(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判断部は、前記吐出位置変更補正の対象となる前記インクの液滴の周辺領域の単位面積当たりの前記インクの吐出量に基づいて前記判断を行う請求項1または2に記載の印刷装置。
前記実行部は、前記吐出位置変更補正の対象となる前記インクの液滴が複数あった場合、前記各インクの液滴の前記吐出位置を同方向に移動させる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の印刷装置。
前記実行部は、前記吐出位置変更補正の対象となる前記インクの液滴が前記一方の経路に吐出する前記インクの液滴と重ならないように前記吐出位置の変更を行う請求項1ないし7のいずれか1項に記載の印刷装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、得られる画像の画質劣化を防止することができる印刷装置および印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の印刷装置は、記録媒体に対して往復動しつつ、前記記録媒体に向ってインクを吐出して画像を形成する印刷部と、
前記印刷部の往路および復路における前記インクの吐出位置を特定する特定部と、
前記往路および前記復路のいずれか一方の経路にて吐出する前記インクを、他方の経路にて吐出するよう前記吐出位置を変更する吐出位置変更補正を実行する実行部と、
前記実行部が前記吐出位置変更補正を行うか否かの判断を行う判断部と、を備え
、
前記実行部は、前記判断部の判断結果に基づいて、前記吐出位置変更補正を実行することを特徴とする。
【0008】
これにより、例えば、吐出位置変更補正を行うと画像の画質劣化が生じる場合には、吐出位置変更補正を省略することができる。よって、吐出位置変更補正による画質劣化が生じるのを防止または抑制することができる。その結果、得られる画像の画質を高めることができる。
【0009】
本発明の印刷装置では、前記印刷部は、第1の液滴と、前記第1の液滴よりも体積が大きい第2の液滴として前記インクを吐出するものであり、
前記判断部は、前記吐出位置変更補正の対象が前記第1の液滴であった場合、前記吐出位置変更補正を行うと判断するのが好ましい。
【0010】
第1の液滴は、吐出位置変更補正を行ったとしても画像の画質劣化が比較的少ないため、吐出位置変更補正による画質劣化を防止または抑制することができる。
【0011】
本発明の印刷装置では、前記判断部は、前記吐出位置変更補正の対象となる前記インクの液滴の周辺領域の単位面積当たりの前記インクの吐出量に基づいて前記判断を行うのが好ましい。
【0012】
これにより、インクの液滴の単位面積当たりの吐出量が比較的多い場合には、吐出位置変更補正を禁止することができる。よって、吐出位置変更補正による画質劣化を防止または抑制することができる。
【0013】
本発明の印刷装置では、前記周辺領域は、前記他方の経路を含むのが好ましい。
これにより、液滴を移動させる移動先の単位面積当たりのインクの吐出量に基づいて吐出位置変更補正を行うか否かの判断を行うことができる。
【0014】
本発明の印刷装置では、前記周辺領域は、前記一方の経路を含むのが好ましい。
これにより、周辺領域をより大きく設定することができる。
【0015】
本発明の印刷装置では、前記記録媒体を前記印刷部の移動方向と交わる方向に搬送する搬送部を有し、
前記実行部は、前記記録媒体の搬送方向または前記印刷部の移動方向に沿って前記吐出位置を移動させるのが好ましい。
【0016】
これにより、吐出位置変更補正による液滴の移動量を可及的に小さくしつつ他方の経路に移動させることができる。よって、吐出位置変更補正による画質劣化を防止または抑制することができる。
【0017】
本発明の印刷装置では、前記実行部は、前記吐出位置変更補正の対象となる前記インクの液滴が複数あった場合、前記各インクの液滴の前記吐出位置を同方向に移動させるのが好ましい。
これにより、吐出位置変更補正の制御動作を簡素にすることができる。
【0018】
本発明の印刷装置では、前記実行部は、前記補正の対象となる前記インクの液滴が前記一方の経路に吐出する前記インクの液滴と重ならないように前記吐出位置の変更を行うのが好ましい。
これにより、吐出位置変更補正による画質劣化を防止または抑制することができる。
【0019】
本発明の印刷装置は、記録媒体に対して往復動しつつ、前記記録媒体に向ってインクを吐出して画像を形成する印刷部と、
