(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記補強部材は、上記前段アームの上記両側面のそれぞれに設けられた被係合部にそれぞれが摺動可能に係合する一対の第1補強部と、上記ロボットの上記出力アームに固定される第2補強部と、を備え、上記出力アームが上記前段アームに対して上記前段軸を中心に回動するときに上記第2補強部が上記第1補強部を中心に上記出力アームとともに回動するように構成されている、請求項1に記載の車両組立装置。
上記補強部材の上記第1補強部は、上記被係合部に球状凸面が設けられているときにこの球状凸面に係合する球状凹面を備え、上記被係合部に球状凹面が設けられているときにこの球状凹面に係合する球状凸面を備える、請求項2に記載の車両組立装置。
上記補強部材の上記第1補強部は、連結部材が挿入可能な貫通穴を備え、上記貫通穴に挿入された上記連結部材が上記被係合部に設けられた連結穴に係合することによって上記被係合部に連結されるように構成されている、請求項2又は3に記載の車両組立装置。
上記補強部材の上記第1補強部は、上記前段軸の軸線上であり且つ上記被係合部の上記連結穴に連通する位置に上記貫通穴を備えている、請求項4に記載の車両組立装置。
上記補強部材は、上記第2補強部において分割可能であり、上記連結部材としてのボルト部材が上記連結穴に螺合することによって上記前段アームに取付けられる一方で、上記ボルト部材が上記連結穴との螺合を解除することによって上記第2補強部において分割されつつ上記前段アームから取外されるように構成されている、請求項4または5に記載の車両組立装置。
上記前段アームの上記両側面のそれぞれに設けられた被係合部にそれぞれが摺動可能に係合する一対の第1補強部と、上記ロボットの上記出力アームに固定される第2補強部と、を備え、上記出力アームが上記前段アームに対して上記前段軸を中心に回動するときに上記第2補強部が上記第1補強部を中心に上記出力アームとともに回動するように構成されている、請求項7に記載のロボット用補強治具。
上記第1補強部は、上記被係合部に球状凸面が設けられているときにこの球状凸面に係合する球状凹面を備え、上記被係合部に球状凹面が設けられているときにこの球状凹面に係合する球状凸面を備える、請求項8に記載のロボット用補強治具。
上記第1補強部は、連結部材が挿入可能な貫通穴を備え、上記貫通穴に挿入された上記連結部材が上記被係合部に設けられた連結穴に係合することによって上記被係合部に連結されるように構成されている、請求項8または9に記載のロボット用補強治具。
上記第2補強部において分割可能であり、上記連結部材としてのボルト部材が上記連結穴に螺合することによって上記前段アームに取付けられる一方で、上記ボルト部材が上記連結穴との螺合を解除することによって上記第2補強部において分割されつつ上記前段アームから取外されるように構成されている、請求項10または11に記載のロボット用補強治具。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述の態様の好ましい実施形態について説明する。
【0016】
上記補強部材或いは上記ロボット用補強治具は、上記前段アームの上記両側面のそれぞれに設けられた被係合部にそれぞれが摺動可能に係合する一対の第1補強部と、上記ロボットの上記出力アームに固定される第2補強部と、を備え、上記出力アームが上記前段アームに対して上記前段軸を中心に回動するときに上記第2補強部が上記第1補強部を中心に上記出力アームとともに回動するように構成されているのが好ましい。
【0017】
本構成によれば、補強部材或いはロボット用補強治具は、第2補強部が出力アームに固定されるため、前段軸を有する前段アームに作用するトルク反力のみならず、出力軸を有する出力アームに作用するトルク反力をも受けることができる。
【0018】
上記補強部材或いは上記ロボット用補強治具において、上記第1補強部は、上記被係合部に球状凸面が設けられているときにこの球状凸面に係合する球状凹面を備え、上記被係合部に球状凹面が設けられているときにこの球状凹面に係合する球状凸面を備えるのが好ましい。要するに、第1補強部及び被係合部の一方に球状凸面が設けられ、且つ他方にこの球状凸面に係合する球状凹面が設けられている。
【0019】
