特許第6624881号(P6624881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624881
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】画像形成装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/407 20060101AFI20191216BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   H04N1/407
   G06T5/00 740
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-205516(P2015-205516)
(22)【出願日】2015年10月19日
(65)【公開番号】特開2017-79365(P2017-79365A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄介
(72)【発明者】
【氏名】石川 尚
(72)【発明者】
【氏名】内舘 光
【審査官】 野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−174400(JP,A)
【文献】 特開2009−241562(JP,A)
【文献】 特開2003−207957(JP,A)
【文献】 特開2008−089701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/40−1/409
G06T 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガンマ補正情報を用いて画像データの濃度階調を補正し、補正された画像データに基づいて画像を形成する画像形成装置であって、
パッチ画像を用いて前記ガンマ補正情報を更新する更新手段と、
前記画像形成装置の筐体内の環境変動を検出する環境変動検出手段とを有し、
前記更新手段は、第1の更新として出力安定性の高いパッチ画像を用いて前記ガンマ補正情報を更新し、第2の更新として感度の高いパッチ画像を用いて前記第1の更新により更新された前記ガンマ補正情報をさらに更新し、前記出力安定性の高いパッチ画像は、前記環境変動検出手段により検出された環境変動に応じて決められ、前記画像形成装置の筐体内の環境変動に対する出力安定性の高いパッチ画像であり、前記感度の高いパッチ画像は、前記画像形成装置の筐体内の環境変動に対する感度の高いパッチ画像であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記出力安定性の高いパッチ画像は、複数のドットが水平及び垂直方向に密に連結したパッチ画像であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記感度の高いパッチ画像は、水平及び垂直方向にドットが疎なパッチ画像であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記出力安定性の高いパッチ画像は、パッチ画像毎に予め設定されている出力安定性情報に基づいて決められること特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記感度の高いパッチ画像は、パッチ画像毎に予め設定されている感度情報に基づいて決められること特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
所定のパターンで構成されたパッチ画像群の全てのパッチ画像を形成する形成手段と、
前記形成手段により形成されたパッチ画像の濃度情報が所定範囲内であるか否かを判定する判定手段と
をさらに有し、
前記更新手段は、前記判定手段により判定された濃度情報が前記所定範囲内であるパッチ画像を、前記出力安定性の高いパッチ画像として前記第1の更新に用い、前記判定手段により判定された濃度情報が前記所定範囲内でないパッチ画像を、前記感度の高いパッチ画像として前記第2の更新に用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
ガンマ補正情報を用いて画像データの濃度階調を補正し、補正された画像データに基づいて画像を形成する画像形成装置が実行する、ガンマ補正情報の更新方法であって、