前記印刷部の往路および復路における前記インクの吐出位置を特定する特定部とを有し、
前記印刷部は、前記画像における前記インクの単位面積当たりの前記インクの吐出量に基づいて、前記往路および前記復路のいずれか一方の経路にて吐出する前記インクを、他方の経路にて吐出することを特徴とする。
【0020】
これにより、インクの液滴の単位面積当たりの吐出量が比較的少ない場合に、一方の経路にて吐出する前記インクを、他方の経路にて吐出することができる。その結果、画質劣化を防止または抑制することができる。
【0021】
本発明の印刷方法は、記録媒体に対して往復動しつつ、前記記録媒体に向ってインクを吐出して画像を形成する印刷部を有する印刷装置を用いて印刷を行う印刷方法であって、
前記印刷部の往路および復路における前記インクの吐出位置を特定し、
前記往路および前記復路のいずれか一方の経路にて吐出する前記インクを、他方の経路にて吐出するよう変更する吐出位置変更補正を行うか否かの判断を行うことを特徴とする。
【0022】
これにより、例えば、吐出位置変更補正を行うと画像の画質劣化が生じる場合には、吐出位置変更補正を行わないことができる。よって、吐出位置変更補正による画質劣化が生じるのを防止または抑制することができる。その結果、得られる画像の画質を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の印刷装置および印刷方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
<第1実施形態>
図1は、本発明の印刷装置の第1実施形態を模式的に示す側面図である。
図2は、
図1に示す印刷装置のブロック図である。
図3〜
図8は、
図1に示す印刷装置が備える制御部がパス分解を行った画像データを示す図である。
図9および
図10は、風紋リスクを説明するための図である。
図11は、
図1に示す印刷装置が備える制御部の制御動作を説明するためのフローチャートである。
【0026】
なお、以下では、説明の便宜上、
図1において、互いに直交する3つの軸として、x軸、y軸およびz軸を図示している。x軸は、水平方向のうちの一方向(印刷装置の幅(奥行き)方向)に沿った軸であり、y軸は、水平方向であって前記x軸に対し垂直な方向(印刷装置の長手方向)に沿った軸であり、z軸は、鉛直方向(上下方向)に沿った軸である。また、図示した各矢印の先端側を「正側(+側)」、基端側を「負側(−側)」とする。また、
図1、
図3〜
図8の上側を「上(上方)」と言い、下側を「下(下方)」と言う。
【0027】
図1、
図2に示すように、印刷装置1は、本発明の印刷方法を実行するものであり、機台11と、記録媒体としてのワークWを搬送する搬送機構部(搬送部)12と、ワークW上にインク100を付与して印刷を施す印刷機構部(記録部)13と、ワークW上のインク100を乾燥する乾燥部2と、昇降機構14とを備えている。
【0028】
本実施形態では、ワークWを搬送する搬送方向と直交する方向がx軸方向、搬送方向と平行な方向がy軸方向、x軸方向およびy軸方向と直交する方向がz軸方向となっている。
【0029】
搬送機構部12は、ロール状に巻回された長尺のワークWを繰り出す繰出装置3と、印刷済みのワークWを巻き取る巻取装置4と、機台11上に配設され、印刷時のワークWを支持する支持装置5とを備えている。
【0030】
繰出装置3は、機台11よりワークWの送り方向(y軸方向)上流側に配設されている。繰出装置3は、ワークWがロール状に巻回され、当該ワークWを送り出す送出しローラー(繰出リール)31と、送出しローラー31と支持装置5との間でワークWにテンションを掛けるテンショナー32とを有している。送出しローラー31は、モーター(図示せず)が接続されており、当該モーターの作動により回転することができる。
【0031】
また、ワークWとしては、被捺染材を用いることができる。被捺染材とは、捺染の対象となる布地や、衣服や、その他の服飾製品等のことを言う。布地には、綿、絹、羊毛等の天然繊維やナイロン等の化学繊維あるいはこれらを混ぜた複合繊維の織物、編物、不織布等が含まれる。また、衣服や、その他の服飾製品には、縫製後のTシャツ、ハンカチ、スカーフ、タオル、手提げ袋、布製のバッグ、カーテン、シーツ、ベッドカバー等のファニチャー類の他、縫製前の状態のパーツとして存在する裁断前後の布地等も含まれる。
【0032】
