(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624715
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】組合せ変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 30/12 20060101AFI20191216BHJP
H01F 30/14 20060101ALI20191216BHJP
H02M 5/10 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
H01F30/12 R
H01F30/14
H02M5/10 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-120648(P2015-120648)
(22)【出願日】2015年6月15日
(65)【公開番号】特開2016-111321(P2016-111321A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2018年6月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-239145(P2014-239145)
(32)【優先日】2014年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514105011
【氏名又は名称】株式会社東光高岳
(73)【特許権者】
【識別番号】500487882
【氏名又は名称】株式会社ファミリーネット・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100092598
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】望月 佑起
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩行
【審査官】
井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−122105(JP,U)
【文献】
特開昭54−134321(JP,A)
【文献】
実開平02−011314(JP,U)
【文献】
特開昭59−089405(JP,A)
【文献】
特開2001−237129(JP,A)
【文献】
高圧受電設備における不平衡実態に関する調査研究委員会,高圧受電設備における不平衡実態に関する調査研究,J. IEIE Jpn,日本,2013年11月,Vol. 33 No.11,821
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/12
H01F 30/14
H02M 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの線間に対し、それぞれ単相変圧器を接続し、このうちの2つの異なる定格容量の単相変圧器を異容量V結線方式で接続し、単相負荷用の電力と、三相負荷用の電力を出力可能とする組合せ変圧器であって、
前記3つの線間に接続される各単相変圧器の定格容量の最大と最小の差が100kVA以下になるように構成した
ことを特徴とする組合せ変圧器。
【請求項2】
前記3つの線間に接続される各単相変圧器のうち、定格容量が最大の単相変圧器と定格容量が最小の単相変圧器をV結線することを特徴とする請求項1に記載の組合せ変圧器。
【請求項3】
前記3つの線間に接続される各単相変圧器の定格容量は、150kVA,100kVA,50kVAとし、
前記150kVAの単相変圧器と、前記50kVAの単相変圧器をそれぞれ異容量V結線することを特徴とする請求項1または2に記載の組合せ変圧器。
【請求項4】
前記3つの線間に接続される各単相変圧器は、単独或いは任意の組合せでタンクに収納することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の組合せ変圧器。
【請求項5】
前記各単相変圧器は、キュービクル式受電設備に収納することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の組合せ変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電設備に使用する組合せ変圧器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の集合住宅用変圧器の一例を示している。
