(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態に係るランナーレス射出成形装置について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、工程、工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0013】
(実施の形態)
[ランナーレス射出成形装置]
図1は、実施の形態に係るランナーレス射出成形装置10の要部構成を模式的に示す断面図である。ランナーレス射出成形装置10は、熱硬化性樹脂を射出成形するための装置である。ここで、熱硬化性樹脂とは、加熱により硬化する樹脂のことであり、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂(BMC:Bulk Molding Compound、SMC:Seat Molding Compound)などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂には、熱硬化性エラストマーも含まれる。なお、ここで言う熱硬化には、加硫、架橋も含まれる。
【0014】
ランナーレス射出成形装置10は、熱硬化性樹脂(以降、樹脂11と称す。:
図19参照)を成形するための金型20と、金型20と樹脂連通路が連通し樹脂を供給する多点ゲート用のマニホールド(図示省略)及び第一スプルー(図示省略)から樹脂を射出する樹脂射出部(図示省略)と、金型20から樹脂成形品を取り出すための成形品取出装置80(
図20参照)と、これらの動作を制御する制御部(コンピュータ:図示省略)とを備えている。制御部は、例えば、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを有する。
【0015】
[金型]
金型20は、冷却ブロック30と、ゲートブロック40と、固定側加熱ブロック50、可動側加熱ブロック60とを備えている。なお、金型20に対しては、図示しない樹脂射出部によって、流動性の高い樹脂11が供給される。例えば、樹脂11がBMCである場合には、樹脂射出部は、粘度が最も低くなる70℃以上80℃以下にBMCを温度調節した状態で金型20に射出している。金型20は、樹脂11の流れ方向の上流から順に、冷却ブロック30、ゲートブロック40、固定側加熱ブロック50、可動側加熱ブロック60が配置されている。なお、本実施形態では、樹脂11の流れ方向の上流側を「上」とし、下流側を「下」とする。
【0016】
[冷却ブロック]
図2は、実施の形態に係る冷却ブロック30を示す断面図である。
図2に示すように、冷却ブロック30には、樹脂11の流路であるスプルーの一部をなす第二スプルー31と、第二スプルー31内の樹脂11を冷却するための冷却流路32とが形成されている。冷却ブロック30は、例えば、ステンレス鋼などの金属材料から形成されている。
【0017】
第二スプルー31は、樹脂射出部から射出された樹脂11をゲートブロック40まで案内する樹脂流路である。第二スプルー31の延在方向は、樹脂11の流れ方向と同じであり、本実施の形態では上下方向となっている。具体的には、第二スプルー31は、円柱状の空間である第一流路311と、第一流路311の下端部に連続し、先細りのテーパ状の空間であるテーパ部312と、テーパ部312の下端に連続し、円柱状の空間である第二流路313とを備えている。つまり、第二流路313は、第一流路311よりも細い。
【0018】
冷却流路32は、第二スプルー31の周囲に配置されており、内部に冷却材33が流される流路である。冷却材33としては、例えば水、油などの冷媒が挙げられる。この冷却流路32には、図示しない冷却源が接続されており、冷却源が冷却材33を冷却流路32内で循環させている。冷却源は、冷却材33を所定の温度に調節している。これにより、冷却材33は、冷却流路32を介して第二スプルー31内の樹脂11を温度調節する。ここで、所定の温度とは、樹脂11の流動性を高い状態(粘度が低い状態)で安定させることのできる温度である。例えば樹脂11がBMCの場合には、70℃以上80℃以下の温度を所定の温度とする。
【0019】
図3は、実施の形態に係る冷却流路32の全体形状を模式的に示す上面図である。なお、
図3におけるII−II線を含む切断面を見た断面図が
図2である。
【0020】
図2及び
