(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態を説明する。第1の実施形態では、運搬具を挙げている。
【0026】
図1は、第1の実施形態に係る運搬具を示す斜視図である。
図2は、運搬具の側面図であって、(A)は不使用時の状態図、(B)は使用時の状態図である。
図3は、運搬具の腕部とステーとの係合の様子を示す斜視図である。
図4は、運搬具に建材を載置する手順を示す工程図である。
【0027】
(構成)
図1及び
図2に示すように、運搬具1は、クレーンのフックFに取り付けられる鉄板製の取り付け部2と、取り付け部2に取り付けられた一対の腕部3A、3Bと、一対の腕部3A、3Bそれぞれに互いに平行とされて支持された一対の載荷部4A、4Bと、平行とされた一対の載荷部4A、4Bを水平方向に離間させた状態に維持する鉄板製の一対のステー5A、5Bと、を有している。
【0028】
取り付け部2は、水平方向に延伸する略平板形状の基板21を有している。基板21の長手方向の中間部には、クレーンのフックFを引っ掛ける取り付け孔22が形成されている。
【0029】
一対の腕部3A、3Bは、互いに上端部で連結されつつ、取り付け部2ともその左右両端で連結されており、その連結部9を中心として
図2中に示す矢印M、N方向に回動自在とされている。腕部3Aは、互いに平行な一対の鉄パイプ製の長尺部材L1、L2から構成されている。腕部3Bは、腕部3Aと同様な構成であり、互いに平行な一対の鉄パイプ製の長尺部材L1、L2から構成されている。
【0030】
載荷部4Aは、鉄パイプ製の長尺部材L3から構成され、腕部3Aの一対の長尺部材L1、L2の下端寄りの部位に当該一対の長尺部材L1、L2間に水平に架け渡されている。載荷部4Bは、鉄パイプ製の長尺部材L4から構成され、腕部3Bの一対の長尺部材L1、L2の下端寄りの部位に当該一対の長尺部材L1、L2間に水平に架け渡されている。各載荷部4A、4Bは、それぞれ上部に載荷面41を有しており、各載荷面41には、それぞれゴム部材42が付設されている。
【0031】
ステー5Aは、略長方形の板状をなし、略中間部が板厚方向でクランク状の形状をなしている。ステー5Aは、一端部5aが腕部3Aの長尺部材L1の中間部のやや上の部位に当該長尺部材L1に回動自在に取り付けられ、他端部5bが腕部3Bの長尺部材L1の中間部のやや上の部位に当該長尺部材L1に対して着脱自在とされている。
【0032】
すなわち、
図3に示すように、腕部3Aの長尺部材L1にはステー5Aの一端部5aに形成されている図示しない孔に挿通されて当該ステー5Aの一端部5aを回転自在に支持する回転支軸11が形成されている。回転支軸11は、ステー5Aの一端部5aが回転支軸11の長さ方向に多少移動できるように、ステー5Aの厚さよりも多少長くなっている。また、腕部3Bの長尺部材L1には係合凸部7が形成されている。係合凸部7は、所定の直径D1を有する円柱形状の脚部71と、脚部71の先端部に設けられ脚部71よりも大きい直径D2を有する円盤形状の頭部72とからなる。一方、ステー5Aの他端部5bには、鍵穴形状の係合凹部(係合孔部)8が係合凸部7に係合しうるように形成されている。係合凹部8は、係合凸部7の頭部72の直径D2以上の直径D3を有する略円形状の貫通孔81と、貫通孔81の周縁部(ステー5Aの一端部5a側)に形成され幅W1が脚部71の直径D1以上でかつ頭部72の直径D2よりも小さい長方形状の係止溝82とからなる。係止溝82は、貫通孔81の周縁部の上側部分からステー5Aの一端部5a側に向かいステー5Aの長辺方向と平行となるように延びている。
【0033】
