特許第6623788号(P6623788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6623788荷重エネルギー吸収複合材の製造方法及び荷重エネルギー吸収複合材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623788
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】荷重エネルギー吸収複合材の製造方法及び荷重エネルギー吸収複合材
(51)【国際特許分類】
   B29C 69/02 20060101AFI20191216BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20191216BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20191216BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20191216BHJP
   B29C 70/28 20060101ALI20191216BHJP
   B60R 19/03 20060101ALI20191216BHJP
   B60R 19/18 20060101ALI20191216BHJP
   B29K 77/00 20060101ALN20191216BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20191216BHJP
   B29L 22/00 20060101ALN20191216BHJP
【FI】
   B29C69/02
   B29C39/10
   B29C45/14
   B29C70/06
   B29C70/28
   B60R19/03 C
   B60R19/18 N
   B29K77:00
   B29K105:08
   B29L22:00
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-12417(P2016-12417)
(22)【出願日】2016年1月26日
(65)【公開番号】特開2017-132082(P2017-132082A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 勝啓
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−251492(JP,A)
【文献】 特開2006−347442(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0257671(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C39/10,45/14,69/02,70/04
B60R19/03,19/18
B62D21/15
F16F7/00,7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1繊維からなる芯材及び前記芯材に含浸された第1樹脂からなり且つ開いた横断面を有する骨格部材と、熱可塑性樹脂である第2樹脂及び前記第2樹脂に混練された第2繊維からなり且つ前記骨格部材の外側面及び前記横断面の開口部を覆う閉じた横断面を有する外壁部材と、を備え、前記骨格部材の前記横断面の内壁と、前記骨格部材の前記横断面の開口部を覆う前記外壁部材の内壁と、によって画定される中空部を有する、筒状の荷重エネルギー吸収複合材の製造方法であって、
前記中空部及び前記外壁部材に対応する形状を有する領域である第1領域及び前記中空部に対応する形状を有する領域である第2領域を備える中子の前記第1領域が前記荷重エネルギー吸収複合材の外形に対応する成形空間である第1空間を有する成形型の前記第1空間に配置されている状態である第1状態とする第1工程と、
前記第1状態にある前記中子と前記成形型とによって画定される前記骨格部材の形状に対応する成形空間である第2空間に前記芯材を配置する第2工程と、
前記成形型を閉じ、前記第1樹脂の液状モノマー、重合開始剤及び重合触媒を含む第1原料を前記芯材が配置された前記第2空間内に充填する第3工程と、
前記第2空間内に充填された前記第1原料を加熱して前記モノマーを重合させて前記第1樹脂とすることにより前記骨格部材を成形する第4工程と、
前記中子の前記第2領域が前記成形型の前記第1空間に配置されている状態である第2状態とすることにより前記骨格部材の外側壁と前記第1空間の内側壁との間に前記外壁部材の形状に対応する成形空間である第3空間を生じさせる第5工程と、
溶融された前記第2樹脂及び前記第2繊維を含む第2原料を前記第3空間に射出することにより前記外壁部材を成形する第6工程と、
を含む、荷重エネルギー吸収複合材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の荷重エネルギー吸収複合材の製造方法であって、
前記第1樹脂は6−ナイロンであり、
前記第1原料は、溶融されたε−カプロラクタム、重合開始剤及び重合触媒を含み、
前記第2樹脂はナイロン系ポリアミド樹脂である、
荷重エネルギー吸収複合材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の荷重エネルギー吸収複合材の製造方法であって、