図3に示すように、冷却流路32は、冷却ブロック30内において一本の流路である。冷却流路32は、冷却材33が冷却源から供給される供給部321と、冷却源に冷却材33を排出する排出部322と、供給部321と排出部322との間の中間部323とを備えている。供給部321は、冷却ブロック30の上部であって、かつ中間部323よりも上方に配置されている。排出部322は、冷却ブロック30の下部であって、かつ中間部323よりも下方に配置されている。なお、供給部321と排出部322との位置関係は逆であってもよい。そして、冷却流路32は、供給部321及び排出部322を除いて冷却ブロック30内で閉塞空間を形成することになる。これにより、冷却ブロック30からの冷却材33の漏れが防止されている。
【0021】
冷却流路32の中間部323は、第二スプルー31内の樹脂11に対する温度調節に寄与する部分である。中間部323は、全体として螺旋状に形成されており、樹脂11の流れ方向の上流から下流に向かって冷却材33を流す。
【0022】
なお、
図2及び
図3では、中間部323のうち、II−II線を含む切断面よりも手前側にある部分を黒線で図示し、奥側にある部分を灰色線で図示している。また、冷却流路32の断面形状は円形で図示しているが、楕円形状、長孔形状、液滴状であってもよい。なお、冷却流路32の内径は3.0mm以上10.0mm以下である。冷却流路32の内径が3.0mm以上10.0mm以下であると、冷却材33が冷却流路32内をスムーズに流れる範囲で高速化することができ、冷却効率を高めることができる。なお、断面形状が円形以外の冷却流路である場合には、最も短い部分の幅を内径とする。
【0023】
中間部323は、第二スプルー31に対して巻かれた複数の単位巻き部分323aを有している。単位巻き部分323aは、第二スプルー31に対して一周巻かれた部分である。そして、全ての単位巻き部分323aは、同じ巻き径で巻かれた形状となっている。
【0024】
次に、冷却流路32の中間部323の適切なピッチ間距離Aについて説明する。
【0025】
ここでピッチ間距離Aとは、隣り合う少なくとも一組の単位巻き部分323aの間隔である。具体的には、ピッチ間距離Aとは、隣り合う少なくとも一組の単位巻き部分323aの上下方向の間隔である。このピッチ間距離Aを異ならせてシミュレーションを行うことにより、各ピッチ間距離Aにおける冷却ブロック30の温度分布を求めた。
【0026】
図4〜
図8は、実施の形態に係る冷却ブロック30において、各ピッチ間距離Aでの温度分布を示す説明図である。具体的には、
図4は、ピッチ間距離Aを9mmとした場合の温度分布を示している。
図5は、ピッチ間距離Aを8mmとした場合の温度分布を示している。
図6は、ピッチ間距離Aを7mmとした場合の温度分布を示している。
図7は、ピッチ間距離Aを6mmとした場合の温度分布を示している。
図8は、ピッチ間距離Aを2mmとした場合の温度分布を示している。
【0027】
図4では、第二スプルー31での樹脂11の流れ方向では、低温度帯(70℃近傍)の温度分布が分断されていることが分かる。しかし、
図5〜
図8では、樹脂11の流れ方向では、低温度帯の温度分布が分断されておらず、概ね第二スプルー31を均等に冷却していることが分かる。また、低温度帯の温度分布は、ピッチ間距離Aが小さくなるほどその範囲が広くなっていることが分かる。このように、ピッチ間距離Aが小さくなると、冷却ブロック30内に単位巻き部分が密に配置されることになり、第二スプルー31内の樹脂11を効率的に冷却することができる。特に、ピッチ間距離Aが8mm以下であれば、第二スプルー31内の樹脂11を均等に冷却することができ、樹脂11が第二スプルー31内で硬化してしまうことを確実に抑制することができる。
【0028】
なお、ピッチ間距離Aが1.5mmよりも小さいと、隣り合う単位巻き部分323aの間の壁部を安定して形成できないおそれがあるため、ピッチ間距離Aは1.5mm以上とする。つまり、適切なピッチ間距離Aは、1.5mm以上8.0mm以下である。なお、隣り合う全て組の単位巻き部分323aのピッチ間距離Aが1.5mm以上8.0mm以下であれば、より効率的に第二スプルー31内の樹脂11を冷却することができる。
【0029】
次に、複数の単位巻き部分323aと、第二スプルー31との適切な最短距離Bについて説明する。
【0030】
ここで、最短距離Bとは、
図2に示すように、複数の単位巻き部分323aと、第二スプルー31とがなす最も短い間隔のことである。具体的には、最短距離Bは、複数の単位巻き部分323aと、第二スプルー31とがなす水平方向の間隔である。この最短距離Bを異ならせてシミュレーションを行うことにより、各最短距離Bにおける冷却ブロック30の温度分布を求めた。
【0031】
図9〜
