(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の電解質の材料の融液に、第2の電解質の構成元素を含む材料、および、活物質の構成元素を含む材料を溶解させる工程は、前記第1の電解質の材料と、前記活物質の構成元素を含む材料と、前記第2の電解質の構成元素を含む材料とを加熱することで行われることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電極複合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明に係る実施形態および実施例について、図面を用いて説明する。尚、説明に用いる図面は、説明のための便宜上のものであり、図示された構成要素の寸法や比率等は実際のものと異なる場合がある。また、図面の説明において、示された図の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0056】
(第1実施形態)
本実施形態は、
活物質複合体を備える電極複合体のひとつの実施形態および当該電極複合体を用いたリチウム二次電池並びにその製造方法について説明するものである。
【0057】
まず、本実施形態における電極複合体およびリチウム二次電池について説明する。
図1は、本実施形態に係る電極複合体10の縦断面図である。
図2は、本実施形態に係る電極複合体10を用いたリチウム二次電池100の縦断面図である。
【0058】
電極複合体10は、集電体1および活物質複合体4を有し、活物質複合体4は活物質成形体2および固体電解質層3を有する。活物質成形体2は、固体電解質層3に接して形成されている。
【0059】
また、リチウム二次電池100は、電極複合体10および電極20を含む。リチウム二次電池100は、いわゆる全固体型リチウム(イオン)二次電池である。
【0060】
集電体1は、活物質複合体4の一面(一方の面)41に接して設けられ、これにより、一面41で露出する活物質成形体2に接している。この集電体1は、活物質成形体2が正極活物質で構成される場合は正極として機能し、活物質成形体2が負極活物質で構成される場合は負極として機能する。
【0061】
集電体1の形成材料(構成材料)としては、例えば、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)およびパラジウム(Pd)からなる群から選ばれる1種の金属(金属単体)や、この群から選ばれる2種以上の金属元素を含む合金等が挙げられる。
【0062】
集電体1の形状は、特に限定されず、例えば、板状、箔状、網状等をなすものが挙げられる。また、集電体1の表面は、平滑なものであってもよく、凹凸が形成されていてもよい。
【0063】
活物質成形体2は、単結晶で構成された活物質粒子21が複数個、3次元的に連結して形成された成形体である。活物質粒子21は、遷移金属酸化物としてのリチウム複酸化物で構成される活物質を含む。なお、本明細書において「リチウム複酸化物」とは、リチウムを必ず含み、かつ全体として2種以上の金属イオンを含む酸化物であって、オキソ酸イオンの存在が認められないものを言う。
【0064】
この活物質粒子21は、後述する
活物質複合体の製造方法を適用して得られることから、単結晶で構成され、遷移金属酸化物としてリチウム複酸化物を含む無機物を形成材料として含有しており、この形成材料の種類を適宜選択することで、集電体1は、正極にも負極にもなり得る。
【0065】
集電体1を正極とする場合のリチウム複酸化物としては、例えば、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4、LiNi
0.5Mn
1.5O
4、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2、Li
2Mn
2O
3、LiNi
0.8Co
0.16Al
0.04O
2、LiFePO
4、Li
2FeP
2O
7、LiMnPO
4、LiFeBO
3、Li
3V
2(PO
4)
3、Li
2CuO
2、LiFeF
3、Li
2FeSiO
4、Li
2MnSiO
4等が挙げられる。これらの中でも、リチウムと、コバルト、マンガンおよびニッケルのうちの少なくとも1種とを含む化合物を主材料として含有することが好ましく、具体的には、コバルト酸リチウム、ニッケル−マンガン−コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、およびニッケル−コバルト−アルミニウム酸リチウムからなる群から選択される化合物を主成分として含むことが好ましい。
【0066】
このようなリチウム複酸化物を含むことで、活物質粒子21は、複数の活物質粒子21同士で電子の受け渡しを行い、活物質粒子21と固体電解質層3との間でリチウムイオンの受け渡しを行い、活物質としての機能を発揮する。
【0067】
これにより、活物質成形体2を、高い電子伝導性と、小さい充放電時体積変化率との双方の特性を併せ持つものとすることができる。その結果、電極複合体10を用いるリチウム二次電池100の高容量化および長寿命化が図られる。
【0068】
また、これらのリチウム複酸化物の結晶内の一部原子が他の遷移金属、典型金属、アルカリ金属、アルカリ希土類、ランタノイド、カルコゲナイド、ハロゲン等で置換された固溶体もリチウム複酸化物に含むものとし、これら固溶体も正極活物質として用いることができる。
【0069】
また、集電体1を負極とする場合の活物質成形体2の形成材料には、例えば、負極活物質として、シリコン−マンガン合金(Si−Mn)、シリコン−コバルト合金(Si−Co)、シリコン−ニッケル合金(Si−Ni)、五酸化ニオブ(Nb
2O
5)、五酸化バナジウム(V
2O
5)、酸化チタン(TiO
2)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO
2)、酸化ニッケル(NiO)、錫(Sn)が添加された酸化インジウム(ITO)、アルミニウム(Al)が添加された酸化亜鉛(AZO)、ガリウム(Ga)が添加された酸化亜鉛(GZO)、アンチモン(Sb)が添加された酸化スズ(ATO)、フッ素(F)が添加された酸化スズ(FTO)、炭素材料、炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質、TiO
2のアナターゼ相、Li
4Ti
5O
12、Li
2Ti
3O
7等のリチウム複酸化物、Li金属等を用いることができる。
【0070】
活物質成形体2の抵抗率は、700Ω/cm以下であることが好ましい。活物質成形体2がこのような抵抗率を有することにより、電極複合体10を用いてリチウム電池を形成した際に、充分な出力が得られる。抵抗率は、例えば、活物質成形体2の表面に電極として用いる銅箔を付着し、直流分極測定を行うことにより測定することができる。
【0071】
固体電解質層3は、リチウムイオン伝導性を有し、室温でガラス化している固体電解質で構成される。以降、室温でガラス化している電解質を第1の電解質と呼ぶ。固体電解質層3は活物質成形体2と接している。活物質複合体4は、上記一方の面の他面である他面42側において電極20に接する。他面42側では、活物質成形体2が露出することなく、固体電解質層3が単独で露出するように設けられている。これにより、活物質成形体2と電極20との短絡を防止することができる。
【0072】
固体電解質層3は、後述する
活物質複合体の製造方法を適用して形成されることで、ガラス化し活物質粒子21を被覆するように形成される。このため、固体電解質層3と活物質粒子21との間における界面抵抗が小さくなり、固体電解質層3と活物質成形体2との間におけるイオン伝導性が向上した活物質複合体4を形成することができる。したがって、かかる活物質複合体4を備えるリチウム二次電池100を、高出力かつ高容量であるものとすることができる。
【0073】
