特許第6624748号(P6624748)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6624748
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】雑草及び雑草種子の死滅方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/00 20060101AFI20191216BHJP
   A01G 25/00 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   A01M21/00 Z
   A01G25/00 501Z
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-124271(P2018-124271)
(22)【出願日】2018年6月29日
【審査請求日】2019年8月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517421714
【氏名又は名称】ロックアート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(72)【発明者】
【氏名】粟田 隆央
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−103699(JP,A)
【文献】 特開平05−095753(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3147516(JP,U)
【文献】 特開2007−252241(JP,A)
【文献】 特開2010−022273(JP,A)
【文献】 牛木純,熱水による水田雑草種子の死滅条件および熱水土壌消毒法の水稲および水田雑草の生育におよぼす影響,雑草研究,2008年,Vol.53 No.2,p.48-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 21/00
A01G 22/22,25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田内の雑草及び雑草種子を死滅させる雑草及び雑草種子の死滅方法において、
前記雑草の高さ以上の高さまで水を張った前記水田内に電熱線を配設し、
前記電熱線によって前記水田内の水を70℃以上の温度に至るまで加熱し、
加熱により得られた熱水により前記水田内の雑草及び雑草種子を死滅させる、
雑草及び雑草種子の死滅方法。
【請求項2】
加熱源による加熱によって得られた温水を前記水田内に供給する、
請求項1に記載の雑草及び雑草種子の死滅方法。
【請求項3】
前記水田内の水を回収し、
回収した水を前記加熱源により加熱することで得られた温水を前記水田内に供給する、
請求項2に記載の雑草及び雑草種子の死滅方法。
【請求項4】
特定の領域内の雑草及び雑草種子を死滅させる雑草及び雑草種子の死滅方法において、
前記雑草の高さ以上の高さまで前記領域内に水を供給し、
前記領域内に電熱線を配設し、
前記電熱線によって前記領域内の水を70℃以上の温度に至るまで加熱し、
加熱により得られた熱水により前記領域内の雑草及び雑草種子を死滅させる、
雑草及び雑草種子の死滅方法。
【請求項5】
加熱源による加熱によって得られた温水を前記領域内に供給する、
請求項4に記載の雑草及び雑草種子の死滅方法。
【請求項6】
前記領域内の水を回収し、
回収した水を前記加熱源により加熱することで得られた温水を前記領域内に供給する、
請求項5に記載の雑草及び雑草種子の死滅方法。
【請求項7】
壁ユニットを配設して任意の領域を囲むことにより前記特定の領域を形成する、
請求項4乃至6の何れかに記載の雑草及び雑草種子の死滅方法。
【請求項8】
再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を前記電熱線に供給する、
請求項1乃至7の何れかに記載の雑草及び雑草種子の死滅方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑草及び雑草種子を熱作用により死滅させる雑草及び雑草種子の死滅方法に関する。
【背景技術】
【0002】
草刈機又は除草剤等を使用せずに雑草の除草を行う技術として、蒸気を用いた除草方法が従来提案されている(特許文献1及び2を参照。)。この除草方法では、ボイラー及び給水タンク等を備える蒸気発生装置により高温の蒸気を生成し、ホースを介してその蒸気を雑草に当て、その熱により雑草を死滅させる。
【0003】