本構成によれば、前段アームから第1補強部に伝達したトルク反力を、球状凸面及び球状凹面を介して放射状に均一に分散させつつ被係合部に伝達させることができる。
【0020】
上記補強部材或いは上記ロボット用補強治具において、上記第1補強部は、連結部材が挿入可能な貫通穴を備え、上記貫通穴に挿入された上記連結部材が上記被係合部に設けられた連結穴に係合することによって上記被係合部に連結されるように構成されているのが好ましい。
【0021】
本構成によれば、連結部材を使用して第1補強部を被係合部に密着させることで、被係合部に伝達したトルク反力を第1補強部によって確実に受けることができる。また、第1補強部を被係合部に連結する構造を簡素化できる。
【0022】
上記補強部材或いは上記ロボット用補強治具において、上記第1補強部は、上記前段軸の軸線上であり且つ上記被係合部の上記連結穴に連通する位置に上記貫通穴を備えているのが好ましい。
【0023】
本構成によれば、前段軸に作用するトルク反力を被係合部から連結部材に集中させて、この連結部材を通じて第1補強部へと確実に伝達させることができる。
【0024】
上記補強部材或いは上記ロボット用補強治具は、上記第2補強部において分割可能であり、上記連結部材としてのボルト部材が上記連結穴に螺合することによって上記前段アームに取付けられる一方で、上記ボルト部材が上記連結穴との螺合を解除することによって上記第2補強部において分割されつつ上記前段アームから取外されるように構成されているのが好ましい。
【0025】
本構成によれば、補強部材或いはロボット用補強治具をロボットの前段アームに容易に着脱することができる。
【0026】
(実施形態1)
以下、本実施形態の、車両組立ラインにおける車両組立装置(以下、単に「組立装置」ともいう。)について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
なお、本明細書の説明で参照する図面では、特に断わらない限り、車両の搬送方向である第1方向を矢印Xで示し、車両の搬送面の幅方向である第2方向を矢印Yで示し、上下方向(垂直方向)である第3方向を矢印Zで示している。
【0028】
図1に示されるように、組立装置10は、車両(「車体」ともいう。)1を組立てるための装置であり、車両組立ラインLに対して使用される。この車両組立ラインLにおいて、車両1は、搬送台車2の搬送面2aに固定された支柱3によって支持され、第1方向Xのうちの一方向である搬送方向に搬送される。
【0029】
組立装置10は、本体ベース11と、車両組立用のツールユニット20を駆動するロボット30と、ロボット30を補強する補強部材50と、制御装置60を備えている。
【0030】
本体ベース11にはロボット30が設けられている。本体ベース11は、車輪12と、搬送台車2の搬送面2aから突出したブロック2bに係合可能な係合部13と、を備えている。係合部13は、予め設定された同期期間の開始時に、即ちブロック2bの位置に到達したときに、このブロック2bに係合するように動作する。一方で、係合部13は、同期期間の終了時にブロック2bとの係合を解除するように動作する。
【0031】
このため、本体ベース11は、同期期間に係合部13においてブロック2bに係合し搬送面2aに沿って延びる並走面4を車両1と同期して並走する。また、本体ベース11は、ガイド機構(図示省略)によって第1方向Xに沿ってガイドされている。このガイド機構によれば、本体ベース11は、並走時に並走面4から脱落するのが阻止されている。
【0032】
ツールユニット20は、車両1に仮止めされたナットW(ワーク)を増し締めするためのナットランナーとして構成されている。即ち、このツールユニット20は、ワークであるナットWの締め付けを行う締め付け装置である。
【0033】
なお、このツールユニット20は、組立装置10の一構成要素であってもよいし、或いは組立装置10の構成要素とは別の要素とされてもよい。即ち、組立装置10は、少なくともロボット30及び補強部材50を備えていればよい。
【0034】
図2に示されるように、ツールユニット20は、回転工具21を有する。この回転工具21は、電動式の工具であり、その作動時に回転軸線A1のまわりに回転するように構成されている。この回転工具21は、ナットWの形状に相当する係合凹部21aを有する。従って、この回転工具21は、係合凹部21aにおいてナットWに係合可能なソケットとして構成されている。
