【実施例】
【0009】
図1と
図2を用いて、第1のコイルと第2のコイルを巻回する工程を説明する。
図1(a)〜(f)は、本発明の実施例のコモンモードフィルタに使用する第1のコイルを巻回する工程を示す斜視図である。
図2(a)〜(f)は、本発明の実施例のコモンモードフィルタに使用する第2のコイルを巻回する工程を示す斜視図である。第1のコイルと第2のコイルは、寸法と電気的特性が略同じコイルである。コイルは、巻軸を有する巻線機(図示せず)を使用し、断面平角形状の、第1の導線、第2の導線、第3の導線、第4の導線を巻回して形成する。第1の導線、第2の導線、第3の導線、第4の導線は、加熱することによって皮膜が融着する線材を用いる。
【0010】
第1のコイルを巻回する方法について説明する。巻線機の巻軸2は、
図1(a)に示すように、外径の異なる2つの円柱が同心円状に繋がった構造となっている。径の小さい円柱を巻芯21とする。この巻軸2を2つ用い、
図1(b)に示すように、巻芯21の先端部が互いに接触するよう配置する。そして、
図1(c)に示すように、第1の導線31および第2の導線32を厚み方向に重ねた状態で、導線の幅広面を巻軸2の巻芯21に当接させる。重ねられた2本の導線のうち、内側の導線が第1の導線31、外側の導線が第2の導線32である。巻軸2の巻芯21と接しているのは、第1の導線31の幅広面である。
【0011】
図1(d)に示すように、第1の導線31および第2の導線32を同時に巻回し、巻軸方向に並置される2つの第1の巻回部41を形成する。そして、第1の導線31および第2の導線32の両端を巻芯に沿って、互いに反対方向へとずらし、第1の導線31の幅広面の一部を第1の巻回部41上に当接させる。そして、繰り返し巻回し、第1の巻回部41上に第2の巻回部42を形成する。第2の巻回部42は、最内周の幅広面の一部が第1の巻回部41上に接している状態で形成される。
【0012】
それぞれの第2の巻回部42の外周から、第1の導線31の末端31aと第2の導線32の末端32aを引き出す。第2の導線32の長さは第1の導線31の長さよりも僅かに短いため、第2の導線32の末端32aは、第1の導線31の末端31aから所定の間隔をあけて第2の巻回部42側に位置する。(
図1(e))そして、
図1(f)に示すように、第1の導線の末端31aと第2の導線の末端32aを、第2の巻回部42の外周から垂直方向に引き伸ばす。そして、第1の巻回部41と第2の巻回部42と第1の導線の末端31aと第2の導線の末端32aを加熱して形状を固定し、コイル4を得る。
【0013】
第2のコイルについても、同様の手順で巻回する。
図2(a)に示す巻軸2を2つ用いる。
図2(b)に示すように、巻芯21の先端部が互いに接触するよう配置する。そして、
図2(c)に示すように、第3の導線33および第4の導線34を厚み方向に重ねた状態で、導線の幅広面を巻軸2の巻芯21に当接させる。重ねられた2本の導線のうち、内側の導線が第3の導線33、外側の導線が第4の導線34である。巻軸2の巻芯21と接しているのは、第3の導線33の幅広面である。
【0014】
図2(d)に示すように、第3の導線33および第4の導線34を同時に巻回し、巻軸方向に並置される2つの第1の巻回部51を形成する。そして、第3の導線33および第4の導線34の両端を巻芯に沿って、互いに反対方向へとずらし、第3の導線33の幅広面の一部を第1の巻回部51上に当接させる。そして、繰り返し巻回し、第1の巻回部51上に第2の巻回部52を形成する。第2の巻回部52は、最内周の幅広面の一部が第1の巻回部51上に接している状態で形成される。
【0015】
それぞれの第2の巻回部52の外周から、第3の導線33の末端33aと第4の導線34の末端34aを引き出す。第4の導線34の長さは第3の導線33の長さよりも僅かに短いため、第4の導線34の末端34aは、第3の導線33の末端33aから所定の間隔をあけて第2の巻回部52側に位置する。(
