(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体材料で構成されるウエハを用いて半導体装置のチップを製造する際に用いられる製造設備(20a〜20c)とモニター設備(30)および試験設備(40)の少なくとも1つの処理設備の処理結果に基づいて前記処理設備の異常を解析する異常解析装置であって、
前記処理設備での処理条件に関する情報を管理する管理システム(110)と、
前記処理条件を入手すると共に、前記処理設備の処理結果を入手し、該処理結果に基づいて前記ウエハ毎に不良分布のイメージを数値化する情報入手数値化部(131)と、
前記情報入手数値化部で数値化した情報に基づいて前記処理設備の異常の監視を行う監視部(133)と、を有し、
前記情報入手数値化部では、前記ウエハを面内において複数の位置として分割し、前記複数の位置における不良チップの量から相互の位置における不良分布の強さを自動的に数値化すると共に、前記複数の位置毎の前記不良分布の強さのバラツキを標準偏差として求め、該標準偏差に基づいて前記強さを数値化している異常解析装置。
前記監視部において前記処理設備に異常ありとの監視結果が出されたときに、前記因果関係解析部によって解析した前記因果関係に関する情報をユーザに対して通知する監視通知部(137)を備えている請求項2に記載の異常解析装置。
前記監視部において前記処理設備に異常ありとの監視結果が出されたときに、前記因果関係解析部によって解析した前記因果関係に関する情報を蓄積する因果関係情報蓄積部(136)を備えている請求項3に記載の異常解析装置。
前記監視通知部によって前記監視結果が出されてから、前記因果関係に基づくユーザによる対処の結果をフィードバック情報として入力すると共に、前記フィードバック情報を前記因果関係情報蓄積部に対して伝え、前記因果関係情報蓄積部に蓄積する前記因果関係を前記フィードバック情報に基づいて補正させるフィードバック部(138)を備えている請求項4に記載の異常解析装置。
前記情報入手数値化部では、前記複数の位置を異なる括りとされる複数のブロックにおいて分割し、前記複数のブロックそれぞれで分割されたもの毎に前記強さを数値化すると共に、前記複数のブロックそれぞれで数値化された前記強さを合算することで最終強さを求める請求項1ないし5のいずれか1つに記載の異常解析装置。
前記複数のブロックとして、前記ウエハの表面の一方向を横方向として該横方向において前記位置を複数に分割する横イメージのブロックと、前記ウエハの表面における前記一方向に対して直交する縦方向において前記位置を複数に分割する縦イメージのブロックと、前記ウエハを同心円状に複数に分割する円イメージのブロックと、のうちの複数が含まれている請求項6に記載の異常解析装置。
前記情報入手数値化部では、前記複数の位置を表す桁と、前記複数のブロックそれぞれを表す桁とをそれぞれ異なる桁として、前記複数の位置の数値化および前記強さの数値化を行っている請求項6または7に記載の異常解析装置。
前記情報入手数値化部では、決められた桁とされた前記複数の位置を表す数値と前記複数のブロックそれぞれを表す数値に加えて前記最終強さを表す数値を合算することで、前記複数の位置の数値化および前記強さの数値化を行っている請求項8に記載の異常解析装置。
半導体材料によって構成されるウエハを用いて半導体装置のチップを製造する際に用いられる製造設備(20a〜20c)とモニター設備(30)および試験設備(40)の少なくとも1つの処理設備の処理結果に基づいて前記処理設備の異常を解析する異常解析方法であって、
製造条件管理システム(110)にて管理している前記処理設備での処理条件に関する情報を入手すると共に、前記処理設備の処理結果を入手することと、
前記処理結果に基づいて前記ウエハ毎に不良分布のイメージを数値化することと、
前記数値化した情報に基づいて前記処理設備の異常の監視を行うことと、を含み、
前記数値化することにおいては、前記ウエハを面内において複数の位置として分割し、前記複数の位置における不良チップの量から相互の位置における不良分布の強さを自動的に数値化すると共に、前記複数の位置毎の前記不良分布の強さのバラツキを標準偏差として求め、該標準偏差に基づいて前記強さを数値化する異常解析方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
本実施形態にかかる半導体装置の製造過程における異常解析装置および異常解析方法について、
図1〜
図13を参照して説明する。
【0017】
半導体製品の製造プロセスでは、仕込み部において仕込みが行われた製品ロットを複数の製造設備内に搬送したのち、各製造設備において様々なプロセスを施し、モニター工程、試験工程を経て良品と判定されたものが、半導体製品の完成品とされる。本実施形態で説明する異常解析装置は、この半導体装置の製造プロセスに用いられる各製造設備やモニター設備、試験設備などの処理設備のデータ収集および監視などを行うことで、半導体装置の製造過程における異常解析を行う。具体的には、異常解析装置は、半導体装置の製造過程における製造設備の異常が原因で変化する良品率およびウエハ内における不良分布のイメージを自動的に数値化して解析することで、製造設備の異常と不良分布との因果関係を自動的に解析する。なお、不良分布のイメージとは、不良分布の位置や強さのイメージのことである。以下の説明においては、分布イメージと略している箇所があるが、ここでいう不良分布のイメージを意味している。
【0018】
図1に示すように、半導体装置の製造プロセスは、自動化を行った製造ライン(以下、FA(FAB Automationの略)という)によって実行される。FAとしては、仕込み部10に加えて、各種製造設備20a〜20c、モニター設備30、試験設備40などの処理設備がある。
【0019】
仕込み部10では、製品ロット、すなわちキャリアに対して半導体材料で構成されるウエハを例えば複数枚セットしたものを準備することで、半導体装置を製造するための仕込みが行われる。
【0020】
各製造設備20a〜20cでは、例えば薄膜の成膜工程やパターニング工程、不純物のイオン注入工程など、半導体装置の製造プロセスとして行われる様々な工程が行われる。ここでは、一例として3つの製造設備20a〜20cを示しているが、製造プロセスに対応した様々な設備が他に備えられている。各製造設備20a〜20cは、各製造設備20a〜20cに関する情報、例えば製造設備20a〜20cで実施したプロセスでの出来栄えを製品ロット毎に実際に測定した結果や、処理条件、処理日時や処理数などに関する処理履歴を記憶しておくコンピュータ21a〜21cが接続されている。
