示す情報であるので、例えば港湾内のバースを目的地とする航路データを有する船舶のバースでの滞在時間を取得する必要がある。したがって、ここでは港湾Zに含まれるバースA〜Fを目的地とする航路データが含まれる船舶のAISデータをそれぞれ取得する。
【0064】
次に、抽出した船舶のAISデータから、特定の港湾に含まれるバースへの到着時刻及び出発時刻を特定し、差分の停泊時間実績値を算出する(S22)。
【0065】
停泊時間実績値の算出方法について、
図7(A)を参照しながら説明する。
図7(A)では港湾Z内のバースAへ向かう航路データが含まれた船舶のAISデータを時刻に対応させて時系列順にプロットしたものであり、
図7(A)では5つのAISデータD
1〜D
5を示している。
【0066】
AISデータD
1〜D
5にはそれぞれ位置情報が対応付けられているので、この船舶のAISデータにおいて、バースAの位置情報を含むデータを抽出する。
図7(A)では2つのAISデータD
3,D
4において、船舶がバースAで停泊していることを示す情報が含まれていたとする。このとき、AISデータD
3の取得日時がバースAへの到着時刻であり、AISデータD
4の取得日時がバースAの出発時刻になり、その差(ここでは、10時間)がバースAでの滞在時間となる。仮にバースAに滞在していることを示すAISデータが連続して3つ以上ある場合には、バースAに滞在していることを示すAISデータのうちの1つ目のデータと最後のデータとの間が停泊時間になる。このように、港湾ZのバースAへ向かった航路データを有する船舶に係るAISデータを時系列に並べることで、港湾ZのバースAでの停泊時間実績値を算出することができる。また、過去のAISデータの取得期間が長く、その間に一つの船舶が何度もバースAを訪れている場合がある。この場合には、前後に航路データがあるか否かに基づいて、連続したデータであるか否かを判断する等の処理を行い、港湾Z内のバースAでの停泊時間実績値を特定する。
【0067】
なお、船舶が港湾Z内のバースで停泊しているか否かを判定する際は、AISデータに含まれる船舶の位置情報が、実際に船舶が停泊するバースである領域と、測位機器の位置又は測位精度に由来する誤差が許容できるレベルにおいて、同一のバースに滞在していると推定できる領域と、を含む領域の内部に継続して滞在しているか否かに基づいて判定する。
【0068】
港湾Z内のバースAでの停泊時間実績値は、船舶毎に及び港湾Z内のバースAでの停泊毎に算出する。次に、その結果に基づく分布情報を作成する(S23)。
図7(B)は、停泊時間実績値の分布情報の作成例である。
図7(B)は、港湾Z内のバースAにおける停泊時間の分布をヒストグラムで示したものであり、9時間が最頻値であることを示している。このように、停泊時間実績値の分布情報は例えばヒストグラムとして作成することができる。また、停泊時間実績値の分布情報として、停泊時間実績値に係る確率密度関数を算出することもできる。
【0069】
上記の処理により算出された停泊時間実績値の分布が、港湾Z内のバースAにおける船舶の停泊時間分布情報となる。上記で説明した一連の処理を港湾Z内の他のバースB〜Fについても行うことで、バース単位の停泊時間実績値の分布を得ることができる。そして、バースA〜Fに係る停泊時間実績値の分布の合計を算出することで、港湾Zにおける船舶の停泊時間分布情報を得ることができる。作成された停泊時間分布情報は、停泊時間分布情報格納部14に格納される。(S24)。
【0070】
このようにして、停泊時間分布情報は、港湾毎に作成されて、停泊時間分布情報格納部14に格納される。
【0071】
図3に戻り、実際に停泊隻数の予測を行う工程について説明する。停泊隻数の予測を行う際には、まず、停泊隻数予測指示受信部20によって、停泊隻数予測指示を受信する(S03)。停泊隻数予測指示には、予測を行う対象となる港湾(ここでは、港湾Z)を特定する情報と、予測をする期間を特定する情報と、が含まれる。停泊隻数予測指示受信部20が停泊隻数予測指示を受信すると、停泊隻数予測部21では、停泊隻数の予測に係る処理を行う。
