(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1溶接痕の溶接始端部および溶接終端部の少なくとも一方は、前記第1リードの幅方向において、前記第1溶接痕における前記第1リードの幅方向の最外部よりも内側に位置する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池。
第1電極、第2電極、および前記第1電極と前記第2電極との間に介在するセパレータを有する電極群と、前記第1電極と電気的に接続する第1端子部および前記第2電極と電気的に接続する第2端子部を有し、前記電極群および電解質を収容する容器と、を具備する電池を準備する工程と、
前記第1端子部と外部機器とを電気的に接続するための長尺状の第1リードを準備する工程と、
前記容器の前記第1端子部に前記第1リードの溶接予定部を重ね合わせた後、前記溶接予定部に予熱を付与するために、前記第1リードの長手方向における前記溶接予定部の近傍位置にレーザを照射して第1レーザ照射痕を形成する工程と、
前記溶接予定部に予熱が付与された状態において、前記溶接予定部にレーザを照射して、前記第1リードを前記第1端子部に溶接するとともに第1溶接痕を形成する工程と、を含み、
前記第1溶接痕は、前記第1リードが外部機器と電気的に接続される第1の側に凸の曲線状の第1部位を有し、
前記第1リードの幅方向における前記第1溶接痕の長さTと、前記第1リードの長手方向における前記第1溶接痕の長さtとは、関係式:T/t>1を満たす、電池の製造方法。
第1電極、第2電極、および前記第1電極と前記第2電極との間に介在するセパレータを有する電極群と、前記第1電極と電気的に接続する第1端子部および前記第2電極と電気的に接続する第2端子部を有し、前記電極群および電解質を収容する容器と、を具備する電池を準備する工程と、
前記第1端子部と外部機器とを電気的に接続するための長尺状の第1リードを準備する工程と、
前記容器の前記第1端子部に前記第1リードの溶接予定部を重ね合わせた後、前記溶接予定部に予熱を付与するために、前記第1リードの長手方向における前記溶接予定部の近傍位置にレーザを照射して第1レーザ照射痕を形成する工程と、
前記溶接予定部に予熱が付与された状態において、前記溶接予定部にレーザを照射して、前記第1リードを前記第1端子部に溶接するとともに第1溶接痕を形成する工程と、を含み、
前記第1溶接痕は、前記第1リードの幅方向に延びる直線部と、前記直線部の両端から、前記第1リードが外部機器と電気的に接続される第1の側とは反対の第2の側に向かって湾曲する湾曲部と、を有する第1部位を有する、電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、第1電極、第2電極、および前記第1電極と前記第2電極との間に介在するセパレータを有する電極群と、前記第1電極と電気的に接続する第1端子部および前記第2電極と電気的に接続する第2端子部を有し、前記電極群および電解質を収容する容器と、を備える電池本体に、当該電池本体と外部機器とを電気的に接続するための外部リードが取り付けられた電池に関する。すなわち、第1端子部と外部機器とを電気的に接続するための長尺状の第1リードが、電池本体の第1端子部に溶接された電池に関する。第1リードは、第1端子部との溶接部に第1溶接痕を有する。第1電極および第2電極の一方は正極であり、他方は負極である。電極群は、積層タイプでも巻回タイプでもよい。第1リードには、例えば金属箔が用いられる。
【0011】
第1溶接痕が点状の溶接痕である場合には、負荷が一点に集中するため、そこが起点となり第1リードが第1端子部から剥離し易く、溶接強度が十分に得られないという不具合を生じる。第1溶接痕が、第1リードが外部機器と電気的に接続される側に凸の折れ線部を有する溶接痕である場合には、負荷が折れ線部の先端部に集中するため、そこが起点となり第1リードが第1端子部から剥離し易く、溶接強度が十分に得られないという不具合を生じる。第1溶接痕が第1リードの幅方向に沿って延びる直線状の溶接痕である場合には、直線状の溶接痕の両端部に負荷がかかり、その両端部の少なくとも一方が起点となり第1リードが第1端子部から剥離し易く、溶接強度が十分に得られないという不具合を生じる。