前記画像形成装置の筐体内の環境変動を検出する環境変動検出工程と、
出力安定性の高いパッチ画像を用いて前記ガンマ補正情報を更新する第1の更新工程と、
感度の高いパッチ画像を用いて前記第1の更新工程により更新された前記ガンマ補正情
報をさらに更新する第2の更新工程と
を含み、前記出力安定性の高いパッチ画像は、前記環境変動検出工程で検出された環境変動に応じて決められ、前記画像形成装置の筐体内の環境変動に
対する出力安定性の高いパッチ画像であり、前記感度の高いパッチ画像は、前記画像形成装置の筐体内の環境変動に対する感度の高いパッチ画像であることを特徴とするガンマ補正情報の更新方法。
【請求項8】
コンピュータに、請求項に記載の更新方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置において入力画像データに対して濃度補正を行うために用いるガンマ補正情報の更新に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータなど画像処理装置で処理した画像データを印刷することが広く行われている。一般に画像処理装置では、入力画像データに対してガンマ特性(入出力特性)に応じた濃度補正を行い、濃度補正後の画像データを用いて画像を紙など記録媒体に形成する。その際の濃度補正は、予め設定されたガンマ補正情報に基づいて行われる。ガンマ補正情報は予め設定されているが、ガンマ特性は感光体ドラムや転写ベルトなどの経年劣化や部品交換、温湿度などの環境変動によって変化する。ガンマ特性が変化した場合は、その変化に応じてガンマ補正情報を更新しなければ、期待する濃度を再現できず、画質が劣化する可能性がある。
【0003】
ガンマ補正情報を更新する方法としては、従来、複数の階調値に対応する複数のパッチ画像を転写ベルトや紙などに出力し、出力したパッチ画像の濃度をセンサ等で検出し、濃度検出結果に基づいてガンマ補正情報を更新する。
【0004】
しかしながら、通常状態から大きな環境変動があった場合に、パッチ画像は安定して出力できず、出力濃度が環境変動量から想定される濃度より大きく異なることが多い。例えば、複数の階調のパッチ画像は同一濃度が検出されることがある。このような濃度検出結果でガンマ補正情報を更新してしまうと、ガンマ特性が急激に変化する階調飛びを発生させるガンマ補正情報となる場合がある。
【0005】
この課題を解決するために、特許文献1では、濃度が低い領域の複数パッチ画像及び濃度が高い領域の複数パッチ画像で同一濃度が検出された場合、各領域において最も高い濃度もしくは最も低い濃度の何れかを選択する。それにより、階調飛びを減らすようにガンマ補正情報を更新する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−85564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、濃度が低い領域・高い領域において複数のパッチ画像を出力しているが、同一濃度のパッチが存在した場合、ガンマ補正曲線を設定するために有効な濃度情報が減少している。つまり、ガンマ補正曲線を設定するために、無駄なパッチ画像を出力したことになり、トナーを無駄に消費するという問題があった。一方、無駄なパッチ画像の出力を回避するためにパッチ画像数を減らした場合には、濃度が低い領域・高い領域において高精度な濃度補正ができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、ガンマ補正情報を用いて画像データの濃度階調を補正し、補正された画像データに基づいて画像を形成する画像形成装置であって、パッチ画像を用いて前記ガンマ補正情報を更新する更新手段と、前記画像形成装置の筐体内の環境変動を検出する環境変動検出手段とを有し、前記更新手段は、第1の更新として出力安定性の高いパッチ画像を用いて前記ガンマ補正情報を更新し、第2の更新として感度の高いパッチ画像を用いて前記第1の更新により更新された前記ガンマ補正情報をさらに更新し、前記出力安定性の高いパッチ画像は、前記環境変動検出手段により検出された環境変動に応じて決められ、前記画像形成装置の筐体内の環境変動に対する出力安定性の高いパッチ画像であり、前記感度の高いパッチ画像は、前記画像形成装置の筐体内の環境変動に対する感度の高いパッチ画像であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、環境変動があった場合においても無駄なパッチ画像の出力を回避しつつ高精度なガンマ補正情報の更新を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1における画像形成装置の内部構造を示す断面図である。
