特許第6623736号(P6623736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6623736化合物単結晶製造装置、及び化合物単結晶の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623736
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】化合物単結晶製造装置、及び化合物単結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20191216BHJP
   C30B 23/02 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   C30B29/38 D
   C30B23/02
【請求項の数】17
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-243951(P2015-243951)
(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公開番号】特開2017-109891(P2017-109891A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 大至
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−209199(JP,A)
【文献】 特開2009−280431(JP,A)
【文献】 特開2008−024580(JP,A)
【文献】 特開2012−248803(JP,A)
【文献】 特開平11−302097(JP,A)
【文献】 特開2008−044818(JP,A)
【文献】 実開昭63−102769(JP,U)
【文献】 国際公開第2013/151045(WO,A1)
【文献】 特開2004−307333(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0178671(US,A1)
【文献】 特開昭64−037496(JP,A)
【文献】 LUKIN, G et al.,Investigation of GaN layers grown by high temperature vapor phase epitaxy,Phys. Status Solidi C,2014年,Vol. 11, No. 3-4,491-494
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を備えた化合物単結晶製造装置。
(1)前記化合物単結晶製造装置は、
種結晶を保持するためのサセプタを備えた結晶成長部と、
金属源から発生させた金属含有ガス(金属蒸気を含むガス)、及びこれと反応して無機化合物を生成する反応ガスを前記種結晶に向かって供給するためのガス供給部と、
前記種結晶及び前記金属源を加熱するための加熱装置を備えた加熱部と
を備えている。
(2)前記ガス供給部は、
前記サセプタから離間して配置された、前記金属源を保持するためのルツボと、
前記ルツボ内にキャリアガスを供給し、前記金属含有ガスと前記キャリアガスとの混合ガスを前記種結晶に向かって供給するためのキャリアガス供給装置と、
前記反応ガスを前記種結晶に向かって供給するための反応ガス供給装置と、
を備えている。
(3)前記ルツボの開口部には、多孔バッフル板が設けられており、前記ルツボ内に保持される前記金属源と前記多孔バッフル板との間には、他の部材が存在しない。
(4)前記化合物単結晶製造装置は、成長温度TG<前記金属源の温度TSの条件下において、前記種結晶の表面に前記無機化合物からなる単結晶を成長させるために用いられる。
【請求項2】
前記多孔バッフル板と前記サセプタとの間の垂直方向距離又は水平方向距離を変更するための第1可動装置、及び/又は、
前記加熱装置と前記ルツボとの間の垂直方向距離又は水平方向距離を変更するための第2可動装置
をさらに備えた請求項1に記載の化合物単結晶製造装置。
【請求項3】
前記サセプタは、前記ルツボの上方に配置されており、
前記第1可動装置は、前記サセプタを垂直方向に移動可能なものであり、
前記第2可動装置は、前記加熱装置を垂直方向に移動可能なものである
請求項2に記載の化合物単結晶製造装置。
【請求項4】
前記ルツボは、
(a)前記金属源を保持するための内ルツボと、前記内ルツボを収容するための外ルツボとを備えており、
(b)前記内ルツボの外壁面と前記外ルツボの内壁面との間には、キャリアガスを前記内ルツボの内部に向かって流すためのキャリアガス流路が設けられ、
(c)前記外ルツボの底面又は側面には、前記キャリアガス流路に前記キャリアガスを導入するためのキャリアガス導入孔が設けられている
請求項1から3までのいずれか1項に記載の化合物単結晶製造装置。
【請求項5】
前記キャリアガス流路は、前記内ルツボの先端に向かって前記キャリアガスを流すことが可能なものからなり、
前記外ルツボの上部には、前記内ルツボの先端に達した前記キャリアガスの流れを前記金属源に向かう方向に変更するためのキャリアガス流方向調整器が設けられている
請求項4に記載の化合物単結晶製造装置。
【請求項6】
前記ガス供給部は、前記サセプタと前記ルツボとの間に設けられた反応ガス流方向調整器を備え、
前記反応ガス流方向調整器は、前記反応ガスの流れの方向を前記混合ガスに向かう方向に変更し、前記混合ガスと前記反応ガスとの混合を促進するためのものからなる
請求項1から5までのいずれか1項に記載の化合物単結晶製造装置。
【請求項7】
前記種結晶の表面の傾き角度を変更する角度変更装置をさらに備えた請求項1から6までのいずれか1項に記載の化合物単結晶製造装置。
【請求項8】
以下の構成をさらに備えた請求項1から7までのいずれか1項に記載の化合物単結晶製造装置。
(5)前記ルツボは、
(a)前記金属源を保持するための内ルツボと、前記内ルツボを収容するための外ルツボとを備えており、
(b)前記内ルツボの外壁面と前記外ルツボの内壁面との間には、キャリアガスを前記内ルツボの内部に向かって流すためのキャリアガス流路が設けられ、
(c)前記外ルツボの底面又は側面には、前記キャリアガス流路に前記キャリアガスを導入するためのキャリアガス導入孔が設けられている。
(6)前記ルツボは、下から上に向かって第1ルツボ、第2ルツボ、…第nルツボ(n≧2)の順に積み重ねられた積層ルツボであって、第kルツボ(1≦k≦n−1)の前記開口部と、第(k+1)ルツボの前記キャリアガス導入孔とが接続されたものからなり、
前記多孔バッフル板は、少なくとも最上部にある前記第nルツボの開口部に設けられている。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の化合物単結晶製造装置を用いて、各部の温度が次の(1)式を満たす条件下において、前記種結晶の表面に前記無機化合物からなる単結晶を成長させる化合物単結晶の製造方法。
G<TD<TS<TB ・・・(1)
但し、
Gは、成長温度、
Sは、前記金属源の温度、
Dは、前記無機化合物の分解温度、
Bは、前記ルツボの開口部に設けられた前記多孔バッフル板の温度。
【請求項10】
前記金属源は、金属Gaからなり、
前記反応ガスは、NH3からなり、
1200℃<TS<1350℃、1000℃<TG<1200℃である
請求項9に記載の化合物単結晶の製造方法。
【請求項11】
B≧TS+50℃である請求項9又は10に記載の化合物単結晶の製造方法。
【請求項12】
請求項8に記載の化合物単結晶製造装置を用いて、各部の温度が次の(11)式及び(12)式を満たす条件下において、前記種結晶の表面に前記無機化合物からなる単結晶を成長させる化合物単結晶の製造方法。
G<TD≦TDmax<TSn<TB ・・・(11)
Sk≦TSk+1(1≦k≦n−1) ・・・(12)
但し、
Gは、成長温度、
Snは、前記第nルツボに充填された第n金属源の温度、
Dは、前記無機化合物の分解温度、
Dmaxは、前記第1金属源〜第n金属源に含まれるいずれか1以上の金属元素と前記反応ガスから生成する無機化合物の分解温度の最大値、
Skは、前記第kルツボに充填された第k金属源の温度、
Sk+1は、前記第(k+1)ルツボに充填された第(k+1)金属源の温度、
Bは、前記第nルツボの開口部に設けられた前記多孔バッフル板の温度。
【請求項13】
前記第k金属源(1≦k≦n)は、いずれも金属のみからなり、
前記第(k+1)金属源の沸点は、前記第k金属源の沸点以上である
請求項12に記載の化合物単結晶の製造方法。
【請求項14】
前記多孔バッフル板を通過する際の前記混合ガスの流速(ルツボ出口ガス流速)が20m/sec以上となるように、前記キャリアガスを供給する請求項9から13までのいずれか1項に記載の化合物単結晶の製造方法。
【請求項15】
成長圧力Pが(3)式を満たし、かつ、前記多孔バッフル板と前記成長結晶の表面との間の距離Dが(4)式を満たすように、前記単結晶を成長させる請求項9から14までのいずれか1項に記載の化合物単結晶の製造方法。
0.1kPa<P<6kPa ・・・(3)
0.5cm≦D<5cm ・・・(4)
【請求項16】
前記金属源は、Al、Ga、In、Zn、Cd、Hg、Si、Ge、Sn、Mg、Mn、Cu、及びAgからなる群から選ばれるいずれか1種以上の金属元素を含む金属からなり、
前記反応ガスは、C、B、N、P、As、Sb、O、S、Se、及びTeからなる群から選ばれるいずれか1種以上の元素を含むガスからなる
請求項9から15までのいずれか1項に記載の化合物単結晶の製造方法。
【請求項17】
前記反応ガスは、NH3からなり、
前記NH3の分圧PNH3は、0.1kPa<PNH3<1kPaである
