特許第6623789号(P6623789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6623789木管楽器用リード及び木管楽器用リードの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623789
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】木管楽器用リード及び木管楽器用リードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10D 9/02 20060101AFI20191216BHJP
   G10D 7/06 20060101ALI20191216BHJP
   G10D 7/00 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   G10D9/02 120
   G10D7/06
   G10D7/00 110
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-12440(P2016-12440)
(22)【出願日】2016年1月26日
(65)【公開番号】特開2017-134158(P2017-134158A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176876
【弁理士】
【氏名又は名称】各務 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】安部 詠司
【審査官】 上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表平08−504039(JP,A)
【文献】 特開2008−197450(JP,A)
【文献】 特開2004−337786(JP,A)
【文献】 実開昭51−087687(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 7/00−9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂をマトリックスとし、長手方向一端側にヴァンプを有する帯板状の木管楽器用リードであって、
異なる特性を有する複数種の領域が長手方向に配向するよう存在し、
これらの複数種の領域の界面で特性が傾斜していることを特徴とする木管楽器用リード。
【請求項2】
前記特性が、弾性、密度又は色である請求項1に記載の木管楽器用リード。
【請求項3】
前記異なる特性を有する領域の種類の数が2種であり、
前記2種の領域が短手方向に交互に配設されている請求項1又は請求項2に記載の木管楽器用リード。
【請求項4】
合成樹脂をマトリックスとし、長手方向一端側にヴァンプを有する帯板状の木管楽器用リードの製造方法であって、
異なる特性を有する複数種の樹脂組成物をキャビティに注入する工程を備え、
前記複数種の樹脂組成物の注入に用いる装置が、円筒状の管路と、この管路内に同軸に配設される第1螺旋翼体と、前記管路内に同軸かつ第1螺旋翼体の下流側に配設され、前記第1螺旋翼体と逆回転の第2螺旋翼体とを備えることを特徴とする木管楽器用リードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木管楽器用リード及び木管楽器用リードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばサクソフォン、クラリネット等の木管楽器は、奏者が息を吹き込む唄口に取り付けられる帯板状のリードを振動させることによって音を発生させる。木管楽器用リードは、一般に葦や竹などの天然樹脂組成物から形成され、奏者が口に咥える側の長手方向端部(先端部)に向かって厚さを徐々に減少させるよう表面を削り落としたヴァンプ(Vamp)が設けられている。
【0003】
このような天然樹脂組成物から形成される木管楽器用リードは、個々のばらつきが大きいという難点がある。このため、ユーザーが熟練者ではない比較的低練度の奏者であっても、複数のリードの中から満足な音色が得られるリードを選択し、満足な音色が得られないリードを使用せずに廃棄しているのが実情である。具体的には、木管楽器用リードは、10本を一組として販売されることが多いが、一般ユーザーであっても、実際には10本中で2本乃至3本程度しか使用できないと判断する場合が少なくない。
【0004】
また、木管楽器用リードには、奏者の唾液や息に含まれる水分が付着することが避けられない。葦や竹から形成される木管楽器用リードは、このような水分に晒されることによって劣化が促進されるため、寿命が比較的短いという不都合がある。このため、合成樹脂から形成された耐久性に優れるリードが市販されている。
