(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0015】
[第1の実施形態]
本実施形態による溶接構造物の製造方法は、亀裂を有する面内ガセット継手を加工して、溶接構造物とする方法である。
図1は、本実施形態で加工される面内ガセット継手10の斜視図である。面内ガセット継手10は、フランジ11と、フランジ11の端面に溶接されたガセット12とを備えている。フランジ11は、ガセット12との溶接部13の端部13aから延びる亀裂CRを有している。
【0016】
図2は、本発明の第1の実施形態による溶接構造物の製造方法のフロー図である。
図3〜
図6は、加工途中の面内ガセット継手の構成を示す図である。
【0017】
本実施形態による製造方法は、フランジ11の亀裂CRを含む部分11aにフランジ11を貫通する開先11A(
図3)を形成する工程(ステップS1)と、フランジ11の一方の面に開先11Aを覆う裏当て金14(
図3)を隅肉溶接して接合部15(
図4)を形成する工程(ステップS2)と、フランジ11の他方の面から開先11Aを補修溶接して溶接金属16(
図5)を形成する工程(ステップS3)と、裏当て金14を切断する工程(ステップS4)と、溶接金属16を形成後、接合部15をピーニングする工程(ステップS5)と、溶接金属16をピーニングする工程(ステップS6)とを備えている。以下、各工程を詳述する。
【0018】
[開先を形成する工程]
フランジ11の亀裂CRを含む部分11aを除去する(ステップS1)。
図3は、フランジ11から亀裂CRを含む部分11a(
図1)を除去し、開先11Aを形成したときの面内ガセット継手の斜視図である。この例では、後述する補修溶接をしやすくするため、V形の断面を有する開先11Aを形成している。具体的には、開先11Aは、フランジ11の一方の面から他方の面に向かって、面積が徐々に小さくなる形状を有している。しかし、開先11Aの断面は、V形以外の形状であってもよい。
【0019】
このとき、作業性を確保するため、ガセット12から亀裂Crの近傍の部分12a(
図1)を除去しておいてもよい。ガセット12から亀裂Crの近傍の部分12aを除去する場合、溶接部13の端部13b(
図3)に応力が集中しやすくなる。そのため、切断面が曲面になるように加工して、端部13bへの応力の集中を緩和することが好ましい。
【0020】
[裏当て金を隅肉溶接する工程]
フランジ11の一方の面に開先11Aを覆う裏当て金14を隅肉溶接して接合部15(
図4)を形成する(ステップS2)。以下、フランジ11の表裏の面のうち、裏当て金を取り付ける面を「裏面」と呼び、これと反対の面を「表面」と呼ぶ。
【0021】
裏当て金14の材質は特に限定されないが、例えば炭素鋼やステンレス鋼である。
【0022】
図4は、裏当て金14を隅肉溶接したときの面内ガセット継手の裏面を示す平面図である。裏当て金14は、一部がフランジ11の端面から突出するように取り付けられる。裏当て金14は、フランジ11から突出した部分を除く全周が隅肉溶接され、角部は回し溶接される。隅肉溶接によって形成される接合部15は、フランジ11の裏面と裏当て金14の端面とを接合する。
【0023】
[開先を補修溶接する工程]
フランジ11の他方の面から開先11Aを補修溶接して溶接金属16(
図5)を形成する(ステップS3)。
図5は、溶接金属16を形成したときの面内ガセット継手の斜視図である。補修溶接の方法は特に限定されず、公知の方法で実施することができる。
図5に示すように、溶接金属16の一部がフランジ11の端面から突出してもよい。
【0024】
[裏当て金を切断する工程]
裏当て金14がフランジ11の端面から突出している部分を切断する(ステップS4)。
図6は、裏当て金14を切断したときの面内ガセット継手の斜視図である。このとき、溶接金属16がフランジ11の端面から突出している部分も切断する。裏当て金14や溶接金属16がフランジ11の端面から突出していると、その部分に応力が集中しやすくなるためである。
【0025】
[接合部をピーニングする工程]
接合部15をピーニングする(ステップS5)。より具体的には、接合部15の止端15a(
図4)を全周にわたってピーニングする。なお、接合部15の止端15aとは、接合部15とフランジ11とが交わる線の部分を指す。
