(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明を実施の形態1について図を参照しながら詳細に説明する。
図1は、この発明を実施するための実施の形態1に係る真空バルブ100の断面図であり、
図2は、真空バルブ100が備える絶縁容器1の内面1n上の電界強度分布を示す。
【0010】
はじめに、
図1を参照して、実施の形態1に係る真空バルブ100の構成を説明する。
真空バルブ100は、絶縁容器1、可動側端板2、固定側端板3、可動側電極41、固定側電極51、アークシールド6、半導電層7b、半導電層7d、および樹脂層8を含む。なお、半導電層7bは、特許請求の範囲に記す第1の半導電層の例示であり、半導電層7dは、特許請求の範囲に記す第2の半導電層の例示である。さらに、樹脂層8は、特許請求の範囲に記す絶縁部の例示である。
筒状の絶縁容器1は、セラミックスなどの絶縁性の部材で構成される。絶縁容器1の一方の端部に、可動側端板2が配置され、絶縁容器1の端部12と可動側端板2の端部2eとが接続される。さらに、絶縁容器1の他方の端部に、固定側端板3が配置され、絶縁容器1の端部13と固定側端板3の端部3eとが接続される。
さらに、絶縁容器1の外側1uは、絶縁性の樹脂層8で覆われる。また、絶縁容器1の内部には、絶縁容器1の支持部11により支持され、アークシールド6を備える。アークシールド6は、金属などの導電性部材で形成され、後述する可動側電極41と固定側電極51とを覆うように設置される。
【0011】
可動側端板2には、紙面の左右に伸縮自在のベローズ22の一端側が取り付けれ、ベローズ22のもう一端側には、ベローズシールド23が取り付けられる。さらに、ベローズシールド23を貫通するように、可動側通電軸4が取り付けられる。
また、アークシールド6に覆われる可動側通電軸4の端部には、可動側電極41を有する。さらに、可動側端板2には、可動側シールド21が、可動側端板2の端部2eと可動側通電軸4との間に、可動側通電軸4を取り囲むように取り付けられる。
なお、可動側端板2、ベローズ22、ベローズシールド23、可動側通電軸4、可動側電極41、および可動側シールド21は、電気的に接続される。
【0012】
可動側シールド21は、可動側端板2の端部2eに発生する電界強度を緩和する効果を現す。可動側シールド21を可動側端板2に備えない場合、可動側通電軸4に電圧が印加されると、可動側端板2の端部2eに局所的に高い電界強度が発生し絶縁破壊の至る可能性がある。
【0013】
なお、可動側シールド21の電界強度を緩和する効果的な配置は、可動側シールド21の真空バルブ100の内部における最端部(点線21Lは、この最端部の紙面横方向の位置を示す)を、可動側端板2の端部2eの紙面横方向の位置より、左側に位置するように配置である。この配置により、可動側端板2の端部2eに発生する電界強度を緩和する効果に加え、点線21Lより紙面の右側の絶縁容器1の内面1n上の部分および可動側端板2の部分の電界強度を緩和する効果を現す。
【0014】
固定側端板3には、固定側端板3を貫通するように、固定側通電軸5が取り付けられる。また、アークシールド6に覆われる固定側通電軸5の端部には、固定側電極51を有する。さらに、固定側端板3には、固定側シールド31が、固定側端板3の端部3eと固定側端板3との間に、固定側通電軸5を取り囲むように取り付けられる。
なお、固定側端板3、固定側通電軸5、固定側電極51、および固定側シールド31は、電気的に接続される。
【0015】
固定側シールド31は、固定側端板3の端部3eに発生する電界強度を緩和する効果を現す。固定側シールド31を固定側端板3に備えない場合、固定側通電軸5に電圧が印加されると、固定側端板3の端部3eに局所的に高い電界強度が発生し絶縁破壊に至る可能性がある。
【0016】
なお、固定側シールド31の電界強度を緩和する効果的な配置は、固定側シールド31の真空バルブ100の内部における最端部(点線31Rは、この最端部の紙面横方向の位置を示す)を、固定側端板3の端部3eの紙面横方向の位置より、右側に位置するように配置である。この配置により、固定側端板3の端部3eに発生する電界強度を緩和する効果に加え、点線31Rより紙面の左側の絶縁容器1の内面1n上の部分および固定側端板3の部分の電界強度を緩和する効果を現す。
