(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記暖機対象が、トランスミッションオイル、車室内に供給する空気、EGRクーラー、蓄電池の少なくとも2以上を含み、当該暖機対象の周囲を循環するように、それぞれ前記特定の搬送路と切替弁の切り替えで、連通又は閉鎖可能な暖機路が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の熱管理制御装置。
前記暖機対象として前記蓄電池を含み、前記蓄電池が、予め設定した暖機目標温度以下の場合は、最優先で前記蓄電池を暖機対象とすることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項記載の車両の熱管理制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の熱管理制御では、例えば、特許文献3では発熱した雰囲気自体をダクト(発熱源蓄熱ケース)に滞留させているにすぎず、断熱機能を用いたとしても、長時間の温度維持が困難となる。
【0012】
本発明は上記事実を考慮し、充電によって発生した熱の損失を抑制しつつ蓄熱することができ、必要な時期に、必要な量の熱を放出することができる車両の熱管理制御装置、熱管理制御プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、動力源として適用される電動機と、蓄電池を備え、前記電動機へ電力を供給するための電力供給手段と、外部電源との接続で、前記蓄電池を充電する充電装置と、充電時に前記充電装置から発生する熱を、特定の搬送路を流れる流体に熱交換する熱交換手段と、前記特定の搬送路の途中で化学的反応を利用して
前記流体から熱を回収して、蓄積する蓄熱手段と、車両の始動直後から、前記蓄熱手段により蓄積した熱を
前記流体へ放熱させ、前記流体を予め定めた複数の暖機対象へ選択的に供給する流体供給制御手段と、
前記流体の供給先として選択された暖気対象を暖気する温度となるように前記流体の流量を調整する第1調整手段と、を有する車両の熱管理制御装置である。
【0014】
本発明によれば、電力供給手段は蓄電池を備えており、電動機へ電力を供給する。蓄電池は、外部電源と接続される充電装置により充電される。
【0015】
ここで、充電装置による充電時に充電装置からは熱が発生する。熱交換手段は、充電時に充電装置から発生する熱を、特定の搬送路を流れる流体に熱交換する。蓄熱手段は、特定の搬送路の途中で化学的反応を利用して流体から熱を回収して、蓄積する。蓄熱時には、液体供給制御手段により充電装置に供給する冷媒流量を調整し、蓄熱可能な冷媒温度に調整する。
【0016】
流体供給制御手段では、車両の始動直後から、蓄熱手段により蓄積した熱を流体へ放熱させ、予め定めた複数の暖機対象へ選択的に供給する。
【0017】
このように本発明では、充電によって発生した熱の損失を抑制しつつ蓄熱することができ、必要な時期に、必要な量の熱を、予め定めた複数の暖機対象へ選択的に放出することができる。
【0018】
本発明において、前記蓄熱手段により前記流体から熱を回収する際に、当該流体の流量を調整する
第2調整手段を備えることを特徴とする。
【0019】
第2調整手段により流量を調整することで、蓄熱手段により前記流体から熱を回収する際に、暖機対象に対して適正な温度に制御することができる。
【0020】
本発明において、前記暖機対象が、トランスミッションオイル、車室内に供給する空気、EGRクーラー、蓄電池の少なくとも2以上を含み、当該暖機対象の周囲を循環するように、それぞれ前記特定の搬送路と切替弁の切り替えで、連通又は閉鎖可能な暖機路が設けられていることを特徴とする。
【0021】
暖機対象として、トランスミッションオイル、車室内に供給する空気、EGRクーラー、蓄電池の少なくとも2以上を含んでおり、それぞれの暖機対象の周囲を循環するように暖機路が設けられている。暖機路は、特定の搬送路と切替弁の切り替えで、連通又は閉鎖可能であり、流体供給制御手段は、切替弁の切り替え制御によって、流体を目的の暖機対象へ選択的に供給する。
