(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、電極3は一方向から管本体1と接続されるため、電極3から管本体1に向かって流れる電流は、それらを結ぶ最短ルートを集中的に通るので、管本体1を流れる電流は、電極3に近い側の管の周上の一部に局在化し易くなる。このため、管本体1の通電加熱も局在化し、ガラス導管の周上の温度分布が生じ、管内を流れる溶融ガラスの加熱にも影響を及ぼしてしまう。すなわち、溶融ガラスに温度差が生じ、成形工程でシートガラスを成形したとき、シートガラスの厚さの変動や、部分的な失透が発生するという重大な問題を引き起こす。
【0008】
以上のことから、管本体に向かって流れる電流を分散させて電力集中を緩和することが望まれる。例えば特許文献3には、上記フランジを、管本体と接続された内環部と、該内環部を取り囲み、電極と接続された外環部とで構成し、内環部を外環部よりも電気抵抗の高い材料で構成するとともに、内環部の中心は、管本体の中心から電極側に寄せられている構成としたガラス導管が開示されている。これによって、電極からの電流が外環部に沿って電極と反対側に回り込むようになるので、電力集中を緩和できるとしている。
【0009】
しかしながら、この特許文献3に開示されている構成では、上記フランジを材料の異なる内環部と外環部の2つの部材が必要となり、しかも内環部の中心が管本体の中心から離間する位置の調整が難しく、そのため高コストであるという問題がある。
【0010】
近年、FPDの分野では、高精細化の進展に伴って、FPD用ガラス基板に対する品質要求は益々厳しくなってきており、上記ガラス導管を通電加熱する際の電流分布の改善は重要な課題である。
【0011】
そこで、本発明の目的は、第1に、低コストで電流分布を改善することができ、通電加熱を効率よく行うことができるガラス導管を提供することであり、第2に、このガラス導管を用いて、高品質のガラス基板を製造することが可能なガラス基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、従来の課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成の発明を完成するに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明は、溶融ガラスを加熱しながら搬送するガラス導管であって、白金又は白金合金からなる管本体と、前記管本体の長手方向の異なる位置に設けられた一対のフランジと、前記フランジからそれぞれ引き出された電極と、前記フランジ及び前記電極のそれぞれの外周に沿って設けられ、前記フランジ及び前記電極を冷却する冷却管と、を備え、前記電極から前記冷却管を経由して前記管本体に流れる電流が、前記管本体の中心より下方から前記管本体に向かって流れるように、前記管本体の中心より下方における前記冷却管から前記管本体までの距離を、前記管本体の中心より上方における前記冷却管から前記管本体までの距離よりも短くしたことを特徴とするガラス導管である。
【0014】
本発明の好ましい態様では、前記管本体の中心より上方における前記フランジの外周は、円形状の一部を成している部分を有し、前記管本体の中心より下方における前記フランジの外周は、楕円形状の一部を成している。
【0015】
また、本発明では、前記冷却管は、前記フランジよりも導電性の高い材料から構成されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、ガラス基板の製造方法についても提供する。
すなわち、本発明は、ガラス原料を溶解した溶融ガラスを成形炉に搬送してガラス基板を製造するガラス基板の製造方法であって、ガラス原料を溶解することで溶融ガラスを得る溶解工程と、前記溶融ガラスを昇温することにより、前記溶融ガラス中に含まれるガス成分の泡を脱泡する清澄工程と、前記清澄工程で脱泡された前記溶融ガラスを撹拌することにより、ガラス成分を均質化する撹拌工程と、均質化された前記溶融ガラスをシート状ガラスに成形する成形工程と、を含み、前記溶解工程、前記清澄工程、前記撹拌工程、及び前記成形工程の少なくともいずれかの間の前記溶融ガラスの搬送のために、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガラス導管を用いることを特徴とするガラス基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記構成により、低コストで電流分布を改善することができ、その結果、通電加熱を効率よく行うことができるガラス導管を提供することができる。
