(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の実施形態の概要>
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態の交通信号制御機は、歩行者の横断支援を実行する交通信号制御機であって、
筐体と、前記筐体に収容された制御部とを備え、前記制御部は、前記歩行者の携帯端末と無線通信する前記筐体外の通信部から、交差点の複数の横断方向の中から前記歩行者が選択した横断方向
を受信する
処理と、
受信した横断方向に関する、下記に定義する第1支援及び第2支援の少なくとも1つ
の横断支援
と、を実行す
る。
【0011】
第1支援:歩行者が選択した横断方向についての歩行者青時間の延長
第2支援:歩行者が選択した横断方向についての青待ち時間の短縮
【0012】
本実施形態の交通信号制御機によれば、制御部が、
筐体外の通信部から受信した横断方向に関して、第1支援及び第2支援の少なくとも1つを含む横断支援を実
行するので、歩行者が選択した横断方向に応じた横断支援を行うことができる。このため、歩行者の意向に沿った適切な横断支援を行うことができる。
【0013】
(2) 本実施形態の交通信号制御機において、前記制御部は、前記交差点の複数の横断方向のうち、少なくとも受信した横断方向についての青待ち時間及び青残り時間を含む信号情報を算出
する処理と、算出した前記信号情報を前記
通信部に送信する
処理と、を実行することが好ましい。
【0014】
この場合、少なくとも歩行者が選択した横断方向の青待ち時間及び青残り時間を含む信号情報が
通信部を介して携帯端末に送信される。
このため、上記の信号情報を受信した携帯端末が歩行者に当該信号情報を提供することにより、歩行者にとって有益な情報となる、自身が選択した横断方向の信号情報を歩行者に提供することができる。
【0015】
(3) 本実施形態の交通信号制御機において、前記制御部が算出する前記信号情報には、前記横断支援を実行する前のステップ秒数に基づく信号情報が含まれることが好ましい。
この場合、上記の信号情報を受信した携帯端末が歩行者に当該信号情報を提供することにより、横断支援を実行する前の青待ち時間及び青残り時間などを歩行者に提供することができる。
【0016】
(4) 本実施形態の交通信号制御機において、前記制御部が算出する前記信号情報には、前記横断支援を実行した後のステップ秒数に基づく信号情報が含まれることが好ましい。
この場合、上記の信号情報を受信した携帯端末が歩行者に当該信号情報を提供することにより、横断支援を実行した後の青待ち時間及び青残り時間などを歩行者に提供することができる。
【0017】
(5) 本実施形態の交通信号制御機において、前記
制御部は、
前記歩行者の携帯端末と無線通信する前記筐体外の通信部に、前記交差点の複数の横断方向ごとの歩行者青の最大延長時間
を送信することが好ましい。
このようにすれば、最大延長時間の受信側である携帯端末が、当該最大延長時間を用いて、歩行者による横断可否の判定などの処理を行えるようになる。
【0018】
(6) 本実施形態の交通信号制御機において、前記
制御部は、前記交差点の複数の横断方向ごとの横断距離を前記
通信部に送信する
処理を実行することが好ましい。
このようにすれば、横断距離の受信側である携帯端末が、当該横断距離を用いて、歩行者の横断必要時間の算出などの処理を行えるようになる。
【0019】
(7) 本実施形態の交通信号制御機において、前記
制御部は、前記交差点の複数の横断方向ごとの横断に関する注意情報を前記
通信部に送信する
処理を実行することが好ましい。
このようにすれば、注意情報の受信側である携帯端末が、受信した当該注意情報を歩行者に提供することにより、横断時の注意喚起を行うなどの処理を行えるようになる。
【0020】
(8) 本実施形態の交通信号制御機において、前記
制御部は、
前記歩行者の携帯端末と無線通信する前記筐体外の通信部から、前記歩行者が横断歩道を通過するのに必要な横断方向ごとの横断必要時間
を受信する処理と、受信した横断方向ごとの前記横断必要時間に応じて、前記第1支援において延長する歩行者青時間を算出する
処理と、を実行することが好ましい。
【0021】
この場合、制御部が、受信した横断方向ごとの横断必要時間に応じて、第1支援において延長する歩行者青時間を算出するので、延長後の設定青時間が固定値である場合に比べて、歩行者の歩行速度に応じた柔軟な歩行者支援制御を実行することができる。
【0022】
(9) 本実施形態の交通信号制御機において、前記制御部は、前記第1支援を実行する場合に、前記携帯端末の現在位置から前記歩行者の横断完了を判定し、横断完了と判定した時点で歩行者青を打ち切ることが好ましい。
この場合、横断完了と判定した時点で歩行者青が打ち切られので、歩行者青の延長が無用に継続されることによる、交差方向の無駄な青時間短縮を防止することができる。
【0023】
(10) 本実施形態の交通信号制御機において、前記
制御部は、自機の位置情報を前記
通信部に送信する
処理を実行することが好ましい。
このようにすれば、交通信号制御機の位置情報の受信側である携帯端末が、当該位置情報を用いて、交通信号制御機に対する接近判定などの処理を行えるようになる。
【0024】
(11) 本実施形態の交通信号制御機において、前記
制御部は、前記歩行者の属性情報を前記
通信部から受信
する処理と、前記制御部は、受信した属性情報を車両向けの提供情報として前記通信部に送信させる
処理と、を実行することが好ましい。
このようにすれば、属性情報の受信側である車両が、横断歩道を歩行中の歩行者の属性情報をドライバに報知することにより、ドライバに対する注意喚起を歩行者の属性ごとに行うことができる。
【0025】
(12) 本実施形態のコンピュータプログラムは、歩行者の横断支援を実行する交通信号制御機と無線通信する携帯端末のコンピュータプログラムであって、前記携帯端末の制御部が、当該携帯端末を携帯する歩行者が交差点の複数の横断方向の中から1つを選択する入力操作を受け付ける処理を実行するステップと、前記携帯端末の通信部が、選択された前記横断方向を前記交通信号制御機に送信するステップと、前記携帯端末の通信部が、前記交差点の複数の横断方向のうち、少なくとも前記歩行者が選択した横断方向についての青待ち時間及び青残り時間を含む信号情報を前記交通信号制御機から受信するステップと、前記携帯端末の制御部が、受信した前記信号情報を前記歩行者に提供するステップと、を含む。
【0026】
本実施形態のコンピュータプログラムによれば、携帯端末の制御部が、歩行者が交差点の複数の横断方向の中から1つを選択する入力操作を受け付け、携帯端末の通信部が、選択された横断方向を交通信号制御機に送信するので、歩行者が選択する横断方向を交通信号制御機に無線で指示することができる。このため、歩行者の意向に沿った適切な横断支援を、交通信号制御機に実行させることができる。
【0027】
また、携帯端末の通信部が、上記の信号情報を交通信号制御機から受信し、携帯端末の制御部が、受信した信号情報を歩行者に提供するので、歩行者にとって有益な情報となる、自身が選択した横断方向の信号情報を歩行者に提供することができる。
【0028】
(13) 本実施形態のコンピュータプログラムにおいて、前記携帯端末の制御部が、自機の現在位置と前記交通信号制御機の位置情報に基づいて、前記交通信号制御機への接近を判定する処理を実行するステップと、前記携帯端末の制御部が、前記接近を検出した場合に、前記入力操作を受け付ける処理を実行するステップと、を更に含むことが好ましい。
【0029】
このようにすれば、歩行者が横断方向の入力操作を実行できる範囲を交通信号制御機の近傍に限定することができる。従って、歩行者が横断歩道に近づいた適切なタイミングで、交通信号制御機が歩行者支援制御を開始することができる。
【0030】
(14) 本実施形態のコンピュータプログラムにおいて、前記携帯端末の通信部が、前記交差点の複数の横断方向ごとの歩行者青の最大延長時間を前記交通信号制御機から受信するステップと、前記携帯端末の制御部が、受信した前記最大延長時間に基づいて横断方向ごとの横断の可否を判定するステップと、を更に含むことが好ましい。