図2】実施形態1における画像形成装置の論理構成を示すブロック図である。
図3】実施形態1におけるガンマ補正情報を更新する処理フローを示す図である。
図4】パッチ画像の出力ドットの並び方を示す模式図である。
図5】実施形態2における画像形成装置の論理構成を示すブロック図である。
図6】実施形態2におけるガンマ補正情報を更新する処理フローを示す図である。
図7】実施形態3における画像形成装置の論理構成を示すブロック図である。
図8】実施形態3におけるガンマ補正情報を更新する処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明を好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例にすぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0012】
[実施形態1]
図1は本実施形態における画像形成装置の内部構造を示す断面図である。
【0013】
画像形成装置1は4ドラム方式のカラーレーザビームプリンタの構造を有する。図1に示すように、画像形成装置1の下部に転写材カセット53が装着されている。転写材カセット53にセットされた記録媒体(記録紙、透過シート等)は、給紙ローラ54によって一枚ずつ取り出され、搬送ローラ対55−a、55−bによって画像形成部に給送される。画像形成部に記録媒体を搬送する転写搬送ベルト10が複数の回転ローラによって記録媒体搬送方向(図1では右から左方向)に扁平に張設され、転写搬送ベルト10の最上流部においては、記録媒体が搬送ベルト10に静電吸着される。また、ベルト搬送面に対向して4個のドラム状の像担持体としての感光体ドラム14−C、14−M、14−Y、14−Kが直線状に配設されて画像形成部を構成している。ここで、Cはシアン、Yはイエロー、Mはマゼンダ、Kはブラックの各色成分を示している。なお、色成分毎の画像形成部は搭載するトナーの色が異なるだけで、構造上で同様であるので、以下、C色用の画像形成部を例に説明を行う。
【0014】
C色用の画像形成部は、感光体ドラム14−Cの表面を一様に帯電させる帯電器50−C、C色用トナーを収納し、感光体ドラム14−C上に形成された静電潜像を現像する現像器52−C、並びに露光部51−Cを有する。現像器52−Cと帯電器50−Cの間には所定の間隔が設けられている。帯電器50−Cによってその表面が均一に帯電した感光体ドラム14−C上に、上記の間隔を介してレーザスキャナからなる露光部51−Cからのレーザ光を図面に垂直な方向に走査露光する。走査露光することで、走査露光した部分が非露光部分と異なる帯電状態となり、即ち、静電潜像を生成する。現像器52−Cは上記の静電潜像にトナーを転移させて現像する。
【0015】
また、転写搬送ベルト10の搬送面を挟んで転写部57−Cが配置されている。感光体ドラム14−Cの周面上に形成(現像)されたトナー像は、転写部57−Cで形成される転写電界によって、搬送されてきた記録媒体上に電荷吸着されて、記録媒体面上に転写される。
【0016】
上記色成分Cについての処理を、他の色成分Y、M、Kについても同様に行うことで、C、M、Y、Kの各色トナーが記録媒体に次々と転写されることになる。その後、定着器58により、記録媒体上の各色トナーを熱溶融して定着させ、排紙ローラ対59−a、59−bによって機外に排出される。
【0017】
なお、以上は各色成分のトナー像を記録媒体上に直接転写する例を示したが、本発明に適用可能な画像形成装置はこのような構成に限定されない。例えば、各色成分のトナー像を、一旦、転写搬送ベルト上に各色成分のトナー像を転写した後、その転写搬送ベルトに生成されたトナー像を記録媒体に再度転写する(二次転写する)構成でも構わない。このような二次転写を行う場合の転写ベルトを、中間転写ベルトという。
【0018】
図2は本実施形態の画像形成装置の論理構成を示すブロック図である。
【0019】