【0022】
例えば、切替弁を独立して開閉制御可能であれば、1又は複数の暖機対象を選択することができる。
【0023】
本発明において、前記暖機対象には、それぞれ温度センサが取り付けられており、前記流体供給制御手段は、前記温度センサの検出結果に基づいて、暖機対象を選択することを特徴とする。
【0024】
暖機対象毎に暖機の要否を判断するため、温度センサを取り付ける。流体供給制御手段は、前記温度センサの検出結果に基づいて、暖機対象を選択することができる。
【0025】
本発明は、
動力源として適用される電動機と、蓄電池を備え、前記電動機へ電力を供給するための電力供給手段と、外部電源との接続で、前記蓄電池を充電する充電装置と、充電時に前記充電装置から発生する熱を、特定の搬送路を流れる流体に熱交換する熱交換手段と、前記特定の搬送路の途中で化学的反応を利用して前記流体から熱を回収して、蓄積する蓄熱手段と、車両の始動直後から、前記蓄熱手段により蓄積した熱を前記流体へ放熱させ、前記流体を予め定めた複数の暖機対象へ選択的に供給する流体供給制御手段とを有し、前記暖機対象のそれぞれに取り付けられた温度センサで検出した温度を、予め設定した各暖機対象の車両の燃費改善感度マップと照合し、暖機対象の優先順位を判定することを特徴とする。
【0026】
同じ投入熱量に対する、各暖機対象への燃費改善感度マップを予め設定する。この燃費改善感度マップにより、同等熱量で最大の燃費改善効果を期待することができる。
【0027】
燃費改善感度マップは、理論上の特性曲線であってもよいし、経験的学習した特性曲線であってもよい。
【0028】
本発明において、前記暖機対象として前記蓄電池を含み、前記蓄電池が、予め設定した暖機目標温度以下の場合は、最優先で前記蓄電池を暖機対象とすることを特徴とする。
【0029】
充電時の損失としては、充電装置で発生する損失に加え、蓄電池の内部抵抗により発生する熱が存在する。蓄電池の内部抵抗は、蓄電池温度の上昇と共に低下するため、蓄電池への熱供給を最優先とすることで、充電効率を向上させることができる。
【0030】
本発明は、コンピュータを、熱管理制御装置の各手段として機能させる、熱管理制御プログラムである。
【発明の効果】
【0031】
以上説明した如く本発明では、充電によって発生した熱の損失を抑制しつつ蓄熱することができ、必要な時期に、必要な量の熱を放出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1(A)及び(B)は、本実施の形態に係る車両10の概略図が示されている。本実施の形態の車両10は、プラグインハイブリッド車としての機能を有する。
【0034】
車両10は、動力源として、電動機12(以下、「モータ12」という)と、内燃機関14(以下、「エンジン14」という)を備えている。
【0035】
モータ12は、車両10に搭載された蓄電池16に蓄積された電力が供給されることで駆動し、図示しない駆動力伝達系を介して車軸10Aに駆動力を伝達する。
【0036】
車両10は、充電装置18を備えている。充電装置18は、蓄電池16を充電する制御機器であり、例えば、家庭用電源設備20(
図1(B)参照)と接続することで、電力を車両10へ取り込み、蓄電池16に充電する。
【0037】
蓄電池16に充電された電力は、パワーコントロールユニット22(以下、「PCU22」という)によってモータ12の駆動電力に変換される。
【0038】
すなわち、PCU22は、蓄電池16の電圧をシステム最大電圧まで昇圧する昇圧コンバータと、直流電圧を交流電圧に変換し動力源となるモータ12を駆動するインバータを備える。
【0039】
なお、蓄電池16は、例えば、モータ12から、車両10の制動時の回生エネルギーを受けたり、エンジン14の駆動により発電する発電機(ダイナモ)からの発電エネルギーを受けて、充電することも可能である。
【0040】
また、車両10の燃料タンク24には、給油所26(
