特許第6624443号(P6624443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624443
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】凍結工法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20191216BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20191216BHJP
   E02D 3/115 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   E21D9/04 C
   E21D9/06 301D
   E02D3/115
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-11548(P2016-11548)
(22)【出願日】2016年1月25日
(65)【公開番号】特開2017-133163(P2017-133163A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2019年1月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日 平成27年12月22日(火) 掲載アドレス 国土交通省 関東地方整備局 東京外かく環状国道事務所ウェブサイト http://www.ktr.mlit.go.jp/gaikan/index.html
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国土交通省関東地方整備局、東京外環トンネル地中拡幅部における技術開発業務(その7)、履行期間 平成26年11月6日〜平成27年9月30日、 国土交通省関東地方整備局、東京外環トンネル地中拡幅部における技術開発業務(その10)、履行期間 平成26年11月6日〜平成27年9月30日、 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸司
(72)【発明者】
【氏名】中谷 武彦
(72)【発明者】
【氏名】浜口 幸一
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−156907(JP,A)
【文献】 特開2012−026242(JP,A)
【文献】 特開2005−264717(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2008−0079090(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/04
E21D 9/06
E02D 3/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を凍結させ、地盤の止水性能及び強度性能を向上させる凍結工法において、
凍結運転開始から所定領域の凍土が連続的に繋がって止水性能が確保された段階と、必要な凍土厚の凍土壁が造成されて強度性能が確保された段階との間の任意のタイミングで、前記凍土壁に対して内側の領域の一部の地盤を先行掘削することを特徴とする凍結工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を凍結させ、地盤の止水性能及び強度性能を向上させる凍結工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の安定化、防水層の形成などを目的とした防護工として凍結工法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、トンネル掘進機で地盤を掘削してトンネルを構築する際、特に、道路トンネルの分岐・合流部や鉄道トンネルの渡り線部などの大断面トンネルを構築する際の発進・到達時やセグメント切り開き時(シールドトンネルの地中拡幅時)などに、凍結工法が用いられている。
【0004】
ここで、大断面トンネルを構築する際などの大規模な凍土造成を行う場合や凍結対象地盤に粘性土が含まれている場合には、地盤の凍結による膨張圧が大きくなり、組み立てたセグメント(周囲の構造物など)に凍結膨張圧による過大な荷重が作用してセグメントボルトが破断したり、セグメントが破損するおそれがある。
【0005】
これに対し、凍結膨張圧対策手法としては、1)凍結管列の外側への温水管を設置し凍結領域を制御する方法、2)凍土周囲の地山を抜き取って凍結膨張圧を低減させる方法、3)凍結膨張圧に対応したセグメントの補強を講じる方法、4)凍結運転制御(間引き運転等)による凍土の成長抑制方法などが提案、実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−264717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、1)凍結管列の外側への温水管を設置し凍結領域を制御する方法、2)凍土周囲の地山を抜き取って凍結膨張圧を低減させる方法、3)凍結膨張圧に対応したセグメントの補強を講じる方法においては、対策コストや工期の大幅な増大を招く。また、4)凍結運転制御による凍土の成長抑制方法においては抑制効果が小さいという不都合がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、確実且つ簡便に凍結膨張圧を制御でき、工期短縮、コストダウンを可能にする凍結工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0010】
本発明の凍結工法は、地盤を凍結させ、地盤の止水性能及び強度性能を向上させる凍結工法において、凍結運転開始から所定領域の凍土が連続的に繋がって止水性能が確保された段階と、必要な凍土厚の凍土壁が造成されて強度性能が確保された段階との間の任意のタイミングで、前記凍土壁に対して内側の領域の一部の地盤を先行掘削することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の凍結工法においては、止水性能が確保される段階から強度性能が確保される段階までの間の任意のタイミングで、凍土壁の内側の領域の一部の地盤を先行掘削することによって、凍結膨張圧の一部を開放させることができ、凍結膨張圧の低減を図ることが可能になる。
【0012】