また、このガラス導管を用いることで、高品質のガラス基板を製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(ガラス基板の製造方法の全体概要)
まず、本発明に係わるガラス基板の製造方法の全体概要について説明する。オーバーフローダウンドロー法が採用されるガラス基板の製造工程の概要の一例は、例えば
図1に示すことができる。
図1は、本発明に係わるガラス基板の製造方法のフローの一例を示す図である。
【0020】
このガラス基板の製造工程では、溶融工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、撹拌(均質化)工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、冷却(徐冷)工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を包含し、その成形工程(ST5)および冷却(徐冷)工程(ST6)においてダウンドロー法が採用され、その成形工程では、たとえば、
図3に示すように、楔形の成形体210を含む装置により成形される。
【0021】
図2は、上記溶融工程(ST1)乃至切断工程(ST7)を行う装置の一例を模式的に示す図である。当該装置は、
図2に示すように、溶解装置100と、成形装置200と、切断装置300とを主に有する。溶解装置100は、溶解槽101と、清澄槽102と、撹拌槽103と、第1配管104と、第2配管105と、第3配管106とを有する。
【0022】
上記溶融工程(ST1)では、溶解槽101内に供給されたガラス原料を火焔および/又は電極を用いた通電加熱により溶解することで溶融ガラスMGを得る。溶融ガラスMGは、溶解槽101から第1配管104を通って清澄槽102に供給される。
【0023】
上記清澄工程(ST2)では、清澄槽102に供給された溶融ガラスMGが昇温されることにより、溶融ガラスMG中に含まれるO
2、CO
2あるいはSO
2等のガス成分を含んだ泡が、SnO
2などの清澄剤の還元反応により生じたO
2を吸収して成長し、溶融ガラスMGの液面に浮上して清澄槽102上方の空気中、窒素ガス等を含有する雰囲気中に放出されて除去される。次いで、溶融ガラスMGの温度の低下による泡中のガス成分の内圧が低下することと、還元された清澄剤(例えばSnO)が溶融ガラスMGの温度の低下によって酸化反応をすることにより、溶融ガラスMGに残存する泡中のO
2等のガス成分を再吸収して、泡を消滅させる。
上記清澄工程で脱泡された溶融ガラスMGは、清澄槽102から第2配管105を通って撹拌槽103に供給される。
【0024】
上記撹拌(均質化)工程(ST3)では、上記清澄工程で脱泡された溶融ガラスMGが供給されて、撹拌槽103内の溶融ガラスMGを、撹拌手段(例えば図示するスターラ103a)を用いて撹拌することにより、ガラス成分の均質化が行われる。
【0025】
上記供給工程(ST4)では、均質化された溶融ガラスMGが、撹拌槽103から第3配管106を通って成形装置200に供給される。その成形装置200の一例は、
図3に示されている。
図3は成形装置の概略の側面図である。
【0026】
その
図3において、成形装置200は、成形炉240と徐冷炉250を含む。その成形装置200では、上記成形工程(ST5)及び冷却(徐冷)工程(ST6)が順次行われる。
【0027】
上記成形工程(ST5)では、溶融ガラスMGをシートガラスSGに成形し、シートガラスSGの流れを作る。本実施形態では、成形体210を用いたオーバーフローダウンドロー法を用いている。この場合、シートガラスSGの流れ方向は、鉛直下方となる。
【0028】
さらに詳しく説明すると、上記成形体210は、
図2及び
図3に示すように、第3配管106を通して溶解装置100から流れてくる溶融ガラスMGを、シートガラスSGに成形する。これにより、成形装置200内で、鉛直下方のシートガラスSGの流れが作られる。成形体210は、耐火レンガ等によって構成された細長い構造体であり、
図3に示すように断面が楔形状を成している。成形体210の上部には、溶融ガラスMGを導く流路となる供給溝212が設けられている。供給溝212は、成形体210に設けられた供給口において第3配管106と接続され、第3配管106を通して流れてくる溶融ガラスMGは、供給溝212を伝って流れる。供給溝212の深さは、溶融ガラスMGの流れの下流ほど浅くなっており、供給溝212から溶融ガラスMGが鉛直下方に向かって溢れ出るようになっている。
【0029】
供給溝212から溢れ出た溶融ガラスMGは、成形体210の両側の側壁を伝わって流下する。側壁を流れた溶融ガラスMGは、成形体210の下方端部213(
