(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624042
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】縦型炉内狭小部の遠隔点検装置および方法
(51)【国際特許分類】
F27D 21/02 20060101AFI20191216BHJP
C21D 9/56 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
F27D21/02
C21D9/56 101Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-250763(P2016-250763)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-105530(P2018-105530A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2018年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】青木 智
【審査官】
守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−279662(JP,A)
【文献】
特開2013−040714(JP,A)
【文献】
特開2006−284105(JP,A)
【文献】
特開2007−333279(JP,A)
【文献】
特開2003−268377(JP,A)
【文献】
実開昭60−020558(JP,U)
【文献】
特公昭48−038545(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 21/02
C21D 1/00
C21D 1/02 − 1/84
C21D 9/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型炉内狭小部を遠隔で点検する縦型炉内狭小部の遠隔点検装置であって、
全方位カメラと該全方位カメラで縦型炉内狭小部を撮影した画像を送信するアンテナと照明装置とを備えた撮像装置と、
該撮像装置を昇降させるウインチワイヤーを巻上げ、巻下げをするウインチと、
送信された画像の画像歪を補正する画像処理装置と、を具備し、
前記ウインチは、回転駆動装置の回転速度および停止位置を制御する回転制御装置を備え、
前記ウインチワイヤーを縦型炉内に送り込むにあたっては、
縦型炉の炉頂開口部近辺に配置した支柱、ガイドサポートを経て、前記炉頂開口部の直下に配置された構造物を避けるように前記ガイドサポートが構成されたことを特徴とする縦型炉の遠隔点検装置。
【請求項2】
請求項1に記載の縦型炉内狭小部の遠隔点検装置において、
前記縦型炉は縦型焼鈍炉であり、
前記撮像装置は通板用チェーンに沿っての昇降機能を有し、前記通板用チェーンを挿通する通板チェーン通し用シャックルを備え、
前記構造物はトップロールであるように構成されたことを特徴とする縦型炉の遠隔点検装置。
【請求項3】
縦型炉内狭小部を遠隔で点検する縦型炉内狭小部の遠隔点検方法であって、
ウインチワイヤーを、炉頂の開口部の周辺に設置した支柱と、この支柱に固定したガイドサポートを経由して前記開口部の直下に配置された構造物を避けて前記開口部から炉内に送込む、ウインチワイヤーの炉内への繰出しステップと、
全方位カメラと該全方位カメラで縦型炉内狭小部を撮影した画像を送信するアンテナと照明装置とを備えた撮像装置をウインチワイヤーに固定させる、ウインチワイヤーと撮像装置との固定ステップと、
ウインチの巻上げまたは巻下げを制御して、前記撮像装置を所定の炉内高さ位置まで移動させ停止した後に、撮像装置の全方位カメラにて炉内撮影を行う、撮像装置による炉内撮影ステップと、
撮影した画像を、画像処理装置に送信して、画像歪取り補正を行って、縦型炉内狭小部での割れ、曲がりの有無を判断する、画像処理と点検判断ステップと、
を有することを特徴とする縦型炉内狭小部の遠隔点検方法。
【請求項4】
請求項3に記載の縦型炉内狭小部の遠隔点検方法において、
前記縦型炉は縦型焼鈍炉であり、
前記構造物はトップロールであり、
通板用チェーンを鋼板の先端または尾端に取り付けて炉内から鋼板を引き抜く、通板用チェーンによる炉からの鋼板抜きステップを行った後に、前記ウインチワイヤーの炉内への繰出しステップを行い、
