特許第6624373号(P6624373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6624373-トナーカートリッジのリサイクル方法 図000002
  • 特許6624373-トナーカートリッジのリサイクル方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624373
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】トナーカートリッジのリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20191216BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20191216BHJP
   C10B 53/07 20060101ALI20191216BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   B09B3/00 303Z
   B09B3/00 Z
   B09B5/00 ZZAB
   C10B53/07
   G03G15/08 380
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-229130(P2015-229130)
(22)【出願日】2015年11月6日
(65)【公開番号】特開2017-87198(P2017-87198A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】鍬取 英宏
(72)【発明者】
【氏名】梅崎 孝之
(72)【発明者】
【氏名】岩元 美智彦
(72)【発明者】
【氏名】高尾 正樹
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 大悟
(72)【発明者】
【氏名】石津 縁
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−216823(JP,A)
【文献】 特開2005−060451(JP,A)
【文献】 特開2001−300331(JP,A)
【文献】 特開2008−260871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00 − 5/00
B09C 1/00 − 1/10
B29B 17/00 − 17/04
C08J 11/00 − 11/28
G03G 13/08
G03G 13/095
G03G 15/08
G03G 15/095
C10B 1/00 − 57/18
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーカートリッジのリサイクル方法であって、
前記トナーカートリッジを80℃〜140℃で加熱して溶解し(但し、加圧して塊体を形成する場合を除く)
前記溶解したトナーカートリッジを冷却し、
前記冷却後の固化物を破砕し、
前記破砕した破砕物から不純物を除去し、
前記不純物除去後の残留物を120℃〜200℃に加熱しながら減容化して、コークス原料としての造粒物を製造する、トナーカートリッジのリサイクル方法。
【請求項2】
前記減容化工程は、嵩密度200kg/m以上、水分3質量%以下、直径20〜60mm×長さ40〜100mmである造粒物を製造する、請求項1に記載のトナーカートリッジのリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーカートリッジのリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーは、レーザープリンター又は複写機で使用される、帯電性を持ったプラスチック粒子に黒鉛及び/又は顔料等の色粒子を付着させた粒子径が数〜十数μmの微粒子である。トナーは、一般に熱可塑性樹脂を基材とし、これにバインダや着色剤が添加されている。プリンター(複写機とも言う)は、静電気を利用して紙にトナーを転写させ、熱によって用紙に接着し、定着させることで印刷する。
【0003】
このトナーを、製鋼用電気炉内の溶融金属の還元剤として用いる技術が開示されている(特許文献1)。一方、処理単位を、トナー単位ではなく、カートリッジと呼ばれる専用の容器(以下、「トナーカートリッジ」と言う)をリサイクルする方法も開示されている。特許文献2では、使用済みトナーカートリッジの破砕時における廃トナー拡散による粉塵爆発の危険を防止し、安全かつ低コストで効率良く使用済みトナーカートリッジを各素材レベルまで確実にリサイクル可能にする技術が開示される。
【0004】
