特許第6623829号(P6623829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623829
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】過熱保護装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/08 20060101AFI20191216BHJP
   H02H 7/20 20060101ALI20191216BHJP
   H02H 5/04 20060101ALN20191216BHJP
【FI】
   H03K17/08 C
   H02H7/20 D
   !H02H5/04
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-33521(P2016-33521)
(22)【出願日】2016年2月24日
(65)【公開番号】特開2017-152924(P2017-152924A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 太一
【審査官】 小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−287209(JP,A)
【文献】 特開2008−061180(JP,A)
【文献】 特開2008−172867(JP,A)
【文献】 特開2004−274911(JP,A)
【文献】 特開2014−160928(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101521369(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0168274(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/08
H02H 7/20
H02H 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源(400)から負荷(300)に供給される駆動電流をパルス幅変調により制御するスイッチング素子(11)と、
前記スイッチング素子の駆動を制御する駆動部(21)と、
前記スイッチング素子の温度を直接的あるいは間接的に検出する温度検出部(12,23)と、
前記温度検出部により検出された前記温度に基づいて前記駆動部の駆動方式を変更する保護回路部(22)と、を備え、
前記保護回路部は、温度に関する所定の閾値Aと、閾値Aよりも高く設定された閾値Bと、閾値Aよりも低く設定された閾値Cを予め有し、
前記温度検出部により検出された前記温度がA未満のとき、前記パルス幅変調による通常動作をさせ、
前記温度がA以上B未満のとき、前記スイッチング素子の自己発熱を抑制する第1発熱抑制動作をさせ、
前記温度がB以上のとき、前記スイッチング素子を停止するフルオフ動作をさせ、
前記温度がB以上の状態から低下してAを下回り、且つC以上のとき、前記スイッチング素子への通電による発熱を抑制する第2発熱抑制動作をさせ
前記第1発熱抑制動作は、前記スイッチング素子を常時オンにするフルオン動作であり、
前記保護回路部は前記温度が閾値A未満の状態からA以上に上昇するのに伴ってフルオン動作に移行する回数をカウントするカウンタ(22a)を備え、前記回数の増加にともなって、前記第1発熱抑制動作における駆動周波数を小さくする過熱保護装置。
【請求項2】
前記第1発熱抑制動作は、前記温度が高いほど、前記通常動作に較べて駆動周波数を小さくする動作である請求項1に記載の過熱保護装置。
【請求項3】
前記第1発熱抑制動作において、パルスにおける立ち上がりと立ち上がりを、前記通常動作に較べて急峻にする請求項1または2に記載の過熱保護装置。
【請求項4】
前記第2発熱抑制動作は、前記フルオフ動作を継続して前記スイッチング素子を停止する動作である請求項1〜のいずれか1項に記載の過熱保護装置。
【請求項5】
前記第2発熱抑制動作において、間欠的に前記通常動作が実行される請求項に記載の過熱保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス幅変調により負荷に流れる電流を制御する制御装置において、過熱を保護する過熱保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング素子に負荷が接続され、負荷に流れる電流をパルス幅変調(PWM)により制御する制御装置がある。PWM変調を利用した負荷の駆動では、スイッチング素子におけるスイッチング損失のため発熱することがわかっているが、異常な発熱を検出した際に負荷の駆動を停止するようなフェールセーフが通常行われる。
【0003】
しかしながら、例えば灯火負荷を駆動する際にスイッチング素子をフルオフ(すなわちデューティ比がゼロ)の状態にしてしまうと、ユーザーから見れば突然に消灯してしまうことになり不快感を与える虞がある。
