【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の基本原理は、インバータを介して系統へ無効電力を注入することにより、その注入無効電力量に応じて周波数偏差が大きくなり、当該注入無効電力量から想定される周波数偏差が変化することに基づいて単独運転を検出する。
【0015】
まず、系統への無効電力注入による周波数偏差の挙動を、
図5及び
図6に基づいて説明する。
図5において、時刻t1で検出した周波数偏差をΔfとすると、その時刻t1で系統に注入する無効電力を、次のサンプリング点t2においてΔfの2倍の周波数偏差(2×Δf)の発生を期待する量とすると、理想的には、時刻t2で検出される周波数偏差は(2×Δf)となる。更に、時刻t2で検出した周波数偏差を(2×Δf)とすると、その時刻t2で系統に注入する無効電力を、次のサンプリング点t3において(2×Δf)の2倍の周波数偏差(4×Δf)の発生を期待する量とすると、理想的には、時刻t3で検出される周波数偏差は(4×Δf)となる。
本発明では、注入無効電力によって生じると予想される連続したサンプリング点間の周波数偏差の比率(
図5の例では、「2.0」)を所定の閾値と比較することを基本として、分散電源の単独運転を検出するものである。
【0016】
図6は、周波数偏差と注入無効電力との関係を示す図である。注入無効電力の極性が負の場合もあり得るが、ここでは、極性が正の場合について述べる。なお、注入無効電力の極性が負の場合は、
図6と対称の特性となる。
【0017】
注入無効電力の極性が正の場合について、理想的な状態について説明する。
図6において、まず、周波数偏差Δf1を検出すると、その2倍の周波数偏差Δf2(=2×Δf1)の発生を期待する無効電力Q2を注入する。そして、この無効電力Q2の注入によって発生する周波数偏差Δf2を検出する。次に、周波数偏差Δf2を検出すると、その2倍の周波数偏差Δf3(=2×Δf2)の発生を期待する無効電力Q3を注入する。そして、この無効電力Q3の注入によって発生する周波数偏差Δf3を検出する。
以後、同様にして、周波数偏差Δfnを検出すると、その2倍の周波数偏差Δfn+1(=2×Δfn)の発生を期待する無効電力Qn+1を注入する。
【0018】
上記のような手順で系統に無効電力を注入することにより、周波数偏差は次第に増大していく。言い換えると、検出した周波数偏差Δfに対し、次に期待する周波数偏差を例えば(2×Δf)とすると、Δfが大きければ次の周波数偏差も大きくなり、Δfが小さければ次の周波数偏差も小さくなる。
この点に着目し、本発明では、周波数偏差の変化の状況に応じて、単独運転を検出するための閾値を変動させる閾値変動方法を用いることとした。
【0019】
図7は、本発明における閾値変動方法を説明するための概念図である。本発明では、
図7(a)のように周波数偏差が小さい場合には、次に期待する周波数偏差も小さくなるため、周波数偏差の比率である閾値が小さくなり、逆に、
図7(b)のように周波数偏差が大きい場合には、次に期待する周波数偏差も大きくなるため、周波数偏差の比率である閾値が大きくなるように変動する。
このため、本発明では、前述の
図8(b)や
図11(b)に示したように、系統の擾乱によって周波数偏差が大きく変動した場合には、次の周波数偏差に対する閾値が大きくなるように変動するのに対し、その後に周波数偏差が前回よりも減少して期待通りの値にならなかった場合には、増大した閾値に対して周波数偏差の比率が下回ることになり、単独運転とは見なさないため誤検出が回避されることになる。
【0020】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、分散電源が電力変換器を介して電力系統に連系せずに単独運転状態にあることを検出する分散電源の単独運転検出システムであって、
系統周波数を検出する周波数検出手段と、
前記系統周波数から所定期間の周波数偏差を算出する周波数偏差算出手段と、
前記所定期間の周波数偏差に対して次の所定期間の周波数偏差が所定の比率で変化するような無効電力を算出して前記電力変換器を介して系統に注入する無効電力算出・注入手段と、
前記所定期間の周波数偏差と前記無効電力算出・注入手段により系統に注入される無効電力と
前記電力変換器の出力電圧
とに基づいて、前記分散電源が単独運転状態であるか否かを判定する単独運転検出手段と、を備え、
前記単独運転検出手段は、
系統への注入無効電力が所定値以上ある時に、現在の周波数偏差の過去の周波数偏差からの増減の比率を周波数偏差比率として演算し、前記周波数偏差比率が注入無効電力から想定される比率閾値としての第1閾値を超えた回数が、回数閾値としての第2閾値を超えた時に、前記分散電源が単独運転状態にあると判定すると共に、
前記無効電力算出・注入手段が算出した前記注入無効電力が注入量閾値を超え
、かつ、前記周波数偏差比率が比率閾値としての第3閾値を超えた場合、
前記無効電力算出・注入手段は前記注入無効電力を前記注入量閾値に制限し、
前記単独運転検出手段は
、
前記周波数偏差比率が前記第3閾値を超えた回数が回数閾値としての第4閾値
以下であり、更に、前記電力変換器の出力電圧が第5閾値以下であって、前記周波数偏差比率が前記第1閾値を超えた回数が前記第2閾値より小さい第6閾値を超えたときに、
前記分散電源が単独運転状態にあると判定するものである。
【0021】
請求項2に係る発明は、分散電源が電力変換器を介して電力系統に連系せずに単独運転状態にあることを検出する分散電源の単独運転検出システムであって、
系統周波数を検出する周波数検出手段と、
前記系統周波数から所定期間の周波数偏差を算出する周波数偏差算出手段と、
前記所定期間の周波数偏差に対して次の所定期間の周波数偏差が所定の比率で変化するような無効電力を算出して前記電力変換器を介して系統に注入する無効電力算出・注入手段と、
前記所定期間の周波数偏差と前記無効電力算出・注入手段により系統に注入される無効電力と前記電力変換器の出力電圧とに基づいて、前記分散電源が単独運転状態であるか否かを判定する単独運転検出手段と、を備え、
前記単独運転検出手段は、
系統への注入無効電力が所定値以上ある時に、現在の周波数偏差の過去の周波数偏差からの増減の比率を周波数偏差比率として演算し、前記周波数偏差比率が注入無効電力から想定される比率閾値としての第1閾値を超えた回数が、回数閾値としての第2閾値を超えた時に、前記分散電源が単独運転状態にあると判定すると共に、
前記無効電力算出・注入手段が算出した前記注入無効電力が注入量閾値を超え、かつ、前記周波数偏差比率が比率閾値としての第3閾値を超えた場合、
前記無効電力算出・注入手段は前記注入無効電力を前記注入量閾値に制限し、
前記単独運転検出手段は、
前記周波数偏差比率が前記第3閾値を超えた回数が回数閾値としての第4閾値以下であり、更に、前記電力変換器の出力電圧が第5閾値以下であって、前記周波数偏差比率が前記第1閾値を超えた回数が前記第2閾値より小さい第6閾値
以下であり、かつ、前記周波数偏差比率が前記第3閾値を超えた回数が前記第4閾値より小さい第7閾値を超えたときに、
前記分散電源が単独運転状態にあると判定するものである。
【0022】
なお、請求項3に記載するように、前記単独運転検出手段は、前記偏差比率の推移に基づいて前記第1閾値との比較回数を決定することが望ましい。