【0012】
そこで、本発明は、第1溶接痕を特定の形状とすることで、上記の不具合を解消して、溶接強度を高めるものである。第1溶接痕は、1つでもよく、複数でもよい。第1溶接痕を複数有する場合、互いに同じ形状でもよく、異なる形状でもよい。
【0013】
本発明の第1の具体的態様として、第1溶接痕は、第1リードが外部機器と電気的に接続される第1の側(以下、単に第1の側とする。)に凸の曲線状の第1部位を有する。
【0014】
第1溶接痕は、第1の側に凸の曲線状の第1部位を有するため、第1リードの第1の側の端部が外部機器に接続された際に、負荷が一点に集中することがなく、負荷を分散させることができる。
【0015】
図2の(i)に示すように、第1リードの溶接痕が第1リードの幅方向に延びる直線部のみからなる場合には、第1リードの第1の側の端部が外部機器に接続された際に、当該直線部の両端部に負荷がかかるため、その両端部の少なくとも一方が起点となり第1リードが第1端子部から剥離し易い。
これに対して、本発明では、第1溶接痕が第1の側に凸の曲線状の第1部位を有する。第1部位の両端部は第1部位の中央部と比べて第1の側とは反対の第2の側に位置するため、第1部位の両端部にかかる負荷が軽減され、その両端部の少なくとも一方を起点とする第1リードの第1端子部からの剥離が抑制される。
また、第1部位を曲線状とすることで、第1部位を直線状とする場合よりも、第1リードの幅方向において、第1部位をより長く形成することができ、第1の側より第1部位にかかる負荷をより分散させることができるとともに、溶接部の接続強度も向上する。第1部位を曲線状とすることは、特に、第1リードの幅が小さい場合(例えば、第1リードの幅が3mm以下または2mm以下の場合)に有効である。
【0016】
また、
図2の(j)に示すように、第1リードの溶接痕が第1の側(
図2の左側)に凸の折れ線部を有する場合には、第1リードの第1の側の端部が外部機器に接続された際に、折れ線部の先端部に負荷が集中するため、その先端部が起点となり第1リードが第1端子部から剥離し易い。
これに対して、本発明では、第1溶接痕が第1の側に凸の曲線状の第1部位を有するため、上述したような、折れ線部の先端部に負荷が集中してかかり、その先端部が起点となり第1リードが第1端子部から剥離するという事態は生じない。
【0017】
第1の具体的態様の第1溶接痕において、曲線状の第1部位の曲率半径Rは、0.5以上であることが好ましい。曲率半径Rが0.5以上であると、第1部位にかかる負荷を十分に分散させやすくなる。
曲線状とは、一定の曲率を有する円弧状でもよく、曲率が徐々に変化する円弧状でもよい。また、曲線状は、波形状を含んでもよい。
【0018】
本発明の第2の具体的態様として、第1溶接痕は、第1リードの幅方向に延びる直線部と、直線部の両端から第1の側とは反対の第2の側に向かって湾曲する湾曲部と、を有する第1部位を有する。湾曲部における直線部側の端部と反対側の端部は、湾曲部における直線部側の端部よりも、第1リードの幅方向において外側に位置する。直線部は、第1リードの長手方向と、例えば70〜110°の角度を有し、好ましくは90°の角度を有する。
【0019】
第1溶接痕は、第1リードの幅方向に延びる直線部を有するため、第1リードの第1の側の端部が外部機器に接続された際に、負荷が一点に集中することがなく、負荷を分散させることができる。
【0020】
上記の湾曲部の存在により、第1部位の両端部にかかる負荷が軽減されることから、