前記第1繊維は、ガラス繊維、炭素繊維及び植物由来の繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維であり、
前記第2繊維は、ガラス繊維、炭素繊維及び植物由来の繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維である、
荷重エネルギー吸収複合材の製造方法。
【請求項4】
第1繊維からなる芯材及び前記芯材に含浸された第1樹脂からなり且つ開いた横断面を有する骨格部材と、熱可塑性樹脂である第2樹脂及び前記第2樹脂に混練された第2繊維からなり且つ前記骨格部材の外側面及び前記横断面の開口部を覆う閉じた横断面を有する外壁部材と、を備え、前記骨格部材の前記横断面の内壁と、前記骨格部材の前記横断面の開口部を覆う前記外壁部材の内壁と、によって画定される中空部を有する、筒状の荷重エネルギー吸収複合材であって、
前記第1樹脂は6−ナイロンであり、
前記第2樹脂はナイロン系ポリアミド樹脂である、
荷重エネルギー吸収複合材。
【請求項5】
請求項4に記載の荷重エネルギー吸収複合材であって、
前記第1繊維は、ガラス繊維、炭素繊維及び植物由来の繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維であり、
前記第2繊維は、ガラス繊維、炭素繊維及び植物由来の繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維である、
荷重エネルギー吸収複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重エネルギー吸収複合材の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、十分な剛性を維持しつつ軽量化が可能な閉じ断面形状を有する荷重エネルギー吸収複合材を高い生産性にて製造可能な製造方法に関する。更に、本発明は、十分な剛性を維持しつつ軽量化が可能な閉じ断面形状を有する荷重エネルギー吸収複合材にも関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野においては、例えば、車両の衝突時における衝撃を緩和するバンパ装置を構成する荷重エネルギー吸収材が広く使用されている。このような荷重エネルギー吸収材においては、剛性向上及び軽量化の観点から、その横断面(荷重エネルギー吸収材の長さ方向(軸方向)に直交する平面による断面)の形状を例えば四角形等の閉じた形状(以下、「閉じ断面形状」と称呼される場合がある。)とすることが望ましいことが知られている。
【0003】
また、上記のような問題を回避するために、荷重エネルギー吸収材の横断面形状を、例えば略U字状等の開いた形状(以下、「開き断面形状」と称呼される場合がある。)とすることも考えられる。しかしながら、開き断面形状を有する荷重エネルギー吸収材は、閉じ断面形状を有する荷重エネルギー吸収材に比べて、製作が容易であるものの、剛性の確保が困難である。具体的には、例えば、車両の衝突時における衝撃を緩和するときに捻れが生ずる等の問題を招く虞がある。
【0004】
そこで、当該技術分野においては、一対の略U字状の横断面形状(開き断面形状)を有する繊維強化樹脂製の骨格部材を結合したり、略U字状の横断面形状を有する繊維強化樹脂製の骨格部材の開口部を繊維強化樹脂製の板によって塞いだりすることにより、四角筒形状の荷重エネルギー吸収材を構成することが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
しかしながら、上記のように略U字状の横断面形状を有する繊維強化樹脂製の骨格部材を結合して四角筒形状の荷重エネルギー吸収材を形成する場合、例えば接着剤及び/又はリベット等を使用して骨格部材を結合するための接合代を骨格部材に形成する必要がある。このような接合代は、荷重エネルギー吸収材の軽量化の支障となる。
【0006】
そこで、当該技術分野においては、熱硬化性樹脂を含浸させた三次元織物からなる略U字状の横断面形状を有する骨格部材の周囲に熱硬化性樹脂を付着させたフィラメントを巻き付けてフィラメントワインディング部を形成することによって四角筒形状の荷重エネルギー吸収複合材を構成することが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0007】
上記荷重エネルギー吸収複合材は、フィラメントワインディング部によって略U字状の横断面形状を有する骨格部材の開口部が塞がれるので、接合代を設ける必要が無く、軽量化及び剛性の向上の観点から望ましい。しかしながら、一般に、熱硬化性樹脂の前駆体(例えば、エポキシ系樹脂のプレポリマー)の粘度は高いため、三次元織物を構成する繊維の間に均質に前駆体を含浸させるのに長時間を要する。また、前駆体が含浸していないボイド(空隙)の存在比率を許容範囲内に収めるためには骨格部材における繊維の含有率を抑えざるを得ない。その結果、骨格部材の剛性を高めるためには骨格部材の肉厚を増大させざるを得ず、荷重エネルギー吸収材の軽量化の支障となる。更に、前駆体を反応させて熱硬化性樹脂を硬化させるためにも長時間(例えば、10分以上)を要する。従って、熱硬化性樹脂を含浸させた三次元織物からなる骨格部材の生産性を高めることは困難である。加えて、骨格部材の周囲にフィラメントを巻き付けるための装置(フィラメントワインディング装置)が必要であるため、設備コスト及び成形工数の増大を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6406088号明細書
