特許第6624123号(P6624123)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624123
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04225 20160101AFI20191216BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20191216BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20191216BHJP
【FI】
   H01M8/04225
   H01M8/00 A
   H01M8/04701
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-42913(P2017-42913)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-147784(P2018-147784A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2018年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明石 照久
(72)【発明者】
【氏名】船橋 博文
(72)【発明者】
【氏名】松尾 秀仁
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0037249(US,A1)
【文献】 特開2006−108104(JP,A)
【文献】 特開2003−272662(JP,A)
【文献】 特開2004−171881(JP,A)
【文献】 特開2007−103031(JP,A)
【文献】 特開2006−278074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04−8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板に設けられた第1燃料電池と、
第2基板に設けられており、第1燃料電池よりも発電能力が大きい第2燃料電池と、
第1燃料電池に設けられた第1ヒータと、
第2燃料電池に設けられた第2ヒータと、
バッテリを備えており、
第1ヒータが、バッテリから供給される電力によって第1燃料電池を加熱し、
第2ヒータが、第1燃料電池から供給される電力によって第2燃料電池を加熱し、
第2燃料電池での発電を開始すると、第1燃料電池での発電を終了する、燃料電池システム。
【請求項2】
第1基板と第2基板がこれらの基板とは異なる第3基板上に設けられている、請求項1の燃料電池システム。
【請求項3】
第1基板と第2基板が継ぎ目なく連続している、請求項1または2の燃料電池システム。
【請求項4】
第1ヒータが、第1基板上に設けられており、
第2ヒータが、第2基板上に設けられている、請求項1から3の何れか一項の燃料電池システム。
【請求項5】
第1ヒータが第1燃料電池を加熱する際に、第1燃料電池からの燃料ガスおよび/または空気の排出を禁止する、請求項1から4の何れか一項の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池と、燃料電池に設けられたヒータと、バッテリを備えており、ヒータが、バッテリから供給される電力によって燃料電池を加熱する燃料電池システムが開示されている。この燃料電池システムでは、燃料電池を起動する際に、ヒータによる加熱によって、燃料電池の温度を所定の反応温度まで上昇させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−111307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電能力が大きい燃料電池は、それだけサイズが大きくなるため、燃料電池自体の熱容量も大きくなる。このため、燃料電池を起動する際に、発電反応が開始する温度まで燃料電池を加熱するのに要する時間が長くなる。特に、バッテリからヒータへの通電によって燃料電池を加熱する形態では、バッテリが小型のものである場合、ヒータの加熱能力をそれほど大きくできないため、燃料電池の温度上昇に長時間を要し、燃料電池を速やかに起動することが困難である。