図1(B)参照)から燃料が貯留され、図示しない燃料噴射装置によってエンジンへ供給され、所定の空燃比で空気と混合されて、燃焼室で燃焼させることでピストンの往復運動を回転運動に変換し、図示しない駆動力伝達系を介して車軸に駆動力を伝達する。
【0041】
車両10は、ラジエータ28を備えている。ラジエータ28は、冷却材(例えば冷却水)から熱を放熱する熱交換器であり、エンジン14の各部に冷却材を循環させる。
【0042】
また、エンジン14には、排気再循環システム30(以下、「EGR/C30」という)が設けられている。
【0043】
さらに、車両10は、モータ12及びエンジン14の動力源を、車軸10Aへ伝達する動力伝達系として、トランスアクスル装置32(T/A32という)を備える。T/A32は、図示しない動力分割用歯車機構を含む。
【0044】
動力分割用歯車機構は、遊星歯車機構により形成され、エンジン14からの動力を車軸10A側に伝達するか、又は、モータ12からの動力を車軸10A側に伝達するか、又は、モータ12及びエンジン14からの動力を車軸10A側に伝達するかを切り替える。
【0045】
ここで、本発明の実施の形態における、モータ12及びエンジン14による動力システムにおいて、上記したエンジン14、蓄電池16、PCU22、ラジエータ28、EGR/C30、及びT/A32の各機器は、動作効率を向上させるために暖機する対象として選択される。
【0046】
本実施の形態では、主として、蓄電池16に充電しているときに発生する熱を利用して、前述した暖機対象に対して選択的に暖機を実行するようにしている。
【0047】
図2及び
図3は、暖機対象を暖機するために設けられ、各暖機対象の機器の周囲等を循環させる流体の配管路、及び、配管路を流動する流体を利用した蓄熱、暖機対象の選択、及び流体流量を制御するための暖機システムの概略図である。なお、詳細は後述するが、
図2は蓄熱時の流体の流動状態を示し、
図3は暖機対象への流体の流動状態を示し、
図4は蓄熱が終了した段階で充電が終了していない場合に充電装置18の発熱を直接暖機対象へと供給するああ居の流体の流動状態を示す。
【0048】
本実施の形態の暖機システムでは、熱の発生源は、主として充電装置18であり、発生した熱を化学蓄熱反応装置36によって蓄熱するようにしている。
【0050】
図4に示される如く、化学蓄熱反応装置36は、配管路(後述する第1配管34A)を流れる流体から熱を回収し、化学的反応を利用して蓄熱する蓄熱器38と、蓄熱器38の化学的反応のための冷媒を吸着し、保存する吸着器40とを備えている。
【0051】
蓄熱の方法には、物質の温度変化を利用した顕熱蓄熱、物質の相変化を利用した潜熱蓄熱等があるが、いずれも蓄熱時間が長くなると放熱によるエネルギー損失が大きくなるため、本実施の形態では化学蓄熱を選択している。化学蓄熱は、体積当りの蓄熱量が大きく、長期間に亘る蓄熱が可能である点で優れている。
【0052】
蓄熱剤としては、主に、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素又は遷移金属元素のうち少なくとも一種類と塩素との化合物とすることが好適である。アルカリ金属元素には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びフランシウム(Fr)が挙げられる。その金属塩化物(アルカリ金属塩化物)には、LiCl、NaCl、KCl等が挙げられる。また、アルカリ土類金属元素には、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(BA)及びラジウム(Ra)が挙げられる。その金属塩化物(アルカリ土類金属塩化物)には、MgCl
2、CaCl
2、SrCl
2等が挙げられる。このうち、カルシウム塩化物(CaCl
2)及びストロチウム塩化物(SrCl
2)がより好適である。また、遷移金属元素には多くの種類があるが、蓄熱に適した遷移金属塩化物としては、MnCl
2、FeCl
2、CoCl
2、NiCl
2等が挙げられる。
【0053】