【0035】
なお、回転工具21が係合するワークは、ナット以外にボルトであってもよい。また、回転工具21は、ソケットに代えてビットであってもよい。
【0036】
ロボット30は、ツールユニット20を車両1に対して駆動する機能を有する。このロボット30は、6つの軸(第1軸41から第6軸46までの軸)を有する多関節ロボットとして構成されている。特に図示しないものの、各軸には、制御装置60によって制御される、アクチュエータとしての電動モータが設けられている。
【0037】
このロボット30において、アーム32は、第1軸41を介してロボットベース31に連結されている。第1軸41は、垂直方向に延びる軸であり、ロボット30全体を水平旋回させるための駆動軸(「S軸」ともいう。)である。
【0038】
アーム33は、第2軸42を介してアーム32に連結されている。第2軸42は、水平方向に延びる軸であり、ロボット30全体を前後に動かすための駆動軸(「L軸」ともいう。)である。
【0039】
アーム34は、第3軸43を介してアーム33に連結されている。第3軸43は、水平方向に延びる軸であり、ロボット30の上部を上下に動かすための駆動軸(「U軸」ともいう。)である。
【0040】
アーム35は、第4軸44を介してアーム34に連結されている。このアーム35は、アーム36の前段に位置する前段アームである。第4軸44は、ロボット30の上部を回転させるための駆動軸(「R軸」ともいう。)である。
【0041】
このアーム35は、第6軸46の前段に位置する前段軸である2つの第5軸45,45を介してアーム36に回動可能に連結されている。一方の第5軸45は、水平方向に延びる軸であり、ロボット30の先端を上下に動かすための駆動軸(「B軸」ともいう。)である。他方の第5軸45は、アーム35に対してアーム36を回動可能に支持するための支持軸である。
【0042】
アーム36は、ツールユニット20に固定される出力軸としての第6軸46を有する出力アームである。この第6軸46は、ロボット30の先端を回転させるための駆動軸(「T軸」ともいう。)である。
【0043】
第6軸46は、第5軸45に垂直である。即ち、第6軸46の軸線A2と第5軸45の軸線A3とが互いに直交している。この第6軸46の軸線A2は、回転工具21の回転軸線A1と平行である。
【0044】
制御装置60は、ツールユニット20を駆動するために、ロボット30の6つの駆動軸を制御する。この場合、制御装置60は、ツールユニット20の駆動のために予め教示された或いは記憶された複数の移動軌跡の中から選択された所定の移動軌跡(移動経路)を使用し、この移動軌跡に基づいてロボット30の6つの駆動軸のそれぞれのアクチュエータに制御信号を出力する。この場合、制御装置60は、6つの駆動軸のそれぞれの実際の回転位置を検出し、この回転位置と目標回転位置とに基づいて6つの駆動軸のそれぞれをフィードバック制御するのが好ましい。
【0045】
図3に示されるように、補強部材50は、ロボット補強用治具としてロボット30に取付けられる。なお、補強部材50が取付けられた状態のロボット30を、「ロボット」ということもできる。
【0046】
ここで、回転工具21が回転軸線A1を中心に矢印D1方向に回転駆動すると、ツールユニット20は第6軸46を中心に矢印D2方向のトルク反力を受ける。このトルク反力は、ロボット30の第6軸46を介してアーム36及び第5軸45に伝達する。このとき、第6軸46は、軸周方向に荷重を受ける一方で、第6軸46に垂直な第5軸45は、軸周方向とは異なる方向に荷重を受ける。このため、第5軸45は、第6軸46に比べてトルク反力による影響が大きい。
【0047】
そこで、補強部材50は、ロボット30の補強のためにアーム35のうち第5軸45,45の軸線A3上の両側面35a,35aを挟むようにアーム35に取付けられている。これにより、補強部材50は、ロボット30の剛性を高める機能を発揮し、ロボット30の第5軸45がツールユニット20から受けるトルク反力の影響を低く抑えることができる。
【0048】
図4及び
