特許第6623863号(P6623863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623863
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体回路
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/329 20060101AFI20191216BHJP
   H01L 29/88 20060101ALI20191216BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20191216BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   H01L29/88 F
   H01L29/91 F
   H01L29/91 H
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-50022(P2016-50022)
(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公開番号】特開2017-168518(P2017-168518A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 剛
【審査官】 恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−033830(JP,A)
【文献】 特開2009−152547(JP,A)
【文献】 特開2012−043965(JP,A)
【文献】 特開昭62−128559(JP,A)
【文献】 特開昭63−147382(JP,A)
【文献】 特開平09−036345(JP,A)
【文献】 特開平10−112528(JP,A)
【文献】 特開2003−037275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/88
H01L 29/861
H01L 29/868
H01L 21/329
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負性微分抵抗を生じる共鳴トンネル構造を有しており、負バイアス時にのみ共鳴トンネルを生じ、正バイアス時に流れる電流量が負バイアス時に流れる電流量よりも少ない半導体整流素子を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体整流素子は、無バイアス又は負バイアスに印加電圧が選択的に制御されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体整流素子に接続されたアンテナを更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体整流素子は、pin構造を有しており、p層がp−GaSb層又はp−GaAs1-xSbx層(0.49≦x<1)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体整流素子は、pin構造を有しており、n層がn−InAs層又はn−InxGa1-xAs層(0.53<x<1)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体整流素子は、pin構造を有し、前記共鳴トンネル構造であるi層が第1層、第2層及び第3層の積層構造とされており、
前記第2層は、i−InAs層、i−InAsxSb1-x層(0≦x<1)、及びi−InGaxAs1-x層(0.53<x<1)から選ばれた1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体整流素子は、pin構造を有し、前記共鳴トンネル構造であるi層が第1層、第2層及び第3層の積層構造とされており、
前記第1層及び前記第3層は、i−AlSb層又はi−AlAs1-xSbx層(0≦x<1)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
負性微分抵抗を生じる共鳴トンネル構造を有しており、負バイアス時にのみ共鳴トンネルを生じ、正バイアス時に流れる電流量が負バイアス時に流れる電流量よりも少ない半導体整流素子と、
前記半導体整流素子を無バイアス状態又は負バイアス状態に選択的に制御する電位供給部と
を備え、
前記半導体整流素子が無バイアス状態の場合には受信器、負バイアス状態の場合には送信器として機能することを特徴とする半導体回路。
【請求項9】
前記半導体整流素子に接続されたアンテナを更に備えたことを特徴とする請求項8に記載の半導体回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時では、大容量無線通信やイメージング等のために、ミリ波又はテラヘルツ波を利用する研究がされている。これらの高い周波数を扱うには、ミリ波又はテラヘルツ波を発生させる高速な送信デバイスと、高感度な受信デバイスとが必要になる。特にテラヘルツ波の領域での容易な取扱いを実現させるには、小型の送信デバイス及び受信デバイスの開発が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−33830号公報