【0072】
停泊隻数予測部21では、まず、AISデータ取得部10に指示を行うことで、停泊隻数の予測に利用するAISデータを取得する(S04:AISデータ取得ステップ)。ここで停泊隻数予測部21が停泊隻数の予測に利用するAISデータとは、水上の各船舶の最新の位置情報及びその目的地を示す情報である。ただし、各船舶からのAISデータの取得日時は互いに異なる。したがって、AISデータ取得部10では、過去の所定期間(例えば、数日〜数週間)のAISデータを取得する。
【0073】
次に、停泊隻数予測部21では、AISデータ取得部10が取得したAISデータに基づいて、特定の港湾(ここでは、港湾Z)における停泊隻数の予測を行う(S05:停泊隻数予測ステップ)。
【0074】
AISデータを用いた停泊隻数の予測方法について、
図8及び
図9を参照しながら説明する。
図8は、停泊隻数の予測について説明するフロー図である。また、
図9は、停泊隻数の予測に係る具体的な手順を模式的に示す図である。
【0075】
まず、停泊隻数予測部21では、AISデータ取得部10が取得したAISデータから、特定の港湾(港湾Z)に関係する船舶に係るAISデータを抽出する(S31)。AISデータ取得部10が取得したAISデータには、AISデータを取得した全ての船舶に係る情報が含まれているが、そのうち、港湾Zへ航行中の船舶及び港湾Zに停泊中の船舶が、停泊隻数を予測する期間内に港湾Zに停泊する可能性がある船舶となる。したがって、AISデータにおいて船舶の針路(目的地となる港)として港湾Zを設定している船舶に係るAISデータを抽出することで、港湾Zに向けて航行である船舶に係るAISデータを抽出することができる。また、取得したAISデータ毎に船舶毎にデータをまとめた後に、同一船舶からのAISデータを時系列順に並び替えると、最新の各船舶の位置情報を取得することができる。この際、最新の位置情報が港湾Zである船舶は、現在港湾Zに滞在していると考えることができる。これに基づいて港湾Zに関係する船舶のAISデータが抽出することができる。
【0076】
次に、抽出された港湾Zに関係する船舶のAISデータから、船舶毎に港湾Zの到着時刻予測値及び出発時刻予測値を算出する(S32)。
【0077】
航行中の船舶については、その船舶に係る最新のAISデータに含まれる位置情報と所要時間マップとから、港湾Zへの到着時刻予測値を算出することができる。具体的には、AISデータで示される船舶の位置情報が、港湾Zに係る所要時間マップにおけるどのメッシュに属するかを判定することで、所要時間マップから、港湾Zへの所要時間が算出することができる。したがって、その船舶に係る最新のAISデータの取得日時から港湾Zへの所要時間マップで特定される時間だけ経過した時刻が、到着時刻予測値となる。
【0078】
一方、その船舶についての港湾Zからの出発時刻予測値の算出には、停泊時間分布情報を利用する。上述のように停泊時間分布情報は、ヒストグラム又は確率密度関数として作成されている。すなわち、停泊時間分布情報は停泊時間の確率分布を示す(幅を示す)情報であるともいえる。そこで、出発時刻を予測する際に、停泊時間分布情報に係る数値としてその代表値を利用する。なお、停泊時間分布の代表値としては、例えば停泊時間分布の平均値を用いることができるが、これに限定されない。
【0079】
現在港湾Zに向けて移動中である船舶については、港湾Zに到着後、停泊時間分布の代表値により特定される期間停泊すると予測する。したがって、港湾Zに対する船舶の到着時刻予測値に対して停泊時間分布の代表値を加えることで、港湾Zからの出発時刻予測値になる。
【0080】
一方、港湾Zに到着済みである船舶に対して、そのまま停泊時間分布の平均値を加えると、停泊時間分布情報で示される停泊時間の分布よりも停泊時間が長く見積もられることになる。したがって、港湾Zに到着している船舶については、最新のAISデータだけでなく、その前のAISデータも参照して、港湾Zに到着した時刻を特定し、その時刻からの経過時間を見積もる。そして、経過時間を考慮して今後の港湾Zでの停泊時間を見積もって、出発時刻予測値を算出する。