図5に示されるように、アーム35は、第5軸45の軸線A3の方向について空間35cを隔てて互いに離間した一対の延出部35b,35bを備えている。一方で、アーム36は、空間35cに配置される一対の延出部36a,36aと、一対の延出部36a,36aを連結する連結部36bと、を備えている。アーム35の一方の延出部35bとアーム36の一方の延出部36aとが一方の第5軸45を介して連結されている。同様に、アーム35の他方の延出部35bとアーム36の他方の延出部36aとが他方の第5軸45を介して連結されている。連結部36bには、第6軸46が収容されている。
【0049】
図6に示されるように、補強部材50は、一対の分割フレーム51,51と、一対の被係合部材(「被係合部」ともいう。)54,54と、を備えている。
【0050】
各分割フレーム51は、アーム35の一対の延出部35b,35bのうち対応する延出部35bの外方に対向配置される第1補強部52と、この第1補強部52からアーム36の連結部36bに向けて延出する第2補強部53と、を備えている。第1補強部52は、アーム35を補強する機能を有する。一方で、第2補強部53は、アーム36を補強する機能を有する。
【0051】
一方の被係合部材54は、アーム35の一方の側面35aに固定されている。一方の分割フレーム51の第1補強部52は、この被係合部材54に摺動可能に係合するように構成されている。この被係合部材54は、ボルト部材55による締結によって一方の分割フレーム51に連結されるように構成されている。
【0052】
同様に、他方の被係合部材54は、アーム35の他方の側面35aに固定されている。他方の分割フレーム51の第1補強部52は、この被係合部材54に摺動可能に係合するように構成されている。この被係合部材54は、ボルト部材55によって他方の分割フレーム51に連結されるように構成されている。
【0053】
補強部材50の2つの第1補強部52,52は、被係合部材54,54においてアーム35の両側面35a,35a、即ち一対の延出部35b,35bを両側から挟み込むように構成されている。これに対して、補強部材50の2つの第2補強部53,53は、アーム36の筒状の連結部36bを両側から挟み込むように固定されている。これによりアーム36がアーム35に対して第5軸45を中心に回動するときに第2補強部53,53が第1補強部52,52(被係合部材54,54)を中心にアーム36とともに回動するように構成されている。
【0054】
図7に示されるように、補強部材50の各分割フレーム51の第1補強部52は、第5軸45の軸線A3上であり且つ被係合部材54の連結穴54aに連通する位置に、連結部材としてのボルト部材55の軸部55aが挿入可能な貫通穴52aを備えている。即ち、第5軸45の軸線A3上に、ボルト部材55の軸部55a、貫通穴52a及び連結穴54aが配置されている。貫通穴52aの内径は、ボルト部材55の軸部55aの外径を若干上回るように寸法設定されている。ボルト部材55の軸部55aに雄ネジが形成されている。
【0055】
一方で、各被係合部材54は、連結穴54aを備えている。この連結穴54aには、ボルト部材55の軸部55aが螺合可能(係合可能)な雌ネジが形成されている。これにより、補強部材50は、貫通穴52aに挿入されたボルト部材55の軸部55aが被係合部材54に設けられた連結穴54aに螺合することによって被係合部材54に連結されるように構成されている。
【0056】
図8に示されるように、補強部材50の各分割フレーム51の第1補強部52は、球状凹面52bを備えている。この球状凹面52bは、中央部分が球面にしたがって凹んだ形状をなしている。この球状凹面52bによって区画される空間52cに被係合部材54が嵌め込まれる。この目的のために、被係合部材54は、第1補強部52の球状凹面52bに係合する球状凸面54bを備えている。この球状凸面54bは、中央部分が球面にしたがって突出した形状であって且つ球状凹面52bに倣った形状をなしている。
【0057】
また、各分割フレーム51の第2補強部53は、円弧状凹面53aを備えており、この円弧状凹面53aがアーム36の筒状の連結部36bの外表面に嵌り合うように構成されている。
【0058】
図9に示されるように、一対の分割フレーム51,51をそれぞれの第2補強部53において互いに突き合わせることによって、全体として略U字形状をなす補強部材50が形成される。即ち、2つの第2補強部53,53は、2つの円弧状凹面53a,53aによって連結部36bの外表面を両側から挟み込んだ状態で、両側の当接部53b,53bが互いに当接するように突き合わされる。このため、一対の分割フレーム51からなる補強部材50は、第2補強部53,53において分割可能である。
