特許第6623809号(P6623809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623809
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】車両の防雨板装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/00 20060101AFI20191216BHJP
【FI】
   B60J7/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-26637(P2016-26637)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-144815(P2017-144815A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 裕治
【審査官】 小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−027915(JP,U)
【文献】 特開平09−142149(JP,A)
【文献】 特開平07−069067(JP,A)
【文献】 韓国登録実用新案第20−0389041(KR,Y1)
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0030798(KR,A)
【文献】 特開2017−100636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口を開閉する乗降用ドアと、
前記乗降口の上方のルーフパネルとヘッドライニングとの間に位置する収納位置と、前記乗降口の車幅方向外側に突出された使用位置との間で移動される防雨板と、
を備えた車両の防雨板装置であって、
前記乗降用ドアは、車両の前後方向に移動することで前記乗降口を開放した開放位置と前記乗降口を閉塞する閉塞位置となるスライドドアであり、
前記防雨板は、平面視した状態で前記収納位置に位置する前記防雨板の輪郭の内側に位置する回転軸を中心に前記収納位置と前記使用位置との間で揺動可能に設けられ、
前記防雨板を前記使用位置に付勢するばねと、
前記使用位置から前記収納位置に向かう方向から前記防雨板に当接し前記防雨板を前記使用位置および前記収納位置に位置決めするストッパと、
前記防雨板を前記使用位置から前記収納位置に移動させる収納用移動機構と、
を備えることを特徴とする車両の防雨板装置。
【請求項2】
前記収納用移動機構は、前記ストッパを、前記防雨板を前記収納位置に位置決めする収納ストッパ位置と前記防雨板を前記使用位置に位置決めする使用ストッパ位置との間で移動させるアクチュエータを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の車両の防雨板装置。
【請求項3】
前記収納用移動機構は、前記乗降用ドアに設けられた当接部と、前記防雨板に設けられ前記開放位置から前記閉塞位置に向かう前記乗降用ドアの移動時に前記当接部に当接し前記乗降用ドアの閉塞位置で前記防雨板を前記収納位置に位置させるガイドとを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両の防雨板装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の防雨板装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者が乗降口から車両に乗降する際に雨に濡れることを防止するため、従来から車体の屋根部に、屋根部の上に配置された収納位置と、屋根部の車幅方向外側に突出された使用位置との間で移動される防雨板を設けた車両が提案されている。
この場合、防雨板を収納位置と使用位置との間で移動させる移動機構も屋根部に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−310044号公報
【特許文献2】特許第3527124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、防雨板および移動機構が屋根部の上で車外に取り付けられていることから、見栄えが悪くなるだけでなく、防雨板および移動機構を屋根部の上に取り付けるための構造が大きなスペースを占有してしまう不利がある。