固体電解質層3は、例えば、リチウムイオン伝導性を備える、C、SiまたはBを含むリチウム酸化物である第1の電解質により構成される。具体的には、第1の電解質として、Li
2CO
3、Li
4SiO
4、Li
2SO
4、Li
2+xC
1−xB
xO
3(0.1<x<0.4)、Li
3BO
3およびLi
4B
2O
5の少なくとも一つもしくは複数を含んでいるものが挙げられるが、中でも、Bを含むリチウム酸化物(Li−B−OまたはLi−B−Oの構成元素を含む材料)であることが好ましく、特に、Li
3BO
3と、Li
2CO
3、Li
4SiO
4およびLi
2SO
4のうちの少なくとも一方とを含むものであることが好ましい。これにより、第1の電解質のイオン伝導性を優れたものとすることができる。
【0074】
また、固体電解質層3のイオン伝導率は、1×10
−6S/cm以上であることが好ましい。固体電解質層3がこのようなイオン伝導率を有することにより、より大きな電池反応に寄与することが可能となる。
【0075】
ここで、固体電解質層3のイオン伝導率は、例えば、ガラス化した状態で錠剤型にプレス成形し、スパッタリングにより直径0.5cm、厚み100nmのプラチナ電極をプレス成型体両面に形成して交流インピーダンス法を実施することにより測定することができる。測定装置には、例えば、インピーダンスアナライザ(ソーラトロン社製、型番SI1260)を用いる。
【0076】
また、活物質複合体4の一面41において活物質成形体2を露出させるために、一面41に対し研磨加工が行われる場合がある。研磨加工を施した場合、一面41には、研磨加工の痕跡である擦過痕(研磨痕)が残されている。
【0077】
また、本実施形態の電極複合体10は、後に詳述するように、活物質複合体4を成形する際に、活物質同士をつなぎ合わせるバインダーや、活物質成形体2の導電性を担保するための導電助剤などに有機物を用いることなく成形することができ、この場合には、ほぼ無機物のみで構成されている。具体的には、本実施形態の電極複合体10においては、活物質複合体4(活物質成形体2および固体電解質層3)を400℃で30分加熱した時の質量減少率が、5質量%以下となっている。質量減少率は、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、質量減少が観測されない、または誤差範囲であることが特に好ましい。活物質複合体4がこのような質量減少率を有するため、活物質複合体4には、所定の加熱条件で蒸発する溶媒や吸着水等の物質や、所定の加熱条件で燃焼または酸化されて気化する有機物が、構成全体に対して5質量%以下しか含まれないこととなる。
【0078】
なお、活物質複合体4の質量減少率は、示差熱−熱重量同時測定装置(TG−DTA)を用い、活物質複合体4を所定の加熱条件で加熱することで、所定の加熱条件による加熱後の活物質複合体4の質量を測定し、加熱前の質量と加熱後の質量との比から算出することができる。
【0079】
これらのことから、以下で説明する
活物質複合体の製造方法が適用された、上述した構成をなす活物質複合体4を備える電極複合体10は、電極複合体10を用いたリチウム二次電池の容量を向上させ、かつ高出力とすることができる。
【0080】
また、活物質複合体4は、一面41で、活物質成形体2と固体電解質層3とが露出し、他面42で、固体電解質層3が単独で露出し、この状態で、一面41に集電体1が接合され、他面42に電極20が接合されている。かかる構成とすることで、リチウム二次電池100において、電極20と集電体1とが活物質成形体2を介して接続されるのを防止すること、すなわち短絡を防止することができる。すなわち、固体電解質層3は、リチウム二次電池100における短絡の発生を防止する短絡防止層としての機能をも発揮する。
【0081】
電極20は、活物質複合体4の他面42に、活物質成形体2に接することなく固体電解質層3に接して設けられている。電極20は、活物質成形体2が正極活物質で構成される場合、負極として機能する。また、活物質成形体2が負極活物質で構成される場合、正極として機能する。
【0082】
電極20の形成材料(構成材料)としては、電極20が負極の場合、例えば、リチウム(Li)が挙げられる。
【0083】
電極20の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0084】
次に、本発明に係る電極複合体10およびリチウム二次電池100の製造方法について説明する。
まず、
図3〜
図9を用いて、電極複合体10の製造方法について説明する。
【0085】
[1A]第1の電解質の材料の融液に、活物質の構成元素を含む材料を溶解させる工程(溶解工程)。
【0086】
[1A−1]第1の電解質の材料35と、活物質の構成元素を含む材料25(以下、「活物質の構成元素を含む材料)を「活物質原材料」と言うこともある)と、を含有する第1の混合物を得る(
図3参照。)。
【0087】
第1の電解質の材料35は、例えば、前述した、リチウムイオン伝導性を備える、C、SiまたはBを含むリチウム酸化物が挙げられ、Bを含むリチウム酸化物(Li−B−OまたはLi−B−Oの構成元素を含む材料)が好ましく用いられる。これにより、得られる第1の電解質のイオン伝導性を優れたものとすることができるとともに、次工程[1A−2]において、第1の電解質の材料35の融液に、活物質原材料25を確実に溶解させることができる。
【0088】
活物質原材料25は、形成すべき活物質粒子21に含まれる活物質そのものであってもよいし、活物質粒子21に含まれる活物質の前駆体であってもよく、これらのうちの少なくとも一方を含むものが用いられる。これにより、第1の電解質の材料35の融液に溶解させ得る、活物質原材料25の選択の幅が広がる。
【0089】
さらに、活物質の前駆体としては、例えば、活物質が有する金属原子を活物質の組成式に従った割合で含み、酸化により活物質となる塩を有する組成物が用いられる。
【0090】
なお、活物質の前駆体は、活物質と比較して、その融点が低いものが好ましく選択される。これにより、後工程[2A]において、第1の電解質の融液中に、活物質を比較的容易に晶析させる(固体状態として比較的容易に存在させる)ことができる。
【0091】
なお、第1の混合物は、例えば、それぞれ粒状をなす第1の電解質の材料35および活物質原材料25を用意し、これらを、各種混合方法を用いて混合することにより得ることできる。
【0092】
また、各種混合方法としては、例えば、ボールミルのような回転式混合機を用いた方法等が挙げられる。
【0093】
[1A−2]次いで、第1の混合物を加熱する。
これにより、第1の電解質の材料35を溶融させ、この融液に活物質原材料25を溶解させて融液36を得る(
図4参照。)。
【0094】
また、第1の混合物を加熱する加熱温度は、第1の電解質の材料35の融点超であり、かつ、活物質の融点未満であることが好ましい。これにより、後工程[2A]において、活物質粒子21を晶析させる際に、活物質粒子21中に第1の電解質が混入するのを的確に抑制または防止して、活物質粒子21を活物質の単結晶として確実に晶析させることができる。
【0095】
このような加熱温度は、具体的には、第1の電解質の材料35と活物質原材料25との組み合わせによっても異なるが、400℃以上1,200℃以下であることが好ましく、450℃以上1,100℃以下であることがより好ましく、500℃以上1,000℃以下であることがさらに好ましい。
【0096】
また、加熱時間は、第1の電解質の材料35と活物質原材料25との組み合わせによっても異なるが、1時間以上50時間以下であることが好ましく、5時間以上20時間以下であることがより好ましい。
【0097】
加熱する条件を上記のように設定することにより、第1の電解質の材料35の融液中に、活物質原材料25を確実に溶解させることができるとともに、融液36中において、副生成物が生成されるのを抑制することができる。
【0098】
さらに、第1の混合物を加熱する加熱方法としては、特に限定されず、例えば、電子ビーム、高周波、レーザー、ヒートガン、プラズマ照射等を用いる方法等が挙げられる。