【0005】
本明細書では、上記の課題を解決する技術を提供する。本明細書では、発電能力が大きい燃料電池を、短時間で起動することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は燃料電池システムを開示する。燃料電池システムは、第1基板に設けられた第1燃料電池と、第2基板に設けられており、第1燃料電池よりも発電能力が大きい第2燃料電池と、第1燃料電池に設けられた第1ヒータと、第2燃料電池に設けられた第2ヒータと、バッテリを備えている。燃料電池システムでは、第1ヒータが、バッテリから供給される電力によって第1燃料電池を加熱し、第2ヒータが、第1燃料電池から供給される電力によって第2燃料電池を加熱する。
【0007】
上記の燃料電池システムを起動する際には、まずバッテリから第1ヒータへの通電によって、発電能力が小さい第1燃料電池を加熱する。バッテリは小型のものであってよく、例えば乾電池であってもよい。補機である第1燃料電池は、発電能力が小さく、従ってサイズが小型であり、熱容量も小さい。従って、バッテリからの電力によって駆動する第1ヒータの加熱能力がそれほど大きくなくても、補機である第1燃料電池は速やかに温度上昇して、第1燃料電池での発電は速やかに開始される。補機である第1燃料電池が発電を開始すると、第1燃料電池から第2ヒータへの通電によって、発電能力が大きい第2燃料電池が加熱される。主機である第2燃料電池は、発電能力が大きく、従ってサイズが大型であり、熱容量も大きい。しかしながら、第2ヒータを、バッテリからの電力ではなく、補機である第1燃料電池からの電力によって駆動することで、第2ヒータの加熱能力を大きくすることができる。これにより、主機である第2燃料電池を速やかに温度上昇させて、第2燃料電池の発電を速やかに開始させることができる。上記の燃料電池システムによれば、発電能力が大きい燃料電池を、短時間で起動することができる。
【0008】
上記の燃料電池システムでは、第1基板と第2基板がこれらの基板とは異なる第3基板上に設けられていてもよい。
【0009】
上記の燃料電池システムでは、第2燃料電池を加熱する際に、第1燃料電池からの電力を用いた第2ヒータによる加熱に加えて、第1燃料電池が発電に伴って生成する熱が、第1基板から第3基板を介して第2基板へ伝熱することによっても、第2燃料電池が加熱される。このような構成とすることによって、第2燃料電池をさらに速やかに起動することができる。
【0010】
上記の燃料電池システムでは、第1基板と第2基板が継ぎ目なく連続していてもよい。
【0011】
上記の燃料電池システムでは、第2燃料電池を加熱する際に、第1燃料電池からの電力を用いた第2ヒータによる加熱に加えて、第1燃料電池が発電に伴って生成する熱が、第1基板から第2基板へ直接的に伝熱することによっても、第2燃料電池が加熱される。このような構成とすることによって、第2燃料電池をさらに速やかに起動することができる。
【0012】
上記の燃料電池システムでは、第1ヒータが、第1基板上に設けられていてもよく、第2ヒータが、第2基板上に設けられていてもよい。
【0013】
上記の燃料電池システムによれば、第1燃料電池を加熱する第1ヒータと、第2燃料電池を加熱する第2ヒータを、簡素な構成によって実現することができる。
【0014】
上記の燃料電池システムは、第1ヒータが第1燃料電池を加熱する際に、第1燃料電池からの燃料ガスおよび/または空気の排出を禁止してもよい。
【0015】
上記の燃料電池システムによれば、第1燃料電池を起動するために第1ヒータによって第1燃料電池を加熱している間、燃料ガスや空気の排出によって第1燃料電池から放熱してしまうことを抑制することができる。これによって第1燃料電池を速やかに温度上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の燃料電池システム2のブロック図である。
図2】実施例1の第1燃料電池4および第2燃料電池14の外観を模式的に示す斜視図である。
図3図2のIII−III線で見た断面図である。