前記ウインチワイヤーと撮像装置とを固定し、撮像装置を通板チェーンに沿わせて昇降させるようにすることを特徴とする縦型炉の遠隔点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型炉内狭小部の遠隔点検装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、鋼板の連続焼鈍ラインにおける設備配置例を示す図である。縦型炉の一つである縦型焼鈍炉をライン内に有している。ペイオフリール1から払い出された冷延鋼板は、ウェルダー2で先行材に溶接されて、ルーパ3を介して、縦型焼鈍炉4に送り込まれて焼鈍後、ルーパ3を介して、テンションリール5に巻き取られる。
【0003】
縦型焼鈍炉4の内部には、鋼板加熱用のラジアントチューブ(以下、RTとも略記する)が複数配置されている。RTはその内部に高温気体が流れるため、管自体の曲がりや割れなどの点検作業を定期的に行うことが必要とされる。一般的に縦型焼鈍炉は高さが数十mもあり、点検作業は高所作業となり、準備・点検・片付けを含めて多大な時間と費用を要している。
【0004】
図2は、作業員が直接炉内に入り点検作業を行う様子を示す図である。従来の作業員による点検作業の様子を示しており、命綱8を付けた作業者6bが点検者となって、縦型焼鈍炉4の炉頂4aと炉床4b間のラジアントチューブ7の損傷状態を目視で点検を行う。点検作業中は、炉頂4aの作業者6aと炉床4bの作業者6cによって命綱8に張力を付与し、点検をする作業者6bの位置がふらつかないようにしている。
【0005】
炉内は劣悪な環境であり作業員の負荷が大きいため、作業改善策として、ゴンドラ等の昇降装置で点検を行う、炉内にカメラを入れて昇降装置で上下させる点検方法などが提案されてきたが、炉内ラジアントチューブ間の狭小部点検には安全面や効率面で改善の余地が残されていた。
【0006】
これに対処すべく、特許文献1に開示された技術がある。この技術は、縦型焼鈍炉のラジアントチューブの点検を目的に、全方位カメラに昇降装置を取り付けて、ラジアントチューブ間を昇降させて画面を見ながら遠隔から点検を行えるようにした。また、暗い炉内では、そのままでは撮影できない為、全方位カメラに照明を取り付けて撮影できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−40714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した特許文献1に開示されている技術では、以下に示すような課題がある。
【0009】
(1)全方位カメラの位置調整
全方位カメラ導入により炉内狭小部の点検の安全化を図ることはできたものの、点検対象部位を見落とさないようにゆっくりと確認しながら全方位カメラを昇降する必要がある。
【0010】
また、過去の点検記録と画像を見て比較する為、点検位置を毎回同じ位置に目視で調整しながら全方位カメラを昇降する必要がある。
【0011】
上記の理由のため、点検者が炉内をよじ登って点検していた時は2〜3時間で行えていた作業が6〜8時間ほどと2〜3倍程度時間が多くかかってしまっている。
【0012】
(2)縦型炉改造の必要性
特許文献1で対象としている縦型焼鈍炉には炉頂にトップロールがあるが、そのトップロール直下に炉の高さ方向にラジアントチューブが配置されている。通常、トップロールの上方はロール交換ができるように炉蓋が取外しできる構造となっている。しかし、全方位カメラを昇降させてラジアントチューブを横から点検できる位置の上方は炉蓋構造になっておらず、全方位カメラの昇降においてトップロールを逃げるべく、炉頂に新たな開口部を設置するという新たな改造する必要がある。
【0013】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、新たに大幅な縦型炉改造を行うことなく、安全かつ効率的に縦型炉内狭小部の点検を行うことができる、縦型炉内狭小部の遠隔点検装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は、以下の発明によって解決できる。
【0015】
[1] 縦型炉内狭小部を遠隔で点検する縦型炉内狭小部の遠隔点検装置であって、
全方位カメラと該全方位カメラで縦型炉内狭小部を撮影した画像を送信するアンテナと照明装置とを備えた撮像装置と、