【0099】
[2A]活物質原材料を溶解させた第1の電解質の材料の融液の中から、活物質を晶析させる工程(晶析工程)。
【0100】
本工程により、この活物質の単結晶で構成された活物質粒子21が融液36中に形成され、さらに、複数の活物質粒子21が3次元的に連結することで、活物質成形体2が成形される(
図5参照。)。融液36が飽和状態になると、融液36中に活物質の結晶核が生成・成長し、単結晶で構成された活物質粒子21が形成される。
【0101】
活物質の晶析は、前記工程[1A−2]における加熱温度を第1の電解質の材料35の融点よりも高い温度で行われるが、この加熱温度が、第1の電解質の材料35の融点超であり、かつ、融液36の液相線温度未満に冷却する過程で活物質粒子21が融液36中に単結晶として析出する。
【0102】
なお、この冷却による活物質粒子21の析出は、冷却速度によって結晶サイズを調整することが可能である。融液36中に大粒径の単結晶を形成する場合には、融液36の冷却速度を可能な限り遅くすることが好ましい。そのため、融液36を冷却する冷却方法としては、自然冷却が好ましく選択される。
【0103】
さらに、活物質粒子21の平均粒径は、1μm以上100μm以下に好ましくは設定される。第1の電解質の融液36中から、活物質を晶析させる方法により、活物質粒子21を形成させることで、かかる大きさの活物質粒子21を容易に形成することができる。
【0104】
[3A]第1の電解質の材料の融液を、ガラス化させる工程(ガラス化工程)。
ガラス化工程により、複数の活物質粒子21が3次元的に連結することで形成された活物質成形体2の表面を被覆して、第1の電解質の材料がガラス化し第1の固体電解質となり固体電解質層3が形成される(
図6参照。)。
その結果、活物質成形体2と固体電解質層3とからなる活物質複合体4が得られる。
【0105】
このように形成された活物質複合体4は、活物質成形体2と固体電解質層3との界面の整合性が高くなる。その結果、活物質成形体2と固体電解質層3との間の界面抵抗が小さくなることから、活物質成形体2と固体電解質層3との間におけるイオン伝導性が向上する。したがって、かかる活物質複合体4を備えるリチウム二次電池100を、高出力かつ高容量であるものとすることができる。
【0106】
さらに、晶析により形成された単結晶で構成される活物質粒子21は、結晶方位を制御することが可能である。イオン電導に優れる面を優先的に発達させることで、活物質成形体2と固体電解質層3との間におけるイオン伝導性が向上した活物質複合体4を得ることができる。
【0107】
第1の電解質は、融液36を、第1の電解質の材料35の融点未満となるまで冷却することによりガラス化される。
【0108】
なお、上述した工程[1A]〜工程[3A]により、
活物質複合体の製造方法が構成される。
【0109】
[4A]活物質複合体4の一面41から、活物質成形体2と固体電解質層3とを露出させる工程(
図7参照)。
【0110】
活物質複合体4の一面41から活物質成形体2と固体電解質層3とを露出させるには、例えば一面41を研削・研磨することでよい。この場合、一面41には、研削・研磨加工の痕跡である擦過痕(研削・研磨痕)が残される。
【0111】
なお、活物質複合体4を形成した際に、一面41から活物質成形体2と固体電解質層3との双方が露出することがある。この場合は、本工程を省略することもできる。
【0112】
[5A]活物質複合体4の一面41において集電体1を形成する工程。
本工程により、集電体1と活物質複合体4とを備える電極複合体10が形成される(
図8参照)。
【0113】
集電体1の接合は、別体として形成した集電体を活物質複合体4の一面41に接合することによって行ってもよく、活物質複合体4の一面41に上述した集電体1を成膜することで行ってもよい。
【0114】
なお、集電体1の成膜方法は、各種の物理気相成長法(PVD)および化学気相成長法(CVD)を用いることができる。
【0115】
[6A]活物質複合体4の他面42に電極20を接合する工程。
本工程により、リチウム二次電池100が製造される(
図9参照)。
【0116】
電極20の接合は、別体として形成した電極を活物質複合体4の他面42に接合することによって行ってもよく、活物質複合体4の他面42に上述した電極20の形成材料を成膜することで行ってもよい。なお、電極20の成膜方法は、集電体1の成膜方法であげたのと同様の方法を用いることができる。
【0117】
なお、第1の電解質を、Cを含むリチウム酸化物を含有する固体電解質で構成する場合には、融液36を、ガラス化工程[3A]の後に、一酸化炭素、二酸化炭素のような酸化炭素を含む雰囲気中に、固体電解質層3を曝す工程を含むことが好ましい。これにより、第1の電解質を、Cを含むリチウム酸化物を含有する固体電解質で確実に構成することができ、第1の電解質のイオン伝導率の向上が図られる。
【0118】
以上のような工程を経ることによって、本実施形態のリチウム二次電池100を得ることができる。
【0119】
(第2実施形態)
本実施形態は、上記の実施形態とは異なる電極複合体のひとつの実施形態および当該電極複合体を用いたリチウム二次電池並びにその製造方法について説明するものである。尚、本実施形態を含む以降の実施形態および実施例において、第1実施形態で説明したものと同様の構成要素は、同一の符号を付与し、その説明を省略する場合がある。
【0120】
まず、本実施形態における電極複合体およびリチウム二次電池について説明する。
図10は本実施形態に係る電極複合体11の縦断面図、
図11は本実施形態に係る電極複合体11を用いたリチウム二次電池101の縦断面図である。
【0121】
電極複合体11は、集電体1および活物質複合体40を有し、活物質複合体40は活物質成形体22および固体電解質層30を有する。
【0122】
リチウム二次電池101は、電極複合体11および電極20を含む。このリチウム二次電池101は、いわゆる全固体型リチウム(イオン)二次電池である。
【0123】
まず、
図10を用いて、電極複合体11について説明する。活物質複合体40は、活物質成形体22と固体電解質層30とで構成されている。また、電極複合体11は、集電体1と活物質複合体40とで構成される。活物質成形体22は、固体電解質層30に接している。
【0124】
集電体1は、活物質複合体40の一面(一方の面)41に接して設けられ、これにより、一面41で露出する活物質成形体22に接している。この集電体1は、活物質成形体22が正極活物質で構成される場合は正極として機能し、活物質成形体22が負極活物質で構成される場合は負極として機能する。
【0125】
活物質成形体22は、単結晶で構成された活物質粒子23が複数個、3次元的に連結して形成された成形体である。活物質粒子23は、遷移金属酸化物としてのリチウム複酸化物で構成される活物質を含むものである。
【0126】
尚、活物質成形体22としては、第1実施形態で説明した活物質成形体2と同様の構成のものでもよい。
【0127】
固体電解質層30は、第1の電解質と単結晶で構成された固体電解質(以降、第2の電解質と呼ぶ)とで構成される。
図10において、第1の電解質はガラス化層31であり、第2の電解質は結晶粒子32である。ガラス化層31は、結晶粒子32を被覆する。このような固体電解質層30は、第1の電解質と第2の電解質とで構成される電解質複合体と呼ぶことができる。
【0128】
固体電解質層30と活物質成形体22とは接しており、固体電解質層30は、活物質成形体22に形成されている細孔内にも存在する。活物質複合体40において、電極20に接する他面42側では、活物質成形体22が露出することなく、固体電解質層30が単独で露出するように設けられている。これにより、集電体1と電極20との短絡を防止することができる。
【0129】
結晶粒子32は、単結晶で構成され、活物質成形体22が備える細孔内において、複数の結晶粒子32が3次元的に連結して形成されており、リチウムイオン伝導性を有している。