請求項9から16までのいずれか1項に記載の化合物単結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物単結晶製造装置、及び化合物単結晶の製造方法に関し、さらに詳しくは、金属含有ガス(金属蒸気を含むガス)と反応ガスとを用いて、種結晶の表面に無機化合物からなる単結晶を成長させる化合物単結晶製造装置、及びこれを用いた化合物単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機化合物(GaAs、InP、酸化物など)からなるバルク単結晶は、工業的には一致融液からの固化(チョクラルスキー法やブリッジマン法等)により製造される場合が多い。しかし、すべての無機化合物が工業的に現実的な温度・圧力範囲内で一致融液を持つわけではない。そのような場合、フラックス法や気相成長法が用いられる。
【0003】
化合物単結晶は、2種以上の元素から構成される。化合物単結晶の気相成長は、各々の元素を含むガス種を種結晶表面(又は、成長結晶表面)に供給し、当該表面上でこれらを反応させることにより実現する。その際の対象とする元素を含むガス種として、ハロゲン化物、有機金属化合物等がしばしば用いられる。しかし、これらのガス種は、安全性の懸念から装置コストを増大させ、原料コストそのものも高いため、化合物単結晶の製造コストが高くなる。
【0004】
この問題を解決するために、溶融金属の蒸発、又は無機化合物の昇華若しくは分解によりガスを発生させ、得られた金属蒸気又は昇華ガスと反応ガスとを種結晶の表面において反応させることにより、種結晶の表面に無機化合物の単結晶又は多結晶を成長させる方法(以下、「昇華法」という)が提案されている。
【0005】
例えば、非特許文献1には、昇華サンドイッチ法(Sublimation Sandwich Technique)を用いて、基板表面にGaN結晶を成長させる方法が開示されている。
非特許文献2には、アンモニア雰囲気下において、冷間成形したGaNペレットを昇華させ、又は、Ga金属を蒸発させることにより、基板表面にGaN単結晶を成長させる方法が開示されている。
【0006】
非特許文献3には、水素化ガリウム気相エピタキシー(GaH−VPE)法を用いて、基板表面にGaN単結晶を成長させる方法が開示されている。
さらに、非特許文献4には、昇華法を用いて、窒素雰囲気下において、基板表面にGaN多結晶の厚膜を成長させる方法が開示されている。
【0007】
昇華法では、金属源として、常温で液体若しくは固体の金属(例えば、Al、Ga、Zn、In、Cd、Hg、Si、Ge、Sn、Mg、Mn、Cu、Agなど)、又は金属化合物が用いられる。また、反応ガスには、水素化物ガス(例えば、H2O、炭化水素ガス、NH3、H2S、H2Se、H2Te、PH3、AsH3など)、又は二原子分子ガス(例えば、O2、N2など)が用いられる。
【0008】
これらの金属源及び反応ガスの多くは、比較的取扱いが容易で、かつ、安価であることから、この種の原料を用いることで、化合物単結晶の製造コストを低減することができる。しかしながら、この種の原料の組み合わせで、安定的にバルク単結晶の成長を実現できた例はほとんどない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】P. G. Baranov et al., MRS intenet J. Nitride Semicond. Res., Vol. 3(1998)50
【非特許文献2】C. M. Balkas et al., J. Cryst. Growth, Vol. 208(2000)pp. 100-106
【非特許文献3】M. Imade et al., Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 45(2006)pp. L878-L880
【非特許文献4】H.-J. Rost et al., Phys. Stat. Sol., Vol. 4(2007)pp. 2219-2222
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、金属含有ガスと反応ガスとを用いて、種結晶の表面に無機化合物からなる単結晶を長時間に渡って成長させることが可能な化合物単結晶製造装置を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、化合物単結晶の製造コストの低減、及び、結晶サイズの大型化が可能な化合物単結晶製造装置を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このような化合物単結晶製造装置を用いた化合物単結晶の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る化合物単結晶製造装置は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記化合物単結晶製造装置は、
種結晶を保持するためのサセプタを備えた結晶成長部と、
金属源から発生させた金属含有ガス(金属蒸気を含むガス)、及びこれと反応して無機化合物を生成する反応ガスを前記種結晶に向かって供給するためのガス供給部と、
前記種結晶及び前記金属源を加熱するための加熱装置を備えた加熱部と
を備えている。
(2)前記ガス供給部は、
前記サセプタから離間して配置された、前記金属源を保持するためのルツボと、
前記ルツボ内にキャリアガスを供給し、前記金属含有ガスと前記キャリアガスとの混合ガスを前記種結晶に向かって供給するためのキャリアガス供給装置と、
前記反応ガスを前記種結晶に向かって供給するための反応ガス供給装置と、
を備えている。
(3)前記ルツボの開口部には、多孔バッフル板が設けられている。
【0012】
前記ルツボは、
(a)前記金属源を保持するための内ルツボと、前記内ルツボを収容するための外ルツボとを備えており、
(b)前記内ルツボの外壁面と前記外ルツボの内壁面との間には、キャリアガスを前記内ルツボの内部に向かって流すためのキャリアガス流路が設けられ、
(c)前記外ルツボの底面又は側面には、前記キャリアガス流路に前記キャリアガスを導入するためのキャリアガス導入孔が設けられている
ものが好ましい。
【0013】
また、前記ルツボは、下から上に向かって第1ルツボ、第2ルツボ、…第nルツボ(n≧2)の順に積み重ねられた積層ルツボであって、第kルツボ(1≦k≦n−1)の前記開口部と、第(k+1)ルツボの前記キャリアガス導入孔とが接続されたものからなり、
前記多孔バッフル板は、少なくとも最上部にある前記第nルツボの開口部に設けられているものでも良い。
【0014】
本発明に係る第1の化合物単結晶の製造方法は、本発明に係る化合物単結晶製造装置を用いて、各部の温度が次の(1)式を満たす条件下において、前記種結晶の表面に前記無機化合物からなる単結晶を成長させることを要旨とする。
G<TD<TS<TB ・・・(1)
但し、
Gは、成長温度、
Sは、前記金属源の温度、
Dは、前記無機化合物の分解温度、
Bは、前記ルツボの開口部に設けられた前記多孔バッフル板の温度。
【0015】
本発明に係る第2の化合物単結晶の製造方法は、本発明に係る化合物単結晶製造装置を用いて、各部の温度が次の(11)式及び(12)式を満たす条件下において、前記種結晶の表面に前記無機化合物からなる単結晶を成長させることを要旨とする。
G<TD≦TDmax<TSn<TB ・・・(11)
Sk≦TSk+1(1≦k≦n−1) ・・・(12)
但し、
Gは、成長温度、
Snは、前記第nルツボに充填された第n金属源の温度、
Dは、前記無機化合物の分解温度、
Dmaxは、前記第1金属源〜第n金属源に含まれるいずれか1以上の金属元素と前記反応ガスから生成する無機化合物の分解温度の最大値、
Skは、前記第kルツボに充填された第k金属源の温度、
Sk+1は、前記第(k+1)ルツボに充填された第(k+1)金属源の温度、
Bは、前記第nルツボの開口部に設けられた前記多孔バッフル板の温度。
【発明の効果】
【0016】
昇華法を用いて良好な結晶成長を実現するには、金属蒸気又は昇華ガスが成長表面まで原子状又は分子状で到達すること、及び、成長表面において金属蒸気又は昇華ガスと反応ガスとを反応させること、が必要がある。しかし、一般に、このような方法でバルク単結晶を安定的に成長させるのは困難である。これは、
(a)気相反応により気相中で化合物粉末が生成すること、
(b)気相中、成長結晶の表面、又は他の構造部材上で金属が液化又は固化すること、
(c)反応ガスがルツボ内の金属源と直接反応し、金属源の表面に不働態膜を形成したり、あるいは、急激な反応により突沸現象がおきるために、金属蒸気又は昇華ガスの供給が不安定となること、
などが主要な原因と考えられる。
【0017】
これに対し、昇華法を用いて結晶成長を行う場合において、金属源を充填したルツボの開口部に多孔バッフル板を設け、ルツボ内にキャリアガスを流すと、ルツボから混合ガスが排出されると同時に、ルツボ内への反応ガスの逆流が抑制される。そのため、金属含有ガスの供給が安定化する。
さらに、単結晶を成長させる場合において、各部の温度を最適化すると、気相中での化合物粉末の生成や、意図しない部位での金属の液化又は固化を抑制することができる。そのため、化合物単結晶の製造コストの低減や結晶サイズの大型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る化合物単結晶製造装置の断面模式図である。
図2】サセプタとルツボの位置関係を説明するための断面模式図である。
図3】ルツボとRFコイルの位置関係を説明するための断面模式図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る化合物単結晶製造装置の断面模式図である。
【0019】
図5】HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法を説明するための断面模式図である。
図6】従来の昇華法を説明するための断面模式図である。
図7】GaN成長速度のGa源温度依存性を示す図である。
図8】GaN成長結晶中のパーティクル密度のルツボ出口ガス流速依存性を示す図である。