【0017】
また、アークシールド6は、可動側電極41と固定側電極51との間にアークが発生した場合、アークの熱により可動側電極41と固定側電極51とから飛散する金属蒸気および金属粒子から、から他の部位を保護するために設置される。
なお、点線6Rは、アークシールド6の可動側端板2の側の紙面横方向の最端部位置を示し、点線6Lは、アークシールド6の固定側端板3の側の紙面横方向の最端部位置を示す。前述したようにアークシールド6は導電性部材で構成されるので、点線6Lより紙面の右側かつ点線6Rより紙面の左側の絶縁容器1の内面1n上の部分の電界強度を緩和する効果を現す。
【0018】
さらに、内面部10a〜10eは、各々絶縁容器1の内面1n上の部分を示す。
内面部10aは、絶縁容器1の端部12が接する内面1nから内面1nの中心方向への内面1nの範囲であり、内面部10eは、絶縁容器1の端部13が接する内面1nから内面1nの中心方向への内面1nの範囲である。
内面部10cは、アークシールド6に近接する内面1nの範囲である。内面部10bは、内面部10aと内面部10cとの間の内面1nの範囲であり、半導電層7bを有する。内面部10dは、内面部10eと内面部10cとの間の内面1nの範囲であり、半導電層7dを有する。
また、半導電層7bおよび半導電層7dの表面抵抗率は、1×10
8〜1×10
14Ω/sqの範囲が望ましく、絶縁容器1の内面1nの表面抵抗率は、1×10
14Ω/sq以上が望ましい。
【0019】
なお、内面部10aは、特許請求の範囲に記す第1の内面部分の例示であり、内面部10cは、特許請求の範囲に記す第2の内面部分の例示であり、内面部10eは、特許請求の範囲に記す第3の内面部分の例示である。さらに、内面部10bは、特許請求の範囲に記す第4の内面部分の例示であり、内面部10dは、特許請求の範囲に記す第5の内面部分の例示である。
【0020】
半導電層7bおよび半導電層7dは、導電性を有し真空中において気化する量が少ない材質が望ましく、金属あるいは金属酸化物の薄膜で構成される。たとえば、半導電層7bおよび半導電層7dの構成部材には、Cu、Ag、Cr、Ni、Mo、W、V、Nb、およびTaがあり、なお、蒸着法あるいはスパッタリング法により形成することができる。
【0021】
つぎに、真空バルブ100の動作について説明する。
真空バルブ100の内部は、高い絶縁状態を維持するために、1×10
−3パスカル以下の真空状態に保たれる。また、可動側電極41と固定側電極51とを接続する閉状態と、可動側電極41と固定側電極51とを開放する開状態とを、切り替えることが可能である。
図1は、可動側電極41と固定側電極51とが接続していない開状態である。外部から可動側通電軸4に、紙面右から左へ押圧が印加されることにより、可動側通電軸4が移動し、可動側電極41と固定側電極51とが接続する閉状態となる。
すなわち、可動側通電軸4を移動することにより、開状態から閉状態への切り替え、あるいは閉状態から開状態への切り替えることが可能である。
【0022】
つぎに、絶縁破壊現象について説明する。
開状態において、可動側通電軸4と固定側通電軸5との間に電圧が印加される場合、可動側シールド21の表面および固定側シールド31の表面の電界強度が高くなり、可動側シールド21の表面および固定側シールド31の表面から1次電子が真空バルブ100の内部に向かって放出される。この1次電子が、絶縁容器1の内面1n上に衝突すると、絶縁容器1の内面1nから2次電子が放出される。この2次電子の放出により、絶縁容器1の内面1nが正極性に帯電する。2次電子が放出され続け、内面1nの正極性の帯電が進行すれば、可動側通電軸4と固定側通電軸5との間の絶縁状態が維持できなくなることがある。すなわち、絶縁破壊現象に至ることがある。
なお、2次電子の放出量は、1次電子の運動エネルギーに依存する。すなわち、絶縁容器1の内面1n上の電界強度に依存し、電界強度が高くなると、2次電子の放出量が増えることになる。言い換えると、絶縁容器1の内面1n上の電界強度が高い場合、絶縁破壊現象に至る可能性が高くなる。
【0023】
図2を、参照して絶縁容器1の内面1n上の電界強度の分布について説明する。
図2の縦軸は、絶縁容器1の内面1n上の電界強度を示し、横軸は、絶縁容器1の内面1nの位置を示す。