【0130】
第2の電解質としては、第1の電解質と比較してリチウムイオン伝導性に優れるものが好ましく用いられ、例えば、Li7La3Zr2O12、Li6.75La3Zr1.75Nb0.25O12、Li5La3Nb2O12、Li1+xAlxGe2−x(PO4)3、Li0.35La0.55TiO3、Li3.4V0.6Si0.4O4、Li14ZnGe4O16、Li3.6V0.4Ge0.6O4、Li1.3Ti1.7Al0.3(PO4)3、LiNbO3、Li2S−SiS2、Li2S−SiS2−LiI、Li2S−SiS2−P2S5、Li2O−TiO2、La2O3−Li2O−TiO2、LiSO4、Li4SiO4、Li3PO4−Li4SiO4、Li4GeO4−Li3VO4、Li4SiO4−Li3VO4、Li4GeO4−Zn2GeO2、Li4SiO4−LiMoO4、Li3PO4−Li4SiO4、Li4SiO4−Li4ZrO4、LiBH4、Li10GeP2S12等の酸化物、硫化物、ハロゲン化物、窒化物、水酸化物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0131】
また、結晶粒子32は、ガーネット型結晶構造またはガーネット型類似結晶構造を有するものであることがより好ましい。ガーネット型結晶構造またはガーネット型類似結晶構造を有することにより、結晶粒子32を、イオン伝導性がより高く電気化学的に安定であるものとすることができる。
【0132】
ガーネット型結晶構造またはガーネット型類似結晶構造を容易に有するものとすることができるものとしては、具体的例として、一般式Li
xM
1M
2O
12で表されるものがある。なお、M
1としては、ガーネット結晶を形成し得る任意の元素が選択されるが、中でも、イオン伝導率が高い結晶を形成するために、特に、Zr、Nb、Ta、Sn、W、SbおよびBiのうちの少なくとも1種を用いることが好ましい。また、M
2としては、M
1とともにガーネット結晶を形成し得る、任意の元素が選択されるが、中でも、イオン伝導率が高い結晶を形成するために、特に、ランタノイド元素が好ましく、Laがより好ましく選択される。
【0133】
なお、これらの組成物の一部原子が他の遷移金属、典型金属、アルカリ金属、アルカリ希土類、ランタノイド、カルコゲナイド、ハロゲン等で置換された固溶体も、第2の電解質もしくは第2の電解質の材料として用いることができる。
【0134】
また、結晶粒子32のイオン伝導率は、1×10
−4S/cm以上であることが好ましい。結晶粒子32がこのようなイオン伝導率を有することにより、固体電解質層30全体としてのイオン伝導率を向上させることができ、より大きな電池反応に寄与することが可能となる。そのため、活物質成形体22における活物質の利用率が向上し、容量を大きくすることができる。
【0135】
なお、「結晶粒子32のイオン伝導率」とは、結晶粒子32自身の伝導率である「粒子内伝導率」と、結晶粒子32の粒子間の伝導率である「粒界イオン伝導率」と、の総和である「総イオン伝導率」のことを言う。
【0136】
ここで、結晶粒子32のイオン伝導率は、例えば、結晶粒子32のみを624MPaで錠剤型にプレス成型したものを大気雰囲気下700℃で8時間焼結し、スパッタリングにより直径0.5cm、厚み100nmの金電極をプレス成型体両面に形成して交流インピーダンス法を実施することにより測定することができる。測定装置には、例えば、インピーダンスアナライザ(ソーラトロン社製、型番SI1260)を用いる。
【0137】
固体電解質層30は、活物質成形体22を被覆するように形成される。そのため、活物質成形体22と結晶粒子32(第2の電解質)との間にガラス化層31(第1の電解質)が介在することで、活物質成形体22とガラス化層31との間における界面抵抗が小さくなるとともに、結晶粒子32とガラス化層31との間における界面抵抗が小さくなることから、活物質成形体22とガラス化層31との間、さらには、結晶粒子32とガラス化層31との間におけるイオン伝導性が向上する。したがって、活物質複合体40におけるイオン伝導性の向上を図ることができる。
【0138】
第1の電解質であるガラス化層31は、例えば、リチウムイオン伝導性を備える、C、SiまたはBを含むリチウム酸化物により構成される。具体的には、ガラス化層31は、Li
2CO
3、Li
4SiO
4、Li
2SO
4、Li
2+xC
1−xB
xO
3(0.1<x<0.4)、Li
3BO
3およびLi
4B
2O
5の少なくとも一つもしくは複数を含んでいるものが挙げられるが、中でも、Li
3BO
3と、Li
2CO
3、Li
4SiO
4およびLi
2SO
4のうちの少なくとも一方とを含むものであることが好ましい。
【0139】
活物質複合体40の一面41は、固体電解質層30から活物質成形体22が露出している。しかしながら、活物質成形体22の露出が不足している場合には、活物質成形体22を露出させるために、一面41に対しを研磨加工が行われる場合がある。研磨加工を施した場合、一面41には、研磨加工の痕跡である擦過痕(研磨痕)が残されている。
【0140】
また、活物質複合体40は、他面42で、固体電解質層30が単独で露出し、この状態で、一面41に集電体1が接合され、他面42に電極20が接合されている。かかる構成とすることで、リチウム二次電池101において、電極20と集電体1とが活物質成形体22を介して接続されるのを防止すること、すなわち短絡を防止することができる。すなわち、固体電解質層3は、リチウム二次電池101における短絡の発生を防止する短絡防止層としての機能をも発揮する。
【0141】
次に、本実施形態の電極複合体11およびリチウム二次電池101の製造方法について説明する。尚、活物質成形体22の製造の違いにより、第1の方法、および、第2の方法、として、分けて説明する。
【0142】
まず、
図12〜
図19を用いて、第1の方法を用いる場合の電極複合体11の製造方法について説明する。第1の方法とは、活物質粒子23を圧縮、焼結させて活物質成形体22を用いる場合の方法である。
【0143】
[1B]粒子状をなす複数の活物質粒子23を加熱することで、これらを3次元的に連結させて、多孔質体からなる活物質成形体22を得る工程。
【0144】
活物質成形体22は、例えば、成形型Fを用いて複数の活物質粒子23を圧縮して圧縮成形物を成形し(
図12参照)、その後、得られた圧縮成形物を熱処理(第1の加熱処理)することにより複数の活物質粒子23同士が3次元的に連結することで形成される(
図13参照)。このときにバインダー等を混合させて熱処理を行うことで、活物質成形体22に複数の細孔を形成することができる。また、細孔の大きさはバインダーの粒子の大きさにより制御することも可能となる。尚、当該バインダーは、第1の加熱処理により昇華するものが好ましい。
【0145】
第1の加熱処理は、850℃以上1000℃以下の温度条件で行うことが好ましい。これにより、活物質粒子23同士を焼結させて一体化された活物質成形体22を確実に得ることができる。このとき、処理温度が850℃未満であると、用いるリチウム複酸化物の種類によっては、焼結が十分でなく、活物質の結晶内の電子伝導性がより低いものとなるおそれがある。また、処理温度が1000℃超であると、リチウム複酸化物の結晶内からリチウムイオンが過剰に揮発し、リチウム複酸化物の電子伝導性が低下する。
【0146】
なお、より適切な出力と容量とを得るためには上記処理温度が850℃以上1000℃以下であることが好ましく、さらにより適切な出力と容量とを得るためには875℃以上1000℃以下であることがより好ましく、さらにより適切な出力と容量とを得るためには900℃以上920℃以下であることがさらに好ましい。
【0147】
また、第1の加熱処理は、5分以上36時間以下で行うことが好ましく、4時間以上14時間以下で行うことがより好ましい。
【0148】
