特許第6624022号(P6624022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6624022情報提供システム、車両用装置、情報提供プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624022
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】情報提供システム、車両用装置、情報提供プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20191216BHJP
   G08G 1/0962 20060101ALI20191216BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20191216BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20191216BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20191216BHJP
   G01C 21/00 20060101ALI20191216BHJP
   G05D 1/12 20060101ALI20191216BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20191216BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20191216BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20191216BHJP
   G01C 21/26 20060101ALN20191216BHJP
【FI】
   H04N7/18 J
   G08G1/0962
   G08G1/09 H
   G08G1/16 D
   G08G5/00 A
   G01C21/00
   G05D1/12 A
   B60R21/00 993
   B64C39/02
   B64D47/08
   !G01C21/26 A
【請求項の数】12
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-227814(P2016-227814)
(22)【出願日】2016年11月24日
(65)【公開番号】特開2018-85630(P2018-85630A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2018年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】榊原 昭博
【審査官】 鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−138853(JP,A)
【文献】 特開2010−250478(JP,A)
【文献】 特開2006−180326(JP,A)
【文献】 特開2008−074275(JP,A)
【文献】 米国特許第9056676(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
B60R 21/00
B64C 39/02
B64D 47/08
G01C 21/00
G05D 1/12
G08G 1/09
G08G 1/0962
G08G 1/16
G08G 5/00
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(5)の周辺を上空から撮像する撮像部(4)、前記車両(5)との間で通信を行う飛行側通信部(28)、および、遠隔制御による飛行および自律制御による飛行を制御するとともに前記撮像部(4)で撮像した画像を前記車両(5)に対して送信する制御を行う飛行側制御部(20)を有する飛行装置(2)と、
前記飛行装置(2)との間で通信を行う車両側通信部(50)、および、前記飛行装置(2)によって撮像されて前記車両側通信部(50)で受信した画像を車両側表示部(54)にリアルタイムに表示する制御を行う車両側制御部(48)を有する車両用装置(3)と、を備え、
前記飛行装置(2)は、自身の位置を示す飛行位置を取得する飛行位置取得部(21)を有し、前記車両(5)に対して当該車両(5)の速度に応じて変更される位置関係を維持した状態で自律制御により飛行する情報提供システム。
【請求項2】
前記車両用装置(3)は、自身の位置を示す車両位置を取得する車両位置取得部(47)を有し、取得した車両位置を前記飛行装置(2)に対して送信し、
前記飛行装置(2)は、受信した前記車両位置に基づいて前記車両(5)に対する所定の位置関係を特定し、前記車両(5)に対して所定の位置関係を維持する請求項1記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記車両用装置(3)は、所定の目的地まで前記車両(5)を案内する経路案内部(40)を有し、当該経路案内部(40)によって案内される経路を特定可能な経路情報を前記車両側通信部(50)から前記飛行装置(2)に対して送信し、
前記飛行装置(2)は、受信した前記経路情報に基づいて、前記車両(5)が案内される経路に沿って自律制御により飛行する請求項1または2記載の情報提供システム。
【請求項4】
前記車両用装置(3)は、前記車両(5)に対する前記飛行装置(2)の位置および前記撮像部(4)の向きのうち少なくとも一方を調整する調整指示を入力する操作部(54)を有し、入力された前記調整指示を前記車両側通信部(50)から前記飛行装置(2)に対して送信し、
前記飛行装置(2)は、受信した前記調整指示に基づいて、前記車両(5)に対する位置および前記撮像部(4)の向きのうち前記調整指示によって指示された調整を行う請求項1から3のいずれか一項記載の情報提供システム。
【請求項5】
前記撮像部(4)で撮像された画像を解析して当該画像中の物体を検出する物体検出部(57)と、
前記物体検出部(57)によって検出された物体を識別可能に示す識別画像を生成する画像生成部(57)と、を備え、
前記車両用装置(3)は、当該物体に対して生成された識別画像を、前記車両側表示部(54)に表示される物体の表示位置の変化に追従させて表示する請求項1から4のいずれか一項記載の情報提供システム。
【請求項6】
前記物体検出部(57)で検出した物体と前記車両(5)とが接触する可能性を判定する接触判定部(57)を備え、
前記画像生成部(57)は、前記車両(5)に接触する可能性があると判定された物体と前記車両(5)に接触する可能性がないと判定された物体とで異なる態様の識別画像を生成する請求項5記載の情報提供システム。
【請求項7】
前記物体検出部(57)は、検出した物体が移動体であるか否かを判定し、
移動体であると判定された物体が、前記車両(5)または当該車両(5)の進路に接近しているか否かを判定する接近判定部(57)を備え、
前記画像生成部(57)は、前記車両(5)に接近していると判定された移動体と前記車両(5)に接近していないと判定された移動体とで異なる態様の識別画像を生成する請求項5または6記載の情報提供システム。
【請求項8】
前記物体検出部(57)は、検出した物体が移動体であるか否かを判定し、
移動体であると判定された物体の移動方向が、前記車両(5)の移動方向に交差するか否かを判定する交差判定部(57)を備え、
前記画像生成部(57)は、移動方向が移動方向に交差すると判定された移動体と移動方向が移動方向に交差しないと判定された移動体とで異なる態様の識別画像を生成する請求項5から7のいずれか一項記載の情報提供システム。
【請求項9】
前記物体検出部(57)は、移動を伴わない静止体を検出し、
検出された静止体が前記車両(5)の進路上に位置しているか否かを判定する静止体判定部(57)を備え、
前記画像生成部(57)は、進路上に位置していると判定された静止体を識別可能に示す識別画像を生成する請求項5から8のいずれか一項記載の情報提供システム。
【請求項10】
前記車両用装置(3)は、前記飛行装置(2)の発進を指示する発進指示および前記飛行装置(2)の帰着を指示する帰着指示を前記車両側通信部(50)から前記飛行装置(2)に対して送信し、
前記飛行装置(2)は、前記車両(5)から発進するとともに当該車両(5)に帰着するものであり、前記発進指示を受信した場合および所定の発進条件が成立した場合には自律制御により前記車両(5)から発進し、前記帰着指示を受信した場合および所定の帰着条件が成立した場合には自律制御により前記車両(5)に帰着する請求項1から9のいずれか一項記載の情報提供システム。
【請求項11】
撮像部(4)を有し車両(5)の周辺を上空から撮像するものであって、自身の位置を示す飛行位置を取得して当該車両(5)の速度に応じて変更される位置関係を維持した状態で自律制御により飛行する飛行装置(2)との間で通信を行う車両側通信部(50)と、
前記飛行装置(2)によって撮像されて前記車両側通信部(50)で受信した画像を車両側表示部(54)にリアルタイムに表示する制御を行う車両側制御部(48)と、
を備える車両用装置。
【請求項12】