図1(a)に示すように、この種の集合住宅用変圧器は、タンク1内に、定格容量の異なる2台の単相変圧器2,3を実装する。
図1(b)に示すように、この2台の単相変圧器2,3は、異容量V結線方式で接続されている。これにより、例えば、送電線を流れる高圧電力を、この集合住宅用変圧器で100Vや200Vの低圧電力に変換し、例えば集合住宅における共有部分の電灯等や各住居で使用する単相負荷と、エレベータなどの三相負荷とに電力を供給する。このように、異容量V結線方式を用いることで、三相変圧器を用いることなく三相負荷に対して電力供給することができる。
【0003】
図示した構造の集合住宅用変圧器は、電力会社が管理するものである。よって、送電線を流れる高圧電力を、当該電力会社側が管理する集合住宅用変圧器で約100V又は約200Vの低圧電力に変換する。顧客となる各家庭や集合住宅の管理組合は、電力会社との間で低圧電力供給契約を締結し、集合住宅用変圧器から出力される低圧電力を利用する。係る集合住宅用変圧器は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−107936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の集合住宅用変圧器は、以下に示す問題を有する。すなわち、異容量V結線方式は、元々異なる定格容量の2台の単相変圧器を用いるため、設備不平衡が生じてしまう。そして、通常、2台の単相変圧器2,3の定格容量のうち小さい定格容量が三相負荷に供給する電力に利用され、2台の単相変圧器2,3の定格容量の差分が単相負荷に利用される。よって、単相負荷容量が大きい場合、2台の単相変圧器2,3の定格容量の差も大きくなり、設備不平衡率も大きくなってしまう。
【0006】
ここで、
設備不平衡率=(A/B)×100 [%]
A=各線間に接続される単相変圧器総容量の最大最小の差
B=総変圧器容量×1/3
である。従って、図示した従来例の集合住宅用変圧器の場合、UV間に接続された単相変圧器3の定格容量は250kVA、VW間に接続された単相変圧器2の定格容量は50kVAであり、WU間には変圧器が接続されていないため、WU間の容量は0kVAとなる。よって、各線間に接続される容量の最大値は250kVAで最小値は0kVAとなるので(
図1(c)参照)、
A=250−0=250
となる。また総変圧器容量は、
250+50+0=300
となる。従って、
B=300×1/3=100
となる。よって、
設備不平衡率=(250/100)×100=250 [%]
となる。
【0007】
上記のように、
図1に示した集合住宅用変圧器の設備不平衡率は250%と非常に大きな値となるが、電力会社が管理する場合には、他の系統をふまえ全体として調整を図ることが可能となる。しかし、当該集合住宅用変圧器が、一般需要者の持ち物となった場合、電力会社と相違して他の系統との関係で平衡になるように調整を行うことはできない。また、例えば、送電線を流れる高圧電力をそのまま利用者側に供給するようにし、利用者側が管理する組合せ変圧器で約100V又は約200Vの低圧電力に変換して利用する高圧電力供給契約を締結した場合、当該組合せ変圧器は、管理組合の持ち物となり、高圧受電設備規定の制限を受ける。高圧受電設備規定JEAC8011によれば、設備不平衡率を30%以下に抑える必要があり、
図1に示す集合住宅用変圧器では、係る規定の条件を満足しない。よって、そのままでは高圧電力供給契約を締結できず、電気料金の安い高圧電力供給契約のメリットを受けられないという課題もある。
【0008】
また、以下のいずれかの条件を満たす場合、設備不平衡率が30%以下という制限を受けない。
(1)高圧受電において、100kVA以下の単相変圧器の場合
(2)高圧受電において、各線間に接続される単相変圧器の最大と最小の差が100kVA以下の場合
【0009】
しかし、
図1に示す従来の集合住宅用変圧器では、いずれの条件も満たさない。また、いずれかの条件を満たすために、例えば単相変圧器3の定格容量を100kVAのように小さくすれば、高圧受電設備規定を満たすものの総容量が小さくなり、そのままでは十分な電力供給ができず、場合によっては集合住宅用変圧器を2台設置する必要が生じるおそれもある。すると、設置面積が大きくなり、設備のコスト高を招き高圧電力供給契約のメリットを受けられないなどの新たな課題を生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、(1)異なる定格容量の単相変圧器を異容量V結線方式で接続し、単相負荷用の電力と、三相負荷用の電力を出力可能とする組合せ変圧器であって、3つの線間に対し、それぞれ単相変圧器を接続し、前記3つの線間に接続される各単相変圧器の定格容量の最大と最小の差が