【0005】
しかしながら、合成樹脂製のリードは、その振動特性等の物性が天然樹脂組成物から形成されるリードとは異なるため、音色や演奏性が十分とはいえない。そこで、合成樹脂製リードを形成する樹脂組成物にセルロース繊維を配合することで、合成樹脂製リードの振動特性を向上することが提案されている(例えば特開2008−197450号公報参照)。
【0006】
葦や竹などの天然樹脂組成物から形成されるリードは、繊維が長手方向に配向されるため、物性に異方性を有する。これに対して、前記公報に記載されるように合成樹脂に繊維を配合する場合、繊維を一定の方向に配向することは困難であり、天然樹脂組成物のような異方性を付与することは困難である。木管楽器用リードに異方性を付与することができれば、天然素材に近い振動特性が得られたり、木管楽器用リードの価値を向上する意匠性を付加したりできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−197450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記不都合に鑑みて、本発明は、合成樹脂から形成されながら異方性を有する木管楽器用リード及びそのような木管楽器用リードの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた発明は、合成樹脂をマトリックスとし、長手方向一端側にヴァンプを有する帯板状の木管楽器用リードであって、異なる特性を有する複数種の領域が長手方向に配向するよう存在し、これらの複数種の領域の界面で特性が傾斜していることを特徴とする木管楽器用リードである。
【0010】
当該木管楽器用リードは、異なる特性を有する複数種の領域が長手方向に配向するよう存在することによって、長手方向と短手方向とで特性が異なるような異方性を有するので、優れた振動特性や意匠性を有することができる。また、複数種の領域の界面で特性が傾斜していることによって、当該木管楽器用リードが領域の界面で割れることを抑制して強度を向上すると共に、当該木管楽器用リード全体を一体的に振動させることができる。なお、特性が「傾斜」するとは、特性が徐々に変化することを意味する。
【0011】
前記特性が、弾性、密度又は色であるとよい。前記特性が弾性又は密度である場合、当該木管楽器用リードは振動特性に異方性を有することができる。また、前記特性が色である場合、当該木管楽器用リードは従来に見られない意匠性を有する。
【0012】
前記異なる特性を有する領域の種類の数が2種であり、前記2種の領域が短手方向に交互に配設されているとよい。このように、前記異なる特性を有する領域の種類の数が2種であり、前記2種の領域が短手方向に交互に配設されることによって、天然樹脂組成物の繊維の配向による異方性に近い物性を比較的容易に再現することができる。
【0013】
また、前記課題を解決するためになされた別の発明は、合成樹脂をマトリックスとし、長手方向一端側にヴァンプを有する帯板状の木管楽器用リードの製造方法であって、異なる特性を有する複数種の樹脂組成物をキャビティに注入する工程を備え、前記複数種の樹脂組成物の注入に用いる装置が、円筒状の管路と、この管路内に同軸に配設される第1螺旋翼体と、前記管路内に同軸かつ第1螺旋翼体の下流側に配設され、前記第1螺旋翼体と逆回転の第2螺旋翼体とを備えることを特徴とする木管楽器用リードの製造方法である。
【0014】
当該木管楽器用リードの製造方法は、異なる特性を有する複数種の樹脂組成物をキャビティに注入する工程を備えるため、木管楽器用リードを比較的容易かつ安価に製造することができる。また、当該木管楽器用リードの製造方法は、前記複数種の樹脂組成物の注入に用いる装置が、円筒状の管路と、この管路内に同軸に配設される第1螺旋翼体及び第2螺旋翼体とを備えることによって、比較的容易に異なる特性を有する複数種の領域を長手方向に配向して配設することができ、かつこれらの複数種の領域の界面で特性を傾斜させることができる。このため、当該木管楽器用リードの製造方法は長手方向と短手方向とで特性が異なるような異方性を有する木管楽器用リードを比較的容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の木管楽器用リード及び本発明の木管楽器用リードの製造方法によって得られる木管楽器用リードは、合成樹脂から形成されながら異方性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る木管楽器用リードが取り付けられたサクソフォンを示す模式的斜視図である。