ステー5Bも、ステー5Aと同様な構成を有している。すなわち、ステー5Bは、略長方形の板状をなし、略中間部が板厚方向でクランク状の形状をなしている。そして、ステー5Bは、一端部5aが腕部3Aの長尺部材L2の中間部のやや上の部位に当該長尺部材L2に回動自在に取り付けられ、他端部5bが腕部3Bの長尺部材L2の中間部のやや上の部位に当該長尺部材L2に対して着脱自在とされている。
【0034】
すなわち、
図3に示すように、腕部3Bの長尺部材L2にはステー5Bの一端部5aに形成されている図示しない孔に挿通されて当該ステー5Bの一端部5aを回転自在に支持する回転支軸11が形成されている。回転支軸11は、ステー5Bの一端部5aが回転支軸11の長さ方向に多少移動できるように、ステー5Bの厚さよりも多少長くなっている。また、腕部3Bの長尺部材L2には係合凸部7が形成されている。係合凸部7は、所定の直径D1を有する円柱形状の脚部71と、脚部71の先端部に設けられ脚部71よりも大きい直径D2を有する円盤形状の頭部72とからなる。一方、ステー5Bの他端部5bには係合凹部8が係合凸部7に係合しうるように形成されている。係合凹部8は、係合凸部7の頭部72の直径D2以上の直径D3を有する略円形状の貫通孔81と、貫通孔81の周縁部(ステー5Bの一端部5a側)に形成され幅W1が脚部71の直径D1以上でかつ頭部72の直径D2よりも小さい長方形状の係止溝82とからなる。係止溝82は、貫通孔81の周縁部の上側部分からステー5Aの一端部5a側に向かいステー5Aの長辺方向と平行となるように延びている。
【0035】
そのため、運搬具1は、一対のステー5A、5B及び腕部3Aの一対の長尺部材L1、L2において、係合凸部7の頭部72が係合凹部8の貫通孔81に挿通されて、係合凸部7の脚部71が係合凹部8の係止溝82に嵌合したときには、
図2(B)に示すように、ステー5A、5Bの他端部5bが腕部3Bの長尺部材L1、L2から外れることを防止しつつ、ステー5A、5Bが一対の載荷部4A、4Bを水平方向に所定の距離D4だけ離間させた状態に維持する。
【0036】
そして、
図2(B)に示すように、運搬具1は、一対の載荷部4A、4B上に建材6が架け渡されて水平に載置され、クレーンのフックFによって建材6とともに吊り上げられるように構成されている。
【0037】
(動作、作用等)
次に、運搬具1の動作、及びその作用等の一例について説明する。
【0038】
合板、角材などの建材6を建築現場に搬入するに際して、建材6を積んだトラックの荷台100からクレーン(例えば、当該トラックのクレーン)で建材6を吊り上げて所定の建材置き場まで運搬するときには、作業者は、最初に、以下に述べるとおり、トラックの荷台100で、建材6の近傍に運搬具1をセットする。なお、建材6は、
図4(A)に示すように、トラックの荷台100上に2本の角材101を介して積載されている。また、運搬具1は、建材6とともにトラックの荷台100に積載されている。
【0039】
先ず、作業者は、
図2(A)に示すように、一対のステー5A、5Bの他端部5bが腕部3Bの長尺部材L1、L2から取り外され、一対の腕部3A、3Bが閉じた状態から、
図4(A)に示すように、建材6の上方で、一対の腕部3A、3Bを180°近くまで大きく開く。
【0040】
次に、作業者は、
図4(B)に示すように、運搬具1が建材6を包み込むように、運搬具1を降下させて、腕部3A、3Bの下端部3aをトラックの荷台100に接触させる。その後、作業者は、運搬具1の腕部3A、3Bの下端部3aをトラックの荷台100に接触させたまま、一対の腕部3A、3Bを閉じる方向に所定の開度に達するまで操作する。すると、
図4(C)に示すように、運搬具1は、一対の載荷部4A、4Bが建材6の両端部近傍の裏面側に位置決めされる。このとき、一対の載荷部4A、4Bは、建材6には接触せず、建材6の下方に少し離れて位置決めされている。