図2に示す内面1n上の電界強度の分布は、可動側通電軸4を接地し、固定側通電軸5に正電位を印加した場合である。
図中の13pは、
図1に示す絶縁容器1の端部13における絶縁容器1の内面1nの位置を示し、同様に、12pは、
図1に示す絶縁容器1の端部12における絶縁容器1の内面1nの位置を示す。さらに、10a〜10eは、
図1と同様な内面部10a〜10eを示す。
【0024】
さらに、点線L1は、絶縁容器1の内面1nに半導電層7bおよび半導電層7dを設けない場合の電界強度分布を示し、極大値P1aとP1bとを有する。実線L2は、前述したように絶縁容器1の内面1nに半導電層7bおよび半導電層7dを設ける場合の電界強度の分布を示し、極大値P2aとP2bとを有する。
すなわち、半導電層7bおよび半導電層7dを設けることにより、電界強度の極大値P1aは極大値P2aまで低下し、電界強度の極大値P1bは極大値P2bまで低下する。よって、電界強度が緩和されるので、2次電子の放出を低減される。言い換えると、半導電層7bおよび半導電層7dを設けることにより、絶縁容器1の内面1nが正極性に帯電することを抑制し、絶縁破壊現象に至ることを防止することができる。
【0025】
さらに、半導電層7b内を電荷は、自由に移動することができるので、半導電層7bの電界強度は緩和され、2次電子の放出を低減する効果を現す。なお、同様に半導電層7d内を電荷は、自由に移動することができるので、半導電層7bの電界強度は緩和され、2次電子の放出を低減する効果を現す。
【0026】
一方、絶縁容器1の内面部10a、内面部10c、および内面部10eには、半導電層7bおよび半導電層7dを設けないので、可動側端板2と半導電層7bとの間、半導電層7bと半導電層7dとの間、および固定側端板3と半導電層7dとの間は、電気的に絶縁される。
部分放電試験を実施するために、固定側通電軸5と可動側通電軸4との間に電圧を印加しても、可動側通電軸4と半導電層7bとは絶縁され、固定側通電軸5と半導電層7dとは絶縁されているので、半導電層7bおよび半導電層7dを通じて流れる電荷の量は大幅に低減される。すなわち、樹脂層8、および樹脂層8と絶縁容器1との界面に部分放電試験を実施することが可能である。
【0027】
さらに、本実施の形態1における好ましい半導電層7bおよび半導電層7dの設置範囲について説明する。
半導電層7bの一方の端部(内面部10aに接する部分)の電界強度は、この端部の形状に依存し高くなる場合がある。一方、前述したように可動側シールド21は、点線21Lより紙面の右側の絶縁容器1の内面1n上の部分および可動側端板2の部分の電界強度は緩和する効果を現す。すなわち、半導電層7bの一方の端部を点線21Lより紙面の右側に設置することにより、半導電層7bの端部(内面部10aに接する部分)に発生する電界強度を緩和することができる。
【0028】
さらに、半導電層7bの他方の端部(内面部10cに接する部分)の電界強度は、この端部の形状に依存し高くなる場合がある。一方、前述したようにアークシールド6の影響により点線6Lより紙面の右側かつ点線6Rより紙面の左側の絶縁容器1の内面1n上の部分の電界強度は緩和する効果を現す。すなわち、半導電層7bの他方の端部(内面部10cに接する部分)を点線6Rより紙面の左側に設定することにより、半導電層7bの他方の端部(内面部10cに接する部分)に発生する電界強度を緩和することができる。
【0029】
同様に、半導電層7dの一方の端部(内面部10eに接する部分)の電界強度は、この端部の形状に依存し高くなる場合がある。一方、前述したように固定側シールド31は、点線31Rより紙面の左側の絶縁容器1の内面1n上の部分および固定側端板3の部分の電界強度の電界強度は緩和する効果を現す。すなわち、半導電層7dの一方の端部(内面部10eに接する部分)を点線31Rより紙面の左側に設定することにより、半導電層7dの端部(内面部10eに接する部分)に発生する電界強度を緩和することができる。
【0030】
さらに、半導電層7dの他方の端部(内面部10cに接する部分)の電界強度は、この端部の形状に依存し高くなる場合がある。一方、前述したように前述したようにアークシールド6の影響により点線6Lより紙面の右側かつ点線6Rより紙面の左側の絶縁容器1の内面1n上の部分の電界強度は緩和する効果を現す。すなわち、半導電層7dの他方の端部(内面部10cに接する部分)を点線6Lより紙面の右側に設定することにより、半導電層7dの他方の端部(内面部10cに接する部分)に発生する電界強度を緩和することができる。