【0004】
これを解決するため、特許文献1に記載の負荷駆動制御装置は、温度異常状態と判定した際に、スイッチング素子が通常の制御中であれば、スイッチング素子がフルオン固定状態になるような制御を行う。これにより、スイッチング損失に起因する発熱を抑制しつつ、負荷への通電も継続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−61180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の負荷駆動制御装置は、発熱の原因がスイッチング損失である場合にのみ効果を奏するものである。すなわち、この制御装置では、単一の閾値をもって正常の状態と異常状態とを判定するため、発熱の原因がスイッチング損失によるものではない場合には、フルオン駆動時に過電流が流れ、更なる発熱やスイッチング損失の損傷の原因となる虞がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、原因に応じた過熱保護を可能とする過熱保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示される発明は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。なお、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、電源(400)から負荷(300)に供給される駆動電流をパルス幅変調により制御するスイッチング素子(11)と、スイッチング素子の駆動を制御する駆動部(21)と、スイッチング素子の温度を直接的あるいは間接的に検出する温度検出部(12,23)と、温度検出部により検出された温度に基づいて駆動部の駆動方式を変更する保護回路部(22)と、を備え、保護回路部は、温度に関する所定の閾値Aと、閾値Aよりも高く設定された閾値Bと、閾値Aよりも低く設定された閾値Cを予め有し、温度検出部により検出された温度がA未満のとき、パルス幅変調による通常動作をさせ、温度がA以上B未満のとき、スイッチング素子の自己発熱を抑制する第1発熱抑制動作をさせ、温度がB以上のとき、スイッチング素子を停止するフルオフ動作をさせ、温度がB以上の状態から低下してAを下回り、且つC以上のとき、スイッチング素子への通電による発熱を抑制する第2発熱抑制動作をさせ、第1発熱抑制動作は、スイッチング素子を常時オンにするフルオン動作であり、保護回路部は温度が閾値A未満の状態からA以上に上昇するのに伴ってフルオン動作に移行する回数をカウントするカウンタ(22a)を備え、回数の増加にともなって、第1発熱抑制動作における駆動周波数を小さくする。
【0010】
これによれば、閾値A以上の温度ではスイッチング損失による発熱を懸念してスイッチング素子の自己発熱を抑制する動作を行わせることができる。そして、温度が閾値B以上になることは、温度上昇の原因としてスイッチング損失に起因する発熱でないことが懸念されるのでスイッチング素子への通電を停止する。さらに、通電停止により温度が低下しても、閾値Aよりも低温に設定された閾値C未満になるまでは通常動作に戻らず第2発熱抑制動作を実行するので、正常動作と第1発熱抑制動作との間にチャタリングを防止することができる。
【0011】
このように、この制御装置は、温度に対する動作を分ける閾値として、閾値A、閾値Bおよび閾値Cの3値を有するので、チャタリングを防止しつつ原因に応じた過熱保護を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態にかかる過熱保護装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】保護回路部の動作フローを示すフローチャートである。
図3】駆動信号の温度依存性を示すタイミングチャートである。
図4】変形例にかかる保護回路部の動作フローを示すフローチャートである。
図5】第2実施形態にかかる過熱保護装置の概略構成を示すブロック図である。
図6】保護回路部の動作フローを示すフローチャートである。
図7】駆動信号の温度依存性を示すタイミングチャートである。
図8】第3実施形態にかかる保護回路部の動作フローを示すフローチャートである。
図9】駆動信号の温度依存性を示すタイミングチャートである。
図10】第4実施形態にかかる過熱保護装置の概略構成を示すブロック図である。
図11】駆動信号のドライバビリティの変化を示す図である。
図12】第5実施形態にかかる過熱保護装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分に、同一符号を付与する。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0014】
(第1実施形態)
最初に、図1を参照して、本実施形態に係る過熱保護装置の概略構成について説明する。
【0015】