図14は、実施の形態に係る冷却ブロック30において、各最短距離Bでの温度分布を示す説明図である。具体的には、
図9は、最短距離Bを10mmとした場合の温度分布を示している。
図10は、最短距離Bを8mmとした場合の温度分布を示している。
図11は、最短距離Bを7mmとした場合の温度分布を示している。
図12は、最短距離Bを6mmとした場合の温度分布を示している。
図13は、最短距離Bを5mmとした場合の温度分布を示している。
図14は、最短距離Bを1mmとした場合の温度分布を示している。なお、
図9〜
図14においては、冷却ブロック30を拡大して示している。
【0032】
図9〜
図12では、第二スプルー31におけるテーパ部312内で高温帯(75℃近傍)が生じていることが分かる。しかし、
図13及び
図14では、他の場合と比べると、テーパ部312内での温度が低温化されていることが分かる。このように、最短距離Bが、5mm以下であれば、樹脂11がテーパ部312内で硬化してしまうことを抑制することができる。
【0033】
なお、最短距離Bが1.0mmよりも小さければ、単位巻き部分323aと、第二スプルー31との間の壁部を安定して形成できないおそれがあるため、最短距離Bは1.0mm以上とする。つまり、適切な最短距離Bは、1.0mm以上5.0mm以下である。
【0034】
なお、複数の単位巻き部分323aの全体が、第二スプルー31に対する最短距離Bを満たす位置に配置されていてもよい。これにより、第二スプルー31内の樹脂11を均等に冷却することができる。
【0035】
さらに、
図2に示すように、冷却流路32と、第二スプルー31の第二流路313との最短距離Cは、1.5mm以上4.0mm以下としてもよい。これにより、第二流路313内の温度分布を適正化することが可能である。
【0036】
なお、最短距離Cとは、冷却流路32と第二スプルー31の第二流路313とが最も近づいた箇所での距離である。このため、最短距離Cは、上下方向又は水平方向の距離でない場合もある。
【0037】
[ゲートブロック]
図1に示すように、ゲートブロック40は、冷却ブロック30と固定側加熱ブロック50との間に配置されている。ゲートブロック40は、例えばステンレス鋼などの金属材料若しくは熱伝導率の低い材料(例えばセラミックス等)により、温度調節されないように形成されている。ゲートブロック40には、樹脂11の流路であるスプルーの一部をなすゲートブロック側ゲート42が形成されている。
【0038】
図1に示すように、ゲートブロック側ゲート42は、冷却ブロック30の第二スプルー31から供給された樹脂11を固定側加熱ブロック50まで案内する流路である。ゲートブロック側ゲート42は、全体として上下方向に延在している。ゲートブロック側ゲート42の上端部は、第二スプルー31よりも内径が絞られた絞り部41である。絞り部41は円柱状の空間である。また、ゲートブロック側ゲート42における絞り部41よりも下流側は、絞り部41よりも内径が広げられた拡径部43である。拡径部43は、上端部が最も内径が小さく、下端部が最も内径の大きいテーパ状の空間である。
【0039】
[固定側加熱ブロック]
固定側加熱ブロック50は、ゲートブロック40と、可動側加熱ブロック60との間に配置されている。固定側加熱ブロック50は、例えばステンレス鋼などの金属材料から形成されている。固定側加熱ブロック50には、樹脂11の流路であるスプルーの一部をなす加熱ブロック側ゲート53と、キャビティ54とが形成されている。
【0040】
加熱ブロック側ゲート53は、ゲートブロック40のゲートブロック側ゲート42から供給された樹脂11をキャビティ54まで案内する流路である。加熱ブロック側ゲート53は、全体として上下方向に延在しており、上端部が最も内径が小さく、下端部が最も内径の大きいテーパ状の空間である。
【0041】
キャビティ54は、樹脂成形品を形成するための凹部であり、下方が開放されている。キャビティ54は、型閉じ時に可動側加熱ブロック60が重なることによって閉塞された空間となる。この型閉じ時に閉塞された空間内に樹脂11が充填されて硬化することで、樹脂成形品が形成される。この空間は、樹脂成形品の形状に対応した形状に形成されている。
【0042】
そして、固定側加熱ブロック50は、加熱ブロック側ゲート53及びキャビティ54内の樹脂11を硬化させるための熱源51を有している。具体的には、熱源51は、例えば電熱線であり、固定側加熱ブロック50における加熱ブロック側ゲート53及びキャビティ54の周囲に配設されている。加熱ブロック側ゲート53及びキャビティ54内の樹脂11に熱源51からの熱が伝わることにより、当該樹脂11が硬化して樹脂成形品となる。樹脂成形品のうち、キャビティ54に対応する部分が製品部となり、加熱ブロック側ゲート53に対応する部分が非製品部となる。
