(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。なお、本明細書における「〜(メタ)アクリレート」とは、「〜アクリレート」及び「〜メタクリレート」の双方を包括する概念である。また、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜」及び「メタクリル酸〜」の双方を包括する概念である。また、本明細書における「半導体表面処理用」とは、「半導体基板の、金属配線を含む面を処理するための表面処理用」を包括する概念である。
1. 半導体表面処理用組成物
本発明の半導体表面処理用組成物は、
ポリアミック酸、ポリアミック酸誘導体およびそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体(A)と、
液状媒体(B)と、を含有する。
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
1.1. 重合体(A)
本発明の半導体表面処理用組成物に含有される重合体(A)は、ポリアミック酸、ポリアミック酸誘導体およびそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の重合体である。
【0016】
本発明の半導体表面処理用組成物に含有される重合体(A)がポリアミック酸のイミド化重合体を含有する場合、該イミド化重合体のイミド化率は、50%以下であることが好ましい。なお、このイミド化率は、ポリアミック酸のアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ポリアミック酸のイミド化率は、
1H−NMRを用いて求めることができる。
【0017】
ポリアミック酸とそのイミド化重合体とは併用することができる、イミド化重合体のイミド化率が上記の好ましい範囲にあれば、ポリアミック酸とそのイミド化重合体との使用割合は任意の割合とすることができる。
【0018】
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることがでる。ポリアミック酸のイミド化重合体は、上記ポリアミック酸のアミック酸構造の一部を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
【0019】
重合体(A)は、水溶性であることが好ましい。重合体(A)が水溶性であることにより、半導体表面に重合体(A)が吸着してより効果的に腐食を抑制することができる。なお、本発明において「水溶性」とは、20℃の水100gに溶解する質量が0.1g以上であることをいう。
【0020】
本発明におけるポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを;脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオンなどを;芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などを、それぞれ挙げることができるほか、特許文献4(特開2010−97188号公報)に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0021】
前記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましい。本発明におけるテトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物のみからなるか、あるいは芳香族テトラカルボン酸二無水物および脂環式テトラカルボン酸二無水物の混合物のみからなるものであることが、本発明の半導体表面処理用組成物の安定性の観点から好ましい。後者の場合、脂環式テトラカルボン酸二無水物の使用割合は、全テトラカルボン酸二無水物に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
【0022】
本発明におけるポリアミック酸を合成するために用いられるジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、特許文献4(特開2010−97188号公報)に記載のジアミンを用いることができる。
【0023】
本発明におけるポリアミック酸を合成する際に用いられるジアミンは、芳香族ジアミンを、全ジアミンに対して、30モル%以上含むものであることが好ましく、50モル%以上含むものであることがより好ましく、特に80モル%以上含むものであることが好ましい。
【0024】
前記ポリアミック酸を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸二無水物およびジミアンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。
【0025】
前記分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物として、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルコハク酸無水物、n−ドデシルコハク酸無水物、n−テトラデシルコハク酸無水物、n−ヘキサデシルコハク酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;
モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
【0026】
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下とすることがより好ましい。
【0027】
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.9〜1.2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは1.0〜1.1当量となる割合である。
【0028】
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0〜100℃において、好ましくは0.1〜24時間、より好ましくは0.5〜12時間行われる。
【0029】
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノールおよびその誘導体、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、炭化水素など一般的にポリアミック酸の合成反応に使用できる有機溶媒を使用することができる。これら有機溶媒の具体例としては、上記非プロトン性極性溶媒として、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−t−ブチル−2−ピロリドン、N−メトキシエチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;
上記フェノール誘導体として、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
上記アルコールとして、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;
上記ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
上記エーテルとして、例えばエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコール−ジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを、それぞれ挙げることができる。
上記エステルとして、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを;
上記炭化水素として、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、それぞれ挙げることができる。
【0030】
ポリアミック酸の脱水閉環反応は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法またはポリアミック酸を有機溶媒に溶解した溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
【0031】
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用割合は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜1,0モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用割合は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜1,0モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は好ましくは1〜10時間であり、より好ましくは2〜5時間である。
【0032】
以上のようにして得られるポリアミック酸、ポリアミック酸誘導体およびそれらの塩は、これを濃度10重量%の溶液としたときに、2,000〜100,000mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましい。この重合体の溶液粘度(mPa・s)は、これらの重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0033】
また、以上のようにして得られるポリアミック酸、ポリアミック酸誘導体およびそれらの塩につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1,000〜500、000であることが好ましい。さらに、上記Mwとゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、15以下であることが好ましい。
【0034】
以上のようにして得られたポリアミック酸またはそのイミド化物は、そのまま、または必要に応じて公知の方法によって精製したうえで後述の半導体表面処理用組成物の調製に供される。
【0035】
本発明におけるポリアミック酸としては、市販のポリアミック酸溶液を使用してもよい。市販のポリアミック酸溶液としては、例えばU―ワニスA(宇部興産(株)製)などを挙げることができる。
【0036】