図9】GaN収率の成長圧力依存性及びバッフル−成長結晶間距離依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 化合物単結晶製造装置(1)]
図1に、本発明の第1の実施の形態に係る化合物単結晶製造装置の断面模式図を示す。図1において、化合物単結晶製造装置10は、以下の構成を備えている。
(1)化合物単結晶製造装置10は、
種結晶22を保持するためのサセプタ24を備えた結晶成長部20と、
金属源50から発生させた金属含有ガス(金属蒸気を含むガス)、及びこれと反応して無機化合物を生成する反応ガスを種結晶22に向かって供給するためのガス供給部40と、
種結晶22及び金属源50を加熱するための加熱装置62を備えた加熱部60と
を備えている。
(2)ガス供給部40は、
サセプタ24から離間して配置された、金属源50を保持するためのルツボ42と、
ルツボ42内にキャリアガスを供給し、金属含有ガスとキャリアガスとの混合ガスを種結晶22に向かって供給するためのキャリアガス供給装置と、
反応ガスを種結晶22に向かって供給するための反応ガス供給装置と、
を備えている。
(3)ルツボ42の開口部には、多孔バッフル板48が設けられている。
【0021】
化合物単結晶製造装置10は、
(a)多孔バッフル板48とサセプタ24との間の垂直方向距離又は水平方向距離を変更するための第1可動装置28、
(b)加熱装置62とルツボ42との間の垂直方向距離又は水平方向距離を変更するための第2可動装置64、及び/又は、
(c)種結晶22の表面の傾き角度を変更する角度変更装置30
をさらに備えていても良い。
【0022】
[1.1. 結晶成長部]
[1.1.1. サセプタ]
結晶成長部20は、種結晶22を保持するためのサセプタ24を備えている。サセプタ24は、反応容器26内に設置されている。反応容器26内は、排気装置(図示せず)を用いて雰囲気や圧力を制御できるようになっている。
サセプタ24の構造は、特に限定されるものではなく、目的に応じて、最適な構造を選択することができる。また、反応容器26の材料は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。反応容器26としては、例えば、石英チャンバーなどがある。
【0023】
サセプタ24は、多孔バッフル板48を通って排出される混合ガスを、種結晶22の表面に供給することが可能な位置に設置される。サセプタ24とルツボ42の位置関係は、特に限定されるものではなく、ルツボ42の構造に応じて最適な位置関係を選択することができる。
図1に示す例において、サセプタ24は、ルツボ42の上方に配置されている。多孔バッフル板48を通って排出された混合ガスは、サセプタ24に向かって上昇する。
一方、図示はしないが、ルツボ42から排出される混合ガスの流れを水平方向に変更する手段をさらに備えている場合、サセプタ24とルツボ42とを水平方向に配置することもできる。
【0024】
すなわち、本発明は、
(a)反応容器26の長手方向が垂直方向となるように反応容器26を設置し、ルツボ42とサセプタ24を垂直方向に配置した縦型炉、あるいは、
(b)反応容器26の長手方向が水平方向となるように反応容器26を設置し、ルツボ42とサセプタ24を水平方向に配置したた横型炉、
のいずれに対しても適用することができる。
【0025】
[1.1.2. 第1可動装置]
サセプタ24(又は、種結晶22)は、多孔バッフル板48(又は、ルツボ42の開口部)から所定の距離だけ離して配置される。多孔バッフル板48とサセプタ24の表面との間の距離(以下、「バッフル−サセプタ間距離」ともいう)は、固定されていても良く、あるいは、変更可能であっても良い。
【0026】
バッフル−サセプタ間距離が固定されている場合、単結晶の成長に伴い、多孔バッフル板48と成長結晶の表面との間の距離(以下、「バッフル−成長結晶間距離」ともいう)が短くなる。一般に、単結晶の成長を安定して継続するためには、バッフル−成長結晶間距離を所定の範囲に維持するのが好ましい。そのため、厚い単結晶を成長させる場合、バッフル−サセプタ間の垂直方向距離又は水平方向距離を変更するための第1可動装置28を備えているのが好ましい。
【0027】
第1可動装置28は、結晶成長部20又はガス供給部40のいずれか一方に設けられていても良く、あるいは、双方に設けられていても良い。すなわち、第1可動装置28は、
(a)ルツボ42を固定した状態で、サセプタ24を移動可能なもの、
(b)サセプタ24を固定した状態で、ルツボ42を移動可能なもの、あるいは、
(c)サセプタ24とルツボ42の双方を移動可能なもの
のいずれであっても良い。
【0028】
単結晶の成長を安定して継続するためには、各部の温度をアクティブに制御するのが好ましい。そのためには、第1可動装置28は、サセプタ24を移動可能なものが好ましい。図1に示すように、サセプタ24がルツボ42の上方に配置されている縦型炉の場合、第1可動装置28は、サセプタ24を垂直方向に移動可能なものが好ましい。
【0029】
[1.1.3. 角度変更装置]
種結晶の表面の傾き角度は、固定されていても良く、あるいは、変更可能であっても良い。ここで、「種結晶の表面の傾き角度(以下、単に「傾き角度」ともいう)」とは、種結晶22の表面の法線方向と混合ガスの供給方向とのなす角をいう。
混合ガスは、通常、種結晶22の表面の法線方向から供給される。しかし、種結晶22の表面に対して斜め方向から混合ガスを供給すると、成長速度が増大する場合がある。このような場合、結晶成長部20に、傾き角度を変更するための角度変更装置30を設けるのが好ましい。
【0030】
角度変更装置30の構造は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な構造を選択することができる。また、傾き角度の変更範囲は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な角度を選択することができる。通常、傾き角度は、0〜60°である。
【0031】
[1.2. ガス供給部]
ガス供給部40は、金属含有ガス、及びこれと反応して無機化合物を生成する反応ガスを種結晶22に向かって供給するためのものである。金属含有ガスは、金属源50を所定の温度に加熱することにより発生させる。
ここで、「金属含有ガス」とは、溶融金属を蒸発させることにより得られる金属蒸気を含むガスをいう。金属源50は、金属のみからなるものでも良く、あるいは、金属と金属化合物の混合物でも良い。金属源50に適量の金属化合物が含まれる場合、金属化合物に含まれる元素を成長結晶にドープすることができる。
【0032】
ガス供給部40は、上述したように、
サセプタ24から離間して配置された、金属源50を保持するためのルツボ42と、
ルツボ42内にキャリアガスを供給し、金属含有ガスとキャリアガスとの混合ガスを種結晶22に向かって供給するためのキャリアガス供給装置と、
反応ガスを種結晶22に向かって供給するための反応ガス供給装置と、
を備えている。
また、ルツボ42の開口部には、多孔バッフル板48が設けられている。
【0033】
[1.2.1. 多孔バッフル板]
本発明において、ルツボ42の開口部には、多孔バッフル板48が設けられている。この点が従来とは異なる。ここで、「多孔バッフル板」とは、複数の小径の貫通孔が形成された板状部材をいう。多孔バッフル板48は、
(a)混合ガスをルツボ42の内部から外部に排出する機能、及び、
(b)ルツボ42の外部から内部への反応ガスの逆流を抑制する機能
を備えている必要がある。そのため、これらの機能が両立するように、貫通孔の直径及び数を選択するのが好ましい。
【0034】
一般に、多孔バッフル板の開口面積(=貫通孔1個当たりの面積×貫通孔の数)が小さくなるほど、混合ガスが多孔バッフル板48を通過する際の流速(以下、「ルツボ出口ガス流速」ともいう)が速くなるので、反応ガスの逆流防止機能が向上する。一方、開口面積が小さくなりすぎると、混合ガスが多孔バッフル板48を通過する際の抵抗が増大するので、混合ガスの排出機能が低下する。
最適な貫通孔の直径及び数は、多孔バッフル板48(ルツボ42の開口部)の温度、キャリアガス流量、成長圧力(反応容器26内の圧力)などにより異なる。化合物単結晶の成長は、通常、減圧下で行われるため、貫通孔の直径は、φ0.5mm〜5mm、貫通孔の数は、1個/cm2〜20個/cm2とするのが好ましい。
【0035】
[1.2.2. ルツボ]
[A. ルツボの構造]
ルツボ42の構造は、上述した機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。図1に示す例において、ルツボ42は、
(a)金属源50を保持するための内ルツボ42aと、内ルツボ42aを収容するための外ルツボ42bとを備えており、
(b)内ルツボ42aの外壁面と外ルツボ42bの内壁面との間には、キャリアガスを内ルツボ42aの内部に向かって流すためのキャリアガス流路42cが設けられ、
(c)外ルツボ42bの底面又は側面には、キャリアガス流路42cにキャリアガスを導入するためのキャリアガス導入孔42dが設けられている。
なお、図1に示す例において、キャリアガス導入孔42dは、外ルツボ42bの底面に設けられているが、外ルツボ42bの側面に設けることもできる。
【0036】
キャリアガス流路42cは、キャリアガスを内ルツボ42aの内部に向かって流すことが可能なものであればよい。しかし、内ルツボ42aの内部におけるキャリアガスの流れが金属源50の表面から大きく離れていると、金属含有ガスの排出量が低下する。そのため、キャリアガス流路42cは、金属源50の表面に向かってキャリアガスを流すことが可能なもの、あるいは、金属源50の表面近傍に沿ってキャリアガスを流すことが可能なものが好ましい。
【0037】
ルツボ42の構造を複雑化することなく、金属含有ガスの排出量を増大させるためには、キャリアガス流路42cは、内ルツボ42aの先端に向かってキャリアガスを流すことが可能なものからなり、かつ、外ルツボ42bの上部には、内ルツボ42aの先端に達したキャリアガスの流れを金属源50に向かう方向に変更するためのキャリアガス流方向調整器42eが設けられているのが好ましい。