該撮像装置を昇降させるウインチワイヤーを巻上げ、巻下げをするウインチと、
送信された画像の画像歪を補正する画像処理装置と、を具備し、
前記ウインチは、回転駆動装置の回転速度および停止位置を制御する回転制御装置を備え、
前記ウインチワイヤーを縦型炉内に送り込むにあたっては、
縦型炉の炉頂開口部近辺に配置した支柱、ガイドサポートを経て、前記炉頂開口部の直下に配置された構造物を避けるように構成されたことを特徴とする縦型炉の遠隔点検装置。
【0016】
[2] 上記[1]に記載の縦型炉内狭小部の遠隔点検装置において、
前記縦型炉は縦型焼鈍炉であり、
前記撮像装置は通板用チェーンに沿っての昇降機能を有し、前記通板用チェーンを挿通する通板チェーン通し用シャックルを備え、
前記構造物はトップロールであるように構成されたことを特徴とする縦型炉の遠隔点検装置。
【0017】
[3] 縦型炉内狭小部を遠隔で点検する縦型炉内狭小部の遠隔点検方法であって、
ウインチワイヤーを、炉頂の開口部の周辺に設置した支柱と、この支柱に固定したガイドサポートを経由して前記開口部の直下に配置された構造物を避けて炉内に送込む、ウインチワイヤーの炉内への繰出しステップと、
全方位カメラと該全方位カメラで縦型炉内狭小部を撮影した画像を送信するアンテナと照明装置とを備えた撮像装置をウインチワイヤーに固定させる、ウインチワイヤーと撮像装置との固定ステップと、
ウインチの巻上げまたは巻下げを制御して、前記撮像装置を所定の炉内高さ位置まで移動させ停止した後に、撮像装置の全方位カメラにて炉内撮影を行う、撮像装置による炉内撮影ステップと、
撮影した画像を、画像処理装置に送信して、画像歪取り補正を行って、縦型炉内狭小部での割れ、曲がりの有無を判断する、画像処理と点検判断ステップと、
を有することを特徴とする縦型炉内狭小部の遠隔点検方法。
【0018】
[4] 上記[3]に記載の縦型炉内狭小部の遠隔点検方法において、
前記縦型炉は縦型焼鈍炉であり、
前記構造物はトップロールであり、
通板用チェーンを鋼板の先端または尾端に取り付けて炉内から鋼板を引き抜く、通板用チェーンによる炉からの鋼板抜きステップを行った後に、前記ウインチワイヤーの炉内への繰出しステップを行い、
前記ウインチワイヤーと撮像装置とを固定し、撮像装置を通板チェーンに沿わせて昇降させるようにすることを特徴とする縦型炉の遠隔点検方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、炉頂の開口部近辺に支柱およびガイドサポートを設けて構造物を避けるようにウインチワイヤーを炉内に繰出し、撮像装置を昇降させるようにしたので、新たに大幅な縦型炉改造を行うことなく、安全かつ効率的に縦型炉内狭小部の点検を行うことができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】鋼板の連続焼鈍ラインにおける設備配置例を示す図である。
【
図2】作業員が直接炉内に入り点検作業を行う様子を示す図である。
【
図3】縦型焼鈍炉内狭小部の遠隔点検装置の全体構成例を示す図である。
【
図4】支柱およびガイドサポートの構造例を示す図である。
【
図5】本発明で用いた撮像装置の構成例を示す図である。
【
図6】撮影した画像と補正後の画像の一例を示す図である。
【
図7】鋼板の連続焼鈍ラインの縦型焼鈍炉内狭小部の遠隔点検方法における処理手順例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、鋼板の連続焼鈍ラインの縦型焼鈍炉内のラジアントチューブの点検を例として、本発明の実施形態について説明を行う。なお、縦型焼鈍炉に限ることなく他の縦型炉でも本発明は適用可能であることは言うまでもない。また、縦型炉としては、
図1や
図2のような大型の縦型炉だけでなく、撮像装置で炉内に点検が困難な狭小部を撮影できるのであれば小型の縦型炉でも適用可能である。
【0022】
図3は、縦型焼鈍炉内狭小部の遠隔点検装置の全体構成例を示す図である。図中、4は縦型焼鈍炉、4aは炉頂、4bは炉床、7はラジアントチューブ、11はウインチ、12はウインチワイヤー、13は支柱、14はガイドサポート、15はトップロール、16は通板チェーン、17はボトムロール、18は撮像装置、19は通板チェーン通し用シャックル、20は画像処理装置をそれぞれ表す。
【0023】
