(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6624905
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】液体容器および液体残量検出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20191216BHJP
【FI】
B41J2/175 301
B41J2/175 307
B41J2/175 315
B41J2/175 119
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-230601(P2015-230601)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2017-94634(P2017-94634A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉居 和哉
(72)【発明者】
【氏名】林 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】高岡 翼
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 亮
(72)【発明者】
【氏名】柴 彰
【審査官】
長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−262564(JP,A)
【文献】
特開2007−144811(JP,A)
【文献】
特開2007−268793(JP,A)
【文献】
特開2011−235440(JP,A)
【文献】
特開2005−125738(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02505363(EP,A2)
【文献】
中国特許出願公開第102729636(CN,A)
【文献】
特開2001−304943(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2013−0005970(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
G01F 23/30−23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学センサが設置された装置に装着することが可能な液体容器であって、
液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部に連通し、前記装置に装着された状態において前記光学センサによる検出が可能な位置に配置される検知室と、
前記貯留部に貯留されている液体の量に応じて前記貯留部および前記検知室の中で第1の方向に変位する変位部材と、
を備え、
前記変位部材は、前記変位に応じて前記光学センサの光を遮光する位置と前記光学センサの光を遮光しない位置との間を、前記検知室の内部において移動する遮光部と、前記変位部材の前記第1の方向とは交差する第2の方向への移動を規制するための規制部材と、を有し、
前記検知室の内壁は、前記遮光部と前記第2の方向に対向し、少なくとも一部が前記光学センサの光を透過する材質で形成された第1の領域と、前記規制部材と前記第2の方向に対向する第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域を接続する第3の領域と、を有し、
前記第1の領域と前記第3の領域は、180度よりも大きな面間角度で接続されることを特徴とする液体容器。
【請求項2】
光学センサが設置された装置に装着することが可能な液体容器であって、
液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部に連通し、前記装置に装着された状態において前記光学センサによる検出が可能な位置に配置される検知室と、
前記貯留部に貯留されている液体の量に応じて前記貯留部および前記検知室の中で第1の方向に変位する変位部材と、
を備え、
前記変位部材は、前記変位に応じて前記光学センサの光を遮光する位置と前記光学センサの光を遮光しない位置との間を、前記検知室の内部において移動する遮光部と、前記変位部材の前記第1の方向とは交差する第2の方向への移動を規制するための規制部材と、を有し、
前記検知室の内壁は、前記遮光部と前記第2の方向に対向し、少なくとも一部が前記光学センサの光を透過する材質で形成された第1の領域と、前記規制部材と前記第2の方向に対向する第2の領域を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域は、180度よりも大きな面間角度で接続されることを特徴とする液体容器。
【請求項3】
前記第2の方向において、前記第1の領域と前記遮光部の距離は前記第2の領域と前記規制部材の距離よりも大きい請求項1または2に記載の液体容器。