【0021】
各コンピュータ21a〜21cからの出来栄え情報や処理履歴情報については、EDC(Engineering Data Collectionの略)22にて収集し、サーバ23などに蓄積している。そして、MES(Manufacturing Execute Systemの略)24を通じて、後述する異常解析装置100に備えられたオンライン情報インターフェイス120に伝えられる。
【0022】
なお、MES24は、FAの自動化の中枢コンポーネントとなるものである。一般的に自動化は複数のコンポーネントで構成され、その中枢がMES24と呼ばれる。ここでは、MES24のみを示してあるが、勿論、複数のコンポーネントで構成されていても良い。MES24は、各コンピュータ21a〜21cより出来栄え情報や処理履歴情報を取得してオンライン情報インターフェイス120に伝えるのに加え、オンライン情報インターフェイス120から製造条件に関する情報を得て、製造条件を各コンピュータ21a〜21cに伝える。これに基づき、各コンピュータ21a〜21cは、伝えられた製造条件に基づいて製造プロセスを実行する。このように、MES24を中枢コンポーネントとして、オンライン情報インターフェイス120と各製造設備20a〜20cのコンピュータ21a〜21cが情報の収受を行っており、所望の製造条件で各製造プロセスの管理が一元管理されるようになっている。
【0023】
モニター設備30は、製品チップ内に組み込まれた性能確認用回路(モニター)の測定を行っており、その測定結果をサーバ31に入力し、サーバ31を通じてその測定結果をオンライン情報インターフェイス120に伝える。例えば、半導体製品を製造するために用いられるウエハ上のチップには、製造過程を経たときに性能が設計通りに発揮されているかを確認するために特別な回路などが形成されるようになっており、その特別な回路が正常に動作するか否かの測定が行われる。その測定結果をオンライン情報インターフェイス120に伝えている。モニター設備30では、測定を行う機能ごとに(以降カテゴリと称す)に分布を測定している。
【0024】
試験設備40は、実際に製造された最終製品となる半導体製品について、電気特性試験、すなわち電気特性を測定し、その測定結果から半導体装置が良品であるか不良品であるかの良不良判定を行うと共に、良品率や不良分布などを調べる。そして、良品と判定されたものについては、半導体装置を完成品として流通過程に載せ、不良品については完成品から除外する。また、試験設備40は、サーバ41を通じて試験結果、すなわち良品率や不良分布、不良が発生した場合における不良の内容や不良チップの座標情報などについて、オンライン情報インターフェイス120に伝えている。試験設備40においても、良品率についてカテゴリ別、すなわち試験の項目別に分布を測定している。
【0025】
一方、異常解析装置100は、SCS(Specification Control Systemの略)110とオンライン情報インターフェイス120およびコンピュータ130とを有した構成とされている。
【0026】
SCS110は、製造条件管理システムであり、製品毎に製造条件を電子情報として正規化して版数管理しているマスタシステムである。ここではSCS110をコンピュータ130とは別構成としたが、コンピュータ130にSCS110を内蔵していても良い。このSCS110により、製造プロセス毎の製造条件などの各種処理条件、例えば薄膜成膜工程における材料、膜厚、成膜温度および成膜雰囲気などや、配線製造工程における材料、膜厚および線幅などに関するデータが管理されている。SCS110で管理されている各種処理条件は、オンライン情報インターフェイス120に伝えられている。そして、オンライン情報インターフェイス120を通じて、各種処理条件がMES24に伝えられ、更に各製造設備20a〜20cのコンピュータ21a〜21cやモニター設備30および試験設備40のサーバ31、41に伝えられるようになっている。
【0027】
オンライン情報インターフェイス120は、各種情報の受け渡しを行うものである。例えば、オンライン情報インターフェイス120は、SCS110から伝えられる処理条件に関するデータをMES24に伝えたり、MES24から各製造設備20a〜20cでの出来栄え情報や処理履歴情報をコンピュータ130に伝える役割を果たす。また、オンライン情報インターフェイス120は、モニター設備30や試験設備40のサーバ31、41からそれぞれの測定結果を取得し、それをコンピュータ130に伝える役割も果たしている。
【0028】
コンピュータ130は、各種処理の実行やデータ蓄積を行う制御部を構成するものであり、各製造設備20a〜20cから伝えられる出来栄え情報や処理履歴情報、モニター設備30や試験設備40での測定結果をデータとしてデータベースに格納し、記憶している。そして、コンピュータ130は、データベースに記憶したデータや時々取得されるデータに基づいて、半導体装置の製造過程における製造設備20a〜20cやモニター設備30および試験設備40の異常が原因で変化する良品率およびウエハ内における不良分布のイメージを自動的に数値化して解析する。これにより、コンピュータ130にて、製造設備20a〜20cやモニター設備30および試験設備40の異常と不良分布との因果関係を自動的に解析している。
【0029】
具体的に、コンピュータ130にて実行される各処理を制御ブロックとして示すと、
図2に示す構成となる。
【0030】
この図に示すように、コンピュータ130には、情報入手数値化部131、情報蓄積部132、監視部133、設計ノウハウ情報蓄積部134、因果関係解析部135、因果関係情報蓄積部136、監視通知部137およびフィードバック部138が備えられている。
【0031】
情報入手数値化部131は、オンライン情報インターフェイス120を通じて製造プロセスを実行するFAにおける各処理設備の各種情報を入手し、一旦、図示しない専用のデータベースに蓄積する。また、情報入手数値化部131は、入手した各種情報に基づいて分布イメージの数値化を行う。具体的には、情報入手数値化部131は、第1〜第6処理部131a〜131fにて構成されている。なお、第6処理部131fが実行する処理の具体的な手順を
図13に示す。
【0032】