図3に示す)で合流し、1つのシートガラスSGが成形される。シートガラスSGは、
図3に示すシートガラスSGの流下方向である鉛直下方に流れる。なお、成形体210の下方端部213の直下におけるシートガラスSGの温度は、例えば10
4.3〜10
6poiseの粘度に相当する温度(例えば1000〜1250℃)である。また、1150℃〜1250℃であってもよい。
【0030】
成形体210の下方端部213の下方近傍には、雰囲気仕切り部材220が設けられている。雰囲気仕切り部材220は、シートガラスSGを厚さ方向の両側から挟むように設けられた一対の板状の断熱部材である。この断熱部材からなる雰囲気仕切り部材220は、成形体210が収容された上部空間である成形炉240と、下方空間とを仕切るために設けられる。
【0031】
雰囲気仕切り部材220の下方には冷却ローラ(冷却ローラとしての機能を備える搬送ローラ)230が設けられている。冷却ローラ230は、
図3に示すように、シートガラスSGを厚さ方向の両側から挟むように、シートガラスSGの厚さ方向の両側に設けられている。
【0032】
また、上記冷却ローラ230の下方の領域には、シートガラスSGの流れ方向に沿って、さらに別の搬送ローラ250a〜250dを含む複数の搬送ローラと、図示しない温度調整装置が設けられている。個々の搬送ローラはシートガラスSGの厚さ方向の両側のそれぞれに設けられており、シートガラスSGの両端を対となって夫々挟持している。つまり、ローラ搬送手段対を構成している。
【0033】
以上説明した上記冷却(徐冷)工程(ST6)では、上記冷却ローラ230及び搬送ローラ250a〜250dによって挟持搬送される過程において、成形されて流れるシートガラスSGが所望の厚さになり、冷却に起因する反り、内部歪が生じないように冷却(徐冷)される。
【0034】
上記切断工程(ST7)では、切断装置300において、成形装置200から供給されたシートガラスSGが所定の長さに切断されることで、板状のガラス板を得る。
板状に切断されたガラス板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス基板が作製される。この後、ガラス基板の端面の研削、研磨、およびガラス基板の洗浄が行われ、さらに、泡や脈理等の欠点の有無が検査された後、検査合格品のガラス基板が最終製品として梱包される。
【0035】
(ガラス導管)
次に、本発明に係るガラス導管の構成上の特徴について説明する。
本発明に係るガラス導管は、上記構成の発明にあるとおり、溶融ガラスを加熱しながら搬送するガラス導管であって、白金又は白金合金からなる管本体と、前記管本体の長手方向の異なる位置に設けられた一対のフランジと、前記フランジからそれぞれ引き出された電極と、前記フランジ及び前記電極のそれぞれの外周に沿って設けられ、前記フランジ及び前記電極を冷却する冷却管と、を備え、前記電極から前記冷却管を経由して前記管本体に流れる電流が、前記管本体の中心より下方(前記電極とは反対側)から前記管本体に向かって流れるように、前記管本体の中心より下方(前記電極とは反対側)における前記冷却管から前記管本体までの距離を、前記管本体の中心より上方(前記電極側)における前記冷却管から前記管本体までの距離よりも短くしたことを特徴とするものである。
以下、このような構成上の特徴を有する本発明に係るガラス導管の一実施の形態について説明する。
【0036】
図4は、本発明のガラス導管の一実施の形態を説明するためのガラス導管近傍の構成を示す斜視図である。
図5は、上記ガラス導管の軸方向から見た図である。また、
図6は、本発明における電極から管本体への電流の流れを説明するための図である。
【0037】
図4に示すように、本実施形態のガラス導管においては、上記溶融ガラスMGを上流側から下流側へと流しながら搬送するための、白金又は白金合金からなる管本体10と、当該管本体10に電流を流して通電加熱するため、当該管本体10の長手方向の異なる位置に設けられた一対のフランジ20a,20bと、当該一対のフランジ20a,20bからそれぞれ引き出された電極21a,21bと、上記フランジ20a,20b及び上記電極21a,21bのそれぞれの外周に沿って設けられ、これらフランジ20a,20b及び電極21a,21bを冷却するための冷却管30a,30bと、を備えている。
【0038】
ここで、上記ガラス導管は、例えば前述の
図2に示されるような、各工程(処理槽)間を連結し、上記溶融ガラスMGを上流側から下流側へと流しながら搬送するための第1配管104、第2配管105、第3配管106として使用されるものである。したがって、本実施形態の構成は、これらの第1配管104、第2配管105、第3配管106の少なくとも1つに適用される。