図2図1のサクソフォンのマウスピースを示す模式的断面図である。
図3図1のサクソフォンの木管楽器用リードを示す模式的平面図である。
図4図3の木管楽器用リードの模式的A−A線部分断面図である。
図5図3の木管楽器用リードの製造設備の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0018】
[サクソフォン]
図1に、本発明の一実施形態に係る木管楽器用リード1を用いる木管楽器の一種であるサクソフォンを示す。
【0019】
図1のサクソフォンは、サクソフォン本体2の一端に当該木管楽器用リード1を取り付けたマウスピース3が装着されている。
【0020】
サクソフォン本体2は、一端にマウスピース3が装着され、他端が径を拡大するようにして開放する屈曲した管体部4を備え、この管体部4に形成される複数の音孔をそれぞれ封止可能に設置される複数のキイ5と、これらのキイ5を操作するためのレバー6等を有する。このサクソフォン本体2の構成は、従来のサクソフォン本体の構成と同様とすることができる。
【0021】
マウスピース3は、サクソフォン本体2の一端に装着され、奏者がサクソフォン本体2に息を吹き込み、当該木管楽器用リード1を振動させるために使用される。
【0022】
マウスピース3は、図2に示すように、概略筒状に形成され、奏者が口に咥える一端側が平たく押し潰されたような形状を有し、奏者の下唇に接触する側が大きく開口し、この開口を封止するよう当該木管楽器用リード1が取り付けられる。当該木管楽器用リード1は、マウスピース3の外周に装着されるリガチャ7によってマウスピース3に固定される。これらのマウスピース3及びリガチャ7としては、従来の構成のものを使用することができる。
【0023】
なお、当該木管楽器用リード1は、図1のようなサクソフォンに限らず、例えばクラリネット等の他の木管楽器にも使用することができ、例えばオーボエ、ファゴット等の2枚のリードを使用する木管楽器にも使用することができる。2枚のリードを使用する木管楽器の場合、2枚のリードのうち一方にのみ当該木管楽器用リード1を用い、他方に天然樹脂組成物から形成される従来のリード又は保湿材料を含有しない従来の樹脂製リードを用いてもよい。
【0024】
[木管楽器用リード]
図3及び図4に、当該木管楽器用リード1を詳細に示す。当該木管楽器用リード1は、合成樹脂をマトリックスとし、帯板状に形成され、図示するように長手方向一端側にヴァンプ8を有する。
【0025】
当該木管楽器用リード1は、ヴァンプ8が形成されていない部分の表面(マウスピース3に取り付けられる側と反対側の面)が円筒面の一部をなすように湾曲している。この湾曲面は、裏面(マウスピース3に取り付けられる側の面)と平行な長手方向の軸を有し、表面側に膨出するものとされる。これにより、当該木管楽器用リード1は、図1及び図2に示すように、ヴァンプ8が形成されていない部分がリガチャ7で緊締されることによってマウスピース3の外面に表面が連続するようマウスピース3と一体に保持される。
【0026】
ヴァンプ8は、奏者が口に咥える側の長手方向端部(以下、単に「先端部」ともいう。)に向かって当該木管楽器用リード1の厚さを徐々に減少させるよう形成されている。より詳しくは、ヴァンプ8は、一般に当該木管楽器用リード1のヒール(ヴァンプ8が形成されていない方の長手方向端部)側程傾斜角度が大きくなるよう湾曲し、先端側は略平面状に伸びるよう形成される。このヴァンプ8の湾曲形状としては、従来のリードに形成されるヴァンプの湾曲形状と同様とされる。
【0027】
つまり、当該木管楽器用リード1の概略形状としては、葦等から形成される従来のリードと同様の形状とされる。当該木管楽器用リード1の概略形状の具体的な寸法としては、当該木管楽器用リード1がアルトサックス用のリードである場合、幅を約15mm、長さを約70mm、ヴァンプ8が形成されていない部分の最大厚さを約3mm、ヴァンプ8の先端における厚さを約0.15mmとすることができる。
【0028】
また、当該木管楽器用リード1は、異なる特性を有する複数種の領域(図3及び図4では、2種の領域9,10)が長手方向に配向するよう存在している。
【0029】
当該木管楽器用リード1は、このように、異なる特性を有する複数種の領域9,10が長手方向に配向するよう存在することによって、長手方向と短手方向とで特性が異なるような異方性を有する。
【0030】
また、当該木管楽器用リード1において、領域9,10の界面で特性が傾斜している。つまり、各領域9,10は、明確に区分けされておらず、その境界で組成が徐々に変化する。これにより、当該木管楽器用リード1は、領域9,10間の界面での割れを防止して、強度を向上すると共に、領域9,10間で振動特性が異なる場合にも一体的に振動することができる。