上記のような熱処理を施すことで、活物質粒子23内の粒界の成長や、活物質粒子23間の焼結が進行するため、得られる活物質成形体22が形状を保持しやすくなり、上述したバインダーの添加量を低減することができる。また、焼結により活物質粒子23間に結合が形成され、活物質粒子23間の電子の移動経路を形成することができる。
【0149】
また、得られる活物質成形体22は、活物質成形体22が有する複数の細孔が、互いに網目状に連通した連通孔で構成されたものとなる。
【0150】
[2B]第1の電解質の材料の融液に、第2の電解質の構成元素を含む材料を溶融させる工程(溶融工程)。
【0151】
[2B−1]まず、第1の電解質と、第2の電解質の構成元素を含む材料(以下、「電解質原材料」と言うこともある。)と、を含有する第2の混合物を得る。
【0152】
本実施形態における第1の電解質の材料は、形成すべきガラス化層31を構成する構成材料であり、例えば、前述した、リチウムイオン伝導性を備える、C、SiまたはBを含むリチウム酸化物が挙げられ、Bを含むリチウム酸化物(Li−B−OまたはLi−B−Oの構成元素を含む材料)が好ましく用いられる。これにより、得られるガラス化層31のイオン伝導性を優れたものとすることができるとともに、次工程[2B−2]において、第1の電解質の材料の融液に、電解質原材料を確実に溶融させることができる。
【0153】
電解質原材料は、形成すべき結晶粒子32に含まれる第2の電解質そのものであってもよいし、第2の電解質の前駆体であってもよく、これらのうちの少なくとも一方を含むものが用いられる。これにより、第1の電解質の材料に溶解させ得る、電解質原材料の選択の幅が広がる。
【0154】
さらに、第2の電解質の前駆体としては、例えば、第2の電解質が有する金属原子を第2の電解質の組成式に従った割合で含み、酸化により第2の電解質となる塩を有する組成物が用いられる。
【0155】
なお、第2の電解質の前駆体は、第2の電解質と比較して、その融点が低いものが好ましく選択される。これにより、後工程[4B]において、第1の電解質の融液中に、第2の電解質を比較的容易に晶析させる(固体状態として比較的容易に存在させる)ことができる。
【0156】
なお、第1の電解質の材料と、電解質原材料とを含有する第2の混合物は、例えば、それぞれ粒状をなす第1の電解質の材料および電解質原材料を用意し、これらを、各種混合方法を用いて混合することにより得ることできる。
【0157】
また、各種混合方法としては、例えば、羽根回転式ミキサ、ボールミルのような回転式混合機またはロッキングミルのような分散運動式混合機を用いた方法等が挙げられる。
【0158】
[2B−2]第2の混合物を加熱する工程。
本工程により、第1の電解質の材料を溶融させた融液に電解質原材料を溶解させる。
【0159】
第2の混合物を加熱する加熱温度は、第1の電解質の材料の融点以上であり、かつ、第2の電解質の融点未満であることが好ましい。これにより、後工程[4B]において、結晶粒子32を晶析させる際に、結晶粒子32中に第1の電解質が混入するのを的確に抑制または防止して、結晶粒子32を第2の電解質の単結晶として確実に晶析(生成)させることができる。
【0160】
このような加熱温度は、具体的には、第1の電解質の材料と電解質原材料との組み合わせによっても異なるが、400℃以上1,200℃以下であることが好ましく、450℃以上1,100℃以下であることがより好ましく、500℃以上1,000℃以下であることがさらに好ましい。
【0161】
また、加熱時間は、第1の電解質の材料と電解質原材料との組み合わせによっても異なるが、5時間以上50時間以下であることが好ましく、5時間以上20時間以下であることがより好ましい。
【0162】
加熱する条件を上記のように設定することにより、第1の電解質の材料の融液中に、電解質原材料を確実に溶解させ融液46を形成することができるとともに、融液46中において、副生成物が生成されるのを抑制することができる。
【0163】
さらに、第2の混合物を加熱する加熱方法としては、特に限定されず、例えば、電子ビーム、高周波、レーザー、ヒートガン、プラズマ照射等を用いる方法等が挙げられる。
【0164】
[3B]細孔を含む活物質成形体22の表面に、融液46を塗布する工程(
図14参照)。
【0165】
本工程により、細孔内に融液46が充填され、融液46と活物質成形体22とが混合した状態となる。
【0166】
融液46の塗布は、活物質成形体22の細孔の内部にまで融液46が浸透する方法であれば、種々の方法により行うことができる。例えば、活物質成形体22を載置しておいたところに融液46を滴下することで行ってもよく、融液46を貯留しているところに活物質成形体22を浸漬させることで行ってもよく、融液46を貯留しているところに活物質成形体22の端部を接触させ、毛管現象を利用して細孔内に含浸させることで行ってもよい。
【0167】
[4B]融液46中から、第2の電解質を晶析させる工程(晶析工程)。
本工程により、結晶粒子32が融液46中に形成され、さらに、複数の結晶粒子32が3次元的に連結することで第2の電解質が形成される。第2の電解質は、活物質成形体22が備える細孔内においても形成される(
図15参照。)。融液46が飽和状態となると、融液46中に第2の電解質の結晶核が生成・成長し、単結晶で構成された結晶粒子32が形成される。
【0168】
第2の電解質の晶析は、工程[2B−2]における加熱温度が、第1の電解質の材料の融点以上であり、かつ、融液46の液相線温度未満に冷却する過程で、結晶粒子32が融液46中に単結晶として析出する。
【0169】
なお、この冷却による結晶粒子32の析出は、冷却速度によって結晶サイズを調整することが可能である。融液46中で単結晶粒子を成長させるために、融液46の冷却速度を可能な限り遅くすることが好ましい。そのため、融液46を冷却する冷却方法としては、自然冷却が好ましく選択される。
【0170】
[5B]第1の電解質の材料の融液をガラス化させる工程(ガラス化工程)。
本工程により、活物質成形体22および結晶粒子32の表面を被覆して、第1の電解質であるガラス化層31が形成される(
図16参照。)。
【0171】
その結果、ガラス化層31(第1の電解質)と結晶粒子32(第2の電解質)とからなる電解質複合体で構成される固体電解質層30が得られる。また、この固体電解質層30と活物質成形体22とからなる活物質複合体40が得られる。
【0172】
ガラス化層31(第1の電解質)が、活物質成形体22および結晶粒子32(第2の電解質)を被覆するように形成される。このため、結晶粒子32とガラス化層31との間、さらには活物質成形体22とガラス化層31との間におけるリチウムイオン伝導パスが増加する。また、結晶粒子32とガラス化層31との界面、さらには活物質成形体22とガラス化層31との界面の整合性が高くなる。その結果、これら同士間の界面抵抗が小さくなることから、活物質複合体40において、結晶粒子32とガラス化層31との間、さらには活物質成形体22とガラス化層31との間におけるイオン伝導性の向上を図ることができる。したがって、かかる活物質複合体40を備えるリチウム二次電池101を、高出力かつ高容量であるものとすることができる。
【0173】
さらに、晶析により形成された単結晶で構成される結晶粒子32は、結晶方位を制御することが可能である。イオン伝導に優れる面を優先的に発達させることで、結晶粒子32とガラス化層31との間におけるイオン伝導性が向上した活物質複合体40を得ることができる。
【0174】
この第1の電解質のガラス化は、融液46を、第1の電解質の融点未満となるまで融液46を冷却することにより行われる。
【0175】
なお、上述した工程[2B]〜工程[5B]により、
電解質複合体の製造方法が構成され、上述した工程[1B]〜工程[5B]により、本発明の電極複合体の製造方法が構成される。
【0176】
[6B]活物質複合体40の一面41から、活物質成形体22と固体電解質層30とを露出させる工程(
図17参照)。
【0177】