第1処理部131aでは、SCS110にて管理されている各種情報、例えば、製造設備20a〜20cで処理を行う品種(つまり製品)・工程毎に、スペック情報や処理レシピおよび条件変更情報などの製造条件に関する情報を入手する。第2処理部131bでは、例えば、製造設備20a〜20cで処理を行う品種・ロット毎の出来栄え情報を入手する。第3処理部131cでは、製造設備20a〜20cで処理を行う品種・ロット毎の処理履歴、例えば処理日時の情報や出来映えの結果などを入手する。第4処理部131dでは、各種情報として、例えばモニター設備30でのカテゴリ別、すなわちモニター項目別の測定結果を入手する。第5処理部131eでは、試験設備40での良品率のカテゴリ別、すなわち試験項目別の測定結果を入手する。第6処理部131fでは、試験設備40での良不良の判定結果、つまり良品率の測定結果を入手する。さらに、第4〜第6処理部131d〜131fでは、入力した各種情報に基づいて、製造過程における製造設備の異常が原因で変化する良品率およびウエハ内における不良分布のイメージを自動的に数値化する。
【0033】
ここで、各種情報については、一旦、専用のデータベースに蓄積しているが、すべての情報をそのまま蓄積していくとデータ量が膨大になる。また、異常の傾向を継続的に監視できない。データ量の縮小を図ったり、異常の傾向を継続的に監視するには、ウエハ面内の分布イメージを数値に置き換えることが有効であると考えられる。例えば、異常がなくても数値を継続的に監視することで、いつもと違うという変化点を監視することができるようになる。製造設備20a〜20cがすべて一緒で同じ結果を再現したと仮定すると、その分布も常に一定であるはずであり、数値化した値も同じ値になるはずである。ところが、何らかの理由によって数値が変化し始めたときに、数値を監視するだけでその変化を認識できるため、大きな異常になる前にその原因を究明することによって、障害を未然に防ぐことが可能となる。したがって、情報入手数値化部131は、取得した各種情報に基づいて、上記した数値化を行う数値化処理を実行している。そして、数値化処理で得た数値を情報蓄積部132に伝えている。なお、ここでいう数値化処理の詳細については後述する。
【0034】
情報蓄積部132は、情報入手数値化部131で数値化された情報を受け取り、その数値化された情報を正規化、すなわち同じキーワード(品種名、工程名、設備名、処理条件など)に分けて蓄積する。具体的には、第1蓄積部132aでは、例えば、製造設備20a〜20cから得られる品種名、工程名、設備名、処理条件などの情報に基づいて蓄積していく。また、第2〜第4蓄積部132b〜132dでは、モニター設備30でのカテゴリ別の測定結果、試験設備40でのカテゴリ別の測定結果や良品率結果のチップ座標情報から、共通情報を蓄積していく。すなわち、情報入手数値化部131で各処理が実行されると、それぞれの処理後の結果より、同じ種類のもの同士を分けて蓄積していく。
【0035】
監視部133は、情報入手数値化部131にて数値化された情報の数値に基づいて、「いつもと違う」という変化について監視を行っている。具体的には、監視部133では、同一製品による良品率の特徴変化、例えば良品率の変化や、不良チップの分布の位置変化、不良分布の強さ変化について監視している。不良分布の強さは、単位当たりの不良率もしくは不良チップ数を示す指標であり、単位当たりの不良率もしくは不良チップ数が高いほど強くなる。この不良分布の強さの詳細については後述する。また、監視部133は、製造プロセスごと、換言すれば製造設備ごとの出来栄え傾向の変化も監視している。例えば、すべての製造プロセスについて、処理レシピと出来栄えのスペックを正規化し、同一尺度で監視している。また、半導体製造現場では、同じ工程で使用できる設備が複数あり、同じ結果を期待しているが、設備の個体差(一般的に号機間差という)があることが分かっている。具体的には洗浄周期内での処理結果に与える影響の変化などで、号機毎に洗浄のタイミングなども異なる。一番大切なのは同じと見なした複数の設備で異常になる号機が限られることで、それを早期に確定することで不良を未然に防ぐことができる。その多くは処理結果の分布に現れることが知られており、一定の基準に対して、設備毎の分布変化を数値監視できれば有効な手段となる。また、監視部133は、製造条件の変更する場合に、その変更前後において、製造プロセスおよび製造設備の監視を行っている。そして、これらを監視基準として、監視部133は、上記した不良判定を行い、判定結果を担当者へ通知する機能をもっている。
【0036】
設計ノウハウ情報蓄積部134は、半導体製品の設計者や製造経験者が知識として有している製造設備20a〜20cやモニター設備30および試験設備40のカテゴリと製造工程の因果関係に関する情報(以下、因果関係情報という)を蓄積する。具体的には、コンピュータ130に備えられる図示しない入力装置、例えばキーボードを通じて、設計者や経験者などのユーザが因果関係情報を入力することで、それを設計ノウハウ情報蓄積部134に因果関係情報を蓄積することができる。
【0037】
因果関係解析部135は、情報蓄積部132に蓄積された数値化情報群から同一のキーワードのものを検索し、時間軸で対比することで因果関係を絞り込むことができる。具体的には不良率が下がったウエハの分布変化と、処理記録と、予め因果関係情報に登録された製造工程の出来映え分布などを比較し因果関係解析処理を行う。
【0038】
因果関係情報蓄積部136は、因果関係解析部135で解析された製造設備の異常と不良分布との因果関係を蓄積する部分である。本実施形態の場合、因果関係情報蓄積部136は、後述するフィードバック部138から伝えられるフィードバック情報も加味して、製造設備の異常と不良分布との因果関係を補正し、補正後の蓄積することで因果関係情報の精度向上を担っている。
【0039】
監視通知部137は、監視部133において異常有りと判定されたとき、例えば同一製品による良品率の特徴変化があった場合に、因果関係解析部135で因果関係解析した結果をユーザに通知する因果関係解析結果通知処理を行う。例えば、コンピュータ130に備えられている図示しないディスプレイに解析結果を表示することで、それをユーザに通知することができる。
【0040】
フィードバック部138は、監視通知部137による通知の結果に基づいて、ユーザが対処した場合に、その対処した結果をフィードバック情報としてユーザが入力する部分である。フィードバック情報については、コンピュータ130に備えられる図示しない入力装置、例えばキーボードを通じて入力することができる。
【0041】