【0026】
ピーニングとは、材料に機械的な繰り返し衝撃を付与する処理方法である。ピーニングによって、材料に圧縮応力を加えたり、形状を矯正したりすることで、材料の疲労強度を向上させることができる。本実施形態では、接合部15の止端15aの全周をピーニングし、接合部15の疲労強度を向上させる。なお、少なくとも接合部15の止端15a、すなわち、フランジ11側の止端15aをピーニングすればよいが、接合部15と裏当て金14とが交わる部分、すなわち、裏当て金14側の止端15b(
図4)もピーニングすることが好ましい。
【0027】
本実施形態によるピーニングには、例えば、UIT(Ultrasonic Impact Treatment;超音波衝撃処理)、UP(Ultrasonic Peening;超音波ピーニング(止端部打ち伸ばし))、UPT(Ultrasonic Peening Treatment;超音波ピーニング処理)、HiFIT(High Frequency Impact Treatment;高周波衝撃処理)、PIT(Pneumatic Impact treatment;圧縮空気衝撃処理)、UNP(Ultrasonic needle peening;超音波ニードルピーニング)、エアツールによるピーニングやハンマーピーニング等がある。高周波のピーニング、及び周波数の低いピーニングのいずれであってもよく、周波数の低いピーニングであっても、処理後の形状が高周波でのピーニングと同等であれば、高周波でのピーニングと同等の効果が得られる。
【0028】
[溶接金属をピーニングする工程]
溶接金属16をピーニングする(ステップS6)。より具体的には、溶接金属16の止端16aを全周にわたってピーニングする。なお、溶接金属16の止端16aとは、溶接金属16とフランジ11とが交わる線の部分を指す。溶接金属16をピーニングすることで、溶接金属16の疲労強度を向上させることができる。
【0029】
好ましくは、フランジ11とガセット12との溶接部13の端部13bもピーニングする。これによって、溶接部13の疲労強度を向上させることができる。
【0030】
以上の工程によって、溶接構造物100(
図7)が製造される。本実施形態による製造方法は、裏当て金14を除去せずに残しておく。そのため、溶接構造部100は、フランジ11の裏面に隅肉溶接された裏当て金14を備えている。
【0031】
[溶接構造物の構成、及び本実施形態の効果]
図7〜
図9は、本実施形態による製造方法によって製造される溶接構造物100の構成を示す図である。
図7は、溶接構造物100の表面を示す平面図である。
図8は、
図7のVIII−VIII線に沿った断面図である。
図9は、溶接構造物100の裏面を示す平面図である。
【0032】
溶接構造物100は、フランジ11と、フランジ11の端面に溶接されたガセット12と、ガセット12が溶接されたフランジ11の端面から延びるとともに、フランジ11を厚さ方向に貫通する溶接金属16と、フランジ11の裏面で溶接金属16を覆う裏当て金14と、フランジ11の裏面と裏当て金14の端面とを接合する接合部15とを備える。接合部15は、ピーニングされている。
【0033】
本実施形態では、フランジ11と裏当て金14とが隅肉溶接されている。換言すれば、フランジ11の裏面と裏当て金14の端面とを接合する接合部15が形成されている。さらに、接合部15はピーニングされている。この構成によれば、フランジ11と裏当て金14との境界部分への応力集中が緩和される。さらに、裏当て金14は、補強部材として機能する。そのため、裏当て金14がない場合よりも、溶接構造物100の疲労強度を高くすることができる。
【0034】
また、裏当て金14が存在することによって、溶接構造物100の信頼性を向上させることができる。すなわち、高所等の作業しにくい場所で溶接が行われるために十分な溶接品質を得ることが難しい場合や、欠陥のチェックが難しい等の事情によって、溶接金属16の溶接品質が十分でない場合であっても、裏当て金14によって、溶接ルート部からの疲労亀裂の発生を抑制することができる。
【0035】