ガンマ補正処理部201は、ガンマ補正情報格納部202に格納されたガンマ補正情報を用いて、入力された画像データ(入力画像データ)に対してガンマ補正(濃度補正)処理を行う。ここで、入力された画像データは、CMYKの各色空間に変換された多値の画像データ(CMYKデータ)であり、ガンマ補正処理部201は、それぞれの色の濃度階調をターゲットとする階調へ補正する。なお、図2に示されていないが、入力画像データがCMYKデータでない場合に、入力画像データをCMYKデータへ変換する処理がガンマ補正の前に行われる。
【0020】
ガンマ補正情報格納部202は、ガンマ補正情報をルックアップテーブル(LUT)に格納する。なお、本実施形態では、ガンマ補正情報はLUTとして格納するが、これに限定されず、他の形式として格納してもよい。
【0021】
ハーフトーン処理部203は、ガンマ補正(濃度補正)後の画像データに対してハーフトーン処理を施し、より少ない階調数のハーフトーンデータに変換する。
【0022】
パルス幅変調(PWM)信号生成部204は、公知のPWM信号を生成して画像形成部205に出力する。
【0023】
画像形成部205は、PWM信号に従って画像形成を行う。具体的には、図1の露光部51−C、51−M、51−Y及び51−Kによって、感光体ドラム14−C、14−M、14−Y及び14−Kに走査露光が行われる。走査露光時の露光量は、PWM信号に従って制御される。そして、現像器52−C、52−M、52−Y及び52−Kによって現像する。
【0024】
パッチ画像出力指示部206は、パッチ画像格納部2061及びパッチ画像選択部2062を含む。パッチ画像選択部2062が、パッチ画像格納部2061に格納されたパッチ画像の中から、ガンマ補正情報を更新するために出力するパッチ画像を選択する。選択したパッチ画像のデータを入力画像データとしてガンマ補正処理部201に入力し、パッチ画像の出力を指示する。指示に応じて、ガンマ補正処理部201、ハーフトーン処理部203及びPWM信号生成部204の処理が実行され、そして、パッチ画像が画像形成部205により形成される。
【0025】
濃度検出部207は、形成されたパッチ画像の濃度情報を検出する。濃度検出手段は公知の手法を用いて良い。
【0026】
ガンマ補正情報更新部208は、ガンマ補正情報算出部2081およびガンマ補正情報設定部2082を含み、ガンマ補正情報格納部202に格納されたガンマ補正情報を更新する。ガンマ補正情報算出部2081は、濃度検出部207で検出されたパッチ画像の濃度情報に基づいてガンマ補正情報を算出する。ガンマ補正情報設定部2082は、画像形成装置のガンマ補正情報をガンマ補正情報算出部2081で算出されたガンマ補正情報に設定する。
【0027】
図3は、本実施形態においてガンマ補正情報を更新する処理フローを示す図である。
【0028】
ステップS301において、パッチ画像選択部2062がパッチ画像格納部2061に格納されたパッチ画像の中から、画像形成装置の筐体内の環境変動があっても安定して出力可能なパッチ画像(環境変動に対する出力安定性の高いパッチ画像)を選択する。パッチ画像格納部2061に格納されたパッチ画像においてどのパッチ画像が出力安定性の高いパッチ画像であるか、及びどのパッチ画像が環境変動に対する感度の高いパッチ画像であるかは、パッチ画像毎に予め設定されている。このような情報は、パッチ画像の出力ドットの並び方(以下、ドット並び方)に基づいて予め設定され、パッチ画像に関連付けてパッチ画像格納部2061に格納されている。
【0029】
カラーレーザビームプリンタにおいてドット形成の際に、露光による感光体上の電位の低下は理想な矩形ではなく、例えばガウシアン分布のような形になる。そのため、ドット並び方によって、感光体上の電位が十分に低下できず、トナーが安定して付着できない場合がある。本実施形態では、パッチ画像のドット並び方に基づいて、環境変動に対する出力安定性の高いパッチ画像であるか否か(パッチ画像の出力安定性)、及び環境変動に対する感度の高いパッチ画像であるか否か(パッチ画像の感度)を決めている。
【0030】
図4は、本実施形態におけるパッチ画像の出力ドットの並び方を示す模式図である。簡単のため、3×3ドットからなるパターンについて説明する。本実施形態におけるパッチ画像は、このようなパターンを繰り返すことにより構成され、また、繰り返されるパターンのサイズは3×3ドットに限定されない。
【0031】