以上のようにして、本実施形態にかかる異常解析装置100が構成されている。続いて、異常解析装置100が実施する数値化処理、すなわち半導体製品の製造過程における製造設備の異常が原因で変化する良品率およびウエハ内における不良分布のイメージを自動的に数値化する処理を含めた異常解析方法について説明するとともに、
図13に代表的な手順を示す。
【0042】
まず、数値化についての考え方および数値化をどのようにして実現するかについて説明する。
【0043】
良品率もしくは不良率の不良分布についての数値化を行う対象となるウエハは一般的に丸い形をしている。また、ウエハ上に配置される数百の半導体製品を構成するチップは、ウエハ表面をXY平面として見立てたときに、XY平面上において2次元的に配列される。
【0044】
また、良品率もしくは不良率の不良分布を左右する製造設備20a〜20cなどの多くは、ウエハをステージ上に載せて製造プロセスでの処理を行っている。このため、各製造設備20a〜20cなどでの処理結果の面内分布を管理する。そして、面内分布については、均一で再現性があることが望ましい。すなわち、製造プロセスを実施した製造設備20a〜20cがすべて一緒で同じ結果を再現したと仮定すると、面内分布も常に一定であることが望ましい。面内分布については、ウエハの温度分布やガスの供給分布などではミクロな分布は無く、マクロな分布が一般的である。
【0045】
このような面内分布について、人がウエハを目で見て感じる分布イメージを再現させる数値化を目指した。良品率もしくは不良率については、全チップ数に対する良品チップ数もしくは不良チップ数を演算したものであり、最終製品を確認することで既知の値となっている。このため、良品率もしくは不良率については既知の値を用いる。
【0046】
ただし、良品率もしくは不良率とウエハ面内での不良分布は、同じ不良率でもウエハ上の不良チップの分布が同じとは限らない。数値化するためには、不良であったチップなど、識別すべきものがウエハのどの位置に分布しているのかが明確であることが重要となる。このため、人が認識できる程度の「位置」をウエハ上において分割し、例えば、後述するように同心円状や横方向および縦方向に更にそれぞれをブロック(最外周、中央、中心や上、中、下や左、中、右)に分割した17位置として表す。そして、ウエハのうち17位置に分割したそれぞれの部分の面積は同面積ではないたではないため、面積補正を考慮して数学的に平準化したうえで数値化を行う。
【0047】
また、17位置について、更に人が感じるブロック(最外周、中央、中心や上、中、下や左、中、右など)として括る。ウエハにおいて人が感じるブロックとしては、例えば、同心円状に分割したブロックのイメージ(以下、円イメージという)と、ウエハの表面における一方向を横方向として横方向に分割したブロックのイメージ(以下、横イメージという)と、一方向に対して直交する縦方向に分割したブロックのイメージ(以下、縦イメージという)などが挙げられる。このような異なる複数のブロックにおいて、17位置をそれぞれ括る。勿論、ここで挙げたブロック以外のブロックとして各位置を括ることも可能である。
【0048】
さらに、人の目によると、同じ位置でも不良分布の強さを感覚として把握することができる。換言すれば、強さは濃度と表現することもでき、単位当たりの識別すべきチップの数のことを意味している。これについても、単位当たりの位置毎の良品率として表現することも可能であるが、分解能が100にしかならないし、位置を括った範囲のバラツキも表現できない。
【0049】
そのため、バラツキを標準偏差として求め、さらに位置関係における面積比も考慮し、良品率とも整合させるようにする。具体的には、整合させるための方程式を設定する。この方程式で得られた値は、不良率や分布の位置や強さなどを総合的に人が見たイメージに近い分解能を持つ数値として提供できる。より詳しくは、17位置での分布を標準偏差で求めている。更に、面積補正した状態の標準偏差にして、良品率とを掛け合わせて「強さ」にしている。この方程式は良品率と同じ傾きを持つ数値化を実現している。
【0050】
分布イメージの数値化は、ウエハ上の不良チップの分布イメージを人が直接観察しなくても、コンピュータに自動的に認識させられるようにするために行う。これを行うためには、分布のイメージを数値化するにあたり、分布イメージの「位置」の数値化を行うことと、分布イメージの「強さ」の数値化を行うこと等が必要となる。例えば、便宜的に、各位置について、不良チップ数をユーザが手入力すると、自動的に分布イメージの強さの数値化が行われる仕組みとしている。
【0051】
そして、例えば既知となっている「不良率」に加えて、後述するようにして数値化した「位置」および「強さ」を用いることで、ウエハの不良チップの分布イメージを表す。例えば、後述するようにして数値化した分布の「位置」と「強さ」の合成値を4〜5桁の数値で表す。このようにして数値化された不良分布を管理することで、ウエハ内における不良分布と製造設備の異常との因果関係を自動的に解析することが可能となる。以下、分布イメージの数値化を具体的にどのように行っているかについて説明する。
【0052】
〔分布イメージの位置の数値化〕
分布イメージの「位置」については、ウエハの表面をXY平面と見立てて、X−Y二次元として捉えることができる。ウエハ上には、半導体製品を構成するチップが二次元的に配列されており、各半導体製品のチップ毎に良否判定が行われている。そして、不良となったチップの座標は、ウエハ内において分布として存在している。分布はウエハ毎にある。ウエハ毎の分布は“1つのイメージ”として人の目で見ることができると同時に“不良チップ数という数字”として表現することもできる。
【0053】
ただし、不良チップ数が同じ100チップであったウエハであっても、ウエハ上における分布イメージの「位置」という視点では幾通りもある。ウエハ平面にXY座標軸を設定し、全不良チップのXY座標を示した全不良チップ座標群を表すことで、分布イメージにおける「位置」とすることができる。しかし、人の目で認識される分布イメージの「位置」は“括り”であり、“この辺り”という大雑把なものであって、個々の不良チップのXY座標を認識しているのではない。このため、ここでは人の目で認識される分布イメージの「位置」を“括り”、換言すれば“この辺り”と認識できるように数値化する。すなわち、ウエハ上において、人が感じる分布イメージの「位置」を数値化する。
【0054】
具体的には、まず、円形状で構成されるウエハの“どの部分”であるかを人の位置感覚に基づいて定義する。ウエハは予め既知となる円形状のものであるが、サイズが6インチウエハ、8インチウエハ、10インチウエハなど異なるものが存在している。ところが、人はウエハサイズに関わらず、ウエハの“どの部分”であるかという一定の感覚があるため、それを定義する。