従来の方法では、補修溶接をする際、補修溶接部に裏当て金14を仮止めして溶接を実施する。仮止めされた裏当て金14は、補修溶接によってフランジ11と一体化する。しかし、この裏当て金14を残しておくと、フランジ11と裏当て金14との境界部分に応力が集中し、疲労強度が大きく低下する。そのため従来の方法では、フランジ11と一体化した裏当て金14をグラインダ等によって研削して除去する必要がある。これに対し、本実施形態による製造方法によれば、上述のとおり裏当て金14を残したままにできる。裏当て金14をグラインダ等によって研削する工程がないため、手間を大幅に削減することができる。
【0036】
本実施形態では、溶接金属16もピーニングする。この構成よれば、溶接構造物100の疲労強度をより向上させることができる。
【0037】
溶接金属16の余盛り高さh(
図8)は、マイナスでなければ特に限定されない。余盛り高さhは、溶接構造物100の疲労強度に大きくは影響しない。ただし、余盛り高さhがマイナスになることは好ましくないため、ある程度余裕を持たせて1mm以上とすることが好ましい。なお、余盛り高さhは、溶接金属16がフランジ11の表面から突出した高さである。
【0038】
裏当て金14の厚さt(
図8)は、特に限定されない。裏当て金14が薄い場合でも、裏当て金14がない場合と比較すれば補強効果が得られる。ただし、裏当て金14が薄すぎると、補修溶接の際に溶接金属16が裏当て金14を貫通する場合がある。そのため、裏当て金14の厚さtは、3mm以上とすることが好ましい。
【0039】
接合部15の厚さt’(
図8)は、裏当て金14がフランジ11に接合されていればよく、特に限定されない。接合部15を介して裏当て金14に応力を伝達させやすくさせるため、接合部15の厚さt’を3mm以上とすることが好ましい。また、裏当て金14の厚さtと接合部15の厚さt’の関係は特に限定されず、裏当て金の厚さtが接合部15の厚さt’よりも薄くてもよい。
【0040】
溶接金属16の止端16aと、加工後の溶接部13の端部13bとの距離d1(
図7)は、フランジ11の厚さT(
図8)よりも大きいことが好ましい。d1がT以下だと、溶接部13が補修溶接の熱の影響を受け、溶接構造物100の疲労強度が低下する場合がある。
【0041】
図9に示すように、本実施形態では、接合部15の一部は、フランジ11とガセット12との溶接線と平行な方向(x方向)において、フランジ11とガセット12との溶接部13と重なっている。より具体的には、加工後の溶接部13の端部13bが、x方向において、接合部15と重なっている。この構成によれば、応力集中しやすい端部13bを接合部15によって補強することができる。そのため、溶接構造物100の疲労強度を向上させることができる。
【0042】
以上、本発明の第1の実施形態による溶接構造物の製造方法、及び同方法によって製造される溶接構造物100の構成を説明した。
【0043】
上記では、裏当て金14を切断する工程(ステップS4)の後に、接合部15をピーニングする工程(ステップS5)を実施する場合を説明した。しかし、接合部15をピーニングするタイミングは、補修溶接(ステップS3)の後であれば任意である。すなわち、補修溶接の直後に接合部15をピーニングし、その後、裏当て金14を切断してもよい。また、接合部15のピーニング(ステップS5)と溶接金属16のピーニング(ステップS6)とは、どちらを先に行ってもよい。要するに、ステップS4〜ステップS6の順番は、任意である。
【0044】
上記では、裏当て金14をその一部がフランジ11の端面から突出するように取り付け(
図4)、補修溶接後に突出した部分を切断する場合を説明した。しかし、裏当て金14の端面とフランジ11の端面とを揃えて取り付けてもよい。この場合、裏当て金14を切断する工程(ステップS4)は、省略することもできる。
【0045】
溶接金属16のピーニング(ステップS6)は、任意の工程である。すなわち、溶接金属16のピーニング(ステップS6)は、実施した方が優れた疲労強度が得られるため好ましいが、実施されなくてもよい。
【0046】
図1〜
図9では、フランジ11及びガセット12がともに板状形状であるように図示しているが、フランジ11及びガセット12の形状は任意である。
【0047】
[第1の実施形態の変形例]
第1の実施形態では、
図9に示すように、加工後の溶接部13の端部13bが、x方向において、接合部15と重なっている構成を説明した。同じ効果は、端部13bと裏当て金14とが重なっている場合にも得られる。