図2の(i)に示す形状の溶接痕の場合のような、その両端部の少なくとも一方が起点となり第1リードが第1端子部から剥離し易くなるという事態は生じない。
【0021】
また、第1リードの幅方向に延びる直線状の第1部位の存在により、
図2の(j)に示す形状の溶接痕の場合のような、折れ線部の先端部に負荷が集中してかかり、その先端部が起点となり第1リードが第1端子部から剥離し易くなるという事態は生じない。
【0022】
第2の具体的態様の第1溶接痕において、第1リードの幅Wと、直線部の長さLとは、関係式:0.3≦L/W≦0.6を満たすことが好ましい。L/Wが0.3以上であれば、直線部にかかる負荷を十分に分散させることができる。L/Wが0.6以下であれば、湾曲部を設ける領域を十分に確保することができ、第1溶接痕の両端部にかかる負荷を十分に軽減できる。なお、上記曲線を形成する領域は湾曲部に含まれる。
【0023】
上記第1溶接痕は、さらに、第1部位の両端から、第1リードの幅方向の中心に向かって湾曲する第2部位を有するか、または、第1の側とは反対の第2の側に向かって第1リードの長手方向に直線状に延びる第2部位を有することが好ましい。第1部位の両端とは、第1部位における第1リードの幅方向の最外部を指す。第1部位の両端を結ぶ直線は、第1リードの長手方向と、例えば70〜110°の角度を有し、好ましくは90°の角度を有する。第1リードの長手方向に直線状に延びる第2部位は、第1リードの長手方向と、20°以下の角度を有してもよい。
第2部位の存在により、第1溶接痕の両端部にかかる負荷をより軽減することができ、その両端部の少なくとも一方が起点となり第1リードが第1端子部から剥離することをより確実に防ぐことができる。また、第1溶接痕の長さを長くすることができ、溶接部の接続強度も向上する。
【0024】
上述した第1の具体的態様の第1溶接痕としては、例えば、
図1の(a)〜(d)に示す形状を有する第1溶接痕が挙げられる。
図1の(a)〜(d)に示す第1溶接痕について、それぞれ(a)〜(d)の破線より左側の部分が第1部位であり、
図1の(a)〜(d)の破線より右側の部分が第2部位である。
図1の(a)〜(d)は、それぞれ左側が第1の側である。
【0025】
(a)は、第1の側に凸の曲線状の第1部位のみからなる第1溶接痕を示す。(b)は、(a)に示す第1部位の両端から、第1の側とは反対の第2の側に向かって第1リードの長手方向に直線状に延びる第2部位を有する第1溶接痕を示す。(c)および(d)は、(a)に示す第1部位の両端から、第1リードの幅方向の中心に向かって湾曲する第2部位を有する第1溶接痕を示す。(d)は、溶接終端部が溶接始端部の近傍に位置する場合の第1溶接痕を示す。
【0026】
上述した第2の具体的態様の第1溶接痕としては、例えば、
図1の(e)〜(h)に示す形状を有する第1溶接痕が挙げられる。
図1の(e)〜(h)に示す第1溶接痕について、それぞれ(e)〜(h)の破線より左側の部分が第1部位であり、
図1の(e)〜(h)の破線より右側の部分が第2部位である。
図1の(e)〜(h)は、それぞれ左側が第1の側である。
【0027】
(e)は、第1リードの幅方向に延びる直線部と、直線部の両端から第1の側とは反対の第2の側に向かって湾曲する湾曲部と、を有する第1部位のみからなる第1溶接痕を示す。(f)は、(e)に示す第1部位の両端から、第1の側とは反対の第2の側に向かって第1リードの長手方向に直線状に延びる第2部位を有する第1溶接痕を示す。(g)および(h)は、(e)に示す第1部位の両端から、第1リードの幅方向の中心に向かって湾曲する第2部位を有する第1溶接痕を示す。(h)は、溶接終端部が溶接始端部の近傍に位置する場合の第1溶接痕を示す。
【0028】
上記第1溶接痕の溶接始端部および溶接終端部の少なくとも一方は、第1リードの幅方向において、第1溶接痕における第1リードの幅方向の最外部よりも内側に位置することが好ましい。第1溶接痕の端部(溶接始端部および溶接終端部)にかかる負荷が大幅に低減され、当該端部を起点として第1リードが第1端子部から剥離することを防ぐ効果が顕著に得られる。