この蒸気を用いた除草方法の場合、除草効果を高めるために、蒸気の熱を雑草に効率良く伝えることが要求される。そのため、特許文献1の除草方法では、ホースの先端部外周に円錐台状のフードを取り付けて、そのフードによって除草対象の雑草を包囲した上で、そのホースから蒸気を供給している。また、特許文献2の除草方法では、シートを敷設して除草範囲を覆い、そのシートの下面に固定したホースからその除草範囲内に蒸気を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−45290号公報
【特許文献2】特開2017−6060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の蒸気を用いた除草方法では、フード又はシート等を用いて限定された除草空間を形成した上で、その除草空間内に蒸気を供給することにより、除草空間内の雑草に対して蒸気の熱を効率良く伝えている。この場合、除草対象の雑草は除草空間内のものに限定されるため、広い範囲での除草を一度に行うことができないという問題が生じる。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる雑草及び雑草種子(以下「雑草」で総称する場合がある)の死滅方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の雑草及び雑草種子の死滅方法は、水田内の雑草及び雑草種子を死滅させる雑草及び雑草種子の死滅方法において、前記雑草の高さ以上の高さまで水を張った前記水田内に電熱線を配設し、前記電熱線によって前記水田内の水を70℃以上の温度に至るまで加熱し、加熱により得られた熱水により前記水田内の雑草及び雑草種子を死滅させる。
【0008】
上記態様において、加熱源による加熱によって得られた温水を前記水田内に供給するようにしてもよい。
【0009】
また、上記態様において、前記水田内の水を回収し、回収した水を前記加熱源により加熱することで得られた温水を前記水田内に供給するようにしてもよい。
【0010】
また、他の態様の雑草及び雑草種子の死滅方法は、特定の領域内の雑草及び雑草種子を死滅させる雑草及び雑草種子の死滅方法において、前記雑草の高さ以上の高さまで前記領域内に水を供給し、前記領域内に電熱線を配設し、前記電熱線によって前記領域内の水を70℃以上の温度に至るまで加熱し、加熱により得られた熱水により前記領域内の雑草及び雑草種子を死滅させる。
【0011】
上記態様において、加熱源による加熱によって得られた温水を前記領域内に供給するようにしてもよい。
【0012】
また、上記態様において、前記領域内の水を回収し、回収した水を前記加熱源により加熱することで得られた温水を前記領域内に供給するようにしてもよい。
【0013】
また、上記態様において、壁ユニットを配設して任意の領域を囲むことにより前記特定の領域を形成するようにしてもよい。
【0014】
また、上記態様において、再生可能エネルギー発電装置で発電された電力を前記電熱線に供給するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、広い範囲の雑草及び雑草種子を死滅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1の雑草及び雑草種子の死滅方法を説明するための図。
図2】水田の断面を模式的に示す図。
図3】水田の断面を模式的に示す図。
図4】本発明の実施の形態2の雑草及び雑草種子の死滅方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための熱線遮蔽シートを例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0018】
本発明の雑草及び雑草種子の死滅方法(以下「雑草死滅方法」という)では、水が供給された領域内にある雑草を死滅対象とし、電熱線による加熱によって得られた熱水によりその雑草を死滅させる。この場合、地表面に出ている雑草は勿論のこと、地下部にある雑草の根及び雑草種子に対しても効率良く熱を伝えることが可能になる。
【0019】
(実施の形態1)
実施の形態1の雑草死滅方法では、水田内に存在する雑草を死滅対象とし、水田内の水を電熱線によって加熱して熱水を生成し、その熱水により雑草を死滅させる。以下、その詳細な手順について説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態の雑草死滅方法を説明するための図である。図1において、符号1は、水を張った状態の水田を示している。水田1の周辺には、電源システム2及び給湯システム3が設けられている。また、水田1内の水中には、電熱線4が直行部分と折り曲げ部分とを有する蛇行形状で配設されている。
【0021】