【特許文献2】特開2009−152547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テラヘルツ波の発生には、光学非線形性を利用する手法や、低温成長(LT)GaAsに短波パルスレーザを用いる手法等があるが、システムの小型化が難しい。テラヘルツ波を発生させる電子デバイスであり、小型化に適したものには、共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunneling Diode:RTD)を用いた発振器がある。一方、テラヘルツの検出には、ボロメータや光学的手法等があるが、小型化や応答速度の問題があった。小型化に適した電子デバイスとしては、ショットキーダイオードを用いる手法がある。但しこの場合、専用のモジュールを使用することが一般的であるため、発振器モジュールと組み合わせると小型化が制限されるという問題があった。テラヘルツの検波にRTDの非線形性を用いる場合もあるが、動作電圧までバイアスを加えるバイアス回路が必要であり、ノイズが発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、1つの装置構成で例えばミリ波又はテラヘルツ波の送信機能及び受信機能の選択的な発揮に寄与する小型の半導体装置及びこの半導体装置を備えた半導体回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
半導体装置の一態様は、負性微分抵抗を生じる共鳴トンネル構造を有しており、負バイアス時にのみ共鳴トンネルを生じ、正バイアス時に流れる電流量が負バイアス時に流れる電流量よりも少ない半導体整流素子を備えている。
【0007】
半導体回路の一態様は、負性微分抵抗を生じる共鳴トンネル構造を有しており、負バイアス時にのみ共鳴トンネルを生じ、正バイアス時に流れる電流量が負極性のバイアス時に流れる電流量よりも少ない半導体整流素子を備え、前記半導体整流素子は、無バイアス又は負バイアスに印加電圧が選択的に制御され、無バイアス時に受信器、負バイアス時に送信器として機能する。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様によれば、1つの装置構成で例えばミリ波又はテラヘルツ波の送信機能及び受信機能の選択的な発揮に寄与する小型の半導体装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態による半導体装置のバンド構造を示す模式図である。
図2】第1の実施形態による半導体装置のI−V特性を示す特性図である。
図3】第1の実施形態による半導体装置の製造方法について、工程順に示す概略断面図である。
図4図3に引き続き、第1の実施形態による半導体装置の製造方法について、工程順に示す概略断面図である。
図5図4に引き続き、第1の実施形態による半導体装置の製造方法について、工程順に示す概略断面図である。
図6】第1の実施形態の変形例1による半導体装置のバンド構造を示す模式図である。
図7】第1の実施形態の変形例1による半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図8】第1の実施形態の変形例2による半導体装置のバンド構造を示す模式図である。
図9】第1の実施形態の変形例2による半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図10】第1の実施形態の変形例3による半導体装置のバンド構造を示す模式図である。
図11】第1の実施形態の変形例3による半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図12】第1の実施形態の変形例4による半導体装置のバンド構造を示す模式図である。
図13】第1の実施形態の変形例4による半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図14】第2の実施形態による半導体回路の概略構成を示す模式図である。
図15】第2の実施形態による半導体回路における半導体ダイオードのI−V特性を示す特性図である。
図16】第2の実施形態による半導体回路を検波器として用いる場合を示す模式図である。
図17】半導体ダイオードのI−V特性において、第2の実施形態による半導体回路を検波器として用いる場合を示す特性図である。
図18】第2の実施形態による半導体回路を発振器として用いる場合を示す模式図である。
図19】半導体ダイオードのI−V特性において、第2の実施形態による半導体回路を発振器として用いる場合を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態による半導体装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