このような第1溶接痕としては、例えば、
図1の(c)、(d)、(g)、(h)に示す第1溶接痕が挙げられる。溶接始端部および溶接終端部付近における第1端子部への溶け込み深さの制御(第1溶接痕の第1端子部への溶け込み深さのばらつき低減)の観点から、溶接始端部と溶接終端部とが十分に離間する
図1の(c)、(g)に示す第1溶接痕が好ましい。さらに第1リードの幅方向における負荷の分散の観点から、(c)に示す、第1の側に凸の曲線状の第1部位を有する第1溶接痕がより好ましい。
【0029】
第1リードの幅方向における第1溶接痕の長さTと、第1リードの長手方向における第1溶接痕の長さtとは、関係式(1):T/t>1を満たすことが好ましく、T/t≧1.5を満たすことがより好ましい。上記関係式(1)を満たす場合には、第1リードの幅方向および長手方向においてバランス良く安定した溶接強度を確保することができる。
第1リードの幅方向の一方の側を第3の側とし、第1リードの幅方向の他方の側を第4の側とする場合、第1リードの幅方向における第1溶接痕の長さTとは、第1リードの幅方向における、第1溶接痕の最も第3の側に位置する点と、第1溶接痕の最も第4の側に位置する点との間の距離の最大値を指す。
第1リードの長手方向における第1溶接痕の長さtとは、第1リードの長手方向における、第1溶接痕の最も第1の側に位置する点と、第1溶接痕の最も第2の側に位置する点との間の距離の最大値を指す。
【0030】
第1溶接痕は第1リードに形成されることから、第1リードの幅方向における第1溶接痕の長さTと、第1リードの幅Wとは、関係式:T/W<1を満たすことが好ましい。第1リードの幅方向において安定した溶接強度を確保するためには、T/Wは0.1以上1未満であることがより好ましい。第1リードの幅方向において安定した溶接強度を確保するためには、上記Tは1mm以上であることが好ましい。容器サイズ(例えば、円筒形容器の外径が2.5〜10mm)の観点から、上記Wは、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは2.5〜10mmである。
【0031】
上記の特定の形状を有する第1溶接痕は、例えば、電池本体の第1端子部に第1リードの溶接予定部を重ね合わせた後、溶接予定部にレーザを照射して、第1リードを第1端子部に溶接することにより形成される。レーザ溶接としては、例えば、ファイバーレーザによるライン溶接、YAGレーザ等によるパルス溶接が挙げられる。第1溶接痕にかかる負荷の分散の観点から、ファイバーレーザによるライン溶接が好ましい。
【0032】
第1リードは、第1リードの長手方向において第1溶接痕と並ぶ近傍位置に第1レーザ照射痕を有することが好ましい。第1レーザ照射痕は、第1溶接痕の第1の側に位置してもよく、第1溶接痕の第2の側に位置してもよい。第1レーザ照射痕は、第1リードの第1端子部への溶接予定部に予熱を付与するために、第1リードにレーザ照射することにより形成される。
第1レーザ照射痕は、溶接痕を兼ねてもよいが、溶接痕を兼ねない(第1端子部と溶接されていない)ことが好ましい。溶接痕を兼ねない場合には、第1リードの第1端子部への溶接により第1リードの放熱性が影響を受けるという事態を生じることがなく、溶接予定部に予熱を安定して付与することができる。
この予熱の付与は、溶接予定部における溶接温度のばらつきを低減し、第1溶接痕の第1端子部への溶け込み深さのばらつきを低減する目的で行われる。これにより、溶け込み深さを安定して制御することができるため、第1端子部が例えば0.15mm以下の薄肉である場合でも、第1端子部の貫通により電解質の漏出をさせることなく、所定の溶け込み深さの第1溶接痕が安定して得られる。なお、第1端子部の強度および第1溶接痕の溶け込み深さの観点から、第1端子部は少なくとも0.05mmの厚みを要する。