重合体(A)の含有割合は、半導体表面処理用組成物の全質量に対して、好ましくは0.0001質量%以上1質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以上0.5質量%以下、特に好ましくは0.001質量%以上0.1質量%以下である。重合体(A)の含有割合が前記範囲である場合には、配線材料表面に重合体(A)が吸着し、過剰なエッチングをより効果的に抑制することができる。
1.2. 液状媒体(B)
本発明の半導体表面処理用組成物は、液状媒体(B)を含有する。液状媒体(B)としては、1気圧下における沸点が50〜300℃であることが好ましい。このような沸点の液状媒体は、表面処理後、スピンドライまたは加熱により除去しやすい。
【0037】
前記液状媒体(B)としては、水、アルコール類、エステル類、エーテル類及び炭化水素類等が挙げられる。中でも、前記液状媒体(B)が水であると、金属配線上の不純金属イオン除去性能の点でより好ましい。前記液状媒体(B)は、水を90質量%以上含むことが好ましい。
【0038】
前記アルコール類、前記エステル類、前記エーテル類及び前記炭化水素類の具体例としては、イソプロパノール、ブタノール等の1価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の2価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ブチルカルビトール等のカルビトール類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル等の乳酸エステル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0039】
液状媒体(B)の含有割合は、半導体表面処理用組成物の全質量に対して、好ましくは0.0001質量%以上1質量%以下、より好ましくは0.0005質量%以上0.5質量%以下、特に好ましくは0.001質量%以上0.1質量%以下である。液状媒体(B)の含有割合が前記範囲である場合には、半導体表面と半導体表面処理用組成物の濡れ性をより向上させることができる。
1.3. その他の成分
本発明の半導体表面処理用組成物は、前記重合体(A)、前記液状媒体(B)以外に、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、研磨粒子、表面活性剤、水溶性(共)重合体(塩)、界面活性剤及びpH調整剤等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記研磨粒子としては、公知の材料を使用することができるが、無機酸化物粒子や有機粒子が好ましい。
【0041】
無機酸化物粒子としては、例えば、シリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の無機粒子が挙げられる。また、配線金属膜表面のスクラッチの発生を抑制する観点から、コロイダルシリカがより好ましい。
【0042】
無機酸化物粒子の含有量は、半導体表面処理用組成物の全質量100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは0.3質量部以上5質量部以下である。無機酸化物粒子の含有量が前記範囲にあると、配線金属膜に対する十分な研磨速度が得られると共に、粒子の沈降・分離が発生しにくい安定な半導体表面処理用組成物が得られやすい。
【0043】
前記表面活性剤としては、アミン類、塩化水素酸のアミン塩、臭化水素酸のアミン塩、並びに、カルボン酸及びそのアミン塩が挙げられる。前記表面活性剤の具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン等の第1級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第2級アミン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン等の第3級アミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類、ならびに、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ジエチルグルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、ジグリコール酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リノレン酸等の脂肪族カルボン酸;安息香酸等の芳香族酸;ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、グリセリン酸、乳酸等のヒドロキシ酸、および、これらカルボン酸のアミン塩等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。前記表面活性剤を用いることにより、半導体表面処理用組成物の作用により可溶化された金属イオン等に前記重合体(A)が配位して安定化し、形成した錯体を確実に除去することができ、本発明の半導体表面処理用組成物は、より効果的に、所期の効果を発揮することができる。
【0044】
前記表面活性剤の配合量は、特に限定されないが、半導体表面処理用組成物の全量を100質量部とした場合、0.01〜1.00質量部であることが好ましく、0.05〜0.50質量部であることが更に好ましい。
【0045】