撮像部(4)を有し車両(5)の周辺を上空から撮像するものであって、自身の位置を示す飛行位置を取得して当該車両(5)の速度に応じて変更される位置関係を維持した状態で自律制御により飛行する飛行装置(2)と通信可能に接続されている車両用装置(3)の車両側制御部(48)に、
前記飛行装置(2)で撮像した画像を受信する処理と、
受信した画像を車両側表示部(54)にリアルタイムに表示する処理と、
を実行させる情報提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の周辺の情報を運転者に提供する情報提供システム、情報提供プログラム、車両用側装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の前方や側方あるいは後方等の情報を運転者に提供するものが知られている。このとき、運転者が見えない位置の情報を提供することができれば、安全性を高めることができると考えられる。そのため、例えば特許文献1では、複数の車両が縦列走行しているとき、各車両に設けられている表示灯の色や点滅態様の違いによって、後続車両の運転者に伝達することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−84147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、上記した特許文献1の場合、後続車両の運転者は、見えない場所に関する情報を取得することができるものの、取得した情報は、実際に見たものとは異なる態様となっている。例えば特許文献1の場合であれば、前方の車両との車間時間は、表示灯の色の違いという、運転者が実際に見る場合とは異なる態様の情報として伝達されている。以下、運転者が実際に見た場合とは異なる態様の情報を、便宜的に模式化された情報と称する。
【0005】
しかしながら、運転者は、模式化された情報を取得した場合には、その情報が何を意味するのかを考えることになる。このとき、取得した情報の意味を考えることによって、運転者の注意が運転から逸れてしまうおそれがある。また、情報の意味を考えている間にも車両は走行していることから、意味が把握できた時点では、車両が例えば障害物等に近づき過ぎてしまっているおそれもある。
【0006】
また、模式化された情報は、運転者が実際にみた場合のような現実感が伴わないことが多いと考えられる。そのため、注意すべき情報であるか否かの判断を即座に行うことが難しいという問題がある。
【0007】
本開示は、提供された情報の持つ意味を容易に把握することができるとともに、現実感があり、潜在する危険性を予め予測可能であって運転者に対して強く注意喚起を行うことができる情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示による情報提供システムは、車両の周辺を上空から撮像する撮像部、車両との間で通信を行う飛行側通信部、および、遠隔制御による飛行および自律制御による飛行を制御するとともに撮像部で撮像した画像を車両に対して送信する制御を行う飛行側制御部を有する飛行装置と、飛行装置との間で通信を行う車両側通信部、および、飛行装置によって撮像されて車両側通信部で受信した画像を車両側表示部にリアルタイムに表示する制御を行う車両側制御部を有する車両用装置と、を備える。
【0009】
また、本開示による車両用装置は、撮像部を有し車両の周辺を上空から撮像する飛行装置との間で通信を行う車両側通信部と、飛行装置によって撮像されて車両側通信部で受信した画像を車両側表示部にリアルタイムに表示する制御を行う車両側制御部と、を備える。
【0010】
また、本開示による情報提供プログラムは、撮像部を有し車両の周辺を上空から撮像する飛行装置と通信可能に接続されている車両用装置の車両側制御部に、飛行装置で撮像した画像を受信する処理と、受信した画像を車両側表示部にリアルタイムに表示する処理と、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例による情報提供システムの概略の構成を模式的に示す図
図2】飛行装置の格納態様を模式的に示す図
図3】カメラで撮像した画像の一例を模式的に示す図
図4】飛行装置の構成を模式的に示す図
図5】車両用装置の構成を模式的に示す図
図6】画像表示部の表示例を模式的に示す図
図7】操作表示部の表示例を模式的に示す図
図8】状況表示部の表示例を模式的に示す図
図9】飛行装置による発進処理の流れを示す図
図10】車両用装置による発進準備処理の流れを示す図
図11】飛行装置による情報収集処理の流れを示す図
図12】飛行装置による位置制御処理の流れを示す図
図13】車両用装置による情報提供処理の流れを示す図
図14】車両用装置による識別処理の流れを示す図
図15】移動体との接触の可能性の判断手順を模式的に示す図
図16】静止体との接触の可能性の判断手順を模式的に示す図
図17】車両用装置による報知処理の流れを示す図
図18】各撮像パターンにおける撮像範囲を模式的に示す図
図19】飛行装置による帰着処理の流れを示す図
図20】車両用装置による帰着準備処理の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例について、図面を参照しながら説明する。
まず、主に図1および図2を参照しながら、本実施例の情報提供システム1の概略を説明する。図1に示すように、情報提供システム1は、飛行装置2と車両用装置3とを備えている。
【0013】
飛行装置2は、撮像部としてのカメラ4を有しており、上空から車両5の周辺を撮像する。ここで、車両5の周辺とは、車両5の前方、側方および後方のうち少なくとも何れか1つを含む範囲を意味している。この場合、飛行装置2は、車両5を含んだ範囲を撮像することもできるし、車両5を含まない範囲を撮像することもできる。
【0014】
この飛行装置2は、カメラ4で撮像する範囲(以下、撮像範囲と称する)を変更することができる。具体的には、飛行装置2は、自身の位置を移動すること、カメラ4の向きを変更すること、カメラ4のズームを切り替えること等により、撮像範囲を変更することができる。ただし、本実施例では、飛行装置2は、撮像された画像における上側が車両5の移動方向に概ね一致する状態で撮像する。
【0015】
また、飛行装置2は、自律制御による飛行、つまりは、予め組み込まれているプログラムに従い、車両5の運転者等による操作が不要な状態での飛行か可能である。以下、自律制御による飛行を自律飛行と称する。また、飛行装置2は、遠隔制御による飛行、つまりは、車両5の乗員によって遠隔操作された状態での飛行も可能である。
【0016】
この飛行装置2は、画像を動画および静止画の双方で撮像することができるとともに、カラーおよび白黒の双方で撮像することができる。
また、飛行装置2は、図2に示すように、車両5の例えばトランクルーム内の格納室6に格納されている。この格納室6は、例えば車幅方向にスライドするスライドドア7によって上方が開閉される。飛行装置2の格納態様はこれに限定されるものではない。
【0017】
飛行装置2は、後述するように、運転者等の車両5の乗員から発進指示が送信されると、あるいは、所定の発進条件が成立すると、車両5から自律飛行により発進する。また、飛行装置2は、車両5の乗員から帰着指示が送信されると、あるいは、所定の帰着条件が成立すると、自律飛行により車両5に帰着する。
【0018】
そして、飛行装置2は、車両5から発進すると、通常の利用形態では、図1に示すように車両5から所定の距離(L)だけ前方且つ所定の高度(H)だけ上空の位置まで自律飛行により移動する。この距離(L)および高度(H)は、後述する「標準」の撮像パターン(図18等参照)における飛行位置として初期設定されている。以下、車両5から所定の距離(L)だけ前方且つ所定の高度(H)だけ上空の位置を、便宜的に標準位置と称する。
【0019】
飛行装置2は、標準位置まで到達すると、自律飛行により車両5に対する所定の位置関係を維持した状態で、つまりは、車両5が走行することによる位置の変化に追従した状態で、車両5の移動方向を撮像する。このとき、飛行装置2は、例えば図3に一例として示すように、所定の撮像範囲(S)を、画像内に車両5が含まれた状態でいわゆる鳥瞰図のように撮像する。
【0020】
図3の場合、撮像範囲(S)では、車両5の前方に存在する交差点、交差点に近づく方向に移動している他車両8Aおよび他車両8B、交差点から離れる方向に移動している他車両8C、交差点の近傍に位置する人9等の移動体、および道路外に位置している家屋やビルあるいは電柱等の静止体など、車両5の周辺の状況が撮像されている。
【0021】
なお、図3に示している各矢印は、説明のために付したものであり、実際に撮像されたものではない。また、カメラ4の撮像範囲(S)には入っていないものの、車両5の後方には同じ方向に走行するオートバイ10も存在している。
【0022】
飛行装置2側で撮像された画像は、無線通信によって車両用装置3に対して継続的に送信される。そして、車両用装置3は、飛行装置2から継続的に送信されてくる画像を車両側表示部54(図6参照)に表示する。すなわち、車両用装置3は、車両5の周辺の情報を把握可能な画像をリアルタイムに表示する。なお、車両用装置3は、車両5に固定的に設けられているものであってもよいし、車外への持ち出しが可能である等、車両5に着脱可能に設けられているものであってもよい。