【0031】
この場合、携帯端末の制御部が、交通信号制御機から受信した最大延長時間に基づいて横断方向ごとの横断の可否を判定するので、横断不可の場合は注意喚起の情報提供を行うことにより、通行が間に合わない横断方向を歩行者に事前に通知することができる。このため、交通安全に有用な情報提供を歩行者に行えるようになる。
【0032】
(15) 本実施形態のコンピュータプログラムにおいて、前記携帯端末の制御部が、前記歩行者が横断歩道を通過するのに必要な横断必要時間を横断方向ごとに算出するステップと、前記携帯端末の通信部が、算出した横断方向ごとの前記横断必要時間を前記交通信号制御機に送信するステップと、を更に含むことが好ましい。
【0033】
このようにすれば、横断方向ごとの横断必要時間の受信側である交通信号制御機が、その横断必要時間を用いて、第1支援において延長する歩行者青時間を動的に設定し、歩行者の歩行速度に応じた柔軟な歩行者支援制御を行えるようになる。
【0034】
(16) 本実施形態のコンピュータプログラムにおいて、前記携帯端末の通信部が、前記交差点の複数の横断方向ごとの歩行者青の最大延長時間を前記交通信号制御機から受信するステップと、前記携帯端末の制御部が、前記交差点を2回横断する場合の横断経路で発生し得る青待ち時間と、前記横断経路の歩行に必要な横断必要時間と、受信した前記最大延長時間とに基づいて、前記交差点を2回横断する場合の横断順序を決定するステップと、前記携帯端末の制御部が、決定した前記横断順序を前記歩行者に提供するステップと、を更に含むことが好ましい。
【0035】
この場合、携帯端末の制御部が、交差点を2回横断する場合の横断順序を決定し、決定した横断順序を歩行者に提供するので、歩行者はどの横断順序が有利であるかを事前に察知することができる。従って、交差点を2回横断する必要がある歩行者に対して、有益な情報提供を行うことができる。
また、携帯端末の制御部が、最大延長時間を超える横断歩道を含む横断順序を選択対象から除外するなどの処理を実行することにより、歩行者が横断できない横断順序が推奨順序として提供されるのを防止することができる。
【0036】
(17) 本実施形態のコンピュータプログラムにおいて、前記携帯端末の通信部が、前記交差点の複数の横断方向ごとの横断に関する注意情報を前記交通信号制御機から受信するステップと、前記携帯端末の制御部が、受信した前記注意情報を更に用いて、前記横断順序を決定するステップと、を更に含むことが好ましい。
【0037】
このようにすれば、携帯端末の制御部が、注意情報に対応する横断歩道を含む横断順序を選択対象から除外するなどの処理を実行することにより、歩行が阻害される可能性がある横断順序が推奨順序として提供されるのを防止することができる。
【0038】
<本発明の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0039】
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る歩行者支援システムが設置された交差点Jの一例を示す道路平面図である。
図1に示す歩行者支援システムでは、交差点Jの近傍に位置する歩行者4からの支援要求に応じて、交通信号制御機3が、通常より長い設定青時間Tpa,Tpb(
図4参照)を歩行者青時間として歩行者4の横断を支援する「歩行者支援制御」が実行される。
【0040】
交差点Jに繋がる各道路の方向は、特に限定されない。もっとも、以下の説明では、理解の容易のため、交差点Jは、東西方向及び南北方向の各道路が交差する構造であり、東西方向を「第1方向」、南北方向を「第2方向」と定義する。
また、交差点Jの南東側の歩道角部を地点P1、交差点Jの北東側の歩道角部を地点P2、交差点Jの北西側の歩道角部を地点P3、交差点Jの南西側の歩道角部を地点P4とする。
【0041】
更に、携帯端末5を有する歩行者4は、南向き流出路に接する歩道の地点P0に存在しており、地点P1の近傍に到達した時に、第1方向及び第2方向のいずれに横断するかを決定し、携帯端末5を操作して交通信号制御機3に横断方向を指示するものとする。
なお、
図1中の「Da」は、第1方向(東西)の横断歩道の横断距離であり、
図1中の「Db」は、第2方向(南北)の横断歩道の横断距離である。
【0042】
本実施形態の歩行者支援システムは、複数の車両灯器1A,1Bと、複数の歩行者灯器2A,2Bと、交差点Jの歩道部分の支柱に取り付けられた交通信号制御機3と、歩行者4が携帯する携帯端末5とを備える。
車両灯器1A,1Bは、交差点Jに向かって走行する車両(図示せず)に通行権の有無を灯色で表示する信号灯器である。歩行者灯器2A,2Bは、交差点Jの横断歩道を通行する歩行者4に通行権の有無を灯色と点滅で表示する信号灯器である。
【0043】
車両灯器1Aは、第1方向(東西)の車道を通行する車両に通行権の有無を表示する車両灯器である。車両灯器1Bは、第2方向(南北)の車道を通行する車両に通行権の有無を表示する車両灯器である。
歩行者灯器2Aは、第1方向(東西)の横断歩道を通行する歩行者に通行権の有無を表示する歩行者灯器である。歩行者灯器2Bは、第2方向(南北)の横断歩道を通行する歩行者に通行権の有無を表示する歩行者灯器である。
【0044】
以下、交差点Jに設置された車両灯器1A,1Bと歩行者灯器2A,2Bとを総称するときは、「信号灯器1,2」という。
【0045】
交通信号制御機3は、歩行者支援制御などの地点感応制御を実行しない通常時は、交通管制センターの中央装置(図示せず)から通知された信号制御指令或いは定周期制御による所定のステップに従って、信号灯器1,2の灯色切り替えタイミングを決定する。
また、交通信号制御機3は、歩行者支援制御などの地点感応制御を行った場合には、その制御によって変更されたステップ秒数(
図4参照)に従って、信号灯器1,2の灯色切り替えタイミングを決定する。
【0046】
〔交通信号制御機の構成〕
図2は、交通信号制御機3の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、交通信号制御機3は、制御部31、灯器駆動部32、通信部33、記憶部34及び時計部35を含む。
制御部31は、1又は複数のマイクロコンピュータよりなる。制御部31は、内部バスなどを介して他のハードウェア各部32〜35と接続されており、これらのハードウェア各部32〜35の動作を制御する。
【0047】
制御部31は、中央装置の信号制御指令又は定周期制御によるステップ秒数、或いは、地点感応制御を実行した場合は変更後のステップ秒数に基づいて、灯色切り替えタイミングを決定し、決定したタイミングで灯色の切り替え信号を灯器駆動部32に入力する。
灯器駆動部32は、半導体リレー(図示せず)を備え、制御部31からの切り替え信号に基づいて、信号灯器1,2の青色灯、黄色灯、赤色灯それぞれに対応して各色の信号灯に供給される交流電圧(AC100V)又は直流電圧をオン/オフする。
【0048】
通信部33は、中央装置及び他の交通信号制御機3と有線又は無線通信を行う通信インタフェースを有する。
通信部33は、無線LAN及びBluetooth(「Bluetooth」は登録商標である。)など、携帯端末5が対応する通信プロトコルにて当該携帯端末5と無線通信を行う通信インタフェースを有する。通信部33は、所定の通信プロトコル(例えば、700MHz帯ITS規格)にて車載通信機(図示せず)と無線通信を行う通信インタフェースも有する。
【0049】
通信部33は、中央装置から信号制御指令を受信すると、受信した信号制御指令を制御部31に渡す。制御部31は、通信部33から取得した信号制御指令に従って、灯器駆動部32を制御する。
【0050】
通信部33は、携帯端末5から支援要求の制御パケット(例えば、
図10のステップST13)を受信すると、その制御パケットを制御部31に渡す。制御部31は、制御パケットに含まれる「横断方向」などの所定の情報を用いて歩行者支援制御を行う。
通信部33は、制御部31が歩行者4向けの提供情報(例えば、歩行者支援制御後の信号情報)を含む歩行者用パケット(例えば、
図10のステップST15)を生成すると、その歩行者用パケットを支援要求の送信元の携帯端末5宛てに送信する。
【0051】