前記水溶性(共)重合体(塩)としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体等の不飽和カルボン酸の重合体およびその塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性高分子が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記水溶性(共)重合体(塩)を用いることにより、化学機械研磨後の基板表面に残存している異物等に吸着し、これらを液中へ分散させて除去することができ、より効果的に、半導体表面処理用組成物の所期の効果を発揮することができる。
【0047】
前記水溶性(共)重合体(塩)の配合量は、特に限定されないが、半導体表面処理用組成物の全量を100質量部とした場合、0.01〜1.00質量部であることが好ましく、0.05〜0.50質量部であることが更に好ましい。
【0048】
前記界面活性剤としては、アニオン型界面活性剤またはノニオン型界面活性剤が挙げられる。
【0049】
前記アニオン型界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸;アルキルナフタレンスルホン酸;ラウリル硫酸等のアルキル硫酸エステル;ポリオキシエチレンラウリル硫酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル;ナフタレンスルホン酸縮合物;リグニンスルホン酸等を挙げることができる。これらのアニオン型界面活性剤は、塩の形態で使用してもよい。
【0050】
前記ノニオン型界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0051】
前記界面活性剤は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。前記界面活性剤を用いることにより、本発明の組成物を用いて半導体基板の金属配線を含む面を処理する際に、基板表面に残存している異物を液中へ分散させて除去することができ、より効果的に、半導体表面処理用組成物の所期の効果を発揮することができる。
【0052】
前記界面活性剤の配合量は、特に限定されないが、半導体表面処理用組成物の全量を100質量部とした場合、0.001〜1.00質量部であることが好ましく、0.001〜0.10質量部であることが更に好ましい。
【0053】
本発明の半導体表面処理用組成物は、使用時に各成分の濃度が上記範囲にあればよい。すなわち、本発明の半導体表面処理用組成物は、各成分を上記濃度範囲となるように直接配合して使用してもよいし、あるいは、上記濃度範囲より濃縮された状態の組成物を調製し、使用前に溶媒を添加して各成分の濃度が上記範囲となるように希釈して使用してもよい。
【0054】
濃縮状態の組成物は、溶媒以外の各成分の配合量の比率を保ったまま、溶媒を除去することによって、溶媒以外の各成分の濃度を上げることにより調製できる。また、溶媒の添加量を予め少なくすることによって調製することもできる。
【0055】
本発明の半導体表面処理用組成物は、必要に応じて、さらにpH調整剤を含有していてもよい。
【0056】
前記pH調整剤としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、アンモニア等の塩基性物質が挙げられる。前記pH調整剤は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。前記pH調整剤を用いて、半導体表面処理用組成物のpHを以下のような範囲に調整してもよい。
【0057】
本発明の半導体表面処理用組成物は、pHが4〜11であり、好ましくは4.5〜10である。本発明におけるpHは、25℃、JIS K0400−12−10:2000に準拠して測定した値である。
【0058】
本発明の半導体表面処理用組成物は、上記の各成分を混合することにより調製できる。
【0059】
2. 半導体表面処理用組成物の調製方法
本実施形態に係る半導体表面処理用組成物の調製方法は、特に制限されず、公知の方法を使用することができる。
【0060】
半導体表面処理用組成物をCMP工程後に使用する洗浄剤として使用する場合、粒子径が0.1〜0.3μmの粒子を3×10
1〜1.5×10
3個/mL含有することが好ましい。半導体洗浄体組成物中の粒子径が0.1〜0.3μmの粒子を前記範囲含有することにより、洗浄工程において、被研磨面に残留した研摩屑を効果的にそぎ落とし除去できると考えられる。これに対して、半導体表面処理用組成物に含有される粒子径が0.1〜0.3μmの粒子が前記範囲を超える場合、洗浄後の被研磨面に粒子が残留し、被洗浄体である半導体回路の電気特性の悪化による歩留まりの低下等が誘発されるため好ましくない。
【0061】
一般的に、WO1999/049997等に記載されているように、半導体装置の製造工程において粒子は可能な限り除去するべき異物であると認識されている。しかし、本願発明においては、これまでの概念を覆し、一定の含有量の範囲であれば、半導体特性を大幅に劣化させず、逆に洗浄特性を向上させる効果があることが判明した。
【0062】