【0031】
前記領域9,10は、互いに何らかの特性が異なるものとされるが、領域9,10間で異なる特性としては、弾性、密度及び色の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0032】
領域9,10間で異なる特性が弾性又は密度である場合、各領域9,10における振動伝播速度が異なり、当該木管楽器用リード1は振動特性に異方性を有するものとなる。また、領域9,10間で弾性又は密度を異ならせることによって、天然樹脂組成物の繊維の配向による物性の異方性を再現することができるので、当該木管楽器用リード1の振動特性を天然樹脂組成物から形成されるリードに近づけることができる。
【0033】
領域9,10間の弾性(弾性率)又は密度(比重)の比(大きい方の値を小さい方の値で除した値)の下限としては、1.5が好ましく、2がより好ましい。一方、領域9,10間の弾性又は密度の比の上限としては、50が好ましく、30より好ましい。領域9,10間の弾性又は密度の比が上記下限に満たない場合、当該木管楽器用リード1の物性の異方性が不十分となるおそれがある。逆に、領域9,10間の弾性又は密度の比が上記上限を超える場合、一方の領域の強度が不足するおそれや、各領域を構成する材料間の相溶性が不足して当該木管楽器用リード1の製造が容易でなくなるおそれがある。
【0034】
一方、領域9,10間で異なる特性が色である場合、当該木管楽器用リード1の表面に縞模様が形成されるので、当該木管楽器用リード1の意匠性を向上することができる。
【0035】
当該木管楽器用リード1において、異なる特性を有する領域の種類の数は、3種以上であってもよいが、製造が比較的容易となるため2種が好ましい。
【0036】
また、異なる特性を有する2種の領域9,10は、それぞれ複数設けられ、かつ短手方向に交互に配設されることが好ましい。このように、異なる特性を有する2種の領域9,10が短手方向に交互に配設されることによって、天然樹脂組成物の繊維の配向による物性の異方性をより正確に再現することができるため、当該木管楽器用リード1を使用することでより自然な音を発生できる。
【0037】
当該木管楽器用リード1の表面における各領域9,10の平均幅(中心間隔)の下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、各領域9,10の平均幅の上限としては、3mmが好ましく、2mmがより好ましい。各領域9,10の平均幅が上記下限に満たない場合、製造が困難となるおそれがある。逆に、各領域9,10の平均幅が上記上限を超える場合、当該木管楽器用リード1に十分な異方性を付与できないおそれがある。なお、各領域9,10の幅は、互いに等しくてもよいが、上記範囲内で互いに異なってもよい。
【0038】
当該木管楽器用リード1、つまり領域9,10のマトリックスとなる合成樹脂としては、十分な剛性を有するものであればよく、特に限定されないが、後述する製造方法を適用するために金型のキャビティ内でのモノマー又はプレポリマーの重合によって生成できるポリマーが好ましい。当該木管楽器用リード1のマトリックスとなる具体的な合成樹脂としては、例えばポリエチレン、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリウレタン等を挙げることができる。
【0039】
各領域9,10のマトリックスとなる合成樹脂は互いに異なるものであってもよいが、領域9,10の界面において特性を傾斜させるよう部分的に混和する必要があるため、各領域9,10のマトリックスとなる合成樹脂が相溶性を有することが好ましい。
【0040】
また、当該木管楽器用リード1を形成する材料は、マトリックス中に例えば木繊維、竹繊維等の天然繊維、ガラス繊維等の無機繊維、ポリアミド繊維等の合成繊維などを含んでもよい。マトリックス中の繊維は、当該木管楽器用リード1の剛性を向上する。
【0041】
当該木管楽器用リード1を形成する材料における繊維の含有率の下限としては、特に限定されないが、10質量%が好ましく、20質量%がより好ましい。一方、当該木管楽器用リード1を形成する材料における繊維の含有率の上限としては、70質量%が好ましく、60質量%がより好ましい。前記繊維の含有率が前記下限に満たない場合、当該木管楽器用リード1の剛性を十分に向上できないおそれがある。逆に、前記繊維の含有率が前記上限を超える場合、当該木管楽器用リード1の成形が困難となるおそれがある。
【0042】