なお、ワークWとしては、上記被捺染材の他、普通紙、上質紙、及び光沢紙などのインクジェット記録用専用紙等を用いることができる。また、ワークWとしては、例えば、インクジェット印刷用に表面処理をしていない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、並びに紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているもの及びプラスチックフィルムが接着されているものも用いることができる。当該プラスチックとしては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレンが挙げられる。
【0033】
巻取装置4は、繰出装置3に対して、機台11よりもワークWの送り方向(y軸方向)下流側に配設されている。巻取装置4は、ワークWをロール状に巻き取る巻取りローラー(巻取リール)41と、巻取りローラー41と支持装置5との間でワークWにテンションを掛けるテンショナー42、43、44とを有している。巻取りローラー41は、モーター(図示せず)が接続されており、当該モーターの作動により回転することができる。テンショナー42〜44は、それぞれ、巻取りローラー41から遠ざかる方向にこの順に間隔をおいて配置されている。
【0034】
支持装置5は、繰出装置3と巻取装置4との間に配置されている。支持装置5は、y軸方向に互いに離間して配置された主動ローラー51および従動ローラー52と、主動ローラー51と従動ローラー52とに掛け渡され、上面(支持面)でワークWを支持する無端ベルト53と、主動ローラー51と従動ローラー52との間でワークWにテンションを掛けるテンショナー54、55とを有している。
【0035】
主動ローラー51は、モーター(図示せず)が接続されており、当該モーターの作動により回転することができる。また、従動ローラー52は、無端ベルト53を介して主動ローラー51の回転力が伝達され、当該主動ローラー51と連動して回転することができる。
【0036】
無端ベルト53は、その表側の面に粘着性を有する粘着層が形成されたベルトである。この粘着層にワークWの一部が粘着固定されて、y軸方向に搬送される。そして、この搬送の間に、ワークWには印刷が施されることとなる。また、印刷が施された後は、ワークWは無端ベルト53から剥離する。
【0037】
テンショナー54、55も、主動ローラー51および従動ローラー52と同様に、y軸方向に互いに離間して配置されている。
【0038】
テンショナー54は、主動ローラー51との間でワークWを無端ベルト53ごと挟むことができ、テンショナー55は、従動ローラー52との間でワークWを無端ベルト53ごと挟むことができる。これにより、テンショナー54、55によってテンションが掛けられたワークWは、そのテンションが掛けられた状態のまま無端ベルト53に固定されて搬送される。このような状態により、ワークWは、搬送中に例えばしわ等が寄ったりするのが低減され、よって、印刷を施した場合、その印刷が正確かつ高品質なものとなる。
【0039】
印刷機構部13は、ワークW上にインク100を吐出して印刷による記録を行なう複数のインクジェットヘッド131を有するキャリッジユニット132と、キャリッジユニット132をx軸方向に移動可能に支持するX軸テーブル(図示せず)とを備えている。各インクジェットヘッド131は、それぞれ、例えば、内部にインク100で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体と、開口を有する多数のノズル群6を有している。
【0040】
ヘッド本体には、各吐出ノズル毎に対応するピエゾ圧電素子(圧電体)が構成され、ピエゾ圧電素子に電圧が印加されるとノズル群6からインク100が液滴として吐出される。
【0041】
なお、インクジェットヘッド131は、インク100を吐出していない状態では、z軸方向から見てワークW(無端ベルト53)から外れた位置(待機位置)で待機している。
【0042】
印刷装置1では、繰出装置3により繰出されたワークWを無端ベルト53で粘着固定した固定状態でy軸方向に間欠送り(副走査)するとともに、固定状態のワークWに対し、キャリッジユニット132をx軸方向に往復動(主走査)させながらノズル群6からインク100を吐出する。これを印刷が完了して、ワークW上に画像パターンが形成されるまで行なうことができる。なお、画像パターンは、多色印刷(カラー印刷)によるものであってもよいし、単色印刷によるものであってもよい。
【0043】