【請求項4】
前記変位部材は、前記貯留部に設けられた軸部を中心に回転可能に取り付けられており、前記貯留部に貯留されている液体の量に応じて回転することにより、前記第1の方向に変位する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液体容器。
【請求項5】
前記変位部材において、前記規制部材は前記遮光部よりも前記貯留部に近い位置に配置されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の液体容器。
【請求項6】
前記第2の領域は前記変位に伴って前記規制部材が移動する領域に沿って設けられている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液体容器。
【請求項7】
前記変位部材には、前記第2の方向における前記第2の領域と前記規制部材の距離よりも小さい幅を有する溝が形成されている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の液体容器。
【請求項8】
前記液体は画像を記録するためのインクである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の液体容器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の液体容器を装着することが可能な装着部と、
光学センサと、
前記光学センサの検出結果に基づいて、前記液体容器に収容される液体の残量を判断する手段と、
を備えることを特徴とする液体残量検出装置。
【請求項10】
前記液体を吐出することにより記録媒体に画像を記録する記録手段を更に備える請求項9に記載の液体残量検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体容器および当該液体容器に収容された液体の残量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置のように、液体容器(インクタンク)から供給される液体(インク)を継続的に消費する装置においては、液体容器内の液体残量が少ない場合にこれを検出し、ユーザに通知することが望まれることがある。液体残量を検知する構成としては、液体容器内に配置され液体の消費に伴って変位する変位部材と、液体容器内を透過させた光を検出する光学センサを備える構成がある。このような構成では、例えば、液体容器内の液体残量が十分であるとき、変位部材は光学センサの透過光を遮断する位置にあり、液体容器内の液体残量が少ないとき、変位部材は光学センサの透過光を遮断しない位置にあるように調整されている。そして、光学センサが透過光を検出したか否かに応じて、液体残量が所定量より少なくなっているか否かを判断することができるようになっている。
【0003】
以上のような残量検出構成においては、変位部材が液体の消費に伴って滑らかに変位し、液体の残量に順応した位置に配置されていることが求められる。例えば特許文献1には、光学センサが透過光を検出する検知窓の内壁に対向する変位部材上の位置に、凸部を設ける構成が開示されている。凸部を設けることにより、凸部の先端が内壁面に再接近した場合であっても、凸部以外の遮光部の領域と検知窓の間には十分な距離が保たれ、これらの間に介在するインクの表面張力が遮光部の変位に影響することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4474960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、凸部以外の領域と検知窓の間には十分な距離が保たれるものの、凸部の頂点と検知窓との距離は小さく、これらの間に毛管現象が発生する懸念は残る。毛管現象が発生すると、インクカートリッジ内のインクの水面が凸部より十分低くなっても、凸部と検知窓との間にインクが保持されたままになり、当該インク中を光学センサの光が透過する懸念が生じる。そしてこのような状況が発生すると、光学センサが受光すべき光量が減少したり減衰したりして、高精度な検出が行えなくなってしまうおそれが生じる。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものである。よってその目的とするところは、インクの残量に応じた適切な検出を高精度に行うことが可能な液体容器および液体残量検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために本発明は、光学センサが設置された装置に装着することが可能な液体容器であって、液体を貯留する貯留部と、前記貯留部に連通し、前記装置に装着された状態において前記光学センサによる検出が可能な位置に配置される検知室と、前記貯留部に貯留されている液体の量に応じて前記貯留部および前記検知室の中で第1の方向に変位する変位部材と、を備え、前記変位部材は、前記変位に応じて前記光学センサの光を遮光する位置と前記光学センサの光を遮光しない位置との間を、前記検知室の内部において移動する遮光部と、前記変位部材の前記第1の方向とは交差する第2の方向への移動を規制するための規制部材と、を有し、前記検知室の内壁は、前記遮光部と前記第2の方向に対向し、少なくとも一部が前記光学センサの光を透過する材質で形成された第1の領域と、前記規制部材と前記第2の方向に対向する第2の領域