【0055】
また、分布の分解能については、利用局面に見合った分解能にするべきであり、ここでは製造設備20a〜20cの不良から影響される分布を示すことができる分解能としている。
【0056】
(1)分布イメージの位置の分解能
図3(a)に示すように、円イメージとして同心円状にウエハを3分割する。すなわち、最外周、中間、中心の3分割の分解能とし、それぞれ最外周をx、中間をy、中心をzとして定義する。
【0057】
同様に、
図3(b)に示すように、横イメージとして横方向に沿ってウエハを3分割する。すなわち、上、中、下の3分割の分解能とし、それぞれ上をx、中をy、下をzとして定義する。
【0058】
さらに、
図3(c)に示すように、縦イメージとして縦方向に沿ってウエハを3分割する。すなわち、左、中、右の3分割の分解能とし、それぞれ左をx、中をy、右をzとして定義する。
【0059】
なお、本明細書では、円イメージについてcircleを意味するciで表し、横イメージについてrowを意味するroで表し、縦イメージについてcolumnを意味するcoで表している。
【0060】
このように、円イメージ、横イメージ、縦イメージの3種類において、それぞれ3点ずつの要素でウエハの分布イメージの位置を定義する。3種類それぞれで3点の分解能としているため、組み合わせとしては27通り可能であるが、位置として実在する組み合わせは後述するように17通りとなる。したがって、分布イメージの位置については、17位置に分けられ、分解能は「17」と定義することができる。
【0061】
なお、ここでは、分布イメージを17位置に分ける場合について説明したが、利用目的に応じて適宜変えることができる。例えば、円イメージ、横イメージ、縦イメージをそれぞれ3分割ずつしたが、分割数はそれ以下もしくはそれ以上であっても良く、分割数に応じて分布イメージの位置の数、つまり分解能を定義することができる。
【0062】
(2)分布イメージの位置の詳細
上記のように分布イメージを円イメージ、横イメージ、縦イメージそれぞれで3分割する場合、それぞれの位置は、
図4A〜
図4Cに示す位置として定義される。本図中においては、分布イメージの位置をci、ro、coのマトリクスで示してある。すなわち、ci、ro、coそれぞれについて、3分割したx、y、zのいずれの位置に該当しているかを「*」印を示すことで表してある。また、
図4A〜
図4Cは断面図ではないが、該当する位置について、ハッチングを示すことで図を見易くしてある。
【0063】
このように、ウエハにおける分布イメージの位置について、左上最外周位置、中央上方最外周位置、右上最外周位置・・・というように、ウエハの各位置が順番に定義され、最後に中心位置が定義されることで17位置が定義される。これら17位置について、
図4A〜
図4Cに示したようにNo.1〜No.17として、識別番号を付けている。
【0064】
このように、分布イメージの位置について、
図5に列挙した17位置、つまり17パターンで定義することができる。これら17パターンすべてを組み合わせると、
図6に示されるように、ウエハの全面が網羅された状態となる。なお、
図5および
図6についても、断面図ではないが、該当する位置について、ハッチングを示すことで図を見易くしてある。
【0065】
〔分布イメージの強さの数値化〕
分布イメージの「強さ」については、不良チップ数、つまり不良チップの多さを表しており、「位置」がX−Y二次元として捉えられるものであるとすると、「強さ」はZ軸に相当する。
【0066】
上記したように、ウエハ上において、半導体製品を構成するチップが二次元的に配列されており、各半導体製品のチップ毎に良否判定が行われている。そして、不良となったチップの座標は、ウエハ内において分布として存在している。そして、不良となったチップの座標は、ウエハ内において分布として存在している。分布はウエハ毎にある。ウエハ毎の分布は“1つのイメージ”として人の目で見ることができると同時に“不良チップ数という数字”として表現することもできる。
【0067】
ただし、不良チップ数が同じ100チップであったウエハであっても、ウエハ上における分布イメージの「強さ」という視点では幾通りもある。しかしながら、分布イメージの「強さ」については、「位置における不良チップの濃度」で一意となる。したがって、ここでは、人が感じる分布イメージの「強さ」を“位置を分母とした不良チップの濃度”を表す数字に置き換える。すなわち、ウエハ上において、人が感じる分布イメージの「強さ」を数値化する。
【0068】
具体的には、計算により、各位置の面積、つまりチップ数に応じた面積補正値を求めておき、既知の位置情報に面積補正を行う。そして、ウエハ上の不良チップ座標を位置情報に整合させ、不良チップ数を算出して面積補正値による補正を行う。このような面積補正を行った後の各位置の不良チップ数の和は、ウエハ上における不良チップの濃度と等価となる。このため、その最大値を持つ位置を決める。これにより、面積補正後の不良チップ数が最も多い場所、つまり分布イメージの「強さ」が強い場所を決めることができる。
【0069】
図5に示されるように、17パターンで定義したウエハ上の各位置の面積は異なっている。このため、各位置に含まれるチップ数も異なっており、単純に不良チップ数の絶対値をそのまま濃度として用いて分布イメージの「強さ」を定義することはできない。すなわち、人が見て感じる不良チップの濃度と計算上求められる不良チップ数の絶対値が示す濃度とは違うため、不良チップ数の絶対値が示す濃度について補正することが必要になる。
【0070】
そして、人は、最終的にウエハを1枚として1つの強さというイメージを感じている。これを論理的に再現することが必要である。これを「強い位置の順位」と「全体のバラツキ」に分けて考えることで行う。
【0071】
(1)面積補正の方法
各位置における不良チップの濃度を求めて強い位置の順位付けを行うためには、前提として、面積が様々である各位置を同じ面積相当に補正する必要がある。したがって、ここではウエハ上で面積が違う位置に対する不良チップ数から面積補正を行ってから不良チップの濃度を求めるようにする。
【0072】
例えば、
図7(a)に示すように、ウエハ上において、位置が左、中、右の3種類に分割されていて、左の面積が9、中の面積が4、右の面積が1であったとする。この場合において、図中に示すように、不良チップ数がいずれも1であったとすると、人が見た場合、不良チップの濃度は左<中<右の大小関係となるように感じる。すなわち、左、中、右それぞれについて、それぞれ不良チップの濃度を1/9、1/4、1/1と頭の中で解釈している。