特許文献3では、廃プラスチックを、コークス等として利用する方法が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−57600号公報
【特許文献2】特開2005−131610号公報
【特許文献3】特開2007−290254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大量生産、大量消費、大量破棄の消費社会から、製品のリサイクルにより持続可能な循環型社会へ移行していくためには、リサイクル対象とリサイクル方法の適正化により、リサイクル率を上げることが重要である。
【0007】
特許文献1では、トナーをフレコンバッグ等で回収している(特許文献1、段落[0008])。しかしながら、特許文献2に示されるように、トナーの回収は、トナーカートリッジ単位で行った方が、容易であり、リサイクル対象の適正化がなされていないので、リサイクル率が上がらない。
【0009】
一方、特許文献2では、トナーカートリッジのリサイクルを行っており、リサイクル対象の適正化がなされている。しかし、特許文献1のように電解炉に入れて、化学的分解プロセスを経てエネルギー資源や原材料として回収するいわゆる「ケミカルサイクル」と異なり、トナーカートリッジの材料(熱材料、非鉄金属、樹脂材料、ゴム材料)を、化学的分解プロセスを経ないで回収する「マテリアルリサイクル」である。マテリアルリサイクルを行う場合、トナーカットリッジごとに、回収設備を用意する必要がある。トナーカットリッジ自体は、プリンターを販売する会社ごとに異なるため、リサイクル設備を、会社毎に設ける必要がある。トナーカットリッジのリサイクルに関して、リサイクル設備の導入コストが問題になり、リサイクル設備が設けられず、リサイクル率が上がらない。
【0010】
特許文献3では、廃プラスチックから、風力と磁力で選別した後に、破砕して、コークス炉へ提供するための造粒物を製造する技術が開示されている。しかし、筐体部分等の高密度プラスチックとトナー等の低密度プラスチックとからなるトナーカートリッジ等の廃プラスチックをコークス炉へ提供すると、低密度プラスチックが集塵機に回収される確率が高まり、リサイクル率が低下する。また、集塵機に回収されなかった場合でも、前記低密度プラスチックがコークス炉内に偏在し、炉内圧上昇等の操業トラブルに発展する可能性や、コークスの品質低下の危険性が残る。
【0011】
上記課題を解決する形態は、以下の項目セットにより示されるように、回収容易なトナーカートリッジを、コークス原料としての造粒物を、加熱しながら減容して製造するリサイクルにより、リサイクル率をあげる。
【0012】
1.トナーカートリッジのリサイクル方法であって、
前記トナーカートリッジを80℃〜140℃で加熱して溶解し(但し、加圧して塊体を形成する場合を除く)
前記溶解したトナーカートリッジを冷却し、
前記冷却後の固化物を破砕し、
前記破砕した破砕物から不純物を除去し、
前記不純物除去後の残留物を120℃〜200℃に加熱しながら減容化して、コークス原料としての造粒物を製造する、トナーカートリッジのリサイクル方法。
【0013】
上記方法では、リサイクル対象を、回収容易なトナーカットリッジに限定し、溶解処理
、冷却処理、破砕処理、不純物除去が可能な設備を設けて、さらに、残留物を加熱減容化することで、コークス炉原料に適する造粒物を製造する。そのため、コークス炉原料の石炭の量を減らして、二酸化炭素削減に貢献するとともに、トナーカットリッジをリサイクルできるため、トナーカットリッジのリサイクル率の向上と、CO削減を同時に達成することができる。
【0015】
.前記減容化は、嵩密度200kg/m以上、水分3質量%以下、直径20〜60mm×長さ40〜100mmである前記造粒物を製造する、項目1に記載のトナーカートリッジのリサイクル方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る一実施形態は、回収容易なトナーカートリッジを、コークス炉で乾留するコークス炉化学原料に適する造粒物をつくるリサイクルにより、リサイクル率をあげる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】リサイクル装置の一例を示す図である。
図2】リサイクル方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、以下の構成に基づき、トナーカートリッジのリサイクル方法およびその装置を説明する。
【0022】
1.リサイクル方法の概要
図1を用いて、本発明の実施形態の一例を説明する。