パターン401、402、403のような複数のドットが水平及び垂直方向に密に連結したパッチ画像は、環境変動があっても安定して出力可能なパッチ画像(環境変動に対する出力安定性の高いパッチ画像)と決められている。複数のドットが水平及び垂直方向に密に連結したパターン401、402、403は、形成の際に、露光スポットが連続的に繋がることによって黒画素位置の電位が十分に低下し、トナーが安定して付着することができる。そのため、大きな環境変動があってもドットを安定して出力することが可能である。つまり、大きな環境変動によってガンマ特性が大きく変化した場合であっても、このようなパッチ画像の出力濃度より、環境変動による濃度変動の傾向を正しく示したガンマ補正情報を算出することができる。
【0032】
一方、パターン404、405、406のような、水平及び垂直方向にドットが疎なパッチ画像は、大きな環境変動によってガンマ特性が大きく変化した場合に、ドットを安定して出力できない場合がある。これらのパターンを繰り返すことにより構成されたパッチ画像は、環境変動に対する感度の高いパッチ画像と決められている。環境変動があった場合に、パターン404、405は、形成の際に黒画素位置の電位が十分に低下せず、ドナーが安定して付着できない場合がある。また、パターン406は、形成の際に白画素位置はその周囲にある黒画素位置の露光の影響を受け、電位が低下するため、白画素がつぶれる場合がある。
【0033】
なお、パッチ画像の出力安定性情報及び感度情報の設定は、計算結果を基に行うことができる。例えば、ドットの周囲の辺のうち白画素に接する辺(外辺)の数とドットの面積の割合は、出力安定性及び感度と相関がある。パターン405を例にすると、ドット面積3に対して外辺の数は12であり、割合は1/4となる。また、パターン402を例にすると、ドット面積6に対して外辺の数は10であり、割合は3/5となる。割合が大きいほど出力安定性が高い傾向があるので、割合が第1の割合閾値以上である大きい場合に、出力安定性が高いと設定される。割合が小さいほど感度が高い傾向があるので、割合が第2の割合閾値より小さい場合に、感度が高いと設定される。ここで、第2の割合閾値は、第1の割合閾値と等しい値または第1の割合閾値より小さい値である。
【0034】
また、パッチ画像の出力安定性情報及び感度情報の設定は、実験結果を基に行うこともできる。例えば、予め、用意した複数のパッチ画像を、様々な現像条件、露光条件、温度、湿度で出力し測定して、濃度変動がどの程度生じているか実験的に試してみる。濃度変動の程度が第1の濃度変動閾値以下である場合に、出力安定性が高いと設定される。濃度変動の程度が第2の濃度変動閾値より大きい場合に、感度が高いと設定される。ここで、第2の濃度変動閾値は、第1の濃度変動閾値と等しい値または第1の濃度変動閾値より大きい値である。
【0035】
上述したように、ステップS301では、パッチ画像選択部2062が、パターン401、402、403を繰り返すことにより構成されたパッチ画像のような、環境変動があっても安定して出力可能なパッチ画像を選択する。
【0036】
ステップS302において、パッチ画像出力指示部206が、ステップS301で選択されたパッチ画像の出力を指示する。指示に応じて、ガンマ補正処理部201、ハーフトーン処理部203及びPWM信号生成部204の処理が実行され、そして、パッチ画像が画像形成部205により形成される。
【0037】
ステップS303において、濃度検出部207が、ステップS302で形成されたパッチ画像の濃度情報を検出する。濃度を検出する手法としては、CCD素子などのセンサによって転写ベルト上に形成されたトナーの反射濃度を検出し、検出した反射濃度からパッチ画像の濃度を算出する。濃度を検出する手法はこれに限るわけではなく、他の手法を用いても良い。
【0038】
ステップS304において、ガンマ補正情報算出部2081が、ステップS303で検出されたパッチ画像の濃度情報よりガンマ補正情報を算出する。ガンマ補正情報は、入力画像データの取りうる値の範囲全体を等分割し、等分割格子点に対応する濃度をLUTに保持している。正確なガンマ特性を実現するためには、十分な数の格子点に対応する濃度情報が必要となる。濃度情報が取得されていない格子点については、ガンマ補正情報算出部2081にて、濃度情報が取得出来ている近傍の格子点の濃度情報から補間処理、例えば線形補間を実行することで、ガンマ補正情報を算出する。
【0039】
テップS303で検出された濃度は、環境変動があっても安定して出力可能なパッチ画像の濃度であるため、ステップS304では、環境変動による濃度変動の傾向を正しく示したガンマ補正情報を算出することができる。
【0040】
ステップS305において、ガンマ補正情報設定部2082が、画像形成装置のガンマ補正情報をステップS304で算出されたガンマ補正情報に更新する。