ここで、粒子の粒子径と半導体表面処理用組成物中の含有量は、レーザー回折法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定し、小さい粒子から粒子を累積したときの粒子数の累積度数が50%となる粒子径(D50)の値である。このようなレーザー回折式粒度分布測定装置としては、例えばHORIBA LA−300シリーズ、HORIBA LA−920シリーズ(以上、株式会社堀場製作所製)などを挙げることができる。この粒度分布測定装置は、粒子の一次粒子だけを評価対象とするものではなく、一次粒子が凝集して形成された二次粒子をも評価対象とする。従って、この粒度分布測定装置によって得られた粒子径は、半導体表面処理用組成物中に含まれる粒子の分散状態の指標とすることができる。
【0063】
本実施の形態に係る半導体表面処理用組成物の製造方法は、必要に応じて、デプスタイプまたはプリーツタイプのフィルタでろ過して粒子量を制御することが好ましい。ここで、デプスタイプのフィルタとは、深層ろ過または体積ろ過タイプのフィルタとも称される高精度ろ過フィルタである。このようなデプスタイプのフィルタは、多数の孔が形成されたろ過膜を積層させた積層構造をなすものや、繊維束を巻き上げたものなどがある。デプスタイプのフィルタとしては、具体的には、プロファイルII、ネクシスNXA、ネクシスNXT、ポリファインXLD、ウルチプリーツプロファイル等(全て、日本ポール社製)、デプスカートリッジフィルタ、ワインドカートリッジフィルタ等(全て、アドバンテック社製)、CPフィルタ、BMフィルタ等(全て、チッソ社製)、スロープピュア、ダイア、マイクロシリア等(全て、ロキテクノ社製)等が挙げられる。
【0064】
プリーツタイプのフィルタとしては、不織布、ろ紙、金属メッシュなどからなる精密ろ過膜シートをひだ折り加工した後、筒状に成形するとともに前記シートのひだの合わせ目を液密にシールし、かつ、筒の両端を液密にシールして得られる筒状の高精度ろ過フィルタのことである。具体的には、HDCII、ポリファインII等(全て、日本ポール社製)、PPプリーツカートリッジフィルタ(アドバンテック社製)、ポーラスファイン(チッソ社製)、サートンポア、ミクロピュア等(全て、ロキテクノ社製)等を挙げることができる。
【0065】
ろ過工程は、例えば、
図1に示すようなろ過装置101を用いて行うことができる。ろ過装置101は、異物除去前の半導体表面処理用組成物を貯蔵し供給する供給タンク1と、異物除去前の半導体表面処理用組成物を一定の流量で流すための定量ポンプ2と、カートリッジフィルタ(図示せず)及びこのカートリッジフィルタを収納(装着)したハウジングを有するろ過器4と、定量ポンプ2とろ過器4の途中に位置する脈動防止器3と、脈動防止器3とろ過器4との間に配置された第一圧力計7aと、ろ過器4の下流に配置された第二圧力計7bと、を備えている。そして、ろ過装置101は、ろ過器4から供給タンク1にバインダーを戻す戻り導管6と、ろ過器4によりろ過された半導体表面処理用組成物を排出する排出導管5と、を備えている。
【0066】
ろ過装置101において、前記重合工程で得られた反応液は、供給タンク1から定量ポンプ2により昇圧された脈動防止器3に供給される。定量ポンプ2による脈動がある場合は、脈動防止器3によって脈動が低減される。脈動防止器3から排出された反応液は、ろ過器4に供給され、異物が除去された後、排出導管5を通って回収される。この回収された回収液が半導体表面処理用組成物である。ここで、本明細書において「異物」とは、粒子径が20μm以上の粒子のことである。
【0067】
排出導管5を通って回収された液体の異物の除去が十分でない場合には、回収液を半導体表面処理用組成物とすることなく、戻り導管6を通して供給タンク1に戻し、再びろ過器4にてろ過することもできる。また、定量ポンプ2による脈動が生じない場合には、脈動防止器3を配置しなくてもよい。更に、反応液の粘度が高い場合には、供給タンク、導管、またはこれらの両方を加温することにより、反応液の粘度を低下させることができる。即ち、供給タンク、導管、またはこれらの両方を加温可能な加温手段を更に備えていてもよい。
【0068】
なお、ろ過装置101は、第一圧力計7aと第二圧力計7bとを備えているが、圧力計を備えないろ過装置を用いてもよい。但し、第一圧力計7aと第二圧力計7bとを備えることにより、ろ過器が正常に機能するようにろ過器に生じる差圧を管理することができる。また、供給タンク1に代えて、運搬用のコンテナから直接、異物除去前の半導体表面処理用組成物を供給してもよい。そして、ろ過装置101は、1つのろ過器4を用いた例であるが、複数のろ過器を用いることもできる。複数のろ過器を用いる場合、複数のろ過器を直列に連結してもよいし、並列に配置してもよい。
【0069】
3.表面処理方法
本発明の表面処理方法は、前記半導体表面処理用組成物を半導体基板の金属配線を含む面に接触させ、半導体基板の金属配線を含む面を処理することを特徴としている。以下、本実施形態に係る洗浄方法の一具体例について、図面を用いながら詳細に説明する。
【0070】
3.1.研磨工程
図2は、本実施形態に係る半導体表面処理方法に用いられる配線基板の作製プロセスを模式的に示す断面図である。かかる配線基板は、以下のプロセスを経ることにより形成される。
【0071】
図2(A)は、CMP処理前の被処理体を模式的に示す断面図である。
図2(A)に示すように、被処理体100は、基体10を有する。基体10は、例えばシリコン基板とその上に形成された酸化シリコン膜から構成されていてもよい。さらに、基体10には、図示していないが、トランジスタ等の機能デバイスが形成されていてもよい。
【0072】
