特許第6623972号(P6623972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6623972ヘルパーロールの制御システムおよび制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6623972
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】ヘルパーロールの制御システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20191216BHJP
   B21C 49/00 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   H02M7/48 E
   B21C49/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-155569(P2016-155569)
(22)【出願日】2016年8月8日
(65)【公開番号】特開2018-26899(P2018-26899A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】真中 智朗
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−051265(JP,A)
【文献】 特開平07−330198(JP,A)
【文献】 特開平09−192718(JP,A)
【文献】 特開昭62−235161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
B21C 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヘルパーロールに対応した複数の電動機の各々に流れる電流の値に基づいて複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値とを計算し、前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差を計算し、複数回のサンプリング時の各々における前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差で、正の値の中から抽出された最小値の各々の平均値として計算された下限値と、正の値の中から抽出された最大値の各々の平均値として計算された上限値との間において前記複数のヘルパーロールの各々に対するDroop設定値を計算する計算部、
を備えたヘルパーロールの制御システム。
【請求項2】
前記計算部は、
前記複数のヘルパーロールに対応した複数の電動機の各々に流れる電流の値に基づいて複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値とを計算し、前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差を計算する第1計算部と、
複数回のサンプリング時の各々において前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差で正の値の中から最小値の各々と最大値の各々とを抽出し、抽出された最小値の各々の平均値を下限値として計算し、抽出された最大値の各々の平均値を上限値として計算する第2計算部と、
前記第1計算部により計算された前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差の大きさに応じて前記第2計算部により計算された下限値と上限値との間において前記複数のヘルパーロールの各々に対するDroop設定値を計算する第3計算部と
を備えた請求項1に記載のヘルパーロールの制御システム。
【請求項3】
複数のヘルパーロールに対応した複数の電動機の各々に流れる電流の値に基づいて複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値とを計算し、複数回のサンプリング時の各々における前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差を計算し、前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差で、正の値の中から抽出された最小値の各々の平均値として計算された下限値と、正の値の中から抽出された最大値の各々の平均値として計算された上限値との間において前記複数のヘルパーロールの各々に対するDroop設定値を計算する計算工程、
を備えたヘルパーロールの制御方法。
【請求項4】
前記計算工程は、
前記複数のヘルパーロールに対応した複数の電動機の各々に流れる電流の値に基づいて複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値とを計算し、前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差を計算する第1計算工程と、
複数回のサンプリング時の各々において前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差で正の値の中から最小値の各々と最大値の各々とを抽出し、抽出された最小値の各々の平均値を下限値として計算し、抽出された最大値の各々の平均値を上限値として計算する第2計算工程と、