【0073】
この場合において、物理的な位置情報については補正できないため、不良チップ数を補正する。
図7(a)に示した各位置では、すべての位置において実際には不良チップ数が1つであるが、
図7(b)に示すように、面積補正をすると、不良チップ数が左の位置では1つが2.25に補正され、中の位置では1つが1つのまま、右の位置では1つが0.25に補正される。これは平均値になるように補正した例であり、実際の不良チップ数を数学的に補正した結果となるため小数点が付く場合がある。このようにすることで、すべての位置において全域が同様の濃度で表されるように補正される。
【0074】
(2)補正値の求め方
上記したように、分布イメージの「位置」について17位置を定義している。この位置は机上の計算で面積が求められる。その方法はチップサイズを運用上の最小とした値でウエハ上を網羅するX−Y配列を作成したうえで、位置に位置付けられるチップ数の違いを面積の違いに置換えて補正係数を決定する。この場合、平均面積に合うように補正係数を求める事が望ましい。この補正係数は、チップサイズに依らず、同一インチウエハであれば共通して使用できる係数となる。例えば、
図8に示すような有効チップ総数が968のウエハを例に挙げると、例えば補正係数は
図9に示した表のように設定される。
【0075】
図9は、17位置の平均チップ数で正規化した場合を示している。
図9に示すように、位置1、3、6、8はチップ数が60、位置2、4、5、7はチップ数が70、位置9、11、14、16はチップ数が10、位置10、12、13、15はチップ数が66、位置17はチップ数が144となっている。平均値については、有効チップ総数が968で、17位置であることから、1つの位置当たりの平均チップ数が56.9となる。したがって、各位置の補正係数は、平均チップ数/各位置のチップ数となる。例えば、位置1においては、チップ数が60であることから、平均チップ数/位置1のチップ数が56.9/60となり、補正係数は0.95となる。したがって、各位置のチップ数に対して補正係数を掛けた値は、一律に56.94になり、すべての位置についてチップ数を正規化できていることが分かる。
【0076】
このようにして、面積補正値となる補正係数を設定でき、各位置のチップ数に対して補正係数を掛けることにより、各位置のチップ数を正規化することが可能となる。
【0077】
(3)補正値による補正および強い位置の順位
続いて、ウエハ上の不良チップ座標を位置情報に整合させ、不良チップ数を算出して面積補正値による補正を行う。
【0078】
まず、予め使用するウエハについて、検査工程で検査装置が測定した情報と整合する原点、例えば左上の点を原点と決め、ウエハの表面をXY平面と見立てて、分布イメージの「位置」で定義した各位置を示すXY座標情報からXY座標の最大値を求める。これにより、XY平面におけるX方向およびY方向それぞれにおけるチップ配列が判り、各位置のチップ数やウエハ上における総チップ数が判る。
【0079】
一例で説明すると、分布イメージの「位置」で定義した各位置を示すXY座標情報、すなわちci、ro、coをそれぞれx、y、zに3分割して割り付けることでXY座標が決まる。そして、例えばXY座標におけるX座標とY座標の最大値が36であったとすると、それを3分割した12チップ毎に横イメージのx、y、zと縦イメージのx、y、zを割り付けることになる。
【0080】
最後に、整合後の各位置における不良チップの数の合計を求める。そして、上記したように求めた補正係数を掛けることで、解析用の位置における不良チップ数を補正する。このようにして面積補正が為され、すべての位置で等価となるため、各位置において補正された不良チップ数は各位置における濃度と等価になる。
【0081】
そして、補正後の不良チップ数を使い、位置毎の不良チップ数の総和を算出し、一番大きな数値の位置を順位付けする。
【0082】
(4)強さの表現の方法
人が感じる不良分布の強さで解析に意味のある度合いを決める。具体的には、人は強さを「強い、普通、弱い」という3つの度合で感じることが多い。
【0083】
解析に必要となる度合を考えると、一番良い状況とは不良分布の強さが「均一」であり、均一から外れた強さのときに“どこに”“どれだけ”外れたのかをコンピュータ130にて自動的に見極められるようにすることが好ましい。
【0084】
これらを鑑みて、不良分布の強さを複数の度合いに分けて表現し、その強さの度合いに意味を持たせて分布が自動的に認識できるようにしている。ここでは、標準偏差に基づいて強さの度合いを分けており、分ける強さの度合いを“0”、“5”、“9”の「3種」としている。それぞれ、「0は、均一」、「5は、まばら」、「9は、有意」を表現しているものと決めている。ここでいう標準偏差に委ねているのは、円イメージ、横イメージ、縦イメージ毎にx,y,zとブロック分けした単位のばらつきを求めている。すなわち、母集団は円、横、縦とそれぞれあり、その中で、x、y、zに識別した値の標準偏差を求めることで、各イメージのx、y、zの偏りが数値化できることになる。この段階では、人が目で見た分布が円、横、縦にどのように表れているかを示すにとどまっている。いうなれば、分布の位置の強さであり、後述するウエハ全体の総合的な強さと混同しないように注意が必要である。なお、ここで示した不良分布の強さの度合いは一例であり、運用の目的に応じて数値やその意味について決めれば良い。
【0085】
上記したような面積補正を行った場合、単純に補正後の不良チップ数の合計数で強さが決まるのは位置における強さだけであるため、ここでは、単なる強さではなく、ウエハ全面における全ての位置における強さを鑑みた、ウエハ全体をイメージした濃度の度合いを求める。すなわち、人の感性を表現できるようにする。
【0086】
ここまでは、分布イメージの位置を3種(ci,ro,co)に分けているため、それぞれを単独で補正されていた。ここでは、3種(ci,ro,co)の強さを重ね合せしたものを「ウエハ全体の強さ」としている。
【0087】
(5)強さの合算方法
上記したように分けられた強さの度合い“0”、“5”、“9”は、値が大きいほど強さが強いことを示している。このため、合算については、単純に、3種(ci,ro,co)の強さそれぞれの総和を演算することによって行う。3種(ci,ro,co)の強さそれぞれについて強さの度合い“0”、“5”、“9”の3種あることから、