通信部33は、制御部31が車両向けの提供情報(例えば、中央装置から受信した渋滞情報や、高齢者又は身障者である歩行者が横断中など)を含む車両用パケットを生成すると、その車両用パケットを道路に向けてブロードキャスト送信する。
通信部33は、車車間通信により車載通信機同士が送受信するプローブデータなど、中央装置の交通管制に有用な車両情報を車載通信機から受信すると、受信した車両情報を中央装置に転送する。
【0052】
記憶部34は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されている。記憶部34は、信号制御指令などの各種データの一時的なメモリ領域のほか、歩行者支援制御などの地点感応制御を実行するコンピュータプログラムの格納領域を備えている。
制御部31は、上記のコンピュータプログラムを記憶部34から読み出して実行することにより、歩行者支援制御などの所定の地点感応制御を実行する。なお、制御部31が行う歩行者支援制御の詳細は後述する。
【0053】
時計部35は、現在時刻を所定の精度で計時する時計装置よりなる。時計部35は、所定の周波数で動作するクロック回路を有し、この回路に初期値を与えることで現在時刻を生成することができる。
時計部35は、中央装置などの外部装置から通知された時刻、GPS時刻或いは電波時計の時刻などを受信でき、受信した時刻を用いて、クロック回路が出力する現在時刻を補正する機能を有する。
【0054】
〔携帯端末の構成〕
図3は、携帯端末5の構成例を示すブロック図である。
図3では、歩行者4が保持する携帯端末5の一例として、折り畳み式の携帯電話機とスマートフォンが例示されている。もっとも、携帯端末5は、歩行者4が携帯可能でかつ交通信号制御機3と通信可能な情報処理装置であればよく、例えば、タブレット型コンピュータやノートPCなどであってもよい。
【0055】
図3に示すように、携帯端末5は、制御部51、通信部52、記憶部53、表示部54、スピーカ55及び操作部56を含む。
通信部52は、通信キャリアの基地局装置を介した電話及びデータ通信が可能な通信インタフェースと、無線LAN及びBluetoothなどの、所定の通信プロトコルにて交通信号制御機3と無線通信する通信インタフェースとを有する。
【0056】
制御部51は、CPU、ROM及びRAMなどを含む。制御部51は、記憶部53に記憶されたOS(Operating System)などのコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、携帯端末5の全体の動作を制御する。
記憶部53は、ハードディスクや不揮発性のメモリなどより構成されており、各種のコンピュータプログラムやデータを記憶する。記憶部51は、携帯端末5の識別情報である携帯IDを記憶している。携帯IDは、例えば、契約者の固有IDやMACアドレスなどよりなる。
【0057】
記憶部53は、歩行者4(以下、「利用者」ともいう。)が自身の嗜好に応じて所定のサーバからインストールした各種のアプリケーションソフトウェア(以下、「アプリケーション」と略記する。)を記憶している。
このアプリケーションには、歩行者支援制御の実行を要求する制御パケットを送信し、支援後の信号情報などを受信して表示部54などから歩行者4に提供して、歩行者4の横断歩道の通行を支援する支援アプリケーション57が含まれる。
【0058】
表示部54は、例えば液晶ディスプレイよりなる。表示部54は、交通信号制御機3から受信した歩行者用パケットに含まれる各種の情報を利用者に表示する。
例えば、交通信号制御機3から交差点Jの図形情報を取得すると、表示部54は、図形情報から生成された交差点Jの平面図又は鳥瞰図よりなる画像データを表示する。歩行者用パケットに横断方向ごとの青残り時間及び青待ち時間が含まれる場合には、表示部54は、それらの時間情報を文字や図形などで表示する。
【0059】
スピーカ55は、交通信号制御機3から受信した歩行者用パケットに含まれる各種の情報を利用者に音声出力する。スピーカ55は、携帯端末5の内蔵スピーカでもよいし、イヤホン装着時のイヤホンスピーカでもよい。
例えば、歩行者用パケットに交差点Jの名称が含まれる場合には、制御部51は、その名称を読み上げて、スピーカ55から音声出力する。歩行者用パケットに横断方向ごとの青残り時間及び青待ち時間が含まれる場合には、制御部51は、それらの時間値を読み上げてスピーカ55から音声出力する。
【0060】
操作部56は、表示部54の画面タッチに応じて操作信号を生成するタッチインタフェース、押しボタン操作に応じて操作信号を生成する操作インタフェース、及び、マイクへの音声入力に応じて操作信号を生成する音声インタフェースなどよりなる。
操作部56は、上記の少なくとも1つのインタフェースに対する利用者の操作入力に応じた操作信号を制御部51に出力し、制御部51は、操作部56から取得した操作信号に応じた情報処理を行う。
【0061】
本実施形態の携帯端末5は、GPS信号から現在時刻を取得して時刻を補正する時刻同期機能を有する。従って、携帯端末5と交通信号制御機3の通信が確立すると、両者間のローカル時刻は同期する。
本実施形態の携帯端末5は、GPS信号から歩行者4の現在位置(緯度、経度及び高度)を計測する位置検出機能、及び、内蔵する方位センサによって歩行者4の方位及び角速度などを計測する方位検出機能なども有する。
【0062】
〔横断方向に応じた歩行者支援制御〕
図4は、制御対象である交差点Jの信号現示の一例を示す階梯図である。
図4の「第1方向(東西)」と「第2方向(南北)」は、
図1のそれらの方向と対応している。
図4において、「PG」は歩行者青、「PF」は歩行者青点滅、「PR」は歩行者赤、「Y」は黄信号、「AR」は全赤を意味する。
【0063】
図4の例では、標準的な10階梯方式が採用されている。従って、1サイクル内において、PG→PF→PR→Y→ARの順序で遷移するステップ(階梯)が、第1方向と第2方向のそれぞれについて交互に生じる。
なお、
図4の例では、理解の容易のため、十字路交差点の場合の標準的な「10階梯方式」の信号現示を例示しているが、例えば右折青矢印などのその他のステップが含まれていてもよい。
【0064】
図4中の「Ta」は、第1方向(東西)の歩行者青PGの「基準時間」を示す。基準時間Taの時間長は、歩行者支援制御を行わない場合(デフォルト)における、第1方向の歩行者青PGの時間長である。図示の例では、Ta=12秒である。
図4中の「Tb」は、第2方向(南西)の歩行者青PGの「基準時間」を示す。基準時間Tbの時間長は、歩行者支援制御を行わない場合(デフォルト)における、第2方向の歩行者青PGの時間長である。図示の例では、Tb=22秒である。
【0065】
図4中の「Tpa」は、第1方向の歩行者青PGを延長する歩行者支援を実行する場合の「設定青時間」を示す。
設定青時間Tpaの時間長は、高齢者や身障者が第1方向の横断距離Da(
図1参照)を比較的ゆっくり通行できるように、基準時間Taよりも長い時間長に設定されている。図例では、Tpa=22秒である。
【0066】
図4中の「Tpb」は、第2方向の歩行者青PGを延長する歩行者支援を実行する場合の「設定青時間」を示す。
設定青時間Tpbの時間長は、高齢者や身障者が第2方向の横断距離Db(
図1参照)を比較的ゆっくり通行できるように、基準時間Tbよりも長い時間長に設定されている。図例では、Tpb=27秒である。
【0067】
交通信号制御機3の制御部31は、携帯端末5から受信した支援要求の制御パケットに含まれる横断方向に応じて、第1方向(東西)及び第2方向(南北)のいずれの方向で歩行者支援制御を行うか否かを決定する。
すなわち、制御部31は、支援要求の制御パケットに含まれる横断方向が「第1方向」である場合は、第1方向の歩行者青PGを延長し、支援要求の制御パケットに含まれる横断方向が「第2方向」の場合は、第2方向の歩行者青PGを延長する。
【0068】
制御部31は、第1方向(東西)を指定する支援要求を受信すると、その受信タイミングに応じて、延長する第1方向の歩行者青PGの時間帯を選択する。