【0041】
その後、作業者は、
図2(B)に示すように、係合凹部8を係合凸部7に係合させることにより、一対のステー5A、5Bの他端部5bを腕部3Bの長尺部材L1、L2に取り付ける。これにより、一対の載荷部4A、4Bは、一対のステー5A、5Bによって水平方向に所定の距離D4だけ離間させられた状態で固定される。
【0042】
なお、回転支軸11がステー5A、5Bの厚さよりも多少長く、ステー5A、5Bの一端部5aが回転支軸11の長さ方向に多少移動できるようになっている。これにより、ステー5A、5Bの他端部5も腕部3Bの長尺部材L1、L2の係合凸部7の軸方向で移動できる余裕があるため、ステー5A、5Bの他端部5を係合凸部7上(係合凸部の軸方向の上)に一旦浮かして、その後、係合凸部7を当該ステー5A、5Bの他端部5に形成した係合凹部8に簡易に挿通させることができる。
【0043】
その後、作業者は、
図2(B)に示すように、取り付け部2の取り付け孔22にクレーンのフックFを引っ掛ける。この状態で、作業者は、クレーンを操作してフックF、すなわち、運搬具1を適宜上昇・下降させながら、当該運搬具1と建材6との位置関係を調整し、運搬具1の一対の載荷部4A、4B上に建材6を水平に架け渡した状態にする。このとき、建材6は、各載荷部4A、4Bのゴム部材42、つまり、建材6との摩擦係数が大きい部材に接触して2点支持された状態で、2つの載荷面41上にバランスよく安定して保持される。
【0044】
それから、作業者は、クレーンを操作して、建材6を運搬具1に載せたままトラックの荷台100から建材置き場まで運搬する。
【0045】
このとき、運搬具1は、当該運搬具1及び建材6がトラックの荷台100から浮き上がることに伴って、一対の腕部3A、3Bが自重及び建材6の重量で閉じようとする。そのため、腕部3Bの長尺部材L1、L2にそれぞれ形成された係合凸部7が各ステー5A、5Bの一端部5a側へ移動し、係合凸部7の脚部71が係合凹部8の係止溝82に嵌合する。その結果、係合凸部7と係合凹部8とが強固に係合し、建材6の運搬中にわたって、一対の載荷部4A、4Bが水平方向に離間した状態に維持され、ひいては、建材6の安定した運搬作業が継続される。
【0046】
また、建材6は運搬具1上にバランスよく安定して保持されているので、たとえ建材6の運搬中に運搬具1が強風や地震で揺れたとしても、建材6を載荷部4A、4Bから滑り落ちることなく安全かつ円滑に運搬できる。
【0047】
こうして、建材6をトラックの荷台100から建材置き場まで運搬した後、作業者は、運搬具1を使用時の状態(
図2(B)参照)から不使用時の状態(
図2(A)参照)に戻す。それには、クレーンのフックFを取り付け部2の取り付け孔22から取り外すとともに、係合凹部8と係合凸部7との係合状態を解除することにより、一対のステー5A、5Bの他端部5bを腕部3Bの長尺部材L1、L2から取り外した後、一対の腕部3A、3Bを大きく開き、建材6から運搬具1を取り外す。
【0048】
すると、
図2(A)に示すように、運搬具1が折り畳まれてコンパクト化されるので、運搬具1をトラックの荷台100に積んで建築現場から持ち帰るときに重宝する。同じ理由により、建材6の運搬作業に先立ち、運搬具1をトラックの荷台100に積んで建築現場に持ち込むときにも重宝する。
【0049】
ここで、運搬具1による建材6の運搬作業が終了する。
【0050】
なお、前記の説明では、建材6を運搬具1で運搬する際に、建材6の近傍に運搬具1をセットする作業(