−半導体装置の基本構成−
先ず、本実施形態による半導体装置の基本構成について説明する。この半導体装置は、負性微分抵抗を生じる共鳴トンネル構造を有しており、負バイアス時にのみ共鳴トンネルを生じ、正バイアス時に流れる電流量が負バイアス時に流れる電流量よりも少ない半導体ダイオードを備えている。半導体ダイオードは、無バイアス又は負バイアスに印加電圧が選択的に制御される。半導体ダイオードは、無バイアス時にはI−V特性において強い非線形性を示し、バックワードダイオード機能を発揮する。バックワードダイオード機能とは、一方の極性、ここでは負極性にのみ電流が流れる機能である。半導体ダイオードは、所定の負バイアス時には、負性微分抵抗を生ずる共鳴トンネルダイオード機能を発揮する。
【0012】
図1は、本実施形態による半導体装置のバンド構造を示す模式図である。図2は、本実施形態による半導体装置のI−V特性を示す特性図である。
本実施形態の半導体装置における半導体ダイオードは、pin構造を有しており、バンド間トンネルを生じるp型層及びn型層において、これらの接合界面にi層として共鳴トンネル構造が設けられる。本実施形態では、p型層にはp−GaSb、n型層にはn−InGaAs、共鳴トンネル構造にはi−AlSb/i−InAs/i−AlSbを用いる。2層のi−AlSbが共鳴トンネルバリアを形成し、当該2層に挟まれたi−InAsが共鳴トンネル準位を形成する。n型層に、n−InGaAsの代わりにn−InAsを用いるようにしても良い。
【0013】
負極性にのみ電流が流れるバックワードダイオードの動作をさせるために、p−GaSb及びn−InGaAsのドーピング濃度、及びn−InGaAsのIn組成(n−InxGa1-xAsとした場合のx)を0.53≦x≦1の範囲内で調整する。I−V特性では、ゼロバイアス付近で強い非線形性を示し、負バイアスで負性抵抗が生じる。この特性を用いて、無バイアス時にはバックワードダイオード動作をし、負バイアス時には共鳴トンネルダイオードの負性微分抵抗が生じるように制御を行う。これにより、当該半導体装置においてバックワードダイオード機能と共鳴トンネルダイオード機能とを自在に選択することができる。更に、半導体ダイオードにアンテナを接続することで、高周波信号の入出力を行う。第2の実施形態として詳述するように、バックワードダイオード機能では受信器として、共鳴トンネルダイオード機能では送信器として動作させることができる。
【0014】
−半導体装置の製造方法−
次いで、本実施形態による半導体装置の基本構成について、その製造方法と共に説明する。
図3図5は、本実施形態による半導体装置の製造方法について、工程順に示す概略断面図である。
【0015】
先ず、図3(a)に示すように、GaSb基板11上に、p+−GaSb層12、p−GaSb層13、i−AlSb層14、i−InAs層15、i−AlSb層16、n−InGaAs層17、及びn+−InGaAs層18を順次結晶成長させる。
詳細には、成長用基板として例えばGaSb基板11を用いる。GaSbは導電型でも高抵抗型でも良い。GaSb基板11上に、例えば有機金属気相成長(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法により、上記の各化合物半導体を成長する。MOVPE法の代わりに、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法等を用いても良い。ドープするp型不純物としては例えばZnが、ドープするn型不純物としては例えばSiがそれぞれ用いられる。
【0016】
+−GaSb層12は、p型不純物濃度が1×1019/cm3程度、厚みが300nm程度に成長される。p−GaSb層13は、p型不純物濃度が1×1018/cm3程度、厚みが50nm程度に成長される。p−GaSb層13では、フェルミレベルが価電子帯の上部に近くなるようにp型不純物濃度を調節することが望ましい。
【0017】
i−AlSb層14、i−InAs層15、i−AlSb層16は、共鳴トンネル構造を構成しており、ノンドープであって厚みが順に2nm程度、5nm程度、2nm程度に成長される。共鳴トンネルバリア内の第1量子準位は、フェルミレベルに接近していることが望ましい。
【0018】
n−InGaAs層17は、n−InGaAsのIn組成(n−InxGa1-xAsとした場合のx)を0.53<x<1の範囲内で調整される。In組成xは、n型不純物濃度との兼ね合いで決まり、例えば0.7である。伝導帯の底ができるだけフェルミレベルに近いことが望ましい。n−InGaAs層17は、例えばn型不純物濃度が1×1018/cm3程度、厚みが50nm程度に成長される。p−GaSb層13のp型不純物濃度、n−InGaAs層17のn型不純物濃度及びIn組成を調節することにより、バックワードダイオードの動作が実現する。n+−InGaAs層18は、n型不純物濃度が1×1019/cm3程度、厚みが50nm程度に成長される。