【0038】
内ルツボ42aと外ルツボ42bの隙間に形成されるキャリアガス流路42cの形状を最適化すると、内ルツボ42aの先端に向かってキャリアガスを流すことができる。キャリアガス流方向調整器42eは、内ルツボ42aの先端に達した上向きのキャリアガス流を下向き又は斜め下向きに変更可能なものであれば良い。
【0039】
例えば、図1に示すように、外ルツボ42bの先端に、内ルツボ42aの内径より小さい外径を有する円筒状部材(キャリアガス流方向調整器42e)を設けると、鉛直上向きのキャリアガス流を鉛直下向きに変更することができる。鉛直下向きに流れの方向が変えられたキャリアガスは、金属源50の表面に吹き付けられ、金属含有ガスを含む混合ガスとなる。金属源50の表面に衝突したキャリアガス(混合ガス)は、流れの方向が再び鉛直上向き方向に変えられ、多孔バッフル板48を通って外部に排出される。
【0040】
[B. ルツボの材料]
ルツボ42の材料は、特に限定されるものではなく、金属源50の種類に応じて、最適な材料を選択することができる。
ルツボ42の材料としては、例えば、黒鉛、SiCコート黒鉛、pBNコート黒鉛、TaCコート黒鉛などがある。
【0041】
[1.2.3. キャリアガス供給装置]
キャリアガス供給装置は、ルツボ42内にキャリアガスを供給し、金属含有ガスとキャリアガスとの混合ガスを種結晶22に向かって供給するためのものである。キャリアガス供給装置の構造は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な構造を選択することができる。図1に示す例において、キャリアガス供給装置は、キャリアガスを流すための配管44を備えており、その一端は外ルツボ42bのキャリアガス導入孔42dに接続され、他端はキャリアガス供給源(図示せず)に接続されている。
【0042】
[1.2.4. 反応ガス供給装置]
反応ガス供給装置は、反応ガスを種結晶22に向かって供給するためのものである。反応ガス供給装置は、反応ガスのみを供給するものでも良く、あるいは、反応ガスと希釈ガス(キャリアガス)との混合物を供給するものでも良い。
【0043】
種結晶22の表面において、無機化合物からなる単結晶を成長させるためには、種結晶22の表面近傍において、金属含有ガスと反応ガスとが均一に混合している必要がある。反応ガス供給装置は、このような機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。図1に示す例において、反応ガス供給装置は、反応ガスを供給するための配管46を備えており、その一端は反応容器26内に挿入され、他端は反応ガス供給源(図示せず)及び希釈ガス供給源(図示せず)に接続されている。
【0044】
反応ガス供給装置は、多孔バッフル板48を通って排出される混合ガスに向かって、反応ガスを供給可能なものが好ましい。そのためには、サセプタ24とルツボ42との間に、反応ガスの流れの方向を混合ガスに向かう方向に変更し、混合ガスと反応ガスとの混合を促進するための反応ガス流方向調整器52を設けるのが好ましい。
【0045】
例えば、図1に示すように、ルツボ42の鉛直上方にサセプタ24を離間して配置した場合、サセプタ24とルツボ42との間に中空円板(反応ガス流方向調整器52)を挿入する。この場合、金属含有ガスとキャリアガスの混合ガスは、多孔バッフル板48の貫通孔を通ってそのまま種結晶22に向かって上昇する。
一方、反応容器26内に導入された反応ガスは、反応容器26内を上昇し、ルツボ42の側方を通って中空円板の下面に衝突する。中空円板の下面に衝突した反応ガスは、流れの方向が水平方向(ルツボ42の開口部の方向)に変えられ、多孔バッフル板48の上方において混合ガスと合流する。合流ガス(混合ガスと反応ガスの混合物)は、中空円板の開口部で再び流れの方向が鉛直上方に変えられ、種結晶22の表面に供給される。
【0046】
反応ガス流方向調整器52がない場合であっても、種結晶22の表面に反応ガスを供給することができるが、反応ガス流方向調整器52を備えることによって、組成が均一な合流ガスを生成させることができる。また、組成が均一な合流ガスが種結晶22の表面に供給されるため、単結晶の成長が安定化する。
【0047】
[1.3. 加熱部]
[1.3.1. 加熱装置]
加熱部60は、種結晶22(又は、サセプタ24)及び金属源50(又は、ルツボ42)を加熱するための加熱装置62を備えている。加熱装置62の構造は特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な構造を選択することができる。
加熱装置62としては、例えば、
(a)ヒーターを用いて種結晶22及び金属源50を加熱する抵抗加熱装置、
(b)RFコイルを用いて種結晶22及び金属源50を加熱する高周波加熱装置
などがある。
【0048】
これらの内、抵抗加熱装置は、種結晶22及び金属源50だけでなく、これらを外気から遮断する反応容器26も同時に加熱される。そのため、抵抗加熱装置は、単結晶の成長温度が反応容器26の耐熱温度より低い場合にのみ有効である。
一方、高周波加熱装置は、反応容器26の材料を最適化することにより、反応容器26を直接加熱することなく、種結晶22及び金属源50を直接加熱することができる。そのため、高周波加熱装置は、特に単結晶の成長温度が反応容器26の耐熱温度より高い場合に有効である。
【0049】
加熱装置62は、1個でも良く、あるいは、2個以上でも良い。複数個の加熱装置62を用いる場合、各部の温度の独立制御は容易であるが、装置の構造が複雑となったり、各部の温度をアクティブに制御するのが煩雑となる場合がある。
一方、1個の加熱装置62を用いる場合、装置の構造は比較的単純となるが、各部の温度をアクティブに制御するのが難しい。この場合、後述する第2可動装置64を用いて、加熱装置62とルツボ42との間の位置を制御するのが好ましい。
【0050】
[1.3.2. 第2可動装置]
加熱装置62は、反応容器26の外部であって、種結晶22及びルツボ42の周囲に配置される。加熱装置62とルツボ42との間の距離(以下、「加熱装置−ルツボ間距離」という)は、固定されていても良く、あるいは、変更可能になっていても良い。
ここで、「加熱装置−ルツボ間距離」とは、
(a)図1に示すような縦型炉の場合にあっては、加熱装置62の垂直方向の基準点(例えば、中心軸が垂直方向に配置されたRFコイルの下端)とルツボ42の垂直方向の基準点(例えば、ルツボ42内の金属源50の表面)との間の距離(垂直方向距離)、
(b)図示はしないが横型炉の場合にあっては、加熱装置62の水平方向の基準点(例えば、中心軸が水平方向に配置されたRFコイルの一端)とルツボ42の水平方向の基準点(例えば、ルツボ42の中心軸)との間の距離(水平方向距離)
をいう。
【0051】
加熱装置−ルツボ間距離が固定されている場合、単結晶の成長に伴い、各部の温度が最適値から外れ、成長の継続が困難となる場合がある。そのため、厚い単結晶を成長させる場合には、加熱装置−ルツボ間の垂直方向距離又は水平方向距離を変更するための第2可動装置64を備えているのが好ましい。
【0052】
第2可動装置64は、加熱部60又はガス供給部40のいずれか一方に設けられていても良く、あるいは、双方に設けられていても良い。すなわち、第2可動装置64は、
(a)ルツボ42を固定した状態で、加熱装置62を移動可能なもの、
(b)加熱装置62を固定した状態で、ルツボ42を移動可能なもの、あるいは、
(c)加熱装置62とルツボ42の双方を移動可能なもの
のいずれであっても良い。
【0053】
単結晶の成長を安定して継続するためには、各部の温度をアクティブに制御するのが好ましい。そのためには、第2可動装置64は、加熱装置62を移動可能なものが好ましい。例えば、図1に示すように反応容器26の長手方向が垂直方向となるように反応容器26が配置されている場合、第2可動装置64は、加熱装置62を垂直方向に移動可能なものが好ましい。
【0054】
[1.4. 制御部]
化合物単結晶製造装置10は、サセプタ24(又は、成長結晶)の温度、ルツボ42の温度、キャリアガス流量、反応ガス流量などを制御するための制御部(図示せず)を備えている。化合物単結晶製造装置10が第1可動装置28、第2可動装置64、あるいは角度変更装置30を備えている場合、制御部は、これらの動作の制御も行う。
【0055】
[1.4.1. 温度及び圧力の制御]
金属源50を含むルツボ42、及び、種結晶22を保持するサセプタ24は、加熱装置62により加熱される。金属源50の温度(又は、内ルツボ42aの温度):TS、成長温度(成長結晶、又は、種結晶22若しくはサセプタ24の温度):TG、及び、多孔バッフル板48の温度:TBは、放射温度計や熱電対によりモニターされる。これらの温度は、加熱装置62に印加されるパワー、加熱装置62の位置、及びサセプタ24の位置にフィードバックを掛けることで、制御することができる。
【0056】
成長圧力(反応容器26内の圧力)は、圧力計(例えば、バラトロン圧力計)によりモニターされる。成長圧力は、排気速度(真空ポンプの回転数、及びコンダクタンスバルブ開度で決定される)及びガス流量により制御することができる。
【0057】
[1.4.2. 第1可動装置の制御]
図2に、サセプタ24とルツボ42の位置関係を説明するための断面模式図を示す。図2には、縦型炉の例、すなわち、サセプタ24とルツボ42が垂直方向に配置されている例が示されている。上述したように、単結晶32の成長を安定して継続するためには、化合物単結晶製造装置10は、バッフル−サセプタ間距離を変更するための第1可動装置28を備えているのが好ましい。
【0058】
サセプタ24(又は、種結晶22)の可動幅は、製造可能な単結晶32の厚さに影響を与える。厚い単結晶32を得るためには、サセプタ24の可動幅は、20mm以上が好ましい。可動幅は、好ましくは、100mm以上である。