インク100には、溶媒としての水に着色剤としての染料または顔料を含有した、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色がある。そして、各色のインク100がそれぞれインクジェットヘッド131から独立して吐出される。
【0044】
図1および
図2に示す昇降機構14は、ノズル群6の高さを調節することができる。この昇降機構14は、例えば、モーターとボールねじとリニアガイドとを有する構成とすることができる。また、このモーターには、エンコーダーが内蔵されている。このエンコーダーで検出される回転量に基づいてインクジェットヘッド131の高さを検出することができる。このような昇降機構14も、制御部15と電気的に接続されている。
【0045】
このように、昇降機構14により、ノズル群6とワークWの離間距離を変更することができる。よって、ワークWの材質に応じて良好な印刷を行うことができる。
【0046】
図1に示すように、乾燥部2は、印刷機構部13よりもワークWの搬送方向下流側であって、支持装置5と巻取装置4の巻取りローラー41との間に配置されている。
【0047】
乾燥部2は、チャンバー21と、チャンバー21内に配置されたコイル22とを有している。コイル22は、例えばニクロム線で構成されており、電力を供給することにより発熱する発熱体である。そして、コイル22で発せられた熱により、チャンバー21内を通過中のワークW上のインク100を乾燥させることできる。
【0048】
図2に示すように、制御部(調節部)15は、乾燥部2、搬送機構部12、印刷機構部13および昇降機構14と電気的に接続されており、これらの作動をそれぞれ制御する機能を有している。また、制御部15は、CPU(Central Processing Unit)151と、記憶部155とを有している。
【0049】
CPU151は、前述したような印刷処理等の各種処理用のプログラムを実行する。また、CPU151は、パス分解部(特定部)152、判断部153、実行部154として機能する。
【0050】
記憶部155は、例えば不揮発性半導体メモリーの一種であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等を有し、各種プログラム等を記憶することができる。
【0051】
パス分解部152は、入力された画像データに基づいて、往路および復路においてどの位置にインクを吐出するかを特定するパス分解を行う。
図3は、パス分解が行われた状態を示す画像の一部を示す図である。この画像では、方眼状に区切られており、区切られた正方形の1つが1画素となっている。
【0052】
また、
図3〜
図8中では、往路印刷領域A1、復路印刷領域B1、往路印刷領域A2、復路印刷領域B2、往路印刷領域A3、復路印刷領域B3、往路印刷領域A4、復路印刷領域B4、往路印刷領域A5、復路印刷領域B5および往路印刷領域A6の順に図中上側から並んでいる。また、
図3〜
図8では、インクを吐出する位置に、丸印が付されている。
このように、パス分解部152がパス分解を行い、その結果に従って印刷が行われる。
【0053】
ここで、一般的な印刷装置では、任意の位置に向ってインクを吐出した場合、往路と復路とでインクの着弾位置にズレが生じる。これは、往路と復路とでインクに作用する慣性力の向きが異なるためである。特に、インクの液滴のサイズが比較的小さかったり、ノズルと記録媒体との離間距離が比較的大きかったりすると、往路と復路とでインクの着弾位置にズレが顕著に現れやすい。このようなズレが生じる場合、そのズレを低減するための手段として、以下で説明する「パス寄せ」が考えられる。
【0054】
「パス寄せ」は、往路または復路の一方でしか液滴を打たないことを言う。印刷装置1を例に挙げて説明すると、例えば、
図5および
図6に示すように、復路印刷領域B1にて吐出するべきインクを往路印刷領域A1にて吐出する。すなわち、復路印刷領域B1にて吐出するインクを往路印刷領域A1にて吐出するように吐出位置を変更する吐出位置変更補正を行うことである。これにより、往路と復路とでインクの着弾位置のズレを防止することができる。なお、
図3〜
図8に示す構成では、往路にて吐出するインク100の液滴が
図3〜
図8中上方向に1画素分ズレることとなるが、往路と復路とでインクの着弾位置のズレ(
図3〜
図8中横方向)よりも小さいため、結果的に画像の画質劣化を抑制することができる。
【0055】