当該木管楽器用リード1を形成する材料に含有される繊維の平均長さの下限としては、3μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、当該木管楽器用リード1を形成する材料に含有される繊維の平均長さの上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましい。前記繊維の平均長さが前記下限に満たない場合、当該木管楽器用リード1の剛性を十分に向上できないおそれがある。逆に、前記繊維の平均長さが前記上限を超える場合、当該木管楽器用リード1の射出成型による製造が困難となるおそれがある。
【0043】
[木管楽器用リードの製造方法]
当該木管楽器用リード1は、異なる特性を有する複数種の樹脂組成物をキャビティに注入する工程(注入工程)と、前記複数種の樹脂組成物をキャビティ内で硬化させる工程(硬化工程)とを備える方法によって製造することができる。
【0044】
図5に、当該木管楽器用リード1の製造設備の一例を示す。この製造設備は、当該木管楽器用リード1に対応する形状のキャビティCを有する金型11と、この金型11のキャビティCに前記複数種の樹脂組成物を注入する注入装置12と、金型11を加熱する加熱装置13とを備える。
【0045】
(金型)
金型11は、当該木管楽器用リード1に対応する形状のキャビティCと、このキャビティCのヒール部に開口するゲートGとを有する。つまり、キャビティC内に注入される樹脂組成物は、当該木管楽器用リード1におけるヒールから先端に向かって流れる。
【0046】
キャビティCは、当該木管楽器用リード1の先端に対応する位置よりもさらに先端側に延出する延長部Caを有することが好ましい。また、キャビティは、ゲートGから当該木管楽器用リード1のヒールに対応する位置まで断面積を徐々に大きくする拡大部Cbを有することが好ましい。さらに、金型11は、キャビティCの先端からキャビティC内の空気及び最初に注入された樹脂組成物を排出する排出路Eを有してもよい。
【0047】
複数種の樹脂組成物は、注入の初期段階では各領域9,10を均等に形成できないおそれがあり、また、流路の断面積が急激に変化する部分では樹脂組成物の流れ方向が一定とならない。このため、前記延長部Ca及び拡大部Cb並びに排出路Eを設け、金型11から取り出した樹脂成形体から、延長部Ca及び拡大部Cbに対応する部分を切除することによって、各領域9,10が正確に配向して形成された当該木管楽器用リード1を得ることができる。
【0048】
(注入装置)
注入装置12は、互いに異なる樹脂組成物を送出する例えばシリンジ、ポンプ等からなる複数の送出部14,15と、これらの送出部14,15から複数種の樹脂組成物が同時に供給される円筒状の管路16と、この管路16内に同軸に配設される第1螺旋翼体17と、管路16内に同軸かつ第1螺旋翼体17の下流側に配設され、第1螺旋翼体17と逆回転の第2螺旋翼体18とを備える。
【0049】
注入装置12は、複数の前記第1螺旋翼体17及び複数の第2螺旋翼体18を備え、第1螺旋翼体17と第2螺旋翼体18とが軸方向に交互に配設されていることが好ましい。第1螺旋翼体17及び第2螺旋翼体18は、管路16内を二分し、かつ管路16の中心軸を中心に180°旋回するねじれを有する板状体であって、管路16内の複数の樹脂組成物の流れをそれぞれ2分割する。これによって、複数種の樹脂組成物の流束の数がそれぞれ2倍に増加し、かつ第1螺旋翼体17及び第2螺旋翼体18の下流側の端部に平行な多層状の流れを形成する。なお、第1螺旋翼体17及び第2螺旋翼体18の数が同じである必要はなく、第1螺旋翼体17を1つ多くして最下流側に第1螺旋翼体17を配置してもよい。
【0050】
このように、注入装置12内で第1螺旋翼体17及び第2螺旋翼体18によって形成される各樹脂組成物の層は、当該木管楽器用リード1において各領域9,10を形成するが、管路16及び金型11の中で移動する間に、互いの界面において樹脂組成物が部分的に混ざり合うことで、当該木管楽器用リード1における領域9,10の界面での特性の傾斜を形成する。
【0051】
第1螺旋翼体17及び第2螺旋翼体18の数の下限としては、それぞれ2が好ましい。一方、第1螺旋翼体17及び第2螺旋翼体18の数の上限としては、それぞれ4が好ましい。第1螺旋翼体17及び第2螺旋翼体18の数が前記下限に満たない場合、当該木管楽器用リード1の領域9,10の数が不十分となり、十分な配向性を付与できないおそれがある。逆に、第1螺旋翼体17及び第2螺旋翼体18の数が前記上限を超える場合、複数の樹脂組成物が混和して、領域9,10を区分できないおそれがある。
【0052】
(加熱装置)
加熱装置13は、金型11を均等に設定温度まで加熱できるものであればよく、例えば電気ヒーターを用いることができる。加熱装置13によって金型11内の樹脂組成物を加熱することで、樹脂組成物の硬化を促進し、当該木管楽器用リード1の製造効率を向上することができる。