吸着材としては、冷媒を吸着できる活性炭等を適用することが好適である。吸着材を筐体に収納することにより吸着器40が構成される。なお、本実施の形態では、冷媒として氷点下以下でも高い蒸気圧により輸送が期待できるアンモニア(NH
3)を適用している。
【0054】
蓄熱器38と吸着器40とは、連通管42によって連通され、例えば、冷媒としてのアンモニアが行き来することが可能となっている。連通管42には、開閉弁42Aが取り付けられており、開閉弁42Aが開放状態のとき、蓄熱器38と吸着器40との圧力差で、アンモニアの流動方向が変わる。
【0055】
図5(A)は、蓄熱時であり、蓄熱器38が、配管路34の一部である第1配管34Aに流れる流体から温度Tc(>To)以上の熱を蓄熱している状態で、圧力は温度Tcに対するアンモニアの蒸気圧Pc(
図5(C)参照、Pc>Po))、活性炭・アンモニア(NH3)吸着量は0.236g/cc以上となっており(
図5(D)参照)、圧力差でアンモニアは蓄熱器38から吸着器40へ移動する。
【0056】
アンモニアの移動が終了すると、開閉弁42Aを閉止状態とすることで、吸着器40において、圧力が高い状態で蓄熱状態が維持される。
【0057】
一方、化学蓄熱反応装置36から、配管路34を流れる流体へ放熱する場合は、連通管42の開閉弁42Aを開放することで、圧力差でアンモニアが吸着器40から蓄熱器38へ移動し、蓄熱器38から放熱し、流体との間で熱交換が行われ、流体は、暖機対象へ案内される。蓄熱終了後の判定には、化学蓄熱反応装置36に設置された圧力センサ(図示省略)により判定する。
【0058】
図2、
図3及び
図4に示される如く、充電装置18と化学蓄熱反応装置36の蓄熱器38との間には、第1配管34A及び第2配管34Bが設けられている。
【0059】
第2配管34Bには、第1四方弁44が介在されている。第1四方弁44は、4個のポートを備えており、各ポートの内、2つのポートは第2配管34Bを介して充電装置18及び蓄熱器38と連通するようになっている。
【0060】
また、第1四方弁44の各ポートの内、残りの2つのポートは、第3配管34Dを介して循環配管34Cと連通するようになっている。
【0061】
循環配管34Cと第1四方弁44との間を連通する一方の配管(第3配管34D)には、第1ポンプ46及び三方弁48が介在されている。
【0062】
第1ポンプ46は、第2配管34Bを流動する流体を循環配管34Cへ予め定めた流量で送り出す。
【0063】
三方弁48は、三方を選択的に連通させる(
図2、
図3及び
図4の矢印a、矢印b、矢印c参照)。
【0064】
循環配管34Cは、暖機対象へ流体を送り込み、かつ取り込むための循環路が形成されており、本実施の形態では、暖機対象に対して、個別に流体を送り込むための配管34E、34F、34G、34Hが形成されており、それぞれにバルブ(第1バルブ50、第2バルブ52、第3バルブ54、第4バルブ56)が取り付けられている。
【0065】
本実施の形態では、第1バルブ50が開放すると、PCU22へ流体が送り込まれる。なお、PCU22の下流側には、第2ポンプ58が設けられ、PCU22に送り込まれた流体を、さらにT/A32及びラジエータ28へ送り出す構成となっている。
【0066】
また、第2バルブ52が開放すると蓄電池16へ流体が送り込まれ、第3バルブ54が開放するとエンジン14へ流体が送り込まれ、第4バルブ56が開放するとEGR/C30へ流体が送り込まれる。
【0067】
ここで、本実施の形態に係る暖機システムは、暖機制御装置60を備えている。
【0068】
図6に示される如く、暖機制御装置60は、CPU62、RAM64、ROM66、入出力ポート(I/O)68及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス70で構成されたマイクロコンピュータ60Aを備えている。
【0069】