しかしながら、パス寄せを行うことにより、インク100の吐出密度(画像における単位面積当たりのインクの吐出量)が比較的多くなると、その部分では、印刷部とワークWとの間の気流が乱れる可能性が有る。この場合、インクの着弾位置が目標位置からズレる可能性が有る。
【0056】
例えば、
図9は、パス寄せが行われずに吐出されたインク100を示す図であり、
図10は、パス寄せを行うことにより吐出されたインク100の密度が高くなった状態を示す図である。
図10に示すように、インクの液滴同士の隙間が比較的小さくなることにより、隙間を通過する空気にインクが押しのけられ、インクの着弾位置が目標位置からズレるおそれがある(以下、この現象が生じる可能性を「風紋リスク」と言う)。
【0057】
そこで、印刷装置1では、以下のようにして、風紋リスクを回避することができる。なお、以下では、パス寄せは、往路でのインクの吐出位置を復路に変更する場合について代表的に説明する。
【0058】
図2に示すように、制御部15は、判断部153と、実行部154とを有している。判断部153は、パス寄せを行うか否かの判断を行う。実行部154は、判断部153の判断結果に基づいて、パス寄せを行う。
【0059】
図4に示すように、判断部153は、判断の際、まず、判断の対象となる復路印刷領域B1内のインクの液滴(以下、「インク101b」と言う)の周辺に矩形の周辺領域Cを設定する。この周辺領域Cは、図示の構成では、インク101bの図中上側の往路印刷領域A1の4画素と、その下側の復路印刷領域B1の4画素に設定される。
図4および
図5に示すように、判断部153は、周辺領域C内にインク101b以外のインク100の液滴がなければ、インク101bに関して、パス寄せを行うことが可能であると判断する。そして、実行部154は、パス寄せを実行する。
【0060】
また、判断部153は、復路印刷領域B2〜復路印刷領域B4に関しても、上記と同様に判断を行い、その判断結果に基づいて、実行部154がパス寄せを行う。
【0061】
ここで、
図7および
図8に示すように、復路印刷領域B5内に位置するインクの液滴(以下、「インク105b」と言う)の周辺領域C内には、インク105b以外のインク100(往路印刷領域A5のインク100)が存在しているため、判断部153は、パス寄せを行うことができないと判断する。そして、実行部154は、インクのパス寄せを行うのを省略する。
【0062】
このように、印刷装置1では、パス寄せを行う際、各復路のインク100の液滴ごとに、パス寄せを行うことが可能か否かを判断する。また、この判断が、判断の対象となるインク100の単位面積当たりの吐出量に基づいて行われる。これにより、パス寄せを行うことによりインク100の単位面積当たりの吐出量が増大するのを防止することができる。前述したような風紋リスクを回避することができる。その結果、パス寄せを行うことによる画像の画質劣化を防止することができる。
【0063】
また、印刷装置1では、パス寄せの際のインク100の移動方向が、
図3〜8中上方向(ワークWの搬送方向に沿った方向)である。これにより、パス寄せによるインク100の液滴の移動量を可及的に小さくすることができる。よって、パス寄せによる画質劣化をより効果的に防止または抑制することができる。
【0064】
さらに、印刷装置1では、パス寄せを行う際、復路印刷領域B1〜復路印刷領域B5におけるインク100の液滴は、それぞれ、同じ方向に移動するよう構成されている。これにより、実行部154がパス寄せを実行する際の制御動作を簡素にすることができる。
【0065】
また、
図4および
図6に示すように、復路印刷領域B1のインク101bの周辺領域Cが、往路印刷領域A1を含んで設定される。すなわち、パス寄せにおける移動先の領域を含んでいる。これにより、判断部153は、正確な判断を行うことができ、その結果、パス寄せを行うことによる画像の画質劣化をより効果的に防止することができる。また、周辺領域Cが、復路印刷領域B2も含んで設定されるため、周辺領域Cをより大きくすることができる。よって、判断部153は、さらに正確な判断を行うことができる。
【0066】
以上、印刷装置1について説明した。本実施形態では、パス寄せは、復路印刷領域B1〜復路印刷領域B5のインク100を往路印刷領域A1〜往路印刷領域A5に移動させる補正を行うものであったが、本発明ではこれに限定されず、往路印刷領域A1〜往路印刷領域A5のインク100を復路印刷領域B1〜復路印刷領域B5に移動させる補正を行うものであってもよい。
【0067】