前記第1計算工程により計算された前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差の大きさに応じて前記第2計算工程により計算された下限値と上限値との間において前記複数のヘルパーロールの各々に対するDroop設定値を計算する第3計算工程と
を備えた請求項3に記載のヘルパーロールの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヘルパーロールの制御システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ヘルパーロールの制御システムを開示する。当該制御システムによれば、ヘルパーロールの加減速時にDroop量補償量が計算される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−344405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のものにおいては、複数のヘルパーロールの各々に対してDroop量補償量が計算される。このため、複数のヘルパーロールの負荷の差が大きくなる。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされた。複数のヘルパーロールの負荷の差を小さくすることができるヘルパーロールの制御システムおよび制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るヘルパーロールの制御システムは、複数のヘルパーロールに対応した複数の電動機の各々に流れる電流の値に基づいて複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値とを計算し、複数回のサンプリング時の各々における前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差を計算し、前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差で、正の値の中から抽出された最小値の各々の平均値として計算された下限値と、正の値の中から抽出された最大値の各々の平均値として計算された上限値との間において前記複数のヘルパーロールの各々に対するDroop設定値を計算する計算部、を備えた。
【0007】
この発明に係るヘルパーロールの制御方法は、複数のヘルパーロールに対応した複数の電動機の各々に流れる電流の値に基づいて複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値とを計算し、複数回のサンプリング時の各々における前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差を計算し、前記複数のヘルパーロールの各々の負荷率と前記複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差で、正の値の中から抽出された最小値の各々の平均値として計算された下限値と、正の値の中から抽出された最大値の各々の平均値として計算された上限値との間において前記複数のヘルパーロールの各々に対するDroop設定値を計算する計算工程、を備えた。
【発明の効果】
【0008】
これらの発明によれば、複数のヘルパーロールの各々に対するDroop設定値は、複数のヘルパーロールの各々の負荷率と複数のヘルパーロールの負荷率の平均値との差の大きさに応じて下限値と上限値との間において計算される。このため、複数のヘルパーロールの負荷の差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1におけるヘルパーロールの制御システムが適用された鉄鋼のプロセスラインの構成図である。
図2】この発明の実施の形態1におけるヘルパーロールの制御システムのブロック図である。
図3】この発明の実施の形態1におけるヘルパーロールの制御システムが適用された鉄鋼のプロセスラインの複数のヘルパーロールの各々の負荷率を示す図である。
図4】この発明の実施の形態1におけるヘルパーロールの制御システムが適用された鉄鋼のプロセスラインのヘルパーロールの負荷率の差とDroop補償量との関係を説明するための図である。
図5】この発明の実施の形態1におけるヘルパーロールの制御システムの主幹制御装置6の動作を説明するためのフローチャートである。
図6】この発明の実施の形態1におけるヘルパーロールの制御システムの主幹制御装置6のハードウェア構成図である。
図7】この発明の実施の形態2におけるヘルパーロールの制御システムが適用された鉄鋼のプロセスラインの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるヘルパーロールの制御システムが適用された鉄鋼のプロセスラインの構成図である。
【0012】
図1において、プロセスラインは、炉1と複数のヘルパーロール2と複数の電動機3と制御システム4とを備える。
【0013】
炉1は、内部空間を加熱し得るように設けられる。
【0014】