100kVA以下になるように構成した。3つの線間のすべてに単相変圧器が接続されるため、全ての線間において単相変圧器が非接続の状態とならず、容量が0kVAの線間が発生しない。よって、各線間の容量の最大値と最小値の差は、実際に接続された3台の単相変圧器の定格容量の最大値と最小値の差となる。つまり、最小値は0ではないので、設備不平衡率を低く抑えやすくなる。さらに、最大値と最小値の差を
100kVAにすることで、3台の単相変圧器の定格容量の偏差が小さくなり、設備不平衡率をより低くしやすくなる。ま
た、一般需要者が使用可能な高圧受電設備規定を満たすことができる。
さらに、たとえ設備不平衡率が大きくても、高圧受電設備規定を満たすため、好ましい。
【0011】
(2)前記3つの線間に接続される各単相変圧器のうち、定格容量
が最大の単相変圧器と
定格容量が最小の単相変圧器をV結線するとよい。このようにすると、三相負荷用の電力は、V結線した定格容量の小さい方の単相変圧器の定格容量により規定され、安定して出力することができるとともに、出力される電力の容量も明瞭となるので良い。一方、単相負荷用の電力は、V結線した2つの単相変圧器の定格容量の差と、当該残りの一つの単相変圧器の定格容量の和に相当するため、定格容量の大きい2台の単相変圧器から大きな容量の三相電力の供給を行うことができる。
【0012】
前記3つの線間に接続される各単相変圧器のうちの2つの単相変圧器をそれぞれV結線し、前記2つの単相変圧器の定格容量の和が、電力会社が管理する異容量V結線方式の集合住宅用変圧器に実装されるV結線される単相変圧器の定格容量と等しくし、前記3つの線間に接続される各単相変圧器のうちのV結線しない単相変圧器の定格容量は、異容量V結線方式の集合住宅用変圧器に実装されるV結線しない単相変圧器の定格容量と等しくするとよい。このようにすると、電力会社が所有し管理する集合住宅用変圧器と同等の出力ができ、電力会社所有の集合住宅用変圧器を用いた低圧電力供給契約による電力供給から、一般需要者が所有し管理する組合せ変圧器を用いた高圧電力供給契約による電力供給に切り替えたり、新設の集合住宅において設置する組合せ変圧器を選択する幅が増えたりするので良い。
【0014】
(3)前記3つの線間に接続される各単相変圧器の定格容量は、150kVA,100kVA,50kVAとし、前記150kVAの単相変圧器と、前記50kVAの単相変圧器をそれぞれ異容量V結線するようにするとよい。電力会社所有の既設の集合住宅用変圧器として、V結線する単相変圧器の定格容量が250kVA、V結線しない単相変圧器の定格容量が50kVAのものがあり、当該集合住宅用変圧器の代わりに設置することができるのでよい。
【0015】
(4)前記3つの線間に接続される各単相変圧器は、単独或いは任意の組合せでタンクに収納するとよい。例えば3つの線間に接続される各単相変圧器は、3台分の中身を1つのタンクに収納したり、1台分と2台分をそれぞれ2つのタンクに収納したり、1台毎に3つのタンクに収納したりすることができる。
【0016】
(5)前記各単相変圧器は、キュービクル式受電設備に収納するとよい。よって、例えば
(4)の発明の場合、単相変圧器をタンクに収納した形でキュービクル式受電設備に収納されることになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、容量が0kVAの線間が生じないとともに、接続した各単相変圧器の定格容量の最大値と最小値の差が一定以内に収まるため、設備不平衡率を低く抑えやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明に係る組合せ変圧器の好適な実施形態を示す概略構成図である。
【
図3】本発明に係る組合せ変圧器の好適な実施形態における単相変圧器の結線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づき、詳細に説明する。なお、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0020】
図2に示すように、本実施形態では、タンク10内に第一単相変圧器11,第二単相変圧器12,第三単相変圧器13の3台の単相変圧器を実装する。そして、