図10は、溶接構造物100の変形例である溶接構造物101の裏面を示す平面図である。この変形例においても、接合部15の一部がx方向において、フランジ11とガセット12との溶接部13と重なっている。この変形例では、加工後の溶接部13の端部13bが、x方向において、接合部15と重なるとともに裏当て金14とも重なっている。この構成によっても、応力集中しやすい端部13bが補強される。そのため、溶接構造物101の疲労強度を向上させることができる。
【0048】
もっとも、端部13bは、x方向において、接合部15及び裏当て金14のいずれとも重なっていなくてもよい。
図11は、溶接構造物100の他の変形例である溶接構造物102の裏面を示す平面図である。この変形例では、接合部15は、x方向において、フランジ11とガセット12との溶接部13と重なっていない。この場合、接合部15の止端15aと溶接部13の端部13bとの間の距離d2は、フランジ11の厚さT(
図8)よりも大きいことが好ましい。d2がT以下だと、溶接部13が隅肉溶接の熱の影響を受け、溶接構造物102の疲労強度が低下する可能性があるからである。
【0049】
[第2の実施形態]
図12は、本発明の第2の実施形態による溶接構造物の製造方法を示すフロー図である。この製造方法は、第1の実施形態の溶接金属をピーニングする工程(
図2のステップS6)に代えて、溶接金属をグラインダ処理する工程(ステップS7)を備えている。
【0050】
図13は、この製造方法によって製造される溶接構造物200の斜視図である。溶接構造物200は、第1の実施形態による溶接構造物100の溶接金属16(
図8)に代えて、溶接金属26を備えている。溶接金属26は、グラインダ処理する工程(ステップS7)によって、フランジ11の表面と高さが揃うように形成されている。この構成によれば、溶接金属26に応力が集中しない。そのため、溶接構造物200の疲労強度を向上させることができる。
【0051】
溶接金属26をグラインダ処理する工程(ステップS7)は、裏当て金14を切断する工程(ステップS4)や、接合部15をピーニングする工程(ステップS5)の前に行ってもよい。すなわち、ステップS4、ステップS5、及びステップS6の順番は任意である。
【0052】
[第3の実施形態]
図14は、本発明の第3の実施形態による溶接構造物の製造方法を示すフロー図である。本実施形態は、次の点で、第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態では、裏当て金を隅肉溶接してから補修溶接を実施した(
図2)。これに対し本実施形態では、裏当て金を仮止めし(ステップS8)、補修溶接を実施してから(ステップS3)、フランジと裏当て金とを隅肉溶接する(ステップS2)。
【0053】
この方法によっても、第1の実施形態の場合と同じ構成の溶接構造物が得られる。そのため、第1の実施形態と同様に、優れた疲労強度を有する溶接構造物が得られる。
【0054】
図14のフロー図では、隅肉溶接する工程(ステップS2)の後に裏当て金を切断する工程(ステップS4)を実施しているが、裏当て金を切断した後に隅肉溶接をしてもよい。また、接合部をピーニングする工程(ステップS5)のタイミングは、隅肉溶接する工程(ステップS2)の後であれば任意である。溶接金属をピーニングする工程(ステップS6)のタイミングも、補修溶接(ステップS3)の後であれば任意である。
【0055】
本実施形態においても、溶接金属をピーニングする工程(ステップS6)は、省略してもよい。また、溶接金属をピーニングする工程(ステップS6)に代えて、第2の実施形態で説明した溶接金属をグラインダ処理する工程を実施してもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0057】
JIS G3106で規定されている溶接構造用圧延鋼板SM490Bを用いて、試験用の面内ガセット継手を複数作製した。
図15Aは、試験用の面内ガセット継手の平面図であり、
図15Bは側面図である。図内の数値は寸法(単位はmm)である。板厚16mm、幅100mm、長さ800mmの鋼板をフランジとし、板厚9mm、幅60mm、長さ200mmの鋼板をガセットとした。CO