被処理体100は、基体10の上に、配線用凹部20が設けられた絶縁膜12と、絶縁膜12の表面ならびに配線用凹部20の底部および内壁面を覆うように設けられたバリアメタル膜14と、配線用凹部20を充填し、かつバリアメタル膜14の上に形成された金属膜16と、が順次積層されて構成される。
【0073】
絶縁膜12としては、例えば、真空プロセスで形成された酸化シリコン膜(例えば、PETEOS膜(Plasma Enhanced−TEOS膜)、HDP膜(High Density Plasma Enhanced−TEOS膜)、熱化学気相蒸着法により得られる酸化シリコン膜等)、FSG(Fluorine−doped silicate glass)と呼ばれる絶縁膜、ホウ素リンシリケート膜(BPSG膜)、SiON(Silicon oxynitride)と呼ばれる絶縁膜、Siliconnitride等が挙げられる。
【0074】
バリアメタル膜14としては、例えば、タンタル、チタン、コバルト、ルテニウム、マンガン、およびこれらの化合物等が挙げられる。バリアメタル膜14は、これらの1種から形成されることが多いが、タンタルと窒化タンタルなど2種以上を併用することもできる。
【0075】
金属膜16は、
図2(A)に示すように、配線用凹部20を完全に埋めることが必要となる。そのためには、通常化学蒸着法または電気めっき法により、10000〜15000オングストロームの金属膜を堆積させる。金属膜20の材料としては、銅またはタングステンが挙げられるが、銅の場合には純度の高い銅だけでなく、銅を含有する合金を使用することもできる。銅を含有する合金中の銅含有量としては、95質量%以上であることが好ましい。
【0076】
次いで、
図2(A)の被処理体100のうち、配線用凹部20に埋没された部分以外の金属膜16をバリアメタル膜14が露出するまでCMPにより高速研磨する(第1研磨工程)。さらに、表面に露出したバリアメタル膜14を上述の半導体表面処理用組成物を用いてCMPにより研磨する(第2研磨工程)。このようにして、
図2(B)に示すような配線基板200が得られる。なお、配線材料およびバリアメタル材料が表面に共存する配線基板を研磨する際に、配線材料およびバリアメタル材料の腐食を抑制すると共に、配線基板上の酸化膜や有機残渣を効率的に除去することができる。本実施形態に係る半導体表面処理方法は、銅/コバルトおよび銅/窒化タンタルの腐食電位差を小さくできる半導体表面処理用組成物 を用いているので、配線材料として銅、バリアメタル材料としてコバルトおよび/または窒化タンタルが共存する配線基板について研磨処理を行った際に、特に優れた効果を発揮する。
【0077】
4.2.洗浄工程
次いで、
図2(B)に示す配線基板200の表面(被洗浄面)を上述の半導体表面処理用組成物を用いて洗浄する。本実施形態に係る半導体表面処理方法によれば、CMP終了後の配線材料およびバリアメタル材料が表面に共存する配線基板を洗浄する際に、配線材料およびバリアメタル材料の腐食を抑制すると共に、配線基板上の酸化膜や有機残渣を効率的に除去することができる。本実施形態に係る半導体表面処理方法は、銅/コバルトおよび銅/窒化タンタルの腐食電位差を小さくできる半導体表面処理用組成物 を用いているので、配線材料として銅、バリアメタル材料としてコバルトおよび/または窒化タンタルが共存する配線基板について洗浄処理を行った際に、特に優れた効果を発揮する。
【0078】
半導体表面処理方法としては、特に制限されないが、配線基板200に上述の半導体表面処理用組成物を直接接触させる方法により行われる。半導体表面処理用組成物を配線基板200に直接接触させる方法としては、洗浄槽に半導体表面処理用組成物を満たして配線基板を浸漬させるディップ式;ノズルから配線基板上に半導体表面処理用組成物を流下しながら配線基板を高速回転させるスピン式;配線基板に半導体表面処理用組成物を噴霧して洗浄するスプレー式等の方法が挙げられる。また、このような方法を行うための装置としては、カセットに収容された複数枚の配線基板を同時に洗浄するバッチ式洗浄装置、1枚の配線基板をホルダーに装着して洗浄する枚葉式洗浄装置等が挙げられる。
【0079】
本実施形態に係る半導体表面処理方法において、半導体表面処理用組成物の温度は、通常室温とされるが、性能を損なわない範囲で加温してもよく、例えば40〜70℃程度に加温することができる。
【0080】
また、上述の半導体表面処理用組成物を配線基板200に直接接触させる方法に加えて、物理力による半導体表面処理方法を併用することも好ましい。これにより、配線基板200に付着したパーティクルによる汚染の除去性が向上し、洗浄時間を短縮することができる。物理力による洗浄方法としては、洗浄ブラシを使用したスクラブ洗浄や超音波洗浄が挙げられる。
【0081】
さらに、本実施形態に係る半導体表面処理方法による洗浄の前後に、超純水または純水による洗浄を行ってもよい。
【0082】
4.実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0083】
4.1 重合体(A)の合成