また、バッフル−サセプタ間距離の変更速度(第1可動装置28の駆動速度)は、0.1mm/h〜5mm/secの範囲で自由に調節できることが好ましい。
【0059】
[1.4.3. 第2可動装置の制御]
図3に、ルツボ42と加熱装置(RFコイル)62の位置関係を説明するための断面模式図を示す。図3には、反応容器26の長手方向が垂直方向となるように反応容器26が配置されている縦型炉の例が示されている。上述したように、厚い単結晶32を成長させる場合には、加熱装置−ルツボ間距離を変更するための第2可動装置64を備えているのが好ましい。
【0060】
加熱装置62の可動幅は、単結晶32の品質や成長速度に影響を与える。縦型炉において高品質で厚い単結晶32を得るためには、第2可動装置62の可動幅は、
(a)加熱装置62の下端位置が、金属源50の上端位置より20mm以上、下方に移動可能であること、
(b)加熱装置62の下端位置が、金属源50の上端位置より10mm以上、上方に移動可能であること、及び、
(b)加熱装置62の下端の総可動幅が50mm以上であること
が好ましい。加熱装置62の総可動幅は、好ましくは、200mm以上である。
また、加熱装置−ルツボ間距離の変更速度(第2可動装置64の駆動速度)は、0.1mm/h〜5mm/secの範囲で自由に調節できることが好ましい。
【0061】
[2. 化合物単結晶製造装置(2)]
図4に、本発明の第2の実施の形態に係る化合物単結晶製造装置の断面模式図を示す。図4において、化合物単結晶製造装置12は、以下の構成を備えている。
(1)化合物単結晶製造装置12は、
種結晶22を保持するためのサセプタ24を備えた結晶成長部20と、
第1金属源74(1)、第2金属源74(2)、…第n金属源74(n)から発生させた金属含有ガス、及びこれと反応して無機化合物を生成する反応ガスを種結晶22に向かって供給するためのガス供給部40と、
種結晶22及び第1金属源74(1)、第2金属源74(2)、…第n金属源74(n)を加熱するための加熱装置62を備えた加熱部60と
を備えている。
(2)ガス供給部40は、
サセプタ24から離間して配置された、第1金属源74(1)、第2金属源74(2)、…第n金属源74(n)を保持するためのルツボ72と、
ルツボ72内にキャリアガスを供給し、金属含有ガスとキャリアガスとの混合ガスを種結晶22に向かって供給するためのキャリアガス供給装置と、
反応ガスを種結晶22に向かって供給するための反応ガス供給装置と、
を備えている。
(3)ルツボ72の開口部には、多孔バッフル板48が設けられている。
【0062】
化合物単結晶製造装置12は、
(a)多孔バッフル板48とサセプタ24との間の垂直方向距離又は水平方向距離を変更するための第1可動装置28、
(b)加熱装置62とルツボ42との間の垂直方向距離又は水平方向距離を変更するための第2可動装置64、及び/又は、
(c)種結晶22の表面の傾き角度を変更する角度変更装置30
をさらに備えていても良い。
【0063】
[2.1. 積層ルツボ及び多孔バッフル板]
本実施の形態において、ルツボ72は、
下から上に向かって第1ルツボ72(1)、第2ルツボ72(2)、…第nルツボ72(n)(n≧2)の順に積み重ねられた積層ルツボであって、
第kルツボ72(k)(1≦k≦n−1)の開口部と、第(k+1)ルツボ72(k+1)のキャリアガス導入孔とが接続されたもの
からなる。
また、多孔バッフル板48は、少なくとも最上部にある第nルツボ72(n)の開口部に設けられている。この点が、第1の実施の形態とは異なる。なお、図4では、第1ルツボ72(1)及び第2ルツボ72(2)のみが示されているが、これは単なる例示である。
【0064】
第kルツボ72(k)の開口部と第(k+1)ルツボ72(k+1)のキャリアガス導入孔とを接続すると、最下部にある第1ルツボ72(1)から最上部にある第nルツボ72(n)に至るまで、キャリアガスを一気に流すことができる。キャリアガス導入孔が各第kルツボ72(k)の底面にある場合、このような接続が容易となる。
【0065】
積層ルツボにおいて、多孔バッフル板48は、個々の第kルツボ72(k)の開口部に設けられていても良く、あるいは、最上部にある第nルツボ72(n)の開口部にのみ設けられていても良い。最上部にある第nルツボ72(n)の開口部のみに多孔バッフル板48を設けた場合であっても、反応ガスの逆流を防止することができる。
ルツボ(積層ルツボ)72及び多孔バッフル板48に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0066】
[2.2. 金属源]
第1ルツボ72(1)、第2ルツボ72(2)、…第nルツボ72(n)には、それぞれ、第1金属源74(1)、第2金属源74(2)、…第n金属源74(n)が充填されている。積層ルツボにおいて、各第k金属源74(k)は、それぞれ、同種材料であっても良く、あるいは、異種材料であっても良い。
【0067】
溶融金属から金属蒸気を発生させる場合、金属蒸気の蒸発速度は、主として溶湯表面の面積に比例する。そのため、各第kルツボ72(k)に同種の溶融金属が充填されている場合、1個のルツボを用いた場合に比べて金属蒸気の蒸発速度を増大させることができる。
一方、各第kルツボ72(k)に異種の金属源を充填した場合、2種以上の金属元素を含む金属含有ガスを発生させること、すなわち、種結晶22の表面に2種以上の金属元素を含む多元系無機化合物からなる単結晶を成長させることができる。
金属源に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0068】
[2.3. 第1可動装置]
図4に示す化合物単結晶製造装置12は、バッフル−サセプタ間距離を変更するための第1可動装置28を備えていても良い。
この場合、バッフル−サセプタ間距離の基準となる「多孔バッフル板」とは、最上部にある第nルツボ72(n)の開口部に設けられた多孔バッフル板48をいう。
第1可動装置28に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
[2.4. 第2可動装置]
図4に示す化合物単結晶製造装置12は、加熱装置−ルツボ間距離を変更するための第2可動装置64をさらに備えていても良い。
縦型炉の場合、第2可動装置の可動幅は、
(a)加熱装置62の下端位置が、最下部にある第1ルツボ72(1)に充填された第1金属源74(1)の上端位置より20mm以上、下方に移動可能であること、
(b)加熱装置62の下端位置が、最上部にある第nルツボ72(n)に充填された第n金属源74(n)の上端位置より10mm以上、上方に移動可能であること、及び、
(b)加熱装置62の下端の総可動幅がルツボ72の高さ+50mm以上であること
が好ましい。
第2可動装置に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0070】
[2.5. その他の構成]
化合物単結晶製造装置12に関するその他の構成については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
[3. 化合物単結晶の製造方法(1)]
本発明の第1の実施の形態に係る化合物単結晶の製造方法は、本発明の第1の実施の形態に係る化合物単結晶製造装置10を用いて、所定の温度条件下において、種結晶22の表面に無機化合物からなる単結晶32を成長させることを特徴とする。
【0072】
[3.1. 金属源]
本発明において、ルツボ42に充填される金属源50の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。なお、本発明において「金属」というときは、SiやGeなどの半金属も含まれる。
【0073】
金属源50としては、常温で液体又は固体の金属を用いることができる。このような金属としては、例えば、B、Al、Ga、In、Zn、Cd、Hg、Si、Ge、Sn、Mg、Mn、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Agなどがある。
また、金属源50には、これらの金属に加えて、これらの金属の化合物(酸化物、窒化物、炭化物等)が含まれていても良い。金属源50が適量の金属化合物を含む場合、これを分解温度TD以上の温度に加熱すると、金属元素以外の構成元素(例えば、酸素)を含む金属含有ガスを発生させることができる。
【0074】
金属源50として用いる金属は、純金属であってもよく、あるいは、2種以上の金属を含む混合物又は合金でも良い。金属含有ガスの組成を安定化させるためには、金属源50には、純金属を用いるのが好ましい。
金属源50は、特に、Al、Ga、In、Zn、Cd、Hg、Si、Ge、Sn、Mg、Mn、Cu、及びAgからなる群から選ばれるいずれか1種以上の金属元素を含む金属が好ましい。これらは、低温(<1500℃)で金属蒸気を発生させることが可能であるため、金属源50として好適である。蒸発容易な金属の目安は、沸点が2500℃以下程度以下であるものである。
【0075】
[3.2. 反応ガス]
反応ガスは、無機化合物を構成する元素であって、金属源50から供給される元素以外の元素を供給するためのものである。本発明において、反応ガスの種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。
【0076】
反応ガスは、C、B、N、P、As、Sb、O、S、Se、及びTeからなる群から選ばれるいずれか1種以上の元素を含むガスが好ましい。反応ガスとしては、具体的には、
(a)水素化物ガス(例えば、、H2O、NH3、炭化水素ガス、BH3、PH3、AsH3、H2Sb、H2S、H2Se、H2Teなど)、
(b)2原子分子ガス(例えば、O2、N2など)
などがある。
【0077】
[3.3. キャリアガス(又は、希釈ガス)]
本発明において、キャリアガスの種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適なものを選択することができる。キャリアガスとしては、例えば、N2、Ar、H2、He、Neなどがある。これらのガスは、金属含有ガス又は反応ガスの双方のキャリアガス(又は、希釈ガス)として使用可能である。