図4(A)〜(C)参照)が終わってから、建材6をクレーンで運搬すべく、取り付け部2の取り付け孔22にクレーンのフックFを引っ掛けた。しかし、特に運搬具1が重い場合には、先に、取り付け部2の取り付け孔22にクレーンのフックFを引っ掛けてから、建材6の近傍に運搬具1をセットする作業を行ってもよい。この場合、運搬具1の重量をクレーンが負担するため、運搬具1が重くても建材6の一連の運搬作業を容易かつ円滑に進められる。
【0051】
(第1の実施形態における効果)
(1)運搬具1は、取り付け部2と、一対の腕部3A、3Bと、一対の載荷部4A、4Bと、一対のステー5A、5Bとからなる簡単な構造であり、クレーンのフックFで建材6を容易に吊り上げて運搬できる。
【0052】
(2)運搬具1は、一対の腕部3A、3Bが互いに回動自在とされており、一対のステー5A、5Bが一対の腕部3A、3Bに対して着脱自在であるため、一対の腕部3A、3Bから一対のステー5A、5Bを取り外し、一対の腕部3A、3Bを閉じることにより、コンパクト化できる。その結果、運搬具1を持ち運ぶときの利便性が向上する。
【0053】
(3)運搬具1は、各腕部3A、3Bがそれぞれ、互いに平行な一対の長尺部材L1、L2から構成され、各載荷部4A、4Bがそれぞれ各腕部3A、3Bの一対の長尺部材L1、L2間に水平に架け渡されているため、建材6を一対の載荷部4A、4Bにバランスよく架け渡して運搬できる。
【0054】
(4)運搬具1は、一対の腕部3A、3Bが、互いに回動自在とされており、各ステー5A、5Bは、一端部5aが一方の腕部3Aに回動自在に取り付けられ、他端部5bが他方の腕部3Bに着脱自在になっているため、不使用時にコンパクト化できるとともに、使用時に簡単に組み立てられる。
【0055】
(5)運搬具1は、腕部3Bに係合凸部7が形成され、ステー5A、5Bに係合凹部8が係合凸部7に係合しうるように形成されている。さらに、係合凸部7は、脚部71と頭部72とからなり、係合凹部8は、貫通孔81と係止溝82とからなる。そのため、運搬具1は、使用時において、係合凹部8を係合凸部7に係合させることにより、簡単に組み立てられ、さらに、係合凸部7の脚部71が係合凹部8の係止溝82に嵌合することにより、係合凸部7と係合凹部8とが強固に係合する。
【0056】
(6)運搬具1は、各載荷部4A、4Bの載荷面41にそれぞれゴム部材42が付設されているため、建材6が運搬中に載荷部4A、4Bから滑り落ちる危険を防止できる。
【0057】
なお、本実施形態では、クレーンのフックFは、例えば、吊り上げ手段を構成する。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。第2の実施形態でも、運搬具を挙げている。
【0059】
図5は、第2の実施形態に係る運搬具のステーを示す正面図である。
図6は、運搬具の使用時の状態を示す側面図である。
【0060】
(構成)
第2の実施形態では、運搬具1は、種々の曲げ剛性をもつ建材6に幅広く対応できるように、一対のステー5A、5Bの係合凹部8の形状が、前述の第1の実施形態と異なっている。具体的には、
図5に示すように、運搬具1の各ステー5A、5Bの係合凹部8は、それぞれ、係合凸部7の頭部72の直径D2以上の直径D3を有する略円形状の貫通孔81と、貫通孔81の周縁部2箇所(ステー5A、5Bの一端部5a側及び他端部5b側)にそれぞれ形成され幅W1が脚部71の直径D1以上でかつ頭部72の直径D2よりも小さい2つの長方形状の係止溝82、83とからなる。ここで、係止溝82は、前述の第1の実施形態と同様に、貫通孔81の周縁部の上側部分からステー5Aの一端部5a側に向かいステー5Aの長辺方向と平行となるように延びている。一方、係止溝83は、貫通孔81の周縁部の上側部分からステー5Aの他端に向かいステー5Aの長辺方向と平行となるように延びている。第2の実施形態では、このように、係合凹部8は、全体として略T字形状をなしている。