【特許文献2】特開2006−347442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、当該技術分野においては、様々な荷重エネルギー吸収複合材及び当該荷重エネルギー吸収複合材の製造方法が提案されているものの、十分な剛性を維持しつつ軽量化が可能な閉じ断面形状を有する荷重エネルギー吸収複合材を高い生産性にて製造可能な製造方法は未だ実現されていない。そこで、本発明は、十分な剛性を維持しつつ軽量化が可能な閉じ断面形状を有する荷重エネルギー吸収複合材を高い生産性にて製造可能な製造方法を提供することを1つの目的とする。更に、本発明は、十分な剛性を維持しつつ軽量化が可能な閉じ断面形状を有する荷重エネルギー吸収複合材を提供することをもう1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、繊維からなる芯材に含浸させたモノマーを型内重合することによって骨格部材を成形し、次いで繊維強化された熱可塑性樹脂を当該骨格部材の周囲に射出して外壁部材を成形することにより、十分な剛性を維持しつつ軽量化が可能な閉じ断面形状を有する筒状の荷重エネルギー吸収複合材を高い生産性にて製造することができることを見出した。
【0011】
即ち、本発明の1つの態様に係る荷重エネルギー吸収複合材の製造方法(以下、「本発明方法」と称呼される場合がある。)は、
第1繊維からなる芯材及び前記芯材に含浸された第1樹脂からなり且つ開いた横断面を有する骨格部材と、熱可塑性樹脂である第2樹脂及び前記第2樹脂に混練された第2繊維からなり且つ前記骨格部材の外側面及び前記横断面の開口部を覆う閉じた横断面を有する外壁部材と、を備え、前記骨格部材の前記横断面の内壁と、前記骨格部材の前記横断面の開口部を覆う前記外壁部材の内壁と、によって画定される中空部を有する、筒状の荷重エネルギー吸収複合材の製造方法であって、
前記中空部及び前記外壁部材に対応する形状を有する領域である第1領域及び前記中空部に対応する形状を有する領域である第2領域を備える中子の前記第1領域が前記荷重エネルギー吸収複合材の外形に対応する成形空間である第1空間を有する成形型の前記第1空間に配置されている状態である第1状態とする第1工程と、
前記第1状態にある前記中子と前記成形型とによって画定される前記骨格部材の形状に対応する成形空間である第2空間に前記芯材を配置する第2工程と、
前記成形型を閉じ、前記第1樹脂の液状モノマー、重合開始剤及び重合触媒を含む第1原料を前記芯材が配置された前記第2空間内に充填する第3工程と、
前記第2空間内に充填された前記第1原料を加熱して前記モノマーを重合させて前記第1樹脂とすることにより前記骨格部材を成形する第4工程と、
前記中子の前記第2領域が前記成形型の前記第1空間に配置されている状態である第2状態とすることにより前記骨格部材の外側壁と前記第1空間の内側壁との間に前記外壁部材の形状に対応する成形空間である第3空間を生じさせる第5工程と、
溶融された前記第2樹脂及び前記第2繊維を含む第2原料を前記第3空間に射出することにより前記外壁部材を成形する第6工程と、
を含む、荷重エネルギー吸収複合材の製造方法である。
【0012】
更に、本発明の1つの態様に係る荷重エネルギー吸収複合材(以下、「本発明複合材」と称呼される場合がある。)は、第1繊維からなる芯材及び前記芯材に含浸された第1樹脂からなり且つ開いた横断面を有する骨格部材と、熱可塑性樹脂である第2樹脂及び前記第2樹脂に混練された第2繊維からなり且つ前記骨格部材の外側面及び前記横断面の開口部を覆う閉じた横断面を有する外壁部材と、を備え、前記骨格部材の前記横断面の内壁と、前記骨格部材の前記横断面の開口部を覆う前記外壁部材の内壁と、によって画定される中空部を有する、筒状の荷重エネルギー吸収複合材であって、前記第1樹脂は6−ナイロンであり、前記第2樹脂はナイロン系ポリアミド樹脂である、荷重エネルギー吸収複合材である。
【発明の効果】
【0013】
本発明方法においては低い粘度を有するモノマーを芯材に含浸させるので、骨格部材に占める芯材の比率を高めても、前述したように高い粘度を有する熱硬化性樹脂の前駆体を芯材に含浸させる従来技術と比較して、ボイドが発生し難く且つ短い期間のうちに含浸を完了することができる。その結果、同じ肉厚であっても、より高い剛性を有する骨格部材を高い生産性にて成形することができる。
【0014】
従って、前述したように高い剛性を有するフィラメントワインディング部に代えて、繊維強化された熱可塑性樹脂の射出成形によって成形される外壁部材を採用しても、荷重エネルギー吸収複合材として十分な剛性を達成することができる。即ち、本発明方法において、設備コスト及び成形工数の増大を招くフィラメントワインディング装置は不要である。
【0015】
即ち、本発明方法によれば、十分な剛性を維持しつつ軽量化が可能な閉じ断面形状を有する荷重エネルギー吸収複合材を高い生産性にて製造可能な製造方法を提供することができる。更に、本発明複合材によれば、十分な剛性を維持しつつ軽量化が可能な閉じ断面形状を有する荷重エネルギー吸収複合材を提供することができる。
