特許第6623827号(P6623827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623827
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】車両用ピラー構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20191216BHJP
【FI】
   B62D25/04 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-33261(P2016-33261)
(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公開番号】特開2017-149258(P2017-149258A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】寺田 真
(72)【発明者】
【氏名】豊田 大
(72)【発明者】
【氏名】山田 毅典
(72)【発明者】
【氏名】竹市 親史
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−273057(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0248525(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0089215(US,A1)
【文献】 特開2017−114410(JP,A)
【文献】 特開2017−149257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
B60R 1/00− 1/04, 1/08− 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラスの車両幅方向外側に設けられ、少なくとも一部が透明樹脂によって中空の柱状に形成されると共に、車両前方向に対して車両幅方向外側へ60°傾斜した方向に透過させた透過光と、フロントガラスを透過した透過光との角度差が0.55°以下とされたフロントピラーを有する車両用ピラー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ピラー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フロントピラーを構成するフロントピラーフレーム内に透明樹脂製の透明材が設けられた構成が開示されており、運転者が透明材を介して車室外を視認することができる構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−273057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載された技術では、フロントガラスを透過した透過光と透明材(フロントピラー)を透過した透過光との角度差が考慮されていない。このため、上記透過光の角度差が大きい場合、障害物を視認しにくくなり、障害物の視認性能を向上させる観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、障害物の視認性能を向上させることができる車両用ピラー構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車両用ピラー構造は、フロントガラスの車両幅方向外側に設けられ、少なくとも一部が透明樹脂によって中空の柱状に形成されると共に、車両前方向に対して車両幅方向外側へ60°傾斜した方向に透過させた透過光と、フロントガラスを透過した透過光との角度差が0.55°以下とされたフロントピラーを有する。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車両用ピラー構造では、フロントガラスの車両幅方向外側には、少なくとも一部が透明樹脂によって形成されたフロントピラーが設けられている。これにより、運転者から見てフロントピラーの向こう側の障害物を視認することができる。
【0008】
また、車両前方向に対して車両幅方向外側へ60°傾斜した方向にフロントピラーを透過させた透過光と、フロントガラスを透過した透過光との角度差が0.55°以下とされている。これにより、車両前方向に対して車両幅方向外側へ60°傾斜した方向にフロントピラーを透過させた透過と、フロントガラスを透過した透過光との角度差が0.55°よりも大きい場合と比較して、光の屈折によって障害物が視認できなくなる事態を回避することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上、説明したように、本発明に係る発明によれば、障害物の視認性能を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る車両用ピラー構造が適用された車両を上方から見た状態を模式的に示す平面図である。
図2】実施形態に係る車両用ピラー構造が適用されたフロントピラーの平断面を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態に係る車両用ピラー構造について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印RHは車両右側を示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、進行方向を向いた場合の左右を示すものとする。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用ピラー構造が適用された車両10の前部には、図示しない運転席用の車両用シートが配設されており、この車両用シートには、運転者Pが着座している。なお、図1では、説明の便宜上、運転者Pを実線で図示している。