電源システム2は、既存の発電設備が存在しない地域でも利用可能な所謂オフグリッド型のシステムである。本実施の形態の場合、電源システム2は、太陽光発電機と接続されており、この太陽光発電機にて得られた電力を用いて作動する。なお、電源システム2が接続される発電機は太陽光発電機に限定されるわけではなく、風力発電機及びバイオマス発電機等の他の再生可能エネルギーを利用した発電機器であってもよい。
【0022】
電源システム2は、太陽光発電機にて得られた電力を貯蔵する蓄電池、その蓄電池の充放電を制御する充電コントローラ、及び直流を交流に変換するインバータ等を備えている。蓄電池により、太陽光発電機の出力変動を補償することができる。また、電源システム2は、電熱線4を接続するための接続部21を備えており、この接続部21を介して、太陽光発電機にて得られた電力を電熱線4に供給する。
【0023】
給湯システム3は、加熱源としてのヒートポンプ装置、貯水タンク、循環ポンプ、水田1に対して温水を供給するための往き管31、及び水田1から水を戻すための戻り管32等を備えている。戻り管32を介して水田1から回収された水は、貯水タンクに貯えられ、ヒートポンプ装置により加熱される。その結果得られた温水は、往き管31を介して水田1内に供給される。この水の循環は循環ポンプによって行われる。この給湯システム3は、電源システム2と接続されており、電源システム2から供給される電力で作動するように構成されている。
【0024】
本実施の形態では、給湯システム3の加熱源としてヒートポンプ装置が用いられているが、これに限定されるわけではい。例えば、電熱ヒータ等の他の加熱源を用いるようにしてもよい。
【0025】
また、本実施の形態では、給湯システム3が水田1から回収した水を加熱して温水を生成しているが、例えば外部の給水設備から供給される水を加熱して温水を生成するようにしてもよい。
【0026】
電熱線4は、所定の長さを有する線状の発熱体であって、ニクロム線、タングステン線、カンタル線等、その種類は問わない。なお、電熱線4は、水田1の大きさ等に応じて柔軟に配置できるようにするために、可撓性を有していることが好ましい。
【0027】
上述したように、電熱線4は水田1内において蛇行形状で配設されている。これにより、比較的少ない隙間で水田1内に電熱線4を配することができるため、効率良く熱水を生成することが可能になる。但し、電熱線4の配設の態様は蛇行形状に限定されるわけではなく、円形状等の他の形状であってもよい。
【0028】
なお、水田1に水が張られていない場合は、水が張られた後に電熱線4が配設されてもよく、電熱線4が配設された後に水が張られても構わない。
【0029】
水田1内の適宜の箇所には、水田1内の水を撹拌するためのスクリュー(図示せず)が配設されている。このスクリューは、電源システム2から供給される電力で作動し、水田1内の低層にある温度が低い水及び表層にある温度が高い水を撹拌する。これにより、水田1内の水の温度を効率良く上昇させることができる。
【0030】
図2は、水田の断面を模式的に示す図である。図2に示すように、水田1内には死滅対象の雑草5が生息している。また、水田1内には、上述したように電熱線4が配設されている。なお、電熱線4が設けられる高さは任意である。図2に示す例では、雑草5よりも高い位置に電熱線4が設けられているが、雑草5と同じ又はより低い位置に電熱線4が設けられていてもよい。また、図3に示すように、複数の電熱線4が異なる高さの位置に設けられていてもよい。
【0031】
上記のようにして水田1内に電熱線4が配設された後、電源システム2を作動させ、接続部21を介して電熱線4に電力が供給される。その結果、電熱線4が発熱して水田1内の水が加熱され、水温が上昇して熱水が得られる。この熱水により、水田1内の雑草5の細胞が破壊され、雑草5が死滅する。なお、水田1の地面内にある雑草5の根及び種子に対しても、雑草5を介して熱水の熱が伝わる。その結果、雑草5を確実に死滅させることができるとともに、その種子も死滅させることができる。
【0032】
熱水の温度は、70℃以上であることが好ましく、また80℃以上であることがより好ましい。この範囲の温度とすることにより、雑草5をより確実に死滅させることが可能になる。なお、時間については特に制限はないが、雑草5の根及び種子に対しても熱水の熱を確実に伝えるためには、70℃以上の温度を1分以上維持させること好ましい。
【0033】
上記のように電熱線4による加熱によって水田1内の水を熱水とするが、水田1内の水量及び電熱線4の発熱能力によっては相当程度の時間を要することになる。この時間を短縮化するために、本実施の形態では、給湯システム3においてヒートポンプ装置を用いて温水を生成し、これを水田1内に供給する。これにより、水田1内での熱水の生成をより迅速に実現することが可能になる。給湯システム3から水田1に対して供給される温水は、50℃乃至60℃程度であることが好ましい。なお、植物の種類によっては、50℃程度の温度でも死滅させることが可能である。