【0016】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る荷重エネルギー吸収複合材の製造方法(第1方法)によって製造される荷重エネルギー吸収複合材の構成の1つの具体例を示す模式図である。
図2】第1方法において使用される成形型の中に収められる中子の構成の1つの具体例を示す模式図である。
図3】成形型の構成並びに第1方法に含まれる各工程を説明するための成形型及び中子の模式的な断面図である。
図4】実施例及び比較例に係る骨格部材の弾性率の測定結果を示す模式的なグラフである。
図5】実施例及び比較例に係る荷重エネルギー吸収複合材の衝撃荷重エネルギー吸収量の測定結果を示す模式的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係る荷重エネルギー吸収複合材の製造方法(以下、「第1方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0019】
〈荷重エネルギー吸収複合材の構成〉
第1方法についての説明に先立ち、第1方法によって製造される荷重エネルギー吸収複合材の構成の具体例につき、図1を参照しながら以下に説明する。
【0020】
先ず、図1の(b)に示す従来技術に係る製造方法(従来方法)によって製造される従来技術に係る荷重エネルギー吸収複合材10bは、略U字状の骨格部材11bの周囲に外壁部材12bが形成されてなる筒状(四角筒状)の形状を有する荷重エネルギー吸収複合材である。骨格部材11bは、熱硬化性樹脂であるエポキシ系樹脂を含浸させた三次元織物からなり且つ開いた横断面を有する。外壁部材12bは、熱硬化性樹脂であるエポキシ系樹脂を付着させたフィラメントを骨格部材11bの周囲に巻き付けることによって形成されたフィラメントワインディング部である。荷重エネルギー吸収複合材10bは、骨格部材11bの横断面の内壁と、骨格部材11bの横断面の開口部を覆う外壁部材12bの内壁と、によって画定される中空部13bを有する。
【0021】
上記のような構成を有する荷重エネルギー吸収複合材10bの製造方法は、前述したように、高い粘度を有するプレポリマーの含浸及び硬化を行う工程を必要とするので、骨格部材における繊維の含有率を高めて剛性を上げることは困難であり、エポキシ系樹脂の硬化に要する時間が長い。加えて、フィラメントワインディング装置が必要であるため製造コストも大きい。
【0022】
一方、図1の(a)に示す第1方法によって製造される本発明に係る荷重エネルギー吸収複合材10aもまた、略U字状の骨格部材11aの周囲に外壁部材12aが形成されてなる筒状(四角筒状)の形状を有する荷重エネルギー吸収複合材である。骨格部材11aは、第1繊維からなる芯材及び芯材に含浸された第1樹脂からなり且つ開いた横断面を有する。外壁部材12aは、熱可塑性樹脂である第2樹脂及び第2樹脂に混練された第2繊維からなり且つ骨格部材11aの外側面と横断面の開口部とを覆う閉じた横断面を有する。更に、荷重エネルギー吸収複合材10aは、骨格部材11aの横断面の内壁と、骨格部材11aの横断面の開口部を覆う外壁部材12aの内壁と、によって画定される中空部13aを有する。
【0023】
上記のように本発明に係る荷重エネルギー吸収複合材10aは従来技術に係る荷重エネルギー吸収複合材10bと類似の構造を有する。しかしながら、荷重エネルギー吸収複合材10aは、その構成材料及び製造方法により、十分な剛性を維持しつつ軽量化を達成することができる。更に、荷重エネルギー吸収複合材10aは、上述した従来方法によって製造される荷重エネルギー吸収複合材10bに比べて、より高い生産性にて製造することができる。
【0024】
尚、図1の(a)は、あくまでも第1方法によって製造される本発明に係る荷重エネルギー吸収複合材の構成の一例を示す例示に過ぎず、本発明に係る荷重エネルギー吸収複合材の構成は当該例示に限定されない。骨格部材の横断面は、開いた形状である限り特に限定されず、例えば、上述した略U字状(一辺が欠落した四角形状)であっても、略C字状(一部が欠落した円形状又は楕円形状)であっても、或いは一辺が欠落した多角形状であってもよい。また、荷重エネルギー吸収複合材の形状は、その横断面が閉じた形状である限り特に限定されず、例えば、上述した四角筒状であっても、円筒形状又は楕円筒形状であっても、或いは多角筒形状であってもよい。但し、第1方法に関する以下の説明においては、上述した四角筒状の形状を有する荷重エネルギー吸収複合材10aを製造する場合に着目して説明する。
【0025】
〈第1方法の詳細〉
(1)中子の構成
ここで、第1方法において使用される中子の構成の1つの具体例について詳しく説明する。図2の(a)は、第1方法において使用される中子20の斜視図であり、図2の(b)は、荷重エネルギー吸収複合材10aの軸方向において中子20の第1領域21aを見た場合における平面図である。
【0026】
図2の(a)及び(b)に示すように、中子20は、外壁部材12aに対応する形状を有する部分22及び中空部13aに対応する形状を有する部分23からなる領域である第1領域21aを備える。更に、図2の(a)示すように、中子20は、中空部13aに対応する形状を有する部分23を有する領域である第2領域21bを備える。部分22及び部分23によって画定される空間(第2空間)24は略U字状の骨格部材11aの形状に対応する成形空間(第2空間)である。
