(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送信装置は、前記ΔΣ変調器の出力が与えられるとともに前記制御信号の周波数を含む信号除去帯域を有する帯域除去フィルタとを備え、前記帯域除去フィルタの出力を前記ΔΣ変調信号として出力する請求項2に記載の送信システム。
前記送信装置は、前記通信信号にΔΣ変調を行うΔΣ変調器と、前記ΔΣ変調器の出力が与えられるとともに前記制御信号の周波数を含む信号除去帯域を有する帯域除去フィルタとを備え、前記帯域除去フィルタの出力を前記ΔΣ変調信号として出力する請求項1に記載の送信システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態の説明]
最初に実施形態の内容を列記して説明する。
(1)一実施形態である送信システムは、通信信号に対してΔΣ変調されたΔΣ変調信号の送信を行う送信システムであって、前記ΔΣ変調信号を受信する受信装置と、前記ΔΣ変調信号を、信号伝送路を介して前記受信装置へ送信する送信装置と、を備え、前記送信装置及び前記受信装置の少なくとも一方は、前記送信装置又は前記受信装置の制御に関する制御信号を前記信号伝送路に与えることで前記制御信号を前記送信装置及び前記受信装置の他方に送信し、前記ΔΣ変調信号は、前記制御信号の周波数において量子化雑音が抑圧されている。
【0015】
上記構成の送信システムによれば、送信装置及び受信装置の少なくとも一方によって信号伝送路に与えられる制御信号がΔΣ変調信号の量子化雑音と重畳するのを抑制することができる。このため、ΔΣ変調信号を無線装置に対して伝送するための信号伝送路に、制御信号を伝送させることができる。
【0016】
(2)上記送信システムにおいて、前記送信装置は、前記通信信号にΔΣ変調を行うΔΣ変調器を備え、前記ΔΣ変調器は、前記通信信号の周波数を含む第1周波数帯域の量子化雑音を阻止するとともに、前記制御信号の周波数を含む第2周波数帯域の量子化雑音を阻止する特性を有していてもよい。
この場合、通信信号の周波数と、制御信号の周波数とを異なるように設定し、通信信号と、制御信号とを多重化して送信することができる。
【0017】
(3)上記(2)の送信システムにおいて、前記送信装置は、前記ΔΣ変調器の出力が与えられるとともに前記制御信号の周波数を含む信号除去帯域を有する帯域除去フィルタとを備え、前記帯域除去フィルタの出力を前記ΔΣ変調信号として出力することが好ましい。
(4)また、上記(1)の送信システムにおいて、前記送信装置は、前記通信信号にΔΣ変調を行うΔΣ変調器と、前記ΔΣ変調器の出力が与えられるとともに前記制御信号の周波数を含む信号除去帯域を有する帯域除去フィルタとを備え、前記帯域除去フィルタの出力を前記ΔΣ変調信号として出力するものであってもよい。
【0018】
(5)上記送信システムにおいて、前記送信装置は、前記信号伝送路に伝送される信号から前記受信装置が送信した前記制御信号を抽出する制御信号抽出部を備えていることが好ましい。
(6)また、前記受信装置は、前記信号伝送路に伝送される信号から前記送信装置が送信した前記制御信号を抽出する制御信号抽出部を備えていることが好ましい。
これにより、送信装置及び受信装置は、制御信号を取得することができる。
【0019】
(7)上記送信システムにおいて、前記受信装置は、前記信号伝送路を通じて与えられる前記ΔΣ変調信号を2値化する2値化器を備えていることが好ましい。
この場合、信号伝送路を通じて受信装置に与えられるΔΣ変調信号が伝送される間に減衰したとしても、2値のパルス信号であるΔΣ変調信号を2値化器によって2値化することで、減衰の影響が緩和されたΔΣ変調信号を得ることができる。
【0020】
(8)また、一実施形態であるアンテナシステムは、上記(1)に記載の送信システムを備えたアンテナシステムであって、前記受信装置は、1又は複数のアンテナ素子と、前記ΔΣ変調信号から得られる前記通信信号を前記1又は複数のアンテナ素子に与えて無線送信する1又は複数の送信部と、を備え、前記制御信号は、前記1又は複数の送信部の制御に関する信号を含み、前記1又は複数の送信部は、前記送信装置から送信された前記制御情報に基づいて無線送信する。
【0021】
上記構成のアンテナシステムによれば、ΔΣ変調信号を受信装置に対して伝送するための信号伝送路に、送信部の制御に関する信号を伝送させることができ、新たに信号経路を設けることなく、送信部の制御を行うことができる。
【0022】
(9)また、上記アンテナシステムにおいて、前記受信装置は、前記ΔΣ変調信号を前記複数の送信部に分配する分配部を備え、前記制御信号は、前記分配部の制御に関する信号を含むものであってもよい。
この場合、信号伝送路に、分配部の制御に関する信号を伝送させることができ、新たに信号経路を設けることなく、分配部の制御を行うことができる。
【0023】
[実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
〔第1実施形態について〕
図1は、第1実施形態による通信システムの構成を示すブロック図である。
この通信システム1は、無線通信を行うためのシステムであり、信号処理装置2と、無線装置3とを備えている。
【0024】
無線装置3は、無線信号の送受信を行う機能を有している。
信号処理装置2は、送信信号を無線装置3に与える。