と、前記第1の領域と前記第2の領域を接続する第3の領域と、を有し、前記第1の領域と
前記第3の領域は、180度よりも大きな面間角度
で接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液体の残量に応じた適切な残量検出を高精度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
【
図4】インクカートリッジを装着する様子を示す図である。
【
図5】インク残量に対応した変位部材の姿勢を説明するための断面図である。
【
図6】検知室と変位部材の詳しい構成を説明するための図である。
【
図7】検知室と変位部材の詳しい構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の液体残量検出装置として使用可能なインクジェット記録装置の概略構成を示す図である。インクジェット記録装置200には、本発明の液体容器として使用可能なインクカートリッジ1を、インクの種類に応じた数だけ装着できるようになっている。
図1では、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクをそれぞれ収容した4つのインクカートリッジ1が、装着された様子を示している。
【0011】
インクカートリッジ1に収容されているインクは、供給口3からインクチューブ30を介して記録ヘッド300に供給される。記録ヘッド300は、制御部400の制御のもと、それぞれのインクを吐出し、記録媒体Sに所定の画像を記録する。インク残量検知部400aは、制御部400の制御のもと、個々のインクカートリッジ1に対応して配された光学センサ23の検出結果を取得し、個々のインクカートリッジ1におけるインク残量を判断する。
【0012】
図2は、インクカートリッジ1の外観斜視図である。インクカートリッジ1は液体としてのインクを収容する容器筐体6に、容器蓋7が超音波溶着等で接着されることによって構成される。装着時に重力方向上方側となる+Z方向の面には、インクカートリッジ1内を大気圧に保つための大気連通口4、+Y方向の面には記録ヘッド300にインクを供給するための供給口3が配されている。また、+Y方向の側にはインクカートリッジ1内のインクの残量を検出するための検知室5が設置されている。
【0013】
図3は、インクカートリッジ1の分解斜視図である。容器筐体6の内部はインクを収容するための貯留部2になっている。貯留部2の内壁には−X方向に突出した軸部8が形成されている。変位部材11は、その軸孔14が軸部8に貫通され、更に抑え部材21が取り付けられることによって、貯留部2の内部に回転可能に支持される。変位部材11については、後に詳しく説明する。供給口3の内径にはシール部材22が備え付けられている。
【0014】
図4(a)および(b)は、インクジェット記録装置200の側に設けられた装着部210にインクカートリッジ1を装着する様子を示す図である。
図4(a)が装着前、同図(b)が装着後をそれぞれ示している。装着部210は、インクカートリッジ1を装着する際はこれを装着方向に案内し、装着後にはこれをZ方向の上下から支持する側面壁220と、装着時にY方向に当接する前面壁230とによって構成されている。
【0015】
前面壁230には、供給口3と接続可能なパイプ状のインク供給管24が貫通されている。インク供給管24がシール部材22を挟んで供給口3に挿入されることにより、貯留部2内と記録ヘッド300とが、インク供給管24およびインクチューブ30を介して連通される。
【0016】
前面壁230の内側には、互いに向き合う1対の光学センサ23が設けられている。これら1対の光学センサ23のうち片側は発光部、もう片側は受光部になっており、これらはインクカートリッジ1が装着されたときに、検知室5のX方向両側を挟み込むように設置されている。インクカートリッジ1において、検知室5のX方向の側壁は、少なくともその一部が光透過型の材質で構成されており、インクカートリッジ1が装着された状態において、発光部が発光した光が受光部で受光できる様になっている。なお、以上説明したような装着部210は、インクカートリッジ1のそれぞれについて独立に用意されている。
【0017】
図5(a)および(b)は、インクカートリッジ1内のインク残量に対応した変位部材11の姿勢を説明するための断面図である。
図5(a)は、貯留部2内にインクが充填されている状態、同図(b)は貯留部2内のインクが僅かになった状態をそれぞれ示している。