【0061】
その他の構成については、前述の第1の実施形態と同様であるため、同一の部材に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
(動作、作用等)
運搬具1の動作、及びその作用等については、前述の第1の実施形態とほぼ同様である。ただし、運搬具1で運搬する建材6の曲げ剛性が小さい場合には、
図6に示すように、運搬中の建材6のたわみ量が大きくなり、運搬具1の係合凸部7と係合凹部8との係合状態が異なる可能性がある。
【0063】
すなわち、建材6の曲げ剛性が所定の数値より大きい場合には、建材6を運搬具1に載せても建材6がほとんどたわまないため(
図2(B)参照)、建材6から運搬具1の一対の載荷部4A、4Bに作用して一対の腕部3A、3Bを開こうとする力の水平成分(以下、外向き水平分力という。)が、運搬具1の一対の腕部3A、3Bが自重や建材6の重量で閉じようとする力の水平成分(以下、内向き水平分力という。)より小さく、結果的に載荷部4A、4Bが互いに近づく向きP1に移動して、一対の腕部3A、3Bが閉じようとする。そのため、運搬具1は、第1の実施形態と同様、係合凸部7の脚部71が係合凹部8の一方(ステー5A、5Bの一端部5a側)の係止溝82に嵌合する。その結果、係合凸部7と係合凹部8とが強固に係合し、建材6の運搬中にわたって、一対の載荷部4A、4Bが水平方向に離間した状態に維持され、ひいては、建材6の安定した運搬作業が継続される。
【0064】
これに対して、建材6の曲げ剛性が所定の数値より小さい場合には、
図6に示すように、建材6を運搬具1に載せたときに、建材6が自重で大きく湾曲するようにたわむ。すると、外向き水平分力が内向き水平分力より大きくなり、結果的に載荷部4A、4Bが互いに遠ざかる向きP2に移動して、一対の腕部3A、3Bが開こうとする。そのため、運搬具1は、係合凸部7の脚部71が係合凹部8の他方(ステー5A、5Bの他端部5b側)の係止溝83に嵌合する。その結果、係合凸部7と係合凹部8とが強固に係合し、建材6の運搬中にわたって、一対の載荷部4A、4Bが水平方向に離間した状態に維持され、ひいては、建材6の安定した運搬作業が継続される。
【0065】
したがって、いずれの場合でも、運搬具1で運搬する建材6の種類(曲げ剛性の大小)を問わず、運搬具1による建材6の運搬作業は、トラックの荷台100から建材置き場まで安定して行われる。
【0066】
(第2の実施形態における効果)
運搬具1の効果については、前述の第1の実施形態と同様である。
【0067】
なお、本実施形態でも、クレーンのフックFは、例えば、吊り上げ手段を構成する。
【0068】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を説明する。第3の実施形態でも、運搬具を挙げている。
【0069】
図7は、第3の実施形態に係る運搬具の側面図であって、(A)は不使用時の状態図、(B)は使用時の状態図である。
【0070】
(構成)
第3の実施形態では、係合凸部7と係合凹部8との係合・解除によって腕部3Bの一対の長尺部材L1、L2と一対のステー5A、5Bとを固定・解除する方式(第1及び第2の実施形態)に代えて、一対のステー5A、5Bを中折れ固定構造にすることにより、一対の腕部3A、3Bを開閉自在とする方式を採用している。
【0071】
ここで、ステー5A、5Bの中折れ固定構造とは、ステー5A、5Bの長さ方向の中央部に設けられた中折れ点5cを中心として両側の直線部材5d、5eが互いに約0°〜180°の角度範囲内で回動自在になっており、しかも、ステー5A、5Bの中折れ点5cの両側の直線部材5d、5eが180°開いてステー5A、5Bが一直線状に伸びた状態で固定できる構造を意味する。