無線装置3と、信号処理装置2とは、信号伝送路としての信号ケーブル4によって互いに接続されている。信号処理装置2は、信号ケーブル4を介して、送信信号や、無線装置3の制御に関する制御信号を無線装置3に与える。
【0025】
ここで、信号処理装置2は、後述するように、送信信号(通信信号)に対してΔΣ変調を行って得たデジタル信号(パルス信号)であるΔΣ変調信号を送信する送信装置としての機能を有し、無線装置3は前記ΔΣ変調信号を受信する受信装置としての機能を有している。また、信号ケーブル4は、信号処理装置2と無線装置3との間でΔΣ変調信号が伝送される信号伝送路としての機能を有している。つまり、信号処理装置2と、無線装置3と、信号ケーブル4とは、送信信号(通信信号)に対してΔΣ変調されたΔΣ変調信号の送信を行う送信システムを構成している。
【0026】
また、制御信号とは、無線装置3又は信号処理装置2の制御に関する信号であり、無線装置3が有する機能部を制御するための信号や、無線装置3の動作状態や環境状態を示す情報、信号処理装置2が有する機能部を制御するための信号や、信号処理装置2の動作状態や環境状態を示す情報等、無線装置3又は信号処理装置2の制御のために必要な情報を含む信号等を指す。
【0027】
信号処理装置2は、直交変調部10と、変調装置9と、加算器13とを備えている。
直交変調部10は、デジタルのベースバンド信号(I(In−phase)信号及びQ(Quadrature−phase)信号)に対して、直交変調を行うとともに、無線周波数にアップコンバートする。直交変調部10は、無線周波数の信号であるRF信号(Radio Fequency信号)を出力する。この直交変調部10が出力するRF信号は、無線装置3によって無線送信される送信信号である。
直交変調部10が出力するRF信号(送信信号)は、変調装置9に与えられる。
【0028】
変調装置9は、直交変調部10が出力する送信信号に対してΔΣ変調を行い、ΔΣ変調信号を出力する。変調装置9は、ΔΣ変調器(DSM)11と、第1バンドエリミネーションフィルタ12とを備えている。
【0029】
ΔΣ変調器11は、直交変調部10が出力する送信信号に対してΔΣ変調を行い、周波数成分として送信信号を含むΔΣ変調信号を出力する。ΔΣ変調器11が出力するΔΣ変調信号はデジタル信号(パルス信号)である。
ここで本実施形態におけるΔΣ変調器11は、2つの入力ポートから信号を入力することができるマルチキャリア型のΔΣ変調器によって構成されている。
【0030】
図2は、本実施形態のΔΣ変調器11の一例を示すブロック図である。
ΔΣ変調器11は、第1信号U
1が入力される第1入力ポート16、第2信号U
2が入力される第2入力ポート17、及びΔΣ変調信号を出力する単一の出力ポート18を備えている。ΔΣ変調器11は、複数の入力ポート16,17それぞれに対応する複数のループフィルタ(第1ループフィルタ19、第2ループフィルタ20)と、加算器21と、量子化器22と、を備えている。
複数のループフィルタ19,20は、それぞれ、対応する入力ポート16,17に接続された第1入力部19a,20aと、フィードバック経路23,24を介して量子化器22の出力側に接続された第2入力部19b,20bと、を備えている。
【0031】
第1入力部19a,20aには、対応する入力ポート16,17に入力された入力信号U
1,U
2が入力される。第2入力部19b,20bには、量子化器22の出力Vのフィードバック信号Vが入力される。
【0032】
複数のループフィルタ19,20は、それぞれ、差分器19c,20cを備えている。差分器19c,20cには、それぞれ、第1入力部19a,20aに接続された第1経路19d,20dと、第2入力部19b,20bに接続された第2経路19e,20eと、が接続されている。差分器19c,20cは、それぞれ、入力信号U
1,U
2と、量子化器22からのフィードバック信号Vとの差分U
1−V,U
2−Vを求める。
【0033】
差分器19c,20cによって求められた差分U
1−V,U
2−Vは、各ループフィルタ19,20に設けられた内部フィルタ19f,20fに入力される。なお、第1ループフィルタ19の内部フィルタ19fの伝達関数をL
1(z)と表現し、第2ループフィルタ20の内部フィルタ20fの伝達関数をL
2(z)と表現する。
【0034】
各内部フィルタ19f,20fの出力L
1(z)(U
1(z)−V(z)),L
2(z)(U
2(z)−V(z))は、各ループフィルタ19,20に設けられた加算器19g,20gに与えられる。
各加算器19g,20gには、第1入力部19a,20aに入力される入力信号U
1,U
2を加算器19g,20gに入力させるためのフィードフォワード経路19h,20hが接続されている。したがって、各加算器19g,20gは、入力信号U
1,U
2と、内部フィルタ19f,20fの出力L
1(z)(U
1(z)−V(z)),L
2(z)(U
2(z)−V(z))と、を加算する。
【0035】
各加算器19g,20gの出力(各ループフィルタ19,20の出力)Y
1,Y
2は、加算器21によって加算される。
【0036】
加算器21の出力Yは、量子化器22に与えられる。本実施形態の量子化器22は、2レベル量子化器であり、1bitのパルス列を量子化信号(ΔΣ変調信号)Vとして出力する。この量子化信号VがΔΣ変調器11の出力信号となる。なお、出力信号Vは、フィードバック経路23,24を介して各ループフィルタ19,20に与えられる。
【0037】
ΔΣ変調器11の出力Vは、下記の式(1)のように表される(式(1)においてN=2の場合)。式(1)において、STF