また、使用位置に位置する防雨板に対して収納位置に向かう外力が加わった場合、防雨板と移動機構との間に無理な力が加わり損傷するおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、車両の外観性の向上を図り、コンパクト化を図り、損傷の発生を防止する上で有利な車両の防雨板装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、乗降口を開閉する乗降用ドアと、前記乗降口の上方のルーフパネルとヘッドライニングとの間に位置する収納位置と、前記乗降口の車幅方向外側に突出された使用位置との間で移動される防雨板と、を備えた車両の防雨板装置であって、前記乗降用ドアは、車両の前後方向に移動することで前記乗降口を開放した開放位置と前記乗降口を閉塞する閉塞位置となるスライドドアであり、前記防雨板は、平面視した状態で前記収納位置に位置する前記防雨板の輪郭の内側に位置する回転軸を中心に前記収納位置と前記使用位置との間で揺動可能に設けられ、前記防雨板を前記使用位置に付勢するばねと、前記使用位置から前記収納位置に向かう方向から前記防雨板に当接し前記防雨板を前記使用位置および前記収納位置に位置決めするストッパと、前記防雨板を前記使用位置から前記収納位置に移動させる収納用移動機構とを備えることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記収納用移動機構は、前記ストッパを、前記防雨板を前記収納位置に位置決めす収納ストッパ位置と前記防雨板を前記使用位置に位置決めする使用ストッパ位置との間で移動させるアクチュエータを含んで構成されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記収納用移動機構は、前記乗降用ドアに設けられた当接部と、前記防雨板に設けられ前記開放位置から前記閉塞位置に向かう前記乗降用ドアの移動時に前記当接部に当接し前記乗降用ドアの閉塞位置で前記防雨板を前記収納位置に位置させるガイドとを含んで構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、収納位置において防雨板は、ヘッドライニングとルーフパネルとの間に収納されると共に、乗降口を閉塞した乗降用ドアにより隠される。そのため、防雨板装置を備えた車両の外観性の向上を図る上で有利となる。
また、開放位置から閉塞位置に移動する乗降用ドアにより使用位置に位置する防雨板に対して外力が加わった場合、ストッパに干渉することなく防雨板は使用位置から収納位置となる。すなわち、乗降用ドアが急激に開放位置から閉塞位置に移動されても収納用移動機構および防雨板に無理な力が加わらず、収納用移動機構および防雨板を損傷することはない。
また、防雨板が収納位置と使用位置との間で揺動する際に必要となるスペースが最小限で済み、防雨板装置のコンパクト化を図る上で有利となる。
請求項2記載の発明によれば、防雨板の収納位置および使用位置への移動を円滑に行う上で有利となる。
請求項3記載の発明によれば、乗降用ドアにより防雨板が強制的に使用位置から収納位置に戻された場合であっても乗降用ドアが当接部を介して防雨板のガイドに当接するため、乗降用ドアの損傷を防止する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態の車両の防雨板装置が適用された車両の平面図であり、(A)は防雨板の収納位置を示し、(B)は防雨板の使用位置を示す。
図2】実施の形態の車両の防雨板装置の動作説明図であり、(A)は防雨板の収納位置を示し、(B)は防雨板の使用位置を示す。
図3】防雨板が使用位置にある状態でスライドドアが開放位置から閉塞位置に移動した場合の説明図であり、(A)はスライドドアの開放位置を示し、(B)、(C)、(D)はスライドドアの当接部が防雨板のガイドに当接して防雨板が揺動された状態を示し、(E)はスライドドアが閉塞位置にあり、防雨板が収納位置にある状態を示す。
図4】スライドドアおよび車両を示す斜視図である。
図5】スライドドアの図示を省略した図4のA矢視図である。
図6】(A)は防雨板の斜視図を示し、(B)は(A)のAA線断面図である。