図1は、本発明に係るリサイクル装置の概略構成図である。このリサイクル装置10は、トナーカートリッジ1を加熱して溶融する溶解部20と、溶解したトナーカートリッジ1を、冷却する冷却部30と、冷却後の固化物を破砕する破砕部40と、破砕した破砕物から不純物を除去する除去部50と、不純物除去後の残留物を、加熱しながら減容化して、コークス原料としての造粒物2を製造する減容部60と、を備える。
【0023】
溶解部20は、数十個から数百個の使用済みトナーカートリッジ1を投入してもよい。溶解部20は、80〜140℃程度で、トナーカートリッジ1を溶解する。なお、この温度は、トナーカートリッジを構成するプラスチック成分によって決まる。例えば、ポリエチレン(PE)の融点は120〜150℃、ポリプロピレン(PP)の融点は130〜180℃、ポリスチレン(PS)の融点は220〜260℃、ポリエチレンテレフタレート(PET)の融点は210〜280℃、ポリ塩化ビニル(PVC)の融点は180〜290℃である。溶解部20は、80〜140℃程度で、加熱するため、トナーカートリッジ1を完全に溶解せず、一部溶解させて、後段の破砕部40で破砕するための一定の形状にする。
【0024】
冷却部30は、溶解部20から出てきた加熱後の使用済みトナーカートリッジ1(固化物ともいう)を、自然冷却して、必要に応じてファンにより強制冷却を行う。
【0025】
破砕部40には、例えば、二軸破砕装置が用いられる。破砕部40に要求される破砕能力は、トナーカートリッジ1のケースを構成する樹脂材料を、15mm程度まで破砕する。破砕されるサイズは、破砕により、後段の除去部により、異物を取り除き易くなるような、適切なサイズである。
【0026】
除去部50は、破砕した破砕物から不純物を除去する。不純物は、例えば、金属である、この除去処理においては、磁力選別や、風力選別等により行われる。
【0027】
次に、減容部60は、破砕物を、加熱しながら減容化して、コークス原料としての造粒物2を製造する。なお減容化時に、トナーカートリッジ以外の廃プラスチックと混合していることも本願発明の範囲である。また、減容化時にトナーカートリッジは内部に残留しているトナーの作用により、コークス炉の処理に適した好適な嵩密度増加が可能となる。このとき、造粒物は、コークス炉において、コークス炉で発生したガス(COG:Coke Oven Gas)5ではなく、コークスを効率よく製造するために、嵩密度200kg/m以上、水分3質量%以下、直径20〜60mm×長さ40〜100mmとすることが好ましい。また、減容化中の加熱は、120℃〜200℃とすることが好ましい。なお、この理由については、図2を用いて説明する。
【0028】
図2は、コークス製造工程の一例を示す図である。コークス炉100では、造粒物2は、高炉110で使用されるコークスを製造する原料として利用される。コークス炉100におけるコークス製造工程では、コークス炉100の中で石炭3とともに投入された造粒物2を、石炭3とともに乾留されて、コークス4を製造する。この乾留工程で生じるガスが、COG5である。
【0029】
コークス4は、高炉110内で3つの重要な役割を担っている。第1に鉄鉱石を炭素で還元して鉄分を取り出すこと、第2に高炉110の中で還元ガスや溶けた鉄の通路を確保すること、第3に鉄鉱石や石灰石を溶かす熱源となることである。
【0030】
COG5の主要な成分は水素50〜54%、メタン30〜33%、一酸化炭素6〜8%、エチレンなどの炭化水素2〜4%などであるが、タールや粗軽油、硫酸、アンモニア等も含む。COG5内に含まれるタールや粗軽油、硫酸、アンモニア等は、脱硫設備、脱アンモニア設備、租軽油回収設備等の回収設備120を経て、回収される。回収により、精製されたCOG5は、高炉110やコークス炉100で燃料として使用される。
【0031】
COG5は、製鉄所12内で、燃料として有効利用されているものの、ガス生成工程等を要するため、造粒物を、COG5にするよりも、コークス4への転換率を上げて、石炭利用率を下げた方がCO削減の観点で好ましい。そのため、造粒物2の構成は、減容部60で説明したような構成が好ましい。これにより、本実施形態は、リサイクルにより廃棄物問題の解決と、製鉄所12による二酸化炭素低減による地球温暖化防止という二つの効果を奏することができる。
【0032】
以上説明した実施形態は典型例として挙げたに過ぎず、その各実施形態の構成要素の組合せ、変形及びバリエーションは当業者にとって明らかであり、当業者であれば本発明の原理及び請求の範囲に記載した発明の範囲を逸脱することなく上述の実施形態の種々の変形を行えることは明らかである。
【符号の説明】
【0033】
1 トナーカートリッジ、2 造粒物、3 石炭、4 コークス
5 COG、10 リサイクル装置、12 製鉄所、20 溶解部
30 冷却部、40 破砕部、50 除去部、60 減容部
100 コークス炉、110 高炉、120 回収設備
図1
図2