【0034】
上記のように、再生可能エネルギー発電装置を用いたオフグリッド型の電源システム2を利用することにより、既存の発電設備を利用できない地域においても、本実施の形態の雑草死滅方法を実施することができる。そのため、多くの地域における水田に、本実施の形態を適用することが可能である。
【0035】
(実施の形態2)
実施の形態1の雑草死滅方法では、水田内における雑草を死滅対象にしている。これに対し、実施の形態2の雑草死滅方法では、水田以外の任意の領域に存在する雑草を死滅対象にすることができる。以下、その詳細について説明する。
【0036】
図4は、本実施の形態の雑草死滅方法を説明するための図である。図4において、符号10は、死滅対象の雑草が存在する任意の領域を囲むための壁ユニットを示している。壁ユニット10は、非透水性の材料で構成されている。また、壁ユニット10は、相互に連結可能に構成されており、死滅対象の雑草が存在する領域を囲むようにして横方向に複数並べて配設されて連結される。これにより、当該領域を閉領域とすることができる。
【0037】
なお、図4において、壁ユニット10は、平面視で全体が矩形状となるように配設されているが、これは例示にすぎない。例えば、平面視で全体が円形状となるように壁ユニット10が配設されていてもよい。
【0038】
上記のようにして壁ユニット10で囲まれた領域には外部の給水設備等から水が供給され、また、実施の形態1の場合と同様に電熱線4が配設される。なお、電源システム2、給湯システム3、及び電熱線4については実施の形態1の場合と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0039】
上記のようにして壁ユニット10で囲まれた領域内に電熱線4が配設された後、電源システム2を作動させ、接続部21を介して電熱線4に電力が供給される。その結果、電熱線4が発熱し、その熱によって当該領域内の水が加熱され、水温が上昇して熱水が得られる。また、給湯システム3が、当該領域内の水を回収し、これをヒートポンプ装置で加熱することにより温水を生成し、当該領域に対して供給する。その結果、当該領域内で効率良く熱水が生成される。
【0040】
上述したようにして得られた熱水により、当該領域内の雑草5の細胞が破壊され、雑草5が死滅する。なお、実施の形態1の場合と同様に、当該領域の地面内にある雑草5の根及び種子に対しても熱水の熱が伝わるため、雑草5を確実に死滅させることができるとともに、その種子も死滅させることができる。
【0041】
なお、本実施の形態では、壁ユニット10を用いて任意の領域を囲んだ後、当該領域内に水を供給しているが、本発明はこれに限定されるわけではない。一定量の水を貯えられる凹部を有する領域であれば、その領域に水を供給して電熱線4を配設することによって、壁ユニット10を用いることなく本実施の形態を適用することができる。
【0042】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態1及び2では、電熱線によって水を加熱して熱水を生成しているが、これに加えて水中ヒータを用いるようにしてもよい。その場合、水中ヒータは、効率良く水温を上昇させるために、水中の低層から表層にわたって加熱可能なものであることが好ましい。具体的には、地面に対して垂直方向に延びるヒータ等が想定される。水中ヒータは、電源システム2とケーブルを介して電気的に接続され、そのケーブルを介して電源システム2から供給される電力を用いて発熱する。このように水中ヒータを備えることによって、水温をより迅速に上昇させることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の雑草及び雑草種子の死滅方法は、水田内に存在する雑草及び雑草種子の死滅方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 水田
2 電源システム
21 接続部
3 給湯システム
31 往き管
32 戻り管
4 電熱線
5 雑草
10 壁ユニット
【要約】      (修正有)
【課題】雑草及び雑草種子を効率良く死滅させることが可能な死滅方法を提供する。
【解決手段】水を張った水田1内に電熱線4を配設し、電熱線4によって水田1内の水を加熱し、加熱により得られた熱水により水田1内の雑草及び雑草種子を死滅させる。水田1の周辺には、太陽光発電機から電力の供給を受けるオフグリッド型の電源システム2が設置され、この電源システム2から電熱線4に対して電力が供給される。また、給湯システム3からは水田1内に温水が供給される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4