すなわち、制御部31は、第1方向の支援要求がステップ1の期間中にあった場合は、当該ステップ1の歩行者青PGの基準時間Taを設定青時間Tpaに延長する。また、制御部31は、第1方向の支援要求がステップ2〜10の期間中にあった場合は、次の直近の第1方向の歩行者青PGの基準時間Taを設定青時間Tpaに延長する。
【0069】
制御部31は、第2方向(南北)を指定する支援要求を受信すると、その受信タイミングに応じて、延長する第2方向の歩行者青PGの時間帯を選択する。
すなわち、制御部31は、第2方向の支援要求がステップ6の期間中にあった場合は、当該ステップ6の歩行者青PGの基準時間Tbを設定青時間Tpbに延長する。また、制御部31は、第2方向の支援要求がステップ1〜5,7〜10の期間中にあった場合は、次の直近の第2方向の歩行者青PGの基準時間Tbを設定青時間Tpbに延長する。
【0070】
制御部31は、第1方向の歩行者青PGを設定青時間Tpaに延長した場合には、同じサイクル内の残りの所定のステップの時間長を短縮するか、或いは、次のサイクル内の所定のステップの時間長を短縮し、系統がずれないように(オフセットがずれないように)調整する。
例えば、制御部31は、第1方向の歩行者青PGの増加時間(=Tpa−Ta)を、第2方向の歩行者青PGの基準時間Tbから減算した時間値(=Tb−Tpa+Ta:図例では12秒)を、次回の第2方向の歩行者青PGの時間長とする。
【0071】
制御部31は、第2方向の歩行者青PGを設定青時間Tpbに延長した場合にも、同じサイクル内の残りの所定のステップの時間長を短縮するか、或いは、次のサイクル内の所定のステップの時間長を短縮し、系統がずれないように(オフセットがずれないように)調整する。
例えば、制御部31は、第2方向の歩行者青PGの増加時間(=Tpb−Tb)を、第1方向の歩行者青PGの基準時間Taから減算した時間値(=Ta−Tpb+Tb:図例では7秒)を、次回の第1方向の歩行者青PGの時間長とする。
【0072】
〔歩行者向けの提供情報の内容〕
交通信号制御機3の制御部31は、横断方向に応じた上記の歩行者支援制御を実行すると、歩行者向けの提供情報を生成する。
歩行者向けの提供情報には、例えば、現在時刻tpにおける第1方向及び第2方向についての「青残り時間」及び「青待ち時間」と、現在時刻tp以降の各ステップの予定秒数などが含まれる。
【0073】
図5は、青残り時間と青待ち時間の算出方法の一例を示す説明図である。
図5において、「tp」は現在時刻である。ここでは、現在時刻tpはステップ6の開始時点であるとする。
「Tr0」は、歩行者青PGを変更しない場合の第2方向の青残り時間、「Tr1」は、第1方向の歩行者青PGを延長する場合の第2方向の青残り時間、「Tr2」は、第2方向の歩行者青PGを延長する場合の第2方向の青残り時間を示す。
【0074】
「Tw0」は、歩行者青PGを変更しない場合の第1方向の青待ち時間、「Tw1」は、第1方向の歩行者青PGを延長する場合の第1方向の青待ち時間、「Tw2」は、第2方向の歩行者青PGを延長する場合の第1方向の青待ち時間を示す。
「Tg0」は、歩行者青PGを変更しない場合の第1方向の次の歩行者青時間、「Tg1」は、第1方向の歩行者青PGを延長する場合の第1方向の次の歩行者青時間、「Tw2」は、第2方向の歩行者青PGを延長する場合の第1方向の次の歩行者青時間を示す。
【0075】
図5に示すように、現在時刻tpがステップ6の開始時刻である場合には、第1方向(東西)の横断に通行権がないので、第1方向の横断歩道を通行したい歩行者4にとっては、次の歩行者青まで通行できない青待ち状態となる。
従って、制御部31は、第1方向については、青待ち時間Tw0,Tw1,Tw2と、次の歩行者青時間Tg0,Tg1,Tg2を算出し、歩行者向けの提供情報とする。
【0076】
具体的には、制御部31は、歩行者青PGを変更する前のステップ1及びステップ6の秒数を用いて、支援前の青待ち時間Tw0と次の歩行者青時間Tg0を算出する。図示の例では、Tw0=40秒となり、Tg0=12秒となる。
制御部31は、第1方向の歩行者青PG(ステップ1)を延長して、ステップ1及びステップ6の秒数を変更した場合には、変更後のステップ1及びステップ6の秒数を用いて、青待ち時間Tw1と次の歩行者青時間Tg1を算出する。図示の例では、Tw1=30秒となり、Tg1=22秒となる。
【0077】
制御部31は、第2方向の歩行者青PG(ステップ6)を延長して、ステップ1及びステップ6の秒数を変更した場合には、変更後のステップ1及びステップ6のステップ秒数を用いて、青待ち時間Tw2と次の歩行者青時間Tg2を算出する。図示の例では、Tw2=45秒となり、Tg2=7秒となる。
【0078】
図5に示すように、現在時刻tpがステップ6の開始時刻である場合には、第2方向(東西)の横断方向に通行権があるので、第2方向の横断歩道を通行したい歩行者4にとっては、信号待ちせずにそのまま横断歩道を通行できる状態となる。
従って、制御部31は、第2方向については、青残り時間Tr0,Tr1,Tr2を算出し、歩行者向けの提供情報とする。
【0079】
具体的には、制御部31は、歩行者青PGを変更する前のステップ6の秒数を用いて、支援前の青残り時間Tr0を算出する。図示の例では、Tr0=30秒となる。
制御部31は、第1方向の歩行者青PG(ステップ1)を延長して、ステップ6の秒数を変更した場合には、変更後のステップ6の秒数を用いて、青残り時間Tr1を算出する。図示の例では、Tr1=22秒となる。
【0080】
制御部31は、第2方向の歩行者青PG(ステップ6)を延長して、ステップ6の秒数を変更した場合には、変更後のステップ6のステップ秒数を用いて、青残り時間Tr2を算出する。図示の例では、Tr2=37秒となる。
【0081】
制御部31は、第1方向の歩行者青PGを延長した場合には、現時点における下記の信号情報を所定時間(例えば1秒)が経過するごとに算出し、算出した信号情報を現時点における歩行者向けの提供情報とする。
a1)第1方向の横断支援後の第1方向の青待ち時間Tw1と次の歩行者青時間Tg1
a2)第1方向の横断支援後の第2方向の青残り時間Tr1
a3)第1方向の横断支援後の現在時刻tp以降の各ステップの秒数
【0082】
制御部31は、第2方向の歩行者青PGを延長した場合には、現時点における下記の信号情報を所定時間(例えば1秒)が経過するごとに算出し、算出した信号情報を現時点における歩行者向けの提供情報とする。
b1)第2方向の横断支援後の第1方向の青待ち時間Tw2と次の歩行者青時間Tg2
b2)第2方向の横断支援後の第2方向の青残り時間Tr2
b3)第2方向の横断支援後の受信時刻tp移行の各ステップの秒数
【0083】
本実施形態では、制御部31は、現時点における横断支援前の下記の信号情報を所定時間(例えば1秒)が経過するごとに算出し、算出した信号情報を現時点における歩行者向けの提供情報とする。
c1)横断支援前の第1方向の青待ち時間Tw0と次の歩行者青時間Tg0
c2)横断支援前の第1方向の青残り時間Tr0
c3)横断支援前の受信時刻tp以降の各ステップの秒数
【0084】
なお、横断支援前の上記の信号情報については、支援要求の有無に関係なく、常に外部に送信して携帯端末5に提供することにしてもよい。
また、第1方向又は第2方向のいずれかの横断方向について横断支援を行った結果、横断支援後の信号情報を送信することになった場合は、横断支援前の上記の信号情報については、携帯端末5に送信せずに提供を省略することにしてもよい。
【0085】
交通信号制御機3の制御部31は、上記のようにして信号情報を所定時間ごとに算出すると、算出した信号情報を、支援要求の送信元の携帯IDを送信先とする歩行者用パケットに含める。
制御部31は、上記の歩行者用パケットの送信を、信号情報の算出周期(例えば1秒)ごとに実行する。
【0086】
図5の例では、現在時刻tpがステップ6の開始時点である場合を例示したが、例えば現在時刻tpがステップ2〜ステップ5に含まれる場合など、第1方向及び第2方向の双方の横断方向が青待ち状態となる場合がある。
この場合、制御部31は、第1方向及び第2方向の双方について、現時点における青待ち時間と次の歩行者青時間を、所定の算出周期ごとに算出することになる。
【0087】
〔携帯端末に対する横断方向の入力操作〕