【0027】
尚、図2においては、外壁部材12aに対応する形状を有する部分22と中空部13aに対応する形状を有する部分23とを識別し易いように両者の境界に破線が描かれているが、これらの部分は必ずしも別個の部分として形成されている必要は無く、連続した一体的な部分として形成されていてもよい。
【0028】
中子20は、図2の(a)において白抜きの両矢印によって示したように、成形型の中で荷重エネルギー吸収複合材10aの軸方向に摺動することにより、成形型を開くこと無く成形空間の形状を変化させて、骨格部材11a及び外壁部材12aを順次成形することを可能とする。
【0029】
(2)成形型の構成
次に、図3の(a)を参照しながら、成形型の構成について説明する。図3の(a)は、図2の(b)に示した線X−Xを通る紙面に垂直な平面による成形型30及び中子20の断面を黒塗りの矢印の向きに観察した場合における模式図であり、中子20及び成形型30の模式的な断面図が向かって左側及び右側にそれぞれ示されている。中子20については、図2を参照しながら既に説明したので、ここでは説明を繰り返さない。一方、成形型30は下型30a及び上型30bからなり、荷重エネルギー吸収複合材10aの外形に対応する成形空間である第1空間31が下型30aに形成されている。
【0030】
図2に示したように、中子20の第2領域21bは第1領域21aの紙面に向かって下側に突出した部分23によって構成されている。従って、中子20の第1領域21aが成形型30の第1空間31に配置されている状態である第1状態にあるときに中子20の部分23の下部からなる第2領域21bを収容する空間32aが下型30aに形成されている。一方、中子20の第2領域21bが成形型30の第1空間31に配置されている状態である第2状態にあるときに中子20の部分22と部分23の上部とからなる第1領域21aを収容する空間32bが上型30bに形成されている。これにより、中子20は成形型30の中で荷重エネルギー吸収複合材10aの軸方向に摺動することができる。
【0031】
尚、当然のことながら、第1方法を実施する荷重エネルギー吸収複合材10aの製造装置は、例えば成形型30の中で中子20を摺動させるための駆動装置、成形型の温度を所定の温度に維持するための加熱装置並びに骨格部材及び外壁部材の原料を成形型の内部に注入するための設備等を備える。
【0032】
また、第1方法においては、上記のように中子20が成形型30の中で摺動することにより、下型30aに形成されている成形型30の第1空間31と上型30bに形成されている空間32bとの間で中子20の第1領域21aの位置が切り替えられる。しかしながら、このような構成はあくまでも一例であり、成形型30の構成は上記に限定されない。例えば、中子20の第1領域21aが下型30aの内部においてのみ摺動するように、中子20の第1領域21aを収容する空間32bが下型30aに形成されていてもよく、或いは中子20の第1領域21aが上型30bの内部においてのみ摺動するように、荷重エネルギー吸収複合材10aの外形に対応する成形空間である第1空間31が上型30bに形成されていてもよい。
【0033】
(3)第1方法に含まれる各工程
ここでは、図3の(b)乃至(g)を参照しながら、第1方法に含まれる各工程を説明する。これらの図は、図3の(a)と同じ方向から成形型30及び中子20の断面を観察した場合における模式図であり、各工程における成形型30における中子20の配置及び荷重エネルギー吸収複合材10aの各構成材料の状態を示す。従って、図3の(a)において符号が付されていない構成要素が初めて出現した場合においてのみ符号を付す。
【0034】
第1方法は、前述したように、以下に列挙する第1工程乃至第6工程を含む。但し、以下の説明は、あくまでも第1方法についての理解を容易にすることを目的として第1方法を6つの工程に分けて説明するものであり、第1方法に含まれる工程の数を限定することを目的とするものと解釈されるべきではない。
【0035】
I)第1工程
第1工程においては、中空部13a及び外壁部材12aに対応する形状を有する領域である第1領域21a及び中空部13aに対応する形状を有する領域である第2領域21bを備える中子20の第1領域21aが荷重エネルギー吸収複合材10aの外形に対応する成形空間である第1空間31を有する成形型30の第1空間31に配置されている状態である第1状態とする。
【0036】
具体的には、第1状態は、(b)に示すように、中子20の第1領域21aが下型30aの第1空間31に収容され、中子20の第2領域21bが下型30aの空間32aに収容されている状態である。これにより、骨格部材11aの形状に対応する成形空間である第2空間24が中子20と成形型30とによって画定される。
【0037】
II)第2工程
第2工程においては、(c)において格子模様によって示すように、第1状態にある中子20と成形型30とによって画定される骨格部材11aの形状に対応する成形空間である第2空間24に第1繊維からなる芯材14aを配置する。芯材14aを構成する第1繊維は、荷重エネルギー吸収複合材10aの成形条件及び使用環境に耐え且つ強化材としての機能を発揮する繊維である限り、特に限定されない。例えば、第1繊維は、ガラス繊維、炭素繊維及び植物由来の繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維である。