図4】実施例1の第1燃料反応経路12および第2燃料反応経路20の形状を示す平面図である。
図5】実施例2の燃料電池システム82のブロック図である。
図6】実施例1の燃料電池システム2および実施例2の燃料電池システム82の用途の例を示す図である。
図7】実施例1の燃料電池システム2および実施例2の燃料電池システム82の用途の別の例を示す図である。
図8】実施例1の燃料電池システム2および実施例2の燃料電池システム82の用途のさらに別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例1)
図1は、本実施例の燃料電池システム2の構成を模式的に示している。燃料電池システム2は、空気中の酸素と、燃料ガス中の水素を反応させて、電気と熱と水蒸気を生成する。
【0018】
燃料電池システム2は、補機である第1燃料電池4と、第1燃料電池4に設けられ、第1燃料電池4を500−700℃に加熱する第1ヒータ6と、第1ヒータ6に電力を供給する小型のバッテリ8と、第1燃料電池4内で空気が流れる第1空気反応経路10と、第1燃料電池4内で燃料ガスが流れる第1燃料反応経路12を備えている。第1燃料電池4は、固体酸化物型燃料電池(SOFC)であって、第1空気反応経路10内の空気中の酸素と、第1燃料反応経路12内の燃料ガス中の水素の化学反応によって、電気と熱と水蒸気を生成する。バッテリ8は、可搬性のある乾電池である。
【0019】
燃料電池システム2は、主機である第2燃料電池14と、第2燃料電池14に設けられ、第2燃料電池14を500−700℃に加熱する第2ヒータ16と、第2燃料電池14内で空気が流れる第2空気反応経路18と、第2燃料電池14内で燃料ガスが流れる第2燃料反応経路20を備えている。第2燃料電池14は、固体酸化物型燃料電池(SOFC)であって、第2空気反応経路18内の空気中の酸素と、第2燃料反応経路20内の燃料ガス中の水素の化学反応によって、電気と熱と水蒸気を生成する。主機である第2燃料電池14は、補機である第1燃料電池4よりも大型の燃料電池であって、第1燃料電池4よりも大きな発電能力を有する。第2ヒータ16には、補機である第1燃料電池4で発電した電力が供給される。主機である第2燃料電池14が発電した電力は、対象負荷Lに供給される。
【0020】
燃料電池システム2において、第1燃料電池4と、第1ヒータ6と、第1空気反応経路10と、第1燃料反応経路12とは、第1基板25に設けられている。また、第2燃料電池14と、第2ヒータ16と、第2空気反応経路18と、第2燃料反応経路20とは、第2基板27に設けられている。そして、第1基板25と第2基板27は、基板23の上に設けられている。すなわち、本実施例の燃料電池システム2では、第1燃料電池4と第2燃料電池14が同一の基板23に設けられているということが言える。さらに、本実施例の燃料電池システム2では、第1燃料電池4が設けられた第1基板25と、第2燃料電池14が設けられた第2基板27とを、継ぎ目なく連続して形成して基板23を構成してもよい。逆に、基板23を設けずに、第1基板25と第2基板27とを分離して形成してもよい。
【0021】
燃料電池システム2は、燃料ガスとして水素が充填された水素カートリッジ21と、燃料ガスの供給先を第1燃料電池4と第2燃料電池14の間で切り換える三方弁22と、水素カートリッジ21から三方弁22に燃料ガスを供給する燃料供給経路24と、燃料供給経路24に設けられた減圧弁26と、三方弁22から第1燃料電池4の第1燃料反応経路12へ燃料ガスを供給する第1燃料供給経路28と、第1燃料電池4の第1燃料反応経路12から燃料電池システム2の外部に反応後の燃料ガスを排出する第1燃料排出経路30と、第1燃料排出経路30に設けられた封止弁32と、三方弁22から第2燃料電池14の第2燃料反応経路20へ燃料ガスを供給する第2燃料供給経路34と、反応後の燃料ガスを水素と水蒸気に分離する燃料回収器36と、第2燃料電池14の第2燃料反応経路20から燃料回収器36に反応後の燃料ガスを排出する第2燃料排出経路38と、第2燃料排出経路38に設けられた封止弁40と、燃料回収器36で分離した水素を燃料ガスとして減圧弁26よりも下流側の燃料供給経路24に供給する燃料回収経路42と、燃料回収器36で分離した水蒸気を燃料電池システム2の外部に排出する水蒸気排出経路44を備えている。