次に、歩行者4が携帯端末5に対して実行可能な横断方向の入力操作を説明する。横断方向の入力操作があった場合の情報処理は、携帯端末5の制御部51が実行する支援アプリケーション57に備わる機能の1つである。
【0088】
ここで、歩行者4の携帯端末5が、交通信号制御機3と無線通信できる範囲であり、かつ、いずれかの地点P1〜P4に比較的近い位置に存在するとする。
この場合、歩行者4が携帯端末5の操作部56に所定の入力操作を行うと、制御部51は、交通信号制御機3宛ての支援要求の制御パケットを生成し、生成した制御パケットを通信部52に無線送信させる。携帯端末5が生成する制御パケットには、歩行者4が横断したい方向を示す「横断方向」と、携帯端末5の「携帯ID」などが含まれる。
【0089】
携帯端末5に対する横断方向の入力操作は、携帯端末5の操作部56が備えるインタフェースに応じて、種々の方法を採用し得る。例えば、
図6は、タッチパネル式の表示部54に適した、横断方向の入力操作が可能な表示画面58の一例である。
図6の例では、携帯端末5の表示部54は、交差点Jに対応する画像を表示部54の表示画面58に表示し、この表示画面58に、第1方向(東西)及び第2方向(南北)にそれぞれ対応する太い矢印59A,59Bを表示する。
【0090】
表示画面58の交差点画像の元データは、交通信号制御機3から提供されたデータであってもよいし、携帯端末5が予め記憶するデータであってもよい。
図6において、歩行者4が表示画面58の第1方向の矢印59Aをタッチすると、制御部51は、支援要求の制御パケットに含める横断方向を第1方向とする。
逆に、歩行者4が表示画面58の第2方向の矢印59Bをタッチすると、制御部51は、支援要求の制御パケットに含める横断方向を第2方向とする。
【0091】
その他、音声入力に対応する携帯端末5の場合は、歩行者4の進行予定方向や当該進行予定方向に対応する方面を、歩行者4が携帯端末5に向けて発声することによって行うことにしてもよい。音声入力は、目の見えない身障者の場合に役立つ。
また、カメラ機能及びAR(Augmented Reality)機能を有する携帯端末5の場合は、歩行者4が横断したい横断方向に向けて携帯端末5を差し出し、表示部54に写し出された横断歩道の映像をタッチすることによって行うことにしてもよい。
【0092】
〔携帯端末による情報提供処理〕
次に、携帯端末5が、交通信号制御機3から受信した信号情報を歩行者4に提供する情報提供処理の一例を説明する。この情報提供処理は、制御部51が実行する支援アプリケーション57に備わる機能の1つである。
【0093】
図7及び
図8は、青待ち時間と青残り時間の表示画面58に対する表示例を示す説明図である。
このうち、
図7は、歩行者4による横断方向の指定に応じて、第1方向(東西)の横断支援を行った交通信号制御機3から受信した信号情報の表示例である。また、
図8は、歩行者4による横断方向の指定に応じて、第2方向(南北)の横断支援を行った交通信号制御機3から受信した信号情報の表示例である。
【0094】
図7及び
図8の表示例は、
図5の現在時刻tpにおける各信号情報(Tw1及びTg1、Tw2及びTg2、Tr1、Tr2など)を、携帯端末5が受信して歩行者4に提供する場合を例示している。従って、
図7及び
図8の表示例における各信号情報の秒数は、
図5に示す各信号情報の秒数と一致している。
【0095】
図7に示すように、制御部31は、第1方向(東西)の矢印59Aを黒塗りで表示するなどにより、歩行者4が入力操作により指定した横断方向(
図7の場合は第1方向)を識別可能に表示する。
制御部31は、横断支援後の信号情報の表示領域として、各矢印59A,59Bの先に大きめの表示領域を表示する。制御部31は、大きめの表示領域に横断支援後の信号情報を表示する。
【0096】
例えば、矢印59Aの先の大きめの表示領域には、第1方向の横断支援後の第1方向の青待ち時間Tw1と次の歩行者青時間Tg1が、「青開始まで30秒 青時間22秒」のように表示される。
これにより、歩行者4は、自身が指定した第1方向の横断支援が行われた場合の、第1方向の青待ち時間Tw1と歩行者青時間Tg1を察知できる。
【0097】
また、矢印59Bの先の大きめの表示領域には、第1方向の横断支援後の第2方向の青残り時間Tr1が、「青残り22秒」のように表示される。
これにより、歩行者4は、自身が指定した第1方向の横断支援が行われた場合の、第2方向の青残り時間Tr1を察知できる。
【0098】
制御部31は、横断支援前の信号情報の表示領域として、各矢印59A,59Bの先の大きめの表示領域の上に小さめの表示領域を表示する。制御部31は、小さめの表示領域に横断支援前の信号情報を表示する。
【0099】
例えば、矢印59Aの先の小さめの表示領域には、横断支援前の第1方向の青待ち時間Tw0と次の歩行者青時間Tg0が、「青開始まで40秒 青時間12秒」のように表示される。
従って、歩行者4は、各表示領域に表示された信号情報の数値を対比することにより、自身が指定した第1方向の横断支援が行われた場合の、第1方向の青待ち時間の減少量と歩行者青時間の増加量を察知できる。
【0100】
また、矢印59Bの先の小さめの表示領域には、横断支援前の第2方向の青残り時間Tr0が、「青残り32秒」のように表示される。
従って、歩行者4は、各表示領域に表示された信号情報の数値を対比することにより、自身が指定した第1方向の横断支援が行われた場合の、第2方向の青残り時間の減少量を察知できる。
【0101】
図8に示すように、制御部31は、第2方向(南北)の矢印59Bを黒塗りで表示するなどにより、歩行者4が入力操作により指定した横断方向(
図8の場合は第2方向)を識別可能に表示する。
制御部31は、横断支援後の信号情報の表示領域として、各矢印59A,59Bの先に大きめの表示領域を表示する。制御部31は、大きめの表示領域に横断支援後の各時間情報を表示する。
【0102】
例えば、矢印59Bの先の大きめの表示領域には、第2方向の横断支援後の第2方向の青残り時間Tr2が、「青残り37秒」のように表示される。
これにより、歩行者4は、自身が指定した第2方向の横断支援が行われた場合の、第2方向の青残り時間Tr2を察知できる。
【0103】
また、矢印59Aの先の大きめの表示領域には、第2方向の横断支援後の第1方向の青待ち時間Tw2と次の歩行者青時間Tg2が、「青開始まで45秒 青時間7秒」のように表示される。
これにより、歩行者4は、自身が指定した第2方向の横断支援が行われた場合の、第1方向の青待ち時間Tw2と歩行者青時間Tg2を察知できる。
【0104】
制御部31は、横断支援前の信号情報の表示領域として、各矢印59A,59Bの先の大きめの表示領域の上に小さめの表示領域を表示する。制御部31は、小さめの表示領域に横断支援前の信号情報を表示する。
【0105】
例えば、矢印59Bの先の小さめの表示領域には、横断支援前の第2方向の青残り時間Tr0が、「青残り32秒」のように表示される。
従って、歩行者4は、各表示領域に表示された信号情報の数値を対比することにより、自身が指定した第2方向の横断支援が行われた場合の、第2方向の青残り時間の増加量を察知できる。
【0106】
また、矢印59Aの先の小さめの表示領域には、横断支援前の第2方向の青待ち時間Tw0と次の歩行者青時間Tg0が、「青開始まで40秒 青時間12秒」のように表示される。
従って、歩行者4は、各表示領域に表示された信号情報の数値を対比することにより、自身が指定した第2方向の横断支援が行われた場合の、第1方向の青残り時間の増加量と歩行者青時間の減少量を察知できる。
【0107】
前述の通り、交通信号制御機3は、所定時間(例えば1秒)ごとに信号情報を算出して歩行者用パケットにて送信するので、携帯端末5は、現時点の信号情報を例えば1秒ごとに取得する。
このため、制御部31は、
図7及び
図8の表示画面58において、各表示領域に表示される信号情報の秒数を1秒ごとに更新することができる。これにより、青待ち時間などの信号情報の秒数が、カウントダウン方式にて表示される。
【0108】
図7及び
図8の表示例では、歩行者4が指定した横断方向以外の信号情報を表示しているが、この表示を省略し、歩行者4が指定した横断方向の信号情報のみを表示することにしてもよい。
【0109】
図7及び