【0081】
具体的には、例えば、どの船舶も港湾Zに到着してから一律に停泊時間分布の代表値(平均値)だけ港湾Zに停泊すると考えて処理を行う方法がある。また、その他の方法としては、停泊時間分布情報における停泊時間の分布に偏りが見られる場合には、停泊時間分布情報に含まれる停泊時間の分布を示す情報のうち、港湾Zに到着してからの経過時間よりも停泊時間が長い情報のみから停泊時間の平均を算出し、これに基づいて港湾Zでの停泊時間を推定する方法が考えられる。いずれにしろ、港湾Zに到着した時刻を考慮した上で、出発時刻予測値を算出する。
【0082】
次に、上記での算出結果を集計して時系列のデータを作成する(S33)。上記の港湾Zの到着時刻予測値及び出発時刻予測値の算出は船舶毎に行われる。したがって、その結果に基づいて、港湾Zに停泊する船舶の隻数を時系列に沿ってカウントしていく。
【0083】
図9の上部では、船舶毎に算出した到着時刻予測値及び出発時刻予測値を時刻に沿って示している。また、
図9の下部ではそれを集計した結果を示している。具体的には、
図9では、4隻の船舶について、港湾到着時刻予測値及び港湾出発時刻予測値を算出して、時系列に沿って図示している。なお、
図9では、すでに港湾Zに到着している船舶に関しては示していないが、すでに港湾Zに到着している船舶については、到着時刻t
si側の始点がなく、終点側のt
eiのみが算出されて示される。
【0084】
図9では、港湾到着時刻予測値と港湾出発時刻予測値とを結ぶ線が存在する時間帯は、その船舶が港湾Zに停泊していることを示している。したがって、時刻tにおいて港湾Zに停泊している船舶の隻数は、時刻tに港湾到着時刻予測値と港湾出発時刻予測値とを結ぶ線が存在する船舶の隻数をカウントすればよい。
図9に示す時刻tの場合には、t
s3とt
e3とを結ぶ線のみが存在するので港湾Zに停泊する船舶は1隻であると予測することができる。このように、時刻に対応して停泊する船舶の隻数の変化をカウントした結果が
図9下部のヒストグラムである。この結果が、停泊隻数の予測結果に相当する。このヒストグラムは、停泊隻数予測指示に含まれる予測をする期間を特定する情報によって示される期間に対応して作成される。
【0085】
したがって、停泊隻数予測結果出力部22は、上記のように算出された時系列に沿ったデータを停泊隻数予測結果として出力する(S34)。以上によって停泊隻数予測システム1による停泊隻数の予測が完了する。
【0086】
以上のように、本発明に係る停泊隻数予測システム1及び停泊隻数予測システム1による停泊隻数予測方法及び停泊隻数予測プログラムでは、所要時間マップ作成部11において、特定の港湾へ航行する船舶の滞在位置からの特定の港湾への所要時間の分布を示す所要時間マップ(所要時間分布情報)を作成すると共に、停泊時間分布情報作成部13において、特定の港湾における船舶の停泊時間分布を示す停泊時間分布情報を作成する。そして、船舶の現在位置を特定することが可能なAISデータに対して、これらの情報を組み合わせることで、今後港湾に停泊する船舶の停泊隻数を予測することが可能となる。
【0087】
従来から、港湾を出入りする船舶の管理を行うために、停泊隻数を予測することが必要とされていた。この際に、従来はAISデータに含まれる船舶の到着予想時刻(ETA)を利用することが検討されていた。しかしながら、到着予想時刻は船舶の乗組員等の判断によって手入力される情報であるため、入力間違いや最新情報への更新忘れ等が発生することが考えられる。したがって、港湾での停泊隻数予測を行うための基礎となる情報の精度としては十分なものではなかった。
【0088】