例えば、複数のヘルパーロール2は、第1ヘルパーロール2aと第2ヘルパーロール2bと第3ヘルパーロール2cと第4ヘルパーロール2dと第5ヘルパーロール2eとである。第1ヘルパーロール2aと第2ヘルパーロール2bと第3ヘルパーロール2cと第4ヘルパーロール2dと第5ヘルパーロール2eとは、炉1の上流側から下流側に向けて順々に配置される。第1ヘルパーロール2aは、炉1の上側に設けられる。第2ヘルパーロール2bは、炉1の下側に設けられる。第3ヘルパーロール2cは、炉1の上側に設けられる。第4ヘルパーロール2dは、炉1の下側に設けられる。第5ヘルパーロール2eは、炉1の上側に設けられる。
【0015】
複数の電動機3は、複数のヘルパーロール2に対応して設けられる。複数の電動機3の各々における回転軸は、対応したヘルパーロール2の回転軸に連結される。
【0016】
制御システム4は、複数のドライブ制御装置5と主幹制御装置6とを備える。
【0017】
複数のドライブ制御装置5は、複数の電動機3に対応して設けられる。複数のドライブ制御装置5の各々の出力部は、複数の電動機3の各々の入力部に接続される。主幹制御装置6の出力部は、複数のドライブ制御装置5の各々の入力部に接続される。
【0018】
ストリップ7は、複数のヘルパーロール2に巻き掛けられる。
【0019】
主幹制御装置6は、複数のドライブ制御装置5の各々に情報を送信する。複数のドライブ制御装置5の各々は、主幹制御装置6からの情報に基づいて対応した電動機3を回転させる。複数のヘルパーロール2の各々は、対応した電動機3の回転に追従して回転する。その結果、ストリップ7は、搬送される。この際、複数のヘルパーロール2は、ストリップ7により間接的に拘束される。このため、複数のヘルパーロール2の回転速度は、常に一定である。
【0020】
次に、図2を用いて、制御システム4を説明する。
図2はこの発明の実施の形態1におけるヘルパーロールの制御システムのブロック図である。
【0021】
図2においては、1つのドライブ制御装置5が示される。他のドライブ制御装置5は示されない。速度センサ8は、電動機3に対応して設けられる。速度センサ8は、電動機3の回転速度を計測し得るように設けられる。
【0022】
ドライブ制御装置5は、速度制御器5aと電流制御器5bと電流計5cと変換器5dとを備える。
【0023】
速度制御器5aは、主幹制御装置6からの速度基準とDroop補償量と速度センサ8からの速度基準とに基づいてトルク基準を計算する。電流制御器5bは、トルク基準に基づいて電動機3の制御量である電流の値と周波数の値を計算する。電流制御器5bは、計算した値に基づいて電動機3を制御する。
【0024】
電流計5cは、電動機3に入力される全電流を検出する。電流計5cは、ベクトル演算を用いて全電流をトルク電流に変換する。変換器5dは、トルク電流に基づいてヘルパーロール2の負荷実績を計算する。変換器5dは、Droop設定値とヘルパーロール2の負荷実績とに基づいて速度制御器5aに入力されるDroop補償量を計算する。
【0025】
主幹制御装置6は、計算部6aを備える。計算部6aは、第1計算部6bと第2計算部6cと第3計算部6dとを備える。
【0026】
第1計算部6bは、複数の電動機3の各々のトルク電流の値に基づいて複数のヘルパーロール2の各々の負荷率と複数のヘルパーロール2の負荷率の平均値とを計算する。第1計算部6bは、複数のヘルパーロール2の各々の負荷率と複数のヘルパーロール2の負荷率の平均値との差を計算する。
【0027】
第2計算部6cは、複数回のサンプリング時の各々において複数のヘルパーロール2の各々の負荷率と複数のヘルパーロール2の負荷率の平均値との差で正の値の中から最小値の各々と最大値の各々とを抽出する。第2計算部6cは、抽出された最小値の各々の平均値を下限値として計算する。第2計算部6cは、抽出された最大値の各々の平均値を上限値として計算する。
【0028】
第3計算部6dは、第1計算部6bにより計算された複数のヘルパーロール2の各々の負荷率と複数のヘルパーロール2の負荷率の平均値との差の大きさに応じて複数のヘルパーロール2の各々に対するDroop設定値の候補を計算する。この際、第3計算部6dは、第2計算部6cにより計算された下限値と上限値との間において複数のヘルパーロール2の各々に対するDroop設定値を計算する。
【0029】
次に、図3を用いて、第1計算部6bによる計算を説明する。
図3はこの発明の実施の形態1におけるヘルパーロールの制御システムが適用された鉄鋼のプロセスラインの複数のヘルパーロールの各々の負荷率を示す図である。
【0030】
図3の「1」から「6」のヘルパーロール2において、摩耗の程度、製作誤差、伝送遅れ等の条件は、互いに異なる。このため、「1」から「6」のヘルパーロール2の負荷率は、互いに異なる。
【0031】
これに対し、第1計算部6bは、複数のヘルパーロール2の各々の負荷率と複数のヘルパーロール2の負荷率の平均値との差を計算する。具体的には、第1計算部6bは、次の(1)式に基づいて差F(a)を計算する。
【0032】
【数1】
【0033】
ただし、nは、ヘルパーロール2の数に対応した自然数である。jは、0以上かつn以下である。Iは、負荷実績100%に対する負荷率の絶対値である。
【0034】
次に、図4を用いて、Droop補償量を説明する。