次に、上記した飛行装置2および車両用装置3の詳細について、主に図4から図20を参照しながら説明する。
【0023】
飛行装置2は、図4に示すように、飛行側制御部20を有している。この飛行側制御部20は、図示しないマイクロコンピュータやメモリ等で構成された記憶部等を有している。飛行側制御部20は、記憶部に記憶されているプログラムを実行することにより飛行装置2を制御する。
【0024】
飛行側制御部20は、自身の位置を示す飛行位置を取得する飛行位置取得部21に接続されている。本実施例では、飛行位置取得部21は、GPS(Global Positioning System)装置で構成されており、周知のように、GPS衛星からの電波をアンテナ21Aで受信することによって飛行位置を取得する。なお、本明細書では、飛行状態に限らず、飛行装置2が車両5に格納されている状態であっても、飛行装置2の現在位置を飛行位置と称している。
【0025】
また、飛行側制御部20は、プロペラ等を有する駆動系22、速度を計測する速度計23、高度を計測する高度計24、異常を検知する異常検知部25、電池26の残量を計測する電池残量計27等に接続されている。そして、飛行側制御部20は、具体的な飛行制御についての説明は省略するが、飛行位置取得部21で取得した飛行位置、各部で計測あるいは検出された各種のデータに基づいて駆動系22を駆動する。
【0026】
飛行側制御部20は、自律飛行をする場合には、飛行位置が通常位置であるか否か等を判断して飛行する。一方、飛行側制御部20は、飛行側通信部28から指示を受信した場合には、受信した指示に基づいて遠隔制御により飛行する。このため、飛行装置2は、図示は省略するが、例えばジャイロセンサやミリ波レーダ等、自身の周囲の物体を検出および避けるための検出部も備えている。
【0027】
飛行側通信部28は、本実施例では画像送信部29Aと飛行側送受信部29Bの2つの機能ブロックを有している。本実施例では、画像送信部29Aおよび飛行側送受信部29Bは、それぞれ個別の通信ICで構成されており、それぞれの通信ICに対してアンテナ28Aおよびアンテナ28Bが設けられている。
【0028】
飛行側送受信部29Bは、後述する発進指示や帰着指示、飛行位置あるいはカメラ4の向きの調整指示等、車両用装置3から送信されるデータを受信する。また、飛行側送受信部29Bは、例えば飛行位置や異常の発生等のデータを送信する。ただし、本実施例では、飛行側送受信部29Bはカメラ4で撮像した画像の送信は行わない。
【0029】
画像送信部29Aは、カメラ4で撮像した画像を車両5に対して送信する。つまり、画像送信部29Aは、画像の送信専用に設けられている。これは、画像は比較的データ量が多いこと、また、継続的に画像を送信できるようにするためである。より具体的には、画像送信部29Aは、カメラ4で撮像された画像を画像変調部30にて変調したデータを送信する。なお、説明の簡略化のために、変調したデータを送信する場合であっても、画像を送信すると称して説明する。
【0030】
画像変調部30は、画像を送信する際の通信負荷を減らすために画像を変調する。ここで、画像の変調とは、主に画像のデータ圧縮を意味している。本実施例では、基本的には動画の送信を想定していることから、画像変調部30は、例えばMPEGなどの周知の動画圧縮規格の手法を採用してデータを圧縮する。なお、静止画を送信する場合には、同様に周知の静止画圧縮規格の手法を採用すればよい。
【0031】
このカメラ4は、角度を調整可能な自在架台31に取り付けられている。この自在架台31は、飛行側制御部20からの指示に基づいて角度を変更することにより、カメラ4の向きを調整可能にしている。このため、飛行装置2は、自在架台31の角度を調節することにより、例えば自身の飛行姿勢を変化させずにカメラ4の向きだけを調整することも可能である。
【0032】
車両用装置3は、図5に示すように、本実施例ではナビゲーション装置40と操作装置41とにより構成されている。これらナビゲーション装置40および操作装置41は、互いに通信可能に接続されている。また、車両用装置3は、車両5の速度やウィンカーの作動等、車両5の挙動を特定可能な車両情報を取得するために、車両5に設けられているECU42(Electronic Control Unit)にも通信可能に接続されている。
【0033】
ナビゲーション装置40は、制御部43、表示部44、スピーカ45、マイク46、および車両位置取得部47等を備えている。車両位置取得部47は、GPS装置で構成されており、衛星からの電波を受信するアンテナ47Aを有している。ナビゲーション装置40は、車両位置取得部47により車両5の現在位置を示す車両位置を取得し、DB43A(Data Base)に記憶されている地図データを用いて、運転者等により設定された目的地まで車両5を案内する。つまり、ナビゲーション装置40は、所定の目的地まで車両5を案内する経路案内部に相当する。
【0034】
このナビゲーション装置40は、車両位置、地図データ、および目的地までの経路を特定可能な経路情報を操作装置41に対して出力可能に構成されている。このとき、操作装置41に対して出力する地図データには、車両5が走行している道路の形状、交差または合流する道路があるか否か、交差または合流する道路がある場合にはその接続位置、車両位置付近の建物や駐車場等の位置などが考えられる。
【0035】
操作装置41は、飛行装置2の操作機能や制御機能を有しており、一般的に飛行装置2と対になって用いられる装置である。この操作装置41は、車両側制御部48を備えている。車両側制御部48は、図示しないマイクロコンピュータやメモリ等で構成された記憶部等を有しており、記憶部に記憶されているプログラムを実行することにより、本実施例であれば画像の受信や飛行装置2に対する指示等を制御する。また、車両側制御部48は、ナビゲーション装置40やECU42との間の通信も制御する。
【0036】
また、操作装置41は、画像受信部49Aおよび車両側送受信部49Bの2つの機能ブロックを有する車両側通信部50を備えている。本実施例では、画像受信部49Aおよび車両側送受信部49Bは、それぞれ個別の通信ICで構成されており、それぞれの通信ICに対してアンテナ50A、アンテナ50Bが設けられている。
画像受信部49Aは、飛行装置2から送信される画像を受信する。本実施例では、画像受信部49Aは、画像の受信専用に設けられている。
【0037】
車両側送受信部49Bは、後述する発進指示や帰着指示、飛行位置あるいはカメラ4の向きの調整指示等を飛行装置2に対して送信する。また、車両側送受信部49Bは、ナビゲーション装置40から取得した車両位置を飛行装置2に対して送信する。また、車両側送受信部49Bは、例えば飛行位置や異常の発生等のデータを飛行装置2から受信する。ただし、車両側送受信部49Bは、画像の受信は行わない。
【0038】
また、操作装置41は、画像表示部51、操作表示部52および状況表示部53の3つの機能ブロックを有する車両側表示部54、およびスピーカ55を備えている。本実施例では、画像表示部51、操作表示部52および状況表示部53は、それぞれ個別の表示器を有している。また、各表示器には、それぞれの画面に対応して図示しないタッチパネルが設けられている。
【0039】
そのため、運転者等は、各表示器の画面をタッチ操作することにより、所望の操作を入力することができる。つまり、車両側表示部54は、操作部としても機能する。なお、操作部は、操作部(52)とは別に設ける構成とすることもできる。
【0040】
画像表示部51は、図6に示すように、画像受信部49Aで受信された後に画像復調部56で復調された画像をリアルタイムで表示する。なお、表示内容の詳細については後述する。この画像表示部51は、画像を解析する画像解析部57に接続されている。この画像表示部は、例えばインスツルメンツパネルにおけるステアリングの周囲等、運転者が正面を向いていても視界に入る位置に設けられている。換言すると、運転者は、正面を向いていたとしても、後述するマークM1〜M4等を視認することが可能である。
【0041】
画像解析部57は、画像中の物体を検出する物体検出部、物体が移動体である場合に当該移動体が車両5または当該車両5の進路に接近しているか否かを判定する接近判定部、物体が移動体である場合に当該移動体の移動方向が車両5の移動方向に交差するか否かを判定する交差判定部、および、物体が静止体である場合に当該静止体が車両5の進路上に位置しているか否かを判定する静止体判定部に相当する。
【0042】
また、画像解析部57は、物体を識別可能に示す画像、車両5に接近していると判定された移動体と接近していないと判定された移動体とで異なる態様の識別画像、移動方向が車両5の緯度方向に交差すると判定された移動体と交差しないと判定された移動体とで異なる態様の識別画像、および、進路上に位置していると判定された静止体を識別可能に示す識別画像を生成する画像生成部に相当する。
【0043】
また、画像解析部57は、方向に交差すると判定された移動体や進路上に位置している静止体等、検出した物体と車両5との接触の可能性を判定する接触判定部に相当する。このとき、画像解析部57は、車両5と移動体や静止体との接触の可能性を段階的に識別可能に示す識別画像を生成する。
【0044】
そして、車両用装置3は、画像解析部57による移動体等の検出結果、および、画像解析部57により生成された移動体等を識別可能に示す画像を、飛行装置2が撮像した画像に重なるように画像表示部51に表示する。