【0039】
上記管本体10は、管内を非常に高温の溶融ガラスMGが流れるため、例えば白金族金属で構成された円筒形状の部材である。白金族金属は、単一の白金族元素(白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir))からなる金属や、白金族元素からなる金属の合金などである。これら白金族金属は、高価であるが、融点が高く、溶融ガラスMGに対する耐食性に優れている。本実施形態では、上記管本体10は、例えば白金(Pt)または白金合金で成形され、例えば0.5mm〜1.5mm程度の厚みを有している。また、上記管本体10の内径は、例えば100mm〜500mm程度である。
【0040】
また、上記一対のフランジ20a,20bは、導電性を有する金属材料で構成され、上記管本体10に電流を流して通電加熱するために用いられる。そして、上記管本体10が加熱されることにより、その内部を流れる溶融ガラスMGの温度が調整される。上記一対のフランジ20a,20bはそれぞれ上記管本体10の外周面長手方向の異なる位置に取り付けられており、各フランジ20a,20bは、環状の導電体からなる図示のようなフランジ形状に形成されている。
【0041】
また、各フランジ20a,20bは、各々から引き出された電極21a,21bを有しており、当該電極21a,21bは図示していない電源に接続されている。かかる構成により、電極21a,21bを介して電源から電力が供給され、各フランジ20a,20bにそれぞれ電流が流れ、上記管本体10は通電加熱される。したがって、上記一対のフランジ20a,20bを流れる電流を制御することで、管本体10の内部を流れる溶融ガラスMGの温度を調整することができる。
【0042】
なお、管本体10に取り付けられる上記フランジ20a(20b)の数や位置は、管本体10の材質、内径、長さや、設置位置等に応じて適宜決定されればよいので、
図4の実施形態に限定される必要はない。また、上記管本体10は、通常、水平方向、もしくは若干傾斜を持たせた略水平方向に設置されるため、本実施形態のように、上記一対のフランジ20a,20bから引き出される各電極21a,21bは上記管本体10の上側に配置されることが好適である。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
また、上記冷却管30a,30bは、上記フランジ20a,20b及び上記電極21a,21bのそれぞれの外周に沿って設けられ、これらフランジ20a,20b及び電極21a,21bを冷却するために用いられる。各冷却管30a,30bには図示していない冷媒供給装置から冷媒(例えば、水、空気、油など)が供給されており、冷媒が各冷却管30a,30b内を流れることにより、上記フランジ20a,20b及び電極21a,21bを冷却し、これらの部材の高温劣化を抑制する。
【0044】
また、本実施形態のガラス導管における特徴的な構成は、
図5および
図6に示されるように、上記管本体10の中心Oより下方(つまり、中心Oを通る水平の破線Lより矢印D方向で、上記電極21aとは反対側である)における上記冷却管30aから管本体10までの距離を、上記管本体10の中心Oより上方(つまり、中心Oを通る水平の破線Lより矢印U方向で、上記電極21a側である)における上記冷却管30aから管本体10までの距離よりも短くなるようにしたことである。
【0045】
本実施形態の好ましい態様では、上記管本体10の中心Oより上方(つまり上記電極21a側)における上記フランジ20aの外周20aUは、円形状の一部を成している部分を有し、上記管本体10の中心Oより下方(つまり上記電極21aとは反対側)における上記フランジ20aの外周20aDは、楕円形状の一部を成している。これによって、上記管本体10の中心Oより下方における上記冷却管30aから管本体10の周面までの距離(例えば図示のR3)は、上記管本体10の中心Oより上方における上記冷却管30aから管本体10の周面までの距離(例えば図示のR1,R2)よりも短くなる。要するに、上記のとおり、上記管本体10の中心Oより下方における上記冷却管30aから管本体10までの距離は、上記管本体10の中心Oより上方における上記冷却管30aから管本体10までの距離よりも短くなる。
【0046】