この過熱保護装置100は、負荷300を駆動するための駆動電流を制御する装置であり、図1に示すように、該制御用の命令を出力する制御部たるECU200と負荷300との間に介在している。
【0016】
本実施形態における過熱保護装置100は、電源400と負荷300との間に接続されたスイッチング素子11と、スイッチング素子11近傍に設けられた温度検出部12と、スイッチング素子11に駆動信号を出力してオンオフを制御する駆動部21と、駆動部21に対して過熱保護時の制御を指示する保護回路部22と、を備えている。本実施形態における過熱保護装置100は、スイッチング素子11および温度検出部12が含まれる素子モジュール10と、駆動部21および保護回路部22が含まれる回路基板20と、が別体で構成され、互いに配線で接続された構成をしている。
【0017】
スイッチング素子11は、駆動信号が入力されることによりオンまたはオフされる素子を採用することができ、例えばMOSFETやIGBTを採用することができる。図1にあってはMOSFETとして図示しているが、スイッチング素子11の種類は限定されるものではない。
【0018】
温度検出部12は、温度を電圧に変換するための素子であり、例えばサーミスタやPN接合ダイオードを採用することができる。本実施形態における温度検出部12はスイッチング素子11の近傍に設置され、少なくともスイッチング素子11の温度Tjを測定可能になっている。
【0019】
駆動部21は、ECU200から入力されるパルス幅変調(PWM)信号に基づいてスイッチング素子11に対して駆動信号(例えばゲート電圧)を出力している。
【0020】
保護回路部22は、温度検出部12により検出される温度に基づいて駆動部22に対してスイッチング素子11の駆動モードの変更を要求する部分である。保護回路部22には、温度に関する3つの閾値A、閾値B、閾値Cが予め記憶されており、温度検出部12により検出される温度と各閾値とを比較してスイッチング素子11の動作モードを決定する。なお、各閾値の大小関係は、C<A<Bである。
【0021】
次に、図2および図3を参照して、本実施形態にかかる過熱保護装置100の動作フロー、および、各閾値とスイッチング素子11の動作モードとの関係について説明する。
【0022】
まず、図2に示すように、ステップS101が実行される。ステップS101は、駆動部21がECU200からPWM信号を受け取り、このPWM信号に基づいたパルス信号を駆動信号として出力するステップである。具体的には、この駆動信号は、図3における時刻t1以前として示すように、ECU200によるPWM信号と同一のデューティ比および同一の周波数とされたパルス信号である。このように、PWM信号と同一のデューティ比および同一の周波数とされたパルス信号として、駆動部21から駆動信号が出力されるとき、これを通常動作と称する。ステップS101は、駆動部21がスイッチング素子11に対して通常動作をさせるステップである。
【0023】
次いで、ステップS102が実行される。ステップS102は、温度検出部12によりスイッチング素子11の温度Tjを検出するステップである。温度検出部12により検出される温度に対して一対一に対応する物理量、例えば電圧が保護回路部22に入力され、保護回路部22が温度Tjとして検出する。
【0024】
次いで、ステップS103が実行される。ステップS103は、保護回路部22が、温度Tjと閾値Aとを比較するステップである。例えば、図3における時刻t1以前であればTj<Aであるから、ステップS103はNO判定となりステップS101に戻る。すなわち、通常動作と温度Tjの検出を継続する。
【0025】
一方、時刻t1〜時刻t2のようにTj≧Aを満たすときステップS103はYES判定となり、ステップS104に進む。ステップS104は、保護回路部22が、温度Tjと閾値Bとを比較するステップである。例えば、時刻t1〜時刻t2であればTj<Bであるから、ステップS104はNO判定となりステップS105に進む。
【0026】
ステップS105は、保護回路部12が駆動部11に対して、駆動信号を常時Highにするように指示するステップである。これにより、駆動部11は、図3に示すように、スイッチング素子11が常時オンとなるフルオン状態になるよう、入力されるPWM信号に依存することなく常時Highの駆動信号を出力する。本実施形態において、フルオン動作は特許請求の範囲に記載の第1発熱抑制動作に相当する。スイッチング素子11がフルオンの状態ではスイッチング動作が行われないので、スイッチング損失に起因する発熱を抑制することができる。
【0027】
その後、ステップS103に戻って温度Tjと閾値Aとの比較が実行される。温度Tjの上昇がスイッチング損失に起因するものであればステップS105におけるフルオン動作の実行によりTjが低下するのでステップS103がNO判定になり得る。このような場合にはステップS101に戻り、スイッチング素子11は通常動作に移行する。
【0028】