【0045】
このとき、車両用装置3は、車両5や飛行装置2の移動に応じて画像中の物体の位置が変化した場合には、当該物体の表示位置の変化に追従させて識別画像の表示位置を変化させながら表示する。なお、識別画像を表示するか否かは、識別表示オンボタンB1あるいは識別表示オフボタンB2を操作することにより切り替え可能である。
【0046】
操作表示部52は、図7に示すように、飛行装置2に対する各種の操作を入力するための各種の操作ボタンを表示する。この操作表示部52は、車両5に対する飛行装置2の位置およびカメラ4の向きのうち少なくとも一方を調整する調整指示を入力する操作部に相当する。
【0047】
本実施例の場合、操作表示部52には、飛行装置2の発進を指示する発進ボタンB3、帰着を指示する帰着ボタンB4が表示される。また、操作表示部52には、詳細は後述するが、調整用のボタンとして、撮像パターン(図18参照)を選択するための標準ボタンB5、前方監視ボタンB6および後方監視ボタンB7、飛行装置2の高度を調整する上昇ボタンB8および下降ボタンB9、車両5との距離を調整する遠方ボタンB10および接近ボタンB11、ならびに、カメラ4の角度を調整する前寄りボタンB12および下寄りボタンB13が表示される。
【0048】
状況表示部53は、飛行装置2の各種の状況を表示する。本実施例では、状況表示部53には、図8に示すように飛行装置2の高度を表示する高度表示領域R1、車両5からの距離を表示する距離表示領域R2、航続可能時間を表示する時間表示領域R3、異常の有無等を表示する異常表示領域R4が設けられている。そして、状況表示部53は、それぞれの領域に対応する情報を表示する。
【0049】
スピーカ55は、後述するように、移動体を検出したこと等、運転者に対するメッセージが音声により出力される。このスピーカ55および画像表示部51は、運転者に対して車両5の周辺の情報を含む各種の報知を行う報知部として機能する。
【0050】
次に、上記した構成の作用について説明する。
前述のように、車両5の周辺の情報を運転者等に提供する場合には、模式化した情報を運転者に提供したとしても、情報の要否の判断を即座に行うことが難しく、また、運転者が実際にみた場合のような現実感が伴わないことが多いと考えられる。換言すると、意味を容易に把握でき、また、現実感を伴う情報であれば、運転者に対して強く注意喚起を行うことができると考えられる。
【0051】
このとき、車両5の運転者からは見えない位置の情報を提供することができれば、危険等の早期発見に繋がり、その対処に余裕を持たせることが可能になると考えられる。以下、運転者からは見えない位置の情報を、便宜的に視界外情報と称する。
【0052】
さらに、視界外情報を提供することができれば、運転者のイライラを解消できる等、運転者の心理状態を改善することが可能になると考えられる。換言すると、視界外情報の提供は、例えば接触等の回避と言った物理的な面からだけではなく、心理的な面からも運転を支援することが可能になると考えられる。
【0053】
運転者は、例えば渋滞に巻き込まれた等、車両5の走行が妨げられると、イライラして心理的に不安定になる傾向がある。このとき、運転者から見えない位置の状況に起因して渋滞が発生している場合には、渋滞の原因が分からないことから、イライラする傾向がより強くなると考えられる。その一方で、渋滞の原因が把握できれば、納得したり諦めたりして心理的に安定すると考えられる。
【0054】
このような車両5の走行を妨げる要因としては、例えば道路上の落下物、故障車、事故、違法駐車、工事、交通規制、道路を横断する横断者等が考えられる。これらが運転者から見えない位置において発生していると、通常であれば運転者はその原因を把握することができない。また、駐車場の空き待ちをしている場合においてどの程度待てば良いのかが分からないといったことも、心理的に不安定になる要因として考えられる。
【0055】
そして、これらの原因は、必ずしも運転者の見える位置で発生しているとは限らない。また、例えば大きな交差点等には監視装置が設置されていることもあるが、そのような監視装置では、必ずしも運転者が所望している位置の情報を得ることができるとは限らない。
そこで、情報提供システム1は、以下のようにして、提供された情報の持つ意味を容易に把握することができるとともに、現実感がある情報を運転者に提供する。
【0056】
以下、飛行装置2の発進手順、運転者への情報提供手順、飛行装置2に対して調整を指示する手順、飛行装置2の帰着手順について順に説明する。以下に説明する図9に示す発進処理、図11に示す情報収集処理、図12に示す位置制御処理および図19に示す帰着処理は、主として飛行側制御部20によって実行されるプログラムの処理を示している。
【0057】
また、以下に説明する図10に示す発進準備処理、図13に示す情報提供処理、図14に示す識別処理、図17に示す報知処理および図20に示す帰着準備処理は、主として車両側制御部48によって実行されるプログラムの処理を示している。
【0058】
<<飛行装置2の発進手順>>
飛行装置2の発進手順について、主に図9および図10を参照しながら説明する。
上記したように、飛行装置2は、格納室6に格納されている。そして、飛行装置2は、電源が投入されると、図9に示す発進処理を実行する。この発進処理において、飛行装置2は、必要に応じて車両用装置3と通信する(S1)。このステップS1では、例えば飛行装置2の電池26の残量や自己診断の結果等の等がやり取りされる。
【0059】
続いて、飛行装置2は、発進指示を受信したか否か(S2)を判定する。飛行装置2は、発進指示を受信していないと判定した場合には(S2:NO)、ステップS1に移行して発進指示の受信を待機する。
【0060】
一方、車両用装置3は、電源が投入されると、飛行装置2の発進を準備するために、図10に示す発進準備処理を実行する。この発進準備処理において、車両用装置3は、飛行装置2と通信を行う(T1)。このとき、車両用装置3は、電池26の残量や自己診断結果、標準位置のデータ等をやり取りする。なお、やり取りするデータはこれらに限定されるものではない。
【0061】
続いて、車両用装置3は、発進操作が入力されたか否かを判定する(T2)。車両用装置3は、本実施例では発進ボタンB3が操作されると、発進操作が入力されたと判定する。一方、車両用装置3は、発進操作が入力されていないと判定した場合には(T2:NO)、所定の自動発進条件が成立したか否かを判定する(T3)。
【0062】
自動発信条件は、運転者が発進操作を行わなくても飛行装置2を発進させるための条件である。自動発信条件としては、例えば、目的地の経路が決まったとき、案内経路において事故が多く発生する場所の付近に近づいたとき、初めて通る道路に近づいたとき等が設定されている。なお、法令や規制等により飛行装置2の飛行が認められている場所であることも条件として設定されている。
【0063】
車両用装置3は、発進操作が入力されておらず(T2:NO)、自動発進条件も成立していないと判定した場合には(T3:NO)、ステップT1に移行する。
これに対して、車両用装置3は、発進操作が入力されたと判定した場合(T2:YES)、または、自動発進条件が成立したと判定した場合には(T3:YES)、スライドドア7を開放し(T4)、飛行装置2に対して発進指示を送信する(T5)。このとき、車両用装置3は、スライドドア7の開放が完了していることを飛行装置2に通知する。
【0064】
飛行装置2は、発進指示を受信すると(S2:YES)、発信可能であるか否かを判定する(S3)。このとき、飛行装置2は、異常が生じていないことや、電池26の残量が十分にあることあるいは車両5の速度が速すぎないこと等を確認し、飛行が可能であると判断した場合に、発信可能であると判定する。なお、スライドドア7が開放された状態にあることも発信可能であるか否かの基準である。
【0065】
飛行装置2は、発進可能でないと判定した場合には(S3:NO)、車両用装置3と通信し(S1)、発進ができないことを通知する。
これに対して、飛行装置2は、発進可能であると判定した場合には(S3:YES)、自律飛行により発進する(S4)。このとき、飛行装置2は、発進が完了すると、発進が完了したことを車両用装置3に通知する。そして、飛行装置2は、標準位置まで自律飛行する。
【0066】
一方、車両用装置3は、発進が完了したことが飛行装置2から通知されるとスライドドア7を閉鎖する(T6)。なお、車両用装置3は、飛行装置2から発進ができないことが通知された場合にも、スライドドア7を閉鎖して発進を取りやめる。
飛行装置2は、このような手順で車両5から発進する。
【0067】
<<運転者への情報提供手順>>
以下、運転者への情報提供手順について、主に図11から図17を参照しながら説明する。車両5から発進した飛行装置2は、図11に示す情報収集処理において、飛行位置を制御する位置制御処理を実行する(S10)。
【0068】
飛行装置2は、図に示す位置制御処理において、飛行位置を取得し(S100)、車両用装置3から車両位置を取得し(S101)、車両5に対する相対位置を算出する(S102)。
続いて、飛行装置2は、飛行位置と相対位置との差分から、飛行位置が標準位置からずれているか否かを判定する(S103)。そして、飛行装置2は、飛行位置がずれていると判定した場合には(S103:YES)、飛行位置を修正した後(S104)、情報収集処理にリターンする。