【0022】
燃料電池システム2は、燃料電池システム2の外部から第1燃料電池4の第1空気反応経路10に空気を供給する第1空気供給経路46と、第1空気供給経路46に設けられた開閉弁48と、第1燃料電池4の第1空気反応経路10から燃料電池システム2の外部に反応後の空気を排出する第1空気排出経路50と、第1空気排出経路50に設けられた封止弁52と、燃料電池システム2の外部から第2燃料電池14の第2空気反応経路18に空気を供給する第2空気供給経路54と、第2空気供給経路54に設けられた開閉弁56と、第2燃料電池14の第2空気反応経路18から燃料電池システム2の外部に反応後の空気を排出する第2空気排出経路58と、第2空気排出経路58に設けられた封止弁60を備えている。
【0023】
燃料電池システム2を起動する際には、三方弁22を第1燃料電池4側に切り換えた状態で、減圧弁26を開く。そして、燃料ガスが第1燃料電池4の第1燃料反応経路12に充満したところで、封止弁32を閉じるとともに、減圧弁26を閉じる。また、開閉弁48を開き、空気が第1燃料電池4の第1空気反応経路10に充満したところで、封止弁52を閉じるとともに、開閉弁48を閉じる。そして、バッテリ8から第1ヒータ6への通電を開始し、第1ヒータ6による第1燃料電池4の加熱を開始する。本実施例の燃料電池システム2では、第1ヒータ6が第1燃料電池4を加熱している間、減圧弁26、封止弁32が閉じられているので、第1燃料電池4への燃料ガスの流入および第1燃料電池4からの燃料ガスの流出が禁止されている。また、本実施例の燃料電池システム2では、第1ヒータ6が第1燃料電池4を加熱している間、開閉弁48、封止弁52が閉じられているので、第1燃料電池4への空気の流入および第1燃料電池4からの空気の流出が禁止されている。これによって、第1燃料電池4からの燃料ガスや空気を介した放熱が抑制され、第1燃料電池4を速やかに温度上昇させることができる。
【0024】
第1ヒータ6による加熱によって、第1燃料電池4が所定の反応温度、例えば600℃となると、第1燃料電池4において、第1空気反応経路10内の空気中の酸素と、第1燃料反応経路12内の燃料ガス中の水素の化学反応によって、発電が開始される。酸素と水素の化学反応は発熱反応でもあるので、発電が開始した後は、第1ヒータ6による加熱をオフにしても、第1燃料電池4は高温に維持されて、発電は継続される。その後、封止弁32や封止弁52を開いて、第1燃料電池4において反応に寄与しなかったガスや反応で発生した水蒸気を燃料電池システム2の外部に排出するとともに、減圧弁26や開閉弁48を開いて、第1燃料電池4内に燃料ガスと空気を再び供給する。これを繰り返すことで、第1燃料電池4による発電が継続される。
【0025】
第1燃料電池4が発電した電力は、第2燃料電池14の第2ヒータ16に供給される。第1燃料電池4が発電している間、第2燃料電池14は第2ヒータ16により加熱される。また、第1燃料電池4と第2燃料電池14は同一の基板23に設けられているので、第1燃料電池4の発電に伴って発生した熱が、第2燃料電池14に伝熱することによっても、第2燃料電池14は加熱される。
【0026】
上記のように、第1燃料電池4が発電を行うことで、第2燃料電池14の温度が上昇し、第2燃料電池14が所定の反応温度、例えば600℃になると、燃料電池システム2は、第1燃料電池4での発電を終了して、第2燃料電池14での発電を開始する。すなわち、三方弁22を第2燃料電池14側に切り換えた状態で、減圧弁26を開く。そして、燃料ガスが第2燃料電池14の第2燃料反応経路20に充満したところで、封止弁40を閉じるとともに、減圧弁26を閉じる。また、開閉弁56を開き、空気が第2燃料電池14の第2空気反応経路18に充満したところで、封止弁60を閉じるとともに、開閉弁56を閉じる。第2燃料電池14は、すでに所定の反応温度、例えば600℃となっているので、第2燃料電池14において、第2空気反応経路18内の空気中の酸素と、第2燃料反応経路20内の燃料ガス中の水素の化学反応によって、発電が開始される。酸素と水素の化学反応は発熱反応でもあるので、発電が開始した後は、第2ヒータ16による加熱や第1燃料電池4からの伝熱がなくても、第2燃料電池14は高温に維持されて、発電は継続される。その後、封止弁40や封止弁60を開いて、第2燃料電池14において反応に寄与しなかったガスや反応で発生した水蒸気を排出するとともに、減圧弁26や開閉弁56を開いて、第2燃料電池14内に燃料ガスと空気を再び供給する。これを繰り返すことで、第2燃料電池14による発電が継続される。第2燃料電池14が発電した電力は、対象負荷Lに供給される。