図7】車両の車幅方向外側から防雨板装置を見た図である。
図8】使用位置に位置する防雨板と乗員の移動軌跡との関係を示す図である。
図9】制御装置のブロック図である。
図10】制御装置の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両10はワンボックスタイプであり、乗降口12を開閉する乗降用ドア14を備え、図1において符号16はルーフパネル、符号18はフロントウインドガラス、符号20はリアウインドガラスを示している。
なお、以下の図面において、符号FRは車両10の前方を示し、符号INは車幅方向内側を示し、符号UPは上方を示す。
本実施の形態では、車両10の車幅方向の両側の前後に4つの乗降口12が設けられている。
前方の2つの乗降口12を開閉する乗降用ドア14は揺動式であり、後方の2つの乗降口12を開閉する乗降用ドア14は、車両10の前後方向に移動することで乗降口12を開放した開放位置と乗降口12を閉塞する閉塞位置となるスライドドア14である。なお、本実施の形態では、開放位置とは、乗降口12が全開された状態におけるスライドドア14の位置をいうものとする。
【0009】
まず、スライドドア14およびその案内機構について説明する。
図4図5に示すように、乗降口12の上縁はルーフサイドレール22で形成され、下縁はサイドシル24で形成され、前縁がBピラー26で形成され、後縁がCピラー28で形成されている。
また、乗降口12の上下前後の縁部に沿ってウェザーストリップ30が取着されている。
ルーフサイドレール22の内部には、ルーフサイドレール22に沿って車両前後方向に延在するアッパーレール32(図3(A)参照)が収容され、ルーフサイドレール22の外面にはアッパーレール32の全長にわたって延在するレール口34Aがアッパーレール32に沿って開口されている。
サイドシル24の内部には、サイドシル24に沿って車両前後方向に延在する不図示のロアレールが収容され、サイドシル24の外面にはロアレールの全長にわたって延在するレール口34Bがロアレールに沿って開口されている。
スライドドア14の車幅方向内側の上縁部には、車幅方向内側に突出するアッパーアーム36が設けられ、アッパーアーム36の先端に設けられたアッパーローラ38(図3(A)参照)がアッパーレール32に回転可能に支持されている。
スライドドア14の車幅方向内側の下縁部には、車幅方向内側に突出するロアアーム40が設けられ、ロアアーム40の先端に設けられた不図示のロアローラがロアレールに回転可能に支持されている。
【0010】
したがって、スライドドア14は、アッパーローラ38、アッパーレール32、および、ロアローラ、ロアレールを介して車両10の前後方向に移動可能に支持されている。
なお、図3(A)に示すように、アッパーレール32は、前端寄りの部分を除く部分が車両前後方向と平行に延在する直線部32Aとなっており、前端寄りの部分が車両前方に至るにつれて車幅方向内側に変位する傾斜部32Bとなっている。なお、ロアレールもアッパーレール32と同様に直線部、傾斜部を有している。
したがって、スライドドア14を閉塞位置(図3(E))から開放位置(図3(A))に移動させる際には、閉塞位置にあるスライドドア14が後方に移動することで、スライドドア14は、いったん各ローラが傾斜部32Bの傾斜に沿って車幅方向外側に変位しつつ後方に移動する。次いで、車幅方向外側に変位したスライドドア14は、アッパーローラ38およびロアローラが直線部32Aに案内されることで後方に移動しやがて開放位置(図3(A))に到達する。
スライドドア14を開放位置から閉塞位置に移動させる際には、上記と逆の順番でスライドドア14が移動する。
【0011】
さらに、スライドドア14には、後述する防雨板56のガイド72に当接する当接部42が設けられている。
当接部42は、アッパーアーム36の中間部から前方に突出する突出片3602の先端から上方に突出する第1ピン42Aと、スライドドア14の後部寄りの箇所から突設されたアーム44に設けられた上方に突出する第2ピン42Bとを含んで構成されている。
図3(A)に示すように、スライドドア14の開放位置において、平面視した状態で第1ピン42Aおよび第2ピン42Bは、スライドドア14の前縁よりも後方に位置しており、スライドドア14を開放した際に、第1ピン42Aおよび第2ピン42Bがスライドドア14で隠され外観性の向上が図られている。