【0069】
つまり、飛行装置2は、車両5に対する相対位置が標準位置となるように、飛行位置を修正する。一方、飛行装置2は、飛行位置がずれてないと判定した場合には(S103:NO)、そのまま情報収集処理にリターンする。
【0070】
このように、飛行装置2は、飛行位置が標準位置に一致するまで移動しつつ飛行するとともに、飛行位置が標準位置に到達した場合には、標準位置を維持した状態で飛行する。
標準位置に到達した飛行装置2は、車両5の周辺を撮像し(S11)、撮像した画像を車両用装置3に対して送信する(S12)。なお、カメラ4の向きは、標準位置に到達するまでの間に調整されている。
【0071】
続いて、飛行装置2は、調整指示を受信したか否か(S13)、帰着指示を受信したか否か(S14)、および自動帰着条件が成立したか否か(S16)を判定し、いずれも否の場合には(S13:NO、S15:NO、S16:NO)、ステップS10に移行する。そして、飛行位置を調整しつつ、撮像および送信を繰り返す。
【0072】
これにより、飛行装置2から車両用装置3に対して、リアルタイムに車両5の周辺の画像が送信される。換言すると、飛行装置2によって、車両5の周辺の状況を示す情報が、リアルタイムに収集されている。なお、飛行装置2の帰着については後述する。
【0073】
一方、車両用装置3は、飛行装置2の発進が完了した後に、図13に示す情報提供処理を実行する。この情報提供処理において、車両用装置3は、飛行装置2から画像を受信すると(T10)、受信した画像を表示する(T11)。なお、画像は、画像復調部56で復調された後に、画像表示部51に表示される。これにより、車両5の周辺の状況が、画像つまりは現実感のある情報が運転者に提供される。
【0074】
車両用装置3は、移動体等の検出や識別画像の生成を行う識別処理を実行する(T12)。車両用装置3は、図14に示す識別処理において、受信した画像を解析し(T120)、物体の検出を行う(T121)。このとき、家屋や電柱あるいは信号機や樹木のような固定されている物体は、予め検出対象ではない背景物として、それらの形状や色彩等のパターンが登録されている。
【0075】
そのため、車両用装置3は、パターン認識等により背景物を除外した状態で物体を検出する。このとき、車両用装置3は、背景以外の物体であって時系列的に位置が変化している物体を移動体として検出する。一方、車両用装置3は、背景物とは異なる物体であって、車両5の進路上に位置している移動が伴わない物体を、静止体として検出する。このため、例えば他車両8は、停車している場合には静止体として検出され、走行している場合には移動体として検出される。以下、車両5の進路上に位置する静止体を、便宜的に接触静止体と称する。
【0076】
続いて、車両用装置3は、検出した物体に移動体が含まれているか否か、つまりは、画像中に移動体が存在するか否かを判定する(T122)。ここで、移動体とは、現実において移動している物体を意味している。そのため、例えば飛行装置2と同じ速さで走行しており撮像された画像中における位置が変化していない物体は、静止体ではなく移動体として検出される。
【0077】
車両用装置3は、移動体が含まれていると判定した場合には(T122:YES)、その移動体に対する識別画像を生成する(T123)。つまり、車両用装置3は、画像に含まれている移動体を識別可能に示すための画像を生成する。
【0078】
車両用装置3は、本実施例の場合、図6に例示するように概ね物体の移動体の全体を囲う形状で、例えば楕円形のマークM1〜M3や、接触を意識させる外形が尖った凹凸となっているマークM4等を、移動体や接触静止体に対する識別画像として生成する。また、車両用装置3は、車両5に対して自車両マークM0を生成して表示する。
【0079】
これらマークM1〜M4は、移動体を塗りつぶす態様であっても構わない。本実施例の場合、飛行装置2は、標準の利用形態では、画面下端の中央が車両位置となるように撮像する。このため、例えばマークM4によって他車両8Bの画像が塗りつぶされていたとしても、画面中央よりも右側にマークM4が表示されていれば、運転者は、前方右側に接近してくる他車両8Bが存在していることを即座に把握できるためである。なお、図6に示す識別画像の形状は一例であり、他の形状のものを採用することができるのは勿論である。
【0080】
続いて、車両用装置3は、接近移動体が存在するか否かを判定する(T124)。ここで、接近移動体とは、検出された移動体のうち車両5または当該車両5の進路に接近する方向に移動している移動体を意味している。このとき、車両用装置3は、車両5の位置と移動体の一度の時間変化に基づいて、接近移動体を検出する。
【0081】
具体的には、例えば図15に時系列で示すように、時刻(t1)において移動体(Q)が検出されたとする。このとき、車両用装置3は、車両5と移動体(Q)との水平距離および垂直距離を特定する。この時刻(t1)の時点では、水平距離がX1、垂直距離がY1であったとする。なお、水平距離および垂直距離は、実際の距離に換算してもよいし、画像の座標系を用いてもよい。
【0082】
続いて、車両用装置3は、時刻(t1)よりも以降の時刻(t2)において、車両5と移動体(Q)との水平距離および垂直距離を特定する。この時刻(t2)は、移動体の移動方向および移動速度を特定可能な時間が経過した時刻であればよいが、より早い段階で運転者に通知するために、時刻(t1)から極力短い間隔であることが好ましい。この時刻(t2)において、車両5と移動体(Q)との水平距離がX2、垂直距離がY2であったとする。
【0083】
この場合、時刻(t2)における移動体(Q)のベクトルは、以下の式で表すことができる。以下、移動体(Q)のベクトルを便宜的に移動体ベクトル(V10)と称する。
((X2−X1),(Y2−Y1))/(t2−t1)
【0084】
そして、車両用装置3は、移動対ベクトル(V10)を用いて、つまりは、車両5と移動体(Q)との相対位置の変化に基づいて、車両5に接近する方向に移動する移動体、あるいは、車両5の進路に接近する方向に移動する移動体を、接近移動体と判定する。
【0085】
例えば図6の場合、交差点から離れる向きに移動している他車両8Cは、車両5から離間する方向に移動していることから、車両5に接近していない移動体と判定される。つまり、他車両8Cは、移動体ではあるものの、接近移動体ではないと判定される。
【0086】
一方、対向車線を走行中の他車両8Aは、車両5との距離が近づく方向に移動していることから、接近移動体と判定される。また、交差点に向かって走行している他車両8Bおよび交差点に向かって歩いている人9は、車両5の進路に接近する方向に移動していることから、接近移動体として判定される。
【0087】
車両用装置3は、接近移動体が存在すると判定すると、接近移動体に対する識別画像を生成する(T125)。このとき、車両用装置3は、ステップT123で生成した識別画像と、ステップT125で生成した識別画像とを異なる表示態様で生成する。本実施例では、識別画像の異なる態様として、色を異ならせている。
【0088】
例えば図6の場合、他車両8Cに対して生成されたマークM2は、移動体であることを示すものであるものの、接近移動体である他車両8BのマークM1とは色が異なっている。例えば、マークM1は黄色、マークM2は緑色で生成されている。この場合、一般的には、黄色で表示されるマークM1のほうが、緑色で表示されるマークM2よりも危険度が高いと直感的に把握することが可能であると考えられる。なお、図6では、ハッチングの違いにより、マークM1とマークM2の表示態様が異なることを模式的に示している。
【0089】
続いて、車両用装置3は、図14に示す識別処理において、交差移動体が存在するか否かを判定する(T126)。ここで、交差移動体とは、検出された移動体のうち、その移動方向が車両5の移動方向に交差する移動体を意味している。また、交差移動体とは、接触の可能性の有無に関わらず、あくまでも移動方向が移動方向に交差する移動体を意味している。
【0090】
車両用装置3は、図15に示す時刻(t2)において移動体ベクトル(V10)を仮想的に伸ばした仮想線(VL10)が、車両5の移動方向、本実施例では基本的には画像中の上方向に延びる仮想線(VL1)に交差するか否かを判定する。図15の場合、仮想線(VL10)と仮想線(VL1)は、点Pで交差する。このため、車両用装置3は、移動体(Q)を交差移動体と判定する。
【0091】
そして、車両用装置3は、移動体(Q)に対して交差移動体であることを識別可能に示す識別画像を生成する。このとき、車両用装置3は、交差移動体に対して、接近移動体とは異なる表示態様の識別画像を生成する。本実施例では、交差移動体と接近移動体とで色が異なる識別画像を生成する。
【0092】
具体的には、例えば図6の場合、他車両8Bと人9は、車両5の進路に交差する方向に移動していることから交差移動体であると判定される。そのため、他車両8Bに対して生成されたマークM4と人9に対して生成されたマークM3は、例えば赤色で生成されている。つまり、交差移動体に対する識別画像は、接近移動体に対する識別画像とは識別可能に生成されている。
【0093】