【0031】
言い換えると、半導電層7bの可動側端板2の側の一方の端部(内面部10aに接する部分)を、可動側シールド21の真空バルブ100の内部における最端部より、可動側端板2の側に設定し、半導電層7bのアークシールド6の側の他方の端部(内面部10cに接する部分)を、アークシールド6の可動側端板2の側の最端部より、固定側端板3の側に設定する。なお、半導電層7bの可動側端板2の側の一方の端部は、可動側端板2と電気的に絶縁するものとする。
さらに、半導電層7dの固定側端板3の側の一方の端部(内面部10eに接する部分)を、固定側シールド31の真空バルブ100の内部における最端部より、固定側端板3の側に設定し、半導電層7dのアークシールド6の側の他方の端部(内面部10cに接する部分)を、アークシールド6の固定側端板3の側の最端部より、可動側端板2の側に設定する。なお、半導電層7dの固定側端板3の側の一方の端部は、固定側端板3と電気的に絶縁するものとする。
これらの半導電層7bの両端部の設定および半導電層7dの両端部の設定により、より電界強度が緩和され、さらに2次電子の放出を低減する効果を備える。
【0032】
上述したように本実施の形態1によれば、真空バルブ100は、絶縁容器1の内面部10bに半導電層7bを有し、絶縁容器1の内面部10dに半導電層7dを有することにより、2次電子の放出を低減し、絶縁破壊に至ることを抑制する効果を備え、樹脂層8を備えることにより、真空バルブ100と外部との間に高い絶縁耐性を備える。
さらに、真空バルブ100に、部分放電試験を実施することが可能であるので、簡便に樹脂層8のボイド欠陥および剥離欠陥の有無を検査することができる。よって、信頼性の高い真空バルブを提供することができる。
【0033】
実施の形態2.
実施の形態1では、内面部10bに半導電層7bを有し、内面部10dに半導電層7dを有する形態を説明した。
本実施の形態2では、半導電層7bおよび半導電層7dの導電率に分布を有することにより、実施の形態1に比べ絶縁容器1の内面1n上の電界強度の分布をより緩和する形態を説明する。
【0034】
図3は、真空バルブ100が備える絶縁容器1の内面1n上の電界強度の分布図と、半導電層7bおよび半導電層7dに導電率の分布図を示し、
図4は、
図3とは別の半導電層7bおよび半導電層7dの導電率の分布図を示す。
なお、
図3および
図4において、
図1および
図2と同一番号あるいは同一符号は、実施の形態1に示す構成要素と同一品あるいは同等品であるので、その詳細な説明は省略する。
さらに、後述する半導電層7bおよび半導電層7dに導電率の分布以外は、実施の形態1の真空バルブ100と同様であるので、本実施の形態2における真空バルブ100の図示を省略する。
【0035】
図3を参照して、本実施の形態2に真空バルブの構成を説明する。
図3(b)は、本実施の形態2の半導電層7bおよび半導電層7dに導電率の分布である。縦軸は、絶縁容器1の内面1n上の導電率を示し、横軸は、絶縁容器1の内面1nの位置を示す。
半導電層7bの内面部10a側に、半導電層7bの導電率の最大値C1aを有し、内面部10c側に向かい半導電層7bの導電率は減少する。半導電層7dの内面部10e側に、半導電層7dの導電率の最大値C1bを有し、内面部10c側に向かい半導電層7bの導電率は減少する。
【0036】
図3(c)は、半導電層7bおよび半導電層7dに導電率が均一である場合の例示である。
図3(b)と同様に縦軸は、絶縁容器1の内面1n上の導電率を示し、横軸は、絶縁容器1の内面1nの位置を示す。
【0037】
図3(a)は、絶縁容器1の内面1n上の電界強度の分布である。
図2と同様に、縦軸は、絶縁容器1の内面1n上の電界強度を示し、横軸は、絶縁容器1の内面1nの位置を示す。
図2に示す内面1n上の電界強度の分布は、可動側通電軸4を接地し、固定側通電軸5に正電位を印加した場合である。
【0038】
点線L1は、
図2と同様に、絶縁容器1の内面1nに半導電層7bおよび半導電層7dを設けない場合の電界強度分布を示し、極大値P1aとP1bとを有する。