また、図4図5に示すように、アッパーレール32のレール口34Aの端部、具体的には、ルーフサイドレール22の箇所に、スライドドア14の閉塞位置で第1ピン42Aおよび突出片3602を収容する収容凹部46が設けられている。
【0012】
図7に示すように、車両10の屋根部48は、ルーフパネル16と、ルーフパネル16の下方に設けられ車室内の上部を仕切るヘッドライニング50とを含んで構成されている。
乗降口12Aを形成するルーフサイドレール22は、車両10の上下方向において、ルーフパネル16とヘッドライニング50との間に位置している。
【0013】
本発明の防雨板装置が後方の2つの乗降口12にそれぞれ適用されており、それら防雨板装置の構成は左右対称であり、基本構成が同一であるため、右後方の乗降口12Aに設けられた防雨板装置について説明する。
図2(A)、(B)に示すように、防雨板装置52は、ハウジング54と、防雨板56と、ばね58と、ストッパ60と、収納用移動機構62とを含んで構成されている。
ハウジング54は防雨板56および収納用移動機構62を収容するもので、ハウジング54は中空状を呈している。
ハウジング54は、図7に示すように、乗降口12Aの上方の屋根部48に配置され、詳細には、ルーフサイドレール22の車幅方向内側でヘッドライニング50とルーフパネル16との間の空間に配置されている。
ハウジング54の車幅方向外側の端部に、防雨板56が出没する開口5402が形成され、ルーフサイドレール22にはこの開口5402に対応した開口2202が形成されている。
【0014】
防雨板56は、図1(A)、図2(A)に示すように、ルーフサイドレール22の車幅方向内側でルーフパネル16とヘッドライニング50との間に位置する収納位置P1と、図1(B)、図2(B)に示すように、乗降口12の車幅方向外側に突出された使用位置P2との間で移動する。
より詳細には、防雨板56は、回転軸66を中心に収納位置P1と使用位置P2との間で揺動可能に設けられ、回転軸66は、平面視した状態で収納位置P1に位置する防雨板56の輪郭の内側に位置する。
回転軸66は、ハウジング54を介して車体に固定されている。
使用位置P2では防雨板56は乗降口12Aから車幅方向外側に突出し、乗降口12Aから乗り降りする乗員に雨が当たらないように機能し、収納位置P1では防雨板56はハウジング54に収容される。
【0015】
図6(A)、(B)に示すように、防雨板56は、板金製または合成樹脂製である。
防雨板56は、基板68と、切り換え板70とを含んで構成されている。
それら基板68と切り換え板70について、防雨板56が使用位置P2に位置した状態で説明する。
基板68は、ほぼ矩形状の底板部6802と、底板部6802の前縁から起立する前起立板部6804と、底板部6802の後縁から起立する後起立板部6806と、底板部6802の車幅方向内縁から起立する内側起立板部6808と、底板部6802の車幅方向外縁から起立する外側起立板部6810とを備えている。このように底板部6802の外縁の全周に起立板6804、6806、6808、6810を設けることで、使用時に防雨板56上に降った雨水が防雨板56の外側にこぼれないように図られている。
後起立板部6806は、車幅方向に直線状に延在する第1直線部6806Aと、第1直線部6806Aの後端に続き車両10の後方に延在する湾曲部6806Bと、湾曲部6806Bの後端に続き車幅方向に延在する第2直線部6806Cとを有している。
【0016】
また、底板部6802の車両10の前後方向の中間部で車幅方向外側の端部に、車幅方向に沿って延在する凸部6820が形成されている。
また、凸部6820の車両前方の箇所および凸部6820の車両後方の箇所に排水孔6822A、6822Bがそれぞれ貫通形成されている。
切り換え板70は、2つの排水孔6822A、6822Bの一方を閉塞し、他方を開放するものである。
切り換え板70は、凸部6820上に配置される中央部7002と、中央部7002の両側から屈曲され排水孔6822A、6822Bの開閉を選択的に可能とした端部7004とを有している。