図2(e))そして、
図2(f)に示すように、第3の導線の末端33aと第2の導線の末端34aを、第2の巻回部52の外周から垂直方向に引き伸ばす。そして、第1の巻回部51と第2の巻回部52と第3の導線の末端33aと第4の導線の末端34aを加熱して形状を固定し、コイル5を得る。
【0016】
図3〜
図6を用いて、コイルを素体に封止する工程を説明する。
図3は、本発明の実施例で使用する第1のコイルに、磁性体コアを挿入する工程を説明する斜視図である。
図4は、本発明の実施例で使用する第2のコイルに、磁性体コアを挿入する工程を説明する斜視図である。
図5は、本発明の実施例で使用するコイルを樹脂でコーティングしたときの斜視図である。
図6は、本発明の実施例で使用するコイルを、ブロックに封止する工程を説明する斜視図である。
【0017】
第1のコイル4に磁性体コア43を挿入する工程について、説明する。磁性体コア43は、円柱を同心円状に二つ繋げた構造である。それぞれの円柱の外径は、第1の巻回部41および第2の巻回部42の内径と略同じである。
図3(a)に示すように、第1のコイル4の両側に磁性体コア5を配置し、第1のコイル4の空芯部分に挿入する。磁性体コア5は、
図3(b)に示すように、略隙間無く第1のコイル4の内部に収まる。
【0018】
第2のコイル5に磁性体コア53を挿入する工程について、説明する。磁性体コア53は、磁性体コア43と同じ形状である。それぞれの円柱の外径は、第1の巻回部51および第2の巻回部52の内径と略同じである。
図4(a)に示すように、第2のコイル5の両側に磁性体コア53を配置し、第2のコイル5の空芯部分に挿入する。磁性体コア53は、
図4(b)に示すように、略隙間無く第2のコイル5の内部に収まる。
【0019】
磁性体コア43、53と第1のコイル4、第2のコイル5を樹脂でコーティングする工程について、説明する。図示しない円筒形状の金型に、磁性体コア43が挿入された第1のコイル4と、磁性体コア53が挿入された第2のコイル5とを、第2の巻回部42、52同士が隣り合うように並置して入れる。そして、第1の導線の末端31a、第2の導線の末端32a、第3の導線の末端33a、第4の導線の末端34aを金型から露出するように引き出してから、金型に絶縁性の熱可塑性樹脂を注入する。そして、樹脂を加熱して硬化し、金型から取り出す。以上より、
図5に示すように、磁性体コア43、53と第1のコイル4、第2のコイル5を内蔵した、外装体6を得ることができる。第1の導線の末端31a、第2の導線の末端32a、第3の導線の末端33a、第4の導線の末端34aはそれぞれ、外装体6から露出して引き出されている。引き出されたそれぞれの第1の導線の末端31aが互いに対角線上に位置し、それぞれの第2の導線の末端32aが互いに対角線上に位置している。同様に、引き出されたそれぞれの第3の導線の末端33aが互いに対角線上に位置し、それぞれの第4の導線の末端34aが互いに対角線上に位置している。そして、第1の導線の末端31aと第3の導線の末端33aは隣接し、第2の導線の末端32aと第4の導線の末端34aは隣接している。
【0020】
外装体6を素体7に内蔵する工程について説明する。素体7は、箱状のブロック8と、蓋状のブロック9から成り、箱状のブロック8と蓋状のブロック9はそれぞれ、樹脂と磁性粉とを含んだ熱可塑性の封止剤から成る。
箱状のブロック8は、
図6(a)に示すように、上面に開口端を備えた立方体形状であり、内部に外装体6を収納するためのスペースを有している。開口端を取り囲む縁は、蓋状のブロックと勘合する凹部81が形成されている。
【0021】