この場合、一般的には、赤色で表示されるマークM3やマークM4のほうが、黄色で表示されるマークM1よりも危険度が高いと直感的に把握することが可能であると考えられる。なお、図6では、ハッチングの違いにより、マークM3やマークM4の表示態様が異なることを模式的に示している。また、後述するように、他車両8Bに対するマークM4は、接触の可能性を識別可能に示すために、人9に対するマークM3とも異なる表示態様で生成されている。
【0094】
これにより、赤色は一般的に危険を示すために良く用いられる色であることから運転者の注意を得ることが可能となるとともに、運転者に対して強く注意喚起を行うことが可能となる。また、運転者は、画面を注視しなくても赤色のマークが視界内に入ることから、注意すべき移動体等が存在していることを即座に把握することができる。
【0095】
このように、車両用装置3は、交差移動体を検出した時点において、つまりは、接触の有無の判定を行うよりも前の時点で、運転者に対して交差移動体が存在するという情報を提供する。これにより、運転者は、より早い段階で交差移動体の存在を知ることができ、その交差移動体に注意しながら運転するいわゆる予測運転が可能になる。
【0096】
すなわち、車両用装置3は、ある程度の時間を掛けて接触するか否かを確実に判定するという考えでは無く、接触する可能性が潜在していることをできるだけ迅速に運転者に通知するという考えの下、交差移動体を検出した時点において識別画像を生成する。
【0097】
ところで、交差移動体が検出された場合、検出時には車両5と交差移動体は接触していないとしても、移動方向が交差していることから、将来的には両者が接触する危険性が潜在していると考えられる。そのため、車両用装置3は、交差移動体の検出を行うステップT127において、交差移動体を検出した場合には車両5との接触の可能性をさらに判定している。
【0098】
具体的には、車両用装置3は、図15に示すように、時刻(t2)で特定した移動体ベクトル(V10)を用いて、時刻を仮想的に進めた時刻(t3)における車両5と移動体(Q)との相対位置を予測する。このとき、時刻(t3)では水平距離がX3であり、垂直距離がY3になると予測されたとする。この場合、時刻(t3)では車両5と移動体(Q)とは接触しないことになる。
【0099】
そして、車両用装置3は、さらに仮想的に時刻を進めていき、水平距離と垂直距離とが互いに0になる時刻(n)が存在するかを判定する。例えば時刻(n)において水平距離がXn=0、垂直距離がYn=0にあるとすると、車両用装置3は、車両5がそのまま走行した場合には車両5と移動体(Q)とが接触する可能性がある、あるいは、接触する可能性が高いと判定する。このとき、車両用装置3は、判定精度を高めるために、車両5の速度についてはECU42から取得した車両情報を用いている。
【0100】
この場合、車両用装置3は、図14に示す識別処理において、交差移動体に対する識別画像、ならびに、接触の可能性がある交差移動体に対する識別画像を生成する(T127)。具体的には、図6に示す他車両8Bと接触する可能性がある、あるいは、接触する可能性が高いと判定された場合には、他車両8Bに対して、交差移動体である人9とは異なる表示態様のマークM4が生成される。
【0101】
本実施例では、マークM4は、赤色で点滅するものであり、接触を意識させるためにその形状も交差移動体を示すマークM3とは異なっている。これにより、一般的には危険を示す赤色であって且つ点滅することによって運転者の注意を得ることが可能になるとともに、接触を意識させる形状であることから運転者に対して強く注意喚起を行うことも可能になると考えられる。また、運転者は、運転のために前方をみている場合であっても、画像表示部において、つまりは、運転者の視界内において赤色の点滅状態が発生することから、画面を注視しなくても、注意すべき移動体等が存在していることを即座に把握することができる。
【0102】
さて、ここまでは移動体について説明したが、車両5が静止体に接触する可能性も考えられる。そのため、車両用装置3は、図14に示す識別処理において、接触静止体が存在するか否かを判定する(T128)。具体的には、例えば図16に示すように、時刻(t10)において、静止体ではあるものの背景とは異なる物体(K)が検出されたとする。
【0103】
この場合、車両用装置3は、物体(K)が仮想線(VL1)上に位置しているか否かを判定する。また、車両用装置3は、現時点では仮想線(VL1)に重なっていなくても、物体(K)が走行中の道路上に位置しているか否かを判定する。つまり、車両用装置3は、物体(K)が車両5の進路上に位置しているか否かを判定する。ここで、進路上とは、車両5の進行方向、あるいは、車両5が実際に走行することになる走行予定位置を含んでいる。
【0104】
図16の場合、物体(K)は仮想線(Vl1)上に位置していることから、車両用装置3は、物体(K)を接触静止体と判定する。つまり、車両5がそのまま走行すると、例えば時刻(tn)において車両5が物体(K)に接触する可能性がある、あるいは接触する可能性が高いと判定する。この場合、車両用装置3は、物体(K)に対して、接触静止体であることを識別可能に示す識別画像を生成する(T129)。なお、物体(K)に対する識別画像の図示は省略するが、移動体とは異なる形状や色とすることができる。
【0105】
このように接触静止体を検出することにより、車両用装置3は、道路上の落下物や高速道路の路側帯に停止している車両5等、一般的には運転者が想定しているとは言い難い状況においても、物体の存在や接触の可能性を早期に運転者に報知することが可能となる。
【0106】
車両用装置3は、移動体もしくは接触静止体を検出し、検出した移動体や接触静止体に対して識別画像を生成する識別処理を実行したのち、図13に示す情報提供処理にリターンする。そして、車両用装置3は、報知処理を実行する(T13)。
【0107】
車両用装置3は、図17に示す報知処理において、識別画像を表示する(T130)。これにより、図6に示したように、移動体が存在するか否か、移動体は接近移動体あるいは交差移動体であるか否か、接触の可能性があるか否か、および、接触静止体が存在するか否かといった情報が運転者に対して提供される。
【0108】
そして、車両用装置3は、交差移動体が存在する場合(T131:YES)、または、接触静止体が存在する場合には(T132:YES)、スピーカから音声による報知も行う。これにより、運転に集中して画像表示部51を見ていない運転者に対して、画像を確認させること、つまりは、潜在する危険性を早期に把握することを促すことが可能となる。
【0109】
<<飛行装置2に対して調整を指示する手順>>
報知処理を行うと、車両用装置3は、図13に示す情報提供処理において、調整操作が入力されたか否かを判定する(T14)。この場合、車両用装置3は、図7に示す操作表示部52に表示されているいずれかの調整用のボタンが操作されると、調整操作が入力されたと判定する。
【0110】
そして、車両用装置3は、調整操作が入力されたと判定すると(T14:YES)、飛行装置2に対して入力された調整を指示するための調整指示を送信する(T15)。具体的には、上昇ボタンB8が操作されると飛行装置2に対して高度を上昇させる調整指示を送信し、下降ボタンB9が操作されると飛行装置2に対して高度を下降させる調整指示を送信する。
【0111】
また、車両用装置3は、遠方ボタンB10が操作されると飛行装置2に対して車両5から離れる向きに移動する調整指示を送信し、接近ボタンB11が操作されると飛行装置2に対して車両5に近づく向きに移動する調整指示を送信する。
【0112】
また、車両用装置3は、前寄りボタンB12が操作されると飛行装置2に対してカメラ4を現在よりも前方に向ける調整指示を送信し、下寄りボタンB13が操作されると飛行装置2に対してカメラ4を現在よりも下向きにする調整指示を送信する。
【0113】
また、車両用装置3は、標準ボタンB5、前方監視ボタンB6あるいは後方監視ボタンB7のいずれかが操作されると、飛行装置2に対して、「標準」、「前方監視」あるいは「後方監視」のいずれかの撮像パターンへの切り替えを指示する調整指示を送信する。
【0114】
「標準」は、図18に示すように、上記した標準位置において車両5の前方且つ情報の位置から車両5を含む範囲の画像を撮像する。この「標準」の撮像パターンは、飛行装置2の初期状態として設定されている。
【0115】
「前方監視」は、標準位置において、「標準」よりも前方の範囲を撮像する。この場合、車両5は画像に含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。「前方監視」は、運転者がより遠方の状況を確認したい場合等に選択される。これにより、例えば前方において他車両8F、8Gが接触している等、他車両8E、8D等に遮られて車両5の運転者から見えない位置の情報を収集することが可能となる。
【0116】
「後方監視」は、標準位置において、「標準」よりも後方の範囲を撮像する。この場合、車両5は画像に含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。「前方監視」は、例えば左折時や右折時、あるいは合流時に後方を確認したい場合等に選択される。これにより、運転者の後方の死角を走行する例えばオートバイ10(図3参照)等を把握することが可能となる。