活物質成形体22の露出が不足している場合、研削・研磨により多く活物質成形体22を露出させる。この場合、一面41には、研削・研磨加工の痕跡である擦過痕(研削・研磨痕)が残される。
【0178】
なお、活物質複合体40を形成した際に、一面41から活物質成形体22の露出が十分な場合、活物質複合体40の一面41における研削・研磨を省略することもできる。
【0179】
[7B]活物質複合体40の一面41において集電体1を形成する工程(
図18)。
本工程により、活物質複合体40と集電体1とを備える電極複合体11が形成される。
【0180】
集電体1の接合は、別体として形成した集電体を活物質複合体40の一面41に接合することによって行ってもよく、活物質複合体40の一面41に上述した集電体1を成膜することで行ってもよい。
【0181】
なお、集電体1の成膜方法は、各種の物理気相成長法(PVD)および化学気相成長法(CVD)を用いることができる。
【0182】
[8B]活物質複合体40の他面42に電極20を接合する工程(
図19)。
本工程により、リチウム二次電池101が製造される。
【0183】
電極20の接合は、別体として形成した電極を活物質複合体40の他面42に接合することによって行ってもよく、活物質複合体40の他面42に上述した電極20の形成材料を成膜することで行ってもよい。なお、電極20の成膜方法は、集電体1の成膜方法であげたのと同様の方法を用いることができる。
【0184】
次に、活物質成形体22の形成を、第2の方法で行った場合について説明する。第2の方法は、活物質粒子23を溶媒に分散させたスラリーを加熱する方法である。
【0185】
スラリーを用いた方法では、活物質粒子23を含有するスラリーを調製する調製工程[1B’−1]と、スラリーを加熱して活物質成形体22を得る乾燥工程[1B’−2]とを有する。以下、これらの工程について説明する。
【0186】
[1B’−1]まず、溶媒中にバインダーを溶解させ、そこに活物質粒子23を分散させスラリーを調製する。なお、スラリー中には、オレイルアミンのような分散剤が含まれていてもよい。
【0187】
その後、凹部を備える底部と蓋部とを有する成形型を用意し、底部の凹部に、スラリーを滴下した後、底部を蓋部で蓋をする。
【0188】
また、スラリー中における活物質粒子23の含有量は、10wt%以上60wt%以下であるのが好ましく、30wt%以上50wt%以下であるのがより好ましい。これにより、固体電解質の充填率の高い活物質成形体22が得られることとなる。
【0189】
さらに、バインダーとしては、特に限定されないが、ポリプロピレンカーボネート(PPC)のようなポリカーボネートの他、セルロース系バインダー、アクリル系バインダー、ポリビニルアルコール系バインダー、ポリビニルブチラール系バインダー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0190】
また、溶媒としては、特に限定されないが、例えば、非プロトン性の溶媒であることが好ましい。これにより、溶媒との接触による活物質粒子23の劣化を低減することができる。
【0191】
このような非プロトン性溶媒としては、具体的には、例えば、ブタノール、エタノール、プロパノール、メチルイソブチルケトン、1,4−ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられ、この単溶媒または混合溶媒を溶媒として使用することができる。
【0192】
[1B’−2]次に、活物質粒子23を含有するスラリーを加熱することにより、スラリーを乾燥させるとともに、スラリー中に含まれる活物質粒子23同士を焼結させることで、活物質成形体22を得る。
【0193】
なお、活物質粒子23を含有するスラリーを加熱する方法としては、特に限定されないが、例えば、スラリーをスプレードライヤー等により噴霧乾燥することで加熱する方法等が挙げられる。
【0194】
また、スラリーを加熱する際の加熱条件は、前述した圧縮成形物を熱処理する際の条件と同様に設定される。
【0195】
さらに、このスラリーの加熱は、段階的に温度条件が上昇する多段階で行うことが好ましく、具体的には、室温で乾燥させた後、室温から300℃まで2時間、350℃まで0.5時間、1000℃まで2時間を掛けて昇温させ、その後、凹部を蓋部で蓋をして1000℃、8時間で焼成することが好ましい。このような条件で昇温することで、溶媒中に含まれるバインダーを確実に焼き飛ばすことができる。
【0196】
かかる工程を経ることによっても、活物質成形体22を得ることができる。尚、活物質成形体22の形成以外においては、上記第1の方法を用いた場合と同様である。
【0197】
(第3実施形態)
本実施形態は、上記の実施形態とは異なる電極複合体のひとつの実施形態および当該電極複合体を用いたリチウム二次電池並びにその製造方法について説明するものである。
まず、
図20〜
図27を用いて、電極複合体12の製造方法について説明する。
【0198】
[1C]第1の電解質の材料の融液に、電解質原材料、および、活物質原材料を溶解させる工程(溶解工程)。
【0199】
[1C−1]まず、第1の電解質の材料35と、電解質原材料37と、活物質原材料25とを含有する第3の混合物を得る(
図20参照。)。尚、説明の便宜上、電解質原材料37から生成される第2の電解質の粒子を結晶粒子32として説明を行う。同様に、第1の電解質と第2の電解質とから構成される固体電解質を固体電解質層30として、固体電解質層30を備える電極複合体を活物質複合体40として説明を行う。
【0200】
電解質原材料37は、活物質原材料25と比較して、融液56中における含有量が低くなるように調製される。このような含有量の関係とすることによっても、後工程[4C]において、第1の電解質の融液56中で、活物質を晶析させた後に、第2の電解質を晶析させることができる。
【0201】
なお、第3の混合物は、例えば、それぞれ粒状をなす第1の電解質の材料35、電解質原材料37および活物質原材料25を用意し、これらを、各種混合方法を用いて混合することにより得ることできる。
【0202】
また、各種混合方法としては、例えば、ボールミルのような回転式混合機を用いた方法等が挙げられる。
【0203】
[1C−2]次いで、第3の混合物を加熱する。
これにより、第1の電解質の材料35の材料を溶融させた融液に、電解質原材料37と活物質原材料25とを溶解させ融液56を生成する(
図21参照。)。
【0204】
第3の混合物を加熱する加熱温度は、第1の電解質の材料35の融点超であり、かつ、第2の電解質および活物質の融点未満であることが好ましい。これにより、後工程[2C]において、活物質粒子21さらには結晶粒子32を晶析させる際に、活物質粒子21および結晶粒子32中に第1の電解質が混入するのを的確に抑制または防止して、活物質粒子21を活物質の単結晶として確実に晶析(生成)させることができるとともに、結晶粒子32を第2の電解質の単結晶として確実に晶析(生成)させることができる。
【0205】
このような加熱温度は、具体的には、第1の電解質の材料35と電解質原材料37と活物質原材料25との組み合わせによっても異なるが、400℃以上1,200℃以下であることが好ましく、450℃以上1,100℃以下であることがより好ましく、500℃以上1,000℃以下であることがさらに好ましい。
【0206】
また、加熱時間は、第1の電解質の材料35と電解質原材料37と活物質原材料25との組み合わせによっても異なるが、5時間以上50時間以下であることが好ましく、10時間以上20時間以下であることがより好ましい。
【0207】
加熱する条件を上記のように設定することにより、融液56中に、電解質原材料37および活物質原材料25を確実に溶解させることができるとともに、融液56中において、副生成物が生成されるのを抑制することができる。
【0208】
さらに、第3の混合物を加熱する加熱方法としては、特に限定されず、例えば、電子ビーム、高周波、レーザー、ヒートガン、プラズマ照射等を用いる方法等が挙げられる。
【0209】