切り換え板70は、中央部7002に連結され凸部6820の長溝6824に挿通された軸7006と、凸部6820の下面において軸7006の下端に着脱可能に取着された摘み7008とを有し、摘み7008を持って切り換え板70を車両10の前後方向に移動させることにより、排水孔6822A、6822Bを選択的に開放するように構成されている。
【0017】
図8に示すように、車両10の側方に他の車両10Aが並列に駐車し、車両10と他の車両10Aとの間の空間が狭い場合、乗降口12から降車した乗員は、矢印Aで示すように車両前方に向かって移動するか、矢印Bで示すように車両後方に移動するかの何れか一方となる。
したがって、乗員が矢印Aに沿って移動する場合は、切り換え板70により車両前方の排水孔6822Aを閉塞し、車両後方の排水孔6822Bからの排水を許容した状態とすれば、防雨板56から排水される雨水が乗員にかかりにくくなる。
また、乗員が矢印Bに沿って移動する場合は、切り換え板70により車両後方の排水孔6822Bを閉塞し、車両前方の排水孔6822Aからの排水を許容した状態とすれば、防雨板56から排水される雨水が乗員にかかりにくくなる。
【0018】
また、図3(A)から(E)、図6(A)に示すように、ガイド72は、後起立板部6806の第1直線部6806Aと湾曲部6806Bと第2直線部6806Cとで構成されている。
後述するアクチュエータ74により防雨板56が使用位置P2から収納位置P1に移動する速度に比べて速い速度でスライドドア14が開放位置から閉塞位置に移動された場合、ガイド72は当接部42に当たり、スライドドア14の移動に連動させて防雨板56を揺動させ、スライドドア14の閉塞位置で防雨板56を収納位置P1とするものである。
なお、第1直線部6806Aは、図3(A)に示すように、防雨板56の使用位置P2においてスライドドア14の前端との干渉を防止するため、第2直線部6806Cに比べて車両前方に変位している。
【0019】
図2(B)に示すように、ばね58は、防雨板56を使用位置P2に常時付勢している。
本実施の形態では、ばね58は、ねじりばね58で構成されており、ねじりばね58の一端がハウジング54に固定され、他端が防雨板56の内側起立板部6808に固定されている。
【0020】
また、防雨板56の底板部6802の下面で車幅方向内側の箇所に突起6830(図2(A)参照)が下方に突設されている。
収納用移動機構62は、アクチュエータ74と、ピニオン76と、ラック78と、当接部42と、ガイド72とを含んで構成されている。
図2(A)、(B)に示すように、収納用移動機構62は、ストッパ60を、防雨板56を収納位置P1に位置決めする収納ストッパ位置ST1と、防雨板56を使用位置P2に位置決めする使用ストッパ位置ST2との間で移動させるものである。
アクチュエータ74は、本実施の形態では、モータ74Aで構成され、ピニオン76はモータ74Aの出力軸に取着されている。
ラック78は、回転軸66を中心とした円弧状を呈している。
ピニオン76の両側に位置するラック78の箇所に、ラック78の移動を案内するガイド78Aが設けられている。
ラック78の先端に、使用位置P2から収納位置P1に向かう方向から防雨板56に当接し防雨板56を使用位置P2および収納位置P1に位置決めするストッパ60が設けられている。
本実施の形態では、ストッパ60は、防雨板56の突起6830に当接するように設けられている。
【0021】
防雨板56は、スライドドア14の閉塞位置で、図2(A)に示すように、ハウジング54に収納された収納位置P1となり、すなわち、ヘッドライニング50とルーフパネル16との間に収納される。
また、防雨板56は、収納位置P1において、乗降口12Aを閉塞したスライドドア14により隠される。
また、防雨板56の収納位置P1は、ストッパ60、ラック78、ピニオン76、モータ74Aを介して保持される。
【0022】
また、防雨板56はばね58により使用位置P2方向に常時付勢されている。そのため、スライドドア14が閉塞位置から開放位置に移動し、後述する制御装置80によるモータ74Aの正転によりピニオン76を介してラック78、ストッパ60が揺動すると、防雨板56はストッパ60の揺動に追従して揺動し、図2(B)に示すように、ストッパ60の使用ストッパ位置ST2で防雨板は使用位置P2となり、防雨板56の使用位置P2はストッパ60により保持される。
この際、使用位置P2となった防雨板56により、乗員が乗降口12Aから乗り降りする際、雨にあたりにくくなる。