【0013】
車両用シートよりも車両前方には、フロントガラス(フロントウインドシールドガラス)16が設けられている。フロントガラス16は、車室内側と車室外側とを隔てる透明の窓部材であり、側面視で車両上方へ向かうにつれて車両後方側へ傾斜されている。フロントガラス16の上端部は、ルーフ18の前端部において、フロントヘッダ20に接続されている。また、フロントガラス16の下端部は、フード22の後端部と車両前後方向に対向して配置されており、車両幅方向に延在されたカウル24に接続されている。
【0014】
ここで、本実施形態のフロントガラス16は、一定の板厚で形成されており、フロントガラス16の車両幅方向中間部分が車両前方側へ凸となるように緩やかな湾曲形状とされている。そして、このフロントガラス16の車両幅方向外側には、フロントピラー26が設けられている。
【0015】
フロントピラー26は、フロントガラス16の車両幅方向両側に配設されており、フロントガラス16に沿って車両上下方向に延在されている。また、フロントピラー26はそれぞれ、車両上方へ向かうにつれて車両後方側へ傾斜されている。以下、運転席に近い右側のフロントピラー26について説明するが、左側のフロントピラー26も同様の構成とされている。
【0016】
図2に示されるように、フロントピラー26は、透明な樹脂で形成されている。本実施形態では一例として、可視光の透過率が30%以上の樹脂によってフロントピラー26が形成されている。また、本実施形態のフロントピラー26は、ピラーインナパネル28とピラーアウタパネル30とを含んで構成されており、閉断面32を有する中空の柱状に形成されている。
【0017】
ピラーインナパネル28は、車両内側に配置されており、透明な樹脂によって形成されている。また、ピラーインナパネル28は、車両後方側かつ車両幅方向内側に凸となるように緩やかに湾曲されたインナ側基部28Aを備えている。そして、このインナ側基部28Aの車両幅方向内側の端部から車両幅方向外側へインナ側内壁部28Bが延出されており、インナ側基部28Aの車両幅方向外側の端部から車両前方側へインナ側外壁部28Cが延出されている。ここで、ピラーインナパネル28のインナ側基部28Aは、略一定の厚みで形成されており、本実施形態では一例として5mmの板厚で形成されている。
【0018】
一方、ピラーアウタパネル30は、ピラーインナパネル28と対向して車両外側に配置されており、車両前方側かつ車両幅方向外側に凸となるように緩やかに湾曲されたアウタ側基部30Aを備えている。そして、このアウタ側基部30Aの車両幅方向内側の端部から車両後方側へアウタ側内壁部30Bが延出されており、アウタ側基部30Aの車両幅方向外側の端部から車両幅方向内側へアウタ側外壁部30Cが延出されている。また、ピラーアウタパネル30のアウタ側基部30Aは、略一定の厚みで形成されており、本実施形態では一例として5mmの板厚で形成されている。
【0019】
そして、ピラーインナパネル28のインナ側内壁部28Bとピラーアウタパネル30のアウタ側内壁部30Bとが図示しない接着剤などによって接合されている。また、ピラーインナパネル28のインナ側外壁部28Cとピラーアウタパネル30のアウタ側外壁部30Cとが図示しない接着剤などによって接合されている。このようにしてフロントピラー26が形成されている。なお、本実施形態では一例として、ピラーインナパネル28及びピラーアウタパネル30の屈折率が1.5とされている。
【0020】
ピラーインナパネル28のインナ側内壁部28Bには、接着剤34が塗布されており、この接着剤34によってフロントピラー26とフロントガラス16とが接合されている。なお、接着剤34は、伸縮性を有しており、気温の変化に伴うフロントピラー26とフロントガラス16との伸縮差を吸収できるように構成されている。また、接着剤34の車両幅方向外側には、モールディング36が配設されており、このモールディング36によってフロントピラー26とフロントガラス16との間の隙間が埋められている。
【0021】
フロントピラー26の車両幅方向外側の端部には、帯状のステンレス鋼等を折り曲げて形成されたリテーナ38が設けられており、リテーナ38は平断面視で車幅方向外側且つ後側へ開口された略U字状に形成されている。そして、リテーナ38の底壁が、インナ側外壁部28C及びアウタ側外壁部30Cの少なくとも一方に図示しないネジ等の締結部材によって固定されている。
【0022】
リテーナ38には、ドアシール40が装着されている。ドアシール40は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の弾性部材で形成されている。これにより、ドアシール40が、リテーナ38を介してフロントピラー26に保持されると共に、サイドドアガラス42の前端部がドアシール40を介してフロントピラー26に保持される構成になっている。
【0023】