縦型焼鈍炉4の内部に設置したトップロール15の直下に高さ方向に複数配置されているラジアントチューブ7を、撮像装置18で撮影する様子を示している。ここでは、点検が必要な炉内狭小部として、炉頂開口部の直下のトップロールの下方に多数配置されているラジアントチューブの例を示しているが、これに限られることなく、類似の他の縦型炉での、炉頂開口部の直下に配置された構造物の下方の狭小部の点検にも適用可能である。
【0024】
そして、撮像装置18で撮影した画像を、離れた場所に設置した画像処理装置20まで無線送信し、その画像を画像処理する。画像処理した画像から管自体の曲がりや割れなどの有無を判定する。
【0025】
撮像装置18は、ウインチ11から送り出されたウインチワイヤー12で縦型焼鈍炉4の内部を昇降する。
【0026】
そして、ウインチ11は、図示しない、回転駆動装置とこの回転駆動装置の回転速度および停止位置を制御する回転制御装置を有しており、所望の回転速度および停止位置でウインチワイヤー12の巻上げと巻下げを制御できる。これにより、撮像装置を所定の高さ位置に自動で移動または停止が可能である。
【0027】
鋼板の連続焼鈍ラインの縦型焼鈍炉では、炉の立ち下げ、立ち上げの際に鋼板を縦型焼鈍炉内から抜き取るまたは装入にあたって鋼板の先端又は尾端に取り付けた通板用チェーン16を用いており、本発明では鋼板を抜き取った後に炉内に残った通板用チェーン16を利用する。
【0028】
通板用チェーン16に沿わせて撮像装置18を昇降させるようにすれば、撮像装置の横揺れ等を低減することが可能となり、より好ましい。このため、撮像装置18は通板用チェーン16を挿通する通板チェーン通し用シャックル19を備える(後述の
図5および
図5についての記載を参照方)。
【0029】
図4は、支柱およびガイドサポートの構造例を示す図である。図中、13は支柱、14はガイドサポートをそれぞれ表す。
図3でも示したように、支柱13は炉頂4aに設置して、ウインチワイヤー12の方向を変えるとともにガイドサポート14を支える。
【0030】
支柱13は、
図4に示すように先端にウインチワイヤーの方向を変える案内車(シーブ)を備え、ガイドサポート14を炉頂の開口部に配置すべくガイドサポート14を支えるように炉頂開口部近辺に配置している。
【0031】
そして、ガイドサポート14は、ウインチワイヤーをトップロールの直上に設けられている炉頂の開口部から直下の障害となる構造物(
図3の縦型焼鈍炉の場合、トップロール)を避けて炉内に送込むべく、くの字状の折れ曲がった形状を有している。このため、ガイドサポートの作成にあたっては、炉頂開口部の位置および口径、直下の障害となる構造物(
図3の場合、トップロール)と炉頂までの距離、直下の障害となる構造物(
図3の場合、トップロール)の大きさなど実際の適用対象により最適な形状が適宜決められるべきものである。
【0032】
また、ガイドサポートの曲がり部を反転させることによって、炉の同じ高さ位置で隣り合う点検対象(
図3の場合、ラジアントチューブ)を簡便に点検可能である。
【0033】
図5は、本発明で用いた撮像装置の構成例を示す図である。
図5(a)は構成を示す模式図、
図5(b)は炉内での写真を示している。図中、12はウインチワイヤー、16は通板チェーン、18は撮像装置、19は通板チェーン通し用シャックル、21は全方位カメラ、22はLEDライト、23はバッテリー、24はアクセスポイントアンテナをそれぞれ表す。
【0034】
ウインチワイヤー12に吊り下げられた撮像装置18は、魚眼レンズ(図示せず)を取付けた全方位カメラ21、炉内狭小部の照明装置としてのLEDライト22、各機器用のバッテリー23、撮影した画像を画像処理する画像処理装置に送信するアクセスポイントアンテナ24が架台には組み込まれ構成される。
【0035】
なお、鋼板の連続焼鈍ラインの縦型焼鈍炉では、前述のように通板チェーン16を利用すべく、撮像装置18の架台の両側には、通板用チェーン16を挿通する通板チェーン通し用シャックル19を設置し、通板チェーン16に沿わせて撮像装置18を昇降させる。これによって、より簡便に捩れなどによりブレのない画像を安定して撮ることができる。
【0036】
図6は、撮影した画像と補正後の画像の一例を示す図である。
図6(a)は、炉の最上部から全方位カメラで前面および背面ラジアントチューブ(RT)を広角撮影した補正前の画像であり、
図6(b)は、上から順にRTサポート部、RT全幅、背面RTについて画像歪取り補正を行った後の画像を示している。
【0037】