【0041】
ステップS306において、パッチ画像選択部2062が、高精度なガンマ補正情報更新のためのパッチ画像を選択する。本ステップで選択されるパッチ画像は、環境変動によって出力濃度が大きく変動する、即ち環境変動に対する感度の高いパッチ画像である。
【0042】
ステップS307において、パッチ画像出力指示部206が、ステップS306で選択されたパッチ画像の出力を指示する。指示に応じて、ガンマ補正処理部201、ハーフトーン処理部203及びPWM信号生成部204の処理が実行され、そして、パッチ画像が画像形成部205により形成される。本ステップの画像形成は、ステップS305で更新されたガンマ補正情報を用いるので、環境変動に対する感度の高いパッチ画像であっても、安定して出力することが出来る。
【0043】
ステップS308において、濃度検出部207が、ステップS307で形成されたパッチ画像の濃度情報を検出する。
【0044】
ステップS309において、ガンマ補正情報算出部2081が、ステップS308で検出されたパッチ画像の濃度情報よりガンマ補正情報を算出する。前述したようにステップS304では、濃度情報が取得されていない格子点のガンマ補正情報を、補間処理を実行することで算出している。補間処理によって算出した濃度情報と、ステップS308で取得した濃度情報に異なる場合は、ステップS308で取得した濃度情報を用いて補間処理を再実行する。
【0045】
ステップS310において、ガンマ補正情報設定部2082が、画像形成装置のガンマ補正情報をステップS309で算出されたガンマ補正情報に設定する。
【0046】
上述したように、ステップS301〜S305では、環境変動があっても安定して出力可能なパッチ画像の濃度情報より、出力安定性を重視した、第1のガンマ補正情報更新を行う。ステップS306〜S310では、環境変動に対する感度の高いパッチ画像の濃度情報より、高精度な、第2のガンマ補正情報更新を行う。ステップS307の画像形成は、第1のガンマ補正情報更新を行った後の画像形成であるので、高感度なパッチ画像であっても、安定して出力することができる。よって、無駄なパッチ画像の出力を回避することができる。また、ステップS309のガンマ補正情報算出は、環境変動に対する感度の高いパッチ画像の濃度情報を用いたため、算出されたガンマ補正情報は高精度なガンマ補正情報となっている。よって、高精度なガンマ補正情報更新を行うことができる。
【0047】
本実施形態によれば、環境変動があった場合においても無駄なパッチ画像の出力を回避しつつ高精度なガンマ補正情報の更新を実現することができる。
【0048】
なお、本実施形態のステップS306〜S310では、環境変動に対する感度の高いパッチ画像を選択してガンマ補正情報の更新を行うが、LUTの格子点に近い濃度のパッチ画像を選択してガンマ補正情報の更新を行ってもよい。または、環境変動に対する感度の高いパッチ画像、及びLUTの格子点に近い濃度のパッチ画像を選択してガンマ補正情報の更新を行ってもよい。
【0049】
[実施形態2]
実施形態1では、パッチ画像毎に予め設定されている出力安定性に基づいて、環境変動があっても安定して出力可能なパッチ画像を一意に選択する。しかしながら、環境の変動量や変動した内容によって、環境変動があっても安定して出力可能なパッチ画像が変わる場合もある。また、環境の変動量や変動した内容によって、全てのパッチ画像を安定して出力できる場合もある。本実施形態では、環境の変動量や変動した内容に応じて、安定して出力できないパッチ画像があるか否かを判定する。
【0050】
図5は、本実施形態の画像形成装置の論理構成を示すブロック図である。ガンマ補正処理部201、ガンマ補正情報格納部202、ハーフトーン処理部203、PWM信号生成部204、画像形成部205、濃度検出部207、ガンマ補正情報算出部2081及びガンマ補正情報設定部2082は実施形態1と同じである。これらの構成要素について説明を省略する。以下、実施形態1と異なる構成要素について説明する。
【0051】
環境変動検出部501は、現時点における温度や湿度など環境情報を検出し、前回のガンマ補正情報更新時の環境情報と比較して環境変動情報を取得する。
【0052】