一方、温度Tjの上昇がスイッチング損失に起因するものでなければ、図3における時刻t1以降のように、ステップS105におけるフルオン動作の実行によっても温度Tjが上昇を続ける虞がある。Tj≧Aが継続すればステップS103はYES判定となりステップS104が実行される。
【0029】
ステップS104においてTj<Bであれば再びステップS105に進んでフルオン動作を継続するが、温度Tjが上昇を続け、図3の時刻t2に示すようにTj≧Bを満たすとステップS104はYES判定となる。ステップS104がYES判定になるとステップS108に進む。ステップS108は、保護回路部22が駆動部11に対して、駆動信号を常時Lowにするように指示するステップである。これにより、駆動部11は、図3に示すように、スイッチング素子11が常時オフとなるフルオフ状態になるよう、入力されるPWM信号に依存することなく常時Lowの駆動信号を出力する。フルオフ動作では、スイッチング素子11への通電が停止され、言うまでもなくスイッチングも行われないので、電気的な発熱はない。
【0030】
次いで、ステップS109が実行される。ステップS109は、保護回路部22が、温度Tjと閾値Cとを比較するステップである。例えば、温度Tjが閾値C以上である場合(Tj≧C)は、ステップS109はYES判定となり、再びステップS108に戻ってフルオフ動作を継続する。フルオフ動作の継続によって温度Tjが低下せず、Tj≧Cが成立し続けるようであれば、スイッチング素子11の置かれた環境の環境温度が仕様温度を超えている虞があるため、その旨を運転者等に報知するようにシステムを構成することが好適である。
【0031】
一方、温度TjがCを下回ればステップS109はNO判定となり、再びステップS101に戻って通常動作を再開する。すなわち、本実施形態における過熱保護装置100は、温度TjがBに達した後は、Cを下回るまでフルオフ動作を継続する。そして、温度Tjが閾値Cを下回ればスイッチング素子11の動作モードを通常動作に復帰させる。なお、本実施形態では、温度TjがBに到達後にAまで低下しても通常動作を行うことなくフルオフ動作を継続する。このため、閾値Aを境界にしてフルオフ動作と通常動作とを頻繁に繰り返してしまうチャタリングを抑制することができる。
【0032】
なお、時刻t2〜時刻t3におけるフルオフ動作が特許請求の範囲に記載のフルオフ動作に相当し、時刻t3〜時刻t4のフルオフ動作は第2発熱抑制動作に相当する。すなわち、本実施形態における第2発熱抑制動作はフルオフ動作に等しい。
【0033】
以上記載したように、本実施形態における過熱保護装置100では、スイッチング素子11の温度Tjの温度上昇にともなって、閾値A以上であれば、スイッチング損失に起因する発熱を考慮して、動作モードを通常動作から第1発熱抑制動作、すなわちフルオン動作に移行する。また、さらに温度Tjが上昇して閾値B以上となるようであれば、環境温度が過剰に高温、あるいはスイッチングに依存しない通電による発熱であることを考慮してフルオフ動作に移行する。つまり、この過熱保護装置100は発熱原因に応じた過熱保護を可能にしている。
【0034】
(変形例)
第1実施形態では、ステップS105のフルオン動作の後ステップS103に戻る動作フローについて説明したが、閾値Cとの比較を行うステップを挿入しても良い。
【0035】
具体的には、図4に示すように、ステップS105が実行された後、ステップS106が実行される。ステップS106は、保護回路部22が、温度Tjと閾値Cとを比較するステップである。例えば、温度Tjが閾値Cを下回っている場合(Tj<C)は、ステップS106はNO判定となり、この動作フローは再びステップS101に戻って通常動作を継続する。
【0036】
なお、ステップS105においてスイッチング素子11がフルオン動作に入り、それに伴って温度Tjが閾値Cを下回るならば、温度Tjが閾値A以上となった原因はスイッチング損失にあると推察される。ステップS106の後、スイッチング素子11の駆動モードは通常動作に戻るが、運転者等に対して異常を報知するようにシステムを構成するとより好適である。
【0037】
一方、図3の時刻t1〜時刻t2のように、Tj≧Cを満たすときにはステップS106はYES判定となり、ステップS107に進む。ステップS107は、保護回路部22が、温度Tjと閾値Aとを比較するステップである。ここで、Tj<A、すなわちC≦Tj<AであればステップS107はNO判定となりステップS105に戻ってフルオン動作を継続する。一方、フルオン動作を経てもTj≧Aを満たす場合には、ステップS104に戻る。
【0038】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態およびその変形例と比較して第1発熱抑制動作の態様が異なる例について説明する。本実施形態における保護回路部22は、図5に示すように、スイッチング素子11の温度Tjが、閾値Aよりも低温の状態から閾値A以上の温度に昇温するに伴ってフルオン動作に移行する回数をカウントするカウンタ22aを有している。この過熱保護装置100は、カウンタ22aのカウントした回数Nに応じて第1発熱抑制動作における駆動信号を制御するものである。