i(z)は第i入力信号U
i(z)についての第i信号伝達関数であり、NTF(z)は、ΔΣ変調器11全体での雑音伝達関数であり、E(z)は雑音伝達関数である。
【数1】
ここで、
【数2】
【0038】
第1ループフィルタ19の内部フィルタ19fは、第1雑音伝達関数NTF
1(z)を用いて示される伝達関数L
1(z)を持つ。第1雑音伝達関数NTF
1(z)は、第1ループフィルタ19に入力される第1信号U
1の周波数近傍の帯域における量子化雑音を抑制する特性(バンドストップ特性)を有するように設定される。つまり、第1雑音伝達関数NTF
1(z)における量子化雑音を抑制しうる帯域(量子化雑音阻止帯域)の中心周波数は、第1信号U
1の周波数となる。
【0039】
第2ループフィルタ20の内部フィルタ20fは、第2雑音伝達関数NTF
2(z)を用いて示される伝達関数L
2(z)を持つ。第2雑音伝達関数NTF
2(z)は、第2ループフィルタ20に入力される第2信号U
2の周波数近傍の帯域における量子化雑音を抑制する特性(バンドストップ特性)を有するように設定される。つまり、第2雑音伝達関数NTF
2(z)における量子化雑音阻止帯域の中心周波数は、第2信号U
2の周波数となる。
【0040】
上記構成のΔΣ変調器11は、第1入力ポート16に入力された第1信号U
1と、第2入力ポート17に入力された第2信号U
2とを、同時に単一の出力信号V(z)であるΔΣ変調信号に含めて出力することができる。
【0041】
本実施形態では、後述するように、第1信号U
1として直交変調部10から出力される送信信号がΔΣ変調器11に与えられる。このため、第1ループフィルタ19の第1雑音伝達関数NTF
1(z)は、量子化雑音阻止帯域の中心周波数が送信信号の周波数f
1となるように設定される。
【0042】
一方、第2信号U
2としての信号はΔΣ変調器11に入力されない。ただし、第2ループフィルタ20の第2雑音伝達関数NTF
2(z)は、量子化雑音阻止帯域の中心周波数が送信信号の周波数f
1とは異なる周波数であって後述する制御信号の周波数f
2となるように設定される。
【0043】
図3は、本実施形態のΔΣ変調器11による出力のパワースペクトラムの一例を示す図である。
図3に示すように、ΔΣ変調器11による出力(ΔΣ変調信号)は、送信信号の周波数f
1を中心周波数とする帯域B
1、及び制御信号の周波数f
2を中心周波数とする帯域B
2において、量子化雑音が抑圧(ノイズシェイピング)されている。帯域B
1と、帯域B
2とは、互いに異なる周波数帯域とされている。
【0044】
上述のように、第1雑音伝達関数NTF
1(z)における量子化雑音阻止帯域の中心周波数は、送信信号の周波数f
1となるように設定されている。また、第2雑音伝達関数NTF
2(z)における量子化雑音阻止帯域の中心周波数は、制御信号の周波数f
2となるように設定されている。
【0045】
よって、
図3に示すように、ΔΣ変調器11による出力には、送信信号の周波数f
1を中心周波数とする帯域B
1、及び受信信号の周波数f
2を中心周波数とする帯域B
2の2箇所に量子化雑音が抑圧されている帯域が表れる。
【0046】
このように、ΔΣ変調器11は、送信信号の周波数f
1を含む帯域B
1(第1周波数帯域)の量子化雑音を阻止するとともに、受信信号の周波数f
2を含む帯域B
2(第2周波数帯域)の量子化雑音を阻止する特性を有している。
【0047】
なお、ΔΣ変調器11による出力は、帯域B
1においては送信信号を有している。一方、帯域B
2においては第2信号U
2としての信号がΔΣ変調器11に入力されないので、ΔΣ変調器11による出力は、帯域B
2においては信号を有していない。
【0048】
図1に戻って、ΔΣ変調器11の第1入力ポート16には直交変調部10が出力する送信信号が与えられる。一方、ΔΣ変調器11の第2入力ポート17には何も入力されない。
ΔΣ変調器11は、出力ポート18からΔΣ変調信号を出力する。
ΔΣ変調器11から出力されたΔΣ変調信号は、第1バンドエリミネーションフィルタ12に与えられる。
【0049】
第1バンドエリミネーションフィルタ12は、ΔΣ変調器11と信号ケーブル4との間であって、ΔΣ変調器11と加算器13との間に接続されており、制御信号の周波数f
2を含む信号除去帯域を有している。本実施形態の第1バンドエリミネーションフィルタ12の信号除去帯域は、例えば、制御信号の周波数f
2を含む周波数帯域として帯域B
2を含む周波数帯域に設定されている。
よって、第1バンドエリミネーションフィルタ12は、ΔΣ変調器11からΔΣ変調信号が与えられると、前記ΔΣ変調信号の内、帯域B
2における量子化雑音を除去する。
【0050】
図4は、第1バンドエリミネーションフィルタ12の出力における帯域B
2の部分を拡大した拡大図である。
図4中、破線Hは、ΔΣ変調器11から出力されたΔΣ変調信号における帯域B
2の雑音のプロファイルを示している。また、実線Jは、第1バンドエリミネーションフィルタ12を通過した後のΔΣ変調信号における帯域B
2の雑音のプロファイルを示している。
【0051】
帯域B
2の量子化雑音は、他の帯域の量子化雑音と比較して抑圧されているが、まださらに抑圧可能な程度に存在している。
このため、ΔΣ変調器11から出力されたΔΣ変調信号は、第1バンドエリミネーションフィルタ12を通過すると、
図4に示すように、帯域B
2における量子化雑音のレベルが破線Hから実線Jまで低下する。