【0023】
また、スライドドア14が開放位置から閉塞位置に移動し、後述する制御装置80によるモータ74Aの逆転によりピニオン76を介してラック78、ストッパ60が揺動すると、防雨板56はスライドドア14に干渉することなくストッパ60の揺動に追従して揺動し、図2(A)に示すように、ストッパ60の収納ストッパ位置ST1で防雨板56は収納位置P1となり、防雨板56の収納位置P1はストッパ60により保持される。
また、図3(A)から(E)に示すように、スライドドア14が急激に開放位置から閉塞位置に移動すると、第1ピン42Aおよび第2ピン42Bがガイド72に当接することで、防雨板56はスライドドア14の移動に伴って使用位置P2から収納位置P1に強制的に移動される。
この場合、ストッパ60は、使用位置P2から収納位置P1に向かう方向から防雨板56に当接しているため、ストッパ60は突起6830から離れ、防雨板56はストッパ60に干渉することなく使用位置P2から収納位置P1となる。すなわち、スライドドア14が急激に開放位置から閉塞位置に移動されても収納用移動機構62および防雨板56に無理な力が加わらず、収納用移動機構62および防雨板56を損傷することはない。
【0024】
また、回転軸66は、平面視した状態で収納位置P1に位置する防雨板56の輪郭の内側に位置しているため、防雨板56が収納位置P1と使用位置P2との間で揺動する際に必要となるスペースが最小限で済み、防雨板装置52のコンパクト化を図る上で有利となる。
【0025】
また、収納用移動機構62は、ストッパ60を、防雨板56を収納位置P1に位置決めする収納ストッパ位置ST1と防雨板56を使用位置P2に位置決めする使用ストッパ位置ST2との間で移動させるアクチュエータ74を含んで構成されている。
したがって、防雨板56の収納位置P1および使用位置P2への移動を円滑に確実に行う上で有利となる。
【0026】
また、収納用移動機構62は、スライドドア14に設けられた当接部42と、防雨板56に設けられ開放位置から閉塞位置に向かうスライドドア14の移動時に当接部42に当接しスライドドア14の閉塞位置で防雨板56を収納位置P1に位置させるガイド72とを含んでいる。
したがって、スライドドア14により防雨板56が強制的に使用位置P1から収納位置P2に戻された場合であってもスライドドア14が当接部42を介して防雨板56のガイド72に当接するため、スライドドア14の損傷を防止する上で有利となる。
【0027】
次に、モータ74Aの制御を行う制御装置80について図9を参照して説明する。
制御装置80は、システム起動スイッチ82と、システムメインスイッチ84と、雨滴センサ86と、ドア開閉スイッチ88と、モータ回転角度センサ90と、ECU92とを含んで構成されている。
システム起動スイッチ82は、車室内の適宜箇所に設けられ、車両10の始動の有無、すなわち、イグニッションスイッチあるいはパワースイッチのオン、オフに拘わらず、防雨板56装置52の作動を可能な状態とするためにオン操作されるスイッチである。したがって、イグニッションスイッチがオフ状態であってもシステム起動スイッチ82をオンにすることで、制御装置80を構成する各部の作動が可能な状態となる。
システムメインスイッチ84は、制御装置80の動作モードを以下の3つのモードに切り換えるためのスイッチであり、例えば、それら3つのモードを切り換えるシーソースイッチで構成されている。
1)マニュアルモード
天候によらず強制的に防雨板56を収納位置P1から使用位置P2に移動させるモードである。なお、マニュアルモードの動作説明については省略する。
2)オートモード
後述するように雨天の場合に自動的に防雨板56を収納位置P1から使用位置P2に移動させ、また、使用位置P2から収納位置P1からに移動させるモードである。
3)オフモード
防雨板56を収納位置P1に収納させたまま移動させないモードである。
【0028】
雨滴センサ86は、車体に設けられ、降雨状態であるか否かを検出する。
ドア開閉スイッチ88は、車体に設けられ、スライドドア14が開放位置にあるか否かを検出する。
【0029】
モータ回転角度センサ90は、モータ74Aの回転角度を検出するものである。
本実施の形態では、モータ74Aによりピニオン76、ラック78を介してストッパ60を移動させることで防雨板56を移動させている。