【0019】
続いて、図3(b)に示すように、p−GaSb層13、i−AlSb層14、i−InAs層15、i−AlSb層16、n−InGaAs層17、及びn+−InGaAs層18をメサ形状に加工する。
詳細には、先ず、フォトリソグラフィーによりn+−InGaAs層18上にレジストマスクを形成する。次に、p−GaSb層13、i−AlSb層14、i−InAs層15、i−AlSb層16、n−InGaAs層17、及びn+−InGaAs層18をメサ形状にウェットエッチングする。ウェットエッチングには、例えばリン酸と過酸化水素水の混合液を用いる。レジストマスクは、薬液を用いたウェット処理又はアッシング処理に除去される。
【0020】
続いて、図3(c)に示すように、素子分離領域を画定する。
詳細には、先ず、フォトリソグラフィーにより、上記のメサ形状部を覆うように、p+−GaSb層12上にレジストマスクを形成する。次に、p+−GaSb層12をウェットエッチングし、GaSb基板1の表面の一部を露出させる。ウェットエッチングには、例えばリン酸と過酸化水素水の混合液を用いる。以上により、素子分離領域が画定される。レジストマスクは、薬液を用いたウェット処理又はアッシング処理に除去される。
【0021】
続いて、図4(a)に示すように、アノード電極21及びカソード電極22を形成する。
詳細には、先ず、フォトリソグラフィーにより、アノード電極及びカソード電極の形成予定箇所に開口を有するレジストマスクを形成する。開口内を埋め込むように、レジストマスク上に電極材料、例えばTi,Pt,Auを、例えば真空蒸着法により10nm程度、30nm程度、300nm程度の厚みに順次堆積する。リフトオフにより、レジストマスク及びその上の電極材料を除去する。以上により、p+−GaSb層12上にアノード電極21、n+−InGaAs層18上にカソード電極22がそれぞれ形成される。
【0022】
続いて、図4(b)に示すように、層間絶縁膜23を形成する。
詳細には、全面を覆うように絶縁物、ここではベンゾシクロブテン(BCB)を塗布し、熱硬化させる。以上により、層間絶縁膜23が形成される。
【0023】
続いて、図5(a)に示すように、層間絶縁膜23に接続孔23aを形成する。
詳細には、先ず、フォトリソグラフィーにより、層間絶縁膜23上に、カソード電極22の表面の一部を開口するレジストマスクを形成する。層間絶縁膜23をドライエッチングする。以上により、層間絶縁膜23には、カソード電極22の表面の一部を露出させる接続孔23aが形成される。
【0024】
続いて、図5(b)に示すように、配線24及びアンテナ25を形成する。
詳細には、例えば金めっきにより、接続孔23aを埋め込む配線24と、配線24を介してカソード電極22と電気的に接続されたアンテナ25とを形成する。
以上により、アンテナ25を持つ半導体ダイオードを備えた半導体装置が形成される。
【0025】
なお、上記の製造方法では、基板としてノンドープGaSb基板11を用いたが、p型のGaSb基板を用いても良い。この場合、素子分離を行うには、基板ごとに分割して素子分離領域を画定する。
【0026】
以上説明したように、本実施形態による半導体ダイオードは、バックワードダイオード機能と共鳴トンネルダイオード機能とを自在に選択することができる。この性質を利用して、1つの装置構成で例えばミリ波又はテラヘルツ波の送信機能及び受信機能の選択的な発揮に寄与する小型の半導体装置が実現する。
【0027】
(変形例)
以下、第1の実施形態の諸変形例について説明する。諸変形例では、半導体ダイオードを構成する半導体層が若干異なる点で第1の実施形態と相違する。
【0028】
−変形例1−
図6は、変形例1による半導体装置のバンド構造を示す模式図である。図7は、変形例1による半導体装置の概略構成を示す断面図である。本例では、半導体ダイオードの共鳴トンネル構造を持つi層において、i−InAsの代わりにi−InAsSbが用いられている。
【0029】
本例の半導体装置における半導体ダイオードは、pin構造を有しており、バンド間トンネルを生じるp型層及びn型層において、これらの接合界面にi層として共鳴トンネル構造が設けられる。本実施形態では、p型層にはp−GaSb、n型層にはn−InGaAs、共鳴トンネル構造にはi−AlSb/i−InAsSb/i−AlSbを用いる。2層のi−AlSbが共鳴トンネルバリアを形成し、当該2層に挟まれたi−InAsSbが共鳴トンネル準位を形成する。
【0030】
負極性にのみ電流が流れるバックワードダイオードの動作をさせるために、p−GaSb及びn−InGaAsのドーピング濃度、及びn−InGaAsのIn組成(n−InxGa1-xAsとした場合のx)を0.53<x<1の範囲内で調整する。i−InAsSbのAs組成(i−InAsySb1-yとした場合のy)を0≦y<1の範囲内で調整する。
【0031】
本例の半導体装置を製造するには、第1の実施形態の図3(a)において、i−InAs層15の代わりにi−InAsSb層31を形成し、図3(b)〜図5(b)の工程を順次行えば良い。以上により、図7に示すような半導体装置が形成される。