図4はこの発明の実施の形態1におけるヘルパーロールの制御システムが適用された鉄鋼のプロセスラインのヘルパーロールの負荷率の差とDroop補償量との関係を説明するための図である。
【0035】
図4に示すように、第2計算部6cは、次の(2)式と(3)式とを用いて下限値Sと上限値Tとを計算する。
【0036】
【数2】
【0037】
【数3】
【0038】
ただし、(2)式と(3)式とにおいて、nは、サンプリングの回数に対応した自然数である。jは、0以上かつn以下である。(2)式において、F(a)は正の値のうちの最小値である。(3)式において、F(a)は正の値のうちの最大値である。
【0039】
現時点のF(a)が下限値S以下の場合、第3計算部6dは、Droop設定値F(b)を下限値Sとする。現時点のF(a)が下限値Sよりも大きくて上限値Tよりも小さい場合、第3計算部6dは、Droop設定値F(b)をF(a)とする。現時点のF(a)が上限値T以上の場合、第3計算部6dは、Droop設定値F(b)を上限値Tとする。
【0040】
Droop補償量は、Droop設定値F(b)に応じて決まる。このため、現時点のF(a)が下限値S以下の場合、現時点のDroop補償量は、A%となる。例えば、現時点のF(a)が下限値Sよりも大きくて上限値Tよりも小さい場合、現時点のDroop補償量は、A%からB%の間においてF(a)の大きさに比例したX%となる。例えば、現時点のF(a)が上限値T以上の場合、Droop補償量は、B%となる。
【0041】
次に、図5を用いて、主幹制御装置6の動作を説明する。
図5はこの発明の実施の形態1におけるヘルパーロールの制御システムの主幹制御装置6の動作を説明するためのフローチャートである。
【0042】
ステップS1では、主幹制御装置6は、複数のヘルパーロール2の各々の負荷率と複数のヘルパーロール2の負荷率の平均値との差F(a)を計算する。その後、ステップS2に進む。ステップS2では、主幹制御装置6は、負荷率の下限値Sを計算する。その後、ステップS3に進む。主幹制御装置6は、負荷率の上限値Tを計算する。その後、ステップS4に進む。
【0043】
ステップS4では、主幹制御装置6は、F(a)がS以下であるか否かを判定する。
【0044】
ステップS4でF(a)がS以下の場合は、ステップS5に進む。ステップS5では、主幹制御装置6は、Droop設定値F(b)をSとする。その後、動作が終了する。
【0045】
ステップS4でF(a)がS以下でない場合は、ステップS6に進む。ステップS6では、主幹制御装置6は、F(a)がT以上であるか否かを判定する。
【0046】
ステップS6でF(a)がTよりも小さい場合は、ステップS7に進む。ステップS7では、主幹制御装置6は、Droop設定値F(b)をF(a)とする。その後、動作が終了する。
【0047】
ステップS6でF(a)がT以上の場合は、ステップS8に進む。ステップS8では、主幹制御装置6は、Droop設定値F(b)をTとする。その後、動作が終了する。
【0048】
以上で説明した実施の形態1によれば、複数のヘルパーロール2の各々に対するDroop設定値は、複数のヘルパーロール2の各々の負荷率と複数のヘルパーロール2の負荷率の平均値との差の大きさに応じて下限値Sと上限値Tとの間において計算される。このため、複数のヘルパーロール2の負荷の差の大小に応じてDroop補償量を設定することができる。その結果、複数のヘルパーロール2の負荷の差を小さくすることができる。この場合、ヘルパーロール2とストリップ7との滑りが発生することを抑制できる。ストリップ7の張力が不安定になることを抑制できる。さらに、高負荷時においてドライブがトリップすることを抑制できる。その結果、高品質のストリップ7を生産することができる。
【0049】
また、下限値Sが設定される結果、Droop補償量は、A%よりも小さくならない。このため、複数のヘルパーロール2の負荷の差を小さい場合でも、外乱とノイズとによる負荷への影響を抑制することができる。その結果、複数のヘルパーロール2の回転速度の補正により制御全体の安定を図ることができる。
【0050】
また、上限値Tが設定される結果、Droop補償量は、B%よりも大きくならない。このため、ストリップ7がトリップすべきときにトリップしないことを防止できる。
【0051】
次に、図6を用いて、主幹制御装置6の例を説明する。
図6はこの発明の実施の形態1におけるヘルパーロールの制御システムの主幹制御装置のハードウェア構成図である。
【0052】
主幹制御装置6の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ9aと少なくとも1つのメモリ9bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア10を備える。