【0038】
これらの中でも、炭素繊維は、熱伝導性が高く、後述する第4工程における加熱時にモノマーへの熱伝導を促進して、型内重合の均質且つ迅速な進行に寄与するので好ましい。更に、エポキシ系樹脂を集束剤として使用する炭素繊維は、第1樹脂として6−ナイロン等のポリアミド系樹脂を採用する場合において、芯材14aと第1樹脂との親和性を高め、骨格部材11aの剛性を高めることに寄与するので、より好ましい。また、第1繊維の形態も特に限定されないが、具体例としては、例えば、三次元織物、二次元織物、編み物及びステッチ等を挙げることができる。
【0039】
III)第3工程
第3工程においては、(d)に示すように、上型30bによって成形型30を閉じ、第1樹脂の液状モノマー、重合開始剤及び重合触媒を含む第1原料を芯材14aが配置された第2空間24内に充填する(白抜きの矢印を参照。)。第1樹脂は、そのモノマーが重合温度以下の温度において芯材14aに容易に含浸し得る程度に十分に低い粘度を呈し且つ型内重合が可能である限り、特に限定されない。ε−カプロラクタムの開環重合によって得られる6−ナイロンは第1樹脂として特に好ましく、この場合、第1原料は、溶融されたε−カプロラクタム、重合開始剤及び重合触媒を含む。重合開始剤としては例えばジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート等のイソシアネート類を使用することができ、重合触媒としては例えば水素化ナトリウムを使用することができる。
【0040】
尚、第1原料の調製方法としては、例えば、先ず、モノマーと重合開始剤との混合物(ε−カプロラクタムとイソシアネート類との混合物)と、モノマーと重合触媒との混合物(ε−カプロラクタムと水素化ナトリウムとの混合物)と、を別個に調製する。そして、これらの混合物をそれぞれ所定の温度(例えば、モノマーの融点以上の温度)に加熱してモノマーを溶融させる。そして、両者を併せて十分に混合することにより第1原料を調製することができる。更に、第1原料を真空引き(減圧)に付して気泡を抜いてもよい。
【0041】
上記のように第1方法に含まれる第3工程においては、第1樹脂の液状モノマー、重合開始剤及び重合触媒を含む第1原料が、芯材14aが配置された第2空間24内に充填される。この際、第1樹脂のモノマーが芯材14aに容易に含浸し得る程度に十分に低い粘度を呈する温度にて充填が行われる。従って、第1樹脂のモノマーの芯材14aへの含浸が促進され、結果としてボイドの少ない良好な(緻密な)構造を有する骨格部材11aが得られる。また、従来技術に係る荷重エネルギー吸収材の骨格部材に比べて、骨格部材11aにおける第1繊維の含有率を高めることができるので、骨格部材11aの肉厚を増大させること無く、骨格部材11aの剛性を高めることができる。即ち、荷重エネルギー吸収材10aの重量の増大を抑えつつ骨格部材11aの剛性を高めることができるので、軽量化の観点からも望ましい。
【0042】
IV)第4工程
第4工程においては、(e)に示すように、第2空間24内に充填された第1原料を加熱してモノマーを重合させて第1樹脂とすることにより骨格部材11aを成形する(格子部分を参照。)。具体的な重合温度は、例えば、選択したモノマー、重合開始剤及び重合触媒の組み合わせ等によって定まる重合反応性等に応じて適宜定めることができる。例えば、第1樹脂が6−ナイロンであり、選択したモノマー、重合開始剤及び重合触媒がそれぞれε−カプロラクタム、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート及び水素化ナトリウムである場合、重合温度は120乃至160℃とすることができる。
【0043】
V)第5工程
第5工程においては、中子20の第2領域21bが成形型30の第1空間31に配置されている状態である第2状態とすることにより骨格部材11aの外側壁と第1空間31の内側壁との間に外壁部材12aの形状に対応する成形空間である第3空間25を生じさせる。
【0044】
具体的には、第2状態は、(f)に示すように中子20が上型30b側に摺動して、中子20の第1領域21aが上型30bの空間32bに収容され、中子20の第2領域21bが下型30aの第1空間31に収容されている状態である。これにより、外壁部材12aの形状に対応する成形空間である第3空間25が骨格部材11aの外側壁と第1空間31の内側壁とによって画定される。
【0045】
尚、第4工程における第1樹脂の重合度が十分に高まる前に第5工程を実行した場合、第1樹脂のモノマー、オリゴマー及び/又は未硬化の第1樹脂が第3空間に流れ込み、意図した構成を有する荷重エネルギー吸収複合材を成形することが困難となる虞がある。一方、骨格部材11aと外壁部材12aとの界面における接合強度を高める観点からは、第4工程における第1樹脂の重合が完了する前に第5工程及び第6工程を実行することが望ましい。
【0046】