【0039】
具体的な動作フローについて図6および図7を参照して説明する。なお、図6に示すステップS201〜ステップS204は、第1実施形態におけるステップS101〜ステップS104と同一であるからその説明を省略する。また、スイッチング素子11の温度Tjが閾値B以上である場合、すなわちステップS204がYES判定の場合の動作であるステップS208およびステップS209も、それぞれステップS108およびステップS109と同一であるから説明を省略する。
【0040】
例えば、図7における時刻t21〜時刻t22のように、スイッチング素子11の温度TjがステップS203においてYES判定とされ、ステップS204においてNO判定される場合(A≦Tj<B)において、ステップS205が実行される。ステップS205は第1実施形態におけるステップS105と同様に、保護回路部12が駆動部11に対して、駆動信号を常時Highにするように指示するステップである。つまり、スイッチング素子11はフルオン動作となる。
【0041】
次いで、ステップS206が実行される。ステップS206は、保護回路部22が、温度Tjと閾値Aとを比較するステップである。Tj≧Aを満たすときにはステップS206がYES判定となり、ステップS204に戻る。ここで温度Tjが閾値B以上となる場合には、発熱の原因はスイッチング損失ではないことが疑われるのでステップS208に進んでフルオフ動作となる。
【0042】
一方、Tj<Aを満たす場合には、ステップS206はNO判定となりステップS210に進む。ステップS210に進むことは、図7の時刻t21〜時刻t22に示すように、通常動作からフルオン動作に移行することによってスイッチング素子11の加熱が停止し、温度Tjが低下傾向に移行したことを意味している。そして、時刻t22においてTj<Aを満たすと、ステップS210に進む。
【0043】
ステップS210は、保護回路部22が、後述するカウント数Nに応じて駆動信号の周波数を低下させるように駆動部21に指示するステップである。具体的には、図7における時刻t24〜時刻t25または時刻t26以降のように、ECU200から駆動部21に入力されるPWM信号と駆動信号の一部のエッジを一致させず、一部のパルスに歯抜けを生じさせるように駆動信号を生成するように駆動部21に指示する。ステップS210により、例えば時刻t24〜時刻t25における駆動信号は通常動作に較べて周波数が1/2となっている。また、例えば時刻t26以降における駆動信号は通常動作に較べて周波数が1/3となっている。換言すれば、このステップは、パルスにおけるHigh期間の時間を変更することなくデューティ比を小さくするステップである。
【0044】
なお、本実施形態においては、初めてステップS210を実行する場合(N=0x00)では周波数を変更せず、ステップS211に進む。なお、後述するステップS213によってカウント数Nがインクリメントされる。
【0045】
ステップS211は、駆動部21が、ステップS210において変更された周波数を以って駆動信号を出力するステップである。これにより、図7における時刻t22〜時刻t23のように、駆動部21はスイッチング素子11のフルオン動作を解除してパルス動作に移行する。上記したように、初めてステップS210を経た後は駆動信号の周波数は通常動作と同一である。
【0046】
次いで、ステップS212が実行される。ステップS212は、保護回路部22が、温度Tjと閾値Aとを比較するステップである。図7における時刻t22〜時刻t23のように、Tj<Aを満たせばステップS212はNO判定であり、ステップS211に戻ってパルス動作を継続する。一方、パルス動作の間に発熱し、時刻t23のようにTj≧Aを満たすとステップS212はYES判定となり、ステップS213に進む。なお、ステップS212がYES判定になるのは、スイッチング損失がスイッチング素子11の過熱の原因である場合が推察される。
【0047】
ステップS213は、保護回路部22におけるカウンタ22aが上述のカウント数Nをインクリメントするステップである。ここでカウントアップされたカウント数Nに応じて、ステップS210においてパルス動作の周波数が決定される。ステップS213の後に再びステップS204に戻る。
【0048】
カウント数Nが大きくなることは、パルス動作による発熱量の増加と、フルオン動作による発熱量の減少とが繰り返される状態であることを意味している。このため、本実施形態のように、カウント数Nの増加に伴ってパルス動作の周波数を小さくすることにより、負荷を完全に停止させることなくスイッチング素子11の発熱量を可能な限り抑制することができる。例えば負荷が車載のライトである場合には、ライトを消灯してしまうことなく発熱量を抑制することができる。これによれば、運転者は、素子モジュール10の交換の際に、夜間であってもライトが消灯されてしまうこと無くディーラー等に持ち込むことができる。