【0033】
第1溶接痕と第1レーザ照射痕との間の距離dは、0mmより大きく、0.5mm以下であることが好ましい。距離dとは、第1リードの長手方向における、第1溶接痕の第1レーザ照射痕側の端部と、第1レーザ照射痕の第1溶接痕側の端部との間の距離を指す。
上記の距離dが0.5mm以下であれば、第1溶接痕が形成される溶接予定部に十分に予熱を付与することができ、第1端子部への溶け込み深さのばらつきが小さい第1溶接痕を形成することができる。上記の距離dが0mmより大きければ、第1レーザ照射痕の影響を受けることなく、第1端子部への溶け込み深さのばらつきの小さい第1溶接痕を安定して形成することができる。
【0034】
第1レーザ照射痕および第1溶接痕を有する第1リードが第1端子部に取り付けられた電池の製造方法は、
(1)電池本体を準備する工程と、
(2)電池本体の第1端子部と外部機器とを電気的に接続するための長尺状の第1リードを準備する工程と、
(3)電池本体の第1端子部に第1リードの溶接予定部を重ね合わせた後、溶接予定部に予熱を付与するために、第1リードの長手方向における溶接予定部の近傍位置にレーザを照射して第1レーザ照射痕を形成する工程と、
(4)溶接予定部に予熱が付与された状態において、溶接予定部にレーザを照射して、第1リードを第1端子部に溶接するとともに第1溶接痕を形成する工程と、を含む。
そして、第4工程において、第1溶接痕を、上述した特定の形状に形成する。
【0035】
第3工程および第4工程におけるレーザ溶接としては、例えば、ファイバーレーザによるライン溶接、YAGレーザ等によるパルス溶接が挙げられる。第1溶接痕にかかる負荷の分散の観点から、ファイバーレーザによるライン溶接が好ましい。
溶接予定部に所定の予熱を付与する第3工程は、第4工程の溶接時における溶接予定部の溶接温度を均一化して、第4工程で形成される第1溶接痕の第1端子部への溶け込み深さのばらつきを低減する目的で行われる。
第3工程におけるレーザ照射については、溶接予定部に予熱を十分に付与することができるように照射強度等の照射条件を適宜決めればよい。第3工程において第1リードは第1端子部と溶接されないことが望ましい。第1リードの第1端子部への溶接により第1リードの放熱性が影響を受けるという事態を生じることがなく、溶接予定部に予熱を安定して付与することができる。
第1レーザ照射痕は、第4工程の第1溶接痕形成工程において、溶接予定部における溶接温度を均一にするために溶接予定部に所定の予熱を十分に付与することができるように形成されればよく、その形状は特に限定されない。第1レーザ照射痕の形状は、第1溶接痕と同じ形状でもよく、異なる形状でもよい。
第4工程におけるレーザ照射については、第1溶接痕の第1端子部への溶け込み深さが所定の範囲内となるように、照射強度等の照射条件を適宜決めればよい。
【0036】
電池本体は、外部リードを介して外部機器と電気的に接続するために、電池本体の電極端子部に外部リードを溶接する必要があるものであればよく、特に限定されない。電極端子部(溶接部の面積)が小さく、薄肉であるような小型の電池本体(例えば、容器が円筒形であり、容器の外径が3mm以上10mm以下であるような小径の円筒形電池)において、上述した第1溶接痕や第1レーザ照射痕を設けることによる効果が顕著に得られる。
【0037】
本発明の電池は、さらに、第2端子部に溶接され、第2端子部と外部機器とを電気的に接続するための長尺状の第2リードを備え、当該第2リードは、上記の第1溶接痕と同様の第2溶接痕を有するのが好ましい。第2リードについても、第1リードに第1溶接痕を設けた場合と同様の効果が得られる。第2リードには、例えば、金属箔が用いられる。
第2リードは、上記の第1レーザ照射痕と同様の第2レーザ照射痕を有するのが好ましい。第2リードについても、第1リードに第1レーザ照射痕を設けた場合と同様の効果が得られる。
【0038】