【0053】
<注入工程>
注入工程では、前記注入装置12を用い、金型11のキャビティCの中に複数種の樹脂組成物を注入する。前記第1螺旋翼体17及び第2螺旋翼体18によって、管路16内で層状に配列した樹脂組成物をキャビティCに注入することによって、複数種の樹脂組成物が長手方向に配向し、かつ異なる樹脂組成物間の境界において樹脂組成物が混ざり合う状態となる
【0054】
(樹脂組成物)
キャビティCに注入される複数種の樹脂組成物としては、前記注入装置12によって、互いに完全に混和することなく、キャビティCの中に注入できる粘度を有するものであって、かつキャビティCの中で重合して当該木管楽器用リード1のマトリックスとなる合成樹脂を形成するモノマー又はプレポリマーを含むものとされる。
【0055】
各樹脂組成物は、重合開始剤(架橋剤)を含むことが好ましい。重合開始剤としては、例えば光重合開始剤、熱重合開始剤等のラジカル重合開始剤、例えばアニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤等のイオン重合開始剤などが挙げられる。
【0056】
また、各樹脂組成物は、例えば上述の繊維、その他の充填剤、着色のための顔料、改質剤等の添加剤を含んでもよい。
【0057】
樹脂組成物の粘度の下限としては、100Pa・sが好ましく、700Pa・sがより好ましい。一方、樹脂組成物の粘度の上限としては、2000Pa・sが好ましく、 1100Pa・sがより好ましい。樹脂組成物の粘度が前記下限に満たない場合、異なる種の樹脂組成物が混和してしまい、複数の領域9,10を形成することができないおそれがある。逆に、樹脂組成物の粘度が前記上限を超える場合、キャビティへの充填が不完全となりやすく、当該木管楽器用リード1の製造性が不十分と当該おそれがある。なお、「粘度」は、25℃においてB型粘度計を用いて測定される値である。
【0058】
<硬化工程>
硬化工程では、注入工程でキャビティCの中に注入した複数種の樹脂組成物を、キャビティCの中で硬化させる。この硬化工程では、重合開始剤の反応を開始させるため、又は樹脂組成物の重合反応を促進するために、金型11を加熱することが好ましい。また、硬化工程では、重合開始剤の種類に応じて、エネルギー線の照射等を行ってもよく、この場合、金型11の材質が金属以外とされることがある。
【0059】
当該木管楽器用リードの製造方法は、さらに、金型11から取り出した成型品から、バリ等を切除する工程を備えることが好ましい。特に、キャビティCが、延長部Ca又は拡大部Cbを有する場合、延長部Caや拡大部Cbに対応する部分を切除する工程が必須となる。
【0060】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0061】
当該木管楽器用リードは、正目板状に各領域が短手方向に配列するものだけでなく、板目板状に長手方向に垂直な断面において各領域が傾斜乃至湾曲して延在したり、表面に湾曲した模様を描いたりするものであってもよい。
【0062】
当該木管楽器用リードは、当該木管楽器用リードの製造方法によって製造されるものに限られない。
【0063】
また、当該木管楽器用リードの製造方法において、リードの先端側からヒール側に向かって樹脂組成物を注入してもよい。
【0064】
また、当該木管楽器用リードの製造方法は、リードに対応する形状を有するキャビティを有する金型を用いるものに限定されず、より大きなキャビティに複数種の樹脂組成物を注入して形成した樹脂成形体から機械加工によって木管楽器用リードを削り出す方法としてもよい。
【0065】
また、当該木管楽器用リードの製造方法において、硬化工程における加熱は、樹脂組成物の組成によっては省略することができる。つまり、硬化工程は、注入工程後、樹脂組成物が硬化するまでの時間経過を待つだけであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の木管楽器用リードは、サクソフォンだけでなく、リードを使用する他の木管楽器にも広く利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 木管楽器用リード
2 サクソフォン本体
3 マウスピース
4 管体部
5 キイ
6 レバー
7 リガチャ
8 ヴァンプ
9,10 領域
11 金型
12 注入装置
13 加熱装置
14,15 送出部
16 管路
17 第1螺旋翼体
18 第2螺旋翼体
C キャビティ
Ca 延長部
Cb 拡大部
E 排出路
G ゲート
図1
図2
図3
図4
図5