図10に示すように、組み合わせとしては、3
3となる27種類となる。ただし、総和の種類としては、異なる組み合わせであっても総和の値が同じになることがあるため、0、5、9、10、14、15、18、19、23、27の10種類となる。
【0088】
ここでいう総和を最終強さとして、連続値とする。例えば、
図10においては、総和=0のときを連続値の初期値10とし、総和27に至るまで、連続値10〜19の値を付してある。なお、ここでは連続値の初期値を10として、連続値10〜19を付してあるが、この値については任意であり、必ずしも初期値を10としなくても良い。
【0089】
〔分布イメージの位置と強さの合成〕
上記のようにして、分布イメージの位置と強さを得ることができる。このようにして得た分布イメージの位置と強さを合成し、数値化させる。
図11Aおよび
図11Bは、分布のイメージの位置と強さを合成したときの全パターンをマトリクスとして示したものである。なお、本図では、濃淡のイメージをハッチングによって示してあるが、17位置それぞれについて、強さを濃淡によって分けてマトリクス状に配置してある。No.2〜No.15については、2つの位置について同じマトリクス中に表してあるが、これらは左上角から右下角を通る対角線を中心として線対称の位置にあるもの同士であり、基本的に分布イメージの強さが等しくなることから、共通図として示してある。ここで示したパターンが異常解析装置によって分布イメージの「位置」および「強さ」を表現できる分解能となる。
【0090】
(1)分布イメージの位置の数値化
上記した
図11Aおよび
図11Bに示すマトリクスにおけるすべての組み合わせについて、所定の規則に従って分布イメージの位置および強さを数値化する。ここでは、所定の規則を以下のように定義している。
【0091】
まず、分布イメージの位置、具体的には17位置を「分類」として、各分類を表す桁として、任意の桁を割り当てる。ここでは、一例として、「分類」については0100000から1700000の桁を割り当てている。
【0092】
次に、分布イメージの「位置」を示すci、ro、coそれぞれを表す桁として、任意の桁を割り当てる。ここでは、「分類」とは異なる桁をci、ro、coそれぞれを表す桁として割り当てており、ciについては10000の桁、roについては1000の桁、coについては100の桁を割り当てている。
【0093】
続いて、ci、ro、coそれぞれについて、3分割して表すx、y、zそれぞれについて値を割り当てる。ここでは、xを1、yを2、zを3としている。また、x、y、zがci、ro、coのいずれにあるかによって、桁数を変える。換言すれば、ci、ro、coそれぞれについて桁数を変えてx、y、zを表している。例えば、ciを10000の桁とし、ciにあるxは10000、ciにあるyは20000としている。また、roを1000の桁とし、roにあるxは1000としている。また、coを100の桁とし、coにあるxを100としている。
【0094】
(2)「位置」と「強さ」の合成
上記したように、分布イメージの「強さ」については、最終強さが「強さ」を数値化した値となる。
【0095】
そして、分布イメージの位置の数値化された値、すなわち「分類」、「ci、ro、co」、「x、y、z」を特定の桁に割り当て、さらに「強さ」が数値化された値を合算することで、合計値を求める。例えば、No.2の位置において、ciがx、roがx、coがy、最終強さが17である場合には、0100000の桁がNo.2を示す0200000、ciを表す10000の桁がxを示す10000、roを表す1000の桁がxを示す1000、coを表す100の桁がyを示す200となる。そして、これらに対して「強さ」を表す最終強さの17を加算した値、すなわち0200000+10000+1000+200+17=0211217が分布イメージの「位置」と「強さ」を合成して数値化した値となる。
【0096】
このようにして特定の桁に割り当てることで「分類」、「位置」および「強さ」を数値化した値が得られるため、それを17位置すべてについて、10種類の「強さ」について数値化した表が
図12A〜
図12Dである。これらの図に示されるように、合算結果はすべて異なった値となる。
【0097】
このように、合算結果と連番の少なくとも一方の監視を継続することで、例えば下記の(a)〜(d)のような異常の傾向を監視することが可能となる。
【0098】
(a)分布が変わった場合には、**00000桁の単位が変化する。(b)同じ分布であったとしても、強さが変わった場合には10桁の単位が変化する。(c)連番のプロットから異常に気付き易くなる。(d)異なる品種のグラフを相互に監視することで、共通の異常に気付き易くなる。
【0099】
これらのうち(a)については、上記した通り、**00000桁が分布イメージの「位置」を示していることから**00000桁が変わることによって不良分布の位置が変化したことが判る。同様に、(b)については、上記した通り、最終強さがそのまま数値として加算されていて、10桁単位で表されていることから、同じ分布の中で強さが変わった場合は10桁単位で変化することになる。これらによって、1つの製品について、分布の「位置」や「強さ」の変化を継続的に監視することができる。
【0100】
一方、同一の製造装置は色々な製品や異なる工程の処理を担うため、その製造装置によって複数の製品の処理を行ったときの異常の傾向の監視としても用いられる。すなわち、(c)については、同じ製品を複数製造したときに、同じ処理を施したのであれば同じ結果が得られているはずである。また、(d)については、異なる製品を製造したときに、それぞれの分布を監視し、似たような連番の変化を示すような結果になったときには、共通の異常の傾向があると気づくことができる。
【0101】
このように、分布イメージの「位置」および「強さ」を自動的に数値化することにより、単に数値を監視することによって異常の傾向を監視することが可能となる。また、ここでは「分類」を17位置で規定しているのに加えて、円イメージ、横イメージおよび縦イメージという人がウエハの分布を見たときにどのような感じで強くなっているかを感じ易いブロックに分けている。そして、各ブロックにおいて3分割したx、y、zそれぞれにおいて「強さ」を数値化し、その合計値によって最終強さを求めていることから、ウエハの分布を人が見たときに感じる“どのような”感じで不良分布が強くなっているかを表現することができる。
【0102】