【0027】
第2燃料電池14から排出された反応後の燃料ガスは、燃料回収器36において水素と水蒸気に分離される。燃料回収器36で分離された水蒸気は、水蒸気排出経路44を介して燃料電池システム2の外部に排出される。燃料回収器36で分離された水素は、燃料ガスとして燃料供給経路24に再び供給される。
【0028】
なお、図示はしていないが、燃料供給経路24や第1燃料供給経路28、第1燃料排出経路30、第2燃料供給経路34、第2燃料排出経路38、燃料回収経路42等に、燃料ガスの流動を制御するためのポンプを備えていてもよい。同様に、図示はしていないが、第1空気供給経路46や第1空気排出経路50、第2空気供給経路54、第2空気排出経路58等に、空気の流動を制御するためのポンプを備えていてもよい。また、図示はしていないが、第1燃料電池4や第2燃料電池14からの放熱を制御するためのヒートシンクを備えていてもよい。
【0029】
図2図3および図4は、第1燃料電池4と、第1ヒータ6と、第1空気反応経路10と、第1燃料反応経路12と、第2燃料電池14と、第2ヒータ16と、第2空気反応経路18と、第2燃料反応経路20が設けられた基板23の構成を模式的に示している。上述したように、第1燃料電池4と、第1ヒータ6と、第1空気反応経路10と、第1燃料反応経路12とが、第1基板25に設けられており、第2燃料電池14と、第2ヒータ16と、第2空気反応経路18と、第2燃料反応経路20とが、第2基板27に設けられている。図2図3および図4に示す例では、第1基板25と第2基板27とは継ぎ目なく連続して形成されており、基板23を構成している。
【0030】
図2に示すように、第1燃料電池4は、1×2のアレイ状に配置された2つの第1発電要素4aを備えている。第2燃料電池14は、3×3のアレイ状に配置された9つの第2発電要素14aを備えている。なお、第1燃料電池4が備える第1発電要素4aの個数や、第2燃料電池14が備える第2発電要素14aの個数は、これに限定されるものではない。第1発電要素4aの個数よりも、第2発電要素14aの個数の方が多ければ、どのような個数であってもよい。
【0031】
図3に示すように、基板23は、第1シリコン基板62と、第2シリコン基板64と、第1電極膜66と、電解質膜68と、第2電極膜70と、絶縁膜72が順に積層された積層基板である。
【0032】
第1シリコン基板62と第2シリコン基板64は、ノンドープの高抵抗のシリコン基板である。図3図4に示すように、第2シリコン基板64の内部には、エッチングによって、第1燃料電池4の第1燃料反応経路12と、第2燃料電池14の第2燃料反応経路20が形成されている。第1燃料反応経路12は、第1燃料入口12aと第1燃料出口12bを備えている。第1燃料反応経路12には、第1燃料入口12aを介して燃料ガスが供給される。第1燃料反応経路12において、第1発電要素4aに対応する箇所には、それぞれ、第1燃料反応室12cが形成されている。また、反応後の燃料ガスは、第1燃料出口12bを介して第1燃料反応経路12から排出される。第2燃料反応経路20は、第2燃料入口20aと第2燃料出口20bを備えている。第2燃料反応経路20には、第2燃料入口20aを介して燃料ガスが供給される。第2燃料反応経路20において、第2発電要素14aに対応する箇所には、それぞれ、第2燃料反応室20cが形成されている。また、反応後の燃料ガスは、第2燃料出口20bを介して第2燃料反応経路20から排出される。図2図3に示すように、第2シリコン基板64の内部に形成された第1燃料反応経路12と第2燃料反応経路20は、第1シリコン基板62によって下面側を気密に封止されている。
【0033】