【0043】
熱源51は、加熱ブロック側ゲート53及びキャビティ54内の樹脂11を硬化させる温度に温度調節する。例えば樹脂11がBMCの場合には、140℃以上に加熱する。
【0044】
[可動側加熱ブロック]
可動側加熱ブロック60は、上下動することにより固定側加熱ブロック50に対して近づいたり遠ざかったりする金型である。可動側加熱ブロック60は、例えば、ステンレス鋼などの金属材料から形成されている。可動側加熱ブロック60の上面は、キャビティ54の一部に対応した形状をなす形状部61を有しており、可動側加熱ブロック60が固定側加熱ブロック50に重なって型閉じ状態となった際にキャビティ54を閉塞する。
【0045】
そして、可動側加熱ブロック60は、キャビティ54内の樹脂11を硬化させるための熱源62を有している。具体的には、熱源62は、例えば電熱線であり、形状部61の周囲に配設されている。キャビティ54内の樹脂11に熱源62からの熱が伝わることにより、当該樹脂11が硬化して樹脂成形品となる。
【0046】
[冷却ブロックの製造方法]
次に、実施の形態に係る冷却ブロック30の製造方法について説明する。
【0047】
図15〜
図17は、実施の形態に係る冷却ブロック30の製造方法の一工程を模式的に示す斜視図である。
【0048】
図15〜
図17に示すように、冷却ブロック30は、光学式の三次元形状造形物製造装置(以下、単に製造装置200と称す。)によって製造される。製造装置200は、造形部210と移送部230とを備えている。
【0049】
造形部210はタンク状をなしており、その底面部上には造形台211が設置されている。造形台211の上には、粉末材料240を焼結させてなる焼結層が順次積み重ねられて冷却ブロック30が作製される。粉末材料240としては、ステンレス鋼ならなる粉末などが用いられる。
【0050】
移送部230は、造形部210に対して粉末材料240を移送し、造形部210上に所定の厚みの粉末層を形成するためのものである。移送部230は、造形部210に対して往復移動するように、造形部210に支持されている。移送部230は、造形部210の上方を往復移動する際、移送部230の下部は造形台211との距離を一定に保って平行に移動できるようになっている。この結果、移送部230で粉末材料240を造形台211上に移送しつつ、造形台211又はその上に形成された焼結層の上に均一の厚さの粉末層を形成できるようになっている。
【0051】
造形部210の上方には、レーザ光などの光ビームLを照射する光ビーム照射装置250が配置されている。光ビーム照射装置250は、光ビームLの照射位置や焦点位置などを変えて光ビームLを照射するようになっている。
【0052】
そして、冷却ブロック30の製造時においては、移送部230が往復移動することで、造形部210に対して粉末材料240を移送し、造形台211上に粉末層を形成する。
図15では、造形台211上に粉末層が形成された状態を示している。
【0053】
その後、
図16に示すように、光ビーム照射装置250から粉末層の所定箇所に光ビームLを照射し、当該照射箇所の粉末材料240を溶融して焼結させることで、焼結層を形成する。次いで、
図17に示すように、移送部230が再度往復移動することで、造形部210の粉末層に対して粉末材料240を移送し、粉末層上に新たな粉末層を形成する。そして、新たに形成にされた粉末層の所定個所に光ビームLを照射することで、当該照射箇所の粉末材料240を溶融して焼結させる。これを繰り返すことで、金属製の光造形物である冷却ブロック30が製造される。
【0054】
なお、冷却ブロック30が光造形物である場合には、冷却流路32の断面形状は液滴状であることが望ましい。
図18は、実施の形態に係る冷却流路32の断面形状の一例を示す説明図である。
図18に示すように、冷却流路32は、粉末層の積層方向が尖端となる断面視液滴状に形成されている。これにより、光造形で冷却流路32を形成しやすくすることができる。
【0055】
なお、ゲートブロック40、固定側加熱ブロック50及び可動側加熱ブロック60が光造形物であってもよい。
【0056】
[樹脂成形品の製造方法]
次に、実施の形態に係る樹脂成形品の製造方法について
図1、
図19及び
図20に基づいて説明する。なお、
図19及び
図20は、実施の形態に係る樹脂成形品の製造方法の各工程を示すランナーレス射出成形装置10の断面図である。
【0057】
まず、