攪拌装置、温度計およびコンデンサーを備えた容量3Lのフラスコ内部を減圧した状態でヒートガンにて加熱して容器内部の残存水分を除去した後、乾燥窒素ガスを満たした。このフラスコに、溶媒として予め水素化カルシウムを用いた脱水蒸留法により脱水処理を施したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1,170g、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物54.53g(0.250モル)およびジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル50.06g(0.250モル)を仕込み、25℃において3時間攪拌下に反応を行うことにより、ポリアミック酸A1を10質量%含有するNMP溶液を得た。
【0084】
作製したポリアミック酸A1を含有する溶液100gを、約1Lの水中へ少量ずつ滴下して凝固させた。凝固物を流水中でよく洗ってNMPを十分に除去した後、室温で一晩減圧乾燥し、固体状のポリアミック酸とした。次いで、上記の固体状のポリアミック酸の10gを2質量%のアンモニア水溶液(pH11)90g中に入れて、室温において3時間撹拌することにより、ポリアミック酸A1を10質量%含有する水溶液を得た。
【0085】
使用したテトラカルボン酸二無水物およびジアミンの種類を、それぞれ、表1に記載のものを用いたほかはポリアミック酸A1と同様にして、ポリアミック酸A2〜A20をそれぞれ、10質量%含有するNMP溶液を得た。
【0086】
これらのポリアミック酸に関しても、上記ポリアミック酸A1同様にポリアミック酸A2〜A20をそれぞれ10質量%含有する水溶液を得た。
【0088】
4.2. 実施例1
4.2.1.半導体表面処理用組成物の調製
ポリエチレン製容器に、半導体表面処理用組成物として表2に示す濃度とpHになるように各成分と水酸化カリウムあるいはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを適時添加し、イオン交換水を適量入れ、15分間撹拌した。
【0089】
このようにして得られた組成物について、に対してコロイダルシリカ(商品名「PL−1」、扶桑化学工業株式会社製、一次粒径15nm)を0.01質量部添加した後、
図2に示すろ過装置101を用いてろ過を行った(ろ過工程)。
図1に示すろ過装置101は、異物除去前の組成物を貯蔵し供給する供給タンク1と、異物除去前の組成物を一定の流量で流すための定量ポンプ2と、カートリッジフィルタ(図示せず)及びこのカートリッジフィルタを収納(装着)したハウジングを有するろ過器4と、定量ポンプ2とろ過器4の途中に位置する脈動防止器3と、脈動防止器3とろ過器4との間に配置された第一圧力計7aと、ろ過器4の下流に配置された第二圧力計7bと、を備えている。そして、ろ過装置101は、ろ過器4から供給タンク1に半導体表面処理用組成物を戻す戻り導管6と、ろ過器4によりろ過された半導体表面処理用組成物を排出する排出導管5と、を備えている。
【0090】
本実験例において、ろ過器4は、ハウジング内にメンブレンタイプのカートリッジフィルタ「ウォーターファイン」(日本ポール社製、定格ろ過精度0.05μm、長さ10インチ)を1本装着したものである。定量ポンプ2は、エア駆動式のダイヤフラムポンプを用いた。
【0091】
適時組成物をサンプリングして、組成物中に含有される0.1〜0.3μmの粒子数が表1になった時点で濾過を停止し、半導体表面処理用組成物を作成した。なお、組成物1mL当たりにおける粒子の数を下記のようにして測定した。
【0092】
パーティクルカウンタには、リオン株式会社製の液中パーティクルカウンタ「KS−42AF」を使用した。具体的には、測定されるパーティクルの数が「300個/mL(0.1μm)」(即ち、「粒子径が0.1μmよりも大きな粒子が、1mL中に300個以下」)となるまで超純水でブランク測定を繰り返した。その後、半導体表面処理用組成物(サンプル)100mLを用意し、このサンプルを前記粒度分布測定器にセットした。その後、前記パーティクルカウンタにより前記サンプルの1mL当りにおける粒子の数が2回測定され、平均値が算出される。この平均値を半導体表面処理用組成物1mL当りにおける粒子の数とした。
【0093】
4.2.2.半導体表面の処理
4.2.2.1.化学機械研磨
評価用の8インチウエハ(Advance Materials Technology製、CVD法によりコバルト膜を200nm成膜)を、化学機械研磨装置「EPO112」(株式会社荏原製作所製)を用いて、下記の条件で化学機械研磨を実施した。
・化学機械研磨用水系分散体:JSR(株)製、「CMS8501/CMS8552」
・研磨パッド:ロデール・ニッタ(株)製、「IC1000/SUBA400」
・定盤回転数:70rpm
・ヘッド回転数:70rpm
・ヘッド荷重:250g/cm
2
・化学機械研磨用水系分散体供給速度:200mL/分
・研磨時間:60秒
4.2.2.2.AFMによる腐食評価
上述の化学機械研磨処理を経た基板を切断して2x2cmの試験片を作成し、Bluker Corpoation製の走査型原子間力顕微鏡(AFM)であるDimension FastScanを用いてフレームサイズ10μmにて12か所、偏りなく観察し、12か所の算術平均粗さの平均値が0.1 nm以下の平坦な表面である事が確認できたウエハを欠陥評価に用いた。試験片を18℃に温調した本実施の形態にかかる半導体表面処理組成物に1時間浸漬した。浸漬後超純水で30秒リンスし、自然乾燥させた。乾燥後の試験片を走査型原子間力顕微鏡を用いてフレームサイズ10μmにて任意に3か所観察した。
【0094】