[2C]融液56中から、活物質と、第2の電解質とを、順次、晶析させる工程(晶析工程)。
【0210】
[2C−1]融液56中から、活物質を晶析させる。
本工程により、単結晶で構成された活物質粒子21が融液56中に形成され、さらに、複数の活物質粒子21が3次元的に連結することで、活物質成形体2が成形される(
図22参照。)。
【0211】
活物質の晶析は、前記工程[1C−2]における加熱温度を第1の電解質の材料35の融点よりも高い温度で行われるが、この加熱温度が、第1の電解質の材料35の融点超であり、かつ、融液56の液相線温度未満に冷却する過程で、活物質粒子21が融液56中に単結晶として析出する。
【0212】
なお、この冷却による活物質粒子21の析出は、冷却速度によって結晶サイズを調整することが可能である。融液56中に大粒径の単結晶を形成する場合には、融液56の冷却速度を可能な限り遅くすることが好ましい。そのため、融液56を冷却する冷却方法としては、自然冷却が好ましく選択される。
【0213】
なお、このとき、第2の電解質は、活物質と比較して、その融点が低いものが選択されていることで、活物質粒子21が融液56中に形成される際に、活物質粒子21中に第2の電解質が不純物として含まれるのを確実に抑制または防止することができる。
【0214】
[2C−2]活物質成形体2が形成された融液56中に第2の電解質を晶析させる工程。
【0215】
本工程により、この第2の電解質の単結晶で構成された結晶粒子32が融液56中に形成され、さらに、複数の結晶粒子32が3次元的に連結する(
図23参照。)。
【0216】
結晶粒子32が晶析される際に、活物質粒子21と結晶粒子32との間には、融液56が介在する。
【0217】
この第2の電解質の晶析は、前記工程[2C−2]における加熱温度が、第1の電解質の材料の融点以上であり、かつ、第2の電解質の融点未満である場合には、融液56中において第2の電解質が生成されるにしたがって、結晶粒子32が融液56中に単結晶として析出する。
【0218】
また、前記工程[2C−2]における加熱温度が、第2の電解質の融点以上である場合には、第1の電解質の材料の融点以上であり、かつ、第2の電解質の融点未満となるまで融液56を冷却することにより、結晶粒子32を融液56中に単結晶として析出させる。なお、この冷却による結晶粒子32の析出は、融液56中に単結晶を形成するために、融液56の冷却速度を可能な限り遅くすることが好ましい。そのため、融液56を冷却する冷却方法としては、自然冷却が好ましく選択される。
【0219】
なお、このとき、第2の電解質は、活物質と比較して、その融点が低いものが選択されていることで、結晶粒子32が融液56中に形成される際に、結晶粒子32中に活物質が不純物として含まれるのを確実に抑制または防止することができる。
【0220】
[3C]融液56を、ガラス化させる工程(ガラス化工程)。
本工程により、活物質成形体2および結晶粒子32の表面を被覆して、第1の電解質(ガラス化層31)が形成される(
図24参照。)。その結果、結晶粒子32とガラス化層31とからなる電解質複合体で構成される固体電解質層30が得られる。また、この固体電解質層30と活物質成形体2とからなる活物質複合体40が得られる。
【0221】
第1の電解質のガラス化は、融液56を、第1の電解質の融点未満となるまで融液56を冷却することにより行われる。
【0222】
なお、この冷却による第1の電解質のガラス化は、ガラス化層31で結晶粒子32および活物質成形体2の表面をより確実に被覆させるために、融液56の冷却速度を可能な限り遅くすることが好ましく、特に、第1の電解質の融点付近における融液56の冷却速度を可能な限り遅くすることが好ましくい。これにより、第1の電解質の結晶化をより確実に防止して、ガラス化層31を活物質成形体2および結晶粒子32の表面を被覆した状態でより確実に形成することができる。
そのため、融液56を冷却する冷却方法としては、自然冷却が好ましく選択される。
【0223】
なお、上述した工程[1C]〜工程[3C]により、本発明に係る電極複合体の製造方法が構成される。
【0224】
[4C]活物質複合体40の一面41を研削・研磨することで、この一面41から、活物質成形体2と固体電解質層30とを露出させる工程(
図25参照)。
【0225】
また、この場合、一面41には、研削・研磨加工の痕跡である擦過痕(研削・研磨痕)が残される。
【0226】
なお、活物質複合体40を形成した際に、一面41から活物質成形体2と固体電解質層30との双方が露出することがある。この場合は、活物質複合体40の一面41における研削・研磨を省略することもできる。
【0227】
[5C]集電体1を形成する工程(
図26)。
これにより、活物質複合体40と集電体1とを備える電極複合体12が形成される。
【0228】
集電体1の接合は、別体として形成した集電体を活物質複合体40の一面41に接合することによって行ってもよく、活物質複合体40の一面41に上述した集電体1を成膜することで行ってもよい。
【0229】
なお、集電体1の成膜方法は、各種の物理気相成長法(PVD)および化学気相成長法(CVD)を用いることができる。
上記の製造方法で電極複合体12を形成することができる。
【0230】
[6C]電極20を接合する工程(
図27)。
これにより、リチウム二次電池102が製造される。
【0231】
電極20の接合は、別体として形成した電極を活物質複合体40の他面42に接合することによって行ってもよく、活物質複合体40の他面42に上述した電極20の形成材料を成膜することで行ってもよい。なお、電極20の成膜方法は、集電体1の成膜方法であげたのと同様の方法を用いることができる。
【0232】
なお、第2実施形態のリチウム二次電池101は、上述したリチウム二次電池の製造方法の他、例えば、以下のような第3の方法および第4の方法を用いて製造することができる。
【0233】
すなわち、第3の方法では、第1実施形態のリチウム二次電池の製造方法で説明した前記工程[1A]〜工程[3A]により活物質複合体を製造する。次いで、この活物質複合体と、第2の電解質である粒子とを粉砕して得られた粉砕物を混合・圧縮した後に加熱することで、第1の電解質を溶融させ、その後、第1の電解質をガラス化させてガラス化層31を形成することにより活物質複合体4を得る。次いで、第2実施形態のリチウム二次電池の製造方法の第1の方法で説明した前記工程[7B]、工程[8B]により集電体1および電極20を活物質複合体4に形成することで、第2実施形態のリチウム二次電池101を製造することができる。
【0234】
また、第4の方法では、第2実施形態のリチウム二次電池の製造方法で説明した前記工程[1B]、工程[3B]を省略した前記工程[2B]、工程[4B]、工程[5B]により電解質複合体を製造する。次いで、この電解質複合体と、活物質粒子とを粉砕して得られた粉砕物を混合・圧縮した後に加熱することで、第1の電解質の材料を溶融させ、その後、第1の電解質の材料の融液をガラス化させてガラス化層31を形成することにより活物質複合体4を得る。次いで、第2実施形態のリチウム二次電池の製造方法の第1の方法で説明した前記工程[7B]、工程[8B]により集電体1および電極20を活物質複合体4に形成することで、第2実施形態のリチウム二次電池101を製造することができる。
【0235】
さらに、第3の方法および第4の方法において、混合・圧縮した後に第1の電解質を加熱する際の、加熱温度は、具体的には、第1の電解質の種類によっても異なるが、700℃以上1,100℃以下であることが好ましく、800℃以上1,000℃以下であることがより好ましい。また、加熱時間は、5分以上2時間以下であることが好ましく、10分以上0.5時間以下であることがより好ましい。
【0236】
加熱する条件を上記のように設定することにより、第1の電解質の材料を選択的に溶融させた後に、溶融した第1の電解質の材料を確実にガラス化させてガラス化層31を形成させることができる。
【0237】
以上、本発明に係る
電極複合体の製造方法、