図8の表示例では、横断支援前後の信号情報の種類ごとの秒数を、2種類の表示領域に分けて表示しているが、横断支援前後の秒数の増加量又は減少量を用いて、1つの表示領域に纏めることにしてもよい。
例えば、信号情報の種類(Tw,Tg又はTr)ごとに、横断支援後の秒数と、横断支援前後で変化した秒数の増加量又は減少量とを、1つの表示領域に纏める場合には、次のような表示形式が考えられる。
【0110】
すなわち、
図7の場合は、指定方向である矢印59Aの先の1つの表示領域に、「青開始まで30秒(10秒↓)」及び「青時間22秒(10秒↑)」と表示し、非指定方向である矢印59Bの先の1つの表示領域に、「青残り22秒(10秒↓)」と表示する。なお、「↑」は時間の増加を表し、「↓」は時間の減少を表す。
図8の場合は、指定方向である矢印59Bの先の1つの表示領域に、「青残り37秒(5秒↑)」と表示し、非指定方向である矢印59Aの先の1つの表示領域に、「青開始まで45秒(5秒↑)」及び「青時間7秒(5秒↓)」と表示する。
【0111】
また、信号情報の種類(Tw,Tg又はTr)ごとに、横断支援後の秒数と、これを算出するための横断支援前の秒数を含む簡単な算出式とを、1つの表示領域に纏める場合には、次のような表示形式が考えられる。
【0112】
すなわち、
図7の場合は、指定方向である矢印59Aの先の1つの表示領域に、「青開始まで30秒(40秒−10秒)」及び「青時間22秒(12秒+10秒)」と表示し、非指定方向である矢印59Bの先の1つの表示領域に、「青残り22秒(32秒−10秒)」と表示する。
図8の場合は、指定方向である矢印59Bの先の1つの表示領域に、「青残り37秒(32秒+5秒)」と表示し、非指定方向である矢印59Aの先の1つの表示領域に、「青開始まで45秒(40秒+5秒)」及び「青時間7秒(12秒−5秒)」と表示する。
【0113】
図9は、青待ち時間と青残り時間の表示画面58に対する別の表示例を示す説明図である。
図9の表示例は、歩行者4が横断方向を指定する前(横断支援前)に、制御部31が表示画面58に表示する情報の例を示している。
この場合、制御部31は、横断支援前の信号情報の表示領域を、各矢印59A,59Bの先に1つずつ表示する。制御部31は、それらの表示領域に横断支援前の各時間情報を表示する。
【0114】
例えば、矢印59Aの先の表示領域には、横断支援前の第1方向の青残り時間Tw0と次の歩行者青時間Tg0が、「青開始まで40秒 青時間12秒」のように表示される。また、矢印59Bの先の表示領域には、横断支援前の第2方向の青残り時間Tr0が、「青残り32秒」のように表示される。
このように、携帯端末5は、例えば横断支援前の信号情報のみを受信した場合に、その信号情報のみを表示画面58に表示することにしてもよい。
【0115】
図7〜
図9の表示例では、青待ち時間や青残り時間などの信号情報を、所定の表示領域に数値で表示しているが、棒グラフや円グラフなどの種々の形状で数値を表現することにより、インディケータ方式で信号情報を表示することにしてもよい。
また、青待ち時間や青残り時間などの信号情報の歩行者4への提供は、スピーカ55の音声出力によって行うこともできる。音声出力による信号情報の提供は、目の見えない身障者の場合に役立つ。
【0116】
〔第1の通信手順〕
図10は、歩行者支援システムを構成する交通信号制御機3と携帯端末5の通信手順の一例(第1の通信手順)を示すシーケンス図である。
図10では、「交通信号制御機3」と「携帯端末5」が処理主体となっているが、実際の処理主体は、交通信号制御機3の制御部31(
図2参照)と、携帯端末5の制御部51(
図3参照)である。この点は、後述する
図11の場合も同様である。
【0117】
図10の通信手順は、交通信号制御機3の通信部33が、無線LANなどにより携帯端末5と比較的広い範囲(例えば数10m)で通信可能な場合に適した通信手順である。
図10に示すように、交通信号制御機3は、通信部33からブロードキャストパケットを所定時間おきに送信している(ステップST10)。このパケットには、交通信号制御機3の位置情報など、歩行者支援制御の実行位置にほぼ対応する位置情報と、交差点Jの図形情報などが含まれる。
【0118】
携帯端末5は、ブロードキャストパケットを受信すると、そのパケットに含まれる位置情報を用いて、交通信号制御機3に接近したか否かを判定する接近判定処理を実行する(ステップST11)。
具体的には、携帯端末5は、受信パケットに含まれる位置情報と自身の現在位置の間の距離を算出し、この距離が所定の閾値以下であるか否かを判定する。携帯端末5は、閾値以下の場合は接近と判断し、次の入力受付処理を実行する(ステップST12)。
【0119】
このように、接近判定処理の判定結果が肯定的である場合に、入力受付処理を実行するようにすれば、歩行者4が横断方向の入力操作を実行できる範囲を、交通信号制御機3の近傍に限定することができる。
従って、比較的広い通信範囲の通信部33を採用する交通信号制御機3の場合であっても、歩行者4が横断歩道に近づいた適切なタイミングで、交通信号制御機3が歩行者支援制御を開始することができる。
【0120】
入力受付処理は、歩行者4による携帯端末5に対する横断方向の入力操作を受け付ける処理である。入力受付処理は、例えば
図6の表示画面58に示すように、交差点Jの図形情報から生成した画像データを表示部54に表示することによって行われる。
その後、表示画面58に対するタッチ操作などにより、歩行者4が横断方向を入力すると、携帯端末5は、支援要求の制御パケットを交通信号制御機3に送信する(ステップST13)。
【0121】
支援要求の制御パケットには、歩行者4が指定した横断方向(第1方向又は第2方向の種別)と、携帯端末5の携帯IDが含まれる。
交通信号制御機3は、支援要求の制御パケットを受信すると、そのパケットに含まれる横断方向に応じた歩行者支援制御を行う(ステップST14)。すなわち、第1方向が指定された場合は第1方向の歩行者青PGを延長し、第2方向が指定された場合は第2方向の歩行者青PGを延長する。
【0122】
次に、交通信号制御機3は、第1方向又は第2方向の歩行者青時間を延長した後の信号情報を所定時間ごとに算出し、算出した信号情報を含む歩行者用パケットを所定時間ごとに携帯端末5に送信する(ステップST15)。
この歩行者用パケットには、横断支援前及び横断支援後における第1方向及び第2方向ごとの青待ち時間及び青残り時間などの信号情報が含まれる。
【0123】
携帯端末5は、歩行者用パケットを受信すると、そのパケットに含まれる信号情報を歩行者4に提供する情報提供処理を行う(ステップST16)。
情報提供処理は、例えば、横断支援前及び横断支援後における第1方向及び第2方向ごとの青待ち時間及び青残り時間を、表示部54に表示することによって行われる(
図7及び
図8参照)。
【0124】
〔第2の通信手順〕
図11は、歩行者支援システムを構成する交通信号制御機3と携帯端末5の通信手順の別例(第2の通信手順)を示すシーケンス図である。
図11の通信手順は、交通信号制御機3の通信部33が、Bluetoothなどにより携帯端末5と比較的狭い範囲で通信する場合に適した通信手順である。
【0125】
ここでは、交通信号制御機3の通信部33が、交差点Jの四隅の地点P1〜P4にそれぞれ設置された、比較的狭い通信範囲(例えば10m以内)の通信インタフェースを備えるものとする。
従って、歩行者4の携帯端末5が通信部33からパケットを受信できた場合には、歩行者4が、交差点Jの四隅のいずれかの地点P1〜P4の近傍(例えば10m以内)に位置すると判断できる。
【0126】
図11に示すように、交通信号制御機3は、通信部33からブロードキャストパケットを所定時間ごとに送信している(ステップST20)。このパケットには、横断支援前の第1方向及び第2方向ごとの青待ち時間及び青残り時間と、交差点Jの図形情報などが含まれる。
上記の通り、携帯端末5がパケットを受信すれば、歩行者4がいずれかの地点P1〜P4の近傍に位置すると見なせるので、携帯端末5は接近判定処理を行わない。
【0127】
携帯端末5は、ブロードキャストパケットを受信すると、そのパケットに含まれる信号情報を歩行者4に提供する第1の情報提供処理を行う(ステップST21)。