さらに、反応ガスやキャリアガスに加えて、不純物添加用のガスとして、適宜、有機金属化合物ガス等を使用しても良い。
【0078】
[3.4. 種結晶]
種結晶22の材料は、特に限定されるものではなく、単結晶32の組成に応じて最適な材料を選択する。例えば、GaN単結晶を成長させる場合、種結晶22には、通常、サファイア基板が用いられている。種結晶22は、結晶成長の前に、不純物等を取り除くために洗浄を行うのが好ましい。洗浄方法としては、例えば、キャロス洗浄、RCA洗浄、有機洗浄などがある。
【0079】
[3.5. (1)式:温度制御]
本実施の形態において、単結晶32の成長は、各部の温度が次の(1)式を満たす条件下において行われる。
G<TD<TS<TB ・・・(1)
但し、
Gは、成長温度、
Sは、前記金属源の温度、
Dは、前記無機化合物の分解温度、
Bは、前記ルツボの開口部に設けられた前記多孔バッフル板の温度。
ここで、「成長温度TG」とは、成長の最先端の温度、すなわち、成長初期においては種結晶22又はサセプタ24の温度をいい、成長中期〜後期においては成長結晶の先端近傍の温度をいう。
【0080】
(1)式は、ルツボ42から金属含有ガスを円滑に発生させるための条件、及び、種結晶22の表面において単結晶32を安定して成長させるための条件を表す。
成長温度TGが高すぎると、種結晶22の表面に成長した単結晶32が分解するおそれがある。種結晶22の表面における成長結晶の分解を抑制するためには、TG<TDである必要がある。
なお、成長温度TGが低すぎると、単結晶32の表面荒れが生じる場合がある。表面荒れを抑制するには、TG≧0.85TDが好ましい。
【0081】
また、金属源50の温度TSが低すぎると、ルツボ42内において無機化合物が生成するおそれがある。ルツボ42内で無機化合物が生成すると、突沸現象や不働態膜の形成などが起こり、金属含有ガスの供給が不安定となるおそれがある。ルツボ42内における意図しない無機化合物の生成を抑制するためには、TD<TSである必要がある。
さらに、多孔バッフル板48の温度TBが低すぎると、多孔バッフル板48表面において金属が液化又は固化し、成長結晶へのパーティクル混入の原因となる。多孔バッフル板48表面における金属の液化又は固化を抑制するためには、TS<TBである必要がある。
なお、金属源50の温度TSが高すぎると、単結晶32の成長速度が極端に遅くなる場合がある。高い成長速度を維持するためには、TS≦1.12TDが好ましい。
【0082】
[3.6. ルツボ出口ガス流速]
本発明において、ルツボ42の開口部に多孔バッフル板48を設けることで、金属源50を反応ガスから隔離している。また、ルツボ42の内部をキャリアガスでパージすることで、ルツボ42内への反応ガスの混入を抑制している。ルツボ42内への反応ガスの混入を抑制するためには、多孔バッフル板48を通過する際の混合ガスの流速(ルツボ出口ガス流速)は、速いほど良い。
【0083】
ここで、ルツボ出口ガス流速(VB)とは、次の(2)式で表される値をいう。
B=(TB/300)×Q×(P0/P)×(1/SB) ・・・(2)
但し、
Bは、多孔バッフル板の温度(K)、
Qは、キャリアガス流量(m3/sec)、
0は、大気圧(101.325kPa)、
Pは、成長圧力(kPa)、
Bは、多孔バッフル板の開口面積(m2)。
【0084】
Bが遅すぎると、気相拡散により反応ガスがルツボ42内へ逆流し、反応ガスが金属源50の表面と直接反応する。その結果、金属源50の表面に不働態膜が形成されたり、あるいは、急激な反応により突沸現象が起きるために、金属含有ガスの供給が不安定となる。ルツボ42内への反応ガスの混入を抑制するためには、VBは、20m/sec以上が好ましい。VBは、さらに好ましくは、100m/sec以上である。
【0085】
また、VBを20m/sec以上とすることで(通常のCVDでは、数m/sec未満)、金属含有ガスが成長表面に到達するまでの時間が短くなる。そのため、気相中で金属含有ガスと反応ガスとが反応して化合物粉末を生成したり、金属含有ガスが気相中で液滴として凝結することを抑制できる。これにより、成長結晶中へのパーティクル(異方位結晶、液滴)の混入を抑制でき、結晶品質を向上させることができる。
【0086】
[3.7. 成長圧力、及びバッフル−成長結晶間距離]
原料収率を向上させることは、コスト低減の観点から非常に重要である。本願発明者らは、成長圧力Pとバッフル−成長結晶間距離Dが原料収率に影響を与える重要なパラメータであることを見出した。
ここで、「原料収率」とは、蒸発した金属源50の重量に対する成長結晶に取り込まれた金属源50の重量の割合をいう。
【0087】
高い原料収率を得るためには、成長圧力Pが(3)式を満たし、かつ、バッフル−成長結晶間距離Dが(4)式を満たすように、単結晶を成長させるのが好ましい。P及びDがこの範囲を上回る場合は、原料収率が著しく低下する。一方、P及びDがこの範囲を下回る場合は、圧力等の成長パラメータの制御が困難となる。
0.1kPa<P<6kPa ・・・(3)
0.5cm≦D<5cm ・・・(4)
【0088】
[3.8. 成長速度]
本発明に係る化合物単結晶製造装置を用いた場合、結晶の成長速度として、〜100μm/hを容易に実現できる。製造コストの観点から、成長速度は、200μm/h以上が望ましい。
一方、成長速度が速すぎると、多結晶化や結晶欠陥の増殖が起こり、結晶品質が低下する。従って、成長速度は、2mm/h以下が好ましい。
【0089】
[3.9. 成長結晶サイズ]
本発明に係る化合物単結晶製造装置を用いた場合、成長高さが数センチメートル、結晶口径(直径)が数インチ(十数センチメートル)である単結晶が得られる。製造コスト(切削コスト等を含む)の観点から、成長高さは、20mm以上が好ましい。また、デバイスコストの観点から、結晶口径は、50mm以上が望ましい。
【0090】
[4. 化合物単結晶の製造方法(2)]
本発明の第2の実施の形態に係る化合物単結晶の製造方法は、本発明の第2の実施の形態に係る化合物単結晶製造装置12を用いて、所定の温度条件下において、種結晶22の表面に無機化合物からなる単結晶32を成長させることを特徴とする。
【0091】
[4.1. 金属源]
上述したように、ルツボ(積層ルツボ)72を用いる場合、各第kルツボ72(k)には、同種の金属源を充填しても良く、あるいは、異種の金属源を充填してもよい。しかし、キャリアガスは、最下部にある第1ルツボ72(1)から最上部にある第nルツボ72(2)に向かって流れるため、下部にあるルツボに金属含有ガスを発生しにくい金属源を充填すると、上部にあるルツボ内において金属含有ガスが液化又は固化するおそれがある。
【0092】
従って、下部のルツボに気化しやすい金属源を充填し、上部のルツボに気化しにくい金属源を充填するのが好ましい。
例えば、第k金属源72(k)(1≦k≦n)がいずれも金属のみからなる場合において、各第kルツボ72(k)から所定量の金属蒸気を発生させるためには、第(k+1)金属源72(k+1)の沸点は、第k金属源72(k)の沸点以上であるのが好ましい。
金属源に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0093】
[4.2. (11)式及び(12)式:温度制御]
本実施の形態において、単結晶32の成長は、各部の温度が次の(11)式及び(12)式を満たす条件下において行われる。
G<TD≦TDmax<TSn<TB ・・・(11)
Sk≦TSk+1(1≦k≦n−1) ・・・(12)
但し、
Gは成長温度、
Snは前記第nルツボに充填された第n金属源の温度、
Dは前記第無機化合物の分解温度、
Dmaxは、前記第1金属源〜第n金属源に含まれるいずれか1以上の金属元素と前記反応ガスから生成する無機化合物の分解温度の最大値、
Skは前記第kルツボに充填された第k金属源の温度、
Sk+1は前記第(k+1)ルツボに充填された第(k+1)金属源の温度、
Bは前記第nルツボの開口部に設けられた前記多孔バッフル板の温度。
【0094】
(11)式は、ルツボ72から金属含有ガスを円滑に発生させるための条件、及び、種結晶22の表面において単結晶32を安定して成長させるための条件を表す。(11)式中、TDmax<TSnは、第nルツボ72(n)内における意図しない無機化合物(必ずしも、単結晶32を構成する無機化合物と同一とは限らない)の生成を抑制するための条件を表す。その他の点については、(1)式と同様の意味を持つ。
(12)式は、複数の第kルツボ72(k)から、それぞれ、金属含有ガスを円滑に発生させるための条件を表す。キャリアガスは、第1ルツボ72(1)から第nルツボ72(n)に向かって流れる。そのため、下流側にある第(k+1)ルツボ72(k+1)の温度が上流側にある第kルツボ72(k)の温度より低いと、上流側で発生させた金属含有ガスが液化又は固化するおそれがある。従って、TSk≦TSk+1である必要がある。
【0095】
[4.3. その他の構成]
第2の実施の形態に係る化合物単結晶の製造方法に関するその他の点については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0096】
[5. 好適な成長条件]
単結晶成長の難しい化合物の代表として、窒化物単結晶が知られている。以下に、本発明を用いて窒化物単結晶を成長させるための詳細な成長条件について説明する。
【0097】
[5.1. GaN単結晶の好適な成長条件]
[5.1.1. 原料]
GaN単結晶を成長させるためには、金属源として金属Gaを用い、反応ガスとしてNH3を用いるのが好適である。金属蒸気及び反応ガスの輸送のためのキャリアガス(希釈ガス)は、N2、Ar等の不活性ガスが良い。