電極複合体および電池の説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において広く適用が可能である。
【0238】
例えば、本発明の
電極複合体および電池における各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0239】
また、本発明の電池は、前記各実施形態で説明したリチウム二次電池の他、リチウム一次電池にも適用できる。さらに、ナトリウムイオン電池や、マグネシム電池等にも適用できる。
【0240】
さらに、本発明の
電極複合体の製造方法には、1または2以上の任意の工程が追加されていてもよい。
【実施例】
【0241】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.電解質複合体の評価
1−1.電解質複合体の製造
[実施例1A]
電解質原材料として、Li
2O、La
2O
3、ZrO
2およびNb
2O
5、を用意し、また、第1の電解質として、Li
3BO
3を用意した。
【0242】
そして、これらが、Li
2O:La
2O
3:ZrO
2:Nb
2O
5:Li
3BO
3=1.518/g:5.255/g:2.319/g:0.355/g:0.9842/gの比率となるように、秤量した後、混合して混合物を得た。
【0243】
次に、この混合物を加熱することにより、第1の電解質の材料の融液に、電解質原材料を溶解させた。これにより、第1の電解質中において、電解質原材料から第2の電解質(Li
6.75La
3Zr
1.75Nb
0.25O
12(以下、「LLZNO」と省略することもある。))を生成させた。
【0244】
次に、この融液を冷却することにより、第2の電解質を晶析させた後に、晶析した第2の電解質の表面を被覆するように第1の電解質をガラス化させて電解質複合体を得た。
【0245】
なお、混合物を加熱する加熱条件、および融液を冷却する冷却条件は以下のようにして実施した。
【0246】
すなわち、混合物を、25℃から900℃まで、大気下、900℃/時間の昇温速度で昇温した後、900℃の温度を20時間保持した。その後、200℃/時間の降温速度で25℃まで降温の後、放冷させた。
【0247】
1−2.電解質複合体のXRD測定
実施例1Aの電解質複合体について、粉末X線回折装置(株式会社リガク社製、「UltimaIV」)を用いて粉末X線回折(XRD)測定を行った。なお、測定にはCuKα線を用い、加速電圧:30kV、印加電流:15mAとして行った。
【0248】
実施例1Aの電解質複合体について得られたXRDスペクトルを
図28に示す。
図28に示す通り、実施例1Aの電解質複合体のXRDスペクトルでは、単一相のLLZNOが得られ、Li
3BO
3由来の回折線は検出されなかった。
【0249】
1−3.電解質複合体のICP−OES測定
実施例1Aの電解質複合体について、誘導結合プラズマ装置を用いて誘電結合プラズマ(ICP−OES)測定を行うことで、電解質複合体に含まれる元素の定量を行った。
【0250】
その結果、実施例1Aの電解質複合体中には、Li、La、Zr、Nb、BおよびAlが、それぞれ、モル比でLi:La:Zr:Nb:B:Al=11.17:2.70:1.75:0.25:1.00:0.02の比率で含まれており、LLZNOおよびLi
3BO
3ともに、概ね量論組成の電解質複合体が得られていると言え、るつぼとして用いたAl
3O
3に由来するAlの混入も認められなかった。
【0251】
1−3.電解質複合体の再ガラス化
[実施例1B]
実施例1Aの電解質複合体を粉砕し、得られた粉体を、加圧力60MPaの条件でディスク状に成形することで、複合体タブレットを得た。
【0252】
次に、この複合体タブレットを加熱することにより、第1の電解質の材料を溶融させた後に、冷却させることで、第1の電解質を再度、ガラス化させて電解質複合体を得た。
【0253】
なお、複合体タブレットを加熱する加熱条件、および冷却する冷却条件は以下のようにして実施した。
【0254】
すなわち、複合体タブレットを、25℃から900℃まで、大気下、900℃/時間の昇温速度で昇温した後、900℃の温度を20時間保持した。その後、200℃/時間の降温速度で100℃まで降温させた後、放冷させた。
【0255】
[実施例2B]
複合体タブレットを加熱して、900℃の温度を保持する時間を10時間としたこと以外は、前記実施例1Bと同様にして、電解質複合体を得た。
【0256】
[実施例3B]
複合体タブレットを加熱して、900℃の温度を保持する時間を1時間としたこと以外は、前記実施例1Bと同様にして、電解質複合体を得た。
【0257】
上記のようにして得られた実施例1B〜実施例3Bの電解質複合体について、それぞれ、走査型電子顕微鏡を用いて、加速電圧15kVにて、倍率100倍および倍率5,000倍で、SEM(Scanning Electron Microscopy)観察を行った。
その結果を、
図29に示す。
【0258】
図29中において、保持時間が長くなるほど粒径が大きくなっているのがLLZNOであり、保持時間を長くして、最適な時間(20時間)とすることで焼結を促進させることができ、電極複合体の相対密度を82%まで向上させることが可能であった。
【0259】
2.電極複合体の評価
2−1.電極複合体の製造
[実施例1C]
実施例1Aの電解質複合体を粉砕し、得られた粉体とLiCoO
2粒子(以下、「LCO」と省略することもある。)とを、ボールミルで分散混合することにより混合物を得た。
【0260】
次に、得られた混合物を、加圧力60MPaの条件でディスク状に成形することで、複合体タブレットを得た。
【0261】
次に、この複合体タブレットを加熱することにより、第1の電解質を溶融させた後に、冷却させることで、第1の電解質を再度、ガラス化させて電極複合体を得た。
【0262】
なお、複合体タブレットを加熱する加熱条件、および冷却する冷却条件は以下のようにして実施した。
【0263】
すなわち、複合体タブレットを、25℃から900℃まで、大気下、200℃/分の昇温速度で昇温した後、900℃の温度を30分保持した。その後、200℃/時間の降温速度で500℃まで降温させた後、放冷させた。
【0264】
2−2.電極複合体のXRD測定
実施例1Cの電極複合体について、粉末X線回折装置を用いて粉末X線回折(XRD)測定を、複合体タブレットの加熱前後において行った。なお、測定にはCuKα線を用い、加速電圧:30kV、印加電流:15mAとして行った。
【0265】
実施例1Cの電極複合体について得られたXRDスペクトルを
図30に示す。
図30に示す通り、実施例1Cの電極複合体のXRDスペクトルでは、LLZNOの表面に対するLi
3BO
3の被覆により、LLZNOとLCOとの反応性の生成が的確に抑制されている結果が得られた。
【0266】
2−3.電極複合体のSEM観察
実施例1Cの電極複合体について、走査型電子顕微鏡を用いて、加速電圧15kVにて、倍率1,000倍で、SEM観察を行った。
その結果を、
図31に示す。
【0267】
図31中(特に、反射電子像)において、白い粒子として認められるのが第2の電解質(LLZNO)であり、うす暗い粒子として認められるのが活物質(LCO)であり、黒くLCOとLLZNOとの間に介在して観察されるのが第1の電解質(Li
3BO
3)である。
【0268】
上記のような製造方法とすることで、単結晶で構成された第2の電解質(LLZNO)と、活物質(LCO)と、これらの双方を被覆することで、これら同士を接合する第1の電解質(Li
3BO
3)とを備える電極複合体を製造することが可能であった。また、ガラス化させた第1の電解質の相対密度を84%まで向上させることが可能であった。
【0269】
尚、本発明は、上述した実施形態及び実施例に限られたものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において広く適用が可能である。