【0117】
一方、飛行装置2は、図11に示す情報収集処理において、調整指示を受信すると(S13:YES)、受信した調整指示によって指示される飛行位置やカメラ4の角度を調整する(S14)。これにより、運転者の指示に応じた調整が可能となる。
【0118】
<<飛行装置2の帰着手順>>
さて、飛行装置2は、いずれかの時点で車両5に帰着する。本実施例の場合、飛行装置2は、図11に示す情報収集処理において、車両用装置3から帰着指示が送信された場合(S15:YES)、または、自動帰着条件が成立した場合に(S16:YES)、車両5に帰着する。自動帰着条件としては、例えば電池26の残量が所定の基準値未満になった場合や、何らかの異常が発生し帰着する必要があると自発的に判断した場合等が予め設定されている。
【0119】
飛行装置2は、帰着する場合、車両用装置3に対して帰着することを通知する帰着要求を送信したのち(S17)、帰着処理を実行する(S18)。飛行装置2は、図19に示す帰着処理において、必要に応じて車両用装置3と通信し(S180)、帰着可能である場合には(S182)、自律飛行で帰着する(S183)。
【0120】
なお、飛行装置2は、車両5の速度が速すぎたり車両位置を見失った場合など帰着可能でない場合には(S182:NO)、ステップS1に移行して、車両用装置3に対して帰着不可であること等を送信する。また、例えば異常が発生して不時着する必要がある場合などの緊急時には、不時着位置の通知等も行う。
【0121】
一方、車両用装置3は、図13に示す情報提供処理において、帰着操作が入力された場合には(T16:YES)、帰着指示を送信したのち(T17)、飛行装置2の帰着を準備する帰着準備処理を実行する(T19)。また、車両用装置3は、帰着要求を受信した場合にも(T17:YES)、帰着準備処理を実行する(T19)。つまり、車両用装置3は、帰着する飛行装置2を受け入れるための準備を行う。
【0122】
車両用装置3は、図20に示す帰着準備処理において、必要に応じて飛行装置2と通信し(T190)、スライドドア7を開放し(T191)、飛行装置2の帰着を待機する(T192:NO)。そして、車両用装置3は、帰着完了が完了すると(T192:YES)、スライドドア7を閉鎖する(T193)。このとき、帰着完了は、飛行装置2との通信により確認される。
【0123】
このように、情報提供システム1では、車両5から発進した飛行装置2により車両5の周辺の画像をリアルタイムで運転者等に提供するとともに、撮像を終えた飛行装置2を帰着させている。
【0124】
以上説明した情報提供システム1によれば次のような効果を得ることができる。
情報提供システム1は、カメラ4有し上空から車両5の周辺を撮像する飛行装置2と、飛行装置2で撮像された画像を車両側表示部54にリアルタイムに表示する制御を行う車両側制御部48を有する車両用装置3と、を備えている。
【0125】
これにより、車両5の周辺の状況が、画像として運転者に提供される。この場合、画像であることから、車両5の周辺の状況が現実感を伴った形で提供される。また、運転者は、画像つまりは模式化されていない情報を得ることで、車両5の周辺の状況を容易に把握することができる。
【0126】
そして、状況を容易に把握することができることから、例えば運転者からは見えない位置から接近する他車両8がある等、少し先の衝突等を予測することができる。換言すると、運転者は、潜在する危険性を予め予測することができる。これにより、いわゆる予測運転が可能となり、安全性を向上させることができる。
【0127】
また、飛行装置2は上空らか車両5の周辺を撮像することから、運転者から見えない位置の状況を把握することができる。これにより、例えば渋滞に巻き込まれてイライラしている場合に、渋滞の原因を把握することで心理的に安定すると考えられる。つまり、接触等の物理的な面だけで無く、運転者の心理的な面からも運転を支援することができる。
【0128】
したがって、情報提供システム1は、画像という現実感を伴い、意味の把握が容易であるとともに、運転者に対して強く注意喚起を行える情報を提供することができる。
【0129】
飛行装置2は、車両5に対して所定の位置関係を維持した状態で自律制御により飛行する。これにより、運転者が操作すること無く、換言すると、運転から注意をそらすこと無く、車両5の周辺の状況を運転者に提供することができる。したがって、走行中の安全性が低下するおそれを低減することができる。
【0130】
このとき、飛行装置2は、車両用装置3から受信した車両位置に基づいて、車両5に対する所定の位置関係を特定する。このため、通常の利用形態においては、運転者は、飛行装置2の位置の調整等を行う必要がない。したがって、走行中の安全性が低下するおそれを低減することができる。
【0131】
情報提供システム1は、運転者等によって入力された調整指示を飛行装置2に対して送信し、飛行装置2は、受信した調整指示に基づいて車両5に対する位置および撮像部の向きのうち調整指示によって指示された調整を行う。これにより、障害物等により運転者が所望する画像が撮れない場合等において、運転者の所望する位置あるはカメラ4の角度で車両5の周辺を撮像することができる。
【0132】
情報提供システム1は、検出した物体に対して生成された識別画像を、車両側表示部54に表示される物体の表示位置の変化に追従させて表示する。これにより、車両5が走行して物体との位置関係が変化した場合であっても、注意すべき物体を継続的に運転者に把握させることができる。
【0133】
情報提供システム1は、車両5に接触する可能性があると判定された物体と車両5に接触する可能性がないと判定された物体とで異なる態様の識別画像を生成する。これにより、注意すべき物体と、それほど注意を払う必要の無い物体とを区別することができる。この場合、運転者は、区別された状態で情報を受け取ることから、潜在する危険度に対する優先順位を判断しやすくなる。したがって、迅速且つ適切に、さらには、危険性に対して十分に余裕を持った状態で対処することができる。
【0134】
情報提供システム1は、車両5または当該車両5の進路に接近している移動体を接近移動体として検出し、接近移動体と接近移動体ではない移動体とで異なる態様の識別画像を生成する。これにより、車両5に接近してきていることから注意すべき移動体と、それほど注意を払う必要の無い移動体とを区別することができる。したがって、上記したように、迅速且つ適切に、さらには、潜在する危険性に対して十分に余裕を持った状態で対処することができる。
【0135】
情報提供システム1は、移動方向が車両5の移動方向に交差する移動体を交差移動体として検出し、交差移動体と交差移動体ではない移動体とで異なる態様の識別画像を生成する。これにより、移動方向が交差することから接触の可能性のある移動体と、接触の可能性が低い移動体とを区別することができる。したがって、上記したように、迅速且つ適切に、さらには、潜在する危険性に対して十分に余裕を持った状態で対処することができる。
【0136】
情報提供システム1は、車両5の進路上に位置している静止体を接触静止体として検出し、接触静止体を識別可能に示す識別画像を生成する。これにより、例えば道路上に存在する落下物等、運転者がその存在を通常は意識していない可能性が高い物体を、運転者に報知することができる。したがって、潜在する危険性に対して十分に余裕を持った状態で対処することができる。
【0137】
情報提供システム1では、飛行装置2は、発進指示を受信した場合および所定の発進条件が成立した場合には自律制御により車両5から発進し、帰着指示を受信した場合および所定の帰着条件が成立した場合には自律制御により車両5に帰着する。これにより、飛行装置2を発着させるための操作が簡略化することができる。したがって、走行中の安全性が低下するおそれを低減することができる。
【0138】
また、飛行装置2によって撮像された画像を受信して車両側表示部54にリアルタイムに表示する車両用装置3によっても、上記した情報提供システム1と同様に、意味を容易に把握することができるとともに、現実感があり、潜在する危険性を予め予測可能であって運転者に対して強く注意喚起を行える情報を提供することができる。
【0139】
また、飛行装置2と通信可能に接続される車両用装置3の車両側制御部48に、飛行装置2で撮像した画像を受信する処理と、受信した画像を車両側表示部54にリアルタイムに表示する処理と、を実行させる情報提供プログラムによっても、上記した情報提供システム1と同様に、意味を容易に把握することができるとともに、現実感があり、潜在する危険性を予め予測可能であって運転者に対して強く注意喚起を行える情報を提供することができる。
【0140】
(その他の実施例)
本開示は、上記した実施例で示した構成に限定されるものでは無く、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形あるいは組み合わせることができる。
【0141】
例えば、情報提供システム1は、例えば図5に示すナビゲーション装置40等の経路案内部によって案内される経路を特定可能な経路情報を車両側通信部50から飛行装置2に対して送信し、受信した経路情報に基づいて車両5が案内される経路に沿って飛行装置2が自律制御により飛行する構成とすることができる。これにより、車両5が走行中であって位置が変化している場合であっても飛行装置2に対する位置の調整等が不要となる。したがって、走行中の安全性を向上させることができる。また、経路上の危険性を早期に把握することができる。