I/O68には、出力デバイスとして、ドライバ72を介して化学蓄熱反応装置36の開閉弁42A、ドライバ74を介して第1四方弁44、ドライバ76を介して第1ポンプ46、ドライバ78を介して三方弁48、ドライバ80を介して第2ポンプ58、ドライバ82を介して第1バルブ50、ドライバ84を介して第2バルブ52、ドライバ86を介して第3バルブ54、及びドライバ88を介して第4バルブ56が接続されている。
【0070】
また、I/O68には、入力デバイスとして、暖機対象であるエンジン14、蓄電池16、PCU22、ラジエータ28、EGR/C30、及びT/A32の各機器に取り付けられ、それぞれの機器の温度を検出する温度センサ(エンジン温度センサ12S、蓄電池温度センサ16S、PCU温度センサ22S、ラジエータ温度センサ28S、EGR/C温度センサ30S、およびT/A温度センサ32S)が接続されている。
【0071】
図2、
図3及び
図4に示される如く、第1ポンプ46(第2ポンプ58を含む)は、配管路34を流れる流体の流量を制御する。流量制御は、充電装置18の充電中に発生する熱を蓄熱器38へ蓄熱するときの温度を調整する手段、並びに、暖機対象を暖機するときの温度を調整する手段として適用可能である。
【0072】
特に、本実施の形態において、充電装置18から発生する熱では、暖機対象を暖機する温度には不十分な場合があるため、流量制御によって流体の温度を調整し、蓄熱器38に送ることが好ましい。
【0074】
以下に、流体の流量を調整することで、充電装置18の充電中に発生する熱を蓄熱器38へ蓄熱するときの温度の調整、並びに、暖機対象を暖機する温度の調整が可能であることを立証する。
【0075】
図7に示される如く、例えば、配管90における、発熱体92の上流側の流体の温度をTin、発熱体92の下流側の流体の温度をToutとすると、TinとToutとの関係は、以下のようになる。
【0076】
Q=αA×(Th−Tin)=ρ×CL×V×(Tout−Tin)・・・(1)
【0077】
ここで、「Q」は化学蓄熱反応装置36(
図2、
図3及び
図4参照)で蓄熱した発熱体のQ値(熱損失係数)であり、「Th」は化学蓄熱反応装置36で蓄熱した発熱体の温度であり、「α」は熱伝達率であり、「A」は伝熱面積であり、「ρ」は流体(冷媒)密度であり、「CL」は流体(冷媒)比熱であり、「V」は流体(冷媒)流量である。
【0078】
ここで、流体流量は、例えば、第1ポンプ46等の調整で制御可能である。
【0079】
また、TinとToutを測定しておくことで、Q値が決定できる。
【0080】
Thも測定可能であり、αは同定可能となる。
【0081】
上記状態が確保されているときに、流量Vを変化させることで、Toutを制御することができる。
【0082】
また、αは、一般に流量Vの関数であり、Vを変化させることで、Thを制御することが可能である。
【0083】
本実施の形態の暖機制御装置60では、以下の制御を実行する。
【0084】
第1の制御は、蓄電池16への充電を開始するとき、蓄電池16の蓄電池温度センサS16Sで検出し、当該検出温度が予め設定したしきい値以下の場合には、第2バルブ52を開放して、充電装置18で発熱した流体を蓄電池16へ送る(充電能力向上制御)。
【0085】
第2の制御は、蓄電池16への充電を開始するとき、蓄電池16の蓄電池温度センサS16Sで検出し、当該検出温度が予め設定したしきい値を超えている場合には、化学蓄熱反応装置36による化学蓄熱を実行する(蓄熱保存制御)。
【0086】
第3の制御は、化学蓄熱反応装置36に蓄積した熱を、それぞれの暖機対象から検出した温度に基づき、流体の流路を決定し、選択的に暖機する(暖機制御)。
【0087】
以下に本実施の形態の作用を、
図7のフローチャートに従い説明する。
【0088】
図8は、充電開始時に起動する暖機制御の流れを示すフローチャートである。
【0089】
ステップ100では、蓄電池16の温度を蓄電池温度センサ16Sによって検出し、次いで、ステップ102へ移行して、検出した蓄電池16の温度が、予め定めたしきい値以下か否かを判断する。しきい値は、例えば、蓄電池16の充電能力が不良と判定される温度であり、当該温度以下では、充電に時間がかかるといった不具合が生じる可能性がある。
【0090】