【0059】
また、この補強部材50は、ロボット30のアーム35に対して着脱可能に構成されている。
【0060】
即ち、補強部材50の各分割フレーム51は、ボルト部材55が第1補強部52の貫通穴52aに挿入され且つ被係合部材54の連結穴54aに螺合することによってアーム35に取付けられるように構成されている。
一方で、補強部材50の各分割フレーム51は、ボルト部材55が被係合部材54の連結穴54aとの螺合を解除することによって第2補強部53において分割されつつアーム35から取外されるように構成されている。
【0061】
次に、上記構成の組立装置10の動作について説明する。
【0062】
この組立装置10は、ロボット30のアーム35に補強部材50が取付けられた状態で自動機として使用される。即ち、制御装置60は、ツールユニット20の回転工具21の係合凹部21aが車両1側のナットWに係合するようにロボット30を制御する。この制御によれば、ロボット30の各アームの動作によってツールユニット20が車両1側の目標位置に向けて駆動される。
【0063】
ツールユニット20が目標位置に到達することによって、回転工具21の係合凹部21aが車両1側のナットWに係合する。このとき、ビジョンセンサ(図示省略)等を使用して、回転工具21の実際の位置を検知しながらナットWに対する回転工具21の位置補正を行うのが好ましい。その後、制御装置60は、ナットWの締め付け動作が行われるようにツールユニット20の回転工具21を制御する。
【0064】
上記の締め付け動作において、ツールユニット20では、回転工具21によるナットWの締め付け力と反対方向にトルク反力が生じる。
図10に示されるように、このトルク反力は、ツールユニット20から先ずロボット30の第6軸46に伝達し、更に伝達経路Pを通ってロボット30内を伝達する。この伝達経路Pにおいて、トルク反力は、第6軸46からアーム36及び第5軸45を順次経由してアーム35に伝達する。このトルク反力は、その一部がアーム35から補強部材50に分岐した後に、アーム35から第4軸44に伝達する。このトルク反力は、更に、第4軸44からアーム34、第3軸43、アーム33、第2軸42、アーム32、第1軸41を順次経路して、最終的にロボットベース31まで伝達する。
【0065】
ここで、
図11を参照しつつ、特に第5軸45の周辺部におけるトルク反力の伝達の様子について説明する。なお、この
図11において、補強部材50が無い状態でのトルク反力の伝達の流れが矢印P1で示され、補強部材50がロボット30に取付けられた状態でのトルク反力の伝達の流れが矢印P2で示されている。
【0066】
補強部材50が無い状態、若しくは補強部材50がロボット30から取外された状態では、ツールユニット20からロボット30の第6軸46に伝達したトルク反力はアーム36の連結部36bに伝達する。更に、このトルク反力は連結部36bから一対の延出部36a,36aのそれぞれに分岐して伝達し、更に各延出部36aから第5軸45を介してアーム35の延出部35bに伝達する。そして、このトルク反力は、アーム35の延出部35bから第4軸44に向けて伝達する。
【0067】
これに対して、補強部材50がロボット30に取付けられた状態では、アーム35の延出部35bに伝達したトルク反力の一部はその外側に位置する、補強部材50の被係合部材54に伝達する。また、このトルク反力は被係合部材54から分割フレーム51の第1補強部52に伝達する。このように、補強部材50は、トルク反力が伝達する向きを外方へと変換する変換部材として構成されている。
【0068】
ここで、被係合部材54の球状凸面54bが第1補強部52の球状凹面52bに当接している。これにより、トルク反力を被係合部材54から第1補強部52に放射状に均一に分散させて伝達させることができる。そして、行き場の無くなったトルク反力は、第1補強部52からアーム35に伝達した後、このアーム35から第4軸44に向けて伝達する。即ち、第5軸45を迂回したトルク反力が補強部材50へと流れ、その後にアーム35からロボットベース31まで伝達する。
【0069】