パッチ画像出力指示部502は、パッチ画像格納部5021及びパッチ画像選択部5022を含む。パッチ画像選択部5022が、環境変動検出部501で検出された環境変動情報に応じて、安定して出力できないパッチ画像があるか否かを判定する。パッチ画像毎に、どの環境変動の場合に安定して出力可能であるかは、予め設定されている。このような情報は、パッチ画像に関連付けてパッチ画像格納部5021に格納されており、パッチ画像選択部5022によって安定性判定のために用いられる。例えば、図4のパターン405のようなパッチ画像は、環境の変動量が変動量閾値より大きい場合に、安定して出力可能でないと設定されるが、環境の変動量が変動量閾値以下である場合に、安定して出力可能であると設定される。
【0053】
図6は、本実施形態においてガンマ補正情報を更新する処理フローを示す図である。
【0054】
ステップS601において、環境変動検出部501が、濃度変動に関連する環境情報を検出し、前回のガンマ補正情報更新時の環境情報と比較して環境変動情報を取得する。例えば、温湿度センサなどによって画像形成装置庫内の温度及び湿度検出する。また、各種センサを用いて定着器の定着温度や感光体ドラムのバイアスなどの情報を検出しても良い。なお、検出される環境情報は、パッチ画像の出力安定性に影響が出る情報であれば他の情報であっても良い。
【0055】
ステップS602において、パッチ画像選択部5022が、ステップS601で検出された環境変動情報に応じて、パッチ画像格納部2061に格納されたパッチ画像のうち、安定して出力できないパッチ画像があるかどうかを判定する。安定して出力できないパッチ画像がある場合に、処理はステップS603に進み、安定して出力できないパッチ画像がない場合に、処理はステップS608に進む。
【0056】
ステップS603において、パッチ画像選択部5022が、検出された環境変動情報に応じて安定して出力可能なパッチ画像を選択する。
【0057】
また、ステップS604〜S612の処理は、図3のステップS302〜S310の処理と同様であるので、説明を省略する。
【0058】
上述したように、本実施形態では、環境の変動量や変動した内容に応じて、安定して出力できないパッチ画像があるかどうかを判定する。安定して出力できないパッチ画像がある場合に、まず、安定して出力可能なパッチ画像の濃度情報より、出力安定性を重視した、第1のガンマ補正情報更新を行う。そして、環境変動に対する感度の高いパッチ画像の濃度情報より、高精度な、第2のガンマ補正情報更新を行う。安定して出力できないパッチ画像がない場合に、出力安定性を重視した、第1のガンマ補正情報更新を行わず、環境変動に対する感度の高いパッチ画像の濃度情報より、高精度な、第2のガンマ補正情報更新のみを行う。
【0059】
本実施形態によれば、環境変動の状況に応じたパッチ画像選択が可能となる。また、本実施形態では、環境の変動量や変動した内容に応じてパッチ画像の出力安定性を判定することにより、無駄なパッチ画像の出力をさらに回避することができる。[実施形態3]
実施形態1では、パッチ画像毎に予め設定されている出力安定性に基づいて、安定して出力可能なパッチ画像を選択する。実施形態2では、環境の変動量や変動した内容に応じて、安定して出力できないパッチ画像があるか否かを判定する。通常、安定して出力できないパッチ画像を出力した場合、検出された出力濃度は、環境変動量から想定される濃度より大きく異なることが多い。これは、付着するトナー量が微小に変動するというよりも、トナーが付着するか否かが出力濃度に大きく影響する場合が多いためである。よって、環境変動に対するパッチ画像の出力安定性は、濃度検出結果から判定することが可能である。本実施形態では、この特性を利用してガンマ補正情報の更新を行う。
【0060】
図7は、本実施形態の画像形成装置の論理構成を示すブロック図である。ガンマ補正処理部201、ガンマ補正情報格納部202、ハーフトーン処理部203、PWM信号生成部204、画像形成部205、濃度検出部207、ガンマ補正情報算出部2081及びガンマ補正情報設定部2082は、実施形態1と同じである。これらの構成要素について説明を省略する。
【0061】
パッチ画像出力指示部701は、パッチ画像格納部7011及びパッチ画像選択部7012を含む。パッチ画像選択部7012が、パッチ画像格納部7011に格納されたパッチ画像の中から、出力するパッチ画像を選択する。
【0062】
出力安定性判定部702は、パッチ画像の濃度検出結果に基づいて、環境変動に対するパッチ画像の出力安定性を判定する。
【0063】