第1の情報提供処理は、例えば、横断支援前における第1方向及び第2方向ごとの青待ち時間及び青残り時間を、表示部54に表示することによって行われる(
図9参照)。すなわち、第1の情報提供処理の段階では、横断支援後の信号情報が提供されていないので、横断支援前の信号情報のみが歩行者4に提供される。
【0128】
次に、表示画面58に対するタッチ操作などにより、歩行者4が横断方向を入力すると、携帯端末5は、支援要求の制御パケットを交通信号制御機3に送信する(ステップST22)。
【0129】
支援要求の制御パケットには、歩行者4が指定した横断方向(第1方向又は第2方向の種別)と、携帯端末5の携帯IDが含まれる。
交通信号制御機3は、支援要求の制御パケットを受信すると、そのパケットに含まれる横断方向に応じた歩行者支援制御を行う(ステップST23)。すなわち、第1方向が指定された場合は第1方向の歩行者青PGを延長し、第2方向が指定された場合は第2方向の歩行者青PGを延長する。
【0130】
次に、交通信号制御機3は、第1方向又は第2方向の歩行者青時間を延長した後の信号情報を所定時間ごとに算出し、算出した信号情報を含む歩行者用パケットを所定時間ごとに携帯端末5に送信する(ステップST24)。
この歩行者用パケットには、横断支援後における第1方向及び第2方向ごとの青待ち時間及び青残り時間などの信号情報が含まれる。
【0131】
携帯端末5は、歩行者用パケットを受信すると、そのパケットに含まれる信号情報を歩行者4に提供する第2の情報提供処理を行う(ステップST25)。
第2の情報提供処理は、例えば、既に表示済みの横断支援前おける第1方向及び第2方向ごとの青待ち時間及び青残り時間に加えて、新たに取得した横断支援後における第1方向及び第2方向ごとの青待ち時間及び青残り時間を、表示部54に表示することによって行われる(
図7及び
図8参照)。
【0132】
〔青待ち時間の短縮(赤時間短縮)〕
上述の実施形態では、歩行者4が身障者や高齢者などであることを想定し、横断方向の指定を伴う携帯端末5からの支援要求を、当該指定方向の歩行者青時間の延長を要求する指令であると見なしている(第1支援)。
しかし、歩行者4の属性に関係なく、歩行者4が横断したい方向の赤時間を短縮することも、広い意味で歩行者4に対する横断支援であると言える。
【0133】
そこで、歩行者4が指定する横断方向を含む支援要求を、交通信号制御機3が携帯端末5から受信した場合に、指定された横断方向に対する青待ち時間の短縮(赤時間短縮)を行うことにしてもよい(第2支援)。
この場合、例えば、横断方向を含む支援要求の受信タイミングに応じて、青待ち時間の短縮又は歩行者青時間の延長のいずれの支援を要求する指令であるかを判断することにしてもよい。
【0134】
すなわち、例えば、第1方向を指定する支援要求を受信し、その受信時点の第1方向が青待ち状態である場合には、青待ち時間を短縮する支援を要求する指令であると見なし、第1方向の青待ち時間を短縮(例えば、第2方向の歩行者青時間を短縮)すればよい。
【0135】
逆に、第1方向を指定する支援要求を受信し、その受信時点の第1方向が歩行者青である場合には、青残り時間を延長する支援を要求する指令であると見なし、第1方向の歩行者青時間を延長すればよい。
【0136】
また、横断方向の種別だけでなく、青延長要求又は赤短縮要求の種別を携帯端末5に入力し、支援要求に含まれる横断方向の種別と、青延長要求又は赤短縮要求の種別の組み合わせに応じて、交通信号制御機3が歩行者支援制御を行うことにしてもよい。
この場合、例えば、第1方向を指定しかつ青延長要求を指定する支援要求があった場合には、交通信号制御機3は、第1方向の歩行者青を延長できる所定のタイミングで、第1歩行者の歩行者青を延長すればよい。
【0137】
以上の説明から明らかな通り、本実施形態の交通信号制御機3は、下記に定義する第1支援及び第2支援の少なくとも1つを含む横断支援を実行可能であり、通信部33が受信した横断方向(歩行者4が指定する横断方向)に対して、第1支援又は第2支援を行うものであればよい。
第1支援:歩行者4が選択した横断方向についての歩行者青時間の延長
第2支援:歩行者4が選択した横断方向についての青待ち時間の短縮
【0138】
〔2回横断時の最適な横断順序の判定処理〕
図12は、2回横断時の最適な横断順序の判定処理を示す説明図である。
「2回横断」とは、歩行者4が目的地に到達するために、交差点Jを2回横断する必要がある場合のことをいう。ここでは、歩行者4が地点P1から地点P3に向かうため、P1→P2→P3の第1経路と、P1→P4→P3の第2経路のいずれかを選択し得る場合を想定する。
【0139】
図12に示す各変数Wij,Cijの定義は、次の通りである。
Wij:地点Piから地点Pjに向かう場合の地点Pjでの「青待ち時間」
Cij:地点Piから地点Pjの横断歩道の通行に必要な「横断必要時間」
ここで、携帯端末5の記憶部53は、歩行者4の歩行速度Vp(設定値でも計測値でもよい。)と、交通信号制御機3から提供された第1方向及び第2方向の横断距離Da,Db(
図1参照)とを記憶しているとする。
【0140】
従って、携帯端末5の制御部51は、横断必要時間C12,C23,C14,C43を次式により算出することができる。
C14=C23=Da/Vp
C12=C43=Db/Vp
【0141】
また、交通信号制御機3から取得する信号情報に、次のサイクルのステップの予定秒数が含まれているとする。従って、携帯端末5の制御部51は、各地点P1,P2,P4で発生する将来の青待ち時間W12,W23,W14,W43を算出できる。そこで、制御部51は、第1経路及び第2経路の通行時間を、次式によって算出する。
第1経路の通行時間 ΣT1=W12+C12+W23+C23
第2経路の通行時間 ΣT2=W14+C14+W43+C43
【0142】
その後、制御部51は、ΣT1とΣT2の大小を比較し、ΣT1<ΣT2の場合には、P1→P2→P3の第1経路の横断順序を推奨順序として歩行者4に提供する。
また、制御部51は、ΣT1>ΣT2の場合には、P1→P4→P3の第2経路の横断順序を推奨順序として歩行者4に提供する。
【0143】
このように、携帯端末5の制御部51が、交差点Jを2回横断する場合の横断経路で発生し得る青待ち時間と、横断経路の歩行に必要な横断必要時間とに基づいて、横断順序の判定処理を実行し、その判定結果を歩行者4に提供すれば、歩行者4はどの横断順序が有利であるかを事前に察知することができる。
従って、交差点Jを2回横断する必要がある歩行者4に対して、有益な情報提供を行うことができる。
【0144】
第1方向及び第2方向の歩行者青PGに適用し得る、後述の最大延長時間Tma,Tmbが判明している場合には、携帯端末5の制御部51は、最大延長時間Tma,Tmbを超える横断歩道を含む横断順序を選択対象から除外することが好ましい。
このようにすれば、歩行者4が横断できない横断順序が推奨順序として提供されるのを防止することができる。
【0145】
また、後述する横断に関する注意情報(歩行を阻害する可能性があるハザード情報)を交通信号制御機3から受信している場合には、携帯端末5の制御部51は、注意情報に対応する横断歩道を含む横断順序を選択対象から除外することが好ましい。
このようにすれば、歩行が阻害される可能性がある横断順序が推奨順序として提供されるのを防止することができる。
【0146】
〔複数の交差点を横断する最適な歩行経路の判定処理〕
図13は、複数の交差点J1,J2を横断する場合の最適な歩行経路の判定処理を示す説明図である。
ここでは、歩行者4が交差点J1の地点P1から隣接する交差点J2の地点P5に向かうため、次の4種類の経路のいずれかを選択し得る場合を想定する。
【0147】
第1経路:P1→P2→P3→P4→P5
第2経路:P1→P8→P3→P4→P5
第3経路:P1→P8→P7→P4→P5
第4経路:P1→P8→P7→P6→P5
【0148】
図13に示す各変数Wij,Cij,Dmnの定義は、次の通りである。
Wij:地点Piから地点Pjに向かう場合の地点Pjでの「青待ち時間」
Cij:地点Piから地点Pjの横断歩道の通行に必要な「横断必要時間」