このように、第1バンドエリミネーションフィルタ12は、ΔΣ変調信号において量子化雑音が抑圧されている帯域B
2の量子化雑音のレベルをさらに低下させることができる。
【0052】
図1に戻って、変調装置9は、上述のように、送信信号にΔΣ変調を行うΔΣ変調器11と、ΔΣ変調器11の出力が与えられるとともに制御信号の周波数を含む信号除去帯域を有する第1バンドエリミネーションフィルタ12とを備えている。変調装置9は、第1バンドエリミネーションフィルタ12を通過した後のΔΣ変調信号を出力する。
【0053】
第1バンドエリミネーションフィルタ12を通過したΔΣ変調信号は、加算器13に与えられる。
また、加算器13には、制御信号生成部30が生成した制御信号が与えられる。
制御信号生成部30は、周波数f
2の制御信号を生成する。制御信号生成部30が生成する制御信号は、無線装置3が有する無線送信部46(後に説明する)を制御するために必要な情報を含んでいる。
制御信号生成部30は、周波数f
2の搬送波を変調することで、無線送信部46を制御するために必要な情報を含んだ制御信号を生成する。制御信号生成部30が生成する制御信号は、アナログ信号である。
【0054】
制御信号生成部30と、加算器13との間には、第1バンドパスフィルタ31が接続されている。第1バンドパスフィルタ31は、信号通過帯域が制御信号の周波数f
2を含むとともに、送信信号の通過を阻止するように設定されている。
よって、第1バンドパスフィルタ31は、制御信号生成部30から制御信号が与えられると、制御信号を通過させ、当該制御信号を加算器13に与える。
【0055】
加算器13は、変調装置9から出力されたΔΣ変調信号と、制御信号生成部30から出力された制御信号とを加算する。
加算器13の出力である、ΔΣ変調信号と制御信号とを加算した信号は、コネクタ33を通じて信号ケーブル4に与えられる。
このように、信号処理装置2は、第1バンドエリミネーションフィルタ12が出力したΔΣ変調信号を信号ケーブル4に与える。
【0056】
コネクタ33は、信号処理装置2の筐体34の外部に露出して設けられている。コネクタ33は、信号ケーブル4の一端が差し込まれることで、当該信号ケーブル4と加算器13とを接続する。
なお、信号処理装置2の筐体34は、直交変調部10や、変調装置9、加算器13等を内部に収容している。
【0057】
信号ケーブル4の他端は、無線装置3に接続されている。加算器13の出力は、信号ケーブル4を介して無線装置3に伝送される。
【0058】
ここで、ΔΣ変調器11(変調装置9)から出力されたΔΣ変調信号は、
図3で示したように、広帯域に亘って量子化雑音を含んでいる。
このため、加算器13によってΔΣ変調信号に加算された制御信号は、ΔΣ変調信号に含まれる量子化雑音と重畳するおそれがある。
【0059】
この点、本実施形態では、ΔΣ変調器11(変調装置9)から出力されたΔΣ変調信号は、制御信号の周波数f
2において(制御信号の周波数f
2含む帯域B
2の)量子化雑音が抑圧されている(
図3参照)。
このため、周波数f
2である制御信号を信号ケーブル4に与えれば、当該制御信号がΔΣ変調信号の量子化雑音と重畳するのを抑制することができる。これにより、変調装置9によるΔΣ変調信号を伝送するための信号ケーブル4に、制御信号を伝送させることができる。
【0060】
本実施形態のΔΣ変調器11は2つの入力ポートから信号を入力することができるマルチキャリア型のΔΣ変調器であることから、第1信号U
1として送信信号を入力する一方、第2信号U
2として信号を入力しないことで、量子化雑音が抑制されているが出力すべき信号成分が存在しない帯域B
2をΔΣ変調信号に設けることができる。
【0061】
本実施形態では、ΔΣ変調信号の帯域の一部に量子化雑音が抑制されている帯域B
2が設けられており、この帯域B
2を信号ケーブル4における信号の伝送に利用することで、信号ケーブル4による制御信号の送信を可能としている。
この結果、一の伝送線路である信号ケーブル4を用いて、デジタル信号であるΔΣ変調信号と、アナログ信号である制御信号とを多重化して伝送することができる。
【0062】
さらに、本実施形態では、
図4で示したように、変調装置9が備えている第1バンドエリミネーションフィルタ12が、ΔΣ変調器11が出力するΔΣ変調信号において量子化雑音が抑圧されている帯域である帯域B
2の量子化雑音のレベルをさらに低下させるので、さらに、信号ケーブル4を伝送する周波数f
2の制御信号の信号対雑音比等の信号品質をより高めることができる。
【0063】
このように、本実施形態では、送信信号に対してΔΣ変調されたΔΣ変調信号の送信を行う送信システムを構成している信号処理装置2と、無線装置3との間で、ΔΣ変調信号を伝送しつつアナログ信号である制御信号を高い信号品質で適切に伝送することができる。
【0064】
信号ケーブル4の他端は、無線装置3のコネクタ44に接続されている。
無線装置3は、第2バンドエリミネーションフィルタ40と、2値化器41と、第2バンドパスフィルタ42と、制御信号抽出部43とを備えている。
【0065】
信号ケーブル4に与えられた加算器13の出力は、コネクタ44を通じて第2バンドエリミネーションフィルタ40と、制御信号抽出部43とに与えられる。
【0066】
コネクタ44は、無線装置3の筐体45の外部に露出して設けられている。コネクタ44は、信号ケーブル4の他端が差し込まれることで、当該信号ケーブル4を第2バンドエリミネーションフィルタ40及び制御信号抽出部43に接続する。