【0032】
本例による半導体ダイオードは、バックワードダイオード機能と共鳴トンネルダイオード機能とを自在に選択することができる。この性質を利用して、1つの装置構成で例えばミリ波又はテラヘルツ波の送信機能及び受信機能の選択的な発揮に寄与する小型の半導体装置が実現する。
【0033】
−変形例2−
図8は、変形例2による半導体装置のバンド構造を示す模式図である。図9は、変形例2による半導体装置の概略構成を示す断面図である。本例では、半導体ダイオードの共鳴トンネル構造を持つi層において、i−InAsの代わりにi−InGaAsが用いられている。
【0034】
本例の半導体装置における半導体ダイオードは、pin構造を有しており、バンド間トンネルを生じるp型層及びn型層において、これらの接合界面にi層として共鳴トンネル構造が設けられる。本実施形態では、p型層にはp−GaSb、n型層にはn−InGaAs、共鳴トンネル構造にはi−AlSb/i−InGaAs/i−AlSbを用いる。2層のi−AlSbが共鳴トンネルバリアを形成し、当該2層に挟まれたi−InGaAsが共鳴トンネル準位を形成する。
【0035】
負極性にのみ電流が流れるバックワードダイオードの動作をさせるために、p−GaSb及びn−InGaAsのドーピング濃度、及びn−InGaAsのIn組成(n−InxGaAsとした場合のx)を0.53<x<1の範囲内で調整する。i−InGaAsのIn組成(i−InyGa1-yAsとした場合のy)を0≦y<1,x<yの範囲内で調整する。更に、In組成yは、共鳴トンネル内の量子準位がフェルミレベル近くに制御されるような値であることが望ましい。
【0036】
本例の半導体装置を製造するには、第1の実施形態の図3(a)において、i−InAs層15の代わりにi−InGaAs層32を形成し、図3(b)〜図5(b)の工程を順次行えば良い。以上により、図9に示すような半導体装置が形成される。
【0037】
本例による半導体ダイオードは、バックワードダイオード機能と共鳴トンネルダイオード機能とを自在に選択することができる。この性質を利用して、1つの装置構成で例えばミリ波又はテラヘルツ波の送信機能及び受信機能の選択的な発揮に寄与する小型の半導体装置が実現する。
【0038】
−変形例3−
図10は、変形例3による半導体装置のバンド構造を示す模式図である。図11は、変形例3による半導体装置の概略構成を示す断面図である。本例では、半導体ダイオードの共鳴トンネル構造を持つi層において、2層のi−AlSbの代わりにi−AlAsSbが用いられている。
【0039】
本例の半導体装置における半導体ダイオードは、pin構造を有しており、バンド間トンネルを生じるp型層及びn型層において、これらの接合界面にi層として共鳴トンネル構造が設けられる。本実施形態では、p型層にはp−GaSb、n型層にはn−InGaAs、共鳴トンネル構造にはi−AlAsSb/i−InAs/i−AlAsSbを用いる。2層のi−AlAsSbが共鳴トンネルバリアを形成し、当該2層に挟まれたi−InAsが共鳴トンネル準位を形成する。
【0040】
負極性にのみ電流が流れるバックワードダイオードの動作をさせるために、p−GaSb及びn−InGaAsのドーピング濃度、及びn−InGaAsのIn組成(n−InxGa1-xAsとした場合のx)を0.53<x<1の範囲内で調整する。2層のi−AlAsSbのSb組成(i−AlAs1-ySbyとした場合のy)を0≦y<1の範囲内で調整する。
【0041】
本例の半導体装置を製造するには、第1の実施形態の図3(a)において、i−AlSb層14,16の代わりにi−AlAsSb層33,34を形成し、図3(b)〜図5(b)の工程を順次行えば良い。以上により、図11に示すような半導体装置が形成される。
【0042】
本例による半導体ダイオードは、バックワードダイオード機能と共鳴トンネルダイオード機能とを自在に選択することができる。この性質を利用して、1つの装置構成で例えばミリ波又はテラヘルツ波の送信機能及び受信機能の選択的な発揮に寄与する小型の半導体装置が実現する。
【0043】
−変形例4−
図12は、変形例4による半導体装置のバンド構造を示す模式図である。図13は、変形例4による半導体装置の概略構成を示す断面図である。本例では、半導体ダイオードのp層について、p−GaSbの代わりにp−GaAsSbが用いられている。
【0044】
本例の半導体装置における半導体ダイオードは、pin構造を有しており、バンド間トンネルを生じるp型層及びn型層において、これらの接合界面にi層として共鳴トンネル構造が設けられる。本実施形態では、p型層にはp−GaAsSb、n型層にはn−InGaAs、共鳴トンネル構造にはi−AlSb/i−InAs/i−AlSbを用いる。2層のi−AlSbが共鳴トンネルバリアを形成し、当該2層に挟まれたi−InAsが共鳴トンネル準位を形成する。
【0045】