【0018】
変位部材11は、Y方向に延在する棒状の部材であり、+Y方向の先端には遮光部13が、−Y方向の先端にはフロート部12が形成され、軸部8を中心にYZ平面内で回転可能になっている。但し、遮光部13を含む+Y方向の先端領域は貯留部2よりもZ方向の幅が小さい検知室5の中に配置されているので、変位部材11の回転は遮光部13が検知室5の内壁に当接することによって規制される。
【0019】
貯留部2内にインクが充填されているとき、変位部材11はその全体がインクに浸った状態となる。本実施例の変位部材11は、このような場合において、フロート部12に作用する浮力によって発生する回転モーメント(反時計回り)が、遮光部13に作用する浮力によって発生する回転モーメント(時計回り)よりも大きくなるように設計されている。よって、変位部材11は反時計回りに回転しようとするが、遮光部13が検知室5の底面に当接した位置で当該回転は停止する。結果、変位部材11は
図5(a)に示すような第1の姿勢をとる。
【0020】
一方、貯留部2内のインク残量が僅かになったとき、変位部材11はインク液面から露出した状態となる。本発明の変位部材11は、このような場合において、フロート部12の側に作用する重力によって発生する回転モーメント(時計回り)が、遮光部13の側に作用する重力によって発生する回転モーメント(反時計回り)よりも大きくなるように設計されている。よって、変位部材11は時計回りに回転しようとするが、遮光部13が検知室5の内上面に当接した位置で当該回転は停止する。結果、変位部材11は
図5(b)に示すような第2の姿勢をとる。
【0021】
このような第1の姿勢から第2の姿勢への変化は、貯留部2内のインクが消費されるに連れて徐々に進行する。即ち、遮光部13は、検知室5の底面に当接する位置から、底面にも上面にも当接しない位置を経て、上面に当接した位置にZ方向(第1の方向)に徐々に変位する。光学センサ23は、第1の姿勢では発光部が発光した光が遮光部13に遮断されて受光部に受光されず、第2の姿勢では発光部が発光した光が遮光部13に遮断されること無く受光部に受光されるような位置に、発光部と受光部がレイアウトされている。つまり、貯留部2内のインクが所定量消費されたタイミングで、遮光部13が光学センサの光路から外れ、受光部が光を受光するようになる。インク残量検知部400aは、この検出結果を取得することにより、インクカートリッジ1内のインク残量が残り少なくなっていることを検知する。
【0022】
図6(a)〜(c)は、検知室5と変位部材11の更に詳しい構成を説明するための図である。
図6(b)は同図(a)におけるII−IIで切断した場合の上面図、
図6(c)はその検知室5近傍における拡大図である。
【0023】
検知室5内において、X方向に向かい合う2つの内壁は、+Y方向側に位置する第1の面105(第1の領域)と−Y方向側に位置する第2の面104(第2の領域)を有している。互いに向かい合う2つの第2の面104のX方向の距離W2は、互いに向かい合う2つの第1の面105のX方向の距離W1よりも大きくなっている。このような、第1面105と第2面104は、180°よりも大きな面間角度θを有するZ方向に延在する稜線106を介して接続されている。図では、稜線106における面間角度がθ=270°である場合を示している。
【0024】
一方、第2の面104に対向する変位部材11のX方向の両面には、第2の面に向かって突出する突起部102が形成されている。突起部102の先端から第2の面104までの距離t2は、遮光部13の側面から第1の面までの距離t1よりも小さくなっている。このため、変位部材11全体が実質的な変位方向である第1の方向(Z方向)と交差する第2の方向(X方向)に多少変動しても、遮光部13が第1の面105に当接する前に突起部102が第2の面104に当接する。このため、遮光部13と第1の面105の間には、変位部材11の回転を阻害するような毛管力が発生しない程度の距離が確保される。即ち、変位部材11がインク面から徐々に露出していくとき、遮光部13と第1の面105の間に介在するインクの表面張力によって、変位部材11の回転が阻害されることが抑制される。言い換えると、このような効果が十分に得られるように、遮光部13の側面から第1の面までの距離t1および突起部102の先端から第2の面104までの距離t2が、突起部102の突出量や第1の面や第2の面のレイアウトによって調整されている。その結果、遮光部13がインク面から露出した状態において、第1の面105の光学センサ23の検出領域にインクは残りにくく、光学センサはインクの残量を高精度に検出することができる。
【0025】