図3に示すように、UV間に第一単相変圧器11を接続し、VW間に第二単相変圧器12を接続し、WU間に第三単相変圧器13を接続した。このように3つの線間に対し、それぞれ単相変圧器を接続し、全ての線間において単相変圧器の非接続の状態が生じないようにした。これにより、容量が0kVAの線間が発生しない。
【0021】
また、第一単相変圧器11と第二単相変圧器12を異容量V結線とし、第三単相変圧器13を単三結線とする構成をとった。このようにすることで、組合せ変圧器から単相負荷用の電力と三相負荷用の電力が出力される。
【0022】
さらに、各線間に接続される単相変圧器の定格容量の最大と最小の差が100kVA以下になるようにした。具体的には、第一単相変圧器11の定格容量を150kVA、第二単相変圧器12の定格容量を50kVA、第三単相変圧器13の定格容量を100kVAとした。
【0023】
係る構成をとることで、設備不平衡率は、
設備不平衡率=(A/B)×100 [%]
A=各線間に接続される単相変圧器総容量の最大最小の差
B=総変圧器容量×1/3
となるので、
A=150−50=100
B=(50+150+100)×1/3=100
より、
設備不平衡率=(100/100)×100=100 [%]
となる。よって、従来の集合住宅用変圧器の設備不平衡率(250%)に比べ、小さくすることができる。
【0024】
さらに、変圧器容量の差は、最大値が第一単相変圧器11の150kVAで、最小値が第二単相変圧器12の50kVAであるため、100kVAとなる。よって、「(2)高圧受電において、各線間に接続される単相変圧器の最大と最小の差が100kVA以下の場合」の条件を具備するため、高圧受電設備規定も満たす。
【0025】
そして、本実施形態の組合せ変圧器は、例えば集合住宅の管理組合で保有し、電力会社からは当該組合せ変圧器に対して高圧電力の供給を受け、そこで低圧に変換して各家庭等に供給する高圧電力供給契約を締結することができ、一体形の組合せ変圧器として一般民需向けに販売できる。
【0026】
また、本実施形態では、従来の集合住宅用変圧器の250kVAの単相変圧器3の機能が、第一単相変圧器11と第三単相変圧器13にて受け付け、50kVAの単相変圧器2の機能が第二単相変圧器12にて受け付ける。このように、定格容量を従来のもの合わせたため、例えば
図1に示す従来の集合住宅用変圧器が設置されて、使用されてきた集合住宅用において、本実施形態の組合せ変圧器に置き換えることが容易にできる。
【0027】
さらに、タンク10に各単相変圧器を実装するに際し、定格容量が最も大きくそれに伴い寸法形状も最も大きい第一単相変圧器11を設置し、その上に第二単相変圧器12と第三単相変圧器13を配置した。
図1に示す250kVAの単相変圧器3の寸法形状に比べて第一単相変圧器11の寸法形状は小さく、タンク10は例えば従来のタンク1の平面の寸法形状と同じ大きさに抑えることができる。よって、例えば既設の集合住宅用変圧器を撤去し、その場所に本実施形態の組合せ変圧器を設置することも可能である。また、新設の集合住宅の設備に本実施形態の組合せ変圧器を新規に設置する場合、従来の電力会社が所有し管理する集合住宅用変圧器を設置するためのエリアがあれば、本実施形態の組合せ変圧器も設置できる。
【0028】
なお、上述した実施形態では、各変圧器の定格容量を特定の値に指定したが、本発明はこれに限ることは無く、各種の設定をしてよい。例えば第一単相変圧器11と第三単相変圧器13の定格容量をともに125kVAとすれば、設備不平衡率は、75%とさらに小さくすることができる。また、第一単相変圧器11と第三単相変圧器13の定格容量の和は、250kVAとすると従来例に示した既存の電力会社所有のものに置換することができるが、定格容量の和を250kVA以外にしてもよい。第二単相変圧器12の定格容量も50kVA以外の値に設定してもよい。
【0029】
上述した実施形態の3つの線間に接続される各単相変圧器11,12,13は、単独或いは任意の組合せでタンクに収納するとよい。具体的には、3つの線間に接続される各単相変圧器は、3台分の中身を1つのタンクに収納したり、1台分と2台分をそれぞれ2つのタンクに収納したり、1台毎に3つのタンクに収納したりすることができる。
【0030】
本実施形態の組合せ変圧器は、各単相変圧器をキュービクル式受電設備に収納した構成とすることができる。また、そのようにキュービクル式受電設備に実装することなく、開放変電室設置型に適用しても良い。
【符号の説明】
【0031】
10 タンク
11 第一単相変圧器
12 第二単相変圧器
13 第三単相変圧器