負極性にのみ電流が流れるバックワードダイオードの動作をさせるために、p−GaSb及びn−InGaAsのドーピング濃度、及びn−InGaAsのIn組成(n−InxGa1-xAsとした場合のx)を0.53<x<1の範囲内で調整する。p−GaAsSbのSb組成(p−GaAsySb1-yとした場合のy)を0.49≦y<1の範囲内で調整する。
【0046】
本例の半導体装置を製造するには、第1の実施形態の図3(a)において、p+−GaSb層12、p−GaSb層13の代わりにp+−GaAsSb層35、p−GaAsSb層36を形成し、図3(b)〜図5(b)の工程を順次行えば良い。以上により、図13に示すような半導体装置が形成される。
【0047】
本例による半導体ダイオードは、バックワードダイオード機能と共鳴トンネルダイオード機能とを自在に選択することができる。この性質を利用して、1つの装置構成で例えばミリ波又はテラヘルツ波の送信機能及び受信機能の選択的な発揮に寄与する小型の半導体装置が実現する。
【0048】
なお、第1の実施形態及び変形例1〜4の半導体ダイオードを構成する各半導体層については、これらの場合を含めて、以下のように組み合わせて用いることができる。
p層については、例えばp−GaSb層又はp−GaAs1-xSbx層(0.49≦x<1)のいずれかを用いる。
n層については、例えばn−InAs層又はn−InxGa1-xAs層(0.53<x<1)のいずれかを用いる。
第1層、第2層及び第3層の積層構造であるi層のうち、第2層については、例えばi−InAs層、i−InAsxSb1-x層(0≦x<1)、及びi−InGaxAs1-x層(0.53<x<1)から選ばれた1種を用いる。
i層のうち、第1層及び第3層ついては、電子に対してバリア性のある材料、例えばi−AlSb層又はi−AlAs1-xSbx層(0≦x<1)のいずれかを用いる。
【0049】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態による半導体回路について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態による半導体回路は、第1の実施形態又は諸変形例の半導体装置を適用したものである。この半導体回路は、受信器(受信機能を有する検波器)及び送信器(送信機能を有する発振器)を併せ持っている。
【0050】
図14は、本実施形態による半導体回路の概略構成を示す模式図である。図15は、本実施形態による半導体回路における半導体ダイオードのI−V特性を示す特性図である。
この半導体回路は、第1の実施形態及び諸変形例のうちから選ばれた1種の半導体ダイオード10を備えている。半導体ダイオード10は、印加電圧を0(V0)に設定することで検波器として、加電圧を負極性の−Vrに設定することで発振器として用いられる。
【0051】
この半導体回路は、半導体ダイオード10のアノード側に電位供給部41、ローパスフィルタ(LPF)42、アンテナ25、LPF45、及びLCR回路46が接続されて構成されている。電位供給部41は、半導体ダイオード10への印加電圧を0(V0)又は−Vrに選択的に切換制御するものである。電気信号がLPF45を通過することにより、周波成分がカットされてDC成分が加わる。
【0052】
半導体ダイオード10とLPF45との間にスイッチSW1が、半導体ダイオード10とLCR回路46との間にスイッチSW2がそれぞれ設けられている。スイッチSW1,SW2は、一方がオン状態のときには他方がオフ状態となるものである。スイッチSW1をオン状態、スイッチSW2をオフ状態とすることで検波器として機能する。スイッチSW2をオン状態、スイッチSW1をオフ状態とすることで発振器として機能する。
【0053】
図16は、本実施形態による半導体回路を検波器として用いる場合を示す模式図である。図17は、半導体ダイオードのI−V特性において、本実施形態による半導体回路を検波器として用いる場合を示す特性図である。
半導体回路を検波器として用いる場合には、スイッチSW1をオン状態、スイッチSW2をオフ状態とし、電位供給部41において印加電圧を0(V0)に設定する。このとき、半導体ダイオード10では、I−V特性において強い非線形特性を示す。電気信号がアンテナ25で受信されて検波され、LPF25で高周波成分が除去されてDC成分として出力される。
【0054】
図18は、本実施形態による半導体回路を発振器として用いる場合を示す模式図である。図19は、半導体ダイオードのI−V特性において、本実施形態による半導体回路を発振器として用いる場合を示す特性図である。
半導体回路を発振器として用いる場合には、スイッチSW2をオン状態、スイッチSW1をオフ状態とし、電位供給部41において印加電圧を−Vrに設定する。このとき、半導体ダイオード10では、I−V特性において共鳴トンネルの負性微分抵抗が生じる。この負性微分抵抗及びLCR回路46により発振が生じる。発振で生じた高周波信号は、アンテナ25から外部に放射される。
【0055】
以上説明したように、半導体ダイオード10を備えた回路構成とすることにより、1つの装置構成で例えばミリ波又はテラヘルツ波の送信機能及び受信機能の双方を併せ持ち、一方の機能を選択的に発揮させることができる小型の半導体回路が実現する。