図3に示すように、第2シリコン基板64の上面には、第1電極膜66が積層されている。第1電極膜66は、触媒および集電効果を持つ電極膜であって、Pt、Cr/Ni、Ni/Pt、Ti/Pt、Cr/Pt、またはこれらを含む混合物あるいは積層膜で形成された金属膜である。あるいは、第1電極膜66は、これらの金属の粒子を含む、またはこれらの金属の粒子が担持された、導電性を持つ膜、例えば導電性セラミックス膜であってもよい。第1電極膜66は、第1燃料電池4および第2燃料電池14において、燃料極として機能する。第1燃料電池4の第1電極膜66と第2燃料電池14の第1電極膜66は、互いに絶縁されている。第1電極膜66は、ポーラス(多孔質)構造を有している。第1電極膜66の下面は、第2シリコン基板64の内部に形成された、第1燃料反応経路12の第1燃料反応室12cおよび第2燃料反応経路20の第2燃料反応室20cに、露出している。第1電極膜66の上面には、電解質膜68が積層されている。電解質膜68は、LSO(ランタンシリケート)、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、LaGaO3(ランタンガレート)等の薄膜である。電解質膜68の膜厚は、20−2000nm程度である。電解質膜68の上面には、第2電極膜70が積層されている。第2電極膜70は、触媒および集電効果を持つ電極膜であって、Pt、Cr/Ni、Ni/Pt、Ti/Pt、Cr/Pt、またはこれらを含む混合物あるいは積層膜で形成された金属膜である。あるいは、第2電極膜70は、これらの金属の粒子を含む、またはこれらの金属の粒子が担持された、導電性を持つ膜、例えば導電性セラミックス膜であってもよい。第2電極膜70は、第1燃料電池4および第2燃料電池14において、空気極として機能する。第1燃料電池4の第2電極膜70と第2燃料電池14の第2電極膜70は、互いに絶縁されている。第2電極膜70は、ポーラス(多孔質)構造を有している。
【0034】
第2電極膜70の上面には、絶縁膜72が積層されている。絶縁膜72は、例えば酸化シリコンの薄膜である。絶縁膜72の上方の空間は、第1燃料電池4の第1空気反応経路10および第2燃料電池14の第2空気反応経路18を構成している。絶縁膜72には、複数の貫通孔72aが形成されている。図2に示すように、複数の貫通孔72aは、第1発電要素4aおよび第2発電要素14aのそれぞれにおいて、4×3のアレイ状に配置されている。なお、第1発電要素4aおよび第2発電要素14aのそれぞれにおける複数の貫通孔72aの個数は、これに限定されるものではない。第1基板25において絶縁膜72に貫通孔72aが形成された箇所では、第1燃料反応経路12(第1燃料反応室12c)と第1空気反応経路10が、第1電極膜66と、電解質膜68と、第2電極膜70を介して対向している。第2基板27において絶縁膜72に複数の貫通孔72aが形成された箇所では、第2燃料反応経路20(第2燃料反応室20c)と第2空気反応経路18は、第1電極膜66と、電解質膜68と、第2電極膜70を介して対向している。
【0035】
第1燃料電池4や第2燃料電池14が所定の反応温度、例えば600℃まで加熱されると、絶縁膜72に複数の貫通孔72aが形成された箇所において、空気中の酸素は、ポーラス構造の第2電極膜70を通過して電解質膜68に到達する。そして、電解質膜68の表面で触媒反応によって酸素は酸化物イオン(O2−)となり、電解質膜68を通過して、第1電極膜66に到達する。一方、燃料ガス中の水素は、ポーラス(多孔質)構造の第1電極膜66を通過して電解質膜68に到達し、そこで酸化物イオンと反応して水蒸気が生成されるとともに、電子が放出される。放出された電子は、第1電極膜66に集電される。このようにして、第1燃料電池4や第2燃料電池14は発電を行なう。なお、反応に伴って生成された水蒸気は、第1燃料反応経路12(第1燃料反応室12c)や第2燃料反応経路20(第2燃料反応室20c)に放出される。
【0036】
図2図3に示すように、第1ヒータ6および第2ヒータ16は、絶縁膜72の上面に配置されている。第1ヒータ6および第2ヒータ16は、例えば、Pt、Ta、W、WSi等の金属膜である。第1ヒータ6は、第1発電要素4aの複数の貫通孔72aの間を蛇行するように配置されている。第2ヒータ16は、第2発電要素14aの複数の貫通孔72aの間を蛇行するように配置されている。