このように、信号ケーブル4は、信号処理装置2と無線装置3とを接続し、加算器13の出力を無線装置3に伝送する。
【0067】
なお、無線装置3の筐体45は、第2バンドエリミネーションフィルタ40や、2値化器41、第2バンドパスフィルタ42、制御信号抽出部43の他、後述する無線装置3が有する各機能部を内部に収容している。
【0068】
第2バンドエリミネーションフィルタ40は、第1バンドエリミネーションフィルタ12と同様、制御信号の周波数f
2を含む周波数帯域として帯域B
2(
図3、
図4)を含む信号除去帯域を有している。
加算器13の出力は、変調装置9からのΔΣ変調信号と、制御信号生成部30からの制御信号とを加算したものである。よって、第2バンドエリミネーションフィルタ40は、加算器13の出力が与えられると、この出力の内、帯域B
2に含まれる制御信号を除去する。
これにより、第2バンドエリミネーションフィルタ40よりも後段の処理において、制御信号に起因する影響が生じるのを防止することができる。
【0069】
第2バンドエリミネーションフィルタ40は、加算器13の出力が与えられると、当該加算器13の出力から制御信号を除去し、変調装置9からのΔΣ変調信号を出力する。
第2バンドエリミネーションフィルタ40が出力するΔΣ変調信号は、2値化器41に与えられる。
2値化器41は、コンパレータ等によって構成されており、信号処理装置2から信号ケーブル4を伝送して与えられるΔΣ変調信号を2値化し、2値化したΔΣ変調信号を出力する。
【0070】
信号ケーブル4を伝送して無線装置3に与えられるΔΣ変調信号は、変調装置9から出力されたときと比較して伝送される間に減衰する。2値化器41は、このように減衰したΔΣ変調信号を2値化する。減衰したΔΣ変調信号であっても、2値のパルス信号であるΔΣ変調信号を2値化することで、減衰する前のΔΣ変調信号が復元される。これにより、2値化器41は減衰する前のΔΣ変調信号に近似したΔΣ変調信号を出力することができ、減衰の影響が緩和されたΔΣ変調信号を得ることができる。
【0071】
2値化器41から出力されるΔΣ変調信号は、第2バンドパスフィルタ42に与えられる。
第2バンドパスフィルタ42は、RF信号である送信信号を通過させる通過帯域を有している。これにより、第2バンドパスフィルタ42は、ΔΣ変調信号における送信信号の帯域外に存在する量子化雑音を除去し、送信信号を通過させることができる。
よって、ΔΣ変調信号が与えられた第2バンドパスフィルタ42は、送信信号を出力する。
【0072】
2値化器41と第2バンドパスフィルタ42との間には、出力端子50が接続されている。この出力端子50は筐体45の外部から露出して設けられている。出力端子50には、2値化器41が出力するΔΣ変調信号が与えられる。出力端子50は、2値化器41が出力するΔΣ変調信号を出力する。
よって、出力端子50に信号を計測するための機器を接続し、その出力信号を計測することで、2値化器41が出力するΔΣ変調信号を確認することができる。これにより、信号処理装置2からのΔΣ変調信号が無線装置3に正常に伝送されているか否かを確認することができる。
【0073】
第2バンドパスフィルタ42の出力は、第2バンドパスフィルタ42の後段に接続されている無線送信部46に与えられる。
無線送信部46は、第2バンドパスフィルタ42が出力するRF信号である送信信号に対して位相調整を行う移相器や、振幅調整を行う振幅調整器、送信信号を増幅するためのパワーアンプを備えており、与えられた送信信号の位相及び振幅を調整し、増幅する機能を有している。
【0074】
第2バンドパスフィルタ42が出力する送信信号は、無線送信部46に与えられることで、位相及び振幅の調整がなされるとともに増幅され、無線送信部46の後段に接続されたアンテナ48(アンテナ素子)に与えられる。
アンテナ48に与えられた送信信号は、無線信号として空間に放射され送信される。
【0075】
制御信号抽出部43は、信号ケーブル4を通じて加算器13の出力が与えられると、当該加算器13の出力から制御信号を抽出する。
制御信号抽出部43は、バンドパスフィルタ43aと、信号処理部43bとを備えている。
【0076】
バンドパスフィルタ43aは、制御信号を通過させる通過帯域を有している。これにより、バンドパスフィルタ43aは、ΔΣ変調信号における制御信号の帯域外に存在する量子化雑音を除去することができる。よって、バンドパスフィルタ43aは、加算器13の出力が与えられると、制御信号を出力する。
バンドパスフィルタ43aが出力する制御信号は、信号処理部43bに与えられ、信号処理部43bによって復調や増幅等の信号処理がなされた後、無線送信部46に与えられる。
【0077】
以上のようにして制御信号抽出部43は、加算器13の出力が与えられると、当該加算器13の出力から制御信号を抽出し、抽出した制御信号を無線送信部46に与える。
制御信号は、無線送信部46を制御するための信号であり、無線送信部46を制御するために必要な情報として、送信信号の位相や振幅、増幅率等の無線送信の設定に関する情報を含んでいる。
無線送信部46は、制御信号が与えられると、制御信号に含まれる前記情報に基づいて送信信号の無線送信に関する設定を行う。
【0078】
本実施形態の通信システム1(アンテナシステム)は、無線装置3が、アンテナ48と、ΔΣ変調信号から得られる送信信号をアンテナ48に与えて無線送信する無線送信部46とを備えており、無線送信部46は、信号処理装置2から送信された制御情報に基づいて無線送信するように構成されている。