次に、フロントガラス16を透過させた透過光と、フロントピラー26を透過させた透過光との角度差について説明する。図1に示される透過光L1は、車両前方向に対して車両幅方向外側へ60°傾斜した方向にフロントピラー26を透過させた透過光を示している。また、透過光L2は、車両前方向に対して車両幅方向外側へ60°傾斜した方向にフロントガラス16を透過させた透過光を示している。
【0024】
ここで、本実施形態では、透過光L1と透過光L2との角度差θが0.55°以下となっている。この角度差θは、フロントピラー26の材質(屈折率)、板厚及び曲率半径などを変化させることによって調節されている。
【0025】
以下、透過光L1と透過光L2との角度差θが0.55°である場合に視認可能な障害物の大きさについて考える。ここで、障害物Bは、運転者Pに対してフロントピラー26の向こう側に配置されているものとし、フロントピラー26から障害物Bまでの距離が10mとされている。また、一例として運転者Pの瞳孔間距離Dは50mmとされており、車両前方向に対して車両幅方向外側へ60°傾斜した方向を見ている。さらに、運転者Pの左目は、フロントガラス16を通して障害物Bへ向けられており、運転者Pの右目がフロントピラー26を通して障害物Bへ向けられた状態となっている。
【0026】
図3中の破線L3は、透過光L1に対して瞳孔間距離D(50mm)だけ車両幅方向外側へ離間した位置に透過光L1と平行に引いた仮想線である。なお、フロントガラス16を透過した透過光L1は、透過前の光軸に対して僅かに屈折するが、図2では直線で図示している。また、説明の便宜上、障害物Bの大きさを誇張して描いている。
【0027】
図1では、透過光L1が障害物Bの接線とされているため、運転者Pの左目では障害物Bが視認できない状態となっている。一方、透過光L2は、フロントピラー26を透過することにより、透過光L1に対して0.55°だけ車両幅方向外側へ屈折している。この状態で、フロントピラー26から10m先の位置における透過光L1と透過光L2との間の幅Wを視認可能な障害物Bの大きさと捉えることができる。
【0028】
ここで、フロントピラー26から10m離れた位置における透過光L1と透過光L2との間の幅Wは、10m×tan(0.55)で計算され、約96mmとなる。このため、瞳孔間距離Dの50mmと合わせて146mm程度の大きさの障害物を視認することができることとなる。7歳児の頭部の大きさが146mm程度であるため、透過光L1と透過光L2との角度差を0.55°以下とすれば、運転者Pは、10m先に立っている7歳児の頭部を視認できることが分かる。
【0029】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0030】
本実施形態に係る車両用ピラー構造では、フロントガラス16の車両幅方向外側には、少なくとも一部が透明樹脂によって形成されたフロントピラー26が設けられている。これにより、運転者Pから見てフロントピラー26の向こう側に標識などの障害物Bがある場合でも、障害物Bを視認することができる。
【0031】
また、本実施形態では、車両前方向に対して車両幅方向外側へ60°傾斜した方向にフロントガラス16を透過させた透過光L1と、フロントピラー26を透過させた透過光L2との角度差θが0.55°以下とされている。これにより、角度差θが0.55°よりも大きい場合と比較して、より小さい障害物を視認することができる。例えば、障害物Bが10m先に置かれたロードコーン等であっても視認することができる、又はより視認しやすくなる。このようにして、障害物の視認性能を向上させることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態及び変形例に係る車両用ピラー構造について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、左右のフロントピラー26を同様の構成としたが、これに限定されず、左側のフロントピラー26を不透明な樹脂で形成してもよい。運転者Pから遠い左側のフロントピラー26による死角領域は、右側のフロントピラー26による死角領域よりも小さいため、左側のフロントピラー26を不透明とした場合であっても、一般的に障害物の視認性能への影響が少ない。
【0033】
また、上記実施形態のフロントピラー26は、ピラーインナパネル28とピラーアウタパネル30とを含んで構成されていたが、これに限定されない。例えば、中空で柱状のフロントピラー26を一体形成してもよく、中実で柱状のフロントピラーを形成してもよい。
【0034】
さらに、上記実施形態では、フロントピラー26を構成するピラーインナパネル28及びピラーアウタパネル30の両部材の全体を透明な樹脂によって形成したが、これに限定されない。例えば、ピラーインナパネル28のインナ側基部28Aのみを透明な樹脂によって形成し、インナ側内壁部28B及びインナ側外壁部28Cをより強度の高い不透明の樹脂材(例えば、炭素繊維入り強化プラスチックなど)で形成してもよい。ピラーアウタパネル30も同様である。
【0035】
さらにまた、本実施形態では、ピラーインナパネル28及びピラーアウタパネル30の板厚をそれぞれ5mmとしており、ピラーインナパネル28及びピラーアウタパネル30の屈折率をそれぞれ1.5としたが、これに限定されない。すなわち、車両前方向に対して車両幅方向外側へ60°傾斜した方向にフロントピラー26を透過させた透過光と、フロントガラス16を透過した透過光との角度差が0.55°以下となる条件であれば、板厚及び屈折率を異なる値に設定してもよい。
【符号の説明】
【0036】
16 フロントガラス
26 フロントピラー
L1 透過光
L2 透過光
θ 角度差
図1
図2