上記の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0070】
上記の車両組立装置10において、ツールユニット20の回転工具21の作動時に生じるトルク反力(「締め付け反力」ともいう。)は、ツールユニット20から先ず第6軸46を介してアーム36に伝達する。その後、このトルク反力は、アーム36から第5軸45を介してアーム35に伝達する。即ち、トルク反力が伝達する伝達経路上に第6軸46及び第5軸45の双方が配置されている。
【0071】
ここで、ツールユニット20から伝達したトルク反力によって受ける影響は、第6軸46に比べて第5軸45の方が大きい。その理由の1つとして、トルク反力によって第6軸46が軸周り方向の荷重を受けるのに対して、第6軸46と垂直に延びる第5軸45はその軸線A3と交差する方向にねじり荷重を受けるため第5軸45の負荷が高いことが挙げられる。従って、第5軸45を支持するアーム35の剛性を特に強化する必要がある。
【0072】
そこで、本実施形態の補強部材50は、アーム35のうち第5軸45の軸線A3上の両側面35a,35aを挟むように構成されている。本構成によれば、アーム35のうち特に第5軸45に近い部位の剛性を強化するようにロボット30の補強を行うことができる。これにより、ねじり荷重に耐え得る第5軸45の強度が確保される。このとき、ツールユニット20の回転工具21の作動時にアーム36からアーム35に伝達したトルク反力の一部を第5軸45の軸線A3方向の外方へ逃がすことで、このトルク反力を補強部材50とアーム35と分担して受けることができる。
【0073】
これにより、第5軸45及びアーム35が受けるトルク反力を軽減できる。従って、アーム35自体の構造を変更することなく、トルク反力に耐え得るロボット剛性を確保できる。即ち、アーム35の剛性を高めるためにロボット30自体を大型化する必要がない。その結果、回転工具21を有するツールユニット20を駆動するロボット30を大型化することなくその剛性を高めることが可能になる。
また、ロボット30の小型化によって、作業者が移動するための広いスペースを確保できる。
更に、補強部材50が取付けられていないロボット30では駆動できなかったトルク反力の高いツールユニット20を使用できる。
【0074】
また、本実施形態の補強部材50によれば、ボルト部材55を使用して各分割フレーム51の第1補強部52を被係合部材54に密着させることで、被係合部材54に伝達したトルク反力を第1補強部52によって確実に受けることができる。また、各分割フレーム51の第1補強部52を被係合部材54に連結する構造を簡素化できる。
【0075】
また、本実施形態の補強部材50によれば、第5軸45に作用するトルク反力を被係合部材54からボルト部材55に集中させて、このボルト部材55を通じて第1補強部52へと確実に伝達させることができる。
【0076】
また、本実施形態の補強部材50によれば、この補強部材50を構成する各分割フレーム51をロボット30のアーム35に容易に着脱することができる。この補強部材50は、既存のロボット30に後付けすることができるため汎用性が高い。
【0077】
以下に、
図12〜
図15を参照しつつ、実施形態1の変更例としての実施形態について説明する。なお、これらの図面において、
図6に示される要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該要素についての説明は省略する。
【0078】
(実施形態2)
図12に示されるように、実施形態2の補強部材150は、アーム35が前記の被係合部材54に相当する部位を有するという点において、実施形態1の補強部材50と相違している。即ち、アーム35の一対の延出部35b,35bはいずれも、前記の被係合部材54と同形状の被係合部35dを備えている。この被係合部35dは、前記の球状凸面54bと同形状の球状凸面35eを備えている。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0079】
実施形態2の補強部材150によれば、部品点数を少なく抑えることができる。
その他、実施形態1の補強部材50と同様の作用効果を奏する。
【0080】
(実施形態3)