【0049】
なお、図6においては、カウント数Nが1増加するごとにパルス動作の周波数を小さくするような例を示したが、周波数のカウント数Nに対する減少率は任意である。カウント数Nが2増加するごとに周波数を再設定しても良いし、減少率がカウント数Nに対して非線形に変化しても良い。また、所定のカウント数Nを超えた場合にはフルオフ動作に移行するようにしても良い。
【0050】
本実施形態において、ステップS205、ステップS206およびステップS210〜ステップS213を含むループに係る動作が、特許請求の範囲に記載の第1発熱抑制動作に相当する。ステップS208におけるフルオフ動作が特許請求の範囲に記載のフルオフ動作である。また、本実施形態における第2発熱抑制動作に相当する動作は、第1実施形態と同様にフルオフ動作を継続する動作である。
【0051】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態と比較して第1発熱抑制動作の態様が異なる例について説明する。なお、本実施形態における過熱保護装置100の構成要素は第1実施形態と同一であり制御方法のみが異なる。
【0052】
図8および図9を参照して、本実施形態にかかる過熱保護装置100の動作フローについて説明する。なお、図8に示すステップS301〜ステップS304は、第1実施形態におけるステップS101〜ステップS104と同一であるからその説明を省略する。また、スイッチング素子11の温度Tjが閾値B以上である場合、すなわちステップS304がYES判定の場合の動作であるステップS308およびステップS309も、それぞれステップS108およびステップS109と同一であるから説明を省略する。
【0053】
スイッチング素子11の温度TjがステップS303においてYES判定とされ、ステップS304においてNO判定される場合(A≦Tj<B)において、ステップS310が実行される。ステップS310は、保護回路部22が取得される温度Tjに応じて駆動信号の周波数を低下させるように駆動部21に指示するステップである。具体的には、図9における時刻t31以降のように、ECU200から駆動部21に入力されるPWM信号と駆動信号の一部のエッジを一致させず、一部のパルスに歯抜けを生じさせるように駆動信号を生成するように駆動部21に指示する。そして、ステップS311において、保護回路部22の指示に従って駆動部21がスイッチング素子11をパルス動作させる。
【0054】
本実施形態では、閾値Aよりも大きく閾値Bよりも小さい新たな閾値A1〜A3が設定されている。閾値A1〜閾値A3はA<A1<A2<A3<Bの関係にある。時刻t31以前はTj<AなのでステップS303がNO判定となり通常動作を行う。一方、時刻t31〜時刻t32ではA≦Tj<A1であるからステップS303はYES判定であり、ステップS310において駆動信号の周波数が通常駆動に対して1/2になるように調整される。なお、本実施形態おいて周波数を小さくするとは、パルスにおけるHigh期間の時間を変更することなくデューティ比を小さくすることを意味している。また、時刻t32〜時刻t33ではA1≦Tj<A2なので駆動信号の周波数が通常動作に対して1/3に調整されている。同様に、時刻t33以降ではA2≦Tj<A3なので駆動信号の周波数が通常動作に対して1/3に調整されている。図9に示すように、スイッチング素子11の駆動周波数が低下するほど素子11の温度Tjの増加割合も小さくなる。
【0055】
その後、ステップS303に戻る。ステップS310およびステップS311においてスイッチング素子11の駆動周波数が低下したことによって素子温度Tjが閾値Aを下回ればステップS303はNO判定となり通常動作に戻る。一方、周波数の低下によってもスイッチング素子11の温度がTj≧Bを満たしてしまう場合にはステップS308に進んでフルオフ動作となる。
【0056】
本実施形態における過熱保護装置100も、第2実施形態と同様に、負荷を完全に停止させることなくスイッチング素子11の発熱量を可能な限り抑制することができる。
【0057】
本実施形態において、ステップS310およびステップS311を含むループに係る動作が、特許請求の範囲に記載の第1発熱抑制動作に相当する。ステップS308におけるフルオフ動作が特許請求の範囲に記載のフルオフ動作である。また、本実施形態における第2発熱抑制動作に相当する動作は、第1実施形態と同様にフルオフ動作を継続する動作である。
【0058】
(第4実施形態)
本実施形態における過熱保護装置100は、図10に示すように、駆動部21が、駆動信号のドライバビリティを変更することのできるドライバビリティ変更部21aを有している。通常、駆動信号たるゲート電圧は、ラジオノイズを抑制するために、立ち上がり時間(Tr)と立ち下がり時間(Tf)を意図的に一定時間確保するように設定されている。ただし、TrおよびTfを長く設定するとスイッチング損失が増大する。すなわち、ラジオノイズの発生とスイッチング損失はトレードオフの関係にある。