実線L3は、
図3(c)示す半導電層7bおよび半導電層7dの導電率が均一である場合の電界強度の分布を示し、極大値P3aとP3bとを有する。
一点鎖線L4は、
図3(b)示す半導電層7bおよび半導電層7dの導電率が分布を有する場合の電界強度の分布を示し、極大値P4aとP4bとを有する。
【0039】
半導電層7bおよび半導電層7dに、
図3(b)に示す導電率の分布を設けることにより、
図3(c)に示す導電率が均一な場合に比べ、電界強度の極大値P3aは極大値P4aまで低下し、電界強度の極大値P3bは極大値P4bまで低下する。よって、半導電層7bおよび半導電層7dの導電率が均一な場合に比べ、電界強度が緩和されるので、2次電子の放出を低減される。すなわち、絶縁容器1の内面1nの正極性への帯電が抑制され、絶縁破壊現象に至ることを防止することができる。
なお、
図3(b)に示す導電率の分布は、半導電層7bおよび半導電層7dの膜厚を変化させる方法あるいは導電率の異なる2種類以上の材質の混合比を変えることによっても得ることができる。
【0040】
また、
図3(b)には、半導電層7bの導電率の最大値C1aを有し、傾斜し半導電層7bの導電率は減少し、半導電層7dの導電率の最大値C1bを有し、傾斜し半導電層7dの導電率は減少する例を示した。
なお、内面部10a側の半導電層7bの部分に、半導電層7bの導電率の最大値を有し、内面部10c側に向かい半導電層7bの導電率は減少し、さらに内面部10e側の半導電層7dの部分に、半導電層7dの導電率の最大値を有し、内面部10c側に向かい半導電層7bの導電率は減少する導電率の分布であれば、傾斜状の導電率でなくても、電界強度を緩和する効果が得られる。
【0041】
図4(a)および
図4(b)は、
図3(b)とは別の本実施の形態2の半導電層7bおよび半導電層7dの導電率の分布を示す。
図4を参照して、縦軸は、絶縁容器1の内面1n上の導電率を示し、横軸は、絶縁容器1の内面1nの位置を示す。
図4(a)には、内面部10a側に、半導電層7bの導電率の最大値C1aを有し、内面部10c側に向かい一定値F1aまで低下し、さらに内面部10c側に向かい一定値F1aを維持する。内面部10e側に、半導電層7dの導電率の最大値C1bを有し、内面部10c側に向かい一定値F1bまで低下し、さらに内面部10c側に向かい一定値F1bを維持する。
すなわち、内面部10a側に、半導電層7bの導電率の最大値C1aを有し、内面部10e側に、半導電層7dの導電率の最大値C1bを有することにより、電界強度を緩和する効果が得られる。
【0042】
図4(b)には、半導電層7bの内面部10a側の部分に導電率の最大値S1aを有し、内面部10c側に向かいS1aを維持し、さらに、内面部10c側に向かい一定値S2aまで低下し、さらに内面部10c側に向かい一定値S2aを維持する。さらに、内面部10c側に向かい一定値S3aまで低下し、さらに、内面部10c側に向かい一定値S3aを維持する。
【0043】
一方、半導電層7dの内面部10e側の部分に導電率の最大値S1bを有し、内面部10c側に向かいS1bを維持し、さらに内面部10c側に向かい一定値S2bまで低下し、さらに内面部10c側に向かい一定値S2bを維持する。さらに内面部10c側に向かい一定値S3bまで低下し、さらに内面部10c側に向かい一定値S3bを維持する。一方、さらに内面部10c側に向かい一定値S2aに安定する。
【0044】
すなわち、半導電層7bは、内面部10a側に半導電層7bの導電率の最大値S1aを有し、内面部10c側に向かいステップ状に導電率が低下し、半導電層7dは、内面部10a側に半導電層7dの導電率の最大値S1bを有し、内面部10c側に向かいステップ状に導電率が低下する。
【0045】
言い換えると、半導電層7bは、導電率の最大値を可動側端板2の側に最大値を有し、半導電層7dは、導電率の最大値を固定側端板3の側に最大値を有することにより、絶縁容器1の内面1n上の電界強度を緩和することができる
【0046】
上述したように、本実施の形態2では、実施の形態1の効果に加え、さらに絶縁容器1の内面1n上の電界強度を緩和することができるので、2次電子の放出を低減し、絶縁破壊に至ることを抑制する効果が向上する。
【0047】
実施の形態3.