3か所の算術平均粗さの平均値が0.2nm以上である場合、半導体表面処理用組成物により腐食が発生し不良と判断し「×」、0.2nm未満である場合、半導体表面処理用組成物により腐食がせず良好と判断し「○」と表2に示した。
【0095】
4.2.2.3.EISによる腐食評価
上記で得られた研磨後の基板を切断して1x3cmの試験片を2つ作成し、中央の1x1cmの箇所を絶縁性テープで被覆した。その後、電気化学インピーダンス測定装置(Solartron社製Electrochemical interface(SI1287)およびFequency Response Analyzer(1252A))を用いて、2つの試験片をそれぞれ作用極、対極とし、本実施の形態にかかる半導体表面処理組成物を電解質とした2極セルを組み上げた。振幅5mV,周波数1500−0.07Hzの交流電圧を高周波から低周波にかけて印加し、抵抗値の実部と虚部の値を測定した。測定結果を縦軸に虚部、横軸に実部を取ることにより得られる半円状のプロットを交流インピーダンスの解析ソフト「Z veiw」により解析し、電荷移動抵抗(Ω)を算出した。
【0096】
算出された電荷移動抵抗値が40kΩ以下であれば耐腐食性が不十分と判断して「×」、40kΩ以上であれば良好として「○」と表2に示した。
【0097】
4.3. 実施例2〜20、比較例1〜7
表2および表3に記載の組成に変更し、表2および表3の組成に調整した以外は実施例1と同様に半導体表面処理用組成物を作成し、評価を行った。結果を表2および表3に示す。
【0098】
4.4. 実施例21
4.4.1.半導体表面処理用組成物の調製
4.4.2.研磨速度の測定
下記に示した評価用の8インチウエハを、化学機械研磨装置「EPO112」(株式会社荏原製作所製)を用いて、作成した化学機械研磨用組成物を用いて下記の条件で化学機械研磨を実施した。
【0099】
(1)研磨速度測定用基板
・膜厚2,000オングストロームのコバルト膜が積層された8インチ熱酸化膜付きシリコン基板。
・膜厚2,000オングストロームの窒化チタン膜が積層された8インチ熱酸化膜付きシリコン基板。
・膜厚10,000オングストロームのPETEOS膜が積層された8インチシリコン基板。
【0100】
(2)研磨条件
・ヘッド回転数:70rpm
・ヘッド荷重:200gf/cm
2
・テーブル回転数:70rpm
・化学機械研磨水系分散体の供給速度:200mL/分
・研磨時間:60秒
(3)研磨速度の算出方法
コバルト膜および窒化チタン膜については、電気伝導式膜厚測定器(KLAテンコール社製、形式「オムニマップRS75」)を用いて、研磨処理後の膜厚を測定し、化学機械研磨により減少した膜厚および研磨時間から研磨速度を算出した。
【0101】
PETEOS膜および低誘電率絶縁膜については、光干渉式膜厚測定器(ナノメトリクス・ジャパン社製、型式「Nanospec6100」)を用いて、研磨処理後の膜厚を測定し、化学機械研磨により減少した膜厚および研磨時間から研磨速度を算出した。
【0102】
4.4.3.AFMによる腐食評価
上記で得られた研磨後のコバルト基板を切断して2x2cmの試験片を作成し、18℃に温調された本実施の形態にかかる半導体表面処理用組成物に1時間浸漬した。浸漬後超純水で30秒リンスしながら、ニトリル製手袋を装着した手によって試験片表面をよく磨いた後自然乾燥させた。乾燥後の試験片を走査型原子間力顕微鏡(AFM、Bluker Corpoation製、装置名「Dimension FastScan」)を用いてフレームサイズ10μmにて任意に3か所観察した。
【0103】
コバルト基板試験片の3か所の算術平均粗さの平均値が0.2nm以上である場合、腐食が発生し不良と判断し「×」、0.2nm未満である場合、腐食がせず良好と判断し「○」と表4に示した。
【0104】
4.4.4.EISによる腐食評価
上記で得られた全ての研磨後の基板を切断して1x3cmの試験片を2つ作成し、中央の1x1cmの箇所を絶縁性テープで被覆した。その後、電気化学インピーダンス測定装置(Solartron社製Electrochemical interface(SI1287)およびFequency Response Analyzer(1252A))を用いて、2つの試験片をそれぞれ作用極、対極とし、本実施の形態にかかる半導体表面処理組成物を電解質とした2極セルを組み上げた。振幅5mV,周波数1500−0.07Hzの交流電圧を高周波から低周波にかけて印加し、抵抗値の実部と虚部の値を測定した。測定結果を縦軸に虚部、横軸に実部を取ることにより得られる半円状のプロットを交流インピーダンスの解析ソフト「Z veiw」により解析し、電荷移動抵抗(Ω)を算出した。
【0105】
算出された電荷移動抵抗値が40kΩ以下であれば耐腐食性が不十分と判断して「×」、40kΩ以上であれば良好として「○」と表4に示した。
【0106】
4.4. 実施例22〜40、比較例8〜14
表4に記載の組成に変更し、表4の組成に調整した以外は実施例21と同様に半導体表面処理用組成物を作成し、評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0111】
上表2〜4から明らかなように、実施例1〜40に係る半導体表面処理用組成物を用いた場合には、いずれも基板表面の腐食状態が良好であった。
【0112】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。