本実施形態では、まず、パッチ画像選択部7012がパッチ画像格納部7011に格納されたパッチ画像群の全パッチ画像を選択し、パッチ画像の出力を指示する。形成されたパッチ画像の濃度検出結果に基づいて、パッチ画像の出力安定性が判定される。判定結果における出力安定性の高いパッチ画像の濃度情報がガンマ補正情報算出部2081によりガンマ補正情報算出のために使用される。このように、出力安定性を重視した、第1のガンマ補正情報更新が行われる。そして、第1のガンマ補正情報更新が行われた後に、パッチ画像選択部7012が、判定結果における出力安定性の低いパッチ画像を選択し、パッチ画像の出力を指示する。形成されたパッチ画像の濃度情報より、第2のガンマ補正情報更新が行われる。出力安定性の低いパッチ画像は、環境変動に対する感度が高いので、第2のガンマ補正情報更新はこのようなパッチ画像の濃度情報を用いるので、高精度なガンマ補正情報更新となる。
【0064】
図8は、本実施形態においてガンマ補正情報を更新する処理フローを示す図である。
【0065】
ステップS801〜S803において、全パッチ画像が選択されて出力され、出力された全パッチ画像の濃度情報が検出される。
【0066】
ステップS804において、出力安定性判定部702が、検出された濃度情報に基づいて、環境変動に対するパッチ画像の出力安定性を判定する。通常、ガンマ補正情報は、入力階調値に対して滑らかに変動する。よって周りの濃度値に対して急激な変化があった濃度情報を有するパッチ画像は、安定して出力できなかったと判定される。すなわち、環境変動に対する出力安定性の低いパッチ画像と判定される。あるいは、予め様々な環境変動において、パッチ画像の濃度が変動するレンジ(最大値及び最小値)を測定しておき、ステップS803で検出されたパッチ画像の濃度情報が想定範囲内(所定範囲内)でない場合には、安定して出力できなかったと判定される。すなわち、環境変動に対する出力安定性の低いパッチ画像と判定される。
【0067】
ステップS805において、ガンマ補正情報算出部2081が、ステップS804で判定された出力安定性の低いパッチ画像の濃度情報を除いて、他のパッチ画像の濃度情報よりガンマ補正情報を算出する。すなわち、環境変動があっても安定して出力可能なパッチ画像の濃度情報よりガンマ補正情報を算出する。また、補間処理により、全格子点のガンマ補正情報を算出する。本ステップで算出されたガンマ補正情報は、安定して出力可能なパッチ画像の濃度情報のみを用いて算出した補正情報であるため、環境変動による濃度変動の傾向を正しく示したガンマ補正情報である。
【0068】
ステップS806において、ガンマ補正情報設定部2082が、画像形成装置のガンマ補正情報をステップS805で算出されたガンマ補正情報に設定する。ステップS805及び本ステップで行われるガンマ補正情報更新は、出力安定性を重視した、第1のガンマ補正情報更新である。
【0069】
ステップS807において、パッチ画像選択部7012が、ステップS804の判定結果に出力安定性の低いパッチ画像があるか否かを判定する。出力安定性の低いパッチ画像があった場合に、処理はステップS808に進み、出力安定性の低いパッチ画像がなかった場合に、本処理フローは終了する。
【0070】
ステップS808〜S810において、ステップS804の判定結果における出力安定性の低いパッチ画像が選択されて出力され、出力されたパッチ画像の濃度情報が検出される。ステップS809の画像形成は、ステップS805及びS806のガンマ補正情報更新が行われた後の画像形成であるので、ステップS804の判定結果における出力安定性の低いパッチ画像であっても、安定して出力可能となっている。
【0071】
ステップS811において、ガンマ補正情報算出部2081が、ステップS810で検出された濃度情報よりガンマ補正情報を算出する。ステップS812において、ガンマ補正情報設定部2082が、画像形成装置のガンマ補正情報をステップS811で算出されたガンマ補正情報に設定する。ステップS811及びS812の処理は、図3のステップS309及びS310と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0072】
本実施形態では、濃度検出結果からパッチ画像の出力安定性を判定することにより、新たに環境変動を検出するセンサや機構などを追加することなく、環境変動の状況に応じたパッチ画像選択が可能となる。
【0073】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8