実施の形態1および実施の形態2では、絶縁容器1を単一の部品で構成する形態について説明した。本実施の形態3では、絶縁容器1を複数の部品で構成する形態について説明する。
【0048】
図5を参照して、本実施の形態3に係る真空バルブ101の構成を説明する。
なお、
図5において、
図1と同一番号あるいは同一符号は、実施の形態1および実施の形態2に示す構成要素と同一品あるいは同等品であるので、その詳細な説明は省略する。
可動電極側絶縁部材1aおよび固定電極側絶縁部材1eは、セラミックスなどの絶縁性の部材で構成される。封着部材1cは可動電極側絶縁部材1aおよび固定電極側絶縁部材1eを封着し、さらに封着部材1cはアークシールド6の接続具61に接続し、アークシールド6を保持する。
すなわち、実施の形態1および実施の形態2では、絶縁容器1を単一の部品で構成するが、本実施の形態3では、絶縁容器1を、可動電極側絶縁部材1a、固定電極側絶縁部材1e、および封着部材1cで構成し、封着部材1cは、アークシールド6の接続具61に接続することにより、アークシールド6を保持し、アークシールド6の位置決め精度および耐振動性を向上する。
【0049】
すなわち、本実施の形態3では、実施の形態1および実施の形態2の効果に加え、さらにアークシールド6の耐振動性を向上する効果を得ることができる。さらに、アークシールド6の位置決め精度を向上する効果を得ることができるので、これによりアークシールド6による電界緩和効果が確実に得られるため、真空バルブ102の絶縁性能が向上する。
【0050】
実施の形態4.
本実施の形態4では、絶縁容器1の内面1nに厚肉部14および厚肉部15を形成し、絶縁容器1の耐絶縁性を向上する形態を説明する。
【0051】
図6および
図7を参照して、本実施の形態4に係る真空バルブ102の構成および真空バルブ103の構成を説明する。
なお、
図6および
図7において、
図5と同一番号あるいは同一符号は、実施の形態3に示す構成要素と同一品あるいは同等品であるので、その詳細な説明は省略する。
【0052】
図6を参照して、真空バルブ102では、厚肉部14は可動電極側絶縁部材1aの内面1nに形成され、厚肉部15は固定電極側絶縁部材1eの内面1nに形成される。すなわち、厚肉部14および厚肉部15の絶縁容器1の肉厚は厚くなるので、耐絶縁性を向上することができる。
【0053】
図7は、本実施の形態4の
図6とは別の例である。
図6の真空バルブ102では、厚肉部14は、可動電極側絶縁部材1aの両方の端部を除く位置に形成され、厚肉部15に関しても同様に、厚肉部15は、固定電極側絶縁部材1eの両方の端部を除く位置に形成される。
図7を参照して、真空バルブ103では、厚肉部14は可動電極側絶縁部材1aの一方の端部(アークシールド6側)まで延長され、厚肉部15に関しても同様に、厚肉部15は、固定電極側絶縁部材1eの一方の端部(アークシールド6側)まで延長され形成される。
【0054】
上述したように、本実施の形態4では、実施の形態1〜3の効果に加え、耐絶縁性を向上することができる。
【0055】
なお、実施の形態1〜4では、可動側端板2と半導電層7bとの間に電気的に絶縁するため、内面部10a上に半導電層7bを形成せず、固定側端板3と半導電層7dとの間に電気的に絶縁するため、内面部10e上に半導電層7bを形成せず、さらに、可動側端板2と固定側端板3との電気的な絶縁を強固にするために、内面部10c上に半導電層7bおよび半導電層7dを形成しない形態を説明した。
しかしながら、可動側端板2と半導電層7bとの間に電気的に絶縁および固定側端板3と半導電層7dとの間に電気的に絶縁さえ確保すれば
、内面部10c上に形成しても良い。
【0056】
さらに、この発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせた
り、各実施の形態を適宜変更、省略することが可能である。