【0037】
乾電池であるバッテリ8からの電力は、電極パッド74a、74bを介して、第1ヒータ6に供給される。第1燃料電池4からの電力は、電極パッド76a、76bを介して、第2ヒータ16に供給される。電極パッド76aは、第1基板25の第1電極膜66の上面に配置されており、電極パッド76bは、第1基板25の第2電極膜70の上面に配置されている。第2燃料電池14からの電力は、電極パッド78a、78bを介して、出力用電極パッド80a、80bに供給される。電極パッド78aは、第2基板27の第1電極膜66の上面に配置されており、電極パッド78bは、第2基板27の第2電極膜70の上面に配置されている。出力用電極パッド80a、80bは、対象負荷L(図1参照)に接続されている。電極パッド74a、74b、76a、76b、78a、78b、出力用電極パッド80a、80b、およびこれらを接続する配線は、500−700℃の高温に対して耐性を有する導電性材料であればよく、例えば、Pt/Cr、Pt/Ni、Pt/Ti、Mo、Ta、W、WSi等の金属から構成されている。
【0038】
本実施例の燃料電池システム2では、第1基板25と第2基板27のそれぞれが、シリコン基板の積層板から構成されており、第1基板25と第2基板27が継ぎ目なく連続している。シリコン基板は熱伝導率が高く、第1基板25と第2基板27が継ぎ目なく連続しているので、第1燃料電池4の発電に伴って発生した熱を、第2燃料電池14に良好に伝熱することができる。なお、第1基板25と第2基板27は、第1シリコン基板62および第2シリコン基板64の少なくとも一方が継ぎ目なく連続していればよく、第1シリコン基板62および第2シリコン基板64の他方や、第1電極膜66や、電解質膜68や、第2電極膜70や、絶縁膜72は、第1基板25と第2基板27に別体で設けられていてもよい。また、第1基板25と第2基板27とが物理的に分離され、別のシリコン基板(図示せず)上に第1基板25と第2基板27とがそれぞれ設けられた構成としてもよい。
【0039】
(実施例2)
図5は、本実施例の燃料電池システム82の構成を模式的に示している。本実施例の燃料電池システム82は、実施例1の燃料電池システム2と略同様の構成を備えている。以下では、本実施例の燃料電池システム82について、実施例1の燃料電池システム2と相違する点について説明する。
【0040】
本実施例の燃料電池システム82では、三方弁22に、改質器84から燃料ガスとして水素が供給される。改質器84は、図示しないアンモニアガスカートリッジから供給されるアンモニアガスを分解して窒素と水素を生成する。そして、改質器84は、水素を燃料供給経路24に供給するとともに、窒素を燃料電池システム2の外部に排出する。なお、アンモニアガスの分解反応は吸熱反応であるため、改質器84は、アンモニアガスを分解するためのヒータ86と、ヒータ86に電力を供給するバッテリ88を備えている。なお、改質器84は、実施例1の燃料電池システム2と同様に、第2燃料電池14から排出された反応後の燃料ガスを水蒸気と水素に分離する燃料回収器を内蔵していてもよい。この場合、反応後の燃料ガスから分離された水素は、アンモニアガスから分解された水素とともに、燃料ガスとして燃料供給経路24に供給され、反応後の燃料ガスから分離された水蒸気は、アンモニアガスから分解された窒素とともに、燃料電池システム2の外部に排出される。
【0041】
実施例1の燃料電池システム2および実施例2の燃料電池システム82によって、短時間で燃料電池を起動させることが可能となる。そのため、短時間で起動と停止を繰り返すことが可能な燃料電池を実現することができる。従って、実施例1の燃料電池システム2および実施例2の燃料電池システム82は、従来にない用途に用いることができる。例えば、図6に示すように、燃料電池システム2、82は、充電ケーブル90を介してタブレット等のモバイル機器92に接続可能な、充電器として用いることができる。この場合、モバイル機器92が備えるバッテリ94と、モバイル機器92の電力負荷と、燃料電池システム2、82を、電気的に並列に接続し、切り替えスイッチによって電力の供給先を切替可能な構成とすることで、燃料電池システム2、82によって、バッテリ94の充電を行なうこともできるし、モバイル機器92の電力負荷に電力を供給することもできる。