【0072】
すなわち、
図7に示すように、運搬具1は、鉄板製のステー5Aが中折れ固定構造になっており、ステー5Aの一端部5aが腕部3Aの長尺部材L1に回動自在に連結され、ステー5Aの他端部5bが腕部3Bの長尺部材L1に回動自在に連結されている。また、鉄板製のステー5Bが中折れ固定構造になっており、ステー5Bの一端部5aが腕部3Aの長尺部材L2に回動自在に連結され、ステー5Bの他端部5bが腕部3Bの長尺部材L2に回動自在に連結されている。
【0073】
その他の構成については、前述の第1の実施形態と同様であるため、同一の部材に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0074】
(動作、作用等)
次に、運搬具1の動作、及びその作用等の一例について説明する。
【0075】
合板、角材などの建材6を建築現場に搬入するに際して、建材6を積んだトラックの荷台100からクレーン(例えば、当該トラックのクレーン)で建材6を吊り上げて所定の建材置き場まで運搬するときには、作業者は、先ず、トラックの荷台100で、運搬具1を不使用時の状態(
図7(A)参照)から使用時の状態(
図7(B)参照)にする。
【0076】
それには、作業者は、
図7(A)に示すように、一対のステー5A、5Bが中折れ状態であるとともに、一対の腕部3A、3Bが閉じた状態で、
図7(B)に示すように、一対の腕部3A、3Bを所定の角度に開く。すると、一対のステー5A、5Bは、一端部5a及び他端部5bが互いに遠ざかる向きP3に引っ張られる形で、中折れ点5cの両側の直線部材5d、5eが開いていく。そして、中折れ点5cの両側の直線部材5d、5eが180°開いたところで、ステー5A、5Bは、一直線状に伸びた状態で固定される。これにより、一対の載荷部4A、4Bは、一対のステー5A、5Bによって離間させられた状態になる。
【0077】
次に、作業者は、
図7(B)に示すように、運搬具1の前後方向(
図7(B)左右方向)から、取り付け部2と腕部3A、3Bと載荷部4A、4Bとで包囲された空間に建材6を差し込み、一対の載荷部4A、4Bに建材6を架け渡して水平に載せる。すると、建材6は、各載荷部4A、4Bのゴム部材42、つまり、建材6との摩擦係数が大きい部材に接触して2点支持された状態で、2つの載荷面41上にバランスよく安定して保持される。
【0078】
さらに、作業者は、
図7(B)に示すように、取り付け部2の取り付け孔22にクレーンのフックFを引っ掛ける。この状態で、作業者は、クレーンを操作してフックFを適宜上昇・下降させることにより、建材6を運搬具1に載せたままトラックの荷台100から建材置き場まで運搬する。
【0079】
このとき、運搬具1は、当該運搬具1及び建材6がトラックの荷台100から浮き上がることに伴って、一対の腕部3A、3Bが自重及び建材6の重量で閉じようとする。しかし、運搬具1は、ステー5A、5Bが中折れ固定構造になっており、ステー5A、5Bが一直線状に伸びた状態で固定されるので、建材6の運搬中にわたって、一対の載荷部4A、4Bが水平方向に離間した状態に維持され、ひいては、建材6の安定した運搬作業が継続される。
【0080】
また、建材6は運搬具1上にバランスよく安定して保持されているので、たとえ建材6の運搬中に運搬具1が強風や地震で揺れたとしても、建材6を載荷部4A、4Bから滑り落ちることなく安全かつ円滑に運搬できる。
【0081】