以下、本発明の実施形態に係る電池として、容器の外径が2.5mm以上10mm以下であるような、小径の円筒形電池の一例を示す。
図3に示すように、電池は、電池本体として円筒形電池10と、円筒形電池10の負極端子部2に溶接された負極外部リード21と、円筒形電池10の正極端子部3に溶接された正極外部リード31と、を備える。負極外部リード21の負極端子部2に溶接される側の端部と反対側の端部は、外部機器と電気的に接続されるための部分である。正極外部リード31の正極端子部3に溶接される側の端部と反対側の端部は、外部機器と電気的に接続されるための部分である。
【0039】
図4に示すように、円筒形電池10は、開口部を有する有底円筒形の電池ケース11と、電池ケース11内に収容された巻回式電極群12および電解質(図示せず)と、電池ケース11の開口部を封口する封口体1とを含む。電極群12は、負極15と、正極16と、負極15と正極16との間に介在するセパレータ17とを備えており、電極群12には、電解質が含浸されている。
【0040】
封口体1の周縁部には、鍔部5を覆うようにリング状の絶縁性ガスケット13が配置されている。そして、電池ケース11の開口端部を、ガスケット13を介して内方に屈曲させて、封口体1の周縁部にかしめることにより、電池ケース11が封口されている。
【0041】
電極群12の上端面(頂面)と、封口体1との間には、空間が形成されている。この空間には、絶縁リング18が配され、電極群12と封口体1との接触を規制している。
リボン状の正極内部リード61の一端部は、巻回式電極群12のより内周側において、正極16(正極集電体露出部など)に溶接等により接続され、他端部は、絶縁リング18の中央に形成された孔を通した状態で、封口体1のリード溶接面に溶接により接続されている。つまり、正極16と、封口体1とは、正極内部リード61を介して電気的に接続されており、封口体1は、外部正極端子としての機能を有する。すなわち、封口体1は、その中央部に、外部機器と電気的に接続するための正極外部リード31が溶接される凸状の正極端子部3を有する。
【0042】
負極15は、巻回式電極群12の最外周において、一方の表面のみに負極活物質層が形成されており、他方の表面は負極集電体が露出している。露出した負極集電体は、電池ケース11の内側壁と対向している。最外周の負極集電体には、負極内部リード51の一端部が溶接等により接続され、負極内部リード51の他端部は、電池ケース11の内側壁と、溶接点51aにおいて接続している。つまり、負極15と、電池ケース11とは、負極内部リード51を介して電気的に接続されており、電池ケース11は、外部負極端子としての機能を有する。すなわち、電池ケース11は、その底部に、外部機器と電気的に接続するための負極外部リード21が溶接される負極端子部2を有する。
【0043】
電池ケース11の屈曲した開口端部の外表面およびその周辺のガスケットの表面を覆うように、電気絶縁性材料で形成されたドーナツ状の絶縁層19が配されている。電池の外側から見たとき、電池ケース11の開口部付近では、絶縁層19により、反対の極性を有する封口体1と電池ケース11とがより確実に離間され、外部短絡を効果的に抑制できる。
【0044】
図5に示すように、負極外部リード21は、負極外部リード21が外部機器と電気的に接続される第1の側(
図5の左側)に凸の略C字状の第1溶接痕22を有する。第1溶接痕22は、第1の側に凸の曲線状の第1部位22a(第1溶接痕22の破線より左側の部分)を有するため、第1溶接痕22にかかる負荷が分散する。
第1溶接痕22は、第1部位22aの両端から、負極外部リード21の幅方向の中心に向かって湾曲する第2部位22b(第1溶接痕22の破線より右側の部分)を有する。第1溶接痕22の溶接始端部22cおよび溶接終端部22dは、負極外部リード21の幅方向において、第1溶接痕22における負極外部リード21の幅方向の最外部よりも内側に位置する。よって、第1溶接痕22の端部(溶接始端部22cおよび溶接終端部22d)にかかる負荷が大幅に低減され、当該端部を起点として負極外部リード21が負極端子部2から剥離することを防ぐ効果が顕著に得られる。