【0042】
あるいは、図7に示すように、燃料電池システム2、82は、電力によって駆動する小型のモビリティ96(例えばシニアカー)に搭載されるサブバッテリとして用いることができる。この場合、燃料電池システム2、82は、電力供給線98を介して、モビリティ96が備えるバッテリ100に接続される。この場合、モビリティ96が備えるバッテリ100と、モビリティ96のモータ102と、燃料電池システム2、82を、電気的に並列に接続し、切り替えスイッチによって電力の供給先を切替可能な構成とすることで、燃料電池システム2、82によって、バッテリ100の充電を行なうこともできるし、モータ102に電力を供給することもできる。
【0043】
あるいは、図8に示すように、燃料電池システム2、82は、電力によって駆動する歩行支援ロボット104のサブバッテリとして用いることができる。この場合、燃料電池システム2、82は、電力供給線106を介して、歩行支援ロボット104が備えるバッテリ108に接続される。この場合、歩行支援ロボット104が備えるバッテリ108と、歩行支援ロボット104のモータ110と、燃料電池システム2、82を、電気的に並列に接続し、切り替えスイッチによって電力の供給先を切替可能な構成とすることで、燃料電池システム2、82によって、バッテリ108の充電を行なうこともできるし、モータ110に電力を供給することもできる。
【0044】
上記の各実施例では、第1燃料電池4と第2燃料電池14が、固体酸化物型燃料電池(SOFC)である場合について説明したが、第1燃料電池4や第2燃料電池14は、発電反応を開始する際に常温よりも高い温度まで加熱する必要がある燃料電池であれば、どのようなものであってもよく、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC)であってもよいし、リン酸型燃料電池(PAFC)であってもよいし、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)であってもよい。
【0045】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
2:燃料電池システム、 4:第1燃料電池、 4a:第1発電要素、 6:第1ヒータ、 8:バッテリ、 10:第1空気反応経路、 12:第1燃料反応経路、 12a:第1燃料入口、 12b:第1燃料出口、 12c:第1燃料反応室、 14:第2燃料電池、 14a:第2発電要素、 16:第2ヒータ、 18:第2空気反応経路、 20:第2燃料反応経路、 20a:第2燃料入口、 20b:第2燃料出口、 20c:第2燃料反応室、 21:水素カートリッジ、 22:三方弁、 23:基板、 24:燃料供給経路、 25:第1基板、 26:減圧弁、 27:第2基板、 28:第1燃料供給経路、 30:第1燃料排出経路、 32:封止弁、 34:第2燃料供給経路、 36:燃料回収器、 38:第2燃料排出経路、 40:封止弁、 42:燃料回収経路、 44:水蒸気排出経路、 46:第1空気供給経路、 48:開閉弁、 50:第1空気排出経路、 52:封止弁、 54:第2空気供給経路、 56:開閉弁、 58:第2空気排出経路、 60:封止弁、 62:第1シリコン基板、 64:第2シリコン基板、 66:第1電極膜、 68:電解質膜、 70:第2電極膜、 72:絶縁膜、 72a:貫通孔、 74a:電極パッド、 74b:電極パッド、 76a:電極パッド、 76b:電極パッド、 78a:電極パッド、 78b:電極パッド、 80a:出力用電極パッド、 80b:出力用電極パッド、 82:燃料電池システム、 84:改質器、 86:ヒータ、 88:バッテリ、 90:充電ケーブル、 92:モバイル機器、 94:バッテリ、 96:モビリティ、 98:電力供給線、 100:バッテリ、 102:モータ、 104:歩行支援ロボット、 106:電力供給線、 108:バッテリ、 110:モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8