また、このように止水性能が確保される段階から強度性能が確保される段階までの間の任意のタイミングで凍結膨張圧の一部を開放させることにより、強度的に十分な凍土壁が形成された段階における凍結膨張圧(最終的に凍土が必要(最大)凍土厚に達した時点の凍結膨張圧)も低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】凍結工法を用いて構築するトンネルの施工方法の一例を示す図である。
図2】凍結工法を用いて構築するトンネルの一例を示す図である。
図3】凍結工法を用いて構築する分岐・合流部のトンネルの一例を示す図である。
図4】凍結工法を用いて構築するトンネルの施工方法の一例を示す図である。
図5】凍結工法を用いた際の凍土の造成段階の説明に用いた図である。
図6】本発明の一実施形態の凍結工法において、止水性能と確保した段階と強度性能を確保した段階の間の任意のタイミングで、凍土壁の内側の一部の地盤を掘削することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1から図6を参照し、本発明の一実施形態に係る凍結工法について説明する。
【0015】
ここで、本実施形態では、例えば、道路トンネルの分岐・合流部や鉄道トンネルの渡り線部などの大断面トンネルを構築する際の発進・到達時やセグメント切り開き時(シールドトンネルの地中拡幅時)などに対し凍結工法を用いるものとして説明を行う。
但し、本発明の凍結工法は、土木建築分野において、地盤を凍結させて凍土壁(凍結領域)等を形成するあらゆるケースに適用可能である。
【0016】
はじめに、図1から図4に示すように、道路トンネルの分岐・合流部などの大断面トンネルを構築する際には、例えば、本線シールド1、ランプシールド2(2本の導坑)を横方向に間隔をあけて先行構築するとともに、本線シールド1を通じ、凍結工法で環状や門型の凍土壁5を形成して地盤の安定化を図りつつ地中発進基地3を構築し、この地中発進基地3から本線シールド1、ランプシールド2を囲繞するように小径のトンネル掘進機で複数の外殻シールド4を構築する。
【0017】
さらに、凍結工法を用いて凍土壁5を形成しつつ隣り合う外殻シールド4を切り開いて連通させ、本線シールド1、ランプシールド2を囲繞する本設覆工6を構築する。そして、本線シールド1から本設覆工6で囲まれた地盤を掘削して連通させ、分岐・合流部となる大断面トンネルを構築する。
【0018】
また、凍結工法で凍土壁5を形成する際には、凍結管7と測温管を地盤内に設置し、凍結管7にブラインを循環供給するための配管設備、冷凍機設備を設置し、測温管に計装設備等を設置する。そして、凍結管5にブラインを循環させて凍土造成を開始する。このとき、測温管で地中温度をリアルタイムで計測し、凍土造成の進行状況や凍土の維持状況を捉え、施工管理を行う。
【0019】
一方、図5に示すように、凍結工法では、凍結管7にブラインを循環させるとともに凍結管7の周囲に凍土が造成されて膨張が生じる(凍土領域10)。ブライン流通方向上流側の凍土が先行して造成され(凍土領域11)、次第に下流側の凍土が造成され(凍土領域12)、凍土が繋がり、止水性能をもつ凍土壁が形成される。さらに、必要凍土厚まで凍土造成され、所望の強度性能をもつ凍土壁5が形成される。凍土の維持を図ることにより、さらに凍土が内側、外側に造成され(凍土領域13、凍土領域14)、凍土壁5が増厚してゆく。
【0020】
なお、測温管による温度計測によって、例えば平均温度−5℃の領域が連続的に形成されれば止水性能を有する(止水性能を確保した)凍土領域11、12が形成されたことを検知することができる。また、例えば平均温度−10°の領域が連続的に形成されれば、強度性能を有する(所望の強度性能を確保した)凍土壁5が形成されたことを検知することができる。
【0021】
ここで、凍土の強度に期待し、耐力壁としての凍土壁5を施工する場合には、一般に、構造計算により決定した必要凍土厚まで凍土を造成した後にトンネル掘削を行う。また、凍結膨張圧は凍土の成長に応じて大きくなるため、トンネル掘削前には必要凍土厚に応じた凍結膨張圧が発生する。
【0022】
一方、凍土の遮水性(止水性)に期待し、遮水壁として凍土壁5を施工する場合には、連続性を保った凍土壁が形成されていればよく、その凍土厚は施工誤差を考慮しても耐力壁で必要となるものよりも小さい。
【0023】
本実施形態の凍結工法においては、この点に着目し、図凍土の成長過程を、運転開始から凍土が繋がって止水性能が確保されるまでの第一段階、凍土が繋がって必要な凍土厚が造成されて強度性能が確保されるまでの第二段階、凍結維持期間の第三段階に区分する。
【0024】
そして、止水性能が確保されるまでの第一段階から強度性能が確保される第二段階までの任意のタイミングで、地盤先行掘削工程によって凍土壁5の内側の一部の地盤を先行掘削(一次掘削)する。
【0025】
すなわち、本実施形態の凍結工法においては、地盤先行掘削工程を備え、例えばトンネル掘削の一部(止水性能を担保した凍土壁5の内側のセグメント近傍)を構造安定性に影響を及ぼさない範囲で先行掘削することにより、凍結膨張圧の一部を開放し、凍結膨張圧を低減することができる。
【0026】
また、この止水性能を担保した内側の一部の地盤を先行掘削することによって、凍土を造成して増厚させ、強度的に十分な凍土壁を形成した段階の凍結膨張圧、すなわち、最終的に凍土が必要(最大)凍土厚に達した時点の凍結膨張圧も低減させることができる。
【0027】
なお、実際の検討事例において、最大凍土厚6.6mを施工した時点における一次掘削を行わない場合の最大凍結膨張圧668kN/mに対し、一次掘削を行うことで最大凍結膨張圧が369kN/mに低減できることが実証されている。
【0028】
よって、本実施形態の凍結工法によれば、従来の凍結管列の外側への温水管を設置し凍結領域を制御する方法、凍土周囲の地山を抜き取って凍結膨張圧を低減させる方法、凍結膨張圧に対応したセグメントの補強を講じる方法、凍結運転制御(間引き運転等)による凍土の成長抑制方法と比較し、確実且つ簡便に凍結膨張圧を制御でき、工期短縮、コストダウンを実現することが可能になる。
【0029】
以上、本発明による凍結工法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 本線シールド
2 ランプシールド
3 地中発進基地
4 外殻シールド
5 凍土壁
6 本設覆工
7 凍結管
10 凍土領域
11 凍土領域
12 凍土領域
13 凍土領域
14 凍土領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6