この構成によれば、ΔΣ変調信号を無線装置3に対して伝送するための信号ケーブル4に、無線送信部46の制御に関する信号を伝送させることができ、新たに信号経路を設けることなく、信号処理装置2側から無線送信部46に関する制御を行うことができる。
【0079】
なお、本実施形態では、変調装置9は、ΔΣ変調器11と、ΔΣ変調器11の出力が与えられる第1バンドエリミネーションフィルタ12とを備えており、この第1バンドエリミネーションフィルタ12の信号除去帯域が制御信号の周波数f
2を含む周波数帯域となるように設定されている。
よって、例えば、第1バンドエリミネーションフィルタ12によって、制御信号として必要な信号品質が確保できる程度に量子化雑音を抑制できる場合には、ΔΣ変調器11が出力するΔΣ変調信号において、制御信号の周波数f
2を含む帯域の量子化雑音を抑圧することなく、第1バンドエリミネーションフィルタ12のみで、制御信号の周波数f
2に存在する量子化雑音を抑圧してもよい。
この場合においても、制御信号の周波数f
2に存在する量子化雑音が抑圧されたΔΣ変調信号を変調装置9に出力させることができる。
【0080】
また、逆に、制御信号の周波数f
2を含む帯域の量子化雑音が抑圧されたΔΣ変調信号をΔΣ変調器11に出力させることにより、制御信号として必要な信号品質が確保できる程度に量子化雑音を抑制できる場合には、第1バンドエリミネーションフィルタ12を介さずに、ΔΣ変調器11の出力を信号ケーブル4に与えてもよい。
【0081】
但し、本実施形態のように、制御信号の周波数f
2に存在する量子化雑音が抑圧されたΔΣ変調信号をΔΣ変調器11に出力させ、ΔΣ変調信号を第1バンドエリミネーションフィルタ12に与える構成とすれば、上述のように、変調装置9の出力における帯域B
2の量子化雑音のレベルをさらに低下させ、信号ケーブル4に伝送される制御信号の信号対雑音比等の信号品質をより高めることができる。
【0082】
また、ΔΣ変調器11の出力は、
図3に示すように、量子化雑音が抑制されている帯域と、量子化雑音が抑制されていない帯域との境界が急峻に表れる。このため、ΔΣ変調器11と第1バンドエリミネーションフィルタ12とを組み合わせれば、第1バンドエリミネーションフィルタ12のフィルタ特性が比較的緩慢であったとしても、量子化雑音が抑制されている帯域と、量子化雑音が抑制されていない帯域との境界の特性が劣化することがなく、第1バンドエリミネーションフィルタ12のフィルタ特性の許容範囲を大きく確保することができる。
【0083】
また、本実施形態のΔΣ変調器11の量子化雑音阻止帯域は、送信信号の周波数f
1を含む周波数帯域である帯域B
1と、制御信号の周波数f
2を含む周波数帯域である帯域B
2の両方に設定されている。これによって、送信信号の周波数と、制御信号の周波数とを異なるように設定し、変調装置9の出力を無線装置3に伝送するための信号ケーブル4に、送信信号と制御信号とを多重化して伝送させることができる。
【0084】
〔第2実施形態について〕
図5は、第2実施形態による通信システムの構成を示すブロック図である。
本実施形態と第1実施形態との相違点は、無線装置3が、制御信号生成部51を備え、信号処理装置2が制御信号抽出部36を備えている点である。その他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0085】
制御信号生成部51は、周波数f
2の制御信号を生成する。制御信号生成部51が生成する制御信号は、無線送信部46を制御するために必要な情報として、無線装置3の状態に関する情報を含んでいる。
制御信号生成部51は、無線送信部46の温度等、無線送信部46の状態を示す情報を無線送信部46から取得する。
また、無線装置3の筐体45内には、筐体45内の温度等といった筐体45内の環境を示す値を測定するセンサ52が設けられている。センサ52は、筐体45内の環境を示す値を制御信号生成部51に出力する。
【0086】
制御信号生成部51は、センサ52から与えられる筐体45内の環境を示す値を筐体45内の環境状態を示す情報として取得する。
制御信号生成部51は、周波数f
2の搬送波を変調することで、無線送信部46及びセンサ52から取得した情報を含んだ制御信号を生成する。制御信号生成部51が生成する制御信号は、アナログ信号であり、無線送信部46の状態を示す情報と、筐体45内の環境状態を示す情報とを含んでいる。
【0087】
制御信号生成部51は、生成した制御信号を当該制御信号生成部51の後段に接続された第3バンドパスフィルタ53に与える。
第3バンドパスフィルタ53は、信号通過帯域が制御信号の周波数f
2を含むとともに、送信信号の通過を阻止するように設定されている。よって、第3バンドパスフィルタ53は、制御信号生成部51から制御信号が与えられると、制御信号を通過させ、他の信号を除去する。
【0088】
第3バンドパスフィルタ53を通過した制御信号は、信号ケーブル4と第2バンドエリミネーションフィルタ40との間に設けられた分配合成器54に与えられる。
分配合成器54には、信号ケーブル4、第2バンドエリミネーションフィルタ40、及び第3バンドパスフィルタ53が接続されている。分配合成器54は、信号ケーブル4、第2バンドエリミネーションフィルタ40、及び第3バンドパスフィルタ53を相互に接続している。