第4工程における加熱処理の好ましい保持時間は、例えば結果として得られる荷重エネルギー吸収複合材の剛性及び骨格部材と外壁部材との界面観察等の実験結果に基づいて、適宜定めることができる。例えば、第1樹脂が6−ナイロンであり、選択したモノマー、重合開始剤及び重合触媒がそれぞれε−カプロラクタム、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート及び水素化ナトリウムである場合、第4工程における120乃至130℃の重合温度の好ましい保持時間は概ね4分乃至5分程度である。これは、熱硬化性樹脂を骨格部材の構成材料として採用する従来技術に係る荷重エネルギー吸収複合材の製造方法における熱硬化性樹脂の硬化時間(10分以上)に比べて大幅に短く、第1方法による生産性向上効果が大きいことを示す。
【0047】
VI)第6工程
第6工程においては、溶融された第2樹脂及び第2繊維を含む第2原料を第3空間25に射出することにより外壁部材12aを成形する。これにより、熱可塑性樹脂である第2樹脂及び第2樹脂に混練された第2繊維からなり且つ骨格部材11aの外側面及び横断面の開口部を覆う閉じた横断面を有する外壁部材12aを成形することができる。
【0048】
第2樹脂は、射出成形によって外壁部剤12aを成形することが可能な熱可塑性樹脂である限り、特に限定されないが、骨格部材11aと外壁部剤12aとの接合強度を高める観点からは、第1樹脂と同系の樹脂であることが好ましく(例えばポリアミド系同士及びポリオレフィン系同士等)、第1樹脂と同一の樹脂であることがより好ましい。具体的には、例えば、骨格部材11aを構成する第1樹脂として6−ナイロンを採用する場合、第2樹脂はナイロン系ポリアミド樹脂であることが好ましく、第1樹脂と同一の6−ナイロンであることがより好ましい。
【0049】
第2繊維もまた、荷重エネルギー吸収複合材10aの成形条件及び使用環境に耐え且つ強化材としての機能を発揮する繊維である限り、特に限定されない。例えば、第2繊維は、ガラス繊維、炭素繊維及び植物由来の繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維である。これらの中でも、炭素繊維は、熱伝導性が高く、第6工程における加熱時に第2樹脂への熱伝導を促進して、射出成形の均質且つ迅速な進行に寄与するので好ましい。更に、エポキシ系樹脂を集束剤として使用する炭素繊維は、第2樹脂として6−ナイロン等のポリアミド系樹脂を採用する場合において、第2繊維と第2樹脂との親和性を高め、外壁部材12aの剛性を高めることに寄与するので、より好ましい。
【0050】
熱可塑性樹脂である第2樹脂中に第2繊維を混練するための具体的な手法は特に限定されず、当該技術分野において広く用いられる種々の手法の中から適宜選択することができる。具体的には、例えば、射出成形用の長繊維強化樹脂ペレットを溶融押出することにより、上記第2原料を第3空間25に射出してもよい。或いは、例えば第2樹脂のペレット及び/又は粉末と第2繊維のチョップドファイバーとのドライブレンド並びに第2樹脂のペレット及び/又は粉末と第2繊維のロービングとのドライブレンド等のドライブレンドを溶融押出することにより、上記第2原料を第3空間25に射出してもよい。
【0051】
尚、上記のように熱可塑性樹脂である第2樹脂及び第2樹脂に混練された第2繊維からなる外壁部材12aは、前述したようなフィラメントワインディング部に比べて剛性が低い場合がある。しかしながら、第1方法によって成型される骨格部材11aは、上述したように、第1樹脂のモノマーが芯材14aに含浸し易いことからボイドの少ない良好な(緻密な)構造を有し且つ第1繊維の含有率を高めることができる。従って、外壁部剤12aの剛性が低い場合であっても、荷重エネルギー吸収材10a全体としての剛性を十分に確保することができると共に、例えば車両の衝突時等における衝撃を緩和するときに捻れが生ずる等の問題を低減することができる。
【0052】
〈まとめ〉
即ち、第1方法によれば、十分な剛性を維持しつつ軽量化が可能な閉じ断面形状を有する荷重エネルギー吸収複合材を高い生産性にて製造することができる。
【0053】
《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係る荷重エネルギー吸収複合材(以下、「第2複合材」と称呼される場合がある。)について説明するが、その構成については、上述した第1方法に関する説明の中で詳細に述べたので、ここでは詳細な説明は割愛し、概要のみを説明する。
【0054】
〈荷重エネルギー吸収複合材の構成〉
第2複合材は、図1の(a)に示したように、第1繊維からなる芯材14a及び芯材14aに含浸された第1樹脂からなり且つ開いた横断面を有する骨格部材11aと、熱可塑性樹脂である第2樹脂及び当該第2樹脂に混練された第2繊維からなり且つ骨格部材11aの外側面及び横断面の開口部を覆う閉じた横断面を有する外壁部材12aと、を備え、骨格部材11aの横断面の内壁と、骨格部材11aの横断面の開口部を覆う外壁部材12aの内壁と、によって画定される中空部13aを有する、筒状の荷重エネルギー吸収複合材10aである。更に、上記第1樹脂は6−ナイロンであり、上記第2樹脂はナイロン系ポリアミド樹脂である。
【0055】
好ましくは、上記第1繊維は、ガラス繊維、炭素繊維及び植物由来の繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維であり、上記第2繊維は、ガラス繊維、炭素繊維及び植物由来の繊維からなる群より選ばれる1種以上の繊維である。
【0056】
第2複合材によれば、十分な剛性を維持しつつ軽量化が可能な閉じ断面形状を有する荷重エネルギー吸収複合材を提供することができる。