Dmn:地点Pmから地点Pnの歩道の通行に必要は「歩行必要時間」
前述の通り、歩行者4の歩行速度Vp(設定値でも計測値でもよい。)と、交差点J1,J2の横断距離Da,Db(
図1参照)を携帯端末5が記憶しているとすれば、携帯端末5の制御部51は、横断必要時間Cijと歩行必要時間Dmnを算出できる。
【0149】
また、交差点J1の交通信号制御機3から取得する信号情報に、交差点J2についてのステップの予定秒数も含まれているとする。従って、携帯端末5の制御部51は、各地点P1,P2,P4,P8,P7,P6で発生する将来の青待ち時間Wijを算出できる。そこで、制御部51は、第1経路〜第4経路の通行時間を、次式によって算出する。
【0150】
第1経路の通行時間 ΣT1=(W12+C12)+(W23+C23)+D34+(W45+C45)
第2経路の通行時間 ΣT2=(W18+C18)+(W83+C83)+D34+(W45+C45)
第3経路の通行時間 ΣT3=(W18+C18)+D87+(W74+C74)+(W45+C45)
第4経路の通行時間 ΣT4=(W18+C18)+D87+(W76+C76)+(W65+C65)
その後、制御部51は、ΣT1〜ΣT4が最小となる歩行経路を選択し、その歩行経路を推奨経路として歩行者4に提供する。
【0151】
このように、携帯端末5の制御部51が、複数の交差点J1,J2の信号予定時間に基づいて、最適な歩行経路の判定処理を実行し、判定結果を歩行者4に提供すれば、歩行者4は、どの歩行経路が有利かを事前に察知することができる。
従って、複数の交差点J1,J2を横断する歩行経路を採用する歩行者4に対して、有益な情報提供を行うことができる。
【0152】
なお、複数の交差点を横断する最適な歩行経路の判定処理においても、各交差点J1,J2の歩行者青PGに適用し得る、後述の最大延長時間Tma,Tmbが判明している場合には、携帯端末5の制御部51は、最大延長時間Tma,Tmbを超える横断歩道を含む歩行経路を選択対象から除外することが好ましい。
このようにすれば、歩行者4が横断できない横断歩道を含む歩行経路が推奨経路として提供されるのを防止することができる。
【0153】
また、後述する横断に関する注意情報(歩行を阻害する可能性があるハザード情報)を交通信号制御機3から受信している場合には、携帯端末5の制御部51は、注意情報に対応する横断歩道を含む歩行経路を選択対象から除外することが好ましい。
このようにすれば、歩行が阻害される可能性がある横断歩道を含む歩行経路が推奨経路として提供されるのを防止することができる。
【0154】
〔第1の変形例〕
上述の実施形態において、交通信号制御機3は、携帯端末5にブロードキャストするパケットに、第1方向及び第2方向の横断距離Da,Dbを含めることにしてもよい。
この場合、携帯端末5の制御部51は、交通信号制御機3から取得した横断方向Da,Dbと、自機の記憶部51が予め記憶する歩行速度Vp(設定値でも計測値でもよい。)を用いて、各方向の横断必要時間Ca,Cbを次式により算出することができる。
【0155】
第1方向の横断必要時間Ca=Da/Vp
第2方向の横断必要時間Cb=Db/Vp
また、携帯端末5の制御部51は、横断必要時間Ca,Cbを算出した場合には、その情報を支援要求の制御パケットに含めて交通信号制御機3に通知することが好ましい。
【0156】
このようにすれば、交通信号制御機3の制御部31は、携帯端末5から通知された横断必要時間Ca,Cbを用いて、歩行者青PGの設定青時間Tpa,Tpbを、支援要求を送信した歩行者4ごとに動的に決定することができる。
従って、歩行者青PGの設定青時間Tpa,Tpbを固定値とする場合に比べて、歩行者4の歩行速度に応じた柔軟な歩行者支援制御を実行できるようになる。
【0157】
〔第2の変形例〕
上述の実施形態において、交通信号制御機3は、携帯端末5にブロードキャストするパケットに、第1方向及び第2方向の横断距離Da,Dbと、第1方向及び第2方向の歩行者青PGに適用し得る最大延長時間Tma,Tmbを含めてもよい。
この場合、携帯端末5の制御部51は、交通信号制御機3から取得した最大延長時間Tma,Tmbと前述の横断必要時間Ca,Cbに基づいて、歩行者4の横断の可否を情報提供できるようになる。
【0158】
すなわち、携帯端末5の制御部51は、第1方向に関して、最大延長時間Tmaを適用した場合の青残り時間と横断必要時間Caを対比し、Tma<Caとなる場合には、第1方向への横断ができない旨の注意喚起を、表示部54やスピーカ55に出力させる。
また、携帯端末5の制御部51は、第2方向に関して、最大延長時間Tmbを適用した場合の青残り時間と横断必要時間Cbを対比し、Tmb<Cbとなる場合には、第2方向への横断ができない旨の注意喚起を、表示部54やスピーカ55に出力させる。
【0159】
このようにすれば、身障者や高齢者などの歩行速度Vpが比較的遅い歩行者4が、自身の歩行速度Vpでは通行が間に合わない横断方向を事前に察知することができ、歩行者4に対して交通安全に有用な情報提供を行うことができる。
【0160】
〔第3の変形例〕
上述の実施形態において、携帯端末5の記憶部53が歩行者4の属性情報を予め記憶している場合には、携帯端末5の制御部51は、その属性情報を支援要求の制御パケットに含めることにしてもよい。
ここで、歩行者4の属性情報とは、身障者、高齢者、学童、乳幼児を伴う婦人などの、歩行者支援制御の対象とすべき歩行者4の属性を識別するための情報のことをいう。
【0161】
そして、交通信号制御機3の制御部31は、歩行者支援制御を実行する際に携帯端末5から属性情報を取得した場合には、その属性情報を車両用パケットに含めてブロードキャスト送信することが好ましい。
このようにすれば、車両のナビゲーション装置などを利用して、「身障者が横断歩道を通行中」などの情報提供を車両のドライバに行うことができ、安全運転に繋がる情報提供を車両に行うことができる。
【0162】
〔第4の変形例〕
上述の実施形態において、交通信号制御機3の記憶部34が、交差点Jの横断に関する注意情報を記憶する場合には、交通信号制御機3の制御部31は、その注意情報を携帯端末5にブロードキャストするパケットに含めることにしてもよい。
横断に関する注意情報とは、横断歩道の工事中、横断歩道に段差がある、或いは、路面電車の線路があるなどの、歩行を阻害する可能性があるハザード情報のことをいう。
【0163】
上記の注意情報を携帯端末5に送信すれば、携帯端末5の制御部51が、交通信号制御機3から取得した注意情報を事前に歩行者4に情報提供することにより、歩行する場合に安全である横断方向を歩行者4に事前に選択させることができる。
【0164】
〔第5の変形例〕
上述の実施形態において、支援要求の制御パケットの受信した後に、携帯端末5が交差点Jから遠ざかったことを検出した場合など、歩行者4が横断歩道を渡る意志がなくなったと推定できる場合には、路側の歩行者支援制御をキャンセルすることにしてもよい。
このようにすれば、不要となった横断支援がそのまま実行されることによる、交差方向の無駄な青時間短縮を防止することができる。
【0165】
また、交通信号制御機3の制御部31が、第1方向又は第2方向の歩行者青PGの延長を実行した場合に、延長した方向の横断歩道の横断完了を判定し、横断完了と判定した時点で延長後の歩行者青PGを打ち切ることにしてもよい。
このようにすれば、歩行者青PGの延長が無用に継続されることによる、交差方向の無駄な青時間短縮を防止することができる。
【0166】
上記の各処理には、携帯端末5の現在位置を交通信号制御機3が察知する必要がある。携帯端末5の現在位置の測定は、例えば、当該携帯端末5が所定時間ごとに自機の位置情報を交通信号制御機3に送信することによって行うことができる。
【0167】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0168】
例えば、上述の実施形態では、十字路交差点の場合(
図1参照)を例示したが、本実施形態の歩行者支援システムは、T字路交差点やスクランブル交差点など、十字路以外の構造の交差点に適用することもできる。
また、上述の実施形態において、交通信号制御機3の通信部33と制御部31とを別個の筐体に収容することにしてもよい。