2溶接による隅肉溶接によって、フランジの長さ中央の位置であって幅の端部にガセットを取り付け、面内ガセット継手とした。
【0058】
これらの面内ガセット継手に対して、まず、疲労亀裂を導入するために疲労試験を実施した。具体的には、50トンのサーボ式疲労試験機を用いて、各面内ガセット継手に片振りの材軸方向繰り返し引張負荷(フランジの公称応力範囲100MPa)を与えた。試験温度は室温で、試験周波数は10Hzとした
【0059】
疲労亀裂を導入した各面内ガセット継手から、実施形態で説明した方法によって、溶接構造物を製造した。表1に示すように、裏当て金の処理、及び補修溶接部の処理等を変えながら、10種類の溶接構造物を作製した。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の「裏当て金の処理」の欄には、各溶接構造物の裏当て金の処理方法が記載されている。No.0及び1では、補修溶接後、裏当て金をグラインダで研削して除去した。No.2〜9では、裏当て金を残したままにした。No.2〜9ではいずれも、フランジと裏当て金とを隅肉溶接し、溶接止端をUITで処理した。No.2、3、5〜7、及び9では裏当て金の厚さを9mmとし、No.4及びNo.8では裏当て金の厚さを3mmとした。
【0062】
表1の「補修溶接部の処理」の欄には、補修溶接で形成した溶接金属の処理方法が記載されている。No.0、2、及び6では、溶接金属をグラインダで研削し、フランジと同一平面になるように仕上げた。No.1、5、及び9では、溶接金属の余盛り高さ(
図8のh)を1mmとし、止端をUITで処理した。No.3、4、7、及び8では、溶接金属の余盛り高さ(
図8のh)を2mmとし、止端をUITで処理した。
【0063】
表1の「接合部の位置」の欄には、フランジとガセットとの溶接部の端部と、フランジと裏当て金との接合部との位置関係が記載されている。No.2〜5では、フランジとガセットとの溶接部の端部が、溶接線と平行な方向において、フランジと裏当て金との接合部と重なるようにした(
図9を参照)。No.6〜9では、フランジとガセットとの溶接部の端部が、溶接線と平行な方向において、フランジと裏当て金との接合部から、フランジの厚さよりも大きい距離だけ離れるようにした(
図11を参照)。
【0064】
これらの溶接構造物に対して、疲労亀裂の導入に用いた方法と同じ方法で疲労試験を実施し、疲労寿命を評価した。No.0の溶接構造物において、疲労亀裂が明確(約20mm長さ)に表れた時間を基準となる疲労寿命とした。疲労寿命は、No.0の疲労寿命を基準とし、各溶接構造物の疲労寿命がNo.0の何倍になったかを評価した。結果を表1の「疲労寿命の延長」の欄に示す。
【0065】
表1に示すとおり、裏当て金を残したNo.2〜9の溶接構造物は、裏当て金を削除したNo.0及び1の溶接構造物と比較して、優れた疲労強度を示した。
【0066】
No.2〜5とNo.6〜9との比較から、フランジとガセットとの溶接部の端部が、溶接線と平行な方向において、フランジと裏当て金との接合部と重なるようにすることで、より優れた疲労強度を得られることが分かった。
【0067】
No.2とNo.3との比較、及びNo.6とNo.7との比較から、補修溶接で形成した溶接金属をグラインダ仕上げするよりも、余盛りを残したまま止端をUITで処理した方が、優れた疲労強度が得られることが分かった。一方、No.3とNo.5との比較、及びNo.7とNo.9との比較から、余盛り高さは疲労強度に大きくは影響しないことが分かる。また、No.3とNo.4との比較、及びNo.7とNo.8との比較から、裏当て金の厚さは、疲労強度に大きくは影響しないことが分かる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態を説明した。上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0069】
10 面内ガセット継手
11 フランジ
CR 亀裂
11A 開先
12 ガセット
13 溶接部
13a、13b 端部
14 裏当て金
15 接合部
15a,15b 止端
16,26 溶接金属
16a 止端
100、101、102、200 溶接構造物