ステップ102で肯定判定、すなわち、検出した蓄電池16の温度がしきい値以下の場合は、ステップ104へ移行して、第1四方弁44を放熱モード側に切り替え(
図3の状態参照)、次いで、ステップ106へ移行して三方弁48を放熱モードに切り替えて(
図3の矢印a参照)、ステップ108へ移行する。
【0091】
ステップ108では、蓄電池暖機用の第2バルブ52を開放し、ステップ110へ移行する。ステップ110では、第1ポンプ46の駆動を開始して、ステップ100へ戻る。
【0092】
なお、
図3では、第1バルブ50、第2バルブ52、第3バルブ54、及び第4バルブ56の全てを開放した状態を示しているが、前述のステップ108では、第1バルブ50、第2バルブ52、第3バルブ54、及び第4バルブ56の内、第2バルブ52のみを開放することになる。
【0093】
これにより、充電中に発熱する充電装置18の熱を、流体を介してリアルタイムに蓄電池16へ供給することができ、蓄電池16の温度を、迅速にしきい値を超える温度に昇温することができる。
【0094】
充電開始、又は流体による蓄電池16の昇温中において、ステップ102で否定判定、すなわち、検出した蓄電池16の温度がしきい値を超えている(或いは、超えた)場合は、蓄電池16の温度は適正であり、ステップ112へ移行する。
【0095】
ステップ112では、第1ポンプ46が作動中であるか否かを判断する。ステップ112で肯定判定された場合は、蓄電池16の昇温を実行したため、ステップ114へ移行して、第1ポンプ46の駆動を停止して、ステップ116へ移行する。また、ステップ112で否定判定された場合は、ステップ116へ移行する。
【0096】
ステップ116では、第1四方弁44を蓄熱モード側に切り替え(
図2の状態参照)、次いで、ステップ118へ移行して三方弁48を蓄熱モードに切り替えて(
図2の矢印b参照)、ステップ120へ移行する。
【0097】
ステップ120では、化学蓄熱反応装置36の連通管42の開閉弁42Aを開放し、次いでステップ121へ移行して、第1ポンプ46の駆動を開始して、ステップ122へ移行する。
【0098】
この第1ポンプ46の駆動により、流体は、
図2の管路内に示した太線の点線矢印のように流動する。
【0099】
このとき、化学蓄熱反応装置36の蓄熱器38では、流体から熱を受け、当該熱により蓄熱器38から離脱したアンモニアが、開閉弁42Aが開放中の連通管42を介して、圧力差によって吸着器40へ移行し、吸着器40に吸着されていく。
【0100】
ここで、第1ポンプ46の駆動を制御することで、流体の流量を調整することができる。すなわち、充電装置18から発生する熱では、化学蓄熱反応装置36で蓄熱する温度には不十分な場合がある。そこで、流量制御によって流体の温度を調整し、蓄熱器38に送ることで、化学蓄熱反応装置36で蓄熱することができる。具体的には、発熱体92の下流側の流体の温度Toutが、流体の温度化学蓄熱反応装置36で蓄熱するために必要な予め定められた温度(例えば、蓄熱器38がアンモニアを脱離するのに必要な温度)以上となるように、上記(1)式に従って、流体の流量Vを算出し、算出された流体の流量Vとなるように、第1ポンプ46の駆動を制御する。
【0101】
ステップ122では、充電が完了したか否かを判断し、否定判定された場合は、ステップ124へ移行して、化学蓄熱反応装置36での蓄熱が完了したか否かを判断する。ステップ124で否定判定された場合は、ステップ122へ戻る。
【0102】
また、ステップ122又はステップ124の何れかで肯定判定された場合は、ステップ126へ移行する。
【0103】
ステップ126では、化学蓄熱反応装置36の連通管42の開閉弁42Aを閉止し、ステップ128へ移行する。
【0104】
ステップ128では、第1四方弁44を放熱モード側に切り替え(
図3の状態参照)、次いで、ステップ130へ移行して三方弁48を放熱モードに切り替えて(
図3の矢印a参照)、ステップ132へ移行する。
【0105】
ステップ132では、化学蓄熱反応装置36の連通管42の開閉弁42Aを開放する。これにより、暖機対象へ流体が流動し、暖機が実行される。