【0045】
図6に示す、負極外部リード21の幅方向における第1溶接痕22の長さTと、負極外部リード21の長手方向における第1溶接痕22の長さtとは、関係式(1):T/t>1を満たすことが好ましい。上記関係式(1)を満たす場合には、負極外部リード21の幅方向および長手方向においてバランス良く安定した溶接強度を確保することができる。負極外部リード21の端部を外部機器に接続した際に、負極外部リード21の第1の側(
図6の左側)から第1溶接痕22に負荷がかかるのでTの値は大きいほど当該負荷を分散させることができる。
【0046】
負極外部リード21の幅方向における第1溶接痕22の長さTと、負極外部リード21の幅Wとは、関係式(2):0.5≦T/W<1を満たすことが好ましい。上記関係式(2)を満たす場合には、負極外部リード21の幅方向において安定した溶接強度を確保することができる。
負極外部リード21の幅Wは、例えば、1〜10mmである。負極外部リード21の幅Wは、電池ケース11の外径に応じて適宜決めればよい。
【0047】
図5に示すように、負極外部リード21は、負極外部リード21の長手方向において第1溶接痕22と並ぶ近傍位置に第1レーザ照射痕23を有する。第1の側から、1レーザ照射痕23、第1溶接痕22の順に並ぶ。
【0048】
第1レーザ照射痕23は、負極外部リード21の負極端子部2への溶接予定部に予熱を付与するために、負極外部リード21にレーザ照射することにより形成される。第1レーザ照射痕23は、溶接痕を兼ねてもよい。この予熱の付与は、溶接予定部における溶接温度のばらつきを低減し、第1溶接痕22の負極端子部2への溶け込み深さのばらつきを低減する目的で行われる。これにより、溶け込み深さを安定して制御することができるため、負極端子部2(電池ケース11の底部)が0.15mm以下の薄肉である場合でも、負極子部2が貫通することなく、所定の溶け込み深さの第1溶接痕22が安定して得られる。その結果、第1溶接痕22の形成のためのレーザ照射の際に負極端子部2(電池ケース11の底部)に穴が開き、その穴から電池10外部へ電解質が漏出するという不具合が生じることを防ぐことができる。
なお、電池ケース11の強度および第1溶接痕の溶け込み深さの観点から、電池ケース11(負極端子部2)は、少なくとも0.08mmの厚みを要する。
【0049】
第1溶接痕22と第1レーザ照射痕23との間の距離dは、0mm以上0.5mm以下であることが好ましい。上記の距離dが0.5mm以下であれば、第1溶接痕22が形成される溶接予定部に十分に予熱を付与することができ、負極端子部2への溶け込み深さのばらつきが小さい第1溶接痕22を形成することができる。上記の距離dが0mm以上であれば、第1レーザ照射痕23の影響を受けることなく、負極端子部2への溶け込み深さのばらつきの小さい第1溶接痕22を安定して形成することができる。
【0050】
第1レーザ照射痕23および第1溶接痕22の形成により、例えば、幅2mm以下の負極外部リード21を0.15mm以下の薄肉の負極端子部2に溶接する場合でも、高い溶接強度を実現できるとともに、溶接に対する信頼性が大幅に向上する。
【0051】
図7に示すように、正極外部リード31は、第1溶接痕22と同じ形状の略C字状の第2溶接痕32を有する。
図7に示すように、正極外部リード31は、正極外部リード31の長手方向において第2溶接痕32と並ぶ近傍位置に第2レーザ照射痕33を有する。第1の側から、第2レーザ照射痕33、第2溶接痕32の順に並ぶ。正極外部リード31に第2溶接痕32および第2レーザ照射痕33を設けることにより、負極外部リード21に第1溶接痕22および第1レーザ照射痕23を設けた場合と、同様の効果が得られる。