【0059】
本実施形態における保護回路部22は、温度検出部12が検出する温度が閾値A以上となる場合において、図11に示すように、駆動信号のドライバビリティを変更し、TrおよびTfをより短くなるようにする。これによれば、スイッチング損失に起因する発熱量を抑制することができる。
【0060】
なお、本実施形態に係るドライバビリティ変更部21aは、スイッチング素子11の温度Tjが閾値A以上となる第1発熱抑制動作においてスイッチング動作が行われることが想定される第2および第3実施形態と組み合わせて実施すると効果的である。
【0061】
ドライバビリティ変更部21aの構成は、スイッチング素子11のゲート電極に接続されたチャージポンプへの充電電流値を変更するものを採用することができるが、この方法に限定されるものではない。ダンピング抵抗や容量を用いてTrおよびTfを調整しても良い。
【0062】
(第5実施形態)
上記した各実施形態では、動作フロー中において閾値A、閾値B、閾値Cと比較する温度について、スイッチング素子11の近傍に設置された温度検出部12によって検出された素子温度Tjを対象とする例について説明した。しかしながら、閾値A〜Cの比較対象としての温度は必ずしも素子温度Tjでなくても良い。
【0063】
図12に示すように、本実施形態における過熱保護装置110は、過熱保護装置110の置かれた環境の温度Taを検出する第2の温度検出部23を備えている。本実施形態における第2の温度検出部23は回路基板20に実装されている。なお、特許請求の範囲に記載の温度検出部とは、第〜第4実施形態において説明した、スイッチング素子11近傍の温度を検出する温度検出部または第2の温度検出部23、あるいはその両方を含むものである。環境温度Taを検出する第2の温度検出部23は、スイッチング素子11の温度を間接的に検出している。
【0064】
保護回路部22は、温度検出部12,23が検出する素子温度Tjあるいは環境温度Taに基づいて、例えば第1〜第4実施形態において説明した動作フローを実行する。閾値A〜Cの比較対象としての温度は、素子温度Tjを環境温度Taに変えても良いが、とくに閾値Bとの比較においては素子温度Tjを採用することが好ましい。これは、一般に環境温度Taは素子温度Tjよりも低いため、スイッチング素子11の熱破壊を防止するために安全側の温度を採用することが好ましいからである。
【0065】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0066】
上記した各実施形態において、温度TjあるいはTaが閾値Bに到達後、閾値Aを下回った後も閾値C未満に低下するまでは、第2発熱抑制動作として、フルオフ動作を継続する例について説明したが、フルオフ動作のみに限定されるものではない。例えば、フルオフ動作の後、温度TjあるいはTaが閾値Aと閾値Cとの間の温度領域にあるとき、間欠的に通常動作と同一のパルス動作を再開しても良い。このパルス動作により温度の低下速度が所定の速度よりも遅くなるならば、温度TjあるいはTaの過熱がスイッチング損失に起因する虞があるためフルオフ動作を継続することが好ましい。一方、通常動作と同一の間欠的なパルス動作を実行しても温度の低下速度が所定の速度よりも遅くならないならば、過熱の原因は環境にあることが想定されるので、温度TjあるいはTaが閾値Cに至る前に通常動作を再開するようにしても良い。
【0067】
また、保護回路部22が、温度TjあるいはTaとして閾値A以上の温度が検出されたこと、および、閾値B以上の温度が検出されたことをECU200あるいは外部の表示装置等に報知するようにすると良い。これによれば、ECU200はこの報知を受けてダイアグ動作を実行することができる。また、運転者は、この報知を修理の対応などに活用することができる。
【0068】
また、上記した各実施形態では、スイッチング素子11と温度検出部12とが配置された素子モジュール10と、駆動部21と保護回路部22とが配置された回路基板20とを別体として備える過熱保護装置100,110について説明したが、スイッチング素子11、温度検出部12,23、駆動部21、および保護回路部22が同一基板に形成されていても良い。
【0069】
また、保護回路部22はECU200の内部に構成されていても良い。このような構成の場合には、温度検出部12,23により検出された温度の情報はECU200に入力され、温度TjあるいはTaに基づいた指示がECU200から駆動部21に出力される。
【符号の説明】
【0070】
10…素子モジュール,11…スイッチング素子,12…温度検出部,20…回路基板,21…駆動部,22…保護回路部,23…第2の温度検出部,100,110…過熱保護装置,200…ECU,300…負荷,400…電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12