そのため、モータ74Aの回転角度は、ストッパ60の収納ストッパ位置ST1と使用ストッパ位置ST2との間におけるストッパ60の位置を示すと共に、モータ74Aの回転角度は、収納位置P1と使用位置P2との間における防雨板56の位置も示している。
したがって、モータ74Aの回転角度に基いて防雨板56の位置が特定されることになる。言い換えると、モータ74Aの回転角度が0度であれば、防雨板56の位置が収納位置P1であり、モータ74Aの回転角度が防雨板56の最大送り出し位置に相当する値であれば、防雨板56の位置が使用位置P2である。
モータ回転角度センサ90は、モータ74Aに設けられたエンコーダで構成され、モータ74Aとしてサーボモータを用いた場合は、サーボモータの内部に組み込まれたエンコーダで構成される。
【0030】
ECU92は、CPU、制御プログラム等を格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、上述した各スイッチ、各センサ等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
CPUが前記の制御プログラムを実行することにより、ECU92は、システム起動スイッチ82、システムメインスイッチ84、雨滴センサ86、ドア開閉スイッチ88、モータ回転角度センサ90の検出結果に基いてモータ74Aの制御を行う。
また、ECU92は、所定時間が経過したか否かを計時するタイマ94として機能する。ここで、所定時間は、乗員がスライドドア14を開けてから乗車し終わるまでに必要な時間以上、あるいは、乗員がスライドドア14を開けてから降車し終わるまでに必要な時間以上の時間として設定される。
【0031】
次に、図10のフローチャートを参照して制御装置80の動作について説明する。
まず、ECU92は、システム起動スイッチ82がオンされているか否かを判定する(ステップS10)。
システム起動スイッチ82がオンされていなければ、ECU92はステップS10に戻る。
システム起動スイッチ82がオンされていれば、ECU92は、システムメインスイッチ84がオンされたか否かを判定する(ステップS12)。
システムメインスイッチ84がオンされていなければ、ECU92はステップS10に戻る。
システムメインスイッチ84がオンされていれば、ECUは、雨滴センサ86により降雨状態が検出されたか否かを判定する(ステップS14)。詳細には、雨滴センサ86により所定値以上の雨量が検出されたか否かを判定する。
降雨状態が検出されなければ、ECU92はステップS10に戻る。
降雨状態が検出されたならば、ECU92はドア開閉スイッチ88によりスライドドア14が開放位置にあるか否かを検出する(ステップS16)。
ECU92は、スライドドア14が開放位置でなければ、ステップS10に戻る。
スライドドア14が開放位置であれば、ECU92は、タイマ94に所定時間を設定して計時動作を開始させる(ステップS18)。
【0032】
次いで、ECU92は、システム起動スイッチ82がオンされているか否かを判定する(ステップS20)。
システム起動スイッチ82がオンされていれば、ECU92はシステムメインスイッチ84がオンされているか否かを判定する(ステップS22)。
なお、本実施の形態では、システム起動スイッチ82のオン状態とは、前述した制御装置80がオートモードに設定されていることを示し、システム起動スイッチ82のオフ状態とは、前述した制御装置80がオフモードに設定されていることを示す。
システムメインスイッチ84がオンされていれば、ECU92は、タイマ94の計時動作により所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS24)。すなわち、ステップS24では、乗員の乗降が終了するに足る時間が経過したか否かを判定する。
所定時間が経過していなければ、ECU92は、ドア開閉スイッチ88によりスライドドア14が開放位置にあるか否かを検出する(ステップS26)。
スライドドア14が開放位置であれば、ECU92は、モータ回転角度センサ90の検出結果に基いて、防雨板56が使用位置P2にあるか否かを判定する(ステップS28)。