【0053】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ9aと少なくとも1つのメモリ9bとを備える場合、主幹制御装置6の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ9bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ9aは、少なくとも1つのメモリ9bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、主幹制御装置6の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ9aは、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ9bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0054】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア10を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものである。例えば、主幹制御装置6の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、主幹制御装置6の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0055】
主幹制御装置6の各機能について、一部を専用のハードウェア10で実現し、他部をソフトウェア又はファームウェアで実現してもよい。例えば、第1計算部6bの機能については専用のハードウェア10としての処理回路で実現し、第1計算部6b以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ9aが少なくとも1つのメモリ9bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0056】
このように、処理回路は、ハードウェア10、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、主幹制御装置6の各機能を実現する。
【0057】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2におけるヘルパーロールの制御システムが適用された鉄鋼のプロセスラインの構成図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0058】
実施の形態1においては、複数のヘルパーロール2は、炉1に対応して設けられる。これに対し、実施の形態2においては、複数のヘルパーロール2は、電気メッキ槽11に対応して設けられる。電気メッキ槽11は、メッキ液を蓄える。
【0059】
第1ヘルパーロール2aと第2ヘルパーロール2bと第3ヘルパーロール2cと第4ヘルパーロール2dと第5ヘルパーロール2eとは、電気メッキ槽11の上流側から下流側に向けて順々に配置される。第1ヘルパーロール2aは、電気メッキ槽11の上方に設けられる。第1ヘルパーロール2aは、電気メッキ槽11のメッキ液に浸からない。第2ヘルパーロール2bは、電気メッキ槽11の内部に設けられる。第2ヘルパーロール2bは、電気メッキ槽11のメッキ液に浸かる。第3ヘルパーロール2cは、電気メッキ槽11の上方に設けられる。第3ヘルパーロール2cは、電気メッキ槽11のメッキ液に浸からない。第4ヘルパーロール2dは、電気メッキ槽11の内部に設けられる。第4ヘルパーロール2dは、電気メッキ槽11のメッキ液に浸かる。第5ヘルパーロール2eは、電気メッキ槽11の上方に設けられる。第5ヘルパーロール2eは、電気メッキ槽11のメッキ液に浸からない。
【0060】
以上で説明した実施の形態2によれば、制御システム4は、電気メッキのプロセスラインに適用される。電気メッキのプロセスラインにおいては、メッキ液に浸かるヘルパーロール2とメッキ液に浸からないヘルパーロール2とが存在する。このため、複数のヘルパーロール2の負荷の差が大きくなりやすい。この場合も、複数のヘルパーロール2の負荷の差に応じてDroop補償量を設定することができる。その結果、複数のヘルパーロール2の負荷の差を小さくすることができる。
【0061】
なお、第1計算部6bと第2計算部6cと第3計算部6dとの機能の少なくとも一部の機能を主幹制御装置6以外の装置に設けてもよい。例えば、第1計算部6bと第2計算部6cと第3計算部6dとの機能の少なくとも一部をドライブ制御装置5に設けてもよい。この場合でも、複数のヘルパーロール2の負荷の差に応じてDroop補償量を設定することができる。その結果、複数のヘルパーロール2の負荷の差を小さくすることができる。
【0062】
また、鉄鋼の各プラント、紙のプラント等、他のプラントに対して実施の形態1または実施の形態2の制御システム4を適用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 炉、 2 ヘルパーロール、 2a 第1ヘルパーロール、 2b 第2ヘルパーロール、 2c 第3ヘルパーロール、 2d 第4ヘルパーロール、 2e 第5ヘルパーロール、 3 電動機、 4 制御システム、 5 ドライブ制御装置、 5a 速度制御器、 5b 電流制御器、 5c 電流計、 5d 変換器、 6 主幹制御装置、 6a 計算部、 6b 第1計算部、 6c 第2計算部、 6d 第3計算部、 7 ストリップ、 8 速度センサ、 9a プロセッサ、 9b メモリ、 10 ハードウェア、 11 電気メッキ槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7