これに対して、本実施形態に係る停泊隻数予測システム1、停泊隻数予測方法、及び、停泊隻数予測プログラムでは、過去のAISデータに基づいた所要時間マップ(所要時間分布情報)及び停泊時間分布情報を利用して、現在の船舶の位置から今後の港湾における停泊隻数を予測する。停泊隻数の予測に用いられる所要時間マップ(所要時間分布情報)及び停泊時間分布情報は、実績に基づく情報であることから、より高い精度の情報での停泊隻数が予測可能となる。
【0089】
具体的には、停泊隻数予測システム1では、停泊隻数の予測の際には、船舶毎に特定の港湾への到着時刻及び特定の港湾からの出発時刻の算出を行う。所要時間マップ(所要時間分布情報)及び停泊時間分布情報を用いると、上記の特定の港湾への到着時刻及び特定の港湾からの出発時刻の算出精度が高められることから、より高い精度の停泊隻数の予測が可能となる。
【0090】
また、所要時間分布情報が、船舶の滞在位置からの特定の港湾への所要時間に係る統計量をメッシュ毎に算出した情報であることにより、船舶の滞在位置に応じて特定の港湾への所要時間を容易に求めることができる。また、上記で説明した所要時間マップのように、メッシュ毎に所要時間に係る統計量を算出する構成とすることで、所要時間分布情報の作成に係る作業量が極端に増大することを防ぐことができる。
【0091】
また、所要時間分布情報の作成の際、船舶が水上で停止している時間がある場合には、停止している時間を除去して特定の港湾への所要時間を算出する構成とすることで、例えば時間調整等のために水上で停止している時間を含めることなく所要時間の算出を行うことができ、より高い精度で所要時間分布情報を作成することができる。
【0092】
また、停泊時間分布情報については、船舶に係る過去のAISデータから、特定の港湾での到着時刻及び出発時刻を特定し、これらの情報から停泊時間を算出する構成とすることで、例えば船舶の乗組員等が入力した情報に基づいて停泊時間分布情報を作成する場合と比較してより高い精度で停泊時間分布情報を作成することができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態に係る停泊隻数予測システム、停泊隻数予測方法、及び、停泊隻数予測プログラムについて説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
【0094】
例えば、停泊隻数予測システム1において使用することのできる情報は、上記実施形態で説明したものに限定されない。したがって、AISデータに含まれる航行速度や船種情報等を考慮して所要時間マップ及び停泊時間分布情報を作成することもできる。例えば、船種によって目的地の所要時間は異なることが考えられる。したがって、上記実施形態では港湾毎に作成するとした所要時間マップを、さらに船種毎に複数準備する構成としてもよい。同様に停泊時間分布情報についても、船種毎に複数準備する構成としてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、停泊隻数予測システム1が1台の装置により実現されている場合について説明したが、停泊隻数予測システム1は複数の装置により構成されていてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、停泊隻数の予測の際に港湾内のバースを区別した計算を行う場合について説明した。すなわち、上記実施形態では、AISデータから港湾内の特定のバースに停泊しているか否かを判断して航路データの抽出等を行った。したがって、航路データは停泊するバース毎に個別に抽出されている場合について説明した。したがって、停泊時間分布情報の作成においても、バース毎に停泊時間分布を作成した後にこれを集計して港湾における停泊時間分布情報を作成する例を説明した。しかしながら、バース単位ではなく港湾単位で上記の処理を行う構成としてもよい。すなわち、船舶が特定のバース単位に停泊しているか否かではなく、船舶が特定の港湾に停泊しているか否かに基づいて航路データの抽出を行い、これを利用して所要時間マップ(所要時間分布情報)及び停泊時間分布情報を作成する構成としてもよい。