こうして、建材6をトラックの荷台100から建材置き場まで運搬した後、作業者は、運搬具1を使用時の状態から不使用時の状態に戻す。それには、作業者は、一対のステー5A、5Bの中折れ点5cを押し上げつつ、一対の腕部3A、3Bを閉じる。すると、一対のステー5A、5Bは、一端部5a及び他端部5bが互いに近づく向きP4に押される形で、中折れ点5cの両側の直線部材5d、5eが閉じていく。そして、中折れ点5cの両側の直線部材5d、5eがほぼ0°に閉じると、一対の腕部3A、3Bが完全に閉じた状態(不使用時の状態)になる。
【0082】
すると、
図2(A)に示すように、運搬具1が折り畳まれてコンパクト化されるので、運搬具1をトラックの荷台100に積んで建築現場から持ち帰るときに重宝する。同じ理由により、建材6の運搬作業に先立ち、運搬具1をトラックの荷台100に積んで建築現場に持ち込むときにも重宝する。
【0083】
ここで、運搬具1による建材6の運搬作業が終了する。
【0084】
(第3の実施形態における効果)
(1)運搬具1は、取り付け部2と、一対の腕部3A、3Bと、一対の載荷部4A、4Bと、一対のステー5A、5Bといった少ない点数の構造からなり、簡単な構造であり、クレーンのフックFで建材6を容易に吊り上げて運搬できる。
【0085】
(2)運搬具1は、開閉自在の一対の腕部3A、3Bが中折れ固定構造の一対のステー5A、5Bで連結されているため、一対のステー5A、5Bを中折れ状態にして一対の腕部3A、3Bを閉じることにより、コンパクト化できる。その結果、運搬具1を持ち運ぶときの利便性が向上する。
【0086】
(3)運搬具1は、各腕部3A、3Bがそれぞれ、互いに平行な一対の長尺部材L1、L2から構成され、各載荷部4A、4Bがそれぞれ各腕部3A、3Bの一対の長尺部材L1、L2間に水平に架け渡されているため、建材6を一対の載荷部4A、4Bにバランスよく架け渡して運搬できる。
【0087】
(4)運搬具1は、一対の腕部3A、3Bが、互いに回動自在とされており、各ステー5A、5Bは、それぞれ中折れ固定構造になっているため、不使用時にコンパクト化できるとともに、使用時に簡単に組み立てられる。
【0088】
(5)運搬具1は、各載荷部4A、4Bの載荷面41にそれぞれゴム部材42が付設されているため、建材6が運搬中に載荷部4A、4Bから滑り落ちる危険を防止できる。
【0089】
なお、本実施形態でも、クレーンのフックFは、例えば、吊り上げ手段を構成する。
【0090】
(本実施形態の変形例等)
前記の実施形態の他の例として、第1及び第2の実施形態において、係合凸部7と係合凹部8との形成部位を入れ替えた運搬具(図示せず)を挙げることもできる。すなわち、この運搬具では、腕部3Bの長尺部材L1、L2にそれぞれ係合凹部8が形成され、ステー5A、5Bの他端部5bにそれぞれ係合凸部7が形成されている。この場合も、第1及び第2の実施形態と同様、係合凹部8を係合凸部7に係合させることにより、一対の載荷部4A、4Bを一対のステー5A、5Bによって離間させることができ、使用時に運搬具を簡単に組み立てられるという効果を奏する。
【0091】
また、前記の実施形態の他の例として、第1及び第2の実施形態において、係合凸部7及び係合凹部8の構成部品は種々の形状に変更可能である。すなわち、係合凸部7の脚部71の形状は、円柱形状に限定されず他の柱形状、例えば、多角柱形状としてもよい。係合凸部7の頭部72の形状は、円柱形状に限定されず他の形状、例えば、半球形状としてもよい。係合凹部8の貫通孔81の形状は、円形状に限定されず他の形状、例えば、楕円形状としてもよい。係合凹部8の係止溝82、83の形状は、長方形状に限定されず他の形状、例えば、U字形状としてもよい。
【0092】