【実施例】
【0057】
以上説明してきた第1方法によって製造される第2複合材の1つの典型例としての実施例につき、以下に詳細に説明する。
【0058】
〈使用材料〉
本実施例に係る荷重エネルギー吸収複合材の製造に使用された構成材料を以下の表1に列挙する。
【0059】
【表1】
【0060】
〈製造方法〉
(1)原料1の調製
ε−CLに0.6mol%のイソシアネートを添加したものをA材とし、ε−CLに0.8mol%の触媒を添加したものをB材とし、A材及びB材を110℃の炉内に入れて溶融させた。溶融したA材とB材とを混合して十分に攪拌することにより第1原料を調製した。更に、真空引き(バキューム)により減圧して、第1原料中の気泡を抜いた(脱泡した。)。芯材及び第2原料は市販品を使用した。また、成形型は、図2及び図3を参照しながら説明した成形型を使用した。
【0061】
(2)成形
次に、第1工程において中子を所定位置に配置して成形型を第1状態とし、第2工程において第2空間に芯材であるCF織物をセットした。次に、第3工程において成形型を閉じ、上記のようにして調製された第1原料をCF織物が配置された第2空間内に充填し、第4工程において成形型の温度を120℃乃至130℃に4分間維持することにより、第1原料を加熱してε−CLを重合させて第1樹脂としての6−ナイロンとした。これにより、略U字状の横断面を有する骨格部材を成形した。
【0062】
次に、第5工程において成形型中の中子を摺動(コアバック)させて第2状態とすることにより、外壁部材の成形空間である第3空間を生じさせた。そして、第6工程において
第2原料としての射出材を射出成形機により第3空間に射出することにより、骨格部材の周囲に外壁部材を成形した(オーバーモールディング)。尚、本実施例においては、射出成形の5分後に成形型を開いて、得られた荷重エネルギー吸収複合材を取り出した。
【0063】
〈評価〉
(1)骨格部材の機械的強度
本実施例の第4工程によって得られた骨格部材を成形型から取り出し、その弾性率を測定した。比較例として、第1樹脂(6−ナイロン)の代わりに熱硬化性樹脂(エポキシ系樹脂)を使用した従来技術に係る同形状の骨格部材を用いた。尚、本実施例に係る骨格部材においては第1繊維(炭素繊維二次元織物)の含有率(CF含有率)を約80wt%としてもボイドの少ない良好な(緻密な)構造を達成することができたが、比較例に係る骨格部材においてはCF含有率を約50wt%よりも大きくするとボイドが増大して緻密な構造を達成することができなかった。これらの試料についての弾性率の測定結果を図4のグラフに示す。
【0064】
図4のグラフからも明らかであるように、本実施例に係る骨格部材においては、ボイドの少ない良好な(緻密な)構造を維持しつつCF含有率を約80wt%まで増大することができた。その結果、比較例に係る骨格部材に比べて、弾性率を大幅に増大させることができた。これにより、例えばフィラメントワインディング装置を使用して骨格部材の周囲にフィラメントを巻き付ける等の設備コスト及び成形工数の増大を招く製造方法及び構成を採用すること無く、荷重エネルギー吸収複合材として必要な剛性を達成することが可能となる。
【0065】
(2)荷重エネルギー吸収複合材としてのエネルギー吸収量
そこで、本実施例の第6工程によって得られた荷重エネルギー吸収複合材の単位質量(1Kg)当たりの衝撃荷重エネルギーの吸収量を測定した。比較例としては、上記(1)において比較例として使用した骨格部材の周囲にフィラメントを巻き付けることによって製造された従来技術に係る同形状の荷重エネルギー吸収複合材を用いた。これらの試料についてのエネルギー吸収量の測定結果を図5のグラフに示す。
【0066】
図5のグラフからも明らかであるように、本実施例に係る荷重エネルギー吸収複合材においては、生産性の高い熱可塑性樹脂の射出成形によって成形された外壁部材を採用したにもかかわらず、剛性の高いフィラメントワインディング部を外壁部材とする従来技術に係る同形状の荷重エネルギー吸収複合材と同等のエネルギー吸収量を呈した。
【0067】
上記結果は、上記(1)において述べたように、本実施例に係る骨格部材においてはボイドの少ない良好な(緻密な)構造を維持しつつCF含有率を約80wt%まで増大することができた結果として、比較例に係る骨格部材に比べて、弾性率を大幅に増大させることができたことに起因するものと考えられる。
【0068】
〈まとめ〉
以上の評価結果から、本発明によれば、十分な剛性を維持しつつ軽量化が可能な閉じ断面形状を有する荷重エネルギー吸収複合材を高い生産性にて製造することができることが確認された。
【0069】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内において、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0070】
10a及び10b…荷重エネルギー吸収複合材、11a及び11b…骨格部材、12a及び12b…外壁部材、13a及び13b…中空部、14a…芯材、20…中子、21a…第1領域、21b…第2領域、22…外壁部材に対応する形状を有する中子の部分、23…中空部に対応する形状を有する中子の部分、24…第2空間、25…第3空間、30…成形型、30a…下型、30b…上型、31…第1空間、並びに32a及び32b…空間。
図1
図2
図3
図4
図5