防雨板56が使用位置P2に位置していなければ、ECU92は、モータ74Aの回転量を制御して防雨板56を使用位置P2まで移動させ(ステップS30)、ステップS20に戻り、ステップS20,S22、S24,S26、S28の処理が繰り返される。
一方、ステップS28で防雨板56が使用位置P2に位置していれば、ECU92は、ステップS20に戻り、ステップS20,S22、S24,S26、S28の処理が繰り返される。
【0033】
上記のステップS20,S22、S24,S26、S28の処理が繰り返される過程で、ステップS24の判定結果が肯定であれば、すなわちタイマ94の計時動作により所定時間が経過したと判定された場合は、ECU92は、モータ回転角度センサ90の検出結果に基いて、防雨板56が収納位置P1にあるか否かを判定する(ステップS32)。
防雨板56が収納位置P1になければ、ECU92は、モータ74Aの回転量を制御して防雨板56を収納位置P1まで一定速度で移動させ(ステップS34)、ステップS20に戻り、ステップS20,S22,S24、S26、S32の処理を繰り返す。
また、ステップS32で防雨板56が収納位置P1にあれば、ECU92は、モータ74Aを停止させ動作を終了する。
【0034】
また、上記のステップS20,S22、S24,S26、S28の処理が繰り返される過程で、ステップS26の判定結果が否定であれば、すなわちスライドドア14が開放位置から閉塞位置に向かって移動されている場合は、ステップS32の判定が否定であれば、ECU92は、モータ74Aの回転量を制御して防雨板56を収納位置P1まで一定速度で移動させ(ステップS34)、ステップS20に戻り、降雨板56が収納位置P1に収納されるまで同様の処理を行なう。
【0035】
また、上記のステップS20,S22、S24,S26、S28の処理が繰り返される過程で、ステップS20,あるいは、ステップS22の判定結果が否定である場合は、ステップS32の判定が否定であれば、ECU92は、モータ74Aの回転量を制御して防雨板56を収納位置P1まで一定速度で移動させ(ステップS34)、ステップS20に戻り、降雨板56が収納位置P1に収納されるまで同様の処理を行なう。
【0036】
次に、防雨板56を収納位置P1に向けて移動させるステップS34の処理がなされているときに、乗員によりスライドドア14が防雨板56の移動速度よりも速い速度で閉じられ、スライドドア14により防雨板56が強制的に収納位置P1に戻された場合について説明する。
この場合、防雨板56は収納位置P1に戻されているものの、ストッパ60は収納ストッパ位置ST1に戻されていない。
このとき、ECU92は、モータ回転角度センサ90によるモータ74Aの回転角度に基いて、モータ74Aの回転角度がストッパ60の収納ストッパ位置ST1に対応する値に到達するまでモータ74Aを回転制御する。
したがって、スライドドア14により防雨板56が強制的に収納位置P1に戻されたとしても、ストッパ60が使用ストッパ位置ST2と収納ストッパ位置ST1との間で停止することなく、ストッパ60が収納ストッパ位置ST1まで戻されるため、次回の防雨板56の動作に何ら影響を与えることがない。
【0037】
なお、本実施の形態では、モータ74Aを用いて防雨板56を使用位置P2と収納位置P1との間で移動させたが、モータ74Aを省略し、ばね58の付勢力により防雨板56を収納位置P1から使用位置P2に移動させ、スライドドア14により防雨板56を使用位置P2から収納位置P1に移動させることも可能である。
この場合、非降雨時のように防雨板56を使用する必要がないときは、スライドドア14を開放位置に移動させても防雨板56を収納位置P1に留めることが好ましい。そのため、電磁ソレノイドなどのアクチュエータによって防雨板56にストッパを係脱させることで、防雨板56の収納位置P1から使用位置P2への移動の許容、禁止を制御するようにすればよい。
【符号の説明】
【0038】
10 車両
12 乗降口
14 乗降用ドア(スライドドア)
16 ルーフパネル
50 ヘッドライニング
52 防雨板装置
56 防雨板
58 ばね
60 ストッパ
62 収納用移動機構
66 回転軸
72 ガイド
74 アクチュエータ
P1 収納位置
P2 使用位置
ST1 使用ストッパ位置
ST2 収納ストッパ位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10