また、前記の実施形態の他の例として、第1及び第2の実施形態において、一対の腕部3A、3Bを長手方向に伸縮自在としてもよい。それには、例えば、腕部3A、3Bを構成する長尺部材L1、L2として、直径の異なる2本の鉄パイプを互いに軸心方向に摺動して挿通自在とし、各鉄パイプの周面にそれぞれ、鉄パイプの軸心方向に沿って複数個の貫通孔を鉄パイプの軸心方向に直角な方向に形成し、2本の鉄パイプを串刺しするように、貫通孔に止め付けピンを通して2本の鉄パイプを互いに固定する構造を有し、止め付けピンを通す貫通孔を変えることによって全長が変わるものを用いる方法が考えられる。
【0093】
この場合、運搬具1は、一対の腕部3A、3Bを伸ばすことにより、一対の載荷部4A、4B間の距離D4を長くできる。そのため、
図4(A)〜(C)に示すように、一対の載荷部4A、4B上に建材6を載置するときに、建材6の長さD5が長くても、一対の載荷部4A、4B上に建材6を支障なく載荷できる。
【0094】
さらに、運搬具1は、腕部3A、3Bを伸縮させることにより、建材6のサイズ(長さ)に応じて、建材6を支持する一対の載荷部4A、4B間の距離D4を適宜調整できる。そのため、運搬具1で建材6を運搬する際に、建材6の長さD5が長くても短くても、一対の載荷部4A、4B上に建材6を安定して載荷できるので、運搬具1の汎用性が高くなる。
【0095】
また、前記の実施形態の他の例として、第1及び第2の実施形態において、第3の実施形態で開示した手法(
図7参照)によって運搬具1に建材6を載荷してもよい。
【0096】
また、前記の実施形態の他の例として、第3の実施形態において、一対の腕部3A、3Bを長手方向に伸縮自在としてもよい。腕部3A、3Bを長手方向に伸縮自在とする一法としては、前述の方法が考えられる。
【0097】
この場合、運搬具1は、腕部3A、3Bを伸縮させることにより、建材6のサイズ(長さ)に応じて、建材6を支持する一対の載荷部4A、4B間の距離D4を適宜調整できる。そのため、運搬具1で建材6を運搬する際に、建材6の長さD5が長くても短くても、一対の載荷部4A、4B上に建材6を安定して載荷できるので、運搬具1の汎用性が高くなる。
【0098】
また、前記の実施形態の他の例として、取り付け部2の材料は、鉄板に限定されず他の材料、例えば、鉄板と鉄丸棒とを溶接した複合材料としてもよい。
【0099】
また、前記の実施形態の他の例として、長尺部材L1、L2、L3、L4の材料は、鉄パイプに限定されず他の材料、例えば、鉄丸棒としてもよい。
【0100】
また、前記の実施形態の他の例として、一対のステー5A、5Bの材料は、鉄板に限定されず他の材料、例えば、鋼板としてもよい。
【0101】
また、前記の実施形態の他の例として、運搬対象は、建材6に限定されず他の運搬対象、例えば、土木資材、撮影機材、楽器としてもよい。
【0102】
また、前記の実施形態の他の例として、ゴム部材42に代えてシリコーン樹脂などの摩擦係数が大きい部材を載荷面41に付設することも可能である。或いは、載荷面41に凹凸を付与することにより、建材6との摩擦係数を高めてもよい。
【0103】
さらに、前記の各変形例を適宜組み合わせてもよい。例えば、取り付け部2の材料として、鉄板と鉄丸棒とを溶接した複合材料を採用するとともに、運搬対象を建材6以外のものとしても構わない。
【0104】
また、本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【解決手段】運搬具1は、クレーンのフックに取り付けられる取り付け部2と、取り付け部2に取り付けられ互いに回動自在の一対の腕部3A、3Bと、を有している。また、一対の腕部3A、3Bそれぞれに互いに平行とされて支持された一対の載荷部4A、4Bと、平行とされた一対の載荷部4A、4Bを水平方向に離間させた状態に維持する一対のステー5A、5Bと、を有している。運搬具1は、建材6の運搬時には、一対の載荷部4A、4B上に建材6が架け渡されて水平に載置され、クレーンによって建材6とともに吊り上げられる。