【0142】
また、情報提供システム1は、車両5の挙動を特定可能な車両情報を取得する車両情報取得部を有し、取得した車両情報を飛行装置2に対して送信する車両用装置3と、受信した車両情報に基づいて飛行位置およびカメラ4の角度の少なくとも一方を調整する飛行装置2とを備える構成とすることができる。この場合、車両情報としてウィンカーの点灯を取得することができる。これにより、例えば左折する際に運転者の死角になり易い左後方を撮像可能な位置あるいは撮像可能かカメラ4の角度に自動的に調整することができる。
【0143】
また、情報提供システム1は、車両5が走行中の道路に接続する道路が存在する場合、道路が接続する接続位置と車両5とを撮像可能な位置に自律制御により移動する、または、接続位置と車両5とを撮像可能な向きに撮像部を調整する飛行装置2を備える構成とすることができる。
あるいは、情報提供システム1は、車両5の移動方向が変化する場合、車両5の後方を撮像可能な位置に移動する、または、車両5の後方を撮像可能な向きに撮像部を調整する飛行装置2を備える構成とすることもできる。
【0144】
これらにより、例えば図3において車両5が左折するような状況において、車両5の後方にオートバイ10が存在していることや、左側に人9が存在していること等を運転者に報知することができ、安全性を高めることができると考えられる。
【0145】
また、例えば接続する道路が立体的に合流するものであったり、住宅の塀によって遮られているT字路であったりした場合等、合流してくる他車両8や人9等が運転者から見えていない場合であっても、危険性を運転者に報知することができる。このため、例えば自身が優先道路を走行している等、接続位置に対する注意を怠りがちな状況であっても、他車両8等の存在を報知することで、運転者に対して注意喚起することができる。
【0146】
操作装置41とナビゲーション装置40とを有する車両用装置3の構成を例示したが、車両用装置3は、飛行装置2との間で通信を行う車両側通信部50、および飛行装置2によって撮像された画像を車両側表示部54にリアルタイムに表示する制御を行う車両側制御部48を少なくとも備えていればよい。つまり、車両側表示部54は、車両用装置3の外部に設けられていてもよい。例えば、車両用装置3に画像出力部を設け、ナビゲーション装置40の表示44部やいわゆるスマートホンやタブレット型パソコン等の表示器に画像を出力する構成等が考えられる。
【0147】
車両用装置3に車両位置取得部47を設けた構成を例示したが、車両位置取得部47を外部の装置に設ける構成とすることもできる。例えば、車両用装置3に外部の装置と通信を行う通信部を設け、車両位置取得部47を有する外部の装置から車両位置を取得することが考えられる。この場合、例えばスマートホンやタブレット型パソコン等の外部の装置が位置取得部を備えていれば、外部の装置から車両位置や経路情報を取得する構成とすることができる。また、外部の装置が経路案内部を備えていれば、外部の装置から経路情報を取得する構成とすることもできる。
【0148】
車両用装置3とECU42とを接続して車両情報を取得する構成を例示したが、情報提供システム1としては車両情報の取得は必須ではなく、ECU42と接続されない構成とすることもできる。
動画および静止画をカラーおよび白黒で撮像できるカメラ4を例示したが、動画のみを撮像できるものや、カラーあるいは白黒の一方でのみ撮像できるものを採用することもできる。
【0149】
飛行装置2が備えるカメラ4、画像変調部30および画像送信部29Aは、一体にユニット化されたものを採用することもできるが、例えば使用者がカメラ4の種類等を変更可能とするために、飛行装置2側にカメラ4と接続するためのインターフェースを設けておく構成とすることもできるし、変調された画像を出力可能なカメラ4を採用することもできる。
【0150】
飛行位置とカメラ4の向きとを個別に調整する例を示したが、飛行位置の変化に追従させてカメラ4の向きを調整する構成とすることもできる。例えば画像の中心位置を維持した状態で、車両5との距離や高度を調整することができる。これにより、飛行位置が変化した際に画像の中心位置がずれて状況が把握しづらくなるおそれを低減することができる。
【0151】
画像送信部29Aと飛行側送受信部29Bとを個別の通信ICとする構成を例示したが、共通の通信ICと共通のアンテナで構成することもできる。また、飛行側送受信部29Bは、送信部と受信部とを個別の通信ICと個別のアンテナで構成することもできる。
同様に、車両側通信部50も、画像受信部49Aと車両側送受信部49Bとを共通の通信ICと共通のアンテナで構成することもできるし、送信部と受信部とを個別の通信ICと個別のアンテナで構成することもできる。また、車両位置をナビゲーション装置40側から飛行装置2に対して送信する構成とすることもできる。
【0152】
画像表示部51、操作表示部52および状況表示部53をそれぞれ個別の表示器を有する構成を例示したが、画像表示部51、操作表示部52および状況表示部53のうち任意の組み合わせに対して共通の表示器を設けて表示内容を切り替える構成とすることもできる。例えば、1つの表示器により画像表示部51、操作表示部52および状況表示部53を構成することができる。
【0153】
車両5側から車両位置を取得する構成を例示したが、画像認識により車両位置を特定することもできる。例えば、車両5の形状や色等を飛行装置2に記憶させる等、予め車両5と飛行装置2とを対応付けしておき、飛行装置2が撮像した画像中の車両5を特定し、飛行位置と画角等のカメラ4の仕様とに基づいて飛行位置に対する相対的な位置を特定することにより、車両位置を特定することができる。
【0154】
移動体と静止体とを検出する構成としたが、移動体のみを検出する構成とすることができる。これにより、一般的な事故の態様である車同士や車と人との接触等、移動体同士の事故の防止に役立てることができる。
【0155】
実施形態では接触静止体について識別画像を生成する例を示したが、識別画像を生成する条件を設定可能な構成とすることができる。条件としては、例えば車両5の前方50m以上である等が考えられる。これは、例えば信号待ちで停車している他車両8に続いて停車する際に、停車している他車両8つまりは運転者が視認可能な他車両8が接触静止体として報知されることを低減するためである。なお、追突防止の観点からは、運転者が視認可能な他車両8等を報知することも有効であると考えられる。
【0156】
検出された物体の全てに対して識別画像を表示する構成を例示したが、検出された物体のうち、どのような物体に対して識別画像を表示するかを運転者が設定可能な構成にすることができる。例えば、交差移動体に対してのみ識別画像を表示する構成、交差移動体と接近移動体に対してのみ識別画像を表示する構成、交差移動体と接触静止体とに対してのみ識別画像を表示する構成等にすることができる。これにより、過度に識別画像が表示されて判断に迷うおそれを低減することができる。
【0157】
物体検出部、画像生成部、接触判定部、接近判定部、交差判定部および静止体判定部を画像解析部57により構成する例を示したが、各部は、それぞれ個別に構成することができるし、任意の組み合わせで共通の構成を採用することもできる。例えば、各判定部と画像生成部とを別体の構成とすることができる。また、任意の機能を車両側制御部48等に振り分けた構成とすることもできる。
【0158】
標準位置を、例えば車両5の速度に応じて変更してもよい。この場合、初期値としては例えば市街地における平均的な速度を基準とした距離を設定しておき、その平均的な速度よりも実際の車両5の速度が速ければ所定の距離(L)を長くし、実際の車両5の速度が遅ければ所定の距離(L)を短くすること等が考えられる。これにより、例えば速度が速い場合にはより遠方の状況を把握することなどが可能となり、安全性の向上に一層役立つと考えられる。この場合、発進時に車速を取得することにより標準位置を調整する構成とすることもできるし、飛行中であっても車速の変化に応じて距離を変更する構成とすることもできる。
【0159】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0160】
図面中、1は情報提供システム、2は飛行装置、3は車両用装置、4はカメラ(撮像部)、5は車両、8、8A〜8Fは他車両(移動体、静止体)、9は人(移動体、静止体)、10はオートバイ(移動体、静止体)、20は飛行側制御部、21は飛行位置取得部、28は飛行側通信部、40はナビゲーション装置(経路案内部)、41は操作装置(車両用装置)、47は車両位置取得部、48は車両側制御部、50は車両側通信部、54は車両側表示部、57は画像解析部(物体検出部、画像生成部、接触判定部、接近判定部、交差判定部、静止体判定部)、M1〜M4はマーク(識別画像)を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
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図13
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図19
図20