図13に示されるように、実施形態3の補強部材250は、各分割フレーム51が第1補強部52を備える一方で前記の第2補強部53を備えていないという点において、実施形態1の補強部材50と相違している。また、一方の分割フレーム51は、第1補強部52から他方の分割フレーム51に向けて延出する当接片56を備えている。一対の分割フレーム51,51をそれぞれの当接片56において互いに突き合わせることによって、全体として略U字形状をなす補強部材250が形成される。このとき、補強部材250の各分割フレーム51は、ボルト部材55による締結によってアーム35に固定される。このため、当接片56は、第5軸45を中心としたアーム36の回動を阻害しない位置に配置されるのが好ましい。
アーム反力に対するアーム36の剛性を確保できる場合には、この補強部材250のように第2補強部53を省略することができる。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0081】
実施形態3の補強部材250によれば、その構造を簡素化できる。
その他、実施形態1の補強部材50と同様の作用効果を奏する。
【0082】
(実施形態4)
図14に示されるように、実施形態4の補強部材350は、被係合部材54を備えておらず、且つ各分割フレーム51の第1補強部52が平板状であるという点において、実施形態3の補強部材250と相違している。この補強部材350は、一対の分割フレーム51,51が連結部57によって分割不能に連結されており、全体として略U字形状をなしている。この補強部材350は、ボルト部材55による締結によってアーム35に固定される。このため、連結部57は、第5軸45を中心としたアーム36の回動を阻害しない位置に配置されるのが好ましい。
その他の構成は、実施形態3と同様である。
なお、補強部材350をボルト部材55に代えて接着剤等による接着によってアーム35に固定するようにしてもよい。
【0083】
実施形態4の補強部材350によれば、部品点数を少なく抑えることができ且つその構造を簡素化できる。
その他、実施形態3の補強部材250と同様の作用効果を奏する。
【0084】
(実施形態5)
図15に示されるように、実施形態5の補強部材450は、各分割フレーム51の第1補強部52が球状凸面52dを有し、且つ被係合部材54が球状凸面52dに係合する球状凹面54cを有するという点において、実施形態1の補強部材50と相違している。即ち、この補強部材450は、係合部における凹凸の関係が補強部材50と逆になっている。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0085】
実施形態5の補強部材450によれば、実施形態1の補強部材150と同様の作用効果を奏する。
【0086】
本発明は、上記の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0087】
上記の実施形態では、補強部材50の各分割フレーム51がボルト部材55による締結によって被係合部材54に連結される場合について例示したが、これに代えてボルト部材55とは別の連結部材を使用することもできる。例えば、連結部材を連結穴に圧入する構造を利用して補強部材50の各分割フレーム51を被係合部材54に連結することもできる。
【0088】
上記の実施形態では、第1補強部52や被係合部材54に設けられる凹面及び凸面が球状である場合について例示したが、この形状に代えて円錐状の凹面及び凸面や、円柱状の凹面及び凸面を使用することもできる。
【0089】
上記の実施形態では、ロボット30の第5軸45の軸線A3上にボルト部材55の軸部55aが配置される場合について例示したが、ボルト部材55の軸部55aは第5軸45の軸線A3から外れた位置に配置されてもよい。また、ボルト部材55の数は1つの限定されるものではなく、必要に応じて複数のボルト部材55を使用して補強部材50の第1補強部52を被係合部材54に連結するようにしてもよい。
【0090】
上記の実施形態では、6つの軸を有するロボット30について例示したが、このロボット30の軸の数は、必要に応じて変更可能である。
【0091】
上記の実施形態では、ナットランナーとしてのツールユニット20について例示したが、このツールユニット20に代えて、回転工具を有する別のツールユニットを使用することもできる。