金属源として、GaNやGa23を用いることもできる。しかし、GaNは、成長時間の経過とともに分解して蒸発レートが変わり、供給が不安定となる。また、Ga23を用いると、成長結晶中の酸素不純物が多くなり、高純度化には向かない。但し、意図的に酸素をドープする際には、適量(1〜20mass%)のGa23を金属Gaに添加することも可能である。
【0098】
[5.1.2. 金属源の温度]
金属Gaの温度TSは、1200℃<TS<1350℃が好ましい。
GaNの分解が顕著に著しくなる温度(分解温度TD)は、〜1200℃である。そのため、金属Gaの温度TSが分解温度TD以下であると、ルツボ内に微量に混入した反応ガスが金属Gaと反応し、金属Gaの表面に不動態膜(蒸発速度の低い膜)が形成され、成長速度が低下する。従って、金属Gaの温度TSは、TS>1200℃が好ましい。
一方、金属Gaの温度TSが高すぎると、多孔バッフル板を通過した混合ガス(金属蒸気+キャリアガス)と反応ガスが合流した際に、反応ガスの分解が促進され過ぎ、成長表面での実質的な反応ガス分圧が下がりすぎてしまう。従って、金属Gaの温度TSは、TS<1350℃が好ましい。
【0099】
[5.1.3. 成長温度]
成長温度TGは、1000℃<TG<1200℃が好ましい。
成長温度(種結晶表面又は成長結晶表面の温度)TGが低すぎると、結晶品質が低下する。従って、成長温度TGは、TG>1000℃が好ましい。
一方、成長温度TGが高すぎると、成長結晶表面においてGaN結晶が分解し、Ga液膜が形成される。従って、TGは、TG<1200℃が好ましい。
【0100】
[5.1.4. 多孔バッフル板の温度]
多孔バッフル板の温度TBは、金属源の温度TSを超えることが必須である。多孔バッフル板の温度TBは、特に、TB≧TS+50℃が好ましい。多孔バッフル板の温度TBをこのような範囲とすることで、多孔バッフル板上にGa液滴やGaN多結晶が付着するのを完全に防止することができる。
【0101】
[5.2. InN単結晶の好適な成長条件]
[5.2.1. 原料]
InN単結晶を成長させるためには、金属源として金属Inを用い、反応ガスとしてNH3を用いるのが好適である。金属蒸気及び反応ガスの輸送のためのキャリアガス(希釈ガス)は、N2、Ar等の不活性ガスが良い。
金属源として、InNやIn23を用いることもできる。しかし、InNは、成長時間の経過とともに分解して蒸発レートが変わり、供給が不安定となる。また、In23を用いると、成長結晶中の酸素不純物が多くなり、高純度化には向かない。但し、意図的に酸素をドープする際には、適量(1〜20mass%)のIn23を金属Inに添加することも可能である。
【0102】
[5.2.2. 金属源の温度]
金属Inの温度TSは、800℃<TS<1000℃が好ましい。
InNの分解が顕著に著しくなる温度(分解温度TD)は、800℃である。そのため、金属Inの温度TSが分解温度TD以下であると、ルツボ内に微量に混入した反応ガスが金属Inと反応し、金属Inの表面に不動態膜(蒸発速度の低い膜)が形成され、成長速度が低下する。従って、金属Inの温度TSは、TS>800℃が好ましい。
一方、金属Inの温度TSが高すぎると、多孔バッフル板を通過した混合ガス(金属蒸気+キャリアガス)が成長結晶の表面温度を上昇させ、表面温度が適切な温度範囲から逸脱することがある。従って、金属Inの温度TSは、TS<1000℃が好ましい。
【0103】
[5.2.3. 成長温度]
成長温度TGは、700℃<TG<800℃が好ましい。
成長温度(種結晶表面又は成長結晶表面の温度)TGが低すぎると、結晶品質が低下する。従って、成長温度TGは、TG>700℃が好ましい。
一方、成長温度TGが高すぎると、成長結晶表面においてInN結晶が分解し、In液膜が形成される。従って、TGは、TG<800℃が好ましい。
【0104】
[5.2.4. 多孔バッフル板の温度]
多孔バッフル板の温度TBは、金属源の温度TSを超えることが必須である。多孔バッフル板の温度TBは、特に、TB≧TS+50℃が好ましい。多孔バッフル板の温度TBをこのような範囲とすることで、多孔バッフル板上にIn液滴やInN多結晶が付着するのを完全に防止することができる。
【0105】
[5.3. AlN単結晶の好適な成長条件]
[5.3.1. 原料]
AlN単結晶を成長させるためには、金属源として金属Alを用い、反応ガスとしてNH3及びN2を用いるのが好適である。金属蒸気及び反応ガスの輸送のためのキャリアガス(希釈ガス)は、Ar等の希ガスが良い。
金属源として、AlNやAl23を用いることもできる。しかし、これらは、蒸発レートが小さく、高速成長には向かない。
【0106】
[5.3.2. 金属源の温度]
金属Alの温度TSは、1500℃<TS<1800℃が好ましい。
AlNの分解が顕著に著しくなる温度(分解温度TD)は、1500〜1520℃である。そのため、金属Alの温度TSが分解温度TD以下であると、ルツボ内に微量に混入した反応ガスが金属Alと反応し、金属Alの表面に不動態膜(蒸発速度の低い膜)が形成され、成長速度が低下する。従って、金属Alの温度TSは、TS>1500℃が好ましい。
一方、金属Alの温度TSが高すぎると、輻射熱により炉構造材(石英チャンバー等)に損傷を与える。従って、金属Alの温度TSは、TS<1800℃が好ましい。
【0107】
[5.3.3. 成長温度]
成長温度TGは、1300℃<TG<1800℃が好ましい。
成長温度(種結晶表面又は成長結晶表面の温度)TGが低すぎると、結晶品質が低下する。従って、成長温度TGは、TG>1300℃が好ましい。
一方、成長温度TGが高すぎると、成長速度が低下する。従って、TGは、TG<1800℃が好ましい。
【0108】
[5.3.4. 多孔バッフル板の温度]
多孔バッフル板の温度TBは、金属源の温度TSを超えることが必須である。多孔バッフル板の温度TBは、特に、TB≧TS+50℃が好ましい。多孔バッフル板の温度TBをこのような範囲とすることで、多孔バッフル板上にAl液滴やAlN多結晶が付着するのを完全に防止することができる。
【0109】
[5.4. InGaN単結晶の好適な成長条件]
[5.4.1. 原料]
InGaN単結晶を成長させる場合、ルツボには、積層ルツボを用いる。また、第1金属源として金属Inを用い、第2金属源として金属Gaを用い、反応ガスとしてNH3を用いるのが好適である。金属蒸気及び反応ガスの輸送のためのキャリアガス(希釈ガス)は、N2、Ar等の不活性ガスが良い。
【0110】
[5.4.2. 金属源の温度]
金属Inの温度TS1は、[5.2.2.]と同様の理由から、800℃<TS1<1000℃が好ましい。
金属Gaの温度TS2は、1200℃<TS2<1350℃が好ましい。
GaNの分解が顕著に著しくなる温度(分解温度TD2)は、1200℃であり、InNの分解温度TD1及びInGaNの分解温度TDより高い。そのため、金属Gaの温度TS2が分解温度TD2以下であると、ルツボ内に微量に混入した反応ガスが金属Gaと反応し、金属Gaの表面に不動態膜(蒸発速度の低い膜)を形成してしまい、成長速度が低下する。従って、金属Gaの温度TS2は、TS2>1200℃が好ましい。
一方、金属Gaの温度TS2が高すぎると、多孔バッフル板を通過した混合ガス(金属蒸気+キャリアガス)と反応ガスが合流した際に、反応ガスの分解が促進され過ぎ、成長表面での実質的な反応ガス分圧が下がりすぎてしまう。従って、金属Gaの温度TS2は、TS2<1350℃が好ましい。
【0111】
[5.4.3. 成長温度]
成長温度TGは、700℃<TG<1200℃が好ましい。
成長温度(種結晶表面又は成長結晶表面の温度)TGが低すぎると、結晶品質が低下する。従って、成長温度TGは、TG>700℃が好ましい。
一方、成長温度TGが高すぎると、結晶が分解する。従って、TGは、TG<1200℃が好ましい。
【0112】
[5.5. AlGaN単結晶の好適な成長条件]
[5.5.1. 原料]
AlGaN単結晶を成長させる場合、ルツボには、積層ルツボを用いる。また、第1金属源として金属Gaを用い、第2金属源として金属Alを用い、反応ガスとしてNH3及びN2を用いるのが好適である。金属蒸気及び反応ガスの輸送のためのキャリアガス(希釈ガス)は、Ar等の希ガスが良い。
【0113】
[5.5.2. 金属源の温度]
金属Gaの温度TS1は、[5.1.2.]と同様の理由から、1200℃<TS1<1350℃が好ましい。
金属Alの温度TS2は、1500℃<TS2<1800℃が好ましい。
AlNの分解が顕著に著しくなる温度(分解温度TD2)は、1500℃であり、GaNの分解温度TD1及びAlGaNの分解温度TDより高い。そのため、金属Alの温度TS2が分解温度TD2以下であると、ルツボ内に微量に混入した反応ガスが金属Alと反応し、金属Alの表面に不動態膜(蒸発速度の低い膜)を形成してしまい、成長速度が低下する。従って、金属Alの温度TS2は、TS2>1500℃が好ましい。
一方、金属Alの温度TS2が高すぎると、輻射熱により炉構造材(石英チャンバー等)に損傷を与える。従って、金属Alの温度TS2は、TS<1800℃が好ましい。
【0114】
[5.5.3. 成長温度]
成長温度TGは、1000℃<TG<1500℃が好ましい。
成長温度(種結晶表面又は成長結晶表面の温度)TGが低すぎると、結晶品質が低下する。従って、成長温度TGは、TG>1000℃が好ましい。
一方、成長温度TGが高すぎると、結晶が分解する。従って、TGは、TG<1500℃が好ましい。
【0115】
[5.6. NH3分圧]
窒化物単結晶を成長させる際に反応ガスとしてNH3を用いる場合、成長雰囲気中のNH3の分圧PNH3は、0.1kPa<PNH3<1kPaが好ましい。
NH3の分圧PNH3が低すぎると、成長結晶表面に金属含有ガスが凝結して液膜を形成する。従って、PNH3は、PNH3>0.1kPaが好ましい。
一方、PNH3が高すぎると、気相中で金属含有ガスとNH3とが反応し、窒化物粉末を生成させる可能性が増大する。気相中に生成した窒化物粉末は、成長結晶へのパーティクル混入の原因となり得る。従って、PNH3は、PNH3<1kPaが好ましい。
【0116】
[6. 作用]