また、「強さ」が“均一”、“まばら”、“有意”であることを数値化する際に、標準偏差を用いている。ウエハに対して製造されるチップ数は製品やウエハインチなどに応じて変えられ、固定ではないため、単純に不良チップ数によって「強さ」を表現することができない。これに対して、標準偏差を用いることで、ウエハ面内でのパラメータを標準偏差のバラツキをもって定めることができる。このため、標準偏差のバラツキをもって「強さ」を定め、その「強さ」を数値化する際に、その閾値となる係数をユーザが外部から変数として入力できる機能を備えることで、適切な係数を設定できる。
【0103】
本実施形態の場合、「強さ」を“均一”、“まばら”、“有意”のいずれになるかを判断するための係数として第1閾値(例えば13)と第2閾値(例えば30)を設定している。そして、標準偏差が第1閾値未満であれば“均一”、第1閾値以上第2閾値未満であれば“まばら”、第2閾値以上であれば“有意”としている。このときの係数となる閾値についてはユーザが適宜設定できる。また、標準偏差を用いることで、面内におけるチップの数、その分布などを適切な値を設定できる。すなわち、チップの大きさに応じて同じ面積であってもチップ数が変わり、例えば1チップ当たりの大きさが小さくなれば同じ面積であってもチップ数は多くなる。このため、チップの大きさに応じてそれぞれの位置に含まれるチップ数が変わる。しかしながら、不良率、すなわち全体のチップ数に対する不良チップ数をx、y、zの3のパラメータに基づく標準偏差のバラツキで表し、それをグラフに表すと、その傾きが出る。したがって、幾つかに分けられた位置における不良チップ数の標準偏差のバラツキをもって閾値を決めれば、面内におけるチップの数が変わったとしても、それに対応して適切に「強さ」を決めることができる。
【0104】
また、このようにして、分布イメージの「位置」と「強さ」を数値化して合成することにより、コンピュータ130によって分布イメージを数値に基づいて把握することが可能となる。そして、分布イメージの「位置」と「強さ」が把握できることで、人がウエハを見たときに、不良分布が“どのような感じ”であるかという分布イメージの「様子」をコンピュータ130で把握することも可能となる。
【0105】
以上のようにして、分布イメージの数値化が行われる。すなわち、ウエハを面内において複数の位置として分割し、複数の位置をそれぞれ数値化すると共に、複数の位置毎の強さのバラツキを標準偏差として求め、該標準偏差に基づいて強さを数値化している。このような数値化を半導体装置の製造過程の主な製造設備毎、例えば製造設備20a〜20c、モニター設備30および試験設備40に対して行っている。これにより、各製造設備20a〜20cやモニター設備30および試験設備40の異常の解析や異常と不良分布との因果関係を解析することが可能となる。
【0106】
例えば、製造設備毎に1つ1つのデータを蓄積していき、それを同じアルゴリズムに従って数値化したデータに置き換えて情報蓄積部132に格納していく。そして、最終工程が終わった後に、試験設備40による試験工程の結果として得られた良品率や不良分布に基づいて、蓄積された同じロットのデータを逆引きし、同じような分布があるところを調べることで因果関係を解析することが可能となる。そして、不良分布の監視により、変化点を先取りして品質低下の原因を早期対処することが可能となる。
【0107】
さらに、上記したように、製造設備毎に1つ1つのデータについて数値化を行ってから蓄積していることから、データ量の縮小を図ることが可能になると共に、コンピュータ130によって異常の傾向を継続的に監視することが可能となる。
【0108】
したがって、膨大なデータを蓄積しなくても、製造設備20a〜20cやモニター設備30および試験設備40の異常と不良分布との因果関係を自動的に解析することが可能な半導体装置の製造過程における異常解析装置とすることが可能となる。
【0109】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0110】
例えば、上記第1実施形態では、半導体装置の製造に用いるウエハの分布イメージを人が感じるブロックとして括る際に、円イメージや横イメージおよび縦イメージとして把握した。しかしながら、これはブロックとして括る場合の一例を示したに過ぎず、これら各イメージのすべてを用いなくても良いし、その他のイメージを加えて分布イメージとしても良い。すなわち、ウエハの全面を複数の位置(第1実施形態では17位置)に分類し、これを人の感覚に合わせて区画した複数のブロック(第1実施形態では円ci、横ro、縦co)に分け、さらに各ブロックで不良分布について解析している。そして、各ブロックでの解析結果を重ね合わせたときに、不良が一番ばらついて発生しているのがどのブロックかが分かるようにしている。このように解析結果の重ね合わせを行うために、ウエハ全面を複数種類のブロックに分ければ良く、その種類は数については任意である。
【0111】
また、上記第1実施形態では、分布イメージの「位置」や「強さ」の数値化を行う場合の一例を示したが、数値化の方法については他の方法としても良い。例えば、第1実施形態では、ウエハ全面を3種のブロック(円ci、横ro、縦co)を3分割ずつすることで17位置に分類した。そして、3種のブロックを3分割した位置をそれぞれx、y、zで表し、数値化の際には分類を表す桁と、ブロックを表す桁とを異なる桁とし、さらにx、y、zに異なる値を割り当てている。このように、分類(すなわち位置)とブロックとを異なる桁とし、かつ、ブロックを分割したときの各位置に割り当てる値を異なる値とすれば、桁数や数値に関わらず、分布イメージの「位置」および「強さ」を把握できる。したがって、第1実施形態の説明と異なる桁や異なる値を用いていても、同様の効果を奏することが可能である。
【0112】
また、上記第1実施形態では、分布イメージの数値化を行って異常について自動的に解析して監視する部分に加えて、製造設備などの異常と不良分布との因果関係についても解析する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、少なくとも、分布イメージの数値化を行い、その結果に基づいて、何らかの異常の傾向を解析するものであれば良く、必ずしも製造設備などの異常と不良分布との因果関係まで解析できるものでなくても良い。
【0113】
また、上記第1実施形態では、情報入手数値化部131によって、処理結果などの情報入手とその数値化の両方を行っているが、これらが同じブロックで行われている必要はなく、別々のブロックで行われていても構わない。