また、本実施形態では、パス寄せは、インク100を
図3〜
図8中上側に移動させるものであったが、本発明ではこれに限定されず、インク100を
図3〜
図8中上側に移動させるものであってもよい。
【0068】
また、上記では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のうち、シアン(C)のインク100について代表的に説明したが、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインク100についても同様にしてパス寄せを行うことができる。この場合、例えば、イエロー(Y)等、比較的目立ちにくい色に関しては、パス寄せを行わず、ブラック(K)等、比較的目立ちやすい色に関してパス寄せを行うこともできる。
【0069】
次に、
図11に示すフローチャートに基づいて、制御部15の制御動作について説明する。
【0070】
まず、ステップS101において、ワークWに形成する画像のデータに基づいてパス分解を行い、往路印刷領域A1〜往路印刷領域A6と、復路印刷領域B1〜復路印刷領域B5とにおいて、インク100の吐出位置を決定する(
図3参照)。
【0071】
そして、ステップS102において、ワークギャップ等に基づいて、パス寄せを行うべきか否かを判断する。ステップS102において、パス寄せをしないと画質劣化のおそれがあると判断した場合、
図4および
図6に示すように、パス分解が完了したデータにおいて、復路印刷領域B1〜復路印刷領域B5に位置しているインク100に関して、それぞれ、周辺領域Cを設定する(ステップS103).
【0072】
そして、ステップS104において、
図4に示すように、インク101bの周辺領域C内に対象のインク100以外のインク100が位置しているか否かを判断する。ステップS104において、インク101bの周辺領域C内に対象のインク100以外のインク100が位置していないと判断した場合、ステップS105において、インク101bに関して、パス寄せを行うよう設定する。
【0073】
そして、ステップS106において、復路印刷領域B1〜B5のインク100の全てについて上記判断が完了したか否かを判断する。ステップS106において、全てのインク100の判断が完了していないと判断した場合、ステップS104に戻り、未だ判断が完了していないインク100について上記と同様の判断を順次繰り返す。
【0074】
また、
図8に示すように、インク105bの周辺領域C内にインク105b以外のインク100が位置していると判断した場合、ステップS107において、インク105bに関しては、パス寄せをしないよう設定する。
そして、ステップS108において、上記の設定で印刷を行う。
【0075】
なお、ステップS102においてパス寄せを省略しても画質低下の恐れがないと判断した場合、全てのインク100に関して、パス寄せを省略し(ステップS109)、印刷を行う(ステップS108)。
【0076】
<第2実施形態>
図12および
図13は、本発明の印刷装置の第2実施形態が備える制御部が行う吐出位置変更補正を説明するための図である。
【0077】
以下、この図を参照して本発明の印刷装置の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、制御プログラムが異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0078】
図12および
図13に示すように、本実施形態では、パス寄せを行うことが可能であるか否かの判断は、インク100の液滴のサイズに応じて行われる。印刷装置1は、インク100を、小ドット(第1の液滴)100a、中ドット(第2の液滴)100bおよび大ドット100cとして吐出する。
【0079】
図12に示すように、判断部153は、判断の対象が小ドット100aであれば、パス寄せを行うことが可能であると判断する。また、
図13に示すように、判断の対象が中ドット100bまたは大ドット100cであった場合、パス寄せを行うことを省略する。
【0080】
小ドット100aは、パス寄せを行ったとしても画像全体で見たとき、パス寄せしたことが比較的目立ちにくい。これに対し、中ドット100bおよび大ドット100cは、パス寄せを行った際、小ドット100aよりもパス寄せしたことが目立つ。本実施形態では、パス寄せしたことが比較的目立ちにくい小ドット100aのみでパス寄せを行うため、画質の劣化を防止または抑制することができる。
【0081】