一般的に、バルク状の窒化物単結晶(成長高さ:〜10mm以下)を得るために、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法が用いられている(図5参照)。HVPE法は、100μm/h程度の成長速度を容易に達成できる。しかし、III族元素を輸送するためにHClガスを用い、IV族元素の原料としてアンモニアを用いているため、副生成物として塩化アンモニウムが生成する。塩化アンモニウムは、排気管を詰まらせる原因となる。そのため、HVPE法は、長時間の成長には向かない。
【0117】
昇華法では、原料として金属Ga又はGaN粉末を用い、反応ガスとしてNH3を用いて、GaN結晶の成長を行う(図6参照)。昇華法では、HVPE法と同程度の高速成長が可能との報告はあるが、厚さ1mmを超える大型の結晶が得られたとの報告はない。
これは、原料としてGaNのみを用いた場合、成長時間の経過と共にGaNが分解して金属Gaに変性していくために、成長途中で原料供給が途絶えてしまうためである。
【0118】
また、昇華法において、原料として金属Gaを用いた場合には、成長中にGaがルツボからあふれ出て、装置全体がGaで覆われてしまう。Gaがあふれ出る理由は、金属Gaを保持するルツボ表面にGaNが析出するためである。溶融GaはGaNに非常に良く濡れるため、ルツボ表面にGaNが析出すると、溶融Gaの這い上がりが容易に生じる。そのため、金属Gaを用いて2時間以上の長時間の成長を安定的に実現した例はない。
さらに、これらの手法におけるGa収率は報告されていないが、非常に小さい(15%程度)と考えられる。
【0119】
他方、金属Gaと水素の反応により発生させたガリウムハイドライドを前駆体として用いる方法も知られている。しかし、水素によるGaN結晶のエッチングが発生するため、成長速度は100μm/h未満に制限される。
【0120】
さらに、昇華法を用いて良好な結晶成長を実現するには、金属蒸気又は昇華ガスが成長表面まで原子状又は分子状で到達すること、及び、成長表面において金属蒸気又は昇華ガスと反応ガスとを反応させること、が必要がある。しかし、一般に、このような方法でバルク単結晶を安定的に成長させるのは困難である。これは、
(a)気相反応により気相中で化合物粉末が生成すること、
(b)気相中、成長結晶の表面、又は他の構造部材上で金属が液化又は固化すること、
(c)反応ガスがルツボ内の金属源と直接反応し、金属源の表面に不働態膜を形成したり、あるいは、急激な反応により突沸現象がおきるために、金属蒸気又は昇華ガスの供給が不安定となること、
などが主要な原因と考えられる。
【0121】
これに対し、昇華法を用いて結晶成長を行う場合において、金属源を充填したルツボの開口部に多孔バッフル板を設け、ルツボ内にキャリアガスを流すと、ルツボから混合ガスが排出されると同時に、ルツボ内への反応ガスの逆流が抑制される。そのため、金属含有ガスの供給が安定化する。
さらに、単結晶を成長させる場合において、各部の温度を最適化すると、気相中での化合物粉末の生成や、意図しない部位での金属の液化又は固化を抑制することができる。そのため、化合物単結晶の製造コストの低減や結晶サイズの大型化が可能となる。
【実施例】
【0122】
(実施例1〜7、比較例1〜4)
[1. 試料の作製]
図1に示す化合物単結晶成長装置を用いて、GaN単結晶の成長を行った。金属源には金属Gaを用い、反応ガスにはNH3を用いた。種結晶には、直径2インチ(5.08cm)のMOCVD−GaN膜(厚さ2μm)付きのサファイアテンプレートを用いた。Ga蒸気を輸送するためのキャリアガス、及びNH3の希釈ガス(キャリアガス)には、それぞれ、N2を用いた。ルツボの開口部には、比較例4を除き、多孔バッフル板(孔形状:φ2×L4、孔数:45個)を設置した。成長時間は、それぞれ1h程度とした。さらに、第1可動装置を用いて、バッフル−成長結晶間距離を所定の値に維持した。表1に、各試料の成長条件を示す。
【0123】
【表1】
【0124】
[2. 試験方法]
GaN成長結晶の評価は、(a)目視による表面状態の観察、及び(b)光学顕微鏡による成長結晶中のパーティクル混入密度の計測、により行った。
成長速度は、成長前後での種結晶の重量増分から算出した。また、Ga収率は、成長前後での種結晶の重量増分とルツボの重量減少分から算出した。
【0125】
[3. 結果]
[3.1. GaN成長結晶品質の成長温度依存性(実施例1、比較例1)]
表2に、GaN成長結晶品質(目視による表面状態観察)の成長温度依存性、及び判定結果を示す。なお、実施例1において、成長温度TGは、1000℃、1050℃、1100℃、又は1150℃とした。また、比較例1において、成長温度TGは、1200℃とした。
【0126】
目視観察結果より、実施例1においは、TG=1000℃を除き、すべてのGaN成長結晶の表面はスムーズな鏡面を呈し、良好な結晶品質を達成できていることが伺える。
他方、成長温度TG=1000℃では表面荒れが生じ、成長温度TG=1200℃ではGaNの分解によりGa液膜が生成していた。すなわち、GaNの分解温度TDである1200℃以上の成長温度TGは、不適切であることがわかった。また、高速成長には、1000℃を超える成長温度TGが好ましいことがわかった。
【0127】
【表2】
【0128】
[3.2. GaN成長速度のGa源温度依存性(実施例2、比較例2)]
表3に、GaN成長速度のGa源温度依存性、及び判定結果を示す。図7に、GaN成長速度のGa源温度依存性を示す。なお、実施例2において、Ga源温度TSは、1230〜1350℃とした。また、比較例2において、Ga源温度TSは、1150℃、又は1196℃とした。多孔バッフル板の温度TBは、TS+50℃程度に調整した。
【0129】
実施例2においては、TS=1350℃を除き、80〜200μm/h程度の高速成長が実現し、温度上昇に伴い成長速度は向上した。しかしながら、TS=1350℃及び比較例2では、成長速度は30μm/h未満に留まった。これは、
(a)Ga源温度TSが1200℃(GaNの分解温度TD)未満である場合、Ga表面にGaN不動態膜が形成されて、Gaの蒸発が抑制されたこと、及び、
(b)Ga源温度TSが1350℃以上である場合、過熱したキャリアガス(N2ガス)がNH3の分解反応を促進し、成長結晶表面での実質的なNH3分圧が下がりすぎたこと、
を示している。
高い成長速度を確保するためには、適切な金属源温度TS(及び、多孔バッフル板の温度TB)の範囲があることがわかった。
【0130】
【表3】
【0131】
[3.3. GaN成長結晶品質のTB依存性(実施例3、比較例3)]
表4に、ルツボ出口上(多孔バッフル板上)への生成物堆積状況、及びGaN成長結晶品質の多孔バッフル板の温度TB依存性を示す。なお、実施例3では、TB≧TS+50℃とした。また、比較例3では、TB<TSとした。
【0132】
実施例3においては、多孔バッフル板上には生成物(GaN多結晶粒やGa液滴)は生成しておらず、GaN成長結晶の表面状態も良好(鏡面)であった。他方、比較例3では、多孔バッフル板上にGaN多結晶やGa液滴が生成しており、さらに成長結晶の表面荒れを生じていた。これは、多孔バッフル板上に生成した異物がキャリアガス等で飛散し、成長結晶に取り込まれて表面荒れを生じているものと考えられる。表面荒れを抑制するには、多孔バッフル板の温度TBを金属源温度TSより高くすることが必須であることがわかった。
【0133】
【表4】
【0134】
[3.4. GaN成長結晶品質に及ぼす多孔バッフル板の有無の影響、及びGaN成長結晶品質のルツボ出口ガス流速依存性(実施例4〜5、比較例4)]
表5に、GaN成長結晶品質に及ぼす多孔バッフル板の有無の影響、及びGaN成長結晶品質のルツボ出口ガス流速依存性を示す。図8に、GaN成長結晶中のパーティクル密度のルツボ出口ガス流速依存性を示す。なお、実施例4では、多孔バッフル板有り、ルツボ出口ガス流速VB≧20m/secとした。比較例4では、多孔バッフル板無しとし、ルツボ出口形状は、φ10mm×L10mmのチムニー型とした。実施例5では、多孔バッフル板有り、ルツボ出口ガス流速VB=9.9m/secとした。
【0135】
比較例4の場合、Ga蒸気とNH3ガスとの混合が起きなかった。そのため、種結晶上にはGaNが生成せず、Ga液膜が形成された。実施例4及び実施例5の場合、種結晶上にGaNが生成した。しかし、ルツボ出口ガス流速VBが20m/sec未満になると、パーティクル密度が急増した。高品質な(パーティクル混入のない)GaN単結晶を成長させるためには、ルツボ出口ガス流速VBを20m/sec以上にすることが重要であることがわかった。
【0136】
【表5】
【0137】
[3.5. Ga収率の成長圧力及びバッフル−成長結晶間距離依存性(実施例6〜7)]
表6及び図9に、それぞれ、Ga収率の成長圧力及びバッフル−成長結晶距離依存性を示す。なお、実施例6では、成長圧力P<6kPa、かつ、バッフル−成長結晶間距離D<5cmとした。また、実施例7では、成長圧力P≧6kPa、又は、バッフル−成長結晶間距離D≧5cmとした。
【0138】
実施例6のGa収率は高収率(≧17%)であるのに対し、実施例7のGa収率は低収率(<17%)であった。高いGa収率を得るためには、成長圧力Pとバッフル−成長結晶距離Dの双方を適切な範囲とすることが重要であることがわかった。
【0139】
【表6】
【0140】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明に係る化合物単結晶製造装置は、GaN、InN、AlN、InGaN、AlGaNなどの窒化物単結晶を製造するための装置として用いることができる。
【符号の説明】
【0142】
10 化合物単結晶製造装置
20 結晶成長部
22 種結晶
24 サセプタ
40 ガス供給部
42 ルツボ
48 多孔バッフル板
50 金属源
60 加熱部
62 加熱装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9