一方、突起部102の先端から第2の面104までの距離t2は小さいので、この隙間にインクが残存する可能性は残る。但し、突起部102の頂点の面積を十分小さくすれば、ここに残存するインクの表面張力が変位部材11の回転を阻害するのを抑えることはできる。加えて、第2の面104は、第1の面105と面間角度θ=270°をなす稜線106を介して第1の面105と接続している。このため、突起部102と第2の面104の間にインクが残存しても、当該インクが稜線106を乗り越えて第1の面105ひいては、光学センサ23の検出領域に到達する懸念は少ない。
【0026】
更に、本実施形態では、突起部102と第2の面104の隙間に残存するインクを効果的に除去するための別の構成として、変位部材11の両側面に溝形状を備えている。溝107は、
図6(a)に示すように、遮光部13の先端から突起部102、軸孔14の周囲を通り、フロート部12において曲折し−Z方向先端まで延在している。
【0027】
図7は、
図6(a)におけるIV−IVで切断した場合の前面図を示している。溝107の少なくとも一部の領域は、その幅d1が突起部102と第2の面104までの距離t2よりも小さくなるように形成されている。すなわち、溝107における幅d1での毛管力は突起部102と第2の面104との間でインクを保持しようとする力よりも大きくなる。一方、幅d1は、当該領域で生じる毛管力が、
図5(b)に示す第2の姿勢となった際に生じるインク液面との水頭差h1に準じた水頭圧よりも小さくなるように、調整されている。すなわち、溝107は、突起部102と第2の面104に残存するインクは吸い上げる。但し、貯留部2に残っているインクを少なくとも第2の姿勢時に当該領域まで重力に逆らって吸い上げることはないように調整されている。
【0028】
このような構成のもと、例えば、突起部102がインク液面よりも上位に変位しようとするタイミングでは、フロート部12の下端部からインク液面および突起部102まで延びる溝107にインクが連通している。そして、突起部102と第2の面104との間に介在するインクの表面張力が大きければ、変位部材11の回転が阻害される懸念が生じる。しかし、本実施例の場合は、幅d1におけるインクの保持力のほうが突起部102と第2の面104の間の保持力よりも大きくなるように設計されている。結果、突起部102と第2の面104との間に介在するインクは溝107に沿って誘導され、突起部102がインク液面よりも上位に位置するときに、突起部102と第2の面104の隙間にインクが残存し難くなっている。
【0029】
なお、上述したような効果をより得るためには、変位部材11が軸部8を中心に回転しながらインク面より徐々に露出していく過程において、突起部102は常に第2の面104に対向していることが好ましい。このため、第2の面104は、Y方向の大きさを突起部102の回転軌跡を十分含むようにする、あるいは突起部102の回転軌跡に沿って円弧を描くように配置されることが好ましい。
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、変位部材11はインクの表面張力に影響を受けることなく、インク残量に順応した位置に変位可能となる。さらに、遮光部13がインク面から露出した状態において、第1の面105の光学センサ23の検出領域にインクが残存する可能性は低くなる。結果、光学センサはインクの残量に応じた適切な検出を高精度に行うことが可能となる。
【0031】
なお、以上説明した実施例において、個々の部材は上述した機能を有する範囲で様々に変更することができる。例えば、変位部材11と容器筐体6の結合は、容器筐体6に孔が、変位部材11に軸部が備えられている構成としてもよい。いずれにしても、変位部材11が容器筐体6に対し回転可能に結合されていればよい。
【0032】
また、上記実施例では変位部材側に突起部102を、検知室5の内壁に第2の面104を形成し両者の間隔t2が所定値に規定される内容で説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。例えば、変位部材11の当該領域は平滑な規制部材にしておきながら、検知室5の第2の面104に該当する第2の領域に、変位部材11の回転位置に追従するような凸状のリブ形状を配備しておくこともできる。
【0033】
更に、以上では第1の面と第2の面とが180度よりも大きな面間角度を有する1つの稜線106を介して接続される内容で説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものでもない。例えばこれら2つの面は、180度よりも大きな面間角度で直接接続されていてもよい。第1の面と第2の面との間に、180度よりも大きな面間角度を有する稜線が少なくとも1つ配置されていれば、第2の面104の側で保持されたインクを、検出領域である第1の面105の側に移動し難くすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 液体容器
2 貯留部
5 検知室
11 変位部材
13 遮光部
23 光学センサ
102 突起部(規制部材)
104 第2の領域(第2の面)
105 第1の領域(第1の面)
106 稜線
200 液体残量検出装置