なお、上記では、小ドット100aに関してパス寄せを行う場合について説明したが、液滴の体積によっては、中ドット100bに関してパス寄せを行ってもよい。この場合、大ドット100cが第2の液滴であり、中ドット100bが第1の液滴となる。
【0082】
<第3実施形態>
図14および
図15は、本発明の印刷装置の第3実施形態が備える制御部が行う吐出位置変更補正を説明するための図である。
【0083】
以下、この図を参照して本発明の印刷装置の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、制御プログラムが異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0084】
図14および
図15に示すように、本実施形態では、パス寄せを行う際の移動先が前記各実施形態と異なっている。例えば、復路印刷領域B1のインク100(以下、「インク101b」と言う。)を往路印刷領域A1にパス寄せを行う場合について説明する。
図14に示すように、インク101bの
図14中直上に往路印刷領域A1のインク100(以下、「インク101a」と言う)が位置していた場合、インク101bの吐出位置をインク101aの吐出位置の隣(図示の構成では右側)の画素に移動させる。これにより、インク101aとインク101bとの吐出位置が重なるのを防止することができる。よって、インク101aとインク101bとがワークW上にて重なることによる色ムラが発生するのを防止することができる。よって、パス寄せにより画質劣化が生じるのを防止することができる。
【0085】
なお、本実施形態では、パス寄せは、一例として、インク101bの吐出位置をインク101aの吐出位置の右側の画素に移動させるものであったが、本発明ではこれに限定されず、インク101bの吐出位置をインク101aの左側の画素に移動させるものであってもよい。
【0086】
<第4実施形態>
図16および
図17は、本発明の印刷装置の第4実施形態が備える制御部が行う吐出位置変更補正を説明するための図である。
【0087】
以下、この図を参照して本発明の印刷装置の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、制御プログラムが異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0088】
図16および
図17に示すように、本実施形態では、パス寄せは、吐出するインク100の液滴のサイズを変更するものである。例えば、
図16に示すように、往路印刷領域A1に中ドット100bが位置し、復路印刷領域B1に小ドット100aが位置していた場合には、
図17に示すように、復路印刷領域B1での小ドット100aの吐出を省略し、往路印刷領域A1での中ドット100bを大ドット100cに変更する。すなわち、復路印刷領域B1で省略した小ドット100a分を往路印刷領域A1にて吐出する。これにより、往路印刷領域A1および復路印刷領域B1全体で見たとき、インク100の吐出量を略同じにすることができるとともに、小ドット100aと中ドット100bとが重なるのを防止することができる。よって、パス寄せにより画質劣化が生じるのを防止することができる。
【0089】
以上、本発明の印刷装置および印刷方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、印刷装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0090】
また、本発明の印刷装置は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0091】
また、前記各実施形態では、印刷機構部は、小ドット、中ドットおよび大ドットの3種類の大きさのインクの液滴を吐出するものであったが、本発明ではこれに限定されず、例えば、1種類、2種類または4種類以上のサイズのインクの液滴を吐出するものであってもよい。
【0092】
また、大ドット1滴は、例えば、小ドット3滴であってもよく、中ドット1滴と小ドット1滴とを合わせたものであってもよい。
【0093】
また、前記各実施形態では、吐出位置変更補正は、記録媒体の搬送方向に沿って行われる場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、記録媒体の搬送方向と交わる方向、すなわち、印刷部の移動方向に沿って行われてもよい。