なお、上記管本体10の中心Oより下方における上記冷却管30aから管本体10までの距離を、上記管本体10の中心Oより上方における上記冷却管30aから管本体10までの距離よりも、どの程度短くなるようにするのかは、上記冷却管30aおよび上記フランジ20aの材質、大きさ、電流密度の大きさなどに応じて決定することができる。冷却管30aを管本体10に近づけ過ぎると、フランジ20aの伝導伝熱による管本体10の温度低下が大きくなり、温度分布はかえって不均一になることがある。そのため、電流の偏り改善とフランジ20aの伝導伝熱量が適切なバランスとなり、ガラス温度の不均一が最小になるように冷却管30aと管本体10との距離を決定するのが好ましい。また、伝熱と電流密度を同時に考慮して設計するのは容易ではなく、シミュレーションを用いるのが好ましい。シミュレーションにおいては、熱流体解析のソフトウェアを用いて、サブルーチンとして電気伝導の解析を組み込むことにより、ガラス流れ、伝熱、電気伝導の3つを連成して解析するのが好ましい。
【0047】
本実施形態のガラス導管においては、上記構成によって、上記電極21aから上記冷却管30aや上記フランジ20aを介して上記管本体10の中心Oより上方から管本体10に向かって流れる電流(例えば
図6に図示のe
4,e
5などの流れ)だけではなく、上記電極21aから上記冷却管30a及び上記フランジ20aを介して上記管本体10の中心Oより下方から(言い換えれば、上記電極21aとは反対側にも回り込むように)管本体10に向かって流れる電流(例えば
図6に図示のe
1→e
2→e
3の流れ)が流れるようになる。
【0048】
この結果、上記電極21aから上記フランジ20aを介して上記管本体10に流れる電流分布を好ましく改善することができ、管本体10の通電加熱を効率よく行うことができる。また、本実施形態では、上記フランジ20aの主に形状の改善によって上述の電流分布を改善することができるので、低コスト(安価な構成)で本発明の効果を得ることが可能である。
【0049】
また、本実施形態では、上述の効果をよりいっそう発揮させる観点から、上記電極21aから上記冷却管30aを介して上記管本体10の中心Oより下方から管本体10に向かう電流が積極的に流れるようにするため、上記冷却管30aは、上記フランジ20aよりも耐熱温度が低く、導電性の高い材料から構成されていることが好ましい。
【0050】
なお、上述の
図5および
図6は、
図4に示す上記ガラス導管の軸方向から見た図であるため、
図5および
図6には、フランジ20b、電極21b、冷却管30bは現れていない。上記実施形態では、主に、一方のフランジ20a、電極21a、冷却管30aの構成および作用効果について説明したが、他方のフランジ20b、電極21b、冷却管30bの構成および作用効果についても同様である。
【0051】
図7は、本発明のガラス導管の他の実施の形態を説明するためのガラス導管の軸方向から見た図である。
図7に示すように、本実施形態のガラス導管においては、管本体10と、当該管本体10に電流を流して通電加熱するためのフランジ40aと、当該フランジ40aから引き出された電極(図示していない)と、これらフランジ40a及び電極を冷却するための冷却管50aとを備えている。なお、
図7には現れていないが、上記フランジ40a等と対のフランジ等が管本体10の長手方向の異なる位置に設けられている。
【0052】
そして、本実施形態のガラス導管では、上記管本体10の中心Oを通る水平の破線Lより下方におけるフランジ40aの外周40aDは、楕円形状の一部を成している。これによって、上記管本体10の中心Oより下方における冷却管50aから管本体10までの距離は、上記管本体10の中心Oより上方における上記冷却管50aから管本体10までの距離よりも短くなる。
【0053】
本実施形態のガラス導管においては、上記構成によって、上記電極から上記冷却管50aを介して上記管本体10の中心Oより下方から(要するに、上記電極が接続されている側とは反対側にも回り込むように)管本体10に向かって流れる電流(例えば
図7に図示のe
1→e
2→e
3の流れ)が流れるようになる。
【0054】
この結果、電極から上記フランジ50aを介して上記管本体10に流れる電流分布を好ましく改善することができ、管本体10の通電加熱を効率よく行うことができる。また、本実施形態についても、上記フランジ40aの主に形状の改善によって上述の電流分布を改善することができるので、低コスト(安価な構成)で本発明の効果を得ることが可能である。
【0055】
また、本実施形態においても、上述の効果をよりいっそう発揮させる観点から、電極から上記冷却管50aを介して上記管本体10の中心Oより下方から管本体10に向かう電流が積極的に流れるようにするため、上記冷却管50aは、上記フランジ40aよりも導電性の高い材料から構成されていることが好ましい。
【0056】
また、本実施形態では、