よって、分配合成器54に与えられた制御信号は、信号ケーブル4に与えられる。
信号ケーブル4には、変調装置9から出力されたΔΣ変調信号も与えられる。よって、制御信号と、ΔΣ変調信号とは、信号ケーブル4において互いに加算される。信号ケーブル4には、受信信号と、ΔΣ変調信号とが加算された信号が伝送される。
【0089】
ここで、ΔΣ変調器11(変調装置9)から出力されたΔΣ変調信号は、
図3で示したように、広帯域に亘って量子化雑音を含んでいる。
このため、信号ケーブル4に与えられた制御信号は、ΔΣ変調信号に含まれる量子化雑音と重畳するおそれがある。
【0090】
しかし、第1実施形態と同様、本実施形態においても、ΔΣ変調器11(変調装置9)から出力されたΔΣ変調信号は、制御信号の周波数f
2を含む帯域B
2の量子化雑音が抑圧されている(
図3参照)。
このため、周波数f
2である制御信号を信号ケーブル4に与えれば、当該制御信号がΔΣ変調信号の量子化雑音と重畳するのを抑制することができる。これにより、変調装置9によるΔΣ変調信号を無線装置3に対して伝送するための信号ケーブル4に、制御信号を伝送させることができる。
この結果、一の伝送線路である信号ケーブル4を用いて、デジタル信号であるΔΣ変調信号と、アナログ信号である制御信号とを多重化して伝送することができる。
【0091】
本実施形態の信号処理装置2には、第1バンドエリミネーションフィルタ12と、信号ケーブル4との間に分配合成器35が接続されている。
分配合成器35には、第1バンドエリミネーションフィルタ12及び信号ケーブル4の他、制御信号抽出部36が接続されている。分配合成器35は、これらを相互に接続している。
よって、制御信号抽出部36には、信号ケーブル4に伝送される信号(ΔΣ変調信号と制御信号とが加算された信号)が与えられる。
【0092】
制御信号抽出部36は、信号ケーブル4に伝送される信号から制御信号を抽出する機能を有している。制御信号抽出部36は、バンドパスフィルタ36aと、信号処理部36bとを備えている。
バンドパスフィルタ36aは、制御信号を通過させる通過帯域を有している。これにより、バンドパスフィルタ36aは、ΔΣ変調信号における制御信号の帯域外に存在する量子化雑音を除去することができる。よって、バンドパスフィルタ36aは、信号ケーブル4に伝送される信号が与えられると、制御信号を出力する。
バンドパスフィルタ36aが出力する制御信号は、信号処理部36bに与えられ、信号処理部36bによって復調や増幅等の信号処理がなされた後、出力される。
【0093】
以上のようにして制御信号抽出部36は、信号ケーブル4に伝送される信号(ΔΣ変調信号と制御信号とが加算された信号)から制御信号を抽出し、抽出した制御信号を出力する。
制御信号は、無線送信部46を制御するための信号であり、無線送信部46を制御するために必要な情報として、無線送信部46の状態を示す情報と、筐体45内の環境状態を示す情報とを含んでいる。
信号処理装置2は、制御信号に含まれるこれら情報に基づいて、無線装置3(無線送信部46)の制御を行う。
【0094】
本実施形態の通信システム1(アンテナシステム)においても、第1実施形態と同様、
変調装置9の出力を無線装置3に対して伝送するための信号ケーブル4に、無線送信部46の制御に関する信号を伝送させることができるので、新たに信号経路を設けることなく、信号処理装置2側から無線送信部46に関する制御を行うことができる。
【0095】
なお、本実施形態では、制御信号生成部51が生成する制御信号は、無線装置3(無線送信部46)を制御するために必要な情報として、無線装置3の状態に関する情報を含んだ信号とした場合を例示したが、信号処理装置2を制御するために必要な情報を含んだ制御情報としてもよい。この場合、新たに信号経路を設けることなく、無線装置3側から無信号処理装置2に関する制御を行うことができる。
【0096】
〔第3実施形態について〕
図6は、第3実施形態による通信システムの構成の一部を示すブロック図である。
本実施形態と第1実施形態との相違点は、無線装置3が複数の無線送信部46を備えている点、及び変調装置9から出力されるΔΣ変調信号を複数の無線送信部46に分配する分配器60を備えている点である。
【0097】
図6に示すように、分配器60は、2値化器41の後段に接続されている。
分配器60の後段には、複数の第2バンドパスフィルタ42(図例では4つ)が接続されている。さらに、複数の第2バンドパスフィルタ42の後段には、複数の無線送信部46(図例では4つ)が接続されている。
【0098】
変調装置9(
図1)から出力されたΔΣ変調信号と、制御信号生成部30(
図1)から出力された制御信号とが加算された加算器13(
図1)の出力は、信号ケーブル4を通じて第2バンドエリミネーションフィルタ40と、制御信号抽出部43とに与えられる。
第2バンドエリミネーションフィルタ40に与えられた加算器13の出力は、第1実施形態と同様、第2バンドエリミネーションフィルタ40を通過した後、2値化器41によって2値化され、分配器60に与えられる。
【0099】
分配器60は、2値化器41の出力を複数の無線送信部46それぞれに分配したり、複数の無線送信部46の内の特定の無線送信部46に与えたりすることができる。
分配器60に与えられる2値化器41の出力は、ΔΣ変調信号(デジタル信号)である。よって、分配器60は、デジタル処理によって、2値化器41の出力をコピーし、各無線送信部46に分配することができる。このため、2値化器41の出力を減衰させることなく適切に分配することができる。