図1に示すように、可動側加熱ブロック60が固定側加熱ブロック50に重なって型閉じ状態になると、樹脂射出部から樹脂11が射出される。これにより、
図19に示すように、樹脂11が第二スプルー31、ゲートブロック側ゲート42及び加熱ブロック側ゲート53を介して、キャビティ54内に供給され、充填される。
【0058】
また、樹脂11の供給時においては、冷却ブロック30の冷却流路32には冷却材33が循環しており、第二スプルー31内の樹脂11に対して温度調節が行われている。一方、固定側加熱ブロック50及び可動側加熱ブロック60では、それぞれ熱源51、62が発熱しており、加熱ブロック側ゲート53及びキャビティ54内を、樹脂11が硬化する温度まで調節している。これにより、固定側加熱ブロック50では安定して樹脂11を硬化させることができる。ゲートブロック40内の樹脂11においても、固定側加熱ブロック50内の樹脂11から熱が伝わっているので硬化することになる。
【0059】
固定側加熱ブロック50内における樹脂11の硬化後においては、
図20に示すように、可動側加熱ブロック60が下降して固定側加熱ブロック50から離れ、型開き状態となる。その後、可動側加熱ブロック60の形状部61から、成形品取出装置80によって樹脂成形品100の取り出しが行われる。この取り出し時には、樹脂11の流動性が低いゲートブロック40と冷却ブロック30との境界近傍でゲートカットが行われる。このとき、前記境界近傍に、ゲートブロック側ゲート42における拡径部43よりも内径の小さい絞り部41が配置されているので、当該絞り部41に取り出し時の応力を集中させることができる。したがって、前記境界近傍で行われるゲートカットの確実性を高めることができる。
【0060】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る冷却ブロックは、樹脂11(熱硬化性樹脂)の流路である第二スプルー31(樹脂流路)と、第二スプルー31の周囲に配置され、内部に冷却材33が流される冷却流路32とが形成された冷却ブロック30である。冷却流路32は、第二スプルー31に対して巻かれた複数の単位巻き部分323aを備えている。複数の単位巻き部分323aのうち、隣り合う少なくとも一組の単位巻き部分323aのピッチ間距離Aは、1.5mm以上8.0mm以下である。複数の単位巻き部分323aと第二スプルー31との最短距離Bは、1.0mm以上5.0mm以下である。
【0061】
また、本実施の形態に係るランナーレス射出成形装置10は、上記冷却ブロック30と、樹脂11を硬化させるための熱源を有する固定側加熱ブロック50(加熱ブロック)と、を備える。
【0062】
この構成によれば、隣り合う少なくとも一組の単位巻き部分323aのピッチ間距離Aが、1.5mm以上8.0mm以下であり、複数の単位巻き部分323aと第二スプルー31との最短距離Bが1.0mm以上5.0mm以下であるので、第二スプルー31内の樹脂11を効率的に冷却することができる。したがって、第二スプルー31内で樹脂11が硬化することを抑制することができ、樹脂11の流動性を安定化させ、樹脂充填のばらつきを抑えることが可能となる。
【0063】
特に、樹脂射出部から複数の金型20に対して樹脂を同時に充填する場合においては、樹脂11の流動性が安定化されているために、複数の金型20における樹脂充填のばらつきを抑制することが可能である。
【0064】
また、冷却流路32の内径は、3.0mm以上10.0mm以下である。
【0065】
この構成によれば、冷却流路32の内径が3.0mm以上10.0mm以下であるので、冷却材33が冷却流路32内をスムーズに流れる範囲で高速化することができ、冷却効率を高めることができる。
【0066】
また、冷却ブロック30は、金属製の光造形物である。
【0067】
この構成によれば、冷却ブロック30が金属製の光造形物であるので、製造上の制約が少なくなり、冷却流路32の設計上の自由度を高めることができる。
【0068】
また、第二スプルー31は、第一流路311と、第一流路311に連通して、当該第一流路311よりも細い第二流路313とを備えている。冷却流路32と第二流路313との最短距離Cは、1.5mm以上4.0mm以下である。
【0069】
この構成によれば、冷却流路32と第二流路313との最短距離Cが、1.5mm以上4.0mm以下であるので、第二流路313内の温度分布を適正化することが可能である。
【0070】
(変形例1)
次に、本実施の形態に係る変形例1について説明する。
【0071】