図7に示すように、上記管本体10の下端は、上記フランジ40aが設けられた位置において上記冷却管50aに当接しているが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、管本体10と冷却管50aとの間をフランジによって離間させるようにしてもよい。管本体10と冷却管50aとが接していると冷却管50aにより管本体10が冷却されすぎるおそれがある。管本体10の一部、より具体的には清澄槽の電極近傍の位置において、局所的に温度が低下する。管本体10は、白金または白金合金(白金族金属)から構成されているため、気相空間(酸素を含む雰囲気)に接する部分が揮発する。揮発した白金または白金合金は、清澄槽の電極近傍の局所的に温度が低下した位置で凝固し、付着する。凝固した揮発物は脱泡工程中の熔融ガラス中に落下して混入する、このため、管本体10と冷却管50aとの間をフランジによって離間させることで、管本体10の一部が局所的に冷却されるのを抑制することにより、凝固した揮発物が熔融ガラス中に落下して混入するのを防ぎ、ガラス基板に白金異物として混入することを防ぐことができる。
【0057】
また、本発明は、ガラス基板の製造方法についても提供する。
すなわち、本発明は、ガラス原料を溶解した溶融ガラスを成形炉に搬送してガラス基板を製造するガラス基板の製造方法であって、ガラス原料を溶解することで溶融ガラスを得る溶解工程と、前記溶融ガラスを昇温することにより、前記溶融ガラス中に含まれるガス成分の泡を脱泡する清澄工程と、前記清澄工程で脱泡された前記溶融ガラスを撹拌することにより、ガラス成分を均質化する撹拌工程と、均質化された前記溶融ガラスをシート状ガラスに成形する成形工程と、を含み、前記溶解工程、前記清澄工程、前記撹拌工程、及び前記成形工程の少なくともいずれかの間の前記溶融ガラスの搬送のために、上述のガラス導管を用いることを特徴とするガラス基板の製造方法である。
【0058】
上記の各実施形態により説明したように、低コストで電流分布を改善することができ、その結果、通電加熱を効率よく行うことができるガラス導管を用いることで、品質の安定した高品質のガラス基板を製造することが可能である。
【0059】
上述の本発明の実施形態において製造されるガラス基板は、例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板、有機ELディスプレイ用ガラス基板等に好適に用いられる。また、このガラス基板は、その他、携帯端末機器などのディスプレイや筐体用のカバーガラス、タッチパネル板、太陽電池のガラス基板やカバーガラスとしても用いることができる。特に、液晶ディスプレイ用ガラス基板に好適である。その中でも特に熱収縮率の小さいことが要求される、LTPS(低温ポリシリコン)・TFTや、酸化物半導体・TFTなど、パネル製造工程において高温処理を必要とする製品に好適に用いることができる。
【0060】
また、本発明において製造されるガラス基板の幅方向及び縦方向の長さは、例えば500mm〜3500mmであり、1000mm〜3500mmであることが好ましく、2000mm〜3500mmであることがより好ましい。
また、本発明において製造されるガラス基板の厚さは、例えば0.01mm〜1.0mmである。好ましくは、0.1mm〜0.7mmである。
【0061】
(ガラス基板の組成)
上述の用途のガラス基板のガラス組成としては、アルミノシリケートガラス、ボロアルミノシリケートガラスであり、さらに無アルカリガラス、微アルカリガラスであり、例えば以下のものを好ましく挙げることができる。なお、以下に示す組成の含有率表示は、モル%である。
SiO
2 55〜75%、Al
2O
3 5〜20%、B
2O
3 0〜15%、RO 5〜20%(ただし、RはMg、Ca、Sr及びBaのうち、ガラス基板に含まれる全元素)、R'
2O 0〜0.4% (ただし、R'はLi、Na及びKのうち、ガラス基板に含まれる全元素)。
本発明で用いる溶融ガラスの歪点は、650℃以上であってもよく、680℃以上であることがより好ましい。
また、例えば、ガラス基板の液相粘度は、10
4.3poise〜10
6.7poiseである。
もちろん、本発明においては、ガラス基板のガラス組成を限定するものではない。
【0062】
以上詳細に説明したとおり、本発明によれば、低コストで電流分布を改善することができ、そのため通電加熱を効率よく行うことができるガラス導管を提供することができる。また、このガラス導管を用いることで、品質の安定した高品質のガラス基板を製造することが可能である。
【0063】
以上、本発明を実施の形態により説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。