【0100】
このように分配器60は、2値化器41の出力を各無線送信部46に分配する中継装置(スイッチングハブ)としての機能を有している。
【0101】
分配器60は、2値化器41の出力を後段の各第2バンドパスフィルタ42に分配する。分配された2値化器41の出力は、各第2バンドパスフィルタ42を通過することで送信信号とされ、各無線送信部46に与えられる。
【0102】
各無線送信部46は、送信信号に対して位相及び振幅の調整を行うとともに増幅し、各無線送信部46の後段に接続されたアンテナ48に与える。
複数のアンテナ48に与えられた送信信号は、無線信号として空間に放射され送信される。
このように、本実施形態では、複数のアンテナ48によって送信信号を送信するアレイアンテナを構成している。
【0103】
制御信号抽出部43は、第1実施形態と同様、バンドパスフィルタ43aと、信号処理部43bとを備えており、加算器13の出力から制御信号を抽出する。
制御信号抽出部43は、抽出した制御信号を、各無線送信部46と、分配器60とに与える。
【0104】
本実施形態における制御信号には、分配器60を制御するための信号と、各無線送信部46を制御するための信号とが含まれている。
分配器60を制御するための信号には、2値化器41の出力を与える無線送信部46を特定するための情報等、2値化器41の出力の分配の仕方に関する情報が含まれている。
【0105】
制御信号抽出部43の信号処理部43bは、抽出した制御信号を分配器60及び分配器60及び各無線送信部46に与える。
制御信号が与えられた分配器60は、制御信号の内、分配器60を制御するための信号に含まれる情報に基づいて2値化器41の出力の分配を行う。
また、制御信号が与えられた各無線送信部46は、制御信号の内、各無線送信部46を制御するための信号に含まれる無線送信の設定に関する情報に基づいて無線送信を行う。
【0106】
本実施形態では、2値化器41の出力の分配の仕方に関する情報、及び各無線送信部46の無線送信の設定に関する情報を含んだ制御信号によって、複数のアンテナ48に与えられる送信信号を個別に制御することができる。この結果、アレイアンテナを構成する複数のアンテナ48から送信される送信信号を制御することができる。
【0107】
上記構成によれば、無線装置3は、ΔΣ変調信号である2値化器41の出力を複数の無線送信部46に分配する分配器60を備えており、無線送信の設定に加えて分配器60の制御に関する信号を制御信号に含めたので、信号ケーブル4に分配器60の制御に関する信号を伝送させることができ、新たに信号経路を設けることなく、信号処理装置2側から無線送信部46の制御を行いつつ分配器60の制御を行うことができる。
【0108】
なお、
図6では、無線装置3には、一つの信号処理装置2から加算器13(
図1)の出力が与えられる場合を示したが、
図7に示すように、複数の信号処理装置2(図例では2つ)から加算器13(
図1)の出力が与えられるように構成してもよい。
【0109】
また、
図6の無線装置3では、分配器60の前段に第2バンドエリミネーションフィルタ40を設けた場合を例示したが、
図8に示すように、信号ケーブル4と、分配器60とを接続し、加算器13(
図1)の出力を、信号ケーブル4を通じて分配器60に与えるように構成してもよい。
【0110】
図8に示す変形例において、制御信号抽出部43は、制御信号を抽出して分配器60に与える。分配器60は、与えられた制御信号に含まれる加算器13の出力の分配の仕方に関する情報に基づいて当該加算器13の出力の分配を行う。
【0111】
分配器60の後段には、複数の無線部61が接続されている。
図9は、無線部61の構成を示すブロック図である。無線部61は、バンドエリミネーションフィルタ70、2値化器71、バンドパスフィルタ72、制御信号抽出部73、及び無線送信部76を備えている。無線部61は、第1実施形態の無線装置3と同様の構成であり、バンドエリミネーションフィルタ70は第2バンドエリミネーションフィルタ40に対応し、2値化器71は2値化器41に対応し、バンドパスフィルタ72は第2バンドパスフィルタ42に対応し、制御信号抽出部73は制御信号抽出部43に対応し、無線送信部76は無線送信部46に対応している。
【0112】
各無線部61は、分配器60から加算器13の出力が分配されると、第1実施形態の無線装置3と同様、制御信号に含まれる無線送信の設定に関する情報に基づいて送信信号を出力する。
各無線部61から出力された送信信号は、アンテナ48に与えられ、無線信号として送信される。
【0113】
図9に示す構成においても、新たに信号経路を設けることなく、信号処理装置2側から無線送信部46の制御を行いつつ分配器60の制御を行うことができる。
【0114】
〔その他〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
上記各実施形態では、2入力のΔΣ変調器11を用いた場合を例示したが、3入力、4入力等のより多入力のΔΣ変調器11を用いてもよい。
例えば、3入力のΔΣ変調器11を用いれば、ΔΣ変調信号の帯域に量子化雑音が抑制される帯域を3箇所設けることができる。この結果、信号ケーブル4を用いて、ΔΣ変調器11が出力するΔΣ変調信号以外に、さらに2つの制御信号を伝送させることができる。
【0115】
本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。