蓋状のブロック9は平板形状を有し、端部に設けられた凸部91と、中央部に設けられた6つの細長い形状のスリット92、93とを備えている。中央の両端に設けられた4つのスリット92はそれぞれ、蓋状のブロック9の中心に対して対称に設けられ、ブロック9の中心側は終端し、外側は開口している。ブロック9の中央には、細長い形状の2つのスリット93が設けられている。そして、両端に設けられた凸部91はそれぞれ、箱状のブロック8の開口端を取り囲む縁の凹部81に勘合する。
【0022】
第1の導線の末端31a、第2の導線の末端32a、第3の導線の末端33a、第4の導線の末端34aが真上に引き出されている外装体6を、箱状のブロック8に内蔵する。そして、
図6(b)に示すように、上方から蓋状のブロック9を被せ、スリット92、93からそれぞれ、第1の導線の末端31a、第2の導線の末端32a、第3の導線の末端33a、第4の導線の末端34aを引き出す。第1の導線の末端31aは、互いに対角線上に位置するスリット91、93から引き出す。同様に、第2の導線の末端32a、第3の導線の末端33a、第4の導線の末端34aも、互いに対角線上に位置するスリット91、93から引き出す。そして、引き出された第1の導線の末端31a、第2の導線の末端32a、第3の導線の末端33a、第4の導線の末端34aを、その幅広面が実装面に延在するように折り曲げる。
【0023】
図7、
図8を用いて、素体を形成する工程を説明する。
図7は、本発明の実施例の素体の斜視図である。
図8は本発明の実施例のコモンモードフィルタの外観図である。
図8(a)はコモンモードフィルタの斜視図を示し、
図8(b)はコモンモードフィルタの側面からみた平面図を示し、
図8(c)はコモンモードフィルタの実装面からみた平面図を示し、
図8(d)はコモンモードフィルタの上面からみた平面図を示す。
【0024】
外装体6を、箱状のブロック8と蓋状のブロック9に内蔵した状態で、図示しない金型を用いて加熱・圧縮し、素体7を得る。素体7は、
図7に示すように、実装面に6つの台形71が形成された立方体である。そして、
図8に示すように、4つの台形71の上面にそれぞれ、第1電極11、第2電極12、第3電極13、第4電極14、第5電極15、第6電極16を形成する。第1電極11と第3電極13、および、第2電極12と第4電極14はそれぞれ、実装面の四隅に、互いに対角線に位置するように形成する。第5電極15と第6電極16はそれぞれ、実装面の中央にそれぞれ形成され、第5電極15は第1電極11と第2電極12に隣接して形成され、第6電極16は第3電極13と第4電極14に隣接して形成される。
そして、第1電極と末端31aが電気的に接続され、第2電極と末端34aが電気的に接続され、第3電極と末端33aが電気的に接続され、第4電極と末端32aが電気的に接続され、第5電極と末端32aおよび末端33aが電気的に接続され、第6電極と末端31aおよび末端34aが電気的に接続される。
4つの台形71によって延面距離を長くすることができるので、電極間の絶縁性が高い。
【0025】
以上、記載したように、コイルを巻回する工程、磁性体コアを挿入する工程、コイルを樹脂でコーティングする工程、素体にコイルを内蔵する工程、電極を形成する工程を経て、コモンモードフィルタを作製することができる。本実施例のコモンモードフィルタは、断面平角形状の導線を使用しているため大電流にも対応可能で、なおかつ、従来のトロイダルコアを用いるコモンモードフィルタに比べ、機械での製造が容易である。
本実施例では、第1の導線と第3の導線の長さは等しく、第2の導線と第4の導線の長さは等しいが、これに限定されず、第1の導線と第3の導線の長さ、および、第2の導線と第4の導線の長さは異なっていても良い。その結果、第1のコイルと第2のコイルは、寸法と電気的特性が異なっていても良い。本発明のコモンモードフィルタは、第1の導線と第4の導線が電気的に接続され、第2の導線と第3の導線が電気的に接続されるので、第1の電極から第2の電極の線路長と、第3の電極から第4の電極の線路長とは略等しくなる。