図3で示す撮像装置18で撮影した画像を、画像処理装置20のアンテナ(図示せず)に無線送信し、画像処理装置20に組み込んだ画像処理プログラムによってレンズの中心座標や曲率より画像歪取り補正を行っている。作業現場で用いる画像処理装置としては、可搬性の良いパーソナルコンピュータを用いるようにすればよい。
【0038】
また、同じ点検箇所についての補正前後の画像を、記録装置に保存するようにすれば、以前に記録した画像と新たに得た画像を比較することにより、ラジアントチューブの不具合の程度をより正確かつ確実に判断することができるし、これにより今後の劣化の進行具合も予測できる。なお、ラジアントチューブについての点検を主に説明しているが、これに限られるものでない。
【0039】
撮影から画像処理までの装置については、システムとして市販もされており、利用可能である。本発明でも特許文献1と同様に、画像処理システム商品名:CamLight(LOARANT)[光学系は、全方位カメラとして商品名:ARTCAM300ML(ARTRAY)、レンズとして商品名:FJ062K(オプトアート)]を、画像処理装置20および撮像装置18の一部として利用している。
【0040】
本発明を適用した鋼板の連続焼鈍ラインの縦型焼鈍炉内狭小部の点検処理は、上述の遠隔点検装置を用いて、次のステップを経て行われる。
図7は、鋼板の連続焼鈍ラインの縦型焼鈍炉内狭小部の遠隔点検方法における処理手順例を示す図である。
図7に基づいて、説明を行う。
【0041】
Step01:(通板用チェーンによる炉からの鋼板抜き)
縦型炉の内部のラジアントチューブへの高温気体供給を停止して、炉内温度が大気温度まで冷えた後、通板用チェーンを鋼板の先端または尾端に取り付けて炉内から鋼板を引き抜く。
【0042】
Step02:(ウインチワイヤーの炉内への繰出し)
ウインチワイヤーを、炉頂の開口部の周辺に設置した支柱と、この支柱に固定したガイドサポートを経由してトップロールを避けて炉内に送込み、炉床の開口部を経て炉外まで導く。
【0043】
Step03:(ウインチワイヤーと撮像装置との固定)
炉外にて撮像装置をウインチワイヤーに固定させて、炉内まで撮像装置を持ち上げて、通板チェーンを撮像装置の通板チェーン通し用シャックルに挿通して、撮像装置を通板チェーンに沿わせて昇降させるようにする。
【0044】
Step04:(撮像装置による炉内撮影)
ウインチの巻上げまたは巻下げを制御して、撮像装置を所定の炉内高さ位置まで移動させ停止した後に、撮像装置の全方位カメラにて焼鈍炉内の撮影を行う。この際、設計図またはそれまで点検履歴などから点検したいRTの高さ位置は、既知であることが多い。そこで、ウインチの巻上げまたは巻下げ位置を記憶しておき、撮像装置の記憶した位置への移動・停止を自動で行うようにウインチの駆動を制御すれば、素早く正確に撮像装置による撮影が可能である。
【0045】
Step05:(画像処理と点検判断)
撮影した画像を、画像処理装置に送信して、画像歪取り補正を行って、ラジアントチューブの割れ、曲がり等の歪みの有無を判断するとともに、割れ、歪みの大きさを定量化し、設備補修、部品交換等の要否について判断する。
【0046】
以上、鋼板の連続焼鈍ラインの縦型焼鈍炉内狭小部の遠隔点検手順を記載したが、他の縦型炉では、例えばStep01:(通板用チェーンによる炉からの鋼板抜き)など不要または実施不可能な手順がある場合には適宜省略、また反対に必要な手順がある場合には適宜追加すると良い。
【実施例】
【0047】
図1で示す縦型焼鈍炉を対象に、本発明を半年に1回の割合で行う修理のタイミングで適用したところ、特許文献1での処理時間に比べて2/3程度に時間短縮できるとともに、炉内での人の作業を行うことなく安全に、正確かつ詳細な点検を行うことが出来た。連続運転が求められる縦型焼鈍炉にあっては、修理のタイミングでの点検は重要であり、上記効果は実操業上非常に価値がある。
【符号の説明】
【0048】
1 ペイオフリール
2 ウェルダー
3 ルーパ
4 縦型焼鈍炉
4a 炉頂
4b 炉床
5 テンションリール
6a〜6c 作業者
7 ラジアントチューブ
8 命綱
11 ウインチ
12 ウインチワイヤー
13 支柱
14 ガイドサポート
15 トップロール
16 通板チェーン
17 ボトムロール
18 撮像装置
19 通板チェーン通し用シャックル
20 画像処理装置
21 全方位カメラ
22 LEDライト
23 バッテリー
24 アクセスポイントアンテナ