【0056】
本実施形態による半導体回路は、例えば、超高周波のテラヘルツセンサや、テラヘルツ無線通信を行う無線通信装置に適用することができる。
【0057】
以下、半導体装置及び半導体回路の諸態様について、付記としてまとめて記載する。
【0058】
(付記1)負性微分抵抗を生じる共鳴トンネル構造を有しており、負バイアス時にのみ共鳴トンネルを生じ、正バイアス時に流れる電流量が負バイアス時に流れる電流量よりも少ない半導体整流素子を備えたことを特徴とする半導体装置。
【0059】
(付記2)前記半導体整流素子は、無バイアス又は負バイアスに印加電圧が選択的に制御されることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0060】
(付記3)前記半導体整流素子に接続されたアンテナを更に備えたことを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
【0061】
(付記4)前記半導体整流素子は、pin構造を有しており、p層がp−GaSb層又はp−GaAs1-xSbx層(0.49≦x<1)であることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0062】
(付記5)前記半導体整流素子は、pin構造を有しており、n層がn−InAs層又はn−InxGa1-xAs層(0.53<x<1)であることを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0063】
(付記6)前記半導体整流素子は、pin構造を有し、前記共鳴トンネル構造であるi層が第1層、第2層及び第3層の積層構造とされており、
前記第2層は、i−InAs層、i−InAsxSb1-x層(0≦x<1)、及びi−InGaxAs1-x層(0.53<x<1)から選ばれた1種であることを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0064】
(付記7)前記半導体整流素子は、pin構造を有し、前記共鳴トンネル構造であるi層が第1層、第2層及び第3層の積層構造とされており、
前記第1層及び前記第3層は、i−AlSb層又はi−AlAs1-xSbx層(0≦x<1)であることを特徴とする付記1〜6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0065】
(付記8)負性微分抵抗を生じる共鳴トンネル構造を有しており、負バイアス時にのみ共鳴トンネルを生じ、正バイアス時に流れる電流量が負バイアス時に流れる電流量よりも少ない半導体整流素子と、
前記半導体整流素子を無バイアス状態又は負バイアス状態に選択的に制御する電位供給部と
を備え、
前記半導体整流素子が無バイアス状態の場合には受信器、負バイアス状態の場合には送信器として機能することを特徴とする半導体回路。
【0066】
(付記9)前記半導体整流素子に接続されたアンテナを更に備えたことを特徴とする付記8に記載の半導体回路。
【0067】
(付記10)前記半導体整流素子は、pin構造を有しており、p層がp−GaSb層又はp−GaAs1-xSbx層(0.49≦x<1)であることを特徴とする付記8又は9に記載の半導体回路。
【0068】
(付記11)前記半導体整流素子は、pin構造を有しており、n層がn−InAs層又はn−InxGa1-xAs層(0.53<x<1)であることを特徴とする付記8〜10のいずれか1項に記載の半導体回路。
【0069】
(付記12)前記半導体整流素子は、pin構造を有し、前記共鳴トンネル構造であるi層が第1層、第2層及び第3層の積層構造とされており、
前記第2層は、i−InAs層、i−InAsxSb1-x層(0≦x<1)、及びi−InGaxAs1-x層(0.53<x<1)から選ばれた1種であることを特徴とする付記8〜11のいずれか1項に記載の半導体回路。
【0070】
(付記13)前記半導体整流素子は、pin構造を有し、前記共鳴トンネル構造であるi層が第1層、第2層及び第3層の積層構造とされており、
前記第1層及び前記第3層は、i−AlSb層又はi−AlAs1-xSbx層(0≦x<1)であることを特徴とする付記8〜12のいずれか1項に記載の半導体回路。
【符号の説明】
【0071】
10 半導体ダイオード
11 p−GaSb基板
12 p+−GaSb層
13 p−GaSb層
14,16 i−AlSb層
15 i−InAs層
17 n−InGaAs層
18 n+−InGaAs層
21 アノード電極
22 カソード電極
23 層間絶縁膜
23a 接続孔
24 配線
25 アンテナ
31 i−InAsSb層
32 i−InGaAs層
33,34 i−AlAsSb層
35 p+−GaAsSb層
36 p−GaAsSb層
41 電位供給部
42,45 LPF
43 SW1
44 SW2
46 LCR回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19