【0106】
次のステップ134では、暖機対象を少なくとも1つ選択し、対応するバルブを開放する。流体は、
図3の管路内に示した太線の点線矢印のように流動する。
【0107】
なお、
図3では、第1バルブ50、第2バルブ52、第3バルブ54、及び第4バルブ56の全てを開放した状態を示しているが、ステップ132では、第1バルブ50、第2バルブ52、第3バルブ54、及び第4バルブ56の内、選択したバルブを開放することになる。
【0108】
なお、選択する基準は、各暖機対象に設けた温度センサ((エンジン温度センサ12S、蓄電池温度センサ16S、PCU温度センサ22S、ラジエータ温度センサ28S、EGR/C温度センサ30S、およびT/A温度センサ32S)による検出温度に基づいて選択することが好ましい。
【0109】
各暖機対象には、それぞれ固有の適正温度があり、検出した温度が適正温度から逸脱している場合に選択し、流体を供給することで、暖機を行う。なお、それぞれの暖機対象の温度は、適宜検出し、適正温度になった場合には、個別にバルブを閉じることが好ましい。なお、予め定めた優先順で暖機対象を選択してもよい。
【0110】
次のステップ136では、全ての暖機対象の暖機が終了したか否かを判断し、否定判定された場合は、ステップ134へ戻る。また、ステップ136で肯定判定された場合は、ステップ138で化学蓄熱反応装置36の連通管42の開閉弁42Aを閉止し、次いで、ステップ140へ移行して第1ポンプ46の駆動を停止し、このルーチンは終了する。
【0111】
また、
図9のフローチャートでは示さなかったが、
図4に示される如く、第1四方弁44を蓄熱モード及び放熱モードとは異なる状態に切り替え、三方弁48を
図4の矢印aが開放する状態に制御することで、直接暖機モードを確立することができる。
【0112】
さらに、本実施の形態において、四方弁(特に、第1の四方弁44)により流動を変更するのは、特に、充電装置18から暖機対象に熱を供給する場合、充電装置18→蓄熱説器38→暖機対象という経路を通ると、蓄熱器38の熱容量分、熱がロスするため、第1四方弁44の切り替えにより、充電装置18→暖機対象という経路で、直接供給することで(
図4の直接暖機モード参照)、暖機効率を向上することができるからである。
【0113】
以上説明したように、本実施の形態では、充電中に基本的には、化学蓄熱反応装置36によって充電時に発生する熱を蓄熱しておくことができる。充電完了後(例えば、暖機運転中等)に必要な暖機対象に流体を送り、暖機を実行することができる。
【0114】
一方、蓄電池16は、温度が低いと充電能力に支障をきたす場合があるため、充電中に発生した熱を流体を介して、リアルタイムに供給することで、充電能力を低下させることなく、充電することができる。
【0116】
なお、本実施の形態では、
図2、
図3及び
図4に示すように、エンジン14とEGR/C30とをそれぞれ別個の暖機対象としたが、エンジン14及びEGR/C30はエンジン冷却系の構成要素でもあり、相互関係を有する。そこで、本実施の形態の変形例として、
図9に、エンジン冷却系の構成要素としての機能と、本発明の暖機対象としての機能を両立することを示した。
【0117】
図9(A)はエンジンを舵機対象とした場合のバルブ状態及び流体の循環を示した図であり、
図9(B)はEGR/C30を暖機対象とした場合のバルブ状態及び流体の循環を示した図であり、
図9(C)は通常のエンジン冷却系として機能する場合のバルブ状態及び流体の循環を示した図である。
【0118】
なお、本実施の形態では、車両10としてプラグインハイブリッド車を例にとり説明したが、本実施の形態に係る暖機制御は、内燃機関(エンジン等)を搭載しない、或いは、内燃機関(エンジン等)を搭載していても、あくまでも緊急用動力源として適用する電気自動車にも適用可能である。例えば、本実施の形態の車両10に搭載した、EGR/C30、昇圧コンバータ、動力分割歯車機構(優先歯車機構)等は、本発明に必須の構成ではない。