上記実施の形態では、排出部322が下部に設けられた冷却ブロック30を例示して説明したが、排出部のレイアウトは如何様でもよい。なお以下の説明において、上記実施の形態と同一の部分は同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0072】
図21は、変形例1に係る冷却ブロック30Bを示す断面図である。
図21に示すように、冷却ブロック30Bに備わる冷却流路32Bの排出部322bは、中間部323の下端から外方に向けて水平に伸びてから、屈曲して上方に延在している。さらに排出部322bは、供給部321と同等の高さ位置で屈曲してから、外方に向けて水平に延在している。なお、供給部321と排出部322bの位置関係は逆であってもよい。
【0073】
(変形例2)
次に、本実施の形態に係る変形例2について説明する。
【0074】
上記実施の形態では、螺旋状の中間部323を備えた冷却流路32を例示して説明したが、冷却流路32の流路形状は、第二スプルー31の周囲に配置されて、当該第二スプルー31を部分的にでも巻く形状であれば如何様でもよい。
【0075】
変形例2では、冷却流路のその他の形状の一例について
図22〜
図24に基づいて説明する。
図22は、変形例2に係る冷却流路32Aの概略構成を示す斜視図である。
図23は、変形例2に係る冷却流路32Aの概略構成を示す正面図である。
図24は、変形例2に係る冷却流路32Aの概略構成を示す側面図である。
【0076】
図20〜
図23に示すように、変形例2に係る冷却流路32Aの中間部323aは、第二スプルー31の周囲を全体として囲むように形成されている。具体的には、中間部323aは、複数の円弧部3231と、複数の連結部3232とを備えている。
【0077】
複数の円弧部3231は、それぞれ上下方向の異なる位置で第二スプルー31に対して巻かれるように配置された流路である。つまり、一つの円弧部3231が単位巻き部分である。具体的には、円弧部3231は、6つ設けられている。以降、上から順に第一円弧部3231a、第二円弧部3231b、第三円弧部3231c、第四円弧部3231d、第五円弧部3231e及び第六円弧部3231fと称す。第一円弧部3231a、第三円弧部3231c、第四円弧部3231d、第五円弧部3231e及び第六円弧部3231fは、上面視C字状に形成されている。第二円弧部3231bは、分断した二つの円弧3231b1、3231b2により形成されている。
【0078】
複数の連結部3232は、上下方向に延在した流路であり、各円弧部3231を連結する部分である。
【0079】
以下、具体的に各円弧部3231と、各連結部3232との接続関係について説明する。ここで、各円弧部3231において、冷却材33の流れ方向の上流側を「一端部」と称し、下流側を「他端部」と称す。
【0080】
第一円弧部3231aの一端部には、供給部321aが連結され連通している。なお、
図22〜
図24では、供給部321aの一部のみを図示している。また、第一円弧部3231aの他端部と、第二円弧部3231bの円弧3231b1の一端部とは、連結部3232を介して連結され連通している。第二円弧部3231bの円弧3231b1の他端部と、第三円弧部3231cの一端部とは、連結部3232を介して連結され連通している。第三円弧部3231cの他端部と第二円弧部3231bの円弧3231b2の一端部とは、連結部3232を介して連結され連通している。第二円弧部3231bの円弧3231b2の他端部と第四円弧部3231dの一端部とは、連結部3232を介して連結され連通している。第四円弧部3231dの他端部と第五円弧部3231eの一端部とは、連結部3232を介して連結され連通している。第五円弧部3231eの他端部と第六円弧部3231fの一端部とは、連結部3232を介して連結され連通している。そして、第六円弧部3231fの他端部には、排出部322aが連結され連通している。
【0081】
このような冷却流路32Aの中間部323aにおいても、隣り合う少なくとも一組の円弧部3231のピッチ間距離Aを1.5mm以上8.0mm以下とし、複数の円弧部3231と第二スプルー31とがなす最短距離Bを1.0mm以上5.0mm以下とすればよい。これにより、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0082】
(その他)
以上、本発明に係る冷却